(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ケーブル組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
(21)【出願番号】P 2021022572
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】戸田 健太郎
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-141930(JP,A)
【文献】特開2015-156353(JP,A)
【文献】特開2015-135742(JP,A)
【文献】特開2009-123451(JP,A)
【文献】特開2003-217712(JP,A)
【文献】特開2002-305049(JP,A)
【文献】特開2011-134613(JP,A)
【文献】特開2009-123459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、保持部材と、コンタクトとを備えるケーブル組立体であって、
前記保持部材は、前記ケーブルを保持しており、
前記コンタクトは、上下方向において前記保持部材の上に位置しており、
前記ケーブルは、導線を備えており、
前記導線は、被固定部を有しており、
前記保持部材は、所定面を有しており、
前記コンタクトは、対向面を有しており、
前記対向面は、前記上下方向において前記所定面と接触するか又は距離をあけて対向しており、
前記被固定部は、前記対向面に固定され接続されて
おり、
前記上下方向と直交する面における前記被固定部のサイズは、前記ケーブルが延びる方向と直交する面における前記導線のサイズよりも大きい
ケーブル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル組立体であって、
前記コンタクトには、突起が設けられており、
前記突起は、前記対向面から下方に突出しており、
前記被固定部は、前記突起に溶接されている
ケーブル組立体。
【請求項3】
ケーブルと、保持部材と、コンタクトとを備えるケーブル組立体であって、
前記保持部材は、前記ケーブルを保持しており、
前記コンタクトは、上下方向において前記保持部材の上に位置しており、
前記ケーブルは、導線を備えており、
前記導線は、被固定部を有しており、
前記保持部材は、所定面を有しており、
前記コンタクトは、対向面を有しており、
前記対向面は、前記上下方向において前記所定面と接触するか又は距離をあけて対向しており、
前記被固定部は、前記対向面に固定され接続されており、
前記コンタクトには、通過孔が形成されており、
前記通過孔は、前記対向面を前記上下方向に貫通しており、
前記導線の前記被固定部の前記上下方向と直交する水平面における位置は、前記通過孔の前記水平面における位置と重なっており、
前記被固定部は、前記対向面に半田付けされている
ケーブル組立体。
【請求項4】
請求項3記載のケーブル組立体であって、
前記上下方向と直交する面における前記被固定部のサイズは、前記ケーブルが延びる方向と直交する面における前記導線のサイズよりも大きい
ケーブル組立体。
【請求項5】
請求項1
から請求項4までのいずれかに記載のケーブル組立体であって、
前記コンタクトは、前記保持部材に固定されている
ケーブル組立体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のケーブル組立体であって、
前記ケーブルは、前記保持部材にインサート成型されている
ケーブル組立体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載のケーブル組立体であって、
前記ケーブルは、前記導線を覆う被覆を備えており、
前記対向面は、前記上下方向において前記被覆と接触している
ケーブル組立体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のケーブル組立体であって、
前記保持部材は、絶縁体からなる
ケーブル組立体。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載のケーブル組立体であって、
前記コンタクトは、金属板からなる
ケーブル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルと、ケーブルに接続されたコンタクトとを備えるケーブル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのケーブル組立体は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
図15及び
図16を参照すると、特許文献1には、端子(コンタクト)92とリッツ線(ケーブル)94とを備えるケーブル組立体90が開示されている。ケーブル94は、絶縁被覆された細い導線を撚り合わせて形成されている。ケーブル94の端部は、斜めに切断されており、これにより、切断面96が形成されている。導線の夫々は、切断面96において露出している。コンタクト92は、切断面96を覆う厚い半田ロウ98を介してケーブル94の導線に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のケーブル組立体によれば、半田ロウの量に応じてインピーダンス等の導電性能が変動する。例えば、高周波伝送特性がばらつくといった問題が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、導電性能の変動を抑制可能なケーブル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のケーブル組立体として、
ケーブルと、保持部材と、コンタクトとを備えるケーブル組立体であって、
前記保持部材は、前記ケーブルを保持しており、
前記コンタクトは、上下方向において前記保持部材の上に位置しており、
前記ケーブルは、導線を備えており、
前記導線は、被固定部を有しており、
前記保持部材は、所定面を有しており、
前記コンタクトは、対向面を有しており、
前記対向面は、前記上下方向において前記所定面と接触するか又は距離をあけて対向しており、
前記被固定部は、前記対向面に固定され接続されている
ケーブル組立体を提供する。
【0008】
また、本発明は、第2のケーブル組立体として、第1のケーブル組立体であって、
前記コンタクトは、前記保持部材に固定されている
ケーブル組立体を提供する。
【0009】
また、本発明は、第3のケーブル組立体として、第1又は第2のケーブル組立体であって、
前記ケーブルは、前記保持部材にインサート成型されている
ケーブル組立体を提供する。
【0010】
また、本発明は、第4のケーブル組立体として、第1から第3までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記上下方向と直交する面における前記被固定部のサイズは、前記ケーブルが延びる方向と直交する面における前記導線のサイズよりも大きい
ケーブル組立体を提供する。
【0011】
また、本発明は、第5のケーブル組立体として、第1から第4までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記コンタクトには、通過孔が形成されており、
前記通過孔は、前記対向面を前記上下方向に貫通しており、
前記導線の前記被固定部の前記上下方向と直交する水平面における位置は、前記通過孔の前記水平面における位置と重なっており、
前記被固定部は、前記対向面に半田付けされている
ケーブル組立体を提供する。
【0012】
また、本発明は、第6のケーブル組立体として、第1から第4までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記コンタクトには、突起が設けられており、
前記突起は、前記対向面から下方に突出しており、
前記被固定部は、前記突起に溶接されている
ケーブル組立体を提供する。
【0013】
また、本発明は、第7のケーブル組立体として、第1から第6までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記ケーブルは、前記導線を覆う被覆を備えており、
前記対向面は、前記上下方向において前記被覆と接触している
ケーブル組立体を提供する。
【0014】
また、本発明は、第8のケーブル組立体として、第1から第7までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記保持部材は、絶縁体からなる
ケーブル組立体を提供する。
【0015】
また、本発明は、第9のケーブル組立体として、第1から第8までのいずれかのケーブル組立体であって、
前記コンタクトは、金属板からなる
ケーブル組立体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケーブル組立体によれば、保持部材によって保持された導線の被固定部は、保持部材の所定面と接触又は対向するコンタクトの対向面に固定され接続されている。例えば、被固定部は、半田付けや抵抗溶接等の溶接によって、導電性能を実質的に変動させる部材を介することなく対向面に直接的に接続できる。即ち、本発明によれば、導電性能の変動を抑制可能なケーブル組立体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態によるケーブル組立体を示す斜視図である。保持部材の内部に埋め込まれたケーブルの被保持部の輪郭を破線で描画している。ケーブル組立体の一部(1点鎖線で囲んだ部分)を拡大して描画している。拡大図において、ケーブルの隠れた被固定部の輪郭を破線で描画している。
【
図2】
図1のケーブル組立体を示す側面図である。保持部材の内部に埋め込まれたケーブルの被保持部の輪郭及び隠れた導線の輪郭を破線で描画している。ケーブル組立体の一部(1点鎖線で囲んだ2つの部分)を拡大して描画している。拡大図において、保持部材の隠れた圧入穴の輪郭及び圧入穴に圧入されたコンタクトの被圧入部の輪郭を破線で描画している。
【
図3】
図1のケーブル組立体のコンタクトを示す斜視図である。
【
図7】
図1のケーブル組立体を作製する途中の第1中間体を示す斜視図である。第1中間体の一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
【
図8】
図1のケーブル組立体を作製する途中の第2中間体を示す斜視図である。第2中間体の一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
【
図9】
図1のケーブル組立体の第1の変形例を示す斜視図である。保持部材の内部に埋め込まれたケーブルの被保持部の輪郭を破線で描画している。
【
図10】
図1のケーブル組立体の第2の変形例を示す斜視図である。保持部材の内部に埋め込まれたケーブルの被保持部の輪郭及び被固定部の隠れた輪郭を破線で描画している。
【
図11】
図10のケーブル組立体を示す側面図である。保持部材の内部に埋め込まれたケーブルの被保持部の輪郭及び隠れた導線の輪郭を破線で描画している。
【
図12】
図10のケーブル組立体のコンタクトを示す斜視図である。
【
図13】
図3のコンタクトの変形例を示す斜視図である。
【
図15】特許文献1のケーブル組立体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施の形態によるケーブル組立体10は、2本のケーブル20と、絶縁体からなる保持部材40と、導電体からなる2つのコンタクト60とを備えている。コンタクト60は、保持部材40に搭載されており、ケーブル20に夫々接続されている。本実施の形態のケーブル組立体10は、上述した部材のみを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ケーブル組立体10は、上述した部材に加えて、別の部材を更に備えていてもよい。
【0019】
本実施の形態のケーブル組立体10は、様々な用途に使用できる。例えば、ケーブル組立体10は、後述するように、ケーブル20を相手側コネクタ(図示せず)の相手側コンタクト(図示せず)に夫々接続するための中継部品として使用できる。ケーブル組立体10をこのような中継部品として使用する場合、ケーブル組立体10は、相手側コネクタを収容するカバーを備えていてもよい。
【0020】
以下、本実施の形態のケーブル組立体10について説明する。
【0021】
図1を参照すると、本実施の形態のケーブル組立体10は、ケーブル20を2本のみ備えている。本実施の形態の2本のケーブル20は、作動信号を伝送するための1つのケーブル対20Pとして機能する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、2本のケーブル20は、互いに独立した信号を伝送してもよい。ケーブル組立体10は、ケーブル20を1本のみ備えていてもよいし、互いに独立した信号を伝送する3本以上のケーブル20を備えていてもよい。また、ケーブル組立体10は、2以上のケーブル対20Pを備えていてもよい。
【0022】
本実施の形態の2本のケーブル20は、互いに同じ構造を有している。より具体的には、ケーブル20の夫々は、銅等の優れた導電性金属からなる導線22と、絶縁体からなり導線22を覆う被覆24とを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ケーブル20の夫々は、導線22のみを備えていてもよい。導線22の夫々は、1本の金属線であってもよいし、複数の金属細線を撚り合わせて形成されていてもよい。ケーブル20の夫々は、導線22及び被覆24に加えて、被覆24を覆うシールドを備えていてもよい。また、2本のケーブル20は、互いに異なる構造を有していてもよい。
【0023】
図1及び
図2を参照すると、保持部材40は、ケーブル20を保持している。本実施の形態の保持部材40は、樹脂からなり、モールド成型されている。ケーブル20の夫々は、保持部材40にインサート成型されている。本実施の形態によれば、ケーブル20は、保持部材40によって強固に保持され、保持部材40に対して確実に位置決めされる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、保持部材40は、互いに別体に形成した2つの部材を組み合わせて形成してもよい。この場合、2本のケーブル20は、2つの部材の間に挟み込んで位置決めしてもよい。即ち、保持部材40は、2つの部材を備えた位置決め部材であってもよい。
【0024】
上述のように保持部材40に保持されたケーブル20の夫々は、被保持部32と、延長部34とを有している。被保持部32の夫々は、ケーブル20のうち、保持部材40に保持された部位である。延長部34の夫々は、ケーブル20のうち、保持部材40の外部に位置する部位である。本実施の形態の被保持部32の夫々は、保持部材40の内部に完全に埋め込まれている。
【0025】
本実施の形態の保持部材40は、2つの被保持部32を互いに絶縁している。従って、ケーブル20の夫々が導線22のみを備えている場合でも、2本の導線22を互いに短絡させることなく被保持部32を保持できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ケーブル20の数が1本である場合、保持部材40は、金属等の導電体から形成してもよい。
【0026】
本実施の形態の保持部材40は、全体として直方体形状を有している。保持部材40は、1つの所定面(上端面)42と、4つの側面46とを有している。
【0027】
本実施の形態の所定面42は、上下方向において保持部材40の上端を規定している。本実施の形態の上下方向は、Z方向である。本実施の形態において、「上方」は、+Z方向であり、「下方」は、-Z方向である。本実施の形態の所定面42は、上下方向と直交する水平面(XY平面)に沿って延びる平面である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、所定面42は、上下方向と斜交する平面であってもよいし、概ね水平面に沿って延びる曲面であってもよい。
【0028】
4つの側面46のうちの2つ(第1側面46)は、上下方向と直交する横方向において互いに反対側に位置している。本実施の形態の横方向は、Y方向である。2つの第1側面46は、横方向と直交する第1垂直面(XZ平面)に沿って互いに平行に延びている。4つの側面46のうちの他の2つ(第2側面46)は、上下方向及び横方向の双方と直交する前後方向において互いに反対側に位置している。本実施の形態の前後方向は、X方向である。本実施の形態において、「前方」は、+X方向であり、「後方」は、-X方向である。2つの第2側面46は、前後方向と直交する第2垂直面(YZ平面)に沿って互いに平行に延びている。
【0029】
本実施の形態の保持部材40は、1つの所定側面48を有している。本実施の形態の所定側面48は、側面46のうちの1つであり、保持部材40の後面である。ケーブル20の夫々の被保持部32は、上下方向と斜交する所定方向に沿って、所定側面48から所定面42まで直線状に延びている。ケーブル20の夫々の延長部34は、所定側面48から保持部材40の外部に引き出されて後方に延びており、電子機器(図示せず)に接続されている。
【0030】
図1を参照すると、ケーブル20の夫々の被保持部32は、所定面42において保持部材40から露出しており、これにより、被固定部38が形成されている。本実施の形態の被固定部38の夫々は、導線22の端面である。即ち、導線22の夫々は、被固定部38を有している。本実施の形態の被固定部38の夫々は、水平面と平行な平面である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、被固定部38の夫々は、水平面と僅かに斜交する平面であってもよい。
【0031】
本実施の形態の2本のケーブル20は、横方向に並んでいる。2つの被保持部32は、保持部材40によって互いに同様に保持されており、2つの延長部34は、互いに同様に延びている。2つの被固定部38は、互いに同じ形状を有しており、横方向に並んでいる。また、2つのコンタクト60は、被固定部38に夫々対応して設けられており、横方向に並んでいる。2つのコンタクト60は、互いに同じ構造を有している。即ち、本実施の形態のケーブル組立体10は、1つのコンタクト60と1つの被固定部38とからなるセットを2組備えている。2組のセットは、互いに同じ構造を有しており、僅かに距離をあけて横方向に並んでいる。
【0032】
本実施の形態のコンタクト60の夫々は、独立した接続部材である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コンタクト60の夫々は、様々な部材から形成されたコネクタ(図示せず)の一部であってもよい。この場合、コンタクト60の夫々は、コネクタのハウジング(図示せず)に保持されていてもよい。
【0033】
本実施の形態の保持部材40は、上下に厚い直方体形状を有している。但し、本発明は、これに限られない。保持部材40が所定面42を有している限り、保持部材40の形状は、特に限定されない。例えば、保持部材40は、上下に薄い平板形状を有していてもよく、コンタクト60に夫々接続された多数のケーブル20を保持していてもよい。このような平板形状の保持部材40を備えたケーブル組立体10は、HDMI(登録商標:High-Definition Multimedia Interface)コネクタやUSB(Universal Serial Bus) Type-Cコネクタ等のコネクタ(図示せず)をケーブル20に接続するための中継部品として使用してもよい。また、中継部品であるケーブル組立体10は、コネクタに固定されてハーネスを形成してもよい。
【0034】
以下、本実施の形態の1つのコンタクト60及び対応する被固定部38からなる1組のセットについて説明する。以下の説明は、各セットについて適用可能である。
【0035】
図3から
図6までを参照すると、本実施の形態のコンタクト60は、1枚の金属板からなる。詳しくは、コンタクト60は、1枚の金属板を曲げ加工して形成されている。即ち、コンタクト60は、曲げを有する1枚の金属板である。本実施の形態のコンタクト60は、本体部62と、対向面72と、2つの被圧入部64と、1つの被圧入部66とを有している。また、本実施の形態のコンタクト60には、通過孔74が形成されている。
【0036】
本実施の形態の本体部62は、水平面に沿って延びる平板形状を有している。本体部62は、水平面において矩形形状を有しており、前後方向に長く延びている。但し、本発明は、これに限られず、本体部62の形状は、特に限定されない。
【0037】
図3、
図4及び
図6を参照すると、対向面72は、本体部62の下面である。本実施の形態の対向面72は、水平面に沿って延びる平面である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、対向面72には、凹凸が形成されていてもよい。
図3から
図5までを参照すると、通過孔74は、本体部62に形成されている。通過孔74は、本体部62を上下方向に貫通する孔である。即ち、通過孔74は、対向面72を上下方向に貫通している。
【0038】
図3から
図6までを参照すると、被圧入部64の夫々は、本体部62の後端近傍に位置している。また、2つの被圧入部64は、本体部62の横方向における両側に夫々位置している。被圧入部64の夫々は、本体部62から横方向外側に張り出した後、下方に延びている。被圧入部64の夫々の下端近傍には圧入突起が設けられている。一方、被圧入部66は、本体部62の前端に位置している。被圧入部66は、本体部62から前方に張り出した後、下方に延びている。被圧入部66の下端近傍には圧入突起が設けられている。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、コンタクト60は、上下方向において保持部材40の上に位置している。本実施の形態のコンタクト60は、保持部材40に固定されている。詳しくは、
図7及び
図8を参照すると、保持部材40には、コンタクト60の夫々に対応して、2つの圧入穴52と、1つの圧入穴54とが形成されている。即ち、保持部材40には、4つの圧入穴52と、2つの圧入穴54とが形成されている。
図2を参照すると、コンタクト60の被圧入部64は、圧入穴52に夫々圧入されており、コンタクト60の被圧入部66は、圧入穴54に圧入されている。
【0040】
上述のように、本実施の形態のコンタクト60は、保持部材40に部分的に圧入されて固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コンタクト60は、ネジ(図示せず)や接着剤(図示せず)によって保持部材40に固定されていてもよい。
【0041】
保持部材40に固定されたコンタクト60の対向面72は、上下方向において保持部材40の所定面42と対向している。特に、本実施の形態の対向面72は、上下方向において所定面42と距離をあけずに対向している。換言すれば、対向面72は、上下方向において所定面42と接触している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、対向面72は、上下方向において所定面42と距離をあけて対向していてもよい。即ち、対向面72は、上下方向において所定面42と接触するか又は距離をあけて対向していればよい。
【0042】
図1を参照すると、導線22の被固定部38は、コンタクト60の対向面72に固定され接続されている。詳しくは、本実施の形態のコンタクト60は、通過孔74が被固定部38の真上に位置するようにして、保持部材40の所定面42に配置されている。即ち、導線22の被固定部38の水平面における位置は、通過孔74の水平面における位置と重なっている。このように配置された通過孔74には、半田(図示せず)が注入されている。本実施の形態の被固定部38は、通過孔74を埋めるように注入された半田によって対向面72に固定され接続されている。ケーブル組立体10を上下方向に沿って上方から見ると、被固定部38を覆う半田(図示せず)を視認できる。
【0043】
上述したように、本実施の形態の被固定部38は、対向面72に半田付けされている。但し、本発明は、これに限られず、被固定部38を対向面72に固定する方法は、特に限定されない。例えば、被固定部38は、抵抗溶接及びレーザー溶接等の溶接によって対向面72に固定され接続されていてもよい。この場合、コンタクト60に通過孔74を形成する必要はない。
【0044】
より具体的には、ケーブル組立体10は、コンタクト60に代えて、
図13及び
図14に示すコンタクト60Cを備えていてもよい。
図13及び
図14を
図4と比較すると、コンタクト60Cは、コンタクト60の本体部62と異なる本体部62Cを有している。本体部62Cは、通過孔74に代えて突起68Cを有している。即ち、コンタクト60Cは、孔のない対向面72Cを有しており、コンタクト60Cには、突起68Cが設けられている。突起68Cは、対向面72Cから下方に突出している。上述した相違点を除き、コンタクト60Cは、コンタクト60と同じ構造を有している。
【0045】
図1を
図13と併せて参照すると、コンタクト60に代えてコンタクト60Cを設ける場合、突起68Cを導線22の被固定部38に押しつけつつ抵抗溶接する。即ち、ケーブル組立体10にコンタクト60Cが設けられている場合、導線22の被固定部38は、コンタクト60Cを保持部材40に固定した後、突起68Cに溶接されている。
【0046】
以上の説明を纏めると、本実施の形態のケーブル組立体10によれば、保持部材40によって保持された導線22の被固定部38は、保持部材40の所定面42と接触又は対向するコンタクト60の対向面72に固定され接続されている。例えば、被固定部38は、半田付けや抵抗溶接等の溶接によって、導電性能を実質的に変動させる部材を介することなく対向面72に直接的に接続できる。即ち、本実施の形態によれば、導電性能の変動を抑制可能なケーブル組立体10を提供できる。
【0047】
図2を参照すると、本実施の形態のコンタクト60は、保持部材40に固定されて、導線22の被固定部38に対して確実に位置決めされた後に、被固定部38に固定されていている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コンタクト60は、保持部材40に固定することなく、被固定部38に固定されていてもよい。
【0048】
図1を参照すると、保持部材40に固定されたコンタクト60は、相手側コネクタ(図示せず)の相手側コンタクト(図示せず)と接触可能である。例えば、相手側コンタクトは、上方からコンタクト60に押し付けてもよい。また、バネ部を有する相手側コンタクトを、所定面42に沿って移動して、コンタクト60の上面と接触させてもよい。
【0049】
コンタクト60は、所謂ソケットであってもよい。より具体的には、コンタクト60は、導線22の被固定部38に固定される対向面72に加えて、相手側コンタクト(図示せず)を受容して相手側コンタクトと接触する受容部を有していてもよい。
【0050】
ケーブル20の導線22は、アルミニウム電線であってもよい。一般的に、アルミニウム電線は、大気中に露出すると水滴の付着によって電蝕し易い。一方、本実施の形態の導線22は、被固定部38を除いて外部に露出しない。加えて、被固定部38は、コンタクト60及び半田(図示せず)によって殆ど完全に覆われる。本実施の形態によれば、水滴の付着に起因する電蝕を防止できる。
【0051】
図1、
図7及び
図8を参照すると、本実施の形態のケーブル組立体10は、ケーブル保持工程、ケーブル加工工程及びコンタクト取付工程の3つの工程を経由して作製される。以下、各工程の一例について説明する。
【0052】
図7を参照すると、ケーブル保持工程において、金型(図示せず)を使用して樹脂から保持部材40を成型する。このとき、ケーブル20の夫々の両端部をクランプ部材(図示せず)によって保持しつつ、ケーブル20をインサート成型する。このとき、金型を使用して圧入穴52,54(
図8参照)を形成する。
【0053】
ケーブル保持工程の結果、第1中間体12が形成される。第1中間体12の保持部材40は、上端面44を有している。上端面44は、水平面と平行に延びる平面であり、第1中間体12における保持部材40の上端を規定している。また、第1中間体12において、ケーブル20の夫々は、1つの被保持部32と、2つの延長部34とを有している。ケーブル20の夫々において、延長部34のうちの1つは、所定側面48から後方に延びており、延長部34のうちの他の1つは、上端面44から上方及び前方に延びている。
【0054】
図8を
図7と併せて参照すると、ケーブル加工工程において、上端面44を含む保持部材40の上端部を水平面に沿って削りつつ、上端面44から上方及び前方に延びる延長部34を切断する。この結果、第2中間体14が形成される。上端面44を削った結果、第2中間体14には、所定面42が形成される。また、延長部34を切断した結果、導線22の被固定部38が形成される。このように形成された被固定部38は、所定面42と面一である。また、被固定部38を囲む被覆24も、所定面42と面一である。
【0055】
図1を
図8と併せて参照すると、コンタクト取付工程において、コンタクト60を上方から所定面42に取り付ける。詳しくは、コンタクト60の夫々の被圧入部64,66を、対応する圧入穴52,54に夫々圧入する。次に、コンタクト60の夫々を、半田付けや溶接等の方法で、対応する導線22の被固定部38に固定する。
【0056】
本実施の形態によれば、ケーブル20の端部の被覆24を正確に剥ぎとるといった手間のかかる従来の工程を行うことなく、導線22をコンタクト60に接続できる。加えて、平面状の被固定部38を平面状の所定面42に接続できるため、コンタクト取付工程を容易に行える。
【0057】
上述した製造方法は、必要に応じて様々に変形可能である。例えば、ケーブル加工工程において、保持部材40を削ることなく、所定面42から上方及び前方に延びる延長部34(
図7参照)のみを切断してもよい。また、圧入穴52,54は、ケーブル加工工程の終了後に形成してもよい。
【0058】
図1を参照すると、前述したように、本実施の形態の被保持部32は、上下方向と斜交する所定方向に沿って、所定側面48から所定面42まで直線状に延びている。
図1、
図7及び
図8を参照すると、この構造によれば、所定面42から延びる延長部34(
図7参照)は、被保持部32が延びる所定方向に対して斜めに切断される。この結果、水平面における導線22の被固定部38のサイズは、所定方向と直交する
面における導線22のサイズよりも大きい。
【0059】
本実施の形態によれば、被固定部38のサイズを所定方向と直交する面における導線22のサイズよりも大きくできるため、コンタクト60の対向面72を被固定部38に容易かつ確実に固定できる。但し、本発明は、これに限られない。水平面における被固定部38のサイズを、ケーブル20が延びる方向と直交する面における導線22のサイズ(以下、「導線22の断面積」という。)よりも大きくできる限り、被保持部32が延びる方向は特に限定されない。例えば、被保持部32は、部分的に前後方向と平行に延びていてもよい。また、導線22の断面積が十分に大きい場合、被保持部32は、保持部材40の下面から所定面42まで上下方向に沿って直線状に延びていてもよい。
【0060】
図1を参照すると、本実施の形態の被固定部38の水平面におけるサイズは、水平面における通過孔74のサイズよりも大きい。一方、被固定部38は、通過孔74の下に位置する部位を除いて、対向面72によって覆われている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、被固定部38は、水平面において部分的に対向面72の外側に位置していてもよい。但し、導線22の露出面積を小さくするという観点から、本実施の形態が好ましい。
【0061】
図8を参照すると、ケーブル加工工程が終了したとき、導線22の被固定部38、及び、被固定部38を囲む被覆24の上下方向における位置は、所定面42の上下方向における位置と一致している。
図2を参照すると、この結果、所定面42に取り付けたコンタクト60の対向面72は、上下方向において被覆24と接触している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、被覆24は、時間の経過とともに、下方に収縮してもよいし、上方に膨張してもよい。被覆24が下方に収縮したとき、被覆24の上端は、所定面42及び対向面72の下方に位置していてもよい。一方、被覆24が上方に膨張したとき、被覆24の上端は、対向面72に押し付けられていてもよい。
【0062】
本実施の形態のケーブル組立体10は、既に説明した変形例に加えて、更に様々に変形可能である。以下、ケーブル組立体10の2つの変形例について説明する。以下の変形例の夫々は、既に説明した実施の形態と同様に様々に変形可能である。
【0063】
図9を
図1と比較すると、第1の変形例のケーブル組立体10Aは、ケーブル組立体10と同じ2本のケーブル20及び2つのコンタクト60と、ケーブル組立体10と異なる保持部材40Aとを備えている。保持部材40Aは、所定面42に代えて、所定面42Aと、上端面44Aとを有している。この相違点を除き、保持部材40Aは、保持部材40と同じ構造を有している。ケーブル組立体10Aは、ケーブル組立体10と同様な製造方法で作製できる。
【0064】
図9を参照すると、上端面44Aは、保持部材40Aの上端を規定している。上端面44Aには、凹部43Aが形成されている。凹部43Aは、上端面44Aから下方に凹んだ凹みである。凹部43Aは、一定の幅(前後方向におけるサイズ)を有しており、横方向において保持部材40A全体に亘って延びている。凹部43Aの幅は、コンタクト60の前後方向におけるサイズと同じである。このような凹部43Aは、前述したケーブル加工工程において上端面44Aを部分的に削ることで形成できる。本変形例の所定面42Aは、凹部43Aの下面である。即ち、所定面42Aは、上端面44Aの下方に位置している。凹部43Aの高さ(上下方向におけるサイズ)は、コンタクト60の夫々における本体部62の厚さ(上下方向におけるサイズ)と同じである。
【0065】
コンタクト60は、保持部材40Aの上に位置している。本変形例のコンタクト60は、保持部材40Aの凹部43Aに受容されている。コンタクト60の対向面72(
図4参照)は、上下方向において保持部材40Aの所定面42Aと接触するか又は距離をあけて対向している。導線22の被固定部38は、対向面72に固定され接続されている。本変形例によれば、コンタクト60の上面の上下方向における位置を、上端面44Aの上下方向における位置と一致させることができる。加えて、コンタクト60の上面を、上端面44Aに殆ど隙間なく繋がるように配置できる。
【0066】
本変形例によれば、バネ部を有する相手側コンタクト(図示せず)を、上端面44Aに沿ってコンタクト60の上面までスムーズに移動できる。また、本変形例によれば、コンタクト60を、凹部43Aの2つの壁面に部分的に圧入でき、これにより、コンタクト60を、保持部材40Aに対してより強固に固定できる。一方、本変形例のコンタクト60は、被圧入部64,66を設けることなく、凹部43Aの2つの壁面によって挟み込んでもよい。換言すれば、本変形例によるコンタクト60は、曲げのない1枚の金属板であってもよい。この場合、コンタクト60の製造工数を削減できる。
【0067】
図10及び
図11を
図1と比較すると、第2の変形例のケーブル組立体10Bは、ケーブル組立体10と異なる保持部材40B及び2つのコンタクト60Bを備えている。一方、ケーブル組立体10Bは、ケーブル組立体10と同じ2本のケーブル20を備えている。但し、本変形例のケーブル20の夫々には、ケーブル組立体10と異なる加工が施されている。より具体的には、本変形例のケーブル20の夫々は、ケーブル組立体10のケーブル20と異なる被保持部32B、2つの延長部34B及び被固定部38Bを有している。ケーブル組立体10Bは、ケーブル組立体10と同様な製造方法で作製できる。
【0068】
保持部材40Bは、所定面(上端面)42Bを有している。所定面42Bは、所定面42と同様に、水平面と平行に延びる平面であり、保持部材40Bの上端を規定している。一方、所定面42Bにおけるケーブル20の導線22の露出部(即ち、被固定部38B)の形状及びサイズは、被固定部38と異なっている。また、保持部材40Bは、2つの所定側面48を有している。所定側面48のうちの一方は、保持部材40Bの後面である。所定側面48のうちの他方は、保持部材40Bの前面である。上述の相違点を除き、保持部材40Bは、保持部材40と同様な構造を有している。
【0069】
本変形例のケーブル20の被保持部32Bは、上下方向と斜交する所定方向に沿って、前面である所定側面48から所定面42Bまで直線状に延びている。その後、被保持部32Bは、前後方向に沿って前方に延びている。その後、被保持部32Bは、上下方向と斜交する方向に沿って、後面である所定側面48まで直線状に延びている。本変形例のケーブル20の延長部34Bのうちの一方は、後面である所定側面48から保持部材40Bの外部に引き出されて後方に延びている。延長部34Bのうちの他方は、前面である所定側面48から保持部材40Bの外部に引き出されて前方に延びている。
【0070】
本変形例のケーブル20の被固定部38Bは、被保持部32Bのうちの前後方向に沿って延びる部位を、前述したケーブル加工工程において水平面に沿って部分的に切断することで形成されている。本変形例によれば、被固定部38Bのサイズを更に大きくできる。
【0071】
図12を
図3と比較すると、コンタクト60Bは、コンタクト60と異なる本体部62B及び対向面72Bを有している。また、コンタクト60Bには、コンタクト60と異なる通過孔74Bが形成されている。本体部62Bの前後方向におけるサイズは、本体部62の前後方向におけるサイズよりも大きい。従って、対向面72Bの前後方向におけるサイズは、対向面72の前後方向におけるサイズよりも大きい。また、通過孔74Bの前後方向におけるサイズは、通過孔74の前後方向におけるサイズよりも大きい。上述の相違点を除き、コンタクト60Bは、コンタクト60と同様な構造を有している。即ち、コンタクト60Bは、コンタクト60と同じ2つの被圧入部64と、1つの被圧入部66とを有している。
【0072】
図10及び
図11を参照すると、コンタクト60Bは、保持部材40Bの上に位置している。コンタクト60Bの対向面72Bは、上下方向において保持部材40Bの所定面42Bと接触するか又は距離をあけて対向している。導線22の被固定部38Bは、対向面72Bに固定され接続されている。本変形例によれば、2つの電子機器(図示せず)を互いに接続するケーブル20の中間部をコンタクト60Bに接続できる。
【0073】
図12に示されるように、コンタクト60Bの通過孔74Bは、水平面において長円形状を有しており、大きなサイズを有している。
図10を
図12と併せて参照すると、本変形例の導線22の被固定部38Bは、大きな通過孔74Bに注入された半田によって、コンタクト60Bの対向面72Bに強固に固定され接続されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コンタクト60Bには、通過孔74Bに代えて、複数の円形状の通過孔(図示せず)が形成されていてもよい。また、コンタクト60Bに通過孔74Bを形成せず、レーザー溶接等の溶接によって被固定部38Bを対向面72Bに固定し接続してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10,10A,10B ケーブル組立体
12 第1中間体
14 第2中間体
20 ケーブル
20P ケーブル対
22 導線
24 被覆
32,32B 被保持部
34,34B 延長部
38,38B 被固定部
40,40A,40B 保持部材
42,42B 所定面(上端面)
42A 所定面
43A 凹部
44,44A 上端面
46 側面
48 所定側面
52,54 圧入穴
60,60B,60C コンタクト
62,62B,62C 本体部
64,66 被圧入部
68C 突起
72,72B,72C 対向面
74,74B 通過孔