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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ガスセンサ及びガスセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/41 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01N27/41 325K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021084657
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178108
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/014033(WO,A1)
【文献】特開2002-170557(JP,A)
【文献】特表2002-509188(JP,A)
【文献】特開平11-304754(JP,A)
【文献】特開2006-104525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に多孔質酸化物層を形成する工程と、
前記多孔質酸化物層上に多孔質金属層を形成する工程とを備え、
前記多孔質金属層を形成する工程は、前記主面の法線に対して傾斜した方向から前記多孔質金属層の構成材料を蒸着することにより行わ
前記多孔質酸化物層を形成する工程は、前記主面の法線に対して傾斜した方向から前記多孔質酸化物層の構成材料を蒸着することにより行われる、ガスセンサの製造方法。
【請求項2】
前記多孔質金属層を形成する工程は、前記基板を前記主面の法線に沿う回転軸回りに少なくとも1回以上回転させながら行われる、請求項1に記載のガスセンサの製造方法。
【請求項3】
前記多孔質金属層を形成する工程は、前記主面の法線に対して80°以上90°未満だけ傾斜した方向から前記多孔質金属層の構成材料を蒸着することにより行われる、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサの製造方法。
【請求項4】
前記多孔質金属層を形成する工程及び前記多孔質酸化物層を形成する工程は、同一の蒸着装置内で行われる、請求項に記載のガスセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサ及びガスセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/014033号(特許文献1)には、ガスセンサが記載されている。特許文献1に記載のガスセンサは、基板と、絶縁層と、マイクロヒータと、多孔質酸化物層と、第1多孔質金属層と、固体電解質層と、第2多孔質金属層とを有している。
【0003】
基板には、キャビティが形成されている。キャビティは、厚さ方向に沿って基板を貫通している。絶縁層は、基板上に配置されている。マイクロヒータは、キャビティ上にある絶縁層の部分(以下「メンブレン部」とする)内に配置されている。多孔質酸化物層は、メンブレン部上に配置されている。第1多孔質金属層は、多孔質酸化物層上に配置されている。固体電解質層は、第1多孔質金属層上に配置されている。第2多孔質金属層は、固体電解質層上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/014033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のガスセンサでは、第1多孔質金属層が、スパッタリングにより形成される。しかしながら、第1多孔質金属層をスパッタリングにより形成する場合、特殊な条件(低い真空度でのスパッタリング)が必要になるため、汎用的なスパッタリング装置を適用することができない。その結果、第1多孔質金属層を形成するために専用のスパッタリング装置を導入する必要があり、製造コストが増大してしまう。
【0006】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、製造コストを低減可能なガスセンサ及びガスセンサの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のガスセンサの製造方法は、基板の主面上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に多孔質酸化物層を形成する工程と、多孔質酸化物層上に多孔質金属層を形成する工程とを備える。多孔質金属層を形成する工程は、主面の法線に対して傾斜した方向から多孔質金属層の構成材料を蒸着することにより行われる。
【0008】
本開示のガスセンサは、基板と、基板上に配置されている絶縁層と、絶縁層内に配置されている配線と、多孔質酸化物層と、多孔質酸化物層上に配置されている第1多孔質金属層と、第1多孔質金属層上に配置されている固体電解質層と、固体電解質層上に配置されている第2多孔質金属層とを備える。基板には、基板を厚さ方向に貫通しているキャビティが形成されている。絶縁層は、キャビティ上にあるメンブレン部を有する。配線は、メンブレン部内に配置されているヒータ部を有する。多孔質酸化物層は、メンブレン部上に配置されている。第1多孔質金属層は、複数の螺旋構造体から構成されている。複数の螺旋構造体の各々は、厚さ方向に沿って螺旋状に延在している。
【発明の効果】
【0009】
本開示のガスセンサ及びガスセンサの製造方法によると、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ガスセンサ100の断面図である。
図2】多孔質酸化物層50の内部構造を示す模式図である。
図3】多孔質金属層60の内部構造を示す模式図である。
図4】ガスセンサ100の製造方法を示す工程図である。
図5】第1絶縁層形成工程S2を説明するための断面図である。
図6】第1配線形成工程S3を説明するための断面図である。
図7】第2絶縁層形成工程S4を説明するための断面図である。
図8】第2配線形成工程S5を説明するための断面図である。
図9】第3絶縁層形成工程S6を説明するための断面図である。
図10】多孔質酸化物層形成工程S7を説明するための断面図である。
図11】多孔質酸化物層形成工程S7において螺旋構造体51が形成されるメカニズムを説明するための模式図である。
図12】第1多孔質金属層形成工程S8を説明するための断面図である。
図13】固体電解質層形成工程S9を説明するための断面図である。
図14】パターンニング工程S10を説明するための断面図である。
図15】第4絶縁層形成工程S11を説明するための断面図である。
図16】第2多孔質金属層形成工程S12を説明するための断面図である。
図17】多孔質金属層60の構成材料の蒸着方向と多孔質金属層60の相対密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0012】
(実施形態に係るガスセンサの構成)
以下に、実施形態に係るガスセンサ(「ガスセンサ100」とする)を説明する。
【0013】
図1は、ガスセンサ100の断面図である。図1に示されるように、ガスセンサ100は、基板10と、絶縁層20と、配線30と、配線40とを有している。ガスセンサ100は、さらに、多孔質酸化物層50と、多孔質金属層60と、固体電解質層70と、絶縁層80と、多孔質金属層90とを有している。
【0014】
基板10は、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。基板10は、主面10aと、主面10bとを有している。主面10a及び主面10bは、厚さ方向における基板10の端面である。主面10bは、主面10aの反対面である。基板10には、キャビティ10cが形成されている。キャビティ10cは、厚さ方向に沿って基板10を貫通している。
【0015】
絶縁層20は、基板10上に配置されている。より具体的には、絶縁層20は、主面10a上に形成されている。絶縁層20は、第1層21と、第2層22と、第3層23と、第4層24と、第5層25と、第6層26とを有している。
【0016】
第1層21は、例えば、シリコン酸化物により形成されている。第1層21は、基板10上(主面10a上)に配置されている。第2層22は、例えば、シリコン窒化物により形成されている。第2層22は、第1層21上に配置されている。第3層23及び第4層24は、例えば、シリコン酸化物により形成されている。第3層23は、第2層22上に配置されている。第4層24は、第3層23上に配置されている。
【0017】
第5層25は、例えばシリコン窒化物により形成されている。第5層25は、第4層24上に配置されている。第6層26は、例えばシリコン酸化物により形成されている。第6層26は、第5層25上に配置されている。
【0018】
絶縁層20は、メンブレン部27を有している。メンブレン部27は、絶縁層20のキャビティ10c上にある部分である。
【0019】
配線30は、絶縁層20内に配置されている。より具体的には、配線30は、第3層23上に配置されており、かつ第4層24により覆われている。配線30は、例えば、白金により形成されている。配線30の周囲は、密着層31により覆われている。密着層31は、例えば、チタン酸化物により形成されている。密着層31により、絶縁層20と配線30との間の密着性が確保されている。密着層31は、第1部分31aと、第2部分31bとを有している。第1部分31aは、第3層23上に配置されている。配線30は、第1部分31a上に配置されている。第2部分31bは、配線30を覆っている。
【0020】
配線30は、ヒータ部32を有している。ヒータ部32は、メンブレン部27内に配置されており、かつ平面視において蛇行している配線30の部分である。ヒータ部32は、通電されることにより、抵抗発熱する。
【0021】
配線40は、絶縁層20内に配置されている。より具体的には、配線40は、第5層25上に配置されており、かつ第6層26により覆われている。配線40は、例えば、白金により形成されている。配線40の周囲は、密着層41により覆われている。密着層41は、例えば、チタン酸化物により形成されている。密着層41により、絶縁層20と配線40との間の密着性が確保されている。
【0022】
配線40は、温度センサ部42を有している。温度センサ部42は、メンブレン部27内に配置されており、かつ平面視において蛇行している配線40の部分である。温度センサ部42は、平面視において、ヒータ部32と重なっている。温度センサ部42は、測温抵抗体として機能する。すなわち、温度センサ部42を構成している配線40の電気抵抗値の変化を測定することにより、温度センサ部42近傍の温度が測定される。
【0023】
多孔質酸化物層50は、絶縁層20上に配置されている。より具体的には、多孔質酸化物層50は、メンブレン部27上に配置されている。図2は、多孔質酸化物層50の内部構造を示す模式図である。図2に示されるように、多孔質酸化物層50は、複数の螺旋構造体51から構成されていることが好ましい。螺旋構造体51は、基板10の厚さ方向に沿って螺旋状に延在している。すなわち、螺旋構造体51は、基板10の厚さ方向に沿う中心軸回りに回転しながら、基板10の厚さ方向に沿って延在している。
【0024】
図1に示されるように、多孔質金属層60は多孔質酸化物層50上に配置されている。多孔質金属層60は、例えば、白金により形成されている。多孔質金属層60は、カソードである。
【0025】
多孔質金属層60の相対密度は、0.5以上であることが好ましい。多孔質金属層60の相対密度は、多孔質金属層60の密度を多孔質金属層60の構成材料の密度で除した値である。多孔質金属層60の密度は、多孔質金属層60の重量を多孔質金属層60の見かけ体積(多孔質金属層60の構成材料の体積と多孔質金属層60内の空隙の体積との和)で除した値である。
【0026】
図3は、多孔質金属層60の内部構造を示す模式図である。図3に示されるように、多孔質金属層60は、複数の螺旋構造体61から構成されていることが好ましい。螺旋構造体61は、基板10の厚さ方向に沿って螺旋状に延在している。すなわち、螺旋構造体61は、基板10の厚さ方向に沿う中心軸回りに回転しながら、基板10の厚さ方向に沿って延在している。
【0027】
図1に示されるように、固体電解質層70は、多孔質金属層60上に配置されている。固体電解質層70は、酸素イオン伝導体により形成されている。固体電解質層70は、例えば、イットリア安定化ジルコニアにより形成されている。
【0028】
絶縁層80は、多孔質酸化物層50、多孔質金属層60及び固体電解質層70を覆うように、絶縁層20上に配置されている。但し、絶縁層80には、固体電解質層70を部分的に露出させる開口が形成されている。絶縁層80は、例えば、シリコン酸化物の層とタンタル酸化物の層とがスタックされている層である。
【0029】
多孔質金属層90は、絶縁層80から露出している固体電解質層70の部分上に配置されている。多孔質金属層90は、例えば、白金により形成されている。多孔質金属層90は、アノードである。
【0030】
ヒータ部32は、通電されることにより発熱し、固体電解質層70を加熱する。これにより、固体電解質層70は、酸素イオン伝導性を発現する。ガスセンサ100の周囲にあるガスは、多孔質酸化物層50を通って、多孔質金属層60に到達する。多孔質金属層60に到達したガス中の酸素ガスが多孔質金属層60から電子を受け取ることにより、酸素イオンが発生する。
【0031】
酸素イオンは、多孔質金属層60と多孔質金属層90との間の電圧により、固体電解質層70内を移動する。多孔質金属層90に到達した酸素イオンは、多孔質金属層90に電子を放出して酸素ガスとなる。この際、多孔質金属層60と多孔質金属層90との間に、電流が流れる。この電流は酸素ガスの濃度に比例するため、この電流を検知することにより、ガスセンサ100は、ガスセンサ100の周囲にあるガス中の酸素ガスの濃度を検知することができる。なお、ガスセンサ100の周囲にあるガス中の水蒸気の濃度も、同様にして検知される。
【0032】
(実施形態に係るガスセンサの製造方法)
以下に、ガスセンサ100の製造方法を説明する。
【0033】
図4は、ガスセンサ100の製造方法を示す工程図である。図4に示されるように、ガスセンサ100の製造方法は、準備工程S1と、第1絶縁層形成工程S2と、第1配線形成工程S3と、第2絶縁層形成工程S4と、第2配線形成工程S5と、第3絶縁層形成工程S6と、多孔質酸化物層形成工程S7と、第1多孔質金属層形成工程S8と、固体電解質層形成工程S9と、パターンニング工程S10と、第4絶縁層形成工程S11と、第2多孔質金属層形成工程S12と、キャビティ形成工程S13とを有している。
【0034】
準備工程S1では、基板10が準備される。準備工程S1で準備される基板10には、キャビティ10cは形成されていない。
【0035】
図5は、第1絶縁層形成工程S2を説明するための断面図である。図5に示されるように、第1絶縁層形成工程S2では、第1層21、第2層22及び第3層23が、順次形成される。第1層21、第2層22及び第3層23の形成は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて行われる。
【0036】
図6は、第1配線形成工程S3を説明するための断面図である。第1配線形成工程S3では、図6に示されるように、配線30及び密着層31が形成される。
【0037】
第1配線形成工程S3では、第1に、密着層31の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより、第1部分31aが形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばフォトリソグラフィを用いたマスクの形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0038】
第1配線形成工程S3では、第2に、配線30の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより、配線30が形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばフォトリソグラフィを用いたマスクの形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0039】
第1配線形成工程S3では、第3に、密着層31の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより、第2部分31bが形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばフォトリソグラフィを用いたマスクの形成及び当該マスクを用いたエッチングにより行われる。
【0040】
図7は、第2絶縁層形成工程S4を説明するための断面図である。図7に示されるように、第2絶縁層形成工程S4では、第4層24及び第5層25が、順次形成される。第4層24及び第5層25の形成は、例えば、CVD法を用いて行われる。図8は、第2配線形成工程S5を説明するための断面図である。図8に示されるように、第2配線形成工程S5では、配線40及び密着層41が形成される。配線40及び密着層41は、配線30及び密着層41と同様の方法により形成される。
【0041】
図9は、第3絶縁層形成工程S6を説明するための断面図である。図9に示されるように、第3絶縁層形成工程S6では、第6層26が形成される。第6層26の形成は、例えば、CVD法を用いて行われる。
【0042】
図10は、多孔質酸化物層形成工程S7を説明するための断面図である。なお、図10中の矢印は、多孔質酸化物層50の構成材料の蒸着方向を示している。図10に示されるように、多孔質酸化物層形成工程S7では、多孔質酸化物層50が形成される。多孔質酸化物層50は、多孔質酸化物層50の構成材料を蒸着することにより形成される。この蒸着は、主面10aの法線に対して傾斜した方向から行われる。この蒸着が行われている際には、基板10が主面10aの法線に沿う回転軸(図10中の点線参照)回りに1回以上回転されることが好ましい。
【0043】
図11は、多孔質酸化物層形成工程S7において螺旋構造体51が形成されるメカニズムを説明するための模式図である。なお、図11中の矢印は、多孔質酸化物層50の構成材料の蒸着方向を示している。図11に示されるように、多孔質酸化物層50の構成材料の蒸着が開始されることにより、絶縁層20上に、多孔質酸化物層50の構成材料からなる凝集核52が形成される。
【0044】
多孔質酸化物層50の構成材料の蒸着は、主面10aの法線に対して傾斜した方向から行われている。そのため、多孔質酸化物層50の構成材料は、凝集核52の影になる部分には、蒸着されない。その結果、多孔質酸化物層50の構成材料は、蒸着方向に沿って凝集核52に堆積されることになる(図11中の点線参照)。多孔質酸化物層50の構成材料の蒸着が行われている際、基板10は、主面10aの法線に沿う回転軸回りに回転される。そのため、多孔質酸化物層50の構成材料が堆積される方向も、この回転に伴って変化される。その結果、螺旋構造体51が形成されることになる。
【0045】
図12は、第1多孔質金属層形成工程S8を説明するための断面図である。なお、図12中の矢印は、多孔質金属層60の構成材料の蒸着方向を示している。図12に示されるように、第1多孔質金属層形成工程S8では、多孔質金属層60が形成される。多孔質金属層60は、多孔質金属層60の構成材料を、主面10aに対して傾斜した方向から蒸着することにより形成される。この蒸着は、主面10aに対して80°以上90°未満だけ傾斜した方向から行われることが好ましい。この蒸着が行われている際には、基板10が主面10aの法線に沿う回転軸(図11中の点線参照)回りに1回以上回転されることが好ましい。これにより、螺旋構造体61が形成されることになる。
【0046】
多孔質酸化物層形成工程S7及び第1多孔質金属層形成工程S8は、同一の蒸着装置を用いて行われることが好ましい。
【0047】
図13は、固体電解質層形成工程S9を説明するための断面図である。図13に示されるように、固体電解質層形成工程S9では、固体電解質層70が形成される。固体電解質層70は、固体電解質層70の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばドライエッチングにより行われる。図14は、パターンニング工程S10を説明するための断面図である。図14に示されるように、パターンニング工程S10では、多孔質酸化物層50及び多孔質金属層60のパターンニングが行われる。このパターンニングは、例えば、ドライエッチングにより行われる。
【0048】
図15は、第4絶縁層形成工程S11を説明するための断面図である。図15に示されるように、第4絶縁層形成工程S11では、絶縁層80が形成される。絶縁層80の形成は、例えばスパッタリングにより行われる。なお、絶縁層80には、エッチングが行われることにより、固体電解質層70を部分的に露出させる開口が形成される。
【0049】
図16は、第2多孔質金属層形成工程S12を説明するための断面図である。図16に示されるように、第2多孔質金属層形成工程S12では多孔質金属層90が形成される。多孔質金属層90は、多孔質金属層90の構成材料を成膜及びパターンニングすることにより形成される。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。このパターンニングは、例えばドライエッチングにより行われる。
【0050】
キャビティ形成工程S13では、例えばウェットエッチングにより、キャビティ10cが形成される。以上により、図1に示される構造のガスセンサ100が形成される。
【0051】
(実施形態に係るガスセンサ及びその製造方法の効果)
以下に、ガスセンサ100及びガスセンサ100の製造方法の効果を説明する。
【0052】
多孔質金属層60をスパッタリングにより形成しようとする場合、真空度が低い条件下でスパッタリングを行う必要があるため、汎用的なスパッタリング装置を用いることができない。すなわち、多孔質金属層60をスパッタリングにより形成しようとする場合、真空度が低い条件下でスパッタリングを行うことが可能な専用のスパッタリング装置が必要となり、製造コストが増大してしまう。
【0053】
他方で、ガスセンサ100の製造方法では、多孔質金属層60の構成材料を主面10aに対して傾斜する方向から蒸着することにより、多孔質金属層60が形成される。この蒸着は、汎用的な蒸着装置を用いて実現することが可能である。また、ガスセンサ100の製造方法では、多孔質酸化物層50も多孔質金属層60と同様の方法により形成されるため、多孔質金属層60の形成に用いられる蒸着装置を、多孔質酸化物層50の形成のために共用することができる。そのため、ガスセンサ100及びガスセンサ100の製造方法によると、製造コストを低減することが可能である。
【0054】
多孔質金属層60をスパッタリングにより形成しようとする場合、真空度が低い条件下でスパッタリングを行う必要があるため、多孔質金属層60の厚さの面内均一性が低くなってしまうおそれがある。他方で、ガスセンサ100の製造方法では、蒸着が行われる際に基板10が主面10aの法線に沿う回転軸回りに回転される。そのため、ガスセンサ100及びガスセンサ100の製造方法によると、蒸着が主面10aの法線に対して傾斜した方向から行われても、多孔質金属層60の厚さの面内均一性が維持されることになる。
【0055】
また、ガスセンサ100の製造方法では、蒸着が行われる際に基板10が主面10aの法線に沿う回転軸回りに回転されるため、多孔質金属層60が、複数の螺旋構造体61により構成されることになる。
【0056】
ガスセンサ100が動作している際、固体電解質層70は高温に加熱される(固体電解質層70がイットリア安定化ジルコニアにより形成されている場合、500℃程度まで加熱される)ため、固体電解質層70には、熱応力が作用する。ガスセンサ100では、螺旋構造体61がばねのように作用して固体電解質層70に加わる熱応力を緩和するため、固体電解質層70が熱応力により破損することが抑制される。
【0057】
図17は、多孔質金属層60の構成材料の蒸着方向と多孔質金属層60の相対密度との関係を示すグラフである。図17中では、横軸が多孔質金属層60の構成材料の蒸着方向と主面10aの法線とがなす角度(単位:°)であり、縦軸が多孔質金属層60の相対密度(単位なし)である。図17に示されるように、多孔質金属層60の構成材料を主面10aに対して80°以上90°未満だけ傾斜した方向から蒸着することにより、多孔質金属層60の相対密度を0.5以下にすることができる。
【0058】
多孔質金属層60の相対密度が小さくなることにより多孔質金属層60中の空隙が多くなるため、多孔質金属層60の変形能が高くなり、固体電解質層70に加わる熱応力を緩和しやすくなる。そのため、多孔質金属層60の構成材料を主面10aに対して80°以上90°未満だけ傾斜した方向から蒸着すること(多孔質金属層60の相対密度を0.5以下にすること)により、固体電解質層70が熱応力により破損することが抑制される。
【0059】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 基板、10a,10b 主面、10c キャビティ、20 絶縁層、21 第1層、22 第2層、23 第3層、24 第4層、25 第5層、26 第6層、27 メンブレン部、30 配線、31 密着層、31a 第1部分、31b 第2部分、32 ヒータ部、40 配線、41 密着層、42 温度センサ部、50 多孔質酸化物層、51 螺旋構造体、52 凝集核、60 多孔質金属層、61 螺旋構造体、70 固体電解質層、80 絶縁層、90 多孔質金属層、100 ガスセンサ、S1 準備工程、S2 第1絶縁層形成工程、S3 第1配線形成工程、S4 第2絶縁層形成工程、S5 第2配線形成工程、S6 第3絶縁層形成工程、S7 多孔質酸化物層形成工程、S8 第1多孔質金属層形成工程、S9 固体電解質層形成工程、S10 パターンニング工程、S11 第4絶縁層形成工程、S12 第2多孔質金属層形成工程、S13 キャビティ形成工程。
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