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特許7591934座屈拘束ブレースの中間品及び充填材打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレースの中間品及び充填材打設方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021015241
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118601
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】川村 典久
(72)【発明者】
【氏名】岸原 洋也
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 潤一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118090(JP,A)
【文献】特開2000-257173(JP,A)
【文献】特開2008-002213(JP,A)
【文献】特開平11-172782(JP,A)
【文献】特開平04-368531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/30
E04C 3/00 - 3/46
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、
前記鋼管の内部に配置され、両端は前記鋼管の外部に位置する芯材と、
前記鋼管の両端部における開口部の一部を閉塞する本設蓋と、
前記鋼管の一方の前記開口部において、前記本設蓋によって閉塞されていない部位を閉塞し、前記鋼管内へ充填材を注入する注入管を有する入口仮設蓋と、
前記鋼管の他方の前記開口部において、前記本設蓋によって閉塞されていない部位を閉塞し、出口管を有する出口仮設蓋と、
を備え、
前記入口仮設蓋と前記注入管の一方の端部とを接続する入口接続部は、前記鋼管の中心軸に一致しない位置に設けられ、
前記出口仮設蓋と前記出口管の一方の端部とを接続する出口接続部は、前記鋼管を前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平としたとき、前記鋼管の中心軸より上側に位置するように設けられ
記出口管の他方の端部は、前記鋼管を前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平としたとき、前記鋼管の最上部より上側に位置するように設けられている、
座屈拘束ブレースの中間品。
【請求項2】
前記入口仮設蓋及び前記出口仮設蓋は、前記鋼管に離脱可能に固定されている、
請求項1に記載の座屈拘束ブレースの中間品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座屈拘束ブレースの中間品への前記充填材の打設方法であって、
前記鋼管を、前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平にする工程と、
前記注入管から前記鋼管内へ前記充填材を注入する工程と、
前記出口管から前記充填材の噴出を確認後に前記充填材の注入を終了する工程と、
を備えている、
充填材打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースの中間品及び充填材打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の補強材として、座屈拘束ブレースが用いられることがある。座屈拘束ブレースの製造工程において、ブレース芯材まわりに充填材を充填する。その際、ブレース芯材を斜めに配置した状態で充填材を充填する工程が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6525765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の工程ではブレース芯材を斜めにすることで、充填中の充填材を偏らせ、充填材の内部に空気が残留することを防ぐ。しかしながら、ブレース芯材を斜めに配置した状態を保つには特殊な治具が必要であることから生産性が低下する、ブレース芯材を斜めに配置したときの最上部まで充填材が満たされない、充填剤の密実性が不確実となった場合にブレース芯材の局部座屈が発生したりする、といった課題がある。
また、ブレース芯材を垂直にして充填材を充填することは、ブレース芯材が長尺の物である場合に垂直にできる箇所までブレース芯材を移動する必要があることから、生産性が低下することがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、少ない工程で充填剤を十分に充填することができる座屈拘束ブレースの中間品及び充填材打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る座屈拘束ブレースの中間品は、鋼管と、前記鋼管の内部に配置され、両端は前記鋼管の外部に位置する芯材と、前記鋼管の両端部における開口部の一部を閉塞する本設蓋と、前記鋼管の一方の前記開口部において、前記本設蓋によって閉塞されていない部位を閉塞し、前記鋼管内へ充填材を注入する注入管を有する入口仮設蓋と、前記鋼管の他方の前記開口部において、前記本設蓋によって閉塞されていない部位を閉塞し、出口管を有する出口仮設蓋と、を備え、前記入口仮設蓋と前記注入管の一方の端部とを接続する入口接続部は、前記鋼管の中心軸に一致しない位置に設けられ、前記出口仮設蓋と前記出口管の一方の端部とを接続する出口接続部は、前記鋼管を前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平としたとき、前記鋼管の中心軸より上側に位置するように設けられ、前記注入管の他方の端部にはバルブが設けられ、前記出口管の他方の端部は、前記鋼管を前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平としたとき、前記鋼管の最上部より上側に位置するように設けられている。
【0007】
この発明によれば、出口管の他方の端部は、鋼管を入口接続部が鋼管の中心軸より下側に位置するように水平としたとき、鋼管の最上部より上側に位置するように設けられている。
この状態で注入管から鋼管内に充填材を注入すると、鋼管内が充填材で満たされるまで、出口管から充填材が溢れることはない。つまり、鋼管を水平状態としたままで、充填材を鋼管内部が満たされるまで打設することができる。さらに、鋼管内が充填材で満たされたことを、出口管から充填材があふれ出たことで確認することができる。
【0008】
また、入口接続部が鋼管の中心軸より下側に位置している。このため、注入管から充填剤を注入するとき、鋼管の下方から充填材を注入することができる。よって、鋼管の上方から充填材を注入する場合と比較して、充填材と鋼管内の空気とが混ざり合う可能性を低くすることができる。つまり、打設後の充填材の中に空気が残留する可能性を低くすることができる。
よって、充填材の打設に要する工程を削減し、少ない工程で鋼管内に充填材を十分に打設することができる。
【0009】
また、前記入口仮設蓋及び前記出口仮設蓋は、前記鋼管に離脱可能に固定されていてもよい。
【0010】
この発明によれば、入口仮設蓋及び出口仮設蓋は、鋼管に離脱可能に固定されている。これにより、鋼管内に充填材が打設されて硬化した後、入口仮設蓋及び出口仮設蓋を鋼管から取り外し、それぞれ本設蓋に交換することができる。よって、充填材打設後に、注入管及び出口管を残すことなく座屈拘束ブレースを製造することができる。
【0011】
また、本発明に係る座屈拘束ブレースの中間品への充填材の打設方法は、前記鋼管を、前記入口接続部が前記鋼管の中心軸より下側に位置するように水平にする工程と、前記注入管から前記鋼管内へ前記充填材を注入する工程と、前記出口管から前記充填材の噴出を確認後に前記充填材の注入を終了する工程と、を備えている。
【0012】
この発明によれば、鋼管を水平にした状態で、充填材を注入する。つまり、鋼管を斜めにした状態及び鉛直にした状態で充填材を注入する場合と比較して、鋼管を保持する手間を削減することができる。また、充填材が出口管から噴出したことを確認してから充填材の注入を終了する。これにより、確実に鋼管内を充填材で満たすことができる。
よって、より少ない工程で、充填材を確実に打設することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少ない工程で充填剤を十分に充填することができる座屈拘束ブレースの中間品及び充填材打設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る座屈拘束ブレースの中間品を示す図である。
図2図1の平面図である。
図3図1に示すIII方向の側面図である。
図4図1に示すIV方向の側面図である。
図5図2に示すV-V直線の断面において、鋼管の内部に充填材を注入する工程を示す図である。
図6図5の工程において、鋼管の内部が充填材で満たされた状態を示す図である。
図7】本発明の一本実施形態に係る本設蓋と仮設蓋との関係を示す図である。
図8】本発明の一実施形態における、仮設蓋を本設蓋に交換する工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る座屈拘束ブレースの中間品100(以下、中間品100という)を説明する。
図1に示すように、中間品100は、鋼管10と、芯材20と、本設蓋30と、入口仮設蓋40と、出口仮設蓋50と、を備えている。なお、本実施形態における中間品100は、座屈拘束ブレースの製造途中の中間品である。中間品100の内部に充填材60を打設し、入口仮設蓋40と出口仮設蓋50とを、それぞれ本設蓋30に交換することで、座屈拘束ブレースが完成状態となる。なお、以下において、図1に示す中間品100の長手方向(紙面左右方向)を第1方向D1、図1における紙面上下方向を第2方向D2、図1における紙面前後方向(図2における紙面上下方向)を第3方向D3とする。これらの第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3は、互いに直交する。また、第2方向D2(図1における紙面上下方向)は、上下方向と一致する。
【0016】
また、図1に示す中間品100は、以下の(1)~(3)の条件を満たした姿勢である。すなわち、(1)鋼管10が四角柱状であるところ、鋼管10の側面の一つを下に向けること、(2)注入管42(後述する)が鋼管10の中心軸Cよりも下に位置し、かつ、出口管52(後述する)が中心軸Cよりも上に位置すること、(3)第1芯材21(後述する)の幅方向が、上下方向(第2方向D2)に沿うように設けられていること、の全ての条件を満たした姿勢とする。以下において、上述の三条件を満たした姿勢を、基準姿勢と呼称することがある。
【0017】
完成状態の座屈拘束ブレースは、例えば、建築物の補強に好適に用いられる。中間品100は柱状であり、小サイズ品は1.5~3m程度の物から、大サイズ品は9~10m以上のものがある。それらのサイズの中から、施工条件等に鑑みて適宜サイズを選択する。
鋼管10は、中間品100において外側に位置する部材である。本実施形態において、鋼管10は四角柱状である。鋼管10の内部には、芯材20を設けたり、充填材60を充填したりする(詳細は後述する)。
【0018】
芯材20は、鋼管10の内部に配置される。芯材20は、第1芯材21と、第2芯材22と、を備える。第1芯材21及び第2芯材22は、いずれも板状の部材で、これらを溶接することで芯材20を形成する。
図5または図6に示すように、第1芯材21は、鋼管10の内部を長手方向に貫通し、両端部は鋼管10の外側に位置している。第1芯材21における第2方向D2の寸法(幅寸法)は、第1方向D1において、両端付近が比較的大きく、中央部(特に、鋼管10内に位置している部位)が比較的小さい。
【0019】
第2芯材22は、第1方向D1において一方の端部のみ鋼管10内に位置し、他方の端部は鋼管10の外側に位置している。第2芯材22は、第3方向D3において、第1芯材21の両側に設けられる。このとき、図2に示すように、複数の第2芯材22によって中間品100の両端部に形成される形状は、図1に示す第1芯材21と同様となる。この状態で第1芯材21と第2芯材22を溶接することで、芯材20を形成する。
【0020】
このように形成された芯材20は、鋼管10の内部を長手方向に貫通し、両端は鋼管10の外部に位置する。図1及び図2に示すように、第1芯材21の両端部には、ボルト穴21Bが設けられている。第2芯材22には、それぞれボルト穴22Bが設けられている。これを用いて、座屈拘束ブレースを、建築物にボルト固定する。あるいは、座屈拘束ブレースを搬送する際にクレーンの吊り下げに用いてもよい。
【0021】
図3及び図4に示すように、本設蓋30は、鋼管10の両端部における開口部の一部を閉塞する板状の部材である。本実施形態において、本設蓋30は、図7に示すように、第1芯材21を境として、鋼管10の開口部の半分を閉塞する。図7では出口仮設蓋50(後述する)を例としているが、入口仮設蓋40(後述する)においても同様である。本設蓋30と鋼管10とは、溶接によって固定する方法が好適に用いられる。
【0022】
図3に示すように、入口仮設蓋40は、鋼管10の一方の開口部において、本設蓋30によって閉塞されていない部位を閉塞する部材である。入口仮設蓋40は、本体部41と、注入管42と、を備えている。本体部41は板状の部材であり、鋼管10の開口部を閉塞する。本体部41と鋼管10とは、溶接等によって離脱可能に仮固定されている。つまり、上述の本設蓋30と鋼管10とは断続溶接の他に連続溶接による固定が好適に用いられるのに対し、本体部41と鋼管10との溶接は断続溶接のみが好適に用いられる。入口仮設蓋40は、充填材60の打設作業(後述する)後に取り外され、本設蓋30と交換される。
【0023】
注入管42は、一方の端部が本体部41に接続された管である。以下において、本体部41と注入管42との接続部を、入口接続部43と呼ぶことがある。注入管42は、入口接続部43から第1方向D1に直線状に延びるように設けられる。本実施形態においては、図2及び図3に示すように、注入管42は90°の曲げ形状を有し、第3方向D3において、第1芯材21に対して反対の方向に延びている。
【0024】
入口接続部43は、鋼管10の中心軸Cに一致しない位置に設けられる。例えば、図1に示す基準姿勢としたとき、入口接続部43は、中心軸Cよりも下に位置するように設けられる。中心軸Cは、鋼管10の四角柱状の中心線であり、図1においては、第1方向D1と平行である。
【0025】
注入管42の他方の端部には、バルブ44の一方の端部が接続される。バルブ44の他方の端部には、注入ホース45が接続される。
バルブ44は、注入管42と注入ホース45との間に設けられる。注入ホース45は、一方の端部がバルブ44に接続され、他方の端部は不図示の充填材供給装置に接続されている。充填材供給装置は、注入ホース45を介して、充填材60を圧送する。この状態でバルブ44を開閉することで、注入ホース45から供給された充填材60を、注入管42へ搬送する。これにより、入口仮設蓋40は、鋼管10の開口部を閉塞した状態で、入口接続部43を介して、注入ホース45から供給された充填材60を鋼管10の内部へ注入する。
【0026】
注入管42と、バルブ44と、注入ホース45との接続には、例えば、ボルト締結によって着脱可能に取付ける方法が好適に用いられる。このため、注入管42の他方の端部及び注入ホース45のバルブ44に接続する端部には、おねじ部が設けられ、バルブ44の両端にはめねじ部が設けられていることが好ましい。
【0027】
図4に示すように、出口仮設蓋50は、鋼管10の他方の開口部において、本設蓋30によって閉塞されていない部位を閉塞する部材である。出口仮設蓋50は、本体部51と、出口管52と、を備えている。本体部51は板状の部材であり、鋼管10の開口部を閉塞する。本体部51と鋼管10とは、入口仮設蓋40の本体部41と同様に、例えば断続溶接によって離脱可能に仮固定されている。なお、出口仮設蓋50は、入口仮設蓋40と同様に、充填材60の打設作業後に取り外され、本設蓋30と交換される。
【0028】
出口管52は、一方の端部が本体部51に接続された管である。以下において、本体部51と出口管52との接続部を、出口接続部53と呼ぶことがある。出口管52は、出口接続部53から第1方向D1に直線状に延びるように設けられる。本実施形態においては、図1及び図4に示すように、出口管52は90°の曲げ形状を有し、第3方向D3において、第2芯材22に対して反対の方向に延びている。出口接続部53は、例えば、図1に示す基準姿勢としたとき、中心軸Cより上側に位置するように設けられる。
【0029】
図1に示すように、出口管52の他方の端部は、鋼管10を入口接続部43が鋼管10の中心軸Cより下側に位置するように水平としたとき、鋼管10の最上部より上側に位置するように設けられる。これにより、鋼管10の両端の開口部が閉塞された状態で、鋼管10の内部に入口接続部43を介して充填材60を注入するときの空気抜きの役割を担う。あるいは、鋼管10の内部が充填材60で満たされたとき、出口管52から充填材60があふれ出る。これを目視することで、充填材60の注入作業を終了する判断を行う(詳細は後述する)。
【0030】
充填材60は、中間品100において、鋼管10の内部に打設される部材である。充填材60は、鋼管10と、鋼管10の内部に配置された芯材20との間にある隙間を埋めることで、中間品100の強度を確保する役割を有する。充填材60には、例えば、モルタルが好適に用いられる。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る中間品100への充填材60の打設方法の工程を説明する。
図5に示すように、上述の構成を備えた中間品100を、出口管52の他方の端部を上側に向けて、長手方向に水平にする。この状態で、入口接続部43に、バルブ44と、注入ホース45とを接続する。
【0032】
次に、バルブ44を開き、注入ホース45から供給された充填材60を、注入管42を介して鋼管10内へ充填材60を注入する。ここで、上述のように、鋼管10の両端の開口部は、本設蓋30と、入口仮設蓋40と、出口仮設蓋50によって閉塞されている。そのため、図5に示すように、鋼管10内に充填材60を注入している途中の場合は、鋼管10の内部の空気は、出口管52から抜けていく。これにより、鋼管10の内部で空気が圧縮されて気圧が上昇し、充填材60の注入を妨げることを防ぐ。
【0033】
図6に示すように、鋼管10の内部が充填材60で満たされると、出口管52から充填材60が噴き出す。ここで、上述のように、充填材60を注入中の中間品100において、出口管52の他方の端部は、鋼管10の最上部よりも上側に位置している。これにより、鋼管10内が充填材60で満たされるまで、充填材60は出口管52から噴き出さない。このため、出口管52から充填材60の噴出を目視で確認後にバルブ44を閉じて充填材60の注入を終了することで、鋼管10を充填材60で満たすことができる。また、充填材供給装置によって充填材60を圧送する際、鋼管10は水平状態となっていることから、鋼管内部に大きな高低差が生じない。このため、充填材60を注入する際の圧力は、鋼管10を垂直とした状態と比較して小さくすることができる。
【0034】
上述の充填材60の打設作業が完了し、鋼管10内の充填材60が硬化した後、図8に示すように、入口仮設蓋40及び出口仮設蓋50を取り外す。そして、充填材60の表面を整形後、本設蓋30と交換する。図8では、出口仮設蓋50を例に挙げているが、入口仮設蓋40においても同様である。
この作業により、入口仮設蓋40に設けられた注入管42及び出口仮設蓋50に設けられた出口管52を取り外し、中間品100を完成状態とする。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る座屈拘束ブレースの中間品100によれば、出口管52の他方の端部は、鋼管10を入口接続部43が鋼管10の中心軸Cより下側に位置するように水平としたとき、鋼管10の最上部より上側に位置するように設けられている。
この状態で注入管42から鋼管10内に充填材60を注入すると、鋼管10内が充填材60で満たされるまで、出口管52から充填材60が溢れることはない。つまり、鋼管10を水平状態としたままで、充填材60を鋼管内部が満たされるまで打設することができる。さらに、鋼管10内が充填材60で満たされたことを、出口管52から充填材60があふれ出たことで確認することができる。
【0036】
また、入口接続部43が鋼管10の中心軸Cより下側に位置している。このため、注入管42から充填材60を注入するとき、鋼管10の下方から充填材60を注入することができる。よって、鋼管10の上方から充填材60を注入する場合と比較して、充填材60と鋼管10内の空気とが混ざり合う可能性を低くすることができる。つまり、打設後の充填材60の中に空気が残留する可能性を低くすることができる。
よって、充填材60の打設に要する工程を削減し、少ない工程で鋼管10内に充填材60を十分に打設することができる。
【0037】
また、入口仮設蓋40及び出口仮設蓋50は、鋼管10に離脱可能に固定されている。これにより、鋼管10内に充填材60が打設されて硬化した後、入口仮設蓋40及び出口仮設蓋50を鋼管10から取り外し、それぞれ本設蓋30に交換することができる。よって、充填材60打設後に、注入管42及び出口管52を残すことなく座屈拘束ブレースを製造することができる。
【0038】
また、鋼管10を水平にした状態で、充填材60を注入する。つまり、鋼管10を斜めにした状態及び鉛直にした状態で充填材60を注入する場合と比較して、鋼管10を保持する手間を削減することができる。また、充填材60が出口管52から噴出したことを確認してから充填材60の注入を終了する。これにより、確実に鋼管10内を充填材60で満たすことができる。
よって、より少ない工程で、充填材60を確実に打設することができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、充填材60の打設時には本設蓋30を設けず、鋼管10の開口部全体を入口仮設蓋40及び出口仮設蓋50としてもよい。
また、入口接続部43は、鋼管10を水平としたとき、中心軸Cよりも下に位置していなくてもよい。
また、注入管42とバルブ44とは、一体に形成されていてもよい。
また、出口接続部53は、鋼管10を水平としたとき、出口管52の他方の端部が鋼管10の最上部より上に位置していれば、鋼管10の中心軸Cよりも上に位置していなくてもよい。
また、鋼管10は四角柱状に限らず、例えば円柱状であってもよい。
また、本実施形態において、本設蓋30は第1芯材21を境として鋼管10の開口部の半分を閉塞すると説明したが、第2芯材22を境としてもよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 鋼管
20 芯材
30 本設蓋
40 入口仮設蓋
42 注入管
43 入口接続部
44 バルブ
50 出口仮設蓋
52 出口管
53 出口接続部
60 充填材
100 中間品
C 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8