(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】判定装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20241122BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20241122BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241122BHJP
G08B 25/00 20060101ALN20241122BHJP
G08B 25/04 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
G08B21/02
A61B10/00 H
G06T1/00 200A
G08B25/00 510M
G08B25/04 K
(21)【出願番号】P 2021040610
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹葉 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮原 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 陽一
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128977(JP,A)
【文献】特開2021-033622(JP,A)
【文献】特開2016-147006(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145566(WO,A1)
【文献】特開2018-175052(JP,A)
【文献】特開2022-113097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00 - 31/00
G08B 19/00 - 21/24
G06T 1/00
G06T 11/60 - 13/80
G06T 17/05
G06T 19/00 - 19/20
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
A61B 9/00 - 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象の生活空間において撮像された画像のうち、過去に撮像された画像と、その後に撮像された現在の画像と、に基づいて、前記判定対象についてフレイルの兆候又は認知症の兆候が出ていることを示す異常の有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部によって異常が有ると判定された場合に、他の装置に異常が有ることを通知する通知部と、
を備え
、
前記通知部は、前記判定対象の人物の過去の画像と現在の画像とを含む通知画像を前記他の装置に送信する、判定装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記判定対象の生活空間において物が散乱している度合いを示す散乱度を取得し、過去の画像における散乱度と、現在の画像における散乱度と、に基づいて異常の有無を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記判定対象の姿勢を示す情報である姿勢情報を取得し、前記姿勢情報に基づいて判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報である兆候情報を取得し、過去の画像における兆候情報と、現在の画像における兆候情報と、に基づいて異常の有無を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記判定対象の表情を示す情報である表情情報を取得し、前記表情情報に基づいて判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報である兆候情報を取得し、過去の画像における兆候情報と、現在の画像における兆候情報と、に基づいて異常の有無を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
コンピューターが、判定対象の生活空間において撮像された画像のうち、過去に撮像された画像と、その後に撮像された現在の画像と、に基づいて、前記判定対象についてフレイルの兆候又は認知症の兆候が出ていることを示す異常の有無を判定する異常判定ステップと、
コンピューターが、前記異常判定ステップにおいて異常が有ると判定された場合に、他の装置に異常が有ることを通知する通知ステップと、
を有
し、
前記通知ステップにおいて、前記判定対象の人物の過去の画像と現在の画像とを含む通知画像を前記他の装置に送信する、判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレイル又は認知症に関する判定を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会といわれる日本の人口は、現在約3割が65歳以上となっている。高齢者の増加に伴い、単身世帯の高齢者(いわゆる独居老人)も増加傾向にあり、2015年時点で600万人を超えている。このような独居老人には、フレイル(虚弱)の兆候がでてきたり認知症の兆候がでてきたりした場合にも、すぐには気づくことが出来ないという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、自治体組織や民間組織において、独居老人に対して電話をかけたり訪問したりすることで兆候を確認しようとする動きもある。しかしながら、このような組織の人員一人当たりの負担が非常に大きく、十分な確認をすることができない場合がある。特に近年では、オレオレ詐欺等の電話を用いた犯罪が増加しているため、そもそも電話に出ようとしない老人も多い。また、感染症予防の観点から、訪問することも難しい場合がある。このような問題は一人暮らしの老人に限った問題ではなく、高齢者施設等のように一人の空間で居住することを前提とした施設においても生じうる問題である。また、親族などの同居者がいる場合であっても、普段から一緒に暮らしているとフレイルや認知症の兆候に気がつきにくいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレイルや認知症の重症化は、要介護老人を増加させることにつながる。そのため、国の社会保障費の増加や働き盛り世代の介護離職増加につながるなど、社会に与える損失が大きい。このように、社会の課題の一つとして、フレイルや認知症の兆候を素早く検出し対処していくことが今後ますます重要となっている。例えば特許文献1のように、老人の居住空間に対してカメラを設置することにより見守りを行う技術も提案されているが、フレイルや認知症の兆候を検知することには十分に対応できていない。このような問題は、老人に限った問題ではなく、フレイルや認知症のリスクのある者にとって共通の問題である。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、フレイル又は認知症に対してより早いタイミングでリスクを判定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、判定対象の生活空間において撮像された画像のうち、過去に撮像された画像と、その後に撮像された現在の画像と、に基づいて、前記判定対象についてフレイルの兆候又は認知症の兆候が出ていることを示す異常の有無を判定する異常判定部と、前記異常判定部によって異常が有ると判定された場合に、他の装置に異常が有ることを通知する通知部と、を備える判定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の判定装置であって、前記異常判定部は、前記判定対象の生活空間において物が散乱している度合いを示す散乱度を取得し、過去の画像における散乱度と、現在の画像における散乱度と、に基づいて異常の有無を判定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の判定装置であって、前記異常判定部は、前記判定対象の姿勢を示す情報である姿勢情報を取得し、前記姿勢情報に基づいて判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報である兆候情報を取得し、過去の画像における兆候情報と、現在の画像における兆候情報と、に基づいて異常の有無を判定する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の判定装置であって、前記異常判定部は、前記判定対象の表情を示す情報である表情情報を取得し、前記表情情報に基づいて判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報である兆候情報を取得し、過去の画像における兆候情報と、現在の画像における兆候情報と、に基づいて異常の有無を判定する。
【0011】
本発明の一態様は、判定対象の生活空間において撮像された画像のうち、過去に撮像された画像と、その後に撮像された現在の画像と、に基づいて、前記判定対象についてフレイルの兆候又は認知症の兆候が出ていることを示す異常の有無を判定する異常判定ステップと、前記異常判定ステップにおいて異常が有ると判定された場合に、他の装置に異常が有ることを通知する通知ステップと、を有する判定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、フレイル又は認知症に対してより早いタイミングでリスクを検知することができる技術の提供を目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の判定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】撮像端末10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
【
図8】通知部164によって送信される通知画像の具体例を示す図である。
【
図9】制御装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
【
図10】判定システム100の動作の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の判定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。判定システム100は、判定対象施設90にて活動する判定対象についてフレイル又は認知症のリスクを判定するためのシステムである。判定対象施設90は、例えば判定対象が住む住居であってもよいし、複数の判定対象が住む集合住宅や施設(例えば老人ホームなど)であってもよいし、1又は複数の判定対象が生活する施設(例えば刑務所など)であってもよい。判定システム100は、撮像端末10、制御装置20及びユーザー端末30を含む。撮像端末10、制御装置20及びユーザー端末30は、ネットワーク40を介して通信可能に接続される。ネットワーク40は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク40は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。
【0015】
撮像端末10は、判定対象施設90に設置される。撮像端末10は、特定の領域を撮像するように設置されてもよい。例えば、撮像端末10は、特定の場所に特定のカメラパラメータ(画角及び向き等)で設置されてもよい。本実施形態では、撮像端末10が判定装置として機能する。撮像端末10は、判定対象施設90内の判定対象の映像を撮像し、判定対象について異常(フレイルの兆候、認知症の兆候)の有無を判定する。撮像端末10は、異常があると判定した場合には、異常と判定されたことを他の装置(例えば制御装置20又はユーザー端末30)に通知する。ユーザー端末30は、判定対象に異常が生じたと判定された際に、異常に対応する予定の者によって操作される。例えば、ユーザー端末30は、判定対象の親族や知人によって使用されてもよいし、判定対象を判定(見守り)する業務を行う者によって使用されてもよいし、他の者によって使用されてもよい。また、それら複数で使用されてもよい。このような仕組みにより、判定システム100では、フレイルの兆候や認知症の兆候を早いタイミングで判定し、それらのリスクに対応することが可能となる。以下、判定システム100の詳細について説明する。
【0016】
図2は、撮像端末10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。撮像端末10は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、携帯ゲーム機、据え置き型ゲーム機、専用機器などの情報機器を用いて構成される。撮像端末10は、通信部11、撮像部12、音声入力部13、音声出力部14、表示部15、制御部16及び記憶部17を備える。
【0017】
通信部11は、通信機器である。通信部11は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部11は、制御部16の制御に応じて、ネットワーク40を介して他の装置とデータ通信する。通信部11は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0018】
撮像部12は、カメラやLIDAR(Light Detection and Ranging)等の撮像装置を用いて構成される。撮像部12は、撮像装置そのものとして構成されてもよいし、外部機器として撮像装置を撮像端末10に接続するためのインターフェースとして構成されてもよい。撮像装置は、判定対象施設90内の所定の空間を撮像する。撮像装置による撮像は、可視光を受光することで画像形成する処理として実現されてもよいし、レーダーを用いて画像形成する処理として実現されてもよいし、他の実装方法で実現されてもよい。撮像装置によって撮像される所定の空間は、判定対象が位置する可能性のある空間であることが望ましい。例えば、撮像される所定の空間は、判定対象である人が普段生活している空間(生活空間:例えばリビング、居間、廊下、寝室など)であってもよい。撮像装置は1台設けられてもよいし、複数台設けられてもよい。撮像部12は、撮像装置によって撮像された画像のデータを制御部16に出力する。
【0019】
音声入力部13は、マイクを用いて構成される。音声入力部13は、マイクそのものとして構成されてもよいし、外部機器としてマイクを撮像端末10に接続するためのインターフェースとして構成されてもよい。マイクは、判定対象施設90内の所定の空間(例えば生活空間)の音声を取得する。マイクによって音声取得される所定の空間は、判定対象が位置する可能性のある空間であることが望ましい。例えば、上述した撮像装置が撮像対象としている空間であることが望ましい。音声入力部13は、マイクによって取得された音声のデータを制御部16に出力する。
【0020】
音声出力部14は、スピーカーを用いて構成される。音声出力部14は、スピーカーそのものとして構成されてもよいし、外部機器としてスピーカーを撮像端末10に接続するためのインターフェースとして構成されてもよい。スピーカーは、判定対象施設90内の所定の空間に音声を出力する。スピーカーによって音声出力される所定の空間は、判定対象が位置する可能性のある空間であることが望ましい。例えば、上述した撮像装置が撮像対象としている空間であることが望ましい。音声出力部14は、制御部16によって出力される音声信号に応じた音声を出力する。
【0021】
表示部15は、制御部16の制御に応じて判定対象に対して画像を表示する。表示部15は、例えば判定対象に対して反応を促すための画像を表示してもよい。例えば、「撮影をします」といった文字列や、判定対象の関係者(例えば親族や知人やペット)の画像を表示してもよい。
【0022】
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部16は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、撮像制御部161、人体領域推定部162、異常判定部163及び通知部164として機能する。なお、制御部16の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0023】
撮像制御部161は、撮像部12による撮像処理を制御する。撮像制御部161は、例えば所定のタイミングで撮像部12を動作させて撮像を行う。撮像制御部161は、例えば判定対象などの人物が含まれていない画像(以下「背景画像」という。)と、判定対象が含まれている画像(以下「判定対象画像」という。)と、を撮像してもよい。
【0024】
撮像制御部161は、毎日所定の時刻(一般的に判定対象が活動しない可能性が高い時刻)に背景画像を撮像してもよい。例えば、撮像制御部161は、音声出力部14や表示部15において音声や画像を出力することで、判定対象に対しこれから背景画像を撮影するため撮像装置の前に立たないようにして欲しいことを伝えてから、背景画像を撮像してもよい。
【0025】
撮像制御部161は、毎日所定の時刻(一般的に判定対象が活動している可能性が高い時刻)に判定対象画像を撮像してもよい。例えば、撮像制御部161は、音声出力部14や表示部15において音声や画像を出力することで、判定対象に対しこれから判定対象画像を撮影するため撮像装置の前に立つようにして欲しいことを伝えてから、判定対象画像を撮像してもよい。
【0026】
撮像制御部161は、撮像された画像(例えば背景画像及び判定対象画像)を、撮像された日時と対応付けて記憶部17に記録する。
【0027】
人体領域推定部162は、判定対象画像において人体領域を推定する。人体領域推定部162は、撮像部12から得られた画像において判定対象の全体又は一部が位置している領域(人体領域)を示す情報(以下「人体領域情報」という。)を推定する。人体領域は、例えば判定対象の全体又は一部が位置している領域を含む矩形であってもよい。この場合、人体領域情報は、矩形の四隅の座標を示す情報であってもよい。人体領域は、矩形に限らず他の幾何学形状(例えば円形、楕円形、三角形、四角形、五角形など)であってもよい。人体領域は、判定対象の形状に沿った複数の直線や曲線で示される形状であってもよい。
【0028】
人体領域推定部162は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで人体領域を推定する処理(以下「人体領域推定」という。)を行ってもよい。なお、人体領域推定部162の実装に用いられる技術は、上述した教師有り学習に限定される必要は無く、どのようなものであってもよい。人体領域推定部162は、人体領域情報を、人体領域推定に用いられた判定対象画像と対応付けて記憶部17に記録する。
【0029】
異常判定部163は、撮像部12によって撮像された画像(例えば背景画像や判定対象画像)に基づいて異常の有無を判定する。異常判定部163が判定する対象の異常とは、判定対象におけるフレイルの兆候又は認知症の兆候の有無である。異常判定部163は、過去の画像と現在の画像との違いに基づいて異常の有無を判定してもよい。より具体的には、異常判定部163は、例えば画像の時系列の変化に基づいて異常の有無を判定してもよい。さらに具体的には、異常判定部163は、過去の画像に基づいて得られる生活空間又は判定対象の状態と、現在の画像に基づいて得られる生活空間又は判定対象の状態と、の変化が所定の条件を満たす場合には異常があると判定してもよい。以下、異常判定部163の処理の具体例について説明する。
【0030】
[1.散乱度悪化]
異常判定部163は、撮像部12によって撮像された画像に基づいて、判定対象の生活空間における散乱度を取得し、取得された散乱度に基づいて異常の有無を判定してもよい。散乱度は、生活空間において物が散乱している度合いを示す値である。物が多く散乱している状態である場合には、より高い散乱度の値が取得される。物が散乱せずに整理整頓されている場合には、より低い散乱度の値が取得される。
【0031】
散乱度を取得する際に使用される画像は、例えば背景画像であってもよいし、判定対象画像であってもよい。判定対象画像が用いられる場合には、例えば人体領域推定部162によって推定された人体領域を除いた領域の画像が用いられてもよい。異常判定部163は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで散乱度を推定してもよい。例えば、教師画像のデータセットとして、生活空間における画像と、その画像における散乱度を示すラベルと、が付与されたデータが用いられてもよい。
【0032】
異常判定部163は、推定された散乱度を、記憶部17に日時を示す情報と対応付けて記録する。異常判定部163は、過去の散乱度と、その後(現在)の散乱度と、が所定の条件を満たす場合に、判定対象における異常が有ると判定する。所定の条件は、過去に比べて現在の散乱度の方が高くなっていることを示す条件である。例えば、所定の時間遡った過去の散乱度に比べて所定の条件(比率や閾値)を満たす程度に高い散乱度が所定の期間(例えば3日間、1週間など)連続している場合に、異常があると判定されてもよい。
【0033】
[2.姿勢悪化]
異常判定部163は、撮像部12によって撮像された判定対象画像の中の人体領域の画像に基づいて、判定対象の姿勢を示す情報(以下「姿勢情報」という。)を推定し、取得された姿勢情報に基づいて異常の有無を判定してもよい。異常判定部163は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで姿勢情報を推定してもよい。例えば、教師画像のデータセットとして、判定対象本人又は他者の画像と、その画像における姿勢情報を示すラベルと、が付与されたデータが用いられてもよい。
【0034】
姿勢情報は、例えば判定対象の骨格情報として取得されてもよい。骨格情報は、例えば判定対象について予め定められた複数の特徴点の位置と、特徴点を接続したリンクとを含む情報である。骨格情報の特徴点は、例えば鼻、両目、首、両肩、両肘、両手首、腰、両足のつけ根、両足の膝、両足の踵、両足のつま先を含むように構成されてもよい。異常判定部163は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで骨格推定を行ってもよい。骨格推定処理の実装に用いられる技術は、上述した教師有り学習に限定される必要は無く、どのようなものであってもよい。
【0035】
異常判定部163は、上述した処理を行うことによって骨格情報を取得し、取得された骨格情報に基づいて判定対象の姿勢を判定してもよい。
【0036】
異常判定部163は、上述した処理を行うことによって得られた姿勢情報に基づいて、判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報(以下「兆候情報」という。:例えばフレイルの兆候や認知症の兆候が現れている可能性の高さを示す値)を取得し、取得された兆候情報に基づいて異常の有無を判定してもよい。異常判定部163は、例えば予め教師データを用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで兆候情報を推定してもよい。例えば、教師データのデータセットとして、姿勢情報と、その姿勢情報における兆候情報を示すラベルと、が付与されたデータが用いられてもよい。
【0037】
異常判定部163は、推定された兆候情報を、記憶部17に日時を示す情報と対応付けて記録する。異常判定部163は、過去の兆候情報と、現在の兆候情報と、が所定の条件を満たす場合に、判定対象における異常が有ると判定する。所定の条件は、過去に比べて現在の兆候情報の方が、上記兆候が現れている可能性が高くなっていることを示す条件である。例えば、所定の時間遡った過去の兆候情報に比べて所定の条件(比率や閾値)を満たす程度に高い兆候情報が所定の期間(例えば3日間、1週間など)連続している場合に、異常があると判定されてもよい。
【0038】
[3.表情悪化]
異常判定部163は、撮像部12によって撮像された判定対象画像の中の人体領域の画像に基づいて、判定対象の表情を示す情報(以下「表情情報」という。)を推定し、取得された表情情報に基づいて異常の有無を判定してもよい。異常判定部163は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで表情情報を推定してもよい。例えば、教師画像のデータセットとして、判定対象本人又は他者の画像と、その画像における表情情報を示すラベルと、が付与されたデータが用いられてもよい。
【0039】
表情情報は、例えば判定対象の顔の複数の特徴点に関する情報(以下「表情特徴情報」という。)として取得されてもよい。表情特徴情報は、例えば顔について予め定められた複数の特徴点の位置と、特徴点を接続したリンクとを含む情報である。表情特徴情報の特徴点は、例えば鼻、左右の各目の左右の目尻、瞳の中心、眉毛の両端、額、唇の両端、あごの輪郭に沿った複数の点、を含むように構成されてもよい。異常判定部163は、例えば予め教師画像を用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで表情特徴情報を取得してもよい。表情特徴情報の取得の実装に用いられる技術は、上述した教師有り学習に限定される必要は無く、どのようなものであってもよい。
【0040】
異常判定部163は、上述した処理を行うことによって得られた表情特徴情報に基づいて、判定対象におけるフレイルの兆候や認知症の兆候を示す情報(兆候情報)を取得し、取得された兆候情報に基づいて異常の有無を判定してもよい。異常判定部163は、例えば予め教師データを用いて機械学習処理を行うことによって得られた学習済みモデルを用いることで兆候情報を推定してもよい。例えば、教師データのデータセットとして、表情特徴情報と、その表情特徴情報における兆候情報を示すラベルと、が付与されたデータが用いられてもよい。
【0041】
異常判定部163は、推定された兆候情報を、記憶部17に日時を示す情報と対応付けて記録する。異常判定部163は、過去の兆候情報と、現在の兆候情報と、が所定の条件を満たす場合に、判定対象における異常が有ると判定する。所定の条件は、過去に比べて現在の兆候情報の方が、上記兆候が現れている可能性が高くなっていることを示す条件である。例えば、所定の時間遡った過去の兆候情報に比べて所定の条件(比率や閾値)を満たす程度に高い兆候情報が所定の期間(例えば3日間、1週間など)連続している場合に、異常があると判定されてもよい。
【0042】
通知部164は、通知条件が満たされると、異常があると判定されたことを示す通知情報を、通信部11を介して他の装置(例えば制御装置20)に送信する。通知条件は、例えば異常判定部163において異常があると判定されることであってもよい。通知条件は、他の条件として定義されてもよい。
【0043】
通知部164は、ユーザー端末30に対して通知画像を送信してもよい。通知画像には、例えば判定対象の人物の画像が含まれていてもよい。より具体的には、通知画像には、過去の判定対象の画像と、現在の判定対象の画像と、が含まれていてもよい。なお、通知部164は、生成された通知画像を記憶部17に記録しておき、ユーザー端末30から通知画像の要求を受けた際に要求元のユーザー端末30に通知画像を送信するように構成されてもよい。また、通知部164は、予め定められている送信先となっているユーザー端末30に対して通知画像を送信してもよい。
【0044】
次に、撮像部12によって撮像される画像や制御部16の処理の具体例について説明する。
図3及び
図4は、背景画像の具体例を示す図である。
図3の背景画像では、床には物が散らかっておらず、設置されている机の上にも物が散乱せず整頓されている。
図4の背景画像では、床には物が散らかっており(本が山積みになっている)、設置されている机の上にも物が散乱している。このような背景画像が取得された場合、
図3の背景画像では低い散乱度の値が取得され、
図4の背景画像では高い散乱度の値が取得される。
【0045】
図5、
図6及び
図7は、判定対象画像の具体例を示す図である。
図5の判定対象画像では、判定対象の表情には笑顔がにじんでおり、床には物が散らかっておらず、設置されている机の上にも物が散乱せず整頓されている。
図6の判定対象画像では、判定対象の表情には笑顔がなく、毛髪も綺麗にまとめられてはおらず、床には物が散らかっており(本が山積みになっている)、設置されている机の上にも物が散乱している。
図7の判定対象画像では、判定対象の表情には笑顔がないどころか無表情となっており、判定対象は立っておらずに床に座っており、床には物が散らかっており(本が山積みになっている)、設置されている机の上にも物が散乱している。これらのような判定対象画像が取得された場合、
図5の判定対象画像では低い散乱度の値、低い兆候情報が取得され、
図6の判定対象画像では高い散乱度の値、高い兆候情報が取得される。また、
図7の判定対象画像では
図6に比べてさらに高い兆候情報が取得される。
【0046】
図8は、通知部164によって送信される通知画像の具体例を示す図である。
図8の例では、過去の判定対象の画像の具体例として、2カ月前に撮像された画像と、1カ月前に撮像された画像と、が含まれている。また、
図8の例では、現在の判定対象の画像として、その通知が行われる当日に撮像された判定対象の画像が含まれている。このように過去の画像と現在の画像とが含まれることで、この通知画像を見た者は、判定対象の様子(例えば表情や姿勢)の変化を理解することが容易となる。
【0047】
図9は、制御装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。制御装置20は、例えばパーソナルコンピューター、サーバー装置などの情報機器を用いて構成される。制御装置20は、通信部21、記憶部22及び制御部23を備える。
【0048】
通信部21は、通信機器である。通信部21は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部21は、制御部23の制御に応じて、ネットワーク40を介して他の装置とデータ通信する。通信部21は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0049】
記憶部22は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部22は、制御部23によって使用されるデータを記憶する。例えば、記憶部22は、送信先情報テーブルを記憶してもよい。送信先情報テーブルは、撮像端末10に割り当てられている識別情報(以下「対象識別情報」という。)と、その撮像端末10から送信された通知情報に基づいて生成されるユーザー通知情報の送信先の情報(以下「通知先情報」という。)と、を対応付けたテーブルである。
【0050】
制御部23は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部23は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、通知制御部231及びデータ制御部232として機能する。なお、制御部23の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0051】
通知制御部231は、撮像端末10から通知情報を受信すると、受信された通知情報に基づいてユーザー通知情報を生成する。ユーザー通知情報は、例えば、判定対象に異常が生じていることを示す文字列(例えば、“異常が生じています。ご確認下さい。”)と、通知画像が記憶されている記憶領域を示す通知アドレス情報と、を含む。ユーザー通知情報に含まれる文字列は、例えば撮像端末10やユーザー端末30にかかわらずに予め定められた固定の文字列であってもよい。ユーザー通知情報に含まれる文字列は、撮像端末10やユーザー端末30に対応付けて定義された文字列であってもよい。これらの文字列は、記憶部22に記憶されていてもよい。
【0052】
通知アドレス情報は、通知制御部231によって生成されてもよいし、通知画像を公開する他のサーバーによって生成されてもよい。例えば、通知制御部231は、他の情報機器からアクセス可能な記憶領域に通知画像をアップロードしてもよい。この場合、アップロード先の記憶領域を示すアドレス情報(例えばURL)が、通知アドレス情報として用いられてもよい。
【0053】
通知制御部231は、受信された通知情報に含まれる識別情報に基づいて通知先を判定する。通知制御部231は、例えば記憶部22に記憶されている送信先情報テーブルに基づいて、通知情報の送信元である対象識別情報に対応付けられている通知先情報を、通知先として判定してもよい。通知制御部231は、判定された通知先に対して、ユーザー通知情報を送信する。
【0054】
データ制御部232は、撮像端末10から送信されるデータを、送信元である撮像端末10の対象識別情報に対応付けて記憶部22に登録する。データ制御部232は、撮像端末10から送信されるデータを、送信元である撮像端末10の識別情報(例えば端末ID)と対応付けて記憶部22に登録してもよい。
【0055】
図10は、判定システム100の動作の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。撮像端末10の撮像部12が撮像すると、制御部16は撮像部12によって撮像された画像データを取得する(ステップS101)。人体領域推定部162は、撮像された画像において判定対象の人物領域を推定する(ステップS102)。異常判定部163は、撮像された画像において判定対象について異常の有無を判定する(ステップS103)。異常と判定されなかった場合、すなわち正常であると判定された場合(ステップS104-NO)、制御部16の処理はステップS101の処理に戻る。一方、異常と判定された場合、すなわち正常と判定されなかった場合(ステップS104-YES)、通知部164は通知画像を生成する(ステップS105)。通知部164は、通知画像を含む通知情報を生成し、制御装置20に通知情報を送信する(ステップS106)。
【0056】
制御装置20の通知制御部231は、通知情報を受信すると、通知情報に応じたユーザー通知情報を生成する。また、通知制御部231は、受信された通知情報に応じてユーザー通知情報の送信先を判定する。そして、通知制御部231は、ユーザー端末30に対してユーザー通知情報を送信する(ステップS107)。また、通知制御部231は、通知情報を記憶部22に記録する(ステップS108)。
【0057】
ユーザー端末30は、ユーザー通知情報を受信すると、ユーザー通知情報が受信されたことを示す出力を行う。例えば、ユーザー端末30の画面の所定の領域に、ユーザー通知情報が受信されたことを示す画像や文字を表示してもよいし、ユーザー端末30に予め設定されている通知方法に応じて音声出力やバイブレーターの駆動を行ってもよい。ユーザーがユーザー端末30を操作することでユーザー通知情報の出力を指示すると、ユーザー端末30はユーザー通知情報の内容を出力する。例えば、ユーザー端末30は、判定対象に異常が生じていることを示す文字列と、通知アドレス情報を示す文字列とを画面に表示してもよい(ステップS109)。ユーザーがユーザー端末30を操作して通知画像の表示を指示すると、ユーザー端末30は通知アドレス情報にアクセスして通知画像の送信を要求する(ステップS110)。
【0058】
制御装置20は、通知アドレス情報宛に通知画像の送信の要求を受けると、要求に応じた通知画像をユーザー端末30に送信する(ステップS111)。ユーザー端末30は、通知画像を受信すると、受信された通知画像を画面に表示する(ステップS112)。
【0059】
このように構成された判定システム100では、フレイルの兆候や認知症の兆候を、判定対象の画像や判定対象の生活空間における画像等に基づいて判定する。そのため、より早いタイミングでフレイルや認知症に対してリスクを判定することが可能となる。例えば、判定対象が一人暮らしであった場合には、親族や知人や見守りを行う業者や行政の者などと接する機会が少ない可能性がある。しかしながら、そのような場合であっても上記の画像に基づいてフレイルの兆候や認知症の兆候について判定できるため、実際に他人に接する機会が少なくてもより早い判定でリスクを判定することができる。また、例えば判定対象が親族や知人などと一緒に住んでいる場合、普段から日常的に接している者にとっては判定対象の変化に気がつきにくい場合がある。そのような場合であっても、上記の画像に基づいてフレイルの兆候や認知症の兆候について客観的に判定できるため、より早い判定でリスクを判定することができる。
【0060】
また、このように構成された判定システム100では、過去の画像と現在の画像とに基づいてフレイルの兆候や認知症の兆候について判定が行われる。そのため、判定対象の個々の特徴の違いの影響を受けにくく、より精度の高い判定を行うことが可能となる。例えば、単に散乱度の値に基づいて異常の判定を行う場合、元々整理整頓が得意では無い判定対象については、フレイルの兆候や認知症の兆候が出ていないにも拘わらず異常と判定されてしまい誤った判定結果が得られる可能性がある。逆に、元々整理整頓が非常に得意な判定対象については、フレイルの兆候や認知症の兆候が出ているにも拘わらず、多少は散乱度が高まったものの異常とは判定されない可能性がある。しかし、上述したように過去の画像と現在の画像とに基づいてフレイルの兆候や認知症の兆候について判定が行われることで、本人特有の上記特徴を加味した判定を行い、より精度良く判定することが可能となる。
【0061】
(変形例)
ユーザー通知情報は、通知アドレス情報に代えて、通知画像のデータを含んでもよい。この場合、ユーザー端末30は、よりスムーズに通知画像を表示することが可能となる。また、ユーザー端末30は、通知画像のデータを受信した場合、ユーザーの操作を受ける事無く、画面に通知画像のデータを表示してもよい。このように構成されることにより、より早く判定対象の異常をユーザーに通知することが可能となる。
【0062】
制御装置20は、異常判定部163を備えてもよい。この場合、撮像端末10の撮像制御部161は、撮像された画像を、通信部11を介して制御装置20に送信するように構成される。制御装置20は、異常があることを判定すると、ユーザー端末30に通知する。この場合、制御装置20が判定装置として機能する。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100…判定システム, 10…撮像端末, 20…制御装置, 30…ユーザー端末, 40…ネットワーク, 90…判定対象施設, 11…通信部, 12…撮像部, 13…音声入力部, 14…音声出力部, 15…表示部, 16…制御部, 161…撮像制御部, 162…人体領域推定部, 163…異常判定部, 164…通知部, 17…記憶部, 21…通信部, 22…記憶部, 23…制御部, 231…通知制御部, 232…データ制御部