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特許7591968金属製ワークの前処理方法及び金属製ワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】金属製ワークの前処理方法及び金属製ワーク
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20241122BHJP
   C22F 1/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B21C51/00 B
C22F1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021070935
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165551
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】加戸 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】新田 真
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059773(JP,A)
【文献】特開2012-136425(JP,A)
【文献】特開2009-001423(JP,A)
【文献】特開2017-187733(JP,A)
【文献】特開2000-053905(JP,A)
【文献】特開昭62-259460(JP,A)
【文献】特開2012-153931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B21D 22/00 - 24/00
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ワークの前処理方法であって、
熱処理前のワークにベース識別子を付ける識別子付与工程と、
ベース識別子の上に、熱処理によって色が不可逆的に変化するマークを付けるマーキング工程と、
ベース識別子の上にマークが正常に付けられているか否かをセンサーによりチェックするチェック工程と、を備え、
チェック工程において、センサーがベース識別子を読み取ることができないときには、マークが正常に付けられていると判定し、センサーがベース識別子を読み取ることができるときには、マークが正常に付けられていないと判定する、金属製ワークの前処理方法。
【請求項2】
識別子付与工程において、ワークにベース識別子とは別に製品識別子を更に付ける、請求項記載の金属製ワークの前処理方法。
【請求項3】
熱処理前のワークであって、
熱処理によって色が不可逆的に変化するマークと、マークが正常に付けられているか否かをセンサーによりチェックするためのベース識別子と、を備え、
マークは、ベース識別子の上に設けられ、センサーがベース識別子を読み取りできないようにベース識別子の少なくとも一部を覆い隠している、金属製ワーク。
【請求項4】
ベース識別子とは別に製品識別子が更に設けられている、請求項3記載の金属製ワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ワークの前処理方法と、金属製ワークに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鋳造製のワークは、各種の熱処理が施されるが、ワークが熱処理されたものか、あるいは、熱処理されていないものであるかを判別する必要がある。このような熱処理の有無について下記特許文献1では、ワークに単色の光を照射し、ワークの表面で反射した光の光量から熱処理の有無を判別している。しかしながら、ワークの形状や表面状態によって、光量の閾値を設定しなければならない等、判別方法が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-151386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ワークのトレーサビリティを容易に確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る金属製ワークの前処理方法は、熱処理前のワークに、熱処理によって色が不可逆的に変化するマークを付けるマーキング工程を備えている。
【0006】
この方法によれば、ワークにマークが付けられる。ワークは、その後、熱処理される。熱処理によってマークの色が変化する。マークの色が変化していれば、そのワークは熱処理されていることになる。逆に、マークの色が変化していなければ、そのワークは熱処理されていないことになる。ワークに付けられたマークの色を確認することによって、ワークが熱処理されたものか、あるいは、熱処理されていないものかを判別することができる。
【0007】
また、本発明に係る金属製ワークの前処理方法は、熱処理前のワークにベース識別子を付ける識別子付与工程と、ベース識別子の上に、熱処理によって色が不可逆的に変化するマークを付けるマーキング工程と、ベース識別子の上にマークが正常に付けられているか否かをセンサーによりチェックするチェック工程と、を備え、チェック工程において、センサーがベース識別子を読み取ることができないときには、マークが正常に付けられていると判定し、センサーがベース識別子を読み取ることができるときには、マークが正常に付けられていないと判定する。
【0008】
この方法によれば、ワークにベース識別子が付けられ、そのベース識別子の上にマークが付けられる。その後、チェック工程において、センサーがベース識別子を読み取れなかった場合には、ベース識別子の上にマークが正常に付けられていると判定される。その後、ワークは、熱処理される。熱処理によってマークの色が変化する。マークの色が変化していれば、そのワークは熱処理されていることになる。逆に、マークの色が変化していなければ、そのワークは熱処理されていないことになる。ワークに付けられたマークの色を確認することによって、ワークが熱処理されたものか、あるいは、熱処理されていないものかを判別することができる。一方、熱処理前のチェック工程において、センサーがベース識別子を読み取った場合には、ベース識別子の上にマークが正常に付けられていないと判定される。そして、そのワークは熱処理工程には送られない。このように、ベース識別子の上にマークを付けると共にセンサーでチェックすることにより、マークの付け忘れを容易に判定することができる。そして、マークが付けられていないワークが熱処理されることを未然に防止することができる。
【0009】
特に、識別子付与工程において、ワークにベース識別子とは別に製品識別子を更に付けることが好ましい。この方法によれば、識別子付与工程において、ワークには、製品識別子とベース識別子が付けられる。その後、ベース識別子の上にはマークが付けられるが、製品識別子の上にはマークが付けられない。そのため、ワークのトレーサビリティがより一層確保される。
【0010】
また本発明に係る金属製ワークは、熱処理によって色が不可逆的に変化するマークが設けられている。
【0011】
この構成によれば、熱処理によってマークの色が変化する。マークの色が変化していれば、そのワークは熱処理されていることになる。逆に、マークの色が変化していなければ、そのワークは熱処理されていないことになる。ワークに付けられたマークの色を確認することによって、ワークが熱処理されたものか、あるいは、熱処理されていないものかを判別することができる。
【0012】
また本発明に係る金属製ワークは、ベース識別子と、ベース識別子の上に設けられ、センサーがベース識別子を読み取りできないようにベース識別子の少なくとも一部を覆い隠すマークと、を備えている。
【0013】
この構成によれば、ベース識別子の少なくとも一部がマークによって覆い隠されており、センサーはベース識別子を読み取ることができない。そのため、センサーによって、マークがワークに付けられているか否かを容易に判別できる。熱処理前の状態においては、ベース識別子の上にマークが付けられていることにより、マークの付け忘れをセンサーによって容易にチェックできる。また、熱処理後においては、ベース識別子とその上に残っているマークによって、ワークが正規の工程を経たものであることを表示でき、容易に確認できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、ワークのトレーサビリティを容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態におけるワークの製造工程を示すフローチャート。
図2】同ワークの平面図。
図3図2のA部拡大図であって、(a)は熱処理前の状態を示し、(b)は熱処理後の状態を示す。
図4】(a)は、本発明の一実施形態における前処理方法の識別子付与工程を示す斜視図、(b)は、識別子付与工程後のワークの要部拡大図。
図5】同前処理方法のマーキング工程を示す斜視図。
図6】(a)乃至(c)は、マーキング工程後のワークの要部拡大図。
図7】(a)及び(b)は、同前処理方法のチェック工程を示す斜視図。
図8】同チェック工程のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る金属製ワークの前処理方法と金属製ワークについて図面を参酌しつつ説明する。図1にワーク1の製造方法の一例を示している。ワーク1は、鋳造製や鍛造製等、種々であってよいが、本実施形態のワーク1は、鋳造製であり、特にはダイカスト製である。ワーク1の材質も任意であるが、例えばアルミニウム合金である。製造方法は、鋳造工程10と、識別子付与工程である刻印工程11と、マーキング工程12と、熱処理前の第一チェック工程13と、熱処理工程14と、熱処理後の第二チェック工程15を有している。本実施形態において、刻印工程11とマーキング工程12と第一チェック工程13が、熱処理前に行われる前処理方法である。
【0017】
<ワーク1>
ワーク1の形状は、種々であってよく、その大きさも種々であってよい。ワーク1の一例を図2に示している。ワーク1の表面には、製品コード2と製品記号3とベースコード4が設けられている。製品コード2と製品記号3とベースコード4は、刻印工程11においてワーク1に刻印されたものである。製品コード2と製品記号3とベースコード4は、ワーク1の表面のうち機械加工されない素材面(鋳造面)に設けられるが、機械加工された加工面に設けられてもよい。
【0018】
<製品コード2>
製品コード2は、個々のワーク1を識別するためのものであり、製品識別子である。製品コード2は、二次元コードであることが好ましい。製品コード2は、スタック型でもよいし、マトリクス型でもよいが、好ましくはマトリクス型であり、更に好ましくはデータマトリックスコードである。製品コード2は、後述する第二センサー22(コードリーダー)で読み取られる。製品コード2の情報には、例えば製品の種類を示す番号や、ワーク1個々の番号、製造場所、製造日等がある。
【0019】
<製品記号3>
製品記号3は、例えば数字やアルファベットであって、製品コード2と共に製品識別子である。製品記号3は、作業者が目視により確認可能である。製品記号3が示す情報は、例えば製品コード2の情報のうちの一部であってもよいし、製品コード2とは異なる情報であってもよい。製品コード2とは別に製品記号3がワーク1に付けられていることが好ましく、作業者が目視によってワーク1の各種の情報を読み取ることができる。
【0020】
<ベースコード4>
ベースコード4は、製品コード2とは異なるコードであって、ベース識別子である。ベースコード4は、製品コード2の近くに配置されることが好ましいが、離れていてもよい。ベースコード4は、後述する第二センサー22で読み取り可能なものである。ベースコード4は、二次元コードであることが好ましい。ベースコード4は、製品コード2と同じ種類の二次元コードであってもよいし、製品コード2とは異なる種類の二次元コードであってもよいが、好ましくは製品コード2とは異なる種類の二次元コードである。ベースコード4は、スタック型でもよいし、マトリクス型でもよいが、好ましくはマトリクス型であり、更に好ましくはクイックレスポンスコードである。ベースコード4の情報は、ワーク1に関連するものであってもよいし、関連しないものであってもよい。ベースコード4の情報は、例えば、数字や文字であってよく、例えば一つのアルファベットや数字であってもよい。
【0021】
<マーク5>
図3のように、ベースコード4の上にマーク5が付けられている。マーク5は、ベースコード4の少なくとも一部を覆い隠している。マーク5は、ベースコード4が第二センサー22によって読み取ることができないように、ベースコード4の上に付けられている。マーク5は、ベースコード4の全体を覆い隠していてもよいし、ベースコード4の一部のみを覆い隠していてもよいが、少なくとも第二センサー22による読み取りが不可となる程度にベースコード4を覆い隠している。従って、マーク5は、ベースコード4の読み取りを不可とする程度の色彩を有している。マーク5は、種々の態様で設けられてよいが、好ましくは、塗布される。
【0022】
マーク5の色は、ワーク1の熱処理によって不可逆的に変化する。図3(a)は、マーク5の色が変化する前の状態であり、図3(b)はマーク5の色が変化した後の状態である。マーク5は、熱処理前においてその存在が視認可能であって、且つ、熱処理後においてもその存在が視認可能である。即ち、マーク5は、色が変化する前の状態と色が変化した後の状態の何れにおいても、その存在が視認可能である。マーク5は、不透明のものが好ましい。マーク5の色の変化は、色相、明度、彩度の何れの変化であってよい。マーク5の色は、有彩色であることが好ましい。マーク5の塗料は、油性でも水性でもよいが好ましくは油性である。マーク5の塗料の着色剤は染料でも顔料でもよいが、色が変化しやすいことから好ましくは染料である。マーク5の塗布には、例えば、三菱鉛筆(株)の商品名「ペイントマーカー」が好適である。
【0023】
<刻印工程11>
図4(a)に刻印工程11を示している。尚、ワーク1は簡略化して示している。ワーク1は、鋳造後に冷却され、その後、刻印工程11に送られる。刻印工程11において、刻印装置20によってワーク1の表面に、製品コード2と製品記号3とベースコード4がレーザーマーキングにより刻印される。図4(b)に、ワーク1に刻印された製品コード2と製品記号3とベースコード4を示している。製品コード2と製品記号3とベースコード4は、一つの刻印装置20によって刻印されることが好ましいが、二つ以上の刻印装置20によって刻印されてもよい。また、刻印装置20には、第一センサー21(コードリーダー)が設けられていることが好ましい。第一センサー21は、ワーク1に製品コード2と製品記号3とベースコード4が刻印されているか否かを検査する。仮に、ワーク1に製品コード2と製品記号3とベースコード4のうちの何れかがワーク1に刻印されていない場合には、第一センサー21はエラー信号を出力する。エラー信号が出力された場合には、例えば警告音やエラーメッセージが出されることが好ましい。製品コード2や製品記号3、ベースコード4の何れかがワーク1に刻印されていない場合には、そのワーク1は次のマーキング工程12には送られない。
【0024】
<マーキング工程12>
第一センサー21によって製品コード2と製品記号3とベースコード4がワーク1に刻印されていることが確認された後、ワーク1はマーキング工程12へ送られる。図5にマーキング工程12を示している。マーキング工程12において、ワーク1のベースコード4の上にマーカー30によってマーク5が付けられる。尚、マーク5の塗布は、自動でも手動でもよい。
【0025】
図6にマーキング工程12後のワーク1の識別表示部分を示している。図6(a)は、ベースコード4の上にマーク5が正常に塗布されたOK状態を示している。図6(b)は、ベースコード4から離れた箇所にマーク5が塗布されたNG状態を示している。図6(c)は、マーク5の塗布が行われなかったNG状態を示している。
【0026】
<第一チェック工程13>
マーキング工程12の後、ワーク1は第一チェック工程13に送られる。第一チェック工程13は、熱処理前において、ワーク1にマーク5が付けられているか否かをチェックする工程である。詳細には、第一チェック工程13では、ワーク1のベースコード4の上にマーク5が正常に付けられているか否かがチェックされる。
【0027】
図7(a)のように、第二センサー22の前にワーク1が配置される。第二センサー22は、ベースコード4の読み取りを試みる。図6(a)のようにベースコード4の上にマーク5が正常に付けられている場合には、第二センサー22は、マーク5に邪魔されて、ベースコード4を読み取ることができない。一方、図6(b)のようにベースコード4から離れた位置にマーク5が付けられている場合や、図6(c)のようにマーク5が付けられていない場合には、第二センサー22はベースコード4を読み取ることができる。
【0028】
図8に第一チェック工程13のフローチャートを示している。まず、上述のように第二センサー22によってベースコード4の読み取りを行う(S1)。第二センサー22がベースコード4を読み取ることができない場合には、ベースコード4の上にマーク5が正常に付けられていると判定する。即ち、マーキングOKと判定し(S2)、次の製品コード2の読み取りへと進む(S4)。一方、第二センサー22がベースコード4を読み取ることができた場合には、マーク5が正常に付けられていないと判定する。即ち、マーキングNGと判定する(S3)。
【0029】
第二センサー22がベースコード4を読み取ると、第二センサー22からベースコード4の情報がコンピューター23に送られる。コンピューター23は、ベースコード4の情報を受け取ると、マーキングNGと判定し、表示画面にエラーを表示させると共に、警告音を出力する。作業者は、表示画面のエラー表示及び警告音によって、マーク5が正常に付けられていないと判断でき、ワーク1にマーク5を正常に付け、その後、再び、ベースコード4の読み取りを行う。
【0030】
第二センサー22がベースコード4を読み取れない場合、第二センサー22からベースコード4の情報がコンピューター23に送られない。その場合、コンピューター23は、マーキングOKと判定する。表示画面には例えば「マーキングOK」と表示され、作業者はその表示画面を見て、次の製品コード2の読み取りへと作業を進める。
【0031】
マーキングOKと判定された場合、作業者は、続いて、図7(b)のように、第二センサー22の前に製品コード2を位置させて、第二センサー22に製品コード2を読み取らせる。上述のように、刻印工程11において第一センサー21が製品コード2を読み取ることによって、ワーク1に製品コード2が刻印されていることは既に確認されている。そのため、第一チェック工程13において、製品コード2を第二センサー22で読み取ることは、再度の確認となるが、万一、刻印工程11の後に何らかの理由によって製品コード2に傷が付いたり、製品コード2に汚れが付着したりした場合には、それを確認することができる。
【0032】
第二センサー22が製品コード2を読み取ると、第二センサー22から製品コード2の情報がコンピューター23に送られて、製品コード2がコンピューター23の記憶装置に登録され保存される。仮に、第二センサー22が製品コード2を読み取れない場合、第二センサー22から製品コード2の情報がコンピューター23に送られず、コンピューター23は、エラーと判定し、例えば表示画面にその旨を表示する。作業者は、ワーク1の製品コード2を目視確認して、例えば、製品コード2に傷が付いている場合には、そのワーク1をNG品として破棄する。また、作業者は、製品コード2に汚れが付着している場合には、その汚れを除去した上で再度第二センサー22によって製品コード2の読み取りを行う。第二センサー22で何度かの読み取りを試みた上でも尚読み取ることができない場合には、作業者は、そのワーク1をNG品として破棄する。以上で、第一チェック工程13が終了する。
【0033】
尚、上記説明では、ベースコード4の読み取りと製品コード2の読み取りを別々に行っていたが、第二センサー22によるベースコード4と製品コード2の読み取りを一度に行って、ベースコード4の読み取りのOKとNGの判定と、製品コード2の読み取りのOKとNGの判定を連続的に行ってもよい。例えば、ベースコード4の読み取りができずに製品コード2の読み取りができた場合をOK品と判定し、それ以外はNG品と判定するようにしてもよい。NG品と判定する場合において、ベースコード4の読み取りができたという場合と、製品コード2の読み取りができなかったという場合を分けて表示画面に表示することによって、NG品と判定した理由が作業者にわかるようにしてもよい。
【0034】
<熱処理工程14>
第一チェック工程13を通過したワーク1は、その後、熱処理される。熱処理は、種々のものであってよいが、例えば、T6処理である。例えば、100℃から200℃の温度で数時間の処理が施される。その熱処理時の温度及び時間によって、マーク5の色は、図3(a)から図3(b)のように変化する。例えば、マーク5の色は薄くなり、一例としては、変化前が青色で、変化後は、青色が薄くなって水色となる。マーク5の色は、一旦変化すると、ワーク1の温度が熱処理前の元の温度、例えば常温に戻っても、元の色には戻らない。マーク5の色が変化しても、マーク5によってベースコード4が覆い隠されていて、コードリーダー(センサー)によってベースコード4を読み取ることはできない。
【0035】
<第二チェック工程15>
第二チェック工程15は、熱処理後に、ワーク1のマーク5の色をチェックする工程である。マーク5の色は例えば目視により確認できる。尚、マーク5の色を例えば画像処理によって自動確認してもよい。作業者は、マーク5の色を目視確認することにより、ワーク1が熱処理されているものか、あるいは、熱処理されていないものかを容易に判別することができる。マーク5の色が変化後の色であるならば、ワーク1は熱処理されたものということになる。一方、マーク5の色が変化前の色のままであるならば、ワーク1は熱処理されていないものということになる。マーク5の色を見ることによって、ワーク1の熱処理の有無を簡易に判別することができる。
【0036】
以上のように、ワーク1に熱処理の有無を判別するためのマーク5が設けられているので、マーク5によってワーク1の熱処理の有無を容易に判別することができる。例えば、熱処理されているワーク1の群の中に熱処理されていないワーク1が紛れ込んでいたとしても、熱処理されていないワーク1を容易に見つけ出すことができる。
【0037】
また、マーク5の色が熱処理の有無によって不可逆的に変化するので、熱処理前においてもマーク5が付けられていることを確認することができると共に、熱処理後においても、マーク5が付けられていることを確認することができる。仮に、マーク5の色が熱処理前や熱処理後において透明となるようなものであれば、マーク5の存在がわかりにくい、マーク5が付け忘れられたものか否かを判別することが困難となるが、熱処理の前後においてマーク5の存在が確認できるので、マーク5の付け忘れが確実に防止される。そして、マーク5の色の変化という簡単な指標によって熱処理の有無を容易に判別することができる。また、熱処理後のワーク1に、色が変化したマーク5が存在することによって、ワーク1が熱処理されたものであることをマーク5の存在によって容易に把握することができる。
【0038】
更に、マーク5がベースコード4の上に付けられているので、ベースコード4の読み取りの有無によって、マーク5の付け忘れを容易且つ確実にチェックすることができる。しかも、ベースコード4が読み取れない場合にマーク5が正常に付けられていると判断するため、短い時間でチェックすることができる。特に、ベースコード4がクイックレスポンスコードであると、マーク5がベースコード4の小さな領域を覆う場合であっても、ベースコード4が読み取り不可となるため、マーク5をベースコード4の上に塗布する作業が楽になる。また、自動でマーキングを行う場合も、マーク5の塗布不良が減少する。更に、熱処理後においては、ベースコード4とその上に残っているマーク5の存在によって、ワーク1が正規の熱処理工程を経たものであることを表示できる。ベースコード4とその上のマーク5の存在を容易に目視確認でき、それによって、ワーク1が正規に熱処理されたものであることを瞬時に確認できる。特に、製品コード2や製品記号3の隣りにベースコード4及びマーク5は配置されているので、ベースコード4及びマーク5を探す必要がなく、製品コード2や製品記号3を確認する際に、容易且つ確実にベースコード4及びマーク5の存在に気付くことができる。このようにしてワーク1のトレーサビリティが確保される。
【符号の説明】
【0039】
1 ワーク
2 製品コード(製品識別子)
3 製品記号(製品識別子)
4 ベースコード(ベース識別子)
5 マーク
10 鋳造工程
11 刻印工程(識別子付与工程)
12 マーキング工程
13 第一チェック工程
14 熱処理工程
15 第二チェック工程
20 刻印装置
21 第一センサー
22 第二センサー
23 コンピューター
30 マーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8