(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241122BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C13/00 D
(21)【出願番号】P 2021109736
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-205516(JP,A)
【文献】特開2006-188143(JP,A)
【文献】特開2008-164454(JP,A)
【文献】特開2008-254661(JP,A)
【文献】特表2007-532378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部のタイヤ外周面にタイヤ幅方向外側に突出する突出部分を有し、
通信装置が前記突出部分に埋設されている、タイヤ
であって、
前記突出部分は、ゴムチェーファーの少なくとも一部及びサイドゴムの少なくとも一部を含み、
前記通信装置は、前記ゴムチェーファーの少なくとも一部と前記サイドゴムの少なくとも一部との境界に埋設されている、タイヤ。
【請求項2】
前記突出部分は、タイヤ幅方向断面視で、前記突出部分の突出方向外側に向かうほど幅が狭くなっている、請求項
1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている、請求項1
又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、前記適用リムのタイヤ幅方向外側端部よりも、タイヤ幅方向外側にまで突出している、請求項1から
3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に配置されている、請求項1
又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
サイドウォール部のタイヤ外周面にタイヤ幅方向外側に突出する突出部分を有し、
通信装置が前記突出部分に埋設されている、タイヤであって、
前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、前記適用リムのタイヤ幅方向外側端部よりも、タイヤ幅方向外側にまで突出している、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにRFタグなどの通信装置を埋設した構成が知られている。例えば、特許文献1には、タイヤのリムストリップゴムとサイドウォールゴムとの間にRFタグが設けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信装置の耐久性又は通信性の向上など、タイヤに設けられた通信装置の有用性の更なる向上が依然として求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、タイヤに設けられた通信装置の有用性を向上させた、タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、サイドウォール部のタイヤ外周面にタイヤ幅方向外側に突出する突出部分を有し、通信装置が前記突出部分に埋設されている。
本発明に係るタイヤによれば、タイヤに荷重が加えられた際に変形しにくい突出部分に埋設されていることによって、通信装置が故障しにくい。さらに、通信装置が突出部分に埋設されていることによって、タイヤの他の部分が通信装置の通信を妨げにくい。したがって、本発明に係るタイヤによれば、タイヤに設けられた通信装置の有用性を向上させることができる。
【0007】
本発明に係るタイヤでは、前記突出部分は、ゴムチェーファーの少なくとも一部及びサイドゴムの少なくとも一部を含み、前記通信装置は、前記ゴムチェーファーの少なくとも一部と前記サイドゴムの少なくとも一部との境界に埋設されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤの製造時にタイヤに通信装置を安定して配置しやすくなる。
【0008】
本発明に係るタイヤでは、前記突出部分は、前記サイドウォール部において前記突出部分と隣接する他の部分とは異なるゴム材料で形成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ及び通信装置の用途に応じて、突出部分を構成するゴム材料を選択することができる。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記突出部分は、タイヤ幅方向断面視で、前記突出部分の突出方向外側に向かうほど幅が狭くなっていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤの軽量化を図ることができる。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、突出部分に埋設された通信装置が故障する蓋然性を低下させることができる。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、前記適用リムのタイヤ幅方向外側端部よりも、タイヤ幅方向外側にまで突出していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、突出部分をリムガードとして機能させることができる。
【0012】
本発明に係るタイヤでは、前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、前記突出部分は、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、路面など、タイヤよりもタイヤ径方向外側に位置する電子機器と通信をする場合に、タイヤの他の部分が通信装置の通信を妨げにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤに設けられた通信装置の有用性を向上させることができる、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向における部分断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向における部分断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向における部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。本明細書において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいう。「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。
【0016】
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0017】
本明細書において、特に断りのない限り、タイヤの各要素の位置関係等は、基準状態で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤを適用リムであるホイールのリムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした状態である。また、タイヤを適用リムであるホイールのリムに装着し、タイヤに規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態で、路面と接する接地面のタイヤ幅方向の両端を接地端Eという。以下において、タイヤは、内腔に空気が充填され、乗用車等の車両に装着されるものとして説明する。ただし、タイヤの内腔には空気以外の流体が充填されていてもよく、タイヤは乗用車以外の車両に装着されてもよい。
【0018】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、或いは、将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
【0019】
本明細書において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、本明細書において、「規定荷重」とは、上記産業規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する荷重をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合には、「規定荷重」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤ1について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向における部分断面図である。
図1において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。
【0022】
タイヤ1は、一対のビード部2と、一対のサイドウォール部3と、トレッド部4とを有している。サイドウォール部3は、トレッド部4とビード部2との間に延在している。サイドウォール部3は、例えば、ビードコア5のタイヤ径方向外側端部と接地端Eとの間の部分であってもよい。好ましくは、サイドウォール部3は、ビードフィラー8のタイヤ径方向外側端部と接地端Eとの間の部分であってもよい。タイヤ1のサイドウォール部3には、タイヤ外周面からタイヤ幅方向外側に突出する突出部分3Aが設けられている。詳細は後述するが、突出部分3Aに通信装置11が埋設されている。突出部分3Aは、タイヤ外周面においてタイヤ周方向に延在する環状とされている。
【0023】
突出部分3Aの大きさは、タイヤ1又は通信装置11の大きさ又は用途等に応じて任意に定められてもよい。例えば、突出部分3Aのタイヤ径方向内側端部とタイヤ径方向外側端部とを結んだ仮想線Lの長さは、10mm~60mmとされていてもよい。これにより、突出部分3Aに通信装置11を埋設するための十分なスペースが確保しつつ、突出部分3Aが目立ちにくくタイヤ1の美観を損ないにくくなる。より好ましくは、仮想線Lの長さは、15mm~45mmとされてもよい。また、例えば、突出部分3Aの突出方向における突出部分3Aの最大長は、15mm~40mmとされていてもよい。これにより、突出部分3Aに通信装置11を埋設するための十分なスペースが確保しつつ、突出部分3Aが目立ちにくくタイヤ1の美観を損ないにくくなる。より好ましくは、最大長は、15mm~35mmとされてもよい。本明細書において、突出部分3Aの「突出方向」とは、
図1に破線で示されるように、突出部分3Aのタイヤ径方向内側端部とタイヤ径方向外側端部とを結んだ仮想線Lに垂直な方向をいう。また、本明細書において、突出部分3Aの突出方向に沿ってタイヤ幅方向内側を「突出方向内側」と称し、突出方向に沿ってタイヤ幅方向外側を「突出方向外側」と称する。
【0024】
突出部分3Aは、タイヤ幅方向断面視において、突出部分3Aの突出方向外側に向かうほど幅が狭くなっている。本実施形態では、突出部分3Aのタイヤ幅方向断面形状は、略三角形状である。ただし、突出部分3Aのタイヤ幅方向断面形状は、三角形に限られず、台形又は先端が丸みを帯びた形状等であってもよい。これにより、突出部分3Aを構成するために使用されるゴム材料の量を抑えることができ、タイヤ1の軽量化及び生産コスト削減を図ることができる。
【0025】
本実施形態において、タイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して対称な構成であるものとして説明する。しかしながら、タイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して非対称な構成とされていてもよい。例えば、突出部分3Aは、一対のサイドウォール部3の一方のみに設けられていてもよい。
【0026】
タイヤ1は、ビード部2に配置された一対のビードコア5と、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライからなるカーカス6と、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト7と、を備えている。
【0027】
ビードコア5は、タイヤ周方向に延在する環状のケーブルビードからなっている。ビードコア5の延在方向に直交する面の断面形状(タイヤ幅方向の断面形状)は、円形又は略円形とされている。ただし、ビードコア5のタイヤ幅方向の断面形状は、四角形又は六角形等、任意の形状とされていてもよい。ケーブルビードは、例えば、高炭素の鋼線をゴム被覆して構成されている。ビードコア5のタイヤ径方向外側には、ゴム材料等で形成されたビードフィラー8が設けられている。ただし、タイヤ1は、ビードフィラー8を備えない構成とされてもよい。
【0028】
カーカス6は、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上(本実施形態では1枚)のプライからなる。プライは、例えば、ナイロンコードなどの有機繊維コードをゴム被覆して構成されている。カーカス6の端部側はビードコア5に係止されている。具体的には、カーカス6は、ビードコア5間に配置されたカーカス本体部6Aと、ビードコア5の周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されているカーカス折返し部6Bと、を有している。カーカス折返し部6Bは、基準状態におけるタイヤ最大幅Wの位置の近傍で終端している。ここで、「タイヤ最大幅W」の位置とは、タイヤ幅方向断面におけるタイヤ1の幅方向の長さが最も長くなる位置である。ただし、カーカス折返し部6Bは、任意の長さとされてもよい。また、カーカス6は、ビードコア5の周りにタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側へ折り返されているカーカス折返し部6Bを有する構造、カーカス折返し部6Bを有していない構造、或いはカーカス折返し部6Bがビードコア5に巻きつけられている構造とされてもよい。
【0029】
ベルト7は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト7は、タイヤ赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された1層以上(本実施形態では2層)のベルト層によって構成されている。ベルト7は、トレッド部4において、カーカス6をタイヤ径方向外側から覆うように設けられている。図示例では、ベルト7は、タイヤ赤道面CLを中心に接地端Eよりもタイヤ幅方向外側まで延在している。しかしながら、ベルト7は、接地端Eよりもタイヤ幅方向内側まで延在するように設けられていてもよい。
【0030】
タイヤ1は、さらに、ゴムチェーファー9を備えている。ゴムチェーファー9は、ビードコア5及びカーカス6をタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側から覆うように設置されている。ゴムチェーファー9は、ビードフィラー8のタイヤ径方向外側端部とカーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側端部との間の位置で終端している。ただし、ゴムチェーファー9は、任意の長さとされてもよい。
【0031】
ゴムチェーファー9のタイヤ径方向外側において、カーカス6のタイヤ幅方向外側を覆うようにサイドゴム10が配置されている。本実施形態では、サイドゴム10のタイヤ径方向内側端部は、タイヤ幅方向において、カーカス6とゴムチェーファー9と間に配置されている。ただし、サイドゴム10のタイヤ径方向内側端部は、ゴムチェーファー9よりもタイヤ径方向外側に配置されていてもよく、或いは、ゴムチェーファー9よりもタイヤ幅方向外側に配置されていてもよい。
【0032】
ゴムチェーファー9は、サイドゴム10よりも強度が高いゴム材料で形成されていてもよい。例えば、ゴムチェーファー9は、サイドゴム10よりもカーボンの含有率が高いゴム材料で形成されていてもよい。
【0033】
タイヤ1には、通信装置11が設けられている。
【0034】
通信装置11は、無線通信を行う。通信装置11は、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置11は、制御部及び記憶部を構成するIC(Integrated Circuit)チップと、ICチップに接続された1つ以上のアンテナと、を備える。ICチップは、タイヤ1の識別情報、製造年月日など、タイヤ1に関する任意の情報を記憶してもよい。例えば、通信装置11は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナがICチップから互いに反対方向に延びるように設けられ、装置全体として長手状の形状を有していてもよい。ただし、アンテナは、任意の形状とされてもよく、ICチップ内に配置されてもよい。
【0035】
ICチップは、1つ以上のアンテナで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置11は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、通信装置11は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置11は、アクティブ型の通信装置であってもよい。
【0036】
通信装置11は、突出部分3Aに埋設されている。突出部分3Aは、タイヤ外周面からタイヤ幅方向外側に突出しているため、タイヤ1に荷重が加えられた際に荷重が掛かりにくく変形しにくい。そのため、突出部分3Aに設けられることで、通信装置11が故障しにくくなる。さらに、通信装置11が突出部分3Aに設けられていることによって、タイヤ1よりもタイヤ幅方向外側に位置する電子機器と通信をする場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置11の通信を妨げにくい。したがって、タイヤ1に設けられた通信装置11の有用性が向上する。通信装置11は、通信装置11の長手方向とタイヤ1の周方向とが略平行になるように、突出部分3Aに埋設されていてもよい。
【0037】
突出部分3Aは、ゴムチェーファー9の少なくとも一部及びサイドゴム10の少なくとも一部を含んでいる。通信装置11は、ゴムチェーファー9の少なくとも一部とサイドゴム10の少なくとも一部との境界に埋設されている。これにより、タイヤ1の製造時にタイヤ1に通信装置11を安定して配置しやすくなり、タイヤ1の生産性を向上させることができる。より具体的には、突出部分3Aにおいて、ゴムチェーファー9が通信装置11のタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向内側の少なくとも一方から通信装置11に接するように配置されており、サイドゴム10が通信装置11のタイヤ径方向外側及びタイヤ幅方向外側の少なくとも一方から通信装置11に接するように配置されている。これにより、サイドゴム10よりも強度が高いゴムチェーファー9に支えられることにより、タイヤ1に埋設された通信装置11の耐久性が向上する。一方で、ゴムチェーファー9よりも導電性が高いサイドゴム10に覆われていることで、タイヤ1に埋設された通信装置11の通信性が向上する。
【0038】
基準状態において、突出部分3Aは、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。これにより、突出部分3Aに縁石又は小石などの障害物がぶつかりにくくなる。そのため、突出部分3Aに埋設された通信装置11が故障する蓋然性を低下させることができる。
【0039】
基準状態において、突出部分3Aは、適用リムであるリムRのタイヤ幅方向外側端部よりも、タイヤ幅方向外側にまで突出している。これにより、突出部分3Aは、タイヤ1の運搬時等にタイヤ1が装着されたリムRが他のタイヤが装着されたリムと接触することを防ぐ。また、突出部分3Aは、縁石又は小石などの障害物がリムRにぶつかりにくくする。このように、突出部分3Aは、リムRが損傷することを防ぐリムガードとして機能することができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るタイヤ1について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の第2実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向における部分断面図である。
図2において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。
【0041】
第2実施形態では、サイドウォール部3に設けられた突出部分3Aを形成するゴム材料がサイドウォール部3において突出部分3Aと隣接する他の部分とは異なるゴム材料である点で、第1実施形態と異なっている。以下に、第1実施形態と異なる点を中心に第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0042】
タイヤ1は、第1実施形態と同様に、タイヤ1のサイドウォール部3に、タイヤ外周面からタイヤ幅方向外側に突出する突出部分3Aが設けられている。突出部分3Aには、通信装置11が埋設されている。
【0043】
突出部分3Aは、サイドウォール部3において突出部分3Aと隣接する他の部分とは異なるゴム材料で形成されている。これにより、タイヤ1及び通信装置11の用途に応じて、突出部分3Aを構成するゴム材料を選択することができる。本実施形態では、突出部分3Aは、ビード部2からサイドウォール部3に延在するゴムチェーファー9及びサイドウォール部3を主に構成するサイドゴム10とは異なるゴム材料で形成されている。
【0044】
例えば、突出部分3Aを構成するゴム材料を、障害物との接触及びカット等に強くするために、他の部分よりもカーボンの含有率を増やした、強度が高いゴム材料とすることができる。これにより、タイヤ1に埋設された通信装置11の耐久性を向上させることができる。これは、タイヤ1が悪路を走る用途の車両に装着される際に有益である。或いは、突出部分3Aを構成するゴム材料を、他の部分よりもカーボンの含有率を減らした、導電性が高いゴム材料とすることができる。これにより、タイヤ1に埋設された通信装置11の通信性を向上させることができる。
【0045】
突出部分3Aにおいて、通信装置11は、他の部分を形成するゴム材料との境界面側に埋設されている。これにより、タイヤ1の製造時にタイヤ1に通信装置11を安定して配置しやすくなり、タイヤ1の生産性を向上させることができる。
【0046】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係るタイヤ1について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の第3実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向における部分断面図である。
図3において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。
【0047】
第3実施形態では、サイドウォール部3において突出部分3Aがタイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に配置されている点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。以下に、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点を中心に第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0048】
タイヤ1は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、タイヤ1のサイドウォール部3に、タイヤ外周面からタイヤ幅方向外側に突出する突出部分3Aが設けられている。突出部分3Aには、通信装置11が埋設されている。
【0049】
突出部分3Aは、サイドウォール部3において突出部分3Aと隣接する他の部分と同じゴム材料で形成されていてもよい。例えば、突出部分3Aは、サイドウォール部3を主に構成するサイドゴム10と同じゴム材料で形成されていてもよい。或いは、突出部分3Aは、第2実施形態と同様に、サイドウォール部3において突出部分3Aと隣接する他の部分とは異なるゴム材料で形成されていてもよい。例えば、突出部分3Aは、サイドウォール部3を主に構成するサイドゴム10とは異なるゴム材料で形成されていてもよい。
【0050】
基準状態において、突出部分3Aは、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向外側に配置されている。これにより、路面など、タイヤ1よりもタイヤ径方向外側に位置する電子機器と通信をする場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置11の通信を妨げにくくなる。したがって、タイヤ1に設けられた通信装置11の有用性が向上する。
【0051】
以上述べたように、本発明の各実施形態に係るタイヤ1は、サイドウォール部3のタイヤ外周面にタイヤ幅方向外側に突出する突出部分3Aを有し、通信装置11が突出部分3Aに埋設されている。かかる構成によれば、タイヤ1に荷重が加えられた際に変形しにくい突出部分3Aに埋設されていることによって、通信装置11が故障しにくい。さらに、通信装置11が突出部分3Aに設けられていることによって、タイヤ1の外部に位置する電子機器と通信をする場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置11の通信を妨げにくい。したがって、タイヤ1に設けられた通信装置11の有用性が向上する。
【0052】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1では、突出部分3Aは、ゴムチェーファー9の少なくとも一部及びサイドゴム10の少なくとも一部を含み、通信装置11は、ゴムチェーファー9の少なくとも一部とサイドゴム10の少なくとも一部との境界に埋設されていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ1の製造時にタイヤ1に通信装置11を安定して配置しやすくなり、タイヤ1の生産性を向上させることができる。
【0053】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1では、突出部分3Aは、サイドウォール部3において突出部分3Aと隣接する他の部分とは異なるゴム材料で形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ1及び通信装置11の用途に応じて、突出部分3Aを構成するゴム材料を選択することができる。これにより、タイヤ1に設けられた通信装置11の有用性が更に向上する。
【0054】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1では、突出部分3Aは、タイヤ幅方向断面視で、突出部分3Aの突出方向外側に向かうほど幅が狭くなっていることが好ましい。かかる構成によれば、突出部分3Aを構成するために使用されるゴム材料の量を抑えることができ、タイヤ1の軽量化及び生産コスト削減を図ることができる。
【0055】
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ1を適用リムであるリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、突出部分3Aは、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、突出部分3Aに縁石又は小石等の障害物がぶつかりにくくなり、通信装置11が故障する蓋然性を低下させることができる。
【0056】
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ1を適用リムであるリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、突出部分3Aは、適用リムのタイヤ幅方向外側端部よりも、タイヤ幅方向外側にまで突出していることが好ましい。かかる構成によれば、リムRが損傷することを防ぐリムガードとして突出部分3Aが機能することができる。
【0057】
本発明の第3実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ1を適用リムであるリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、突出部分3Aは、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、路面など、タイヤ1よりもタイヤ径方向外側に位置する電子機器と通信をする場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置11の通信を妨げにくくなる。したがって、タイヤ1に設けられた通信装置11の有用性が更に向上する。
【0058】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:タイヤ、 2:ビード部、 3:サイドウォール部、 3A:突出部分、 4:トレッド部、 5:ビードコア、 6:カーカス、 6A:カーカス本体部、 6B:カーカス折返し部、 7:ベルト、 8:ビードフィラー、 9:ゴムチェーファー、 10:サイドゴム、 11:通信装置、 R:リム、 CL:タイヤ赤道面、 W:タイヤ最大幅、 E:接地端、 L:仮想線