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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両用ドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20241122BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20241122BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60J5/04 H
B60J5/06 A
B60R16/02 630Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037736
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2021155031
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】16/832,545
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 陽蔵
(72)【発明者】
【氏名】石橋 丈弘
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337619(JP,A)
【文献】特開2019-027059(JP,A)
【文献】特開2005-349972(JP,A)
【文献】特開2005-088813(JP,A)
【文献】特開2006-273296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 5/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部を有する第1のスライドドアおよび第2のスライドドアと、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる車体前後方向を向く内側壁の側壁に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチと、を備えたことを特徴とする車両用ドア装置。
【請求項2】
前記第1のスライドドア側の位置と前記第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ向かい合わせに設けられた第1の座席および第2の座席を備え、
前記ドア開閉スイッチは、
前記第1座席および前記第2の座席に着座した乗員に対峙し、かつ前記乗員から操作可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア装置。
【請求項3】
車両の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部を有する第1のスライドドアおよび第2のスライドドアと、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる側に位置する内側壁に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチと、を備え、
前記第1のスライドドア側の位置と前記第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ向かい合わせに設けられた第1の座席および第2の座席を備え、
前記ドア開閉スイッチは、
前記第1座席および前記第2の座席に着座した乗員に対峙し、かつ前記乗員から操作可能な位置に設けられ、
前記ドア開閉スイッチは、前記乗員の頭部に対応する位置に設けられていることを特徴とする車両用ドア装置。
【請求項4】
車両の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部を有する第1のスライドドアおよび第2のスライドドアと、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる側に位置する内側壁に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチと、を備え、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチを備え、
前記走行スタートスイッチは、
前記開位置に前記各スライドドアが開かれた状態において隠れる位置に配置されることを特徴とする車両用ドア装置。
【請求項5】
前記ドア開閉スイッチは、
前記開位置に前記各スライドドアが開かれた状態において、露出された位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドア装置。
【請求項6】
車両の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部を有する第1のスライドドアおよび第2のスライドドアと、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる側に位置する内側壁に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチと、を備え、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチを備え、
前記走行スタートスイッチは、
前記開口部を開く方向へ前記各スライドドアがスライド移動する際に、前記ドア開閉スイッチよりも先に隠れる位置に配置されていることを特徴とする車両用ドア装置
【請求項7】
車両の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部を有する第1のスライドドアおよび第2のスライドドアと、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる側に位置する内側壁に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチと、を備え、
前記第1のスライドドア側の位置と前記第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ向かい合わせに設けられた第1の座席および第2の座席と、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチと、を備え、
前記ドア開閉スイッチは、前記走行スタートスイッチよりも前記各座席の着座位置から離れた位置に設けられていることを特徴とする車両用ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドア装置のなかには、車両の開口部にフロントドア(第1のドア)とリヤドア(第2のドア)とが観音開きに支持され、観音開きのドアを自動的に開閉するドア開閉スイッチが車両の運転席と、車両の外側部とに設けられたものがある。このドア装置によれば、車両の運転席や車両の外部からドア開閉スイッチを操作することにより、観音開きのドアを自動的に開閉できる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、ドア開閉スイッチの操作性の観点から、例えば、ドア開閉スイッチを第1のドアや第2のドアに設けることが考えられる。これにより、各ドア側の座席に着座した乗員がドア開閉スイッチを操作してドアを開閉させることが可能になる。
【0003】
しかし、ドア開閉スイッチを第1のドアや第2のドアに設けた場合、座席に着座した乗員の身体がドア開閉スイッチに不用意に触れて、スイッチを誤操作させるおそれがある。
ドアに設けられたスイッチの誤操作を防止するものとして、例えば、スイッチの近傍にエアバッグを展開させる装置が知られている。この装置によれば、例えば、衝突時にスイッチの近傍にエアバッグを展開させることにより、展開させたエアバッグで乗員の身体がスイッチに触れないようにでき、スイッチの誤操作を防止できる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-278447号公報
【文献】特開2019-142285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の誤操作を防止する装置は、エアバッグを展開させる構成を必要とする。このため、誤操作防止装置の構成が複雑になり、そのことがコストを抑える妨げになっている。
【0006】
本発明は、座席に着座した乗員がスイッチを操作しやすくでき、簡単な構成でスイッチの誤操作を防止できる車両用ドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る車両用ドア装置は、車両(例えば、実施形態の車両10)の開口部(例えば、実施形態の開口部34)を閉じる閉位置(例えば、実施形態の閉位置P1)と、前記開口部を開く開位置(例えば、実施形態の開位置P2)との間でスライド移動可能に設けられ、前記開口部を閉じた状態において突き合わされるドア枠部(例えば、実施形態の第1前枠部65、第1後枠部95)を有する第1のスライドドア(例えば、実施形態の前スライドドア21)および第2のスライドドア(例えば、実施形態の後スライドドア22)と、前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアの各ドア枠部のうち、各スライドドアが開かれる側に位置する内側壁(例えば、実施形態の第1前側壁82、第1後側壁102)に設けられて、前記各スライドドアを開閉するドア開閉スイッチ(例えば、実施形態の前ドア開閉スイッチ23、後ドア開閉スイッチ24)と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアのドア枠部のうち内側壁にドア開閉スイッチを設けた。ここで、例えば、第1のスライドドア側の位置と第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ第1の座席および第2の座席が向かい合わせに設けられている場合、各座席に向けてドア枠部の内側壁が配置されている。よって、各内側壁にドア開閉スイッチを設けることにより、各ドア開閉スイッチを第1の座席および第2の座席に向けて配置できる。これにより、第1の座席や第2の座席に着座した乗員がドア開閉スイッチを操作しやすくできる。
【0009】
また、ドア枠部の内側壁にドア開閉スイッチを設けることにより、ドア開閉スイッチをドア枠部のうちドア開閉方向に沿った頂壁から車室側に突出させないようにできる。頂壁は、ドア枠部のうち車室側に最も突出した壁部である。よって、ドア開閉スイッチを頂壁から車室側に突出させないようにすることにより、座席に着座した乗員の身体や手が不用意にドア枠部に触れ難くすることができる。これにより、ドア枠部の内側壁にドア開閉スイッチを設ける簡単な構成で、ドア開閉スイッチの誤操作を防止できる。
【0010】
(2)前記第1のスライドドア側の位置と前記第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ向かい合わせに設けられた第1の座席(例えば、実施形態の前座席12)および第2の座席(例えば、実施形態の後座席13)を備え、前記ドア開閉スイッチは、前記第1の座席および前記第2の座席に着座した乗員(例えば、実施形態の乗員15,16)に対峙し、かつ前記乗員から操作可能な位置に設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1のスライドドア側の位置と第2のスライドドア側の位置とに、第1の座席および第2の座席が向かい合わせに設けられることにより、各座席をドア枠部の内側壁に向けて配置できる。よって、内側壁のドア開閉スイッチを第1の座席および第2の座席に着座した成人(乗員)に対峙させることができる。さらに、ドア開閉スイッチを成人(乗員)から操作可能な位置に設けることにより、第1の座席や第2の座席に着座した乗員がドア開閉スイッチを操作しやすくできる。
【0012】
(3)前記ドア開閉スイッチは、前記乗員の頭部に対応する位置に設けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ドア開閉スイッチを乗員の頭部に対応する位置に設けることにより、ドア開閉スイッチをある程度高い位置に配置できる。これにより、乗員の身体や手が不用意にドア開閉スイッチに触れ難くでき、ドア開閉スイッチの誤操作を一層良好に防止できる。
また、ドア開閉スイッチをある程度高い位置に配置することにより、例えば、子供などの不用意な操作を防止できる。
【0014】
(4)前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチ(例えば、実施形態の前走行スタートスイッチ25、後走行スタートスイッチ26)を備え、前記走行スタートスイッチは、前記開位置に前記各スライドドアが開かれた状態において隠れる位置に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを開位置に開いた状態において、走行スタートスイッチを隠れる位置に配置した。これにより、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを開いた状態において、例えば、乗員の身体や手が走行スタートスイッチに触れないようにでき、走行スタートスイッチの誤操作を防止できる。
【0016】
(5)前記ドア開閉スイッチは、前記開位置に前記各スライドドアが開かれた状態において、露出された位置に配置されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを開位置に開いた状態において、ドア開閉スイッチは、露出された位置(隠れない位置)に配置されている。これにより、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを開位置に開いた状態において、ドア開閉スイッチを操作可能とでき、各スライドドアを閉じることができる。
【0018】
(6)前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチ(例えば、実施形態の前走行スタートスイッチ25、後走行スタートスイッチ26)を備え、前記走行スタートスイッチは、前記開口部を開く方向へ前記各スライドドアがスライド移動する際に、前記ドア開閉スイッチよりも先に隠れる位置に配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを、開口部を開く方向へスライド移動させる際に、走行スタートスイッチをドア開閉スイッチよりも先に隠れる位置に配置した。よって、各スライドドアを開いているときに、走行スタートスイッチを隠すことができる。これにより、各スライドドアひらいているときに、走行スタートスイッチを操作して車両を走行させることを防止できる。
【0020】
(7)前記第1のスライドドア側の位置と前記第2のスライドドア側の位置とに、それぞれ向かい合わせに設けられた第1の座席(例えば、実施形態の前座席12)および第2の座席(例えば、実施形態の後座席13)と、
前記第1のスライドドアおよび前記第2のスライドドアに設けられて、前記車両の走行を操作する走行スタートスイッチ(例えば、実施形態の前走行スタートスイッチ25、後走行スタートスイッチ26)と、を備え、
前記ドア開閉スイッチは、前記走行スタートスイッチよりも前記各座席の着座位置から離れた位置に設けられていてもよい。
【0021】
この構成によれば、ドア開閉スイッチを走行スタートスイッチよりも各座席の着座位置から離れた位置に配置した。これにより、各座席に着座した乗員の身体や手が不用意にドア開閉スイッチに触れ難くでき、ドア開閉スイッチの誤操作を一層良好に防止できる。
また、ドア開閉スイッチを走行スタートスイッチよりも各座席の着座位置から離れた位置に配置することにより、走行スタートスイッチをドア開閉スイッチと比べて各スライドドアが開かれる側に配置できる。よって、各スライドドアを開いているときに、走行スタートスイッチを隠すことができる。これにより、各スライドドアを開いているときに、走行スタートスイッチを操作して車両を走行させることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、座席に着座した乗員がスイッチを操作しやすくでき、簡単な構成でスイッチの誤操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る実施形態において車両用ドア装置の開口部を閉じた状態を車室側からみた側面図である。
図2図1の車両用ドア装置をII-II線で破断した断面図である。
図3】本発明に係る実施形態において車両用ドア装置の開口部を開いた状態を車室側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る車両用ドア装置を説明する。図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。
図1に示すように、車両10は、例えば、人間が運転操作をおこなわない状態において自動走行できる、いわゆる自動運転車である。車両10は、車体11と、前座席(第1の座席)12と、後座席(第2の座席)13と、車両用ドア装置20と、を備えている。
なお、実施形態においては、車両10を自動運転車として説明するが、車両10をその他としてもよい。
【0025】
車両用ドア装置20は、前スライドドア(第1のスライドドア)21と、後スライドドア(第2のスライドドア)22と、前ドア開閉スイッチ(ドア開閉スイッチ)23と、後ドア開閉スイッチ(ドア開閉スイッチ)24と、前走行スタートスイッチ(走行スタートスイッチ)25と、後走行スタートスイッチ(走行スタートスイッチ)26と、を備えている。
【0026】
<車体>
車体11は、例えば、車体側部31と、床部32と、ルーフ部33と、開口部34と、を備えている。車体側部31は、例えば、車体11の右側において床部32とルーフ部33との間に設けられている。車体側部31は、例えば、乗員が乗降する開口部34を備えている。開口部34は、床部32とルーフ部33との間に開口された車両10の開口部である。具体的には、開口部34は、上辺部36と、下辺部37と、前辺部38と、後辺部39と、を備えている。
【0027】
上辺部36は、ルーフ部33の右側部に沿って車体前後方向に延びている。下辺部37は、床部32の右側部に沿って車体前後方向に延びている。
前辺部38は、例えば、第1前辺41と、第2前辺42と、第3前辺43と、を有する。第1前辺41は、ルーフ部33側の上端から下方に向けて延びている。第2前辺42は、第1前辺41の下端から車両後方で、かつ下方へ向けて逆V字状に傾斜するように延びている。第3前辺43は、第2前辺42の下端から床部32側まで下方に向けて延びている。第2前辺42の下部には前取手45および前トレイ46が設けられている。
後辺部39は、例えば、車体前後方向において前辺部38と概ね対称に形成されている。すなわち、後辺部39は、前辺部38と同様に、第1後辺51と、第2後辺52と、第3後辺53と、を有する。また、第2後辺52の下部には後取手55および後トレイ56が設けられている。
【0028】
<前座席>
図1図2に示すように、前座席12は、開口部34の前辺部38のうち第3前辺43より車体前方で、かつ、車体側部31に沿って配置されている。すなわち、前座席12は、車幅方向において前スライドドア21(後述する)の側に配置されている。この状態において、前座席12は、乗員15が着座する着座部12aが車体後方を向いて床部32に設けられている。よって、乗員15は、車両10の進行方向に対して後ろ向きに前座席12に着座する。
【0029】
<後座席>
後座席13は、例えば、車体前後方向において前座席12と概ね対称に配置されている。具体的には、後座席13は、開口部34の後辺部39のうち第3後辺53より車体後方で、かつ、車体側部31に沿って配置されている。すなわち、後座席13は、車幅方向において後スライドドア22(後述する)の側に配置されている。この状態において、後座席13は、乗員16が着座する着座部13aが車体前方を向いて床部32に設けられている。よって、乗員16は、車両10の進行方向に対して前向きに後座席13に着座する。
【0030】
このように、前座席12および後座席13は、車体前後方向において、それぞれ向かい合わせに設けられている。これにより、前座席12に着座した乗員15と後座席13に着座した乗員16とが、向かい合って座ることができ、例えば、自宅の居間と同様にくつろぐことができる。以下、乗員15,16を、いわゆる成人として説明する。
【0031】
<車両用ドア装置>
(前スライドドア)
図1から図3に示すように、前スライドドア21および後スライドドア22は、床部32の右側部とルーフ部33の右側部とに車体前後方向にスライド移動可能に設けられている。すなわち、前スライドドア21および後スライドドア22は、開口部34を閉じる閉位置P1と、開口部34を開く開位置P2との間で車体前後方向にスライド移動可能に設けられている。
【0032】
前スライドドア21は、前下半部61と、前ドア枠部62と、前窓ガラス63と、を備えている。前下半部61は、装飾用の前ガーニッシュ64で車室18側から覆われている。前ドア枠部62は、前下半部61の上端部に設けられ、前窓ガラス63を支持している。前ドア枠部62は、第1前枠部(ドア枠部)65と、第2前枠部66と、第3前枠部67と、を備えている。
【0033】
第1前枠部65は、前下半部61の上端部のうち、後端部61aから上方へ向けてルーフ部33の右端部まで立ち上げられている。第1前枠部65は、前頂壁(頂壁)81と、第1前側壁(内側壁)82と、第2前側壁83と、前外壁(図示せず)と、を有する。
前頂壁81は、前スライドドア21の開閉方向に沿った方向に配置され、車室18側に最も突出している。第1前側壁82は、前頂壁81のうち車体前方側の端辺から車両10の外側へ向けて概ね車幅方向に配置されている。第1前側壁82は、前スライドドア21が開かれる側に位置している。すなわち、第1前側壁82は、前座席12に向けて配置されている。
【0034】
第2前側壁83は、前頂壁81のうち車体後方側の端辺から車両10の外側へ向けて配置されている。第2前側壁83は、前下半部61の後壁61bとともに、前スライドドア21が閉位置P1に配置された状態において、後スライドドア22に当接する前ドア突合せ面21aを形成する。
また、第1前側壁82の外端部と第2前側壁83の外端部とは、前外壁で連結されている。第1前枠部65は、前頂壁81、第1前側壁82、第2前側壁83、および前外壁で矩形枠の閉断面に形成されている。
【0035】
第2前枠部66は、第1前枠部65の上端部65aから車体前方へ向けて第3前枠部67の上端部67aまでルーフ部33の右端部に沿って延びている。第3前枠部67は、前スライドドア21が閉位置P1に配置された状態において、開口部34の前辺部38のうち、第1前辺41および第2前辺42に沿って形成されている。
【0036】
(後スライドドア)
後スライドドア22は、車体前後方向において前スライドドア21に対して概ね対称に形成されている。後スライドドア22は、前スライドドア21と同様に、後下半部91と、後ドア枠部92と、後窓ガラス93と、を備えている。後下半部91は、装飾用の後ガーニッシュ94で車室18側から覆われている。後ドア枠部92は、後下半部91の上端部に設けられ、後窓ガラス93を支持している。後ドア枠部92は、第1後枠部(ドア枠部)95と、第2後枠部96と、第3後枠部97と、を備えている。
【0037】
第1後枠部95は、後下半部91の上端部のうち、前端部91aから上方へ向けてルーフ部33の右端部まで立ち上げられている。第1後枠部95は、後頂壁(頂壁)101と、第1後側壁(内側壁)102と、第2後側壁103と、後外壁(図示せず)と、を有する。
後頂壁101は、後スライドドア22の開閉方向に沿った方向に配置され、車室18側に最も突出している。第1後側壁102は、後頂壁101のうち車体後方側の端辺から車両10の外側へ向けて概ね車幅方向に配置されている。第1後側壁102は、後スライドドア22が開かれる側に位置している。すなわち、第1後側壁102は、後座席13に向けて配置されている。
【0038】
第2後側壁103は、後頂壁101のうち車体前方側の端辺から車両10の外側へ向けて配置されている。第2後側壁103は、後下半部91の前壁91bとともに、後スライドドア22が閉位置P1に配置された状態において、前スライドドア21の前ドア突合せ面21aに突き合わされる後ドア突合せ面22aを形成する。換言すれば、前ドア突合せ面21aおよび後ドア突合せ面22aは、開口部34を前スライドドア21および後スライドドア22で閉じた状態において突き合わされる面である。
第1後側壁102の外端部と第2後側壁103の外端部とは、後外壁で連結されている。第1後枠部95は、後頂壁101、第1後側壁102、第2後側壁103、および後外壁で矩形枠の閉断面に形成されている。
【0039】
第2後枠部96は、第1後枠部95の上端部95aから車体後方へ向けて第3後枠部97の上端部97aまでルーフ部33の右端部に沿って延びている。第3後枠部97は、後スライドドア22が閉位置P1に配置された状態において、開口部34の後辺部39のうち、第1後辺51および第2後辺52に沿って形成されている。
【0040】
(前ドア開閉スイッチ)
前ドア開閉スイッチ23は、前スライドドア21に設けられている。前ドア開閉スイッチ23は、前スライドドア21および後スライドドア22を、開口部34を閉じる閉位置P1と開く開位置P2との間でスライド移動させるために操作するスイッチである。
前ドア開閉スイッチ23は、例えば、開操作部を押すことにより、各スライドドア21,22が開口部34を開く開位置P2にスライド移動し、閉操作部を押すことにより、各スライドドア21,22が開口部34を閉じる閉位置P1にスライド移動する。
【0041】
前ドア開閉スイッチ23は、第1前枠部65の第1前側壁82のうち、前高さ位置(所定高さ位置)H1に設けられている。前高さ位置H1は、前座席12に着座した乗員(すなわち、成人)15の頭部15aに上下方向において対応する高さ位置である。
第1前側壁82は、前座席12に向けて配置されている。また、第1前側壁82には、前ドア開閉スイッチ23が設けられている。よって、前ドア開閉スイッチ23は、前座席12に着座した乗員15に対峙した位置で、乗員15が矢印Aの如く目視で確認しやすい位置に設けられている。すなわち、前ドア開閉スイッチ23は、乗員15から操作可能な位置に設けられている。
また、前ドア開閉スイッチ23は、開口部34を開く開位置P2に前スライドドア21がスライド移動した状態において、露出された位置(隠れない位置)に配置されている。
【0042】
(後ドア開閉スイッチ)
後ドア開閉スイッチ24は、前ドア開閉スイッチ23と同様のスイッチであり、後スライドドア22に設けられている。前ドア開閉スイッチ23は、前スライドドア21および後スライドドア22を、開口部34を閉じる閉位置P1と開く開位置P2との間でスライド移動させるために操作するスイッチである。
後ドア開閉スイッチ24は、例えば、開操作部を押すことにより、各スライドドア21,22が開口部34を開く開位置P2にスライド移動し、閉操作部を押すことにより、各スライドドア21,22が開口部34を閉じる閉位置P1にスライド移動する。
【0043】
後ドア開閉スイッチ24は、第1後枠部95の第1後側壁102のうち、後高さ位置(所定高さ位置)H2に設けられている。後高さ位置H2は、前高さ位置H1と同じ高さである。後高さ位置H2は、後座席13に着座した乗員16(すなわち、成人)の頭部16aに上下方向において対応する高さ位置である。
第1後側壁102は、後座席13に向けて配置されている。また、第1後側壁102には、後ドア開閉スイッチ24が設けられている。よって、後ドア開閉スイッチ24は、後座席13に着座した乗員16に対峙した位置で、乗員16が矢印Bの如く目視で確認しやすい位置に設けられている。すなわち、後ドア開閉スイッチ24は、乗員16から操作可能な位置に設けられている。
また、後ドア開閉スイッチ24は、開口部34を開く開位置P2に後スライドドア22がスライド移動した状態において、露出された位置(隠れない位置)に配置されている。
【0044】
(前走行スイッチ)
前走行スタートスイッチ25は、前スライドドア21に設けられている。前走行スタートスイッチ25は、車両10を走行させるために操作するスイッチである。前走行スタートスイッチ25を押すことにより、エンジンや走行用のモータなどの駆動源が始動し、車両10が自動運転モードに切り替わる。
【0045】
前走行スタートスイッチ25は、前スライドドア21の前下半部61のベルトライン61cの近傍において、車体前後方向の中央部61dに車室18に対峙して設けられている。前走行スタートスイッチ25は、前ドア開閉スイッチ23より車体前方で、かつ、前ドア開閉スイッチ23より下方に配置されている。
【0046】
すなわち、前走行スタートスイッチ25は、前ドア開閉スイッチ23より、前座席12に着座した乗員15の寄りに配置され、乗員15の頭部15aより下方に配置されている。換言すれば、前ドア開閉スイッチ23は、前走行スタートスイッチ25よりも前座席12の着座部(着座位置)12aから離れた位置に設けられている。
また、中央部61dは、前座席12に着座した乗員15に向けて傾斜して配置されている。よって、中央部61dに前走行スタートスイッチ25が設けられることにより、目視で確認しやすく、操作しやすいように乗員15に向けて配置されている。
【0047】
さらに、前走行スタートスイッチ25は、開口部34を開く開位置P2に各スライドドア21,22がスライド移動した状態において、車体側部31の車幅方向外側に重ねられる。よって、前走行スタートスイッチ25は、車体側部31によって隠れる位置、特に車室18側から隠れる位置に配置されている。
また、前走行スタートスイッチ25は、開口部34を開く方向へ前スライドドア21がスライド移動する際に、前ドア開閉スイッチ23よりも先に隠れる位置に配置されている。
【0048】
(後走行スイッチ)
後走行スタートスイッチ26は、後スライドドア22に設けられている。後走行スタートスイッチ26は、前走行スタートスイッチ25と同様に、車両10を走行させるために操作するスイッチである。後走行スタートスイッチ26を押すことにより、エンジンや走行用のモータなどの駆動源が始動し、車両10が自動運転モードに切り替わる。
【0049】
後走行スタートスイッチ26は、後スライドドア22の後下半部91のベルトライン91cの近傍において、車体前後方向の中央部91dに車室18に対峙して設けられている。後走行スタートスイッチ26は、後ドア開閉スイッチ24より車体前方で、かつ、後ドア開閉スイッチ24より下方に配置されている。
【0050】
すなわち、後走行スタートスイッチ26は、後ドア開閉スイッチ24より、後座席13に着座した乗員16の寄りに配置され、乗員16の頭部16aより下方に配置されている。換言すれば、後ドア開閉スイッチ24は、後走行スタートスイッチ26よりも後座席13の着座部(着座位置)13aから離れた位置に設けられている。
また、中央部91dは、後座席13に着座した乗員16に向けて傾斜して配置されている。よって、中央部91dに後走行スタートスイッチ26が設けられることにより、目視で確認しやすく、操作しやすいように乗員16に向けて配置されている。
【0051】
さらに、後走行スタートスイッチ26は、開口部34を開く開位置P2に各スライドドア21,22がスライド移動した状態において、車体側部31の車幅方向外側に重ねられる。よって、後走行スタートスイッチ26は、車体側部31によって隠れる位置、特に車室18側から隠れる位置に配置されている。
また、後走行スタートスイッチ26は、開口部34を開く方向へ前スライドドア21がスライド移動する際に、前ドア開閉スイッチ23よりも先に隠れる位置に配置されている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用ドア装置20によれば、以下の効果を得ることができる。なお、前ドア開閉スイッチ23および後ドア開閉スイッチ24は、前後方向において対称に配置されている。また、前走行スタートスイッチ25および後走行スタートスイッチ26は、前後方向において対称に配置されている。よって、以下、前ドア開閉スイッチ23および前走行スタートスイッチ25について詳説して、後ドア開閉スイッチ24および後走行スタートスイッチ26の詳しい説明を省略する。
【0053】
すなわち、車両用ドア装置20によれば、前スライドドア21の第1前側壁82に前ドア開閉スイッチ23が設けられている。よって、前ドア開閉スイッチ23が前座席12に向けて配置されている。これにより、前座席12に着座した乗員15が前ドア開閉スイッチ23を操作しやすくできる。
【0054】
また、第1前側壁82に前ドア開閉スイッチ23を設けることにより、前ドア開閉スイッチ23を第1前枠部65の前頂壁81から車室18側に突出させないようにできる。前頂壁81は、第1前枠部65のうち車室18側に最も突出した壁部である。よって、前ドア開閉スイッチを前頂壁81から車室18側に突出させないようにすることにより、例えば、前座席12に着座した乗員15の身体や手が不用意にドア枠部に触れ難くすることができる。これにより、第1前側壁82に前ドア開閉スイッチ23を設ける簡単な構成で、前ドア開閉スイッチ23の誤操作を防止できる。
【0055】
また、前スライドドア21側の位置と後スライドドア22側の位置とに前座席12および後座席13が向かい合わせに設けられることにより、前座席12が第1前側壁82に向けて配置されている。よって、第1前側壁82の前ドア開閉スイッチ23を前座席12に着座した乗員15に対峙させることができる。さらに、前ドア開閉スイッチ23は、前座席12に着座した乗員15から操作可能な位置に配置されている。これにより、前座席12に着座した乗員15が前ドア開閉スイッチ23を操作しやすくできる。
【0056】
さらに、前ドア開閉スイッチ23を、前座席12に着座した乗員(すなわち、成人)15の頭部15aに対応する前高さ位置H1に設けることにより、前ドア開閉スイッチ23をある程度高い位置に配置できる。これにより、前座席12に着座した乗員(成人)15の身体や手が不用意に前ドア開閉スイッチ23に触れ難くでき、前ドア開閉スイッチ23の誤操作を一層良好に防止できる。
また、前ドア開閉スイッチ23をある程度高い位置に配置することにより、例えば、子供などの不用意な操作を防止できる。
【0057】
加えて、前走行スタートスイッチ25は、前スライドドア21を開位置P2に開いた状態において、隠れる位置に配置されている。これにより、前スライドドア21を開いた状態において、例えば、前座席12に着座した乗員15の身体や手が前走行スタートスイッチ25に触れないようにでき、前走行スタートスイッチ25の誤操作を防止できる。
【0058】
また、前スライドドア21を開位置P2に開いた状態において、前ドア開閉スイッチ23は、露出された位置(隠れない位置)に配置されている。これにより、前スライドドアを開位置P2に開いた状態において、前ドア開閉スイッチ23を操作可能とでき、前スライドドア21および後スライドドア22を閉じることができる。
【0059】
さらに、前走行スタートスイッチ25は、開口部34を開く方向へ前スライドドア21をスライド移動する際に、前ドア開閉スイッチ23よりも先に隠れる位置に配置されている。よって、前スライドドア21を開いているときに、前走行スタートスイッチ25を隠すことができる。これにより、前スライドドア21を開方向にスライド移動しているときに、前走行スタートスイッチ25を操作して車両を走行させることを防止できる。
【0060】
加えて、前ドア開閉スイッチ23は、前走行スタートスイッチ25よりも前座席12の着座部12aから離れた位置に配置されている。これにより、前座席12に着座した乗員15の身体や手が不用意に前ドア開閉スイッチ23に触れ難くでき、前ドア開閉スイッチ23の誤操作を一層良好に防止できる。
【0061】
また、前ドア開閉スイッチ23を前走行スタートスイッチ25よりも前座席12の着座部12aから離れた位置に配置することにより、前走行スタートスイッチ25を前ドア開閉スイッチ23と比べて前スライドドア21が開かれる側に配置できる。よって、前スライドドア21を開方向にスライド移動させているときに、前走行スタートスイッチ25を隠すことができる。これにより、前スライドドア21を開方向にスライド移動させているときに、前走行スタートスイッチ25を操作して車両10を走行させることを防止できる。
【0062】
また、後ドア開閉スイッチ24および後走行スタートスイッチ26は、前ドア開閉スイッチ23および前走行スタートスイッチ25と同様に、各スイッチ24,26の操作をしやすくできる。さらに、後ドア開閉スイッチ24および後走行スタートスイッチ26は、簡単な構成で、各スイッチ24,26の誤操作を防止できる。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアとして、車体前後方向に開閉する前スライドドア21および後スライドドア22を例示したが、これに限らない。その他の例として、例えば、第1のスライドドアおよび第2のスライドドアを車幅方向に開閉するドアとしてもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 車両
12 前座席(第1の座席)
13 後座席(第2の座席)
15,16 乗員
15a,16a 乗員の頭部
20 車両用ドア装置
21 前スライドドア(第1のスライドドア)
22 後スライドドア(第2のスライドドア)
23 前ドア開閉スイッチ(ドア開閉スイッチ)
24 後ドア開閉スイッチ(ドア開閉スイッチ)
25 前走行スタートスイッチ(走行スタートスイッチ)
26 後走行スタートスイッチ(走行スタートスイッチ)
34 開口部
65 第1前枠部(ドア枠部)
81 前頂壁(頂壁)
82 第1前側壁(内側壁)
95 第1後枠部(ドア枠部)
101 後頂壁(頂壁)
102 第1後側壁(内側壁)
P1 閉位置
P2 開位置
図1
図2
図3