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特許7591974積層成形プレス装置、積層成形システム、および積層成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】積層成形プレス装置、積層成形システム、および積層成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/20 20060101AFI20241122BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20241122BHJP
   B30B 15/34 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B29C43/20
B29C43/56
B30B15/34 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021087201
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180219
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-28980(JP,A)
【文献】特開2002-120100(JP,A)
【文献】特開2008-221840(JP,A)
【文献】特開2009-73114(JP,A)
【文献】特開平5-147053(JP,A)
【文献】特許第6790297(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/34
B29C 43/44-43/48
B29C 43/52-43/58
B30B 1/00-7/04
B30B 12/00-13/00
B30B 15/30-15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置において、
前記上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、熱硬化性樹脂またはエンジニアリングプラスチックの樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えられ、
前記樹脂フィルムの樹脂は、ロックウェルRスケールが15以上、140以下の硬度を有することを特徴とする、積層成形プレス装置。
【請求項2】
上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置において、
前記上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、エンジニアリングプラスチックまたは熱硬化性樹脂の樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えられ、
前記樹脂フィルムの樹脂は、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンナフタレート、ふっ素樹脂、フェノール樹脂、アラミドの少なくとも一つであることを特徴とする積層成形プレス装置。
【請求項3】
前記金属薄板は、ステンレス、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅や前記金属の合金、または前記金属以外のヤング率70ないし205の金属からなり、
厚みは0.005mmないし5.0mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層成形プレス装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層成形プレス装置は真空積層装置の後
工程に設けられ、キャリアフィルムにより前記真空積層装置から搬送された凹凸部を備え
た被積層材と積層フィルムが前記積層成形プレス装置により加圧成形されることを特徴と
する積層成形システム。
【請求項5】
上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを積層成形プレス装置で加圧
成形する積層成形方法において、
前記上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、ロックウェルRスケールが15以上、140以下の硬度を有する熱硬化性樹脂またはエンジニアリングプラスチックの樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えられ、
前記積層成形プレス装置により無機材料の含有率が20体積%以上の積層フィルムと、凹凸部を備えた被積層材とが加圧成形されることを特徴とする積層成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置、該積層成形プレス装置を備えた積層成形システム、および積層成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置としては特許文献1ないし特許文献4に記載されたものが知られている。特許文献1は、真空積層装置の後工程に積層成形プレス装置である平坦化プレス機が備えられている。そして平坦化プレスは、加圧ブロックである研磨板の表面に例えば1.5mm程度の厚さを有するゴムなどからなる緩衝材が貼着され、緩衝材の表面には2mm程度の厚さのステンレスなどからなる弾性変形可能な鏡面板が貼着されている。そして成形時には成形面を構成する鏡面板は、当初製品の表面の凹凸に応じて弾性変形し、その後徐々に緩衝材の弾性変形と鏡面板の弾性変形により、もとの平面に戻るように作用することが記載されている。
【0003】
また特許文献2は、特許文献1と同様に真空積層装置の後工程に積層成形プレス装置である平面プレス装置について記載したものであって、平面プレスにおけるプレスブロックの表面に緩衝材とフレキシブル金属板が順次配置されることも共通している。また特許文献2は緩衝材の材質についてフッ素系ゴムが特に好ましいことが記載されているが、紙、プラスチックを用いてもよいことが記載されている。
【0004】
更に特許文献3は、1次成形を行う真空積層装置と2次成形を行う平面プレス装置の双方に、それぞれ熱盤のフィルム状樹脂材側の各面に緩衝材を介して金属板状体を設け、この板状体にフィルム状樹脂材の表面に当接してこれを加圧する弾性プレス板を接着固定することが記載されている。そして明細書の(0031)には、ゴム弾性等を有する緩衝材を設けることが好ましいことが記載されている。
【0005】
更にまた特許文献4では、第一真空プレス装置と第二真空プレス装置からなる真空プレス設備が記載され、第一真空プレス装置は加圧面が十分な弾性を有していること、第二プレス装置の加圧面は金属部材によっても形成できるが、弾性部材であっても硬質ゴムなどを用いて成形することもできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-120100号公報(請求項1)、(0029)、(0035)、(図1)、(図5
【文献】特開2004-122553号公報(請求項1)、(0041)ないし(0044)、(図1
【文献】特開2008-12918号公報(要約書)、(請求項1)、(0030)、(0031)、(図1)、(図8
【文献】特開2005-334902号公報(請求項1)、(0018)、(0019)、(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年では積層成形に使用される積層フィルムは、フィルム表面の低祖度化による被積層物との密着性の向上、熱膨張率の低下させることによる基板との剥離の防止、絶縁性の向上(誘電損失の低減)含水率の低下などの目的からSiO2等の無機材料の含有率を増加させたタイプが増加しつつある。しかしその結果、積層フィルムはヤング率が大きいものが増加しており、積層フィルムを加熱・加圧する際の溶融材料の流動性についても従来のタイプの積層フィルムよりも低下するという問題がある。
【0008】
またこの問題に対して従来のプレス装置を使用し加圧時の加圧力を単に増加させると、図5に示されるように緩衝材の弾性作用が大きいため被積層との端部に対応する加圧面の部分に応力が集中して前記端部付近の積層フィルムの樹脂材料が外部に流れて成形不良となるなどの問題もあった。
【0009】
そこで本発明では、精度の高い積層成形品を積層成形することを可能とするか、または無機材料の含有率が多い積層フィルムを用いた積層成形品を良好に積層成形することを可能とした積層成形プレス装置および積層成形システムならびに積層成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の積層成形プレス装置は、上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置において、前記上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、エンジニアリングプラスチックまたは熱硬化性樹脂の樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えられ、
前記樹脂フィルムの樹脂は、ロックウェルRスケールが15以上、140以下の硬度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の積層成形プレス装置は、上盤と下盤の間で凹凸部を備えた被積層材と積層フィルムとを加圧成形する積層成形プレス装置において、前記上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、エンジニアリングプラスチックまたは熱硬化性樹脂の樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えられ、前記樹脂フィルムの樹脂は、ロックウェルRスケールが15以上、140以下の硬度を有するので、精度の高い積層成形品を積層成形することが可能となるか、または無機材料の含有率が多い積層フィルムを用いた積層成形品の成形においても良好に積層成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
図2】第1の実施形態の積層成形プレス装置の要部の拡大図である。
図3】第2の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
図4】第3の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
図5】従来の積層成形プレス装置を用いて加圧成形を行った際の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態の積層成形システム1について、真空積層装置2と積層成形プレス装置3を断面表示した図1を参照して説明する。積層成形システム1は、真空積層装置2の後工程に積層成形プレス装置3が設けられ、キャリアフィルムF1,F2により前記真空積層装置2から搬送された凹凸部を備えた被積層材である基板A1と積層フィルムA2が前記積層成形プレス装置3により加圧成形されるものである。
【0014】
基板A1と積層フィルムA2の移送装置とテンション装置を兼ねるキャリアフィルム送出装置4は、下側の巻出ロール411および従動ロール412を備えている。前記巻出ロール411から巻き出された下キャリアフィルムF1は従動ロール412の部分で水平状態に向きが変更される。下キャリアフィルムF1が水平状態となった部分に、前工程から重ねられて送られてくる被成形材である基板A1と積層フィルムA2を載置する載置ステージ部413が設けられている。またキャリアフィルム送出装置4は、上側の巻出ロール414および従動ロール415を備えており、前記巻出ロール414から巻き出された上キャリアフィルムF2は従動ロール415の部分で基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3の上に重ねられる。これらキャリアフィルムF1,F2に挟まれて基板A1と積層フィルムA2が移送され、真空積層装置2や積層成形プレス装置3においてキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形が行われることにより、積層フィルムA2が溶融して装置部分に付着することを防止したり、特に積層成形プレス装置3においては中間積層材A4を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。
【0015】
キャリアフィルム送出装置4の後工程に配置される真空積層装置2は、真空状態(減圧状態)のチャンバC内においてダイアフラム211等の加圧体により基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3を加圧し、1次成形品である中間積層材A4を積層成形するものである。真空積層装置2は、固定的に設けられた上盤212に対して下盤213が昇降機構214により昇降可能に設けられ、下盤213が上昇して上盤212と当接した際に内部にチャンバCが形成可能となっている。チャンバCは図示しない真空ポンプに接続され、減圧可能となっている。また上盤212の中央の下面には熱板215が取付けられ、熱板215の表面には図示しない耐熱性のゴム膜等の弾性体216が取付けられている。一方下盤213の中央の上面にも熱板217が取付けられている。また下盤213の前記熱板217の周囲の部分には加圧体である耐熱性ゴム膜からなるダイアフラム211が熱板217の上面を覆うように取付けられている。そして図示しないコンプレッサにより加圧空気がダイアフラム211の裏面側に送られることによりダイアフラム211はチャンバC内で膨出して熱板217との間で基板A1と積層フィルムA2を加圧する。なお真空積層装置2のダイアフラム211は上盤に取付けられたものでもよい。また真空積層装置の加圧体は、表面に弾性体が取付けられたロール体同士の間や前記ロール体と加圧板の間で基板A1と積層フィルムA2を加圧するもの等でもよい。
【0016】
前記真空積層装置2の後工程に直列方向に配設される積層成形プレス装置3は、真空積層装置2で加圧成形され凹凸部を備えた被積層材A1と積層フィルムA2とからなり積層フィルムA2の側に凹凸が残った状態の中間積層材A4を更に加圧してより一層平坦な積層成形品A5に加圧成形するものである。積層成形プレス装置3は、下方に設けられた略矩形のベース盤311と、前記ベース盤311の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤312の四隅近傍の間にそれぞれ立設されたタイバ313を備えている。そして積層成形プレス装置3は、略矩形の可動盤である下盤314がベース盤311と上盤312との間で昇降移動可能となっている。またベース盤311には加圧手段であって油圧により作動する加圧シリンダ315が設けられ、加圧シリンダ315のラム316が下盤314の背面に固定されている。なお第1の実施形態の積層成形プレス装置3の加圧手段は、電動モータとトグル装置の組み合わせなど他の方式のものでもよい。更に積層成形プレス装置3は、下盤に対して上盤が下降するものなどでもよい。更にまた第1の実施形態の積層成形プレス装置3は、真空状態とすることが可能なチャンバを備えていないが、真空状態にすることが可能なチャンバを備え、真空チャンバ内で加圧を行うものでもよい。
【0017】
積層成形プレス装置3の上盤312と下盤314の各対向面には加圧ブロック317,318がそれぞれ取付けられている。次に図2を用いて下盤314側の加圧ブロック318等について詳細に説明する。なお図2では樹脂フィルムであるふっ素樹脂フィルム321や金属薄板であるステンレス製の薄板322の長さに対する厚みは、実際のものよりも厚くデフォルメして描画されている。積層成形プレス装置3の下盤314と加圧ブロック318の間には断熱材319が配置され、加圧ブロック318の内部に加熱手段であるカートリッジヒータ320が複数本平行に配置されている。なお熱板でもある加圧ブロック318等は、特許文献1のように研磨板や板状のヒータを備えたものでもよく、図2のものに限定されない。
【0018】
そして加圧ブロック318の平滑な表面318aには緩衝材としてPTFE等のふっ素樹脂フィルム321等の熱硬化性樹脂の樹脂フィルム、またはポリイミド等のエンジニアリングプラスチックの樹脂フィルムが重ねられている。そして前記ふっ素樹脂フィルム321の表面にはステンレス製の薄板322等の金属薄板が重ねられている。第1の実施形態では加圧ブロック318の表面318a、ふっ素樹脂フィルム321、ステンレス製の薄板322の平面視した形状は同一となっている。そして前記ステンレス製の薄板322の表面は加圧面322aを構成している。前記ふっ素樹脂フィルム321とステンレス製の薄板322は、加圧面以外の周囲の複数個所(4箇所、6箇所、8箇所等)に図示しないボルト用の穴が設けられており、前記穴を介してボルトが加圧ブロック318のボルト穴に相通され、ふっ素樹脂フィルム321とステンレス製の薄板322は加圧ブロック318に対して固定されている。なおステンレス製の薄板322等の熱膨張を可能とするためにボルトが挿通される部分に調整部を設けてもよい。また加圧ブロック318への前記ふっ素樹脂フィルム321とステンレス製の薄板322の貼着方法は、ボルト以外のホルダや接着材による接着を用いて接着するものでもよい。前記構造により積層成形プレス装置3の加圧ブロック318には、緩衝材であるふっ素樹脂フィルム321を介して加圧面322aを構成する金属薄板322が備えられる。
【0019】
次に本発明において積層成形プレス装置3の緩衝材として使用される樹脂フィルムについて説明する。本発明に使用される樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムやエンジニアリングプラスチックフィルムまたはであって工業用機能フィルムが好ましい。第1の実施形態ではふっ素樹脂フィルム321,324が用いられている。ふっ素樹脂フィルム321については、テフロン(登録商標)とも呼ばれるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ロックウェルRスケール(ISO 2039-2)20、荷重たわみ温度(℃(1.81MPa))55℃、最高使用温度260℃)の他、PFA(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度47℃、最高使用温度260℃)、FEP(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度50℃、最高使用温度200℃)、PCTFE(ロックウェルRスケール80、荷重たわみ温度90℃、最高使用温度120℃)、ETFE(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度74℃、最高使用温度150℃)、ECTFE(ロックウェルRスケール50、荷重たわみ温度77℃、最高使用温度150℃)、PVDF(ロックウェルRスケール93ないし116、荷重たわみ温度100℃、最高使用温度156℃)等の種類があり、前記のふっ素樹脂フィルム321のいずれでもよい。とりわけPTFEは入手が容易であり、最高使用温度も高いのでよく用いられる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFR)については、ロックウェルRスケールの値の低いものでは18程度のものも存在し、R15程度の硬度の樹脂フィルムであっても同様の積層成形が可能である。前記ふっ素樹脂フィルムに使用されるふっ素樹脂は、ふっ素ゴムのように架橋処理がされていないものであり、ふっ素ゴム等のような伸縮性は備えていない。
【0020】
また本発明で使用される熱硬化性樹脂フィルムの一例としては、これに限定されるものではないが、ふっ素樹脂(FR)の他、フェノール樹脂(PF)、尿素樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、アリル樹脂(PDAP)、アルキッド樹脂(ALK)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ジリアルフタレート(DAP)、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂(SI)、ポリイミド(PI)などが含まれる。熱硬化性樹脂フィルムは特に耐熱性に優れ、積層成形プレス装置3に使用する温度が比較的高温の場合でも劣化しにくい性質であるので好適に選択される。
【0021】
また緩衝材に用いる樹脂フィルムは、エンジニアリングプラスチックでもよい。本発明におけるエンジニアリングプラスチックの定義は、耐熱性が100℃以上、引張強度49MPa以上、曲げ弾性率2.4GPa以上の樹脂を指す。そして本発明のエンジニアリングプラスチックには、汎用エンジニアリングプラスチック(略して汎用エンプラとも呼ばれる)と、スーパーエンジニアリングプラスチック(略して特殊エンプラとも呼ばれる)が含まれるものとする。緩衝材に用いられる汎用エンジニアリングプラスチックの例としては、これに限定されるものではないが、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)などが含まれる。汎用エンジニアリングプラスチックは積層成形プレス装置が比較的低温で使用される際に使用可能である。
【0022】
またスーパーエンジニアリングプラスチックは、耐熱性150℃以上の樹脂であり、緩衝材に用いられる汎用エンジニアリングプラスチックの例としては、これに限定されるものではないが、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンナフタレート(ポリエーエルニトリル)(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PFI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノブスアレイイミド(PABM)、ポリブシマレイミドリアジン(BT-レジン)、ポリオキシベンゾイル(POB)、アラミド(芳香族骨格のみで構成されるポリアミドでありArと称される場合もある)、熱可塑性ポリイミド(PI)などが含まれる。
【0023】
上記のスーパーエンジニアリングプラスチックを含むエンジニアリングフィルムのうち、本発明に特に好適に用いられる樹脂としては、ポリイミド(熱可塑性または熱硬化性の双方)(荷重たわみ温度260℃以上、ロックウェルRスケール110ないし130)、ポリエーテルケトン(荷重たわみ温度140℃、ロックウェルRスケール126)、ポリサルホン(荷重たわみ温度、ロックウェルRスケール110ないし120)ポリフェニレンサルファイド(荷重たわみ温度260℃、ロックウェルRスケール100)、ポリエーテルサルホン(荷重たわみ温度203℃、ロックウェルRスケール100)、ポリエチレンナフタレート(ポリエーエルニトリルフィルム)(荷重たわみ温度330℃、ロックウェルRスケール114)、アラミド(荷重たわみ温度200℃ないし230℃)があり、これらは市販品としても比較的入手容易である。またこれら樹脂の少なくとも一つを用いたものでもよい。また上記の中では、ポリイミドフィルムまたはポリイミドを主成分とする樹脂フィルムが好適に用いられる。ポリイミドフィルムは比較的容易に入手でき、耐熱性にも優れている。
【0024】
また本発明に使用する樹脂フィルムは、これに限定されるものではないが、硬度(ロックウェルRスケール)(ISO 2039-2)が、15ないし140のものが好適にも用いられる。なおロックウェルRスケールについては、単なる測定方法であるので、ロックウェルMスケール等の別の測定方法の測定値がカタログ等に掲載されている樹脂も本発明の対象となることは言うまでもない。樹脂フィルムの硬度が低すぎるとゴムを緩衝材とした場合のように加圧面の一部(特に積層成形物の端部)に応力集中し、硬度が高すぎても加圧面の一部(特に積層成形物の被積層材の凸部の前面)に応力が集中する。樹脂フィルムの硬度が適切な範囲であると加圧面の各部分において略均等な加圧が行われやすい。
【0025】
なお本発明の樹脂フィルムは、主成分として前記樹脂の比率(体積%)を最も多く含むものであれば複数種の樹脂が混合されたものでもよい。または複数種の樹脂フィルムが貼着されて樹脂フィルムを構成するものでもよい。さらには主成分が前記のような樹脂材料であれば、樹脂材料以外のものを含有するものでもよい。一例としては樹脂以外に繊維やその他の添加剤を含むものが含まれていてもよい。またわずかな発泡比率であれば発泡樹脂であってもよい。すなわち特許文献2にはゴムからなる緩衝材の硬度としてショアA70度の例が示されているが、ショアA70度やそれ以下の硬度の緩衝材を用いた際のような緩衝作用を備えないものであればよい。また特許文献2では緩衝材にプラスチックを用いることも記載がされているが、紙、ゴムとともに列挙されており、上記ゴムのような緩衝作用を備えた緩衝材を使用することを前提とした材料の列挙であり、どのような種類のプラスチックを使用するか一切記載されていない。
【0026】
また第1の実施形態では緩衝材は1枚のふっ素樹脂フィルム321のみが用いられるが、同じ樹脂フィルムを2枚以上、または種類または厚みの異なる樹脂フィルムを2枚以上単に重ねたり、貼合わせしたものでもよい。また本発明の樹脂フィルムは可撓性を備えるが、所定以上の力を加えて曲げると折れるものであってもよい。また特許文献1のように加圧ブロックの表面にゴムヒータを配置したり、または加圧ブロックの表面にゴム等を含む極めて薄いコーティング層を形成し、その上にポリイミド等の樹脂フィルムを載置し更にその上面にステンレス製の薄板322等の金属薄板を設けたものでもよい。
【0027】
またこれらの緩衝材としての樹脂フィルムの厚みは0.01mmないし2.00mm、更に好ましくは0.02mmないし1.00mmがより好ましい。一般的に厚みが1.00mm以下のものをフィルム、1.00mm以上のものをシートと分類して呼称する場合もあるが、本発明では1.00mmないし2.00mmの範囲のものも全てフィルムの概念に含める。そして複数の樹脂フィルムを重ねて緩衝材として用いる場合にも合計厚みは前記厚みとすることが望ましい。樹脂フィルムの厚みが0.02mmよりも薄い場合、ステンレス製の薄板322,325による弾性変形効果が殆ど得られないので、基板A1の凸部A1bの前面部分のみに過剰な力が加わってしまうという問題がある。また樹脂フィルムの厚みが2.00mmよりも厚い場合、図5にデフォルメして示されるようにゴムを緩衝材として使用していたときと同様の不具合が発生する。また前記樹脂フィルムが0.02mmないし0.05mmの範囲では、基板A1の凸部A1bの高さが高い場合には問題となることもある。更に1.00mmないし2.00mmの範囲は緩衝作用が大きくなりすぎることもある。なおこれらの樹脂フィルムの厚みは加圧ブロック318に樹脂フィルムを取付した際の厚みである。加圧ブロック318に取付後の樹脂フィルムは、プレス成形の回数を経るに従って僅かに厚み寸法が減少する場合があるので、プレス成形後に樹脂フィルムを取り外した際は、同一厚みが維持されているとは限らない。ただし樹脂フィルムの厚みが僅かに変わったとしても著しく変わらない限り加圧成形には殆ど支障はない。
【0028】
前記ふっ素樹脂フィルム321の表面に重ねられるステンレス製の薄板322は、加圧面322aである表面が平滑な鏡面板となっている。ステンレス製の薄板322の厚みは0.05mmないし5.0mm、より好ましくは0.5mmないし3.0mmである。なお金属薄板の材質は、ステンレス(ヤング率(E/GPa)200)に限定されず、鉄(ヤング率(E/GPa)205)、アルミニウム(ヤング率(E/GPa)70)、ニッケル(ヤング率(E/GPa)204)、銅(ヤング率(E/GPa)110)やそれらの合金や同等のヤング率を備えた金属であってもよい。また成形物によっては加圧面である表面は所定の面粗度を備えたものでもよい。本発明ではポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムと前記金属薄板の組み合わせにより、従来のゴムからなる緩衝材を使用していたときのような加圧時の金属板の大きな弾性変形を防止することができ、その結果、基板端部から外側への積層フィルムの流動を防止することが可能となる。また積層成形される積層成形品Aの種類によっては、ステンレス製等の金属薄板の厚みを0.1mmないし0.8mmといった薄いものを使用することによりより一層弾性作用を期待することができる。なおステンレス製の薄板322の表面の加圧面に窒化処理や炭化処理をして被膜が形成されたものも本発明の金属薄板の表面が加圧面であるものに含まれる。
【0029】
第1の実施形態の積層成形プレス装置3においては、上盤312も下盤314と同じ加圧ブロック317、PTFE等のふっ素樹脂フィルム324、ステンレス製の薄板325を備えている。しかしながら上盤312側の加圧ブロック317と下盤314側の加圧ブロック318は、少なくとも一方が上記の構造を備えたもの、または上盤312と下盤314で緩衝材であるフィルムの材質や厚みを異ならせたもの、或いは金属薄板の材質や厚みを異ならせたものであってもよい。具体的には基板A1の片面のみに凹凸部A1aが備えられており、前記凹凸部A1aのある側にのみ積層フィルムA2を貼り合わせる場合は、基板A1の凹凸部A1aのある側に対応する側の盤のみに、ポリイミドフィルムとステンレス製の薄板を備えた加圧ブロックを設けてもよい。しかし基板A1の両面に凹凸部が備えられており、両面側に積層フィルムA2を貼着する場合は、図1のよう積層成形プレス装置3の上盤312と下盤314の加圧ブロック317.318に、PTFE等のふっ素樹脂フィルム324,321、ステンレス製の薄板322,325を備えることが望ましい。
【0030】
積層成形プレス装置3の後工程には積層成形品A5の移送装置とテンション装置を兼ねたキャリアフィルム巻取装置5が設けられている。キャリアフィルム巻取装置5は、下側の巻取ロール511および従動ロール512を備えており、前記巻取ロール511により下キャリアフィルムF1が巻き取られる。またキャリアフィルム巻取装置5は、上側の巻取ロール513および従動ロール514を備えており、前記従動ロール514の部分で積層成形品A5から上キャリアフィルムF2が剥離され、上キャリアフィルムF2は前記上側の巻取ロール513に巻取られる。そして下キャリアフィルムF1のみが水平状態で送られる部分に積層成形品A5の取出ステージ515が設けられている。なおキャリアフィルムF1,F2の移送装置としては、キャリアフィルムF1,F2の両側を把持して後工程に向けて引っ張る移載装置を設けてもよい。また積層成形システム1の積層成形物A3や中間積層材A4等の移送装置は前記に限定されず、多軸ロボット等を用いたものでもよい。なお第1の積層成形システム1において、積層成形プレス装置3の後工程に冷却プレス装置等の更に別の装置を設ける場合は、キャリアフィルム巻取装置5は前記別の装置の後工程に設けられる。
【0031】
次に第1の実施形態の積層成形プレス装置3を含む積層成形システム1を用いた、被積層材A1と積層フィルムA2の積層成形方法について説明する。連続成形時の積層成形システム1では、ダイアフラム式の真空積層装置2と平坦化プレス装置である積層成形プレス装置3においてシーケンス制御により同時にバッチ処理的に加圧成形が行われる。しかしここでは1バッチ分の被積層材である基板A1と積層フィルムA2の成形順序に沿って説明する。キャリアフィルム送出装置4から巻き出してキャリアフィルム巻取装置5に巻き取られるように設けられる上下のキャリアフィルムF1.F2は、これに限定されるものでないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)製で厚みは0.02mmないし0.20mmのものが多い。
【0032】
キャリアフィルム送出装置4の載置ステージ部413に載置される被積層材A1は、基板表面に接着された銅箔部分の凸部A1bと銅箔が無い部分の凹部A1cからなる凹凸部A1aを有するビルドアップ用の回路基板である。銅箔の厚み(基板部分に対する高さ)はこれに限定されないが数umから数十um程度であって殆どの場合0.1mm以下である。前記回路基板A1の上下にそれぞれ積層フィルムA2が重ねられてビルドアップ成形用の積層成形物A3が構成される。なお図1では積層成形物A3は1個が記載されているが同時に複数個数の積層成形物A3を積層成形するものでもよい。
【0033】
第1の実施形態における積層フィルムA2は絶縁フィルムであって、元の保存状態から両面に積層されているPETフィルムが剥離されて使用される。積層フィルムA2の樹脂材料はエポキシ等の熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を主成分とするものである。また前記熱硬化性樹脂以外の材料としては、粗度調整、難燃性付与、低膨張性付与、流動性付与、成膜性付与、低誘電正接化(絶縁性付与)、含水率低下等の目的で各種の材料、添加剤が含有されている。とりわけ近年では、粗度調整付与、低膨張性付与、低誘電正接化、含水率低下等のために無機材料の含有量が増加するタイプが増加しつつある。無機材料の種類としてはこれに限定されるものではないが、SiO2などが挙げられる。
【0034】
第1の実施形態では無機材料であるSiO2の含有率(体積%)が20%以上の積層フィルムA2が好適に用いられる。本発明において無機材料であるSiO2の含有率(体積%)が20%以上の積層フィルムA2は無機材料の含有率の多い樹脂フィルムと定義づけられる。これに限定されるものではないが味の素ファインテクノ株式会社の層間絶縁フィルムである「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」(登録商標)の例では、GX13(ヤング率(GPa)4.0)、GX92(ヤング率(GPa)5.0)、GX-T31(ヤング率(GPa)7.5)、NextGX(ヤング率)7.5)、GZ41(ヤング率(GPa)9.0)、またはヤング率(GPa)9.0以上のフィルムが使用対象の無機材料の含有率の多い樹脂フィルムとして挙げられる。また他社製品も同等材料の無機材料の含有率の多い樹脂フィルムが含まれる。これらの樹脂フィルムは上記したようにフィルム表面の低祖度化による被積層物との密着性の向上、熱膨張率の低下させることによる基板との剥離の防止、絶縁性の向上(誘電損失の低減)含水率の低下などの目的から無機材料が20体積%以上、40%重量以上含まれている。とりわけ第5世代通信システムである5G用の基板においては、より一層の精度が求められることから無機材料の含有率が25体積%以上の積層フィルムA2(層間絶縁フィルム)が特に好適に用いられる。また前記積層フィルムA2の厚みは、これに限定されるものではないが味の素ファインテクノ株式会社製等の層間絶縁フィルムでは、0.01mmないし0.1mmのものが市販されており多く使用されている。また積層フィルムA2は銅箔層が積層されたものでもよくこれらも本発明の積層成形プレス装置に用いられる。
【0035】
そして載置ステージ部413に載置された前記積層成形物A3は、巻取ロール511,513の回転駆動ともに上下キャリアフィルムF1,F2とともに移動され、開放状態の真空積層装置2のチャンバC内に送られ位置決めされる。次に真空積層装置2はチャンバCが閉鎖され図示しない真空ポンプによりチャンバC内が真空状態とされる。そして加圧空気を送り込んでダイアフラム211をチャンバC内に膨出させ、基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3を上盤212側の熱板215の弾性体216との間で加圧する。この際のダイアフラム211による加圧力は一例として1MPa以下であり、基板A1の凹部A1cに積層フィルムA2が埋め込まれる形で基板A1と積層フィルムA2の接着が行われ、1次成形品である中間積層材A4が積層成形される。しかし真空積層装置により積層成形された中間積層材A4の積層フィルムA2の表面はまだ基板A1の凹凸部A1aの形状に倣って凹凸が残った状態である。またこの際、使用される積層フィルムが無機材料の含有率が高い場合には溶融樹脂の流動性が低いのでより一層凹凸が残りやすい。
【0036】
真空積層装置2において凹凸部A1aを備えた被積層材A1と積層フィルムA2からなり、両者が貼着された中間積層材A4が積層成形されるとチャンバCが開放される。そしてキャリアフィルム巻取装置5による次のキャリアフィルムF1,F2の送りにより、前記中間積層材A4は積層成形プレス装置3の上盤312と下盤314の間に搬送され、所定の加圧位置に停止される。次に積層成形プレス装置3の加圧シリンダ315が作動され、下盤314および加圧ブロック318が上昇される。加圧ブロック318には緩衝作用を備えたふっ素樹脂フィルム321を介して弾性変形可能なステンレス製の薄板322が取り付けられていることは上記した通りであるが、前記ステンレス製の薄板322の加圧面322aが下キャリアフィルムF1に当接後更に下キャリアフィルムF1を介して中間積層材A4を押し上げる。そして中間積層材A4は、上キャリアフィルムF2を介して上盤312のステンレス製の薄板325の加圧面325aに当接され、その後上下の加圧面322aと加圧面325aの間で加圧される。
【0037】
この際の積層成形プレス装置3の加圧ブロック317,318(熱板)の温度は、基板A1や積層フィルムA2の材質によって異なるからこれに限定されるものではないが、80℃ないし140℃、より好ましくは90℃ないし130℃に制御される。この際の温度が高すぎると積層フィルムを構成する樹脂材料が溶融した際の粘度が低くなって流動性が高くなりすぎて中間積層材の端部から積層フィルムを構成する樹脂材料が流出して積層成形品の所望の板厚や絶縁層の厚みが得られない。更に加圧時の加圧ブロック317,318の温度が高すぎると、樹脂材料の劣化を招いたり、後工程での冷却も含めた成形サイクル時間がより長く必要となるといった問題も発生する。一方、加圧時の加圧ブロック317,318の温度が低すぎると、樹脂材料の際の粘度が高すぎて所望の流動性が得られず、基板A1への積層フィルムA2の埋め込みが十分できなかったり、積層成形品A5の表面が十分な平坦性が得られなかったりする問題が発生する。
【0038】
また中間積層材A4に対する加圧力(面圧)もまた、基板A1や積層フィルムA2の材質により異なりこれに限定されるものではないが、0.3MPa~4.0MPa、より好ましくは0.5MPa~2.5MPaに制御される。この際の加圧力が強すぎたりると中間積層材A4の端部から積層フィルムA2を構成していた溶融樹脂材料が流出して温度条件と同様に良好に加圧成形ができない。また低すぎると基板A1への積層フィルムA2の埋め込みが十分できなかったり、積層成形品A5の表面が十分な平坦性が得られなかったりする。
【0039】
また第1の実施形態では弾性可能な金属板であるステンレス製の薄板322,325と加圧ブロック317.318の間の緩衝材をふっ素樹脂フィルム324,321等の樹脂フィルムとすることにより、従来の緩衝材をゴムとしたものと比較して緩衝材の硬度を高くして弾性金属板であるステンレス製の薄板322,325の弾性変形を所望の範囲にまで抑制または実質的に殆ど変形しない程度にまですることができる。また加圧ブロックが金属ブロックのみの場合は、基板A1の凸部A1bの前面に対応する中間積層材A4の表面部分のみに力が加わり過ぎて、基板A1を破壊したり基板A1の凹部A1cの部分が十分に押圧できない可能性がある。
【0040】
この点について従来の緩衝材をゴムとした積層成形プレス装置10では、図5に示されるように、プレス成形時に緩衝材101,102の中央部101a,102aは、中間積層材A4を加圧した反力により付勢されて圧縮され、直接中間積層材A4と当接するステンレス製の薄板103,104の中央部103a,104aも加圧ブロック105,106側に向けて撓む。それと比較して直接中間積層材A4を加圧していない緩衝材101,102の外側部101b,102bは殆ど圧縮されない。その結果、加圧ブロック105,106とステンレス製の薄板の外側部103b,104bとの間の距離が、加圧ブロック105,106とステンレス製の薄板の中央部103a,104aとの間の距離よりも相対的に大きくなる現象が発生する。前記現象が発生すると、中間積層材A4の外側に対応するステンレス製の薄板の外側部103b,104bは、中心側が加圧ブロック105,106に向けて後退し外側が加圧ブロック105,106から突出する状態の傾斜面103c、104cを形成する。よって前記ステンレス製の薄板の外側部103b,104bの傾斜面103c、104cと中間積層材A4の外側部分の表面の間には所定の角度αができる。その結果、中間積層材A4の積層フィルムA2層の端部A2aに対しては、加圧時の応力が集中する。更にその結果、前記中間積層材A4の積層フィルムA2の端部A2a付近の溶融状態の樹脂が外側に向けて流出樹脂A2bのようにはみ出すという問題が発生していた。
【0041】
それに対して第1の実施形態では、緩衝材にふっ素樹脂フィルム321.324等の熱硬化性樹脂の樹脂フィルムまたはエンジニアリングプラスチックを用いているので、中間積層材A4を加圧時に中央部の緩衝材の樹脂フィルムのみが部分的に大きく圧縮される程度が小さく、弾性金属板であるステンレス製の薄板322,325の弾性変形も小さな程度で収まる。そのため中間積層材A4の表面の積層フィルムA2の端部A4cに応力の集中する程度が小さくなり、前記中間積層材A4の積層フィルムA2層の端部A4c付近の溶融状態の樹脂が外側に向けて流動することも殆どなくなる。
【0042】
そして積層成形プレス装置3において前記温度および加圧力により加圧が行われることにより、凹凸の残った中間積層材A4の上下の積層フィルムA2側の表面は平面となり、積層成形品A5へと積層成形される。そして所定の加圧時間が終了すると加圧シリンダ315が再度作動して下盤314が下降すると、次に上下の巻取ロール511,513が回転作動され、積層成形品A5は取出ステージ515に移送され、図示しない移載装置により後工程に搬出される。積層成形品A5または積層成形品A5が再加工された基板等は本発明に包含される。
【0043】
次に図3に示される第2の実施形態の積層成形システム6について、第1の実施形態の積層成形システム1との相違点を中心に符号を付して説明する。第2の実施形態の積層成形システム6の積層成形プレス装置8は、ダイアフラムを使用するものではなく、加圧シリンダ819等の加圧機構は、第1の実施形態の積層成形プレス装置3とほぼ同じ構造である。積層成形プレス装置8は、上盤811と下盤812にそれぞれ取付られる加圧ブロック813,814は、緩衝材であるポリイミドフィルム815,816と金属薄板であるステンレス製の薄板817,818を各々備えており、前記ステンレス製の薄板817,818の表面が加圧面817a,818aとなっている。また加圧シリンダ819により下盤812が上昇して前記加圧面817a,818aの間で加圧成形を行う点も同じである。
【0044】
第1の積層成形システム1の積層成形プレス装置3と第2の実施形態の積層成形システム6の積層成形プレス装置8の相違点は、積層成形プレス装置8は、上盤811と下盤812の少なくとも一方にはチャンバ形成部材である側壁部820,821が形成されており、下盤812等の上昇により上盤811と下盤812の相対的な距離が近づいた際にチャンバCが形成されるようになっている点である。そして積層成形プレス装置8には、前記チャンバC内を真空下するための図示しない真空ポンプを備えている。従って積層成形プレス装置8は、真空積層装置である。
【0045】
また積層成形プレス装置8の後工程には、第1の実施形態と同じ2次成形に用いる積層成形プレス装置3が備えられている。積層成形プレス装置8の緩衝材であるふっ素樹脂フィルム815,816と金属薄板であるステンレス製の薄板817,818と、積層成形プレス装置3の緩衝材であるふっ素樹脂フィルム321,324等の樹脂フィルムとステンレス製の薄板322,325等の金属薄板は同じ材質であっても異なる材質であってもよい。異なる材質である場合は、積層成形プレス装置8のほうが埋め込み性を良好になるようにすることが望ましい。一例としては積層成形プレス装置3に用いられるふっ素樹脂フィルム321,324等の樹脂フィルムの厚みよりも積層成形プレス装置8に用いられるふっ素樹脂フィルム815,816等の樹脂フィルムを厚くしたり、またはステンレス製の薄板322,325等の金属薄板の厚みを薄くすることが好ましい。または積層成形プレス装置3にはふっ素樹脂フィルム321,324を用い、後工程の積層成形プレス装置8にはポリイミドフィルム815,816等のふっ素樹脂フィルムよりもロックウェル硬度の高い樹脂フィルムを用いてもよい。
【0046】
第2の実施形態の積層成形システム6を用いた積層成形方法については、1次成形から積層成形プレス装置8により被積層材である基板A1と積層フィルムA2の加圧を行う。そのため第1の実施形態のダイアフラム211を用いた真空積層装置2よりも大きな加圧力で1次成形を行うことができる。従って上記のように積層フィルムA2の無機材料の比重が、一例として60重量%ないし75重量%といったかなり高い場合であっても有効に加圧成形を行うことができる。
【0047】
積層成形プレス装置8で積層成形(1次成形)された中間積層材A4は、積層成形プレス装置3に送られる。積層成形プレス装置8と積層成形プレス装置3の加圧ブロックの温度、加圧力(面圧)は同じであってもよく、異なっていてもよい。これに限定されるものではないが、一例としては、積層成形プレス装置3よりも積層成形プレス装置8のほうが加圧ブロックの温度を高くして積層フィルムの樹脂材料の流動性を良好にし、積層成形プレス装置8よりも積層成形プレス装置3のほうが加圧力を高くして積層成形品A5の表面の平滑度を高めるようにしてもよい。第2の実施形態で積層成形される積層成形品A5または積層成形品A5が再加工された基板等も本発明に包含される。
【0048】
また第2の実施形態の変形例としては、積層成形システム6は、真空積層装置である積層成形プレス装置8の1台のみとし、成形を完了させるものでもよい。この場合でも本発明の上盤または下盤の少なくとも一方の盤に取付けられた加圧ブロックには、樹脂フィルムを介して加圧面を構成する金属薄板が備えることにより発明が完結できる。また積層成形プレス装置3の後に更に同じタイプの積層成形プレス装置3や別のタイプの冷却プレス装置などを直列方向に配設したものであってもよい。
【0049】
次に図4に示される第3の実施形態の積層成形システム7について、第1の実施形態の積層成形システム1との相違点を中心に符号を付して説明する。第3の実施形態の積層成形システム7は、第1の実施形態の積層成形システム1の積層成形プレス装置3の後工程に更にもう1台、同様の積層成形プレス装置9を設けたものである。すなわち、積層成形システム7の積層成形プレス装置3.9は真空積層装置2の後工程に2台が直列方向に設けられる。そしてキャリアフィルムF1,F2により前記真空積層装置2から搬送された凹凸部を備えた被積層材A1と積層フィルムA2からなる中間積層材A4が前記2台の積層成形プレス装置3.9により順次加圧成形されるものである。
【0050】
積層成形プレス装置9は、積層成形プレス装置3とほぼ同じ構造であり、上盤911と下盤912にそれぞれ取付られる加圧ブロック913,914は、緩衝材であるポリイミドフィルム915,916と金属薄板であるステンレス製の薄板917,918を各々備えており、前記ステンレス製の薄板917,918の表面が加圧面917a,918aとなっている。
【0051】
なお積層成形プレス装置9の緩衝材であるふっ素樹脂フィルム915,916等の樹脂フィルムと、ステンレス製の薄板917,918等の金属薄板と、積層成形プレス装置3の緩衝材であるふっ素樹脂フィルム321,324等の樹脂フィルムとステンレス製の薄板322,325等の金属薄板は、同じ厚みであっても異なる厚みであってもよい。第3の実施形態では、積層成形プレス装置3と積層成形プレス装置9は、厚さ0.01mmないし1.00mmのふっ素樹脂フィルムが使用されている。しかし積層成形プレス装置3と積層成形プレス装置9は、緩衝材として使用される樹脂フィルムの厚みは異なっていてもよく、一例として前工程の積層成形プレス装置3のほうが埋め込み性が良好になるように厚さの厚いふっ素樹脂フィルム等の樹脂フィルムを用いてもよい。
【0052】
また積層成形プレス装置9と積層成形プレス装置3の緩衝材である樹脂フィルムの材質は、同じ材質であっても異なる材質であってもよい。異なる材質である場合は、前工程の積層成形プレス装置3のほうが埋め込み性が良好になるようにロックウェルRスケールが小さい材質のフィルムを使用することが望ましい。更には積層成形プレス装置9よりも積層成形プレス装置3のステンレス製の薄板322,325等の金属薄板のほうが、厚みを薄くするかヤング率が小さい材質の金属を用いることにより埋め込み性を良好にしてもよい。
【0053】
第3の実施形態の積層成形システム6を用いた積層成形方法については、真空積層装置2、積層成形プレス装置3、積層成形プレス装置9に順に積層成形した中間積層材A4a、A4bが送られる。第1の実施形態のような2台の積層装置の場合、真空積層装置2よりも積層成形プレス装置3のほうが加圧時間が長く必要な場合が多く、全体の成形時間は積層成形プレス装置3により規定される場合が多かった。しかし第3の実施形態の積層成形システム7では、積層成形プレス装置3、積層成形プレス装置9による2回の加圧成形で成形時間を分散することもでき、真空積層装置2に必要な成形時間で他の積層成形プレス装置3、積層成形プレス装置9による成形もできる場合が殆どとなる。
【0054】
また積層成形プレス装置3、積層成形プレス装置9による2回の加圧成形が可能なので、積層フィルムA2の無機材料の含有量が多く、溶融時の流動性が悪いものであっても良好に積層成形することができる。また積層成形プレス装置3と積層成形プレス装置9の加圧ブロックの温度、加圧力(面圧)は同じであってもよく、異なっていてもよい。これに限定されるものではないが、一例としては、積層成形プレス装置9よりも積層成形プレス装置3のほうが加圧ブロックの温度を高くして積層フィルムA2の溶融状態の樹脂材料の流動性を良好にし、積層成形プレス装置3よりも積層成形プレス装置9のほうが加圧力を高くして積層成形品A5の表面の平滑度を高めるようにしてもよい。第3の実施形態も積層成形プレス装置9の後工程に冷却プレス装置等の更に別の装置を設けてもよい。第3の実施形態で積層成形される積層成形品A5または積層成形品A5が再加工された基板等も本発明に包含される。
【0055】
なお第3の実施形態の変形例として、真空積層装置2の次に設置される積層成形プレス装置3に変えて、加圧面がゴム等の弾性板からなる積層成形プレス装置を用いてもよい。その場合は本発明の積層成形プレス装置9は、3回目の積層成形にのみ使用される。
【0056】
また本発明の積層成形プレス装置3,8,9は、出荷時には緩衝材である樹脂フィルムや金属薄板は取付られていない状態で出荷され、後で本発明の樹脂フィルム等を取り付けることも想定され、それらの形態も本発明に包含される。また積層成形を行う工場で積層成形される被積層材A1や積層フィルムA2の種類に対応して、積層成形プレス装置3,8,9の緩衝材を、本発明に含まれる樹脂フィルム、或いはゴム等の緩衝作用の大きい材料に取り換えて使用することも本発明に包含される。
【0057】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した第1ないし第3の実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや第1ないし第3の実施形態の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。積層成形システム1,6,7で積層成形される積層成形品は、回路基板の他、半導体ウエハや他の板状体であってもよく限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1,6.7 積層成形システム
2,真空積層装置
3,8,9 積層成形プレス装置
212,312,811,911 上盤
213,314,812,912 下盤
317,318,813,814,913,914加圧ブロック
321,324,815,816,915,916 ふっ素樹脂フィルム(樹脂フィルム)
322,325,817,818,917,918 ステンレス製の薄板(金属薄板)
322a,325a,817a,818a,917a,918a 加圧面
図1
図2
図3
図4
図5