(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241122BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2021013598
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳大
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102735(JP,A)
【文献】特開2019-204907(JP,A)
【文献】特開2019-050313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを用いて基板上
のインプリント材
にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記モールドと前記基板との位置合わせのため、第1光を照射することで前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせの後、第2光を照射することで前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、
を含み、
前記予備硬化工程における前記第1光の照射時間は、前記予備硬化工程の前において
前記第1光より小さい照度の第3光を照射することにより求められた
インプリント材が前記第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間
と、前記第1光の照度と、前記第3光の照度とに基づいて
決定される、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記第3光を所定領域上のインプリント材に照射しながら前記モールドと前記所定領域との相対位置を検出した結果に基づいて、前記硬化時間が求められる、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記第3光を所定領域上のインプリント材に照射しながら前記モールドと前記所定領域との相対位置を検出することにより取得された、前記第3光の照射時間と前記相対位置との関係を示す情報に基づいて、前記硬化時間が求められる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記所定領域は、前記第1光を用いた前記予備硬化工程が行われる対象領域を有する基板上の領域である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記所定領域は、前記第1光を用いた前記予備硬化工程が行われる対象領域を有する基板とは異なる基板上の領域である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のインプリント方法。
【請求項6】
前記基板は、前記インプリント材のパターンがそれぞれ形成される複数のショット領域を含み、
前記複数のショット領域の前記予備硬化工程で共通に適用される前記照射
時間が、前記複数のショット領域のうち特定のショット領域を用いて決定される、ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記特定のショット領域は、前記複数のショット領域のうち前記インプリント材のパターンを最初に形成するショット領域である、ことを特徴とする請求項
6に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記基板は、前記インプリント材のパターンがそれぞれ形成される複数のショット領域を含み、
前記基板とは異なる第2基板を用いて、前記複数のショット領域の各々について前記照射
時間が個別に決定される、ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項9】
前記複数のショット領域のうち特定のショット領域について前記照射
時間を変更した場合、前記特定のショット領域における変更前後での前記照射
時間の比率から得られる補正係数に基づいて、他のショット領域についての前記第1光の照射
時間が補正される、ことを特徴とする請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項10】
前記第3光は、前記第1光のデューティー制御を行うことにより生成される、ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項11】
前記位置合わせは、前記予備硬化工程の開始から前記本硬化工程の開始までの少なくとも一部の期間において、前記モールドと前記インプリント材とが接触している状態で行われる、ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項12】
モールドを用いて基板上
のインプリント材
にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記モールドと前記基板との位置合わせのため、第1光を連続的に照射することで前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせの後、第2光を照射することで前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、
を含み、
前記予備硬化工程の前において、前記第1光を離散的に照射することにより求められた、インプリント材が前記第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間に基づいて、前記予備硬化工程における前記第1光の照射光量が決定される、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載のインプリント方法を用いて基板上にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項14】
モールドを用いて基板上
のインプリント材
にパターンを形成する処理を行うインプリント装置であって、
光を照射することで前記インプリント材を硬化させる硬化部と、
前記処理を制御する制御部と、を備え、
前記処理は、
前記モールドと前記基板との位置合わせのため、第1光を照射することで前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせの後、第2光を照射することで前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、を含み、
前記制御部は、
前記予備硬化工程における前記第1光の照射時間を、前記予備硬化工程の前において前記第1光より小さい照度の第3光を照射することにより
求められたインプリント材が前記第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間
と、前記第1光の照度と、前記第3光の照度とに基づいて
決定する、ことを特徴とするインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどを製造する技術として、モールド(型)を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント技術が知られている。インプリント技術では、基板上に液状のインプリント材を供給し、モールドと基板上のインプリント材とを接触させた後、その状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを剥離する。これにより、基板上にインプリント材のパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材を硬化させる前に、モールドと基板上にインプリント材とを接触させた状態でモールドと基板との位置合わせが行われる。当該位置合わせでは、インプリント装置が設置されている床からの振動などの外乱の影響により、モールドと基板との位置合わせ精度が低下しうる。特許文献1には、モールドと基板との位置合わせにおいて、インプリント材に光を照射してインプリント材の粘性を増加させる予備硬化(予備露光)を行うことで位置合わせ精度を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予備硬化(予備露光)においてインプリント材を目標硬度に硬化させる場合、インプリント材に照射される光の照度(光強度)が高いほど、インプリント材の硬化速度が速く、予備硬化に要する時間が短縮されるため、スループットの点で有利である。一方で、インプリント材を当該目標硬度に硬化させるための照射光量を決定する際に、予備硬化での光の照度を適用すると、インプリント材の粘性が急速に変化してしまい、当該照射光量を精度よく決定することが困難になりうる。
【0006】
そこで、本発明は、インプリント材を予備硬化させるための照射光量の決定において有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント方法は、モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、前記モールドと前記基板との位置合わせのため、第1光を照射することで前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、前記位置合わせの後、第2光を照射することで前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、を含み、前記予備硬化工程における前記第1光の照射時間は、前記予備硬化工程の前において前記第1光より小さい照度の第3光を照射することにより求められたインプリント材が前記第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間と、前記第1光の照度と、前記第3光の照度とに基づいて決定される、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、インプリント材を予備硬化させるための照射光量の決定において有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】インプリント装置100の構成例を示す概略図
【
図3】予備硬化工程を行うことによる位置合わせ工程への影響(効果)を説明するための図
【
図5】決定処理に予備硬化光を用いる影響を説明するための図
【
図7】第1実施形態の決定処理の変形例を説明するための図
【
図8】第1実施形態のインプリント方法を示すフローチャート
【
図9】基板における複数のショット領域の配置例を示す図
【
図10】第2実施形態のインプリント方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。例えば、インプリント装置は、基板上に液状のインプリント材を供給し、凹凸のパターンが形成されたモールド(型)を基板上のインプリント材に接触させた状態で当該インプリント材を硬化させる。そして、モールドと基板との間隔を広げて、硬化したインプリント材からモールドを剥離(離型)することで、基板上のインプリント材にモールドのパターンを転写することができる。このような一連の処理は「インプリント処理」と呼ばれ、基板における複数のショット領域の各々について行われる。
【0013】
インプリント材には、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0014】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
インプリント材は、スピンコータやスリットコータにより基板上に膜状に付与される。あるいは、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0016】
[インプリント装置の構成]
図1は、本実施形態のインプリント装置100の構成例を示す概略図である。本実施形態のインプリント装置100は、例えば、インプリントヘッド10(モールド保持部)と、基板ステージ20と、供給部30と、硬化部40と、計測部50と、検出部60と、制御部70とを含みうる。制御部70は、CPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成されており、インプリント装置100の各部に回線を介して接続され、プログラムなどに従ってインプリント装置100の各部を制御する(インプリント処理を制御する)。ここで、インプリントヘッド10は、除振器81と支柱82を介してベース定盤83によって支持されたブリッジ定盤84に固定されており、基板ステージ20は、ベース定盤83の上を移動可能に構成されている。除振器81は、例えばインプリント装置100が設置されている床からブリッジ定盤84に伝わる振動を低減するための機構である。
【0017】
モールドMは、通常、石英など紫外線を透過させることが可能な材料で作製されており、基板側の面において基板側に突出した一部の領域(パターン領域Ma)には、基板上のインプリント材Rに転写されるべき凹凸のパターンが形成されている。また、基板Wとしては、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板Wとしては、具体的に、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、石英ガラスなどである。また、インプリント材の付与前に、必要に応じて、インプリント材と基板との密着性を向上させるために密着層を設けてもよい。
【0018】
インプリントヘッド10は、例えば真空力などによりモールドMを保持するモールドチャック11と、モールドMと基板Wとの間隔を変更するようにモールドM(モールドチャック11)をZ方向に駆動するモールド駆動部12とを含みうる。インプリントヘッド10によりモールドMをZ方向に駆動することで、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させる接触処理、および、硬化したインプリント材RからモールドMを剥離する離型処理を行うことができる。また、インプリントヘッド10は、Z方向に限られず、XY方向およびθ方向(Z軸周りの回転方向)にモールドMを駆動するように構成されてもよい。
【0019】
本実施形態のインプリントヘッド10には、硬化部40から射出された光が通過する空間13が設けられる。この空間13は、光透過部材14によって仕切られており、モールドMがインプリントヘッド10(モールドチャック11)によって保持されたときに略密閉された空間となる。そのため、接触処理や離型処理の際に、不図示の圧力調整部によって空間13の内部圧力を調整することで、モールドM(パターン領域Ma)を、その中央部が基板Wに向かって突出した凸形状に変形することができる。例えば、接触工程においてモールドMを凸形状に変形することにより、パターン領域Maをインプリント材Rに徐々に接触させ、モールドMに形成されたパターンの凹部における気体の閉じ込めを低減することができる。
【0020】
基板ステージ20は、例えば真空力などにより基板を保持する基板チャック21と、ベース定盤83の上をXY方向に移動可能な移動部22とを含みうる。基板ステージ20(移動部22)をXY方向に移動させることで基板WをXY方向に駆動し、モールドMと基板Wとの位置決め(相対的な位置)、および供給部30と基板Wとの位置決めを行うことができる。また、基板ステージ20は、XY方向に限られず、Z方向やθ方向に基板Wを駆動するように構成されてもよい。
【0021】
供給部30(吐出部、ディスペンサ)は、基板ステージ20によって下方に配置された基板上にインプリント材Rを供給する。本実施形態では、光の照射によって重合反応する樹脂がインプリント材Rとして用いられる。例えば、供給部30は、基板ステージ20により基板Wが供給部30に対して相対的に移動している状態で、インプリント材Rを複数の液滴として吐出することにより、基板W(対象ショット領域S)上にインプリント材Rを供給することができる。
【0022】
硬化部40(光照射部)は、基板W上のインプリント材Rに光を照射して当該インプリント材を硬化させる。本実施形態の硬化部40は、例えば、予備硬化部41と本硬化部42とを含みうる。予備硬化部41は、後述する予備硬化工程においてインプリント材Rを第1目標硬度に硬化させるための第1光(以下では、予備硬化光Lpと呼ぶことがある)を射出する光源を有する。予備硬化部41から射出された予備硬化光Lpは、ハーフミラー43を透過して基板上のインプリント材Rに照射される。また、本硬化部42は、後述する本硬化工程においてインプリント材を第2目標硬度に硬化させる第2光(以下では、本硬化光Lcと呼ぶことがある)を射出する光源を有する。本硬化部42から射出された本硬化光Lcは、ハーフミラー43で反射されて基板上のインプリント材Rに照射される。ハーフミラー43は、予備硬化光Lpを透過して本硬化光Lcを反射するダイクロイックミラーなどによって構成されうる。
【0023】
予備硬化光Lpの照度(光強度)は、例えば本硬化光Lcの照度以下に設定されうるが、スループットの観点から、本実施形態では本硬化光Lcの照度と同程度に設定されるとよい。予備硬化光Lpおよび本硬化光Lcの波長(波長範囲)は、インプリント材Rの反応感度に応じて任意に設定することができ、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、本実施形態では、予備硬化部41と本硬化部42とが別体で設けられているが、それに限られず、一体として設けられてもよい。
【0024】
ここで、本硬化工程におけるインプリント材Rの第2目標硬度は、インプリント材Rを固化させることができる硬化の程度として定義されうる。例えば、第2目標硬度は、離型工程でモールドMをインプリント材Rから剥離した後においても、モールドMの凹凸パターンを転写することで得られたインプリント材Rのパターンの形状を維持することができるインプリント材Rの硬化の程度として定義されうる。第2目標硬度は、予備硬化工程でインプリント材Rが硬化される第1目標硬度よりも高い硬度に設定される。
【0025】
また、予備硬化工程におけるインプリント材Rの第1目標硬度は、供給部30から基板上への供給時におけるインプリント材Rの硬度(粘度)より高いが、第2目標硬度より低いインプリント材Rの硬化の程度として定義されうる。つまり、第1目標硬度は、第2目標硬度より高い流動性を有しているが、供給部30から基板上への供給時におけるインプリント材Rより低い流動性を有しているインプリント材Rの硬化の程度として定義されうる。第1目標硬度は、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させた状態でモールドMと基板Wとを相対駆動することができるのであれば、基板上への供給時におけるインプリント材Rの硬度より高く且つ第2目標硬度より低い範囲内で任意に設定されうる。例えば、第1目標硬度は、第2目標硬度の20%~80%の範囲内の値、好ましくは第2目標硬度の20%~40%の範囲内の値に設定されうる。
【0026】
計測部50は、例えば、モールドMに設けられたマークと基板Wに設けられたマークとを検出するTTM(Through The Mold)スコープを含み、モールドMのマークと基板Wのマークとの位置を計測する。これにより、制御部70は、計測部50で計測されたモールドMのマークと基板Wのマークとの相対位置に基づいて、モールドMと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を制御することができる。
【0027】
検出部60は、XY方向におけるモールドMと基板Wとの相対位置を検出する。本実施形態の場合、検出部60は、インプリントヘッド10(モールドM)が固定されているブリッジ定盤84に固定されており、XY方向における基板ステージ20の位置を検出するように構成される。例えば、検出部60は、レーザ干渉計を含み、基板ステージ20に設けられた反射板23にレーザ光を照射し、反射板23で反射されたレーザ光によって基板ステージ20の位置を検出する。このように、検出部60は、XY方向における基板ステージ20の位置を検出することにより、その検出結果に基づいて、インプリントヘッド10(モールドM)と基板ステージ20(基板W)との相対位置を検出することができる。また、検出部60は、基板ステージ20の位置だけでなく、インプリントヘッド10(モールドM)の位置も検出するように構成されてもよい。
【0028】
[インプリント処理]
次に、本実施形態のインプリント装置100で行われるインプリント処理について説明する。
図2は、基板上における1つのショット領域に対して行われるインプリント処理を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートの各工程は、制御部70によって制御されうる。
【0029】
ステップS11では、制御部70は、基板ステージ20により供給部30と基板Wとを相対的に移動させながら供給部30にインプリント材Rを吐出させることにより、ショット領域上にインプリント材Rを供給する(供給工程)。供給工程が終了したら、制御部70は、モールドM(パターン領域Ma)の下方にショット領域が配置されるように、基板ステージ20により基板Wを駆動する。ステップS12では、制御部70は、インプリントヘッド10によりモールドMを-Z方向に駆動してモールドMと基板Wとの間隔を狭めることで、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させる(接触工程)。次いで、ステップS13では、制御部70は、モールドMのパターン凹部にインプリント材Rが充填されるように、所定の時間が経過するまで待機する(充填工程)。
【0030】
ステップS14では、制御部70は、モールドMとインプリント材Rとが接触している状態で、硬化部40(予備硬化部41)によりインプリント材Rに予備硬化光Lpを照射し、インプリント材Rを第1目標硬度に硬化させる(予備硬化工程)。予備硬化工程において、予備硬化光Lpは、例えば連続的にインプリント材Rに照射される。ステップS15では、制御部70は、モールドMとインプリント材Rとが接触している状態で、モールドMと基板Wとの位置合わせを行う(位置合わせ工程)。位置合わせ工程では、モールドMのマークと基板Wのマークとの相対位置を計測部50に計測させ、その計測結果に基づいて、モールドMのマークと基板Wのマークとが目標相対位置になるように、モールドMと基板Wとの相対位置が制御されうる。
【0031】
S16では、制御部70は、モールドMと基板上のインプリント材Rとが接触している状態で、硬化部40(本硬化部42)によりインプリント材Rに本硬化光Lcを照射し、当該インプリント材Rを第2目標硬度に硬化させる(本硬化工程)。本硬化工程において、本硬化光Lcは、例えば連続的にインプリント材Rに照射される。次いで、ステップS17では、制御部70は、インプリントヘッド10によりモールドMを+Z方向に駆動してモールドMと基板Wとの間隔を広げることで、第2目標硬度に硬化したインプリント材RからモールドMを剥離する(離型工程)。
【0032】
ここで、
図2では、位置合わせ工程(S15)が、予備硬化工程(S14)と本硬化工程(S16)との間に行われているが、予備硬化工程(S14)における少なくとも一部の期間と並行して行われてもよい。即ち、位置合わせ工程(S15)は、予備硬化工程(S14)の開始から本硬化工程(S16)の開始までの少なくとも一部の期間において行われうる。
【0033】
[予備硬化工程について]
前述したインプリント処理の接触工程(S12)および充填工程(S13)では、基板上でインプリント材Rを拡がり易くするため、インプリント材Rの粘度が低い(即ち、流動性が高い)方が好ましい。一方、位置合わせ工程(S15)では、床からの振動等の外乱の影響によりモールドMと基板Wとの位置合わせ精度が低下しうるため、インプリント材Rの粘度を高めて、当該外乱の影響を低減させることが好ましい。したがって、本実施形態のインプリント処理では、基板上のインプリント材Rに予備硬化光Lpを照射することで、当該インプリント材Rを第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程(S14)が行われる。これにより、位置合わせ工程におけるモールドMと基板Wとの相対位置を変動しづらくし、モールドMと基板Wとの位置合わせ精度を向上させることができる。
【0034】
図3は、予備硬化工程(S14)を行うことによる位置合わせ工程(S15)への影響(効果)を説明するための図である。
図3(A)は、位置合わせ工程(S15)において検出部60により検出されるモールドMと基板Wとの相対位置(目標相対位置(図中ではゼロ)に対する偏差)を示しており、
図3(B)は、インプリント材Rの粘性(硬度)を示している。インプリント材Rは、
図3(B)に示されるように、予備硬化光Lpの照射を開始してから所定期間(「不感区間」と呼ばれる)においては粘性が殆ど変化せず、当該所定期間を過ぎてから粘性が増加し始める。そして、インプリント材Rが完全に硬化する前、即ち、モールドMと基板Wとの相対位置を変更することができる程度の流動性を保持している状態において、予備硬化光Lpの照射が終了される。この状態においては、モールドMと基板Wとの相対位置を変更しづらいが、床からの振動等の外乱の影響を低減することができるため、
図3(A)に示されるように、モールドMと基板Wとの位置合わせ精度を向上させることができる。なお、インプリント材Rは、予備硬化光Lpの照射を終了した後も、過渡応答的に粘性が増加することがあり、この期間は過渡区間と呼ばれる。
【0035】
[予備硬化光の照射光量の決定方法]
予備硬化工程(S14)においてインプリント材Rを第1目標硬度に硬化させる場合、予備硬化光Lpの照度が高いほど、インプリント材Rの硬化速度が速く、予備硬化工程に要する時間が短縮されるため、スループットの点で有利である。一方で、インプリント材Rを第1目標硬度に硬化させるため予備硬化光Lpの照射光量を決定する際、予備硬化工程で用いられる照度(即ち、予備硬化光Lpの照度)を適用すると、インプリント材Rの粘性が急速に変化しうる。この場合、インプリント材Rが第1目標硬度になるタイミングを精度よく求めることができないため、当該照射光量を精度よく決定することが困難になりうる。
【0036】
本実施形態の場合、インプリント材Rが完全に(即ち、第2目標硬度に)硬化するまで当該インプリント材Rに光を照射しながらモールドMと基板Wとの位置合わせを行った結果に基づいて、予備硬化光Lpの照射光量が決定される。このような決定処理では、
図4に示されるように、インプリント材Rに光を照射しながら検出部60にモールドMと基板Wとの相対位置を検出させ、その検出結果(相対位置の波形)に基づいて、インプリント材Rが第1目標硬度に硬化するまでの時間Tを求める。これにより、時間Tとインプリント材Rに照射した光の照度とに基づいて(例えば、時間Tと光の照度との積に基づいて)、予備硬化光Lpの照射光量を決定することができる。
【0037】
ここで、時間Tは、
図4に示されるように、相対位置(目標相対位置に対する偏差)が許容範囲Aに収まるまでの時間として定義されてもよい。当該許容範囲Aは、例えば、絶対値で0.1nm以上10nm以下の値に設定されうる。また、時間Tは、
図4に示されるように、光の照射を開始してから、相対位置の波形における振幅の変化率R(例えば、連続する2つのピーク値の比率)が目標値になる時間として定義してもよい。インプリント材Rは、光の照射により粘度が増加するため、それに伴って、モールドMと基板Wとの相対位置を変更しづらくなり、相対位置の波形における振幅の変化率Rも変化する。つまり、変化率Rは、
図3(B)に示されるインプリント材の粘度を反映しているため、インプリント材Rが第1目標硬度になるときの変化率Rを目標値として、事前の実験やシミュレーション等により、事前に求めておくことができる。
【0038】
このような決定処理において予備硬化光Lpを用いた場合、インプリント材Rの粘度が急速に変化し、
図5に示されるように、相対位置の偏差が収まっていない状態でインプリント材Rが完全に(相対位置を変動することができない状態に)硬化してしまう。この場合、予備硬化光Lpの照射光量を決定するために使用されたショット領域については、モールドMのパターンを精度よく転写することができず、製品とすることが困難になりうる。つまり、予備硬化光Lpの照射光量の決定を、後に製品となる基板上のショット領域を用いて行うことが困難になりうる。
【0039】
そこで、本実施形態では、上記の決定処理において、予備硬化光Lp(第1光)より小さい照度の第3光(以下では、低照度光Lsと呼ぶことがある)を用いて、予備硬化工程における予備硬化光Lpの照射光量(目標照射光量)を決定する。ここで、低照度光Lsは、例えば、予備硬化光Lpの照度の5%~50%の範囲内の値、好ましくは15%~40%の範囲内の値に設定されうる。また、予備硬化光Lpの照射光量は、インプリント材Rに対する予備硬化光Lpの積算露光量として定義され、インプリント材Rに照射される予備硬化光Lpの照度の時間積分(例えば、予備硬化光Lpの照度と照射時間との積)で表されうる。
【0040】
以下に、本実施形態の決定処理について説明する。本実施形態の決定処理では、インプリント材Rに低照度光Lsを照射することで当該インプリント材Rが第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間Tsを求め、その硬化時間Tsに基づいて、予備硬化工程における予備硬化光Lpの照射光量を決定する。硬化時間Tsは、例えば、基板Wの所定領域上のインプリント材Rに低照度光Lsを照射しながら検出部60によりモールドMと基板Wとの相対位置を検出させた結果に基づいて求めることができる。
【0041】
ここで、所定領域は、予備硬化光Lpを用いた予備硬化工程が行われる対象領域(ショット領域)を有する基板上の領域(即ち、対象領域と同一基板上の領域)であってもよいし、当該対象領域を有する基板とは異なる基板上の領域であってもよい。本実施形態の場合、所定領域は、基板Wにおける複数のショット領域の中から選択された特定のショット領域でありうる。特定のショット領域は、基板W上の複数のショット領域のうちパターンを最初に形成する(即ち、最初にインプリント処理を行う)ショット領域を含んでもよい。また、特定のショット領域は、予備硬化光Lpの目標光量を最後に決定してから所定時間が経過した後に最初にインプリント処理が行われるショット領域を含んでもよい。
【0042】
図6(A)は、所定領域上のインプリント材Rに低照度光Lsを照射しながら検出部60にモールドMと所定領域との相対位置を検出させた結果を示す図である。前述した決定処理と同様に、所定領域上のインプリント材Rに低照度光Lsを照射しながら検出部60にモールドMと所定領域との相対位置を検出させる。これにより、低照度光Lsの照射時間と相対位置との関係を示す情報として、
図6(A)に示されるような相対位置の波形が取得される。そして、この情報(相対位置の波形)に基づいて、インプリント材Rが第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間Tsを求める。硬化時間Tsは、前述したように、相対位置の偏差が許容範囲Aに収まるまでの時間として定義されてもよいし、相対位置の波形における振幅の変化率Rが目標値になる時間として定義されてもよい。
【0043】
このように硬化時間Tsを求めることにより、硬化時間Tsに基づいて、予備硬化工程における予備硬化光Lpの照射光量を決定することができる。例えば、硬化時間Ts、低照度光Lsの照度、および予備硬化光Lpの照度に基づいて、予備硬化工程における予備硬化光Lpの照射時間Tpを照射光量として決定することができる。具体的には、インプリント材が単分子逐次光反応系である場合、照射光量に対する反応率は照度×時間に比例する。そのため、低照度光Lsの照度をIs、予備硬化光Lpの照度をIpとすると、照射時間Tpを、Tp=(Is/Ip)×Tsにより決定することができる。また、インプリント材が光ラジカル重合反応系である場合、照射光量に対する反応率は√(照度)×時間に比例するため、照射時間Tpを、Tp=√(Is/Ip)×Tsにより決定することができる。
【0044】
図6(B)は、上記のように決定された予備硬化光Lpの照射時間Tp(照射光量)で予備硬化工程を行った場合におけるモールドMと基板Wとの相対位置の時系列波形を示している。上記のように決定された照射時間Tpを用いることにより、インプリント材Rの粘度を精度よく制御(調整)すること、即ち、インプリント材Rを第1目標硬度に精度よく硬化することができる。つまり、予備硬化工程において、モールドMと基板Wとの相対位置を変更することができない程度にインプリント材Rが硬化するといった事象を回避することができ、モールドMと基板Wとの位置合わせを精度よく行うことができる。
【0045】
ここで、上記の例では、インプリント材Rが第1目標硬度に硬化するまでの硬化時間Tsを、低照度光Lsを用いて求めたが、
図7に示されるように、インプリント材Rに予備硬化光Lpを離散的に照射することによって求めることもできる。即ち、インプリント材Rへの予備硬化光Lpの照射を、間隔を空けて複数回に分けて間欠的に行う。この場合、硬化時間Tsは、相対位置の偏差が許容範囲Aに収まるまでに予備硬化光Lpを照射した時間の積算値、或いは、相対位置の波形における振幅の変化率Rが目標値になるまでに予備硬化光Lpを照射した時間の積算値である。
【0046】
[インプリント方法]
次に、本実施形態のインプリント方法について説明する。
図8は、本実施形態のインプリント方法を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートの各工程は、制御部70によって制御されうる。本実施形態では、基板Wにおける複数のショット領域の予備硬化工程で共通に適用される予備硬化光Lpの照射光量を、当該複数のショット領域のうち1つのショット領域を用いて決定する例について説明する。
【0047】
ステップS21では、制御部70は、これからインプリント処理を行う対象ショット領域を用いて予備硬化光Lpの照射光量を決定する(最適化する)か否かを判断する。例えば、制御部70は、対象ショット領域が、基板W上の複数のショット領域のうち最初にインプリント処理を行うショット領域である場合に、予備硬化光Lpの照射光量を決定すると判断してもよい。また、制御部70は、予備硬化光Lpの目標光量を最後に決定してから所定時間が経過している場合に、予備硬化光Lpの照射光量を決定すると判断してもよい。対象ショット領域を用いて予備硬化光Lpの照射光量を決定すると判断した場合にはステップS22に進み、予備硬化光Lpの照射光量を決定しないと判断した場合にはステップS24に進む。
【0048】
ステップS22~S23は、予備硬化光Lpの照射光量を決定する決定工程であり、対象ショット領域のインプリント処理において、上記の決定処理が適用されうる。ステップS22では、制御部70は、予備硬化工程(S14)で用いる光を低照度光Lsに設定する。ステップS23では、制御部70は、対象ショット領域に対してインプリント処理を行う。当該インプリント処理は、
図2に示されるフローチャートに従って行われうるが、予備硬化工程(S14)の代わりに上記の決定方法が行われる。これにより、予備硬化光Lpの照射光量(照射時間Tp)が決定される。
【0049】
ステップS24~S25は、予備硬化光Lpを用いてインプリント処理を行う工程である。ステップS24では、制御部70は、予備硬化工程(S14)で用いる光として予備硬化光Lpを設定する。ステップS25では、制御部70は、対象ショット領域に対してインプリント処理を行う。当該インプリント処理は、
図2に示されるフローチャートに従って行われうる。
【0050】
ステップS26では、制御部70は、次にインプリント処理を行うべきショット領域(次のショット領域)が基板上にあるか否かを判断する。次のショット領域がある場合にはS21に進み、次のショット領域がない場合には終了する。
【0051】
[予備硬化光と低照度光との切り替え]
次に、予備硬化光Lpと低照度光Lsとの切り替え方法について説明する。予備硬化光Lpと低照度光Lsとの切り替えは、予備硬化部41の光源の出力を切り替えたり、予備硬化部41に設けられた光学フィルタを切り替えたりすることで実現することができる。また、複数の光源、または、複数の光路、もしくはその両方を備えることでも実現することができる。
【0052】
例えば、予備硬化光Lpのデューティー制御(Duty制御)を行うことにより、低照射光Lsを生成することができる。この場合、光源からの光に対して、インプリント領域の照度分布を空間的かつ時間的に制御できる機構を備えてもよい。光の照度分布を空間的に制御できる機構としては、DMD(Digital Micro-mirror Device)が挙げられる。また、DMDと同じように、ショット領域(インプリント領域)に対して照度分布をもたせた光を照射することができる素子であれば、DMD以外の素子を使用してもよい。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を使用することもできる。DMDを使用した場合、光源の電流制御によるON/OFF制御よりも早い時間応答を得ることができる。光源の過渡応答速度は数100μ秒程度かかるのに対し、DMDのパターン切り替え制御は十分早く、数10μ秒程度で切り替えが可能となる。この特性を利用し、照射のデューティー比(Duty比)を切り替えることで、単位時間当たりの照射量を制御することができるため、光源の照度を変更することなく、実質的な照度の切り替えを行うことができる。また、DMDでは、ショット領域の照度分布を制御することができるため、光を照射する面積量を切り変えることによって、実質的な照度の切り替えを行うことができる。これらの場合、元々の強い照度(例えば予備硬化光Lp)に対して、実質的な照度に大きな差がない場合は、粘性変化が緩やかにならない。また、元々の強い照度(例えば予備硬化光Lp)に対して、実質的な照度が小さすぎる場合には、照射時間が長くなりすぎてしまい、実用的ではない。これらの理由から、弱い照度(例えば低照度光Ls)を実現する際は、強い照度(予備硬化光Lp)に対して、5%以上50%以下の照度が望ましい。
【0053】
上述したように、本実施形態のインプリント装置100は、予備硬化光Lp(第1光)より小さい照度の低照度光Ls(第3光)を用いて、予備硬化工程における予備硬化光Lpの照射光量を決定する決定工程を行う。これにより、基板上のショット領域を用いて、予備硬化光Lpの照射光量を精度よく決定することができる。
【0054】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、インプリント装置100の構成やインプリント処理の内容などについては第1実施形態で説明したとおりである。
【0055】
上述した第1実施形態では、1つの基板Wにおける複数のショット領域のうち選択された特定のショット領域を用いて、予備硬化光Lpの照射光量を決定する方法について説明した。本実施形態では、予備硬化光Lpによる予備硬化工程が行われる基板Wとは異なる第2基板を用いて、予備硬化光Lpの照射光量を事前に決定する方法について説明する。また、本実施形態では、予備硬化光Lpの照射光量を、基板Wにおける複数のショット領域の各々について個別に決定する。
【0056】
ここで、第2基板は、例えば、複数の基板を含むロットの先頭の基板であり、第2基板にも、パターンを形成すべき(即ち、インプリント処理が行われるべき)複数のショット領域が含まれうる。第2基板における複数のショット領域の各々に対するインプリント処理では、予備硬化工程の代わりに、低照度光Lsを用いた上記の決定処理を行い、予備硬化光Lpの照射光量(例えば照射時間Tp)を決定する。第2基板を用いて決定された予備硬化光Lpの照射光量は、当該ロットの2枚目以降の基板Wへのインプリント処理(予備硬化工程)に適用されうる。
【0057】
図9は、基板Wにおける複数のショット領域SRの配置例を示す図である。
図9において各ショット領域SRに付与されている符号A1~A16は、ショット領域の番号であり、インプリント処理を行う順番を表している。複数のショット領域SRは、
図9に示されるように、モールドMとインプリント材との接触面積が互いに異なる少なくとも2つのショット領域SR(例えば、A1とA5)を含む。このように接触面積が互いに異なる少なくとも2つのショット領域SRでは、外乱(振動等)の影響も互いに異なるため、予備硬化光Lpの照射光量を個別に設定することが好ましい。また、当該少なくとも2つのショット領域SRでは、インプリント処理時にインプリント材Rの周囲に供給される気体(ヘリウムなど)の量など、インプリント処理時の雰囲気も異なるため、予備硬化工程の開始時におけるインプリント材Rの粘度も異なる。この観点からも、当該少なくとも2つのショット領域SRについて、予備硬化光Lpの照射光量を個別に設定することが好ましい。
【0058】
図10は、本実施形態のインプリント方法を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートの各工程は、制御部70によって制御されうる。
【0059】
ステップS31では、制御部70は、ロットの先頭の第2基板における複数のショット領域i(「i」はショット領域の番号)の各々に対してインプリント処理を行う。当該インプリント処理は、
図2に示されるフローチャートに従って行われうるが、予備硬化工程の代わりに、低照度光Lsを用いて予備硬化光Lpの照射光量を決定する上記の決定処理が行われる。ステップS32では、制御部70は、各ショット領域iのインプリント処理で得られた相対位置の波形(例えば
図4に示される波形)に基づいて、インプリント材Rが第1目標硬度に硬化する硬化時間Tsを各ショット領域iについて求める。ステップS33では、制御部70は、各ショット領域iについて求めた硬化時間Tsに基づいて、予備硬化光Lpの照射光量(例えば照射時間Tp)を各ショット領域iについて決定する。次いで、ステップS34では、制御部70は、ロットの2枚目以降の基板Wに対してインプリント処理を順次行う。当該インプリント処理は、
図2に示されるフローチャートに従っておこなれ、予備硬化工程(S14)において、ステップS33で決定された予備硬化光Lpの照射光量が適用される。
【0060】
ここで、基板における複数のショット領域では、接触面積およびインプリント処理時の雰囲気などのインプリント条件が同程度になるショット領域がある。例えば、
図9に示されるように、基板Wの中央部に配置されたショット領域群(A5,A6,A7,A10,A11,A12)では、インプリント条件が同程度になりうる。また、基板の周縁部に配置されたショット領域A1,A3,A14,A16では、インプリント条件が同程度になりうる。このようにインプリント条件が同程度になるショット領域群がある場合、当該ショット領域群のうち選択された特定のショット領域のみに対して上記の決定処理を行いうる。これにより、他のショット領域では、当該決定処理で決定された予備硬化光Lpの照射光量を採用して、予備硬化光Lpを用いた予備硬化工程を実施することができるため、スループットの点で有利となる。
【0061】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1~第2実施形態を基本的に引き継ぐものであり、インプリント装置100の構成やインプリント処理の内容などについては第1実施形態で説明したとおりである。
【0062】
インプリント装置100では、予備硬化部41の光源の劣化、外気の温度や湿度といった外乱条件の変化などにより、これまで設定されていた予備硬化光Lpの照射光量が適さなくなることがある。例えば、予備硬化光Lpの照射光量が多いと、予備硬化工程においてインプリント材Rが完全に(モールドMと基板Wとの相対位置を変動することができない程度に)硬化し、モールドMと基板Wとの位置合わせを精度よく行うことが困難になりうる。一方、予備硬化光Lpの照射光量が少ないと、インプリント材Rが第1目標硬度に十分に硬化されずに位置合わせ工程で振動等の外乱の影響を受け、モールドMと基板Wとの位置合わせを精度よく行うことが困難になりうる。そのため、予備硬化光Lpの照射光量は、適宜補正(更新)されることが好ましい。本実施形態では、予備硬化光Lpの照射光量を容易に補正することができる方法について説明する。
【0063】
例えば、予備硬化部41の光源の照度、および/または、外気の温度等の外乱条件を逐次モニタ(監視)しておく。そして、当該光源の照度および/または当該外乱条件に所定値以上の変動が生じた場合、複数のショット領域のうち特定のショット領域を用いて、上記の決定処理を行う。これにより、予備硬化光Lpの照射時間Ts(照射光量)が新たに決定され、特定のショット領域について照射時間Tsが変更される。
【0064】
一方、他のショット領域についての予備硬化光Lpの照射時間Tp(照射光量)は、特定のショット領域についての変更前後での照射時間Tp(照射光量)の比率に基づいて補正することができる。具体的には、特定のショット領域についての変更前の照射時間Tpを「Tp1」とし、変更後の照射時間Tpを「Tp2」とした場合、他のショット領域についての照射時間Tpを補正するための補正係数Kpを、Kp=Tp1/Tp2により求める。このように補正係数Kpを求めることで、他のショット領域についての照射時間Tpを、例えばTp×Kpにより補正することができる。
【0065】
ここで、光源の劣化や外乱条件の変動を、変更前の照射時間Tp1と変更後の照射時間Tp2との比較によって検知することができる。例えば、各基板の特定の(例えば最初の)ショット領域へのインプリント処理時に、低照度光Lsを用いて上記の決定処理を行い、予備硬化光Lpの照射光量(照射時間Tp)を新たに決定する。そして、これまで設定されていた照射時間Tp(Tp1)と、新たに決定された照射時間Tp(Tp2)とを比較することで、当該変動を検知することができる。具体的には、Tp1とTp2との差分または比率が閾値以上である場合に、当該変動を検知したと判断することができる。このように当該変動を検知した場合、上述したように、補正係数Kp(=Tp1/Tp2)を求め、他のショット領域についての照射時間Tpを、例えばTp×Kpにより補正することができる。また、この例では、最初のショット領域のインプリント処理においても、粘性変化を緩やかにすることができるため、モールドMと基板Wとの位置合わせ精度を向上することができる。
【0066】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンが形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0067】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0068】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0069】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図11(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0070】
図11(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図11(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0071】
図11(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0072】
図11(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図11(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0073】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0074】
10:インプリントヘッド、20:基板ステージ、30:供給部、40:硬化部、41:予備硬化部、42:本硬化部、50:計測部、60:検出部、70:制御部、100:インプリント装置