IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料起倒装置 図1
  • 特許-燃料起倒装置 図2
  • 特許-燃料起倒装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】燃料起倒装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G21C19/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021117368
(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公開番号】P2023013297
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 史之
(72)【発明者】
【氏名】江村 裕太
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-237089(JP,A)
【文献】特開2012-237324(JP,A)
【文献】特開2016-109210(JP,A)
【文献】特開平02-263198(JP,A)
【文献】特開2013-231505(JP,A)
【文献】特開平11-304989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21F 5/14
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給するサーボポンプと、
燃料を起立状態と横倒し状態とに移動可能な水圧シリンダと、
前記サーボポンプと前記水圧シリンダとを接続すると共に水を給排させて前記水圧シリンダを作動させる一対の給排経路と、
前記一対の給排経路にそれぞれ設けられる一対の速度制御弁と、
前記サーボポンプの回転数を駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記サーボポンプの回転数を上昇させることで前記燃料の起立動作または横倒し動作を開始し、予め設定された高回転数まで上昇した後、前記高回転数を予め設定された所定時間だけ維持することで、前記水圧シリンダを作動して前記燃料を起立状態と横倒し状態との間で移動し、前記所定時間が経過すると、回転数を低下させて予め設定された低回転数に維持し、前記燃料の起立状態または横倒し状態を維持する、
燃料起倒装置。
【請求項2】
前記一対の速度制御弁は、前記水圧シリンダから前記一対の給排経路に水を排出する方向の水の流速を低下させる、
請求項1に記載の燃料起倒装置。
【請求項3】
前記サーボポンプを駆動する電源が遮断されたときに前記一対の給排経路における水の流れを停止させる一対の開閉弁が設けられる、
請求項1または請求項2に記載の燃料起倒装置。
【請求項4】
前記開閉弁が作動したときに前記一対の給排経路に対して水の給排を行う手動ポンプが設けられる、
請求項3に記載の燃料起倒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核燃料が収容されたコンテナを立てたり横倒したりする燃料起倒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは、原子炉格納容器の内部に原子炉が設置されると共に、核燃料移送装置が設けられる。核燃料移送装置は、原子炉キヤビテイと使用済燃料ピツトとの間でコンテナに収容された核燃料を移送するものである。原子炉キヤビテイと使用済燃料ピツトとは、格納容器隔壁を貫通した移送管により連通する。そのため、核燃料移送装置は、例えば、原子炉キヤビテイに起立状態に貯蔵された核燃料を横倒し、横倒し状態の核燃料を台車により移送管を通して使用済燃料ピツトに移動する。そして、核燃料移送装置は、横倒し状態の核燃料を起立させ、使用済燃料ピツトで貯蔵する。
【0003】
核燃料移送装置は、起立状態の核燃料を横倒したり、横倒し状態の核燃料を起立させたりする燃料起立装置を有する。従来の燃料起立装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2755672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の燃料起立装置は、水圧シリンダを用いて核燃料を横倒したり、核燃料を起立させたりするものである。そのため、水圧シリンダに対して水を供給する給水ラインや水を排出する排水ラインに対して、ポンプや各種の弁などを設ける必要があり、配管構成が複雑になってしまう。すると、各種機器のメンテナンス作業に長時間を要してしまうという課題がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、配管構成を簡素化することでメンテナンス性の向上を図る燃料起倒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の燃料起倒装置は、水を供給するサーボポンプと、燃料を起立状態と横倒し状態とに移動可能な水圧シリンダと、前記サーボポンプと前記水圧シリンダとを接続すると共に水を給排させて前記水圧シリンダを作動させる一対の給排経路と、前記一対の給排経路にそれぞれ設けられる一対の速度制御弁と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料起倒装置によれば、配管構成を簡素化することでメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の燃料起倒装置を表す概略構成図である。
図2図2は、燃料を横倒しするときのポンプ回転数を表すグラフである。
図3図3は、燃料を起立させるときのポンプ回転数を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<燃料起倒装置の構成>
図1は、本実施形態の燃料起倒装置を表す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、燃料起倒装置10は、原子力発電プラントに設けられる核燃料移送装置の一部を構成する。核燃料移送装置は、原子炉キヤビテイと使用済燃料ピツトとの間でコンテナに収容された核燃料を移送する。核燃料移送装置は、原子炉キヤビテイに起立状態に貯蔵された核燃料を燃料起倒装置10により横倒し、横倒し状態の核燃料を台車により移送管を通して使用済燃料ピツトに移動し、燃料起倒装置10より横倒し状態の核燃料を起立させ、使用済燃料ピツトで貯蔵する。また、核燃料移送装置は、使用済燃料ピツトに起立状態に貯蔵された核燃料を燃料起倒装置10により横倒し、横倒し状態の核燃料を台車により移送管を通して原子炉キヤビテイに移動し、燃料起倒装置10より横倒し状態の核燃料を起立させ、原子炉キヤビテイで貯蔵する。
【0013】
燃料起倒装置10は、サーボポンプ11と、水圧シリンダ12と、一対の給排経路L11,L12と、一対の速度制御弁13,14とを備える。
【0014】
水圧シリンダ12は、シリンダ21と、ピストン22と、ロッド23とを有する。シリンダ21は、中空形状をなし、内部にピストン22が軸方向に沿って移動自在に支持される。シリンダ21は、内部にピストン22が設けられることで、2つの部屋R1,R2に区画される。ロッド23は、軸方向の一端部がピストン22に連結され、軸方向の他端部がシリンダ21の外部に延出する。ロッド23は、他端部に連結部24が連結される。
【0015】
燃料Fは、コンテナに収容されるが、コンテナの図示は省略し、燃料Fとして説明する。燃料Fは、図1に実線で表す起立状態と、図1に二点鎖線で表す横倒し状態との間で移動自在に支持される。燃料Fは、アーム25における軸方向の一端部が固定される。アーム25は、軸方向の他端部が連結部24に回動自在に連結される。
【0016】
そのため、燃料Fが起立状態にあるとき、水圧シリンダ12の部屋R1に水を供給し、部屋R2から水が排出すると、ピストン22が軸方向の一方側(図1の左方側)に前進する。すると、水圧シリンダ12は、ロッド23が伸長し、連結部24を介してアーム25を一方側(図1の左方側)に回動する。このとき、アーム25と一体の燃料Fは、起立状態から横倒し状態に移動する。
【0017】
一方、燃料Fが横倒し状態にあるとき、水圧シリンダ12の部屋R2に水を供給し、部屋R1から水を排出すると、ピストン22が軸方向の他方側(図1の右方側)に後退する。すると、水圧シリンダ12は、ロッド23が収縮し、連結部24を介してアーム25を他方側(図1の右方側)に回動する。このとき、アーム25と一体の燃料Fは、横倒し状態から起立状態に移動する。
【0018】
水圧シリンダ12は、部屋R1に給排ポートP1が設けられると共に、部屋R2に給排ポートP2が設けられる。給排経路L11は、一端部が給排ポートP1に接続され、給排経路L12は、一端部が給排ポートP2に接続される。ここで、給排経路L11は、水圧シリンダ12のピストン22を前進させるための水供給経路となり、ピストン22を後退させるための水排出経路となる。また、給排経路L12は、水圧シリンダ12のピストン22を後退させるための水供給経路となり、ピストン22を前進させるための水排出経路となる。
【0019】
給排経路L11,L12は、それぞれ速度制御弁13,14が設けられる。速度制御弁13,14は、給排経路L11,L12の主経路L11a,L12aにそれぞれ設けられる絞り弁13a,14aと、給排経路L11,L12のバイパス経路L11b,L12bにそれぞれ設けられる逆止弁13b,14bとを有する。絞り弁13a,14aは、水圧シリンダ12の部屋R1,R2と給排経路L11,L12との間で水量を制限する。逆止弁13b,14bは、水圧シリンダ12の部屋R1,R2の水が給排経路L11,L12に流れる方向の水の流れを阻止し、給排経路L11,L12の水が水圧シリンダ12の部屋R1,R2に流れる方向の水の流れを許容する。
【0020】
そのため、水圧シリンダ12のピストン22を前進させるとき、給排経路L11の水を部屋R1に供給し、部屋R2の水を給排経路L12に排出する。このとき、速度制御弁13は、絞り弁13aおよび逆止弁13bが開放状態となり、給排経路L11から部屋R1に供給される水の流速(単位時間当たりの水量)は、制限されない。一方、速度制御弁14は、絞り弁14aのみが開放され、逆止弁14bが閉止することから、部屋R2から給排経路L12に排出される水の流速(単位時間当たりの水量)が低下する。
【0021】
同様に、水圧シリンダ12のピストン22を後退させるとき、給排経路L12の水を部屋R2に供給し、部屋R1の水を給排経路L11に排出する。このとき、速度制御弁14は、絞り弁14aおよび逆止弁14bが開放状態となり、給排経路L12から部屋R2に供給される水の流速(単位時間当たりの水量)は、制限されない。しかし、速度制御弁13は、絞り弁13aのみが開放され、逆止弁13bが閉止することから、部屋R1から給排経路L11に排出される水の流速(単位時間当たりの水量)が低下する。
【0022】
給排経路L11,L12は、開閉弁31,32がそれぞれ設けられる。開閉弁31,32は、電磁遮断弁である。すなわち、開閉弁(電磁遮断弁)31,32は、電源部に接続される。開閉弁(電磁遮断弁)31,32は、通電状態で開放され、非通電状態で閉止される。
【0023】
給排経路L11,L12は、それぞれ他端部にサーボポンプ11が設けられる。サーボポンプ11は、サーボモータ33と、電動ポンプ34とを有する。サーボモータ33は、電源部に接続される。サーボモータ33は、電源部から電力が供給されることで駆動し、電動ポンプ34を駆動する。電動ポンプ34が駆動すると、給排経路L11または給排経路L12の水を水圧シリンダ12に向けて供給する。すなわち、サーボモータ33が正回転すると、電動ポンプ34は、給排経路L12の水を給排経路L11供給する。一方、サーボモータ33が逆回転すると、電動ポンプ34は、給排経路L11の水を給排経路L12に供給する。
【0024】
給排経路L11,L12は、他端部にサーボポンプ11を迂回する第1迂回経路L13が設けられると共に、第2迂回経路L14が設けられる。第1迂回経路L13は、第1給水路L15により水タンク35に接続され、第2迂回経路L14は、第2給水路L16により水タンク35に接続される。そして、第1迂回経路L13は、第1給水路L15の接続部の両側に逆止弁36,37が設けられる。逆止弁36,37は、第1給水路L15の接続部からサーボポンプ11側への水の流れを許容し、サーボポンプ11から第1給水路L15の接続部への水の流れを阻止する。また、第2迂回経路L14は、第2給水路L16の接続部の両側にリリーフ弁38,39が設けられる。リリーフ弁38,39は、給排経路L11,L12の水圧が予め設定された制限圧を超えると開放する。
【0025】
また、給排経路L11,L12は、速度制御弁13,14と開閉弁31,32との間に一対の非常用給排経路L21,L22の一端部がそれぞれ接続される。一対の非常用給排経路L21,L22は、他端部に手動切替弁41が接続される。手動切替弁41は、給水経路L23により水タンク42が接続されると共に、排水経路L24により水タンク42が接続される。なお、水タンク42は、水タンク35を兼用してもよい。
【0026】
非常用給排経路L21,L22は、それぞれ開閉弁43,44が設けられる。開閉弁43,44は、手動操作弁である。すなわち、開閉弁(手動操作弁)43,44は、作業者の手動操作により開閉可能であり、通常、閉止されている。
【0027】
給水経路L23は、手動ポンプ45が設けられる。手動ポンプ45は、作業者の手動により操作することで作動し、水タンク42の水を給水経路L23に供給可能である。手動切替弁41は、手動により非常用給排経路L21,L22と給水経路L23および排水経路L24との接続状態を切り替えることができる。すなわち、手動切替弁41により非常用給排経路L21と給水経路L23が接続し、非常用給排経路L22と排水経路L24が接続すると、給水経路L23の水が非常用給排経路L21を介して給排経路L11に供給され、給排経路L12の水が非常用給排経路L22から排水経路L24に排出される。また、手動切替弁41により非常用給排経路L22と給水経路L23が接続し、非常用給排経路L21と排水経路L24が接続すると、給水経路L23の水が非常用給排経路L22を介して給排経路L12に供給され、給排経路L11の水が非常用給排経路L22から排水経路L24に排出される。
【0028】
サーボポンプ11は、制御装置51が接続され、制御装置51は、サーボポンプ11を駆動制御可能である。制御装置51は、サーボモータ33の回転数をパターン制御することで、電動ポンプ34の回転数を制御可能である。制御装置51は、サーボポンプ11の回転数を予め設定された所定回転数まで上昇させた後、所定回転数を予め設定された所定時間だけ維持することで、水圧シリンダ12を作動して燃料Fを起立状態と横倒し状態との間で移動する。
【0029】
<燃料起倒装置の作動>
燃料Fを起立状態から横倒し状態にするとき、サーボポンプ11を駆動して給排経路L11の水を水圧シリンダ12の部屋R1に供給する一方、部屋R2の水を給排経路L12に排出する。すると、水圧シリンダ12は、ピストン22が軸方向の一方側(図1の左方側)に前進し、ロッド23が伸長し、連結部24を介してアーム25を一方側(図1の左方側)に回動する。アーム25と一体の燃料Fは、起立状態から回動して横倒し状態になる。
【0030】
給排経路L11の水が部屋R1に供給されるとき、速度制御弁13は、絞り弁13aおよび逆止弁13bが開放状態になることから、給排経路L11の水が所定の流速で水圧シリンダ12の部屋R1に供給される。一方、部屋R2の水が給排経路L12に排出されるとき、速度制御弁14は、絞り弁14aのみが開放され、逆止弁14bが閉止することから、部屋R2の水が低速で給排経路L12に排出される。すると、ピストン22が前進する速度が制限され、燃料Fの移動速度が低下する。そのため、起立状態にある燃料Fは、ゆっくりと横倒し状態になる。
【0031】
一方、燃料Fを横倒し状態から起立状態にするとき、サーボポンプ11を駆動して給排経路L12の水を水圧シリンダ12の部屋R2に供給する一方、部屋R1の水を給排経路L11に排出する。すると、水圧シリンダ12は、ピストン22が軸方向の他方側(図1の右方側)に後退し、ロッド23が収縮し、連結部24を介してアーム25を他方側(図1の右方側)に回動する。アーム25と一体の燃料Fは、横倒し状態から回動して起立状態になる。
【0032】
給排経路L12の水が部屋R2に供給されるとき、速度制御弁14は、絞り弁14aおよび逆止弁14bが開放状態になることから、給排経路L12の水が所定の流速で水圧シリンダ12の部屋R2に供給される。一方、部屋R1の水が給排経路L11に排出されるとき、速度制御弁13は、絞り弁13aのみが開放され、逆止弁13bが閉止することから、部屋R1の水が低速で給排経路L11に排出される。すると、ピストン22が後退する速度が制限され、燃料Fの移動速度が低下する。そのため、横倒し状態にある燃料Fは、ゆっくりと起立状態になる。
【0033】
なお、サーボポンプ11により給排経路L11の水を部屋R1に供給するとき、水の不足分は、水タンク35の水が第1給水路L15および第1迂回経路L13を介して補給される。また、サーボポンプ11により給排経路L12の水を部屋R2に供給するとき、水の不足分は、水タンク35の水が第1給水路L15および第1迂回経路L13を介して補給される。
【0034】
ここで、制御装置51によるサーボポンプ11の回転数制御について説明する。図2は、燃料を横倒しするときのポンプ回転数を表すグラフ、図3は、燃料を起立させるときのポンプ回転数を表すグラフである。
【0035】
図2に示すように、燃料Fを起立状態から横倒し状態にするとき、時間t1にて、サーボポンプ11の駆動を開始し、回転数を上昇させる。ここで、燃料Fは、起立状態からの横倒し動作が開始される。時間t2にて、サーボポンプ11の回転数が予め設定された所定回転数Nhに到達すると、所定回転数Nhに維持する。そして、時間t2に所定回転数Nhに到達してから、予め設定された所定時間T1が経過した時間t3にて、サーボポンプ11の回転数を低下させる。そして、時間t4にて、サーボポンプ11の回転数が予め設定された所定回転数Nlに到達すると、所定回転数Nlに維持する。ここで、燃料Fは、横倒し状態になり、サーボポンプ11の回転数を所定回転数Nlに維持することで、燃料Fの横倒し状態が維持される。
【0036】
図3に示すように、燃料Fを横倒し状態から起立状態にするとき、時間t11にて、サーボポンプ11の駆動を開始し、回転数を上昇させる。ここで、燃料Fは、横倒し状態からの起立動作が開始される。時間t12にて、サーボポンプ11の回転数が予め設定された所定回転数Nhに到達すると、所定回転数Nhに維持する。燃料Fの起立動作時における所定回転数Nhは、燃料Fの横倒し動作時における所定回転数Nhより高く設定される。そして、時間t1に所定回転数Nhに到達してから、予め設定された所定時間T2が経過した時間t13にて、サーボポンプ11の回転数を低下させる。そして、時間t14にて、サーボポンプ11の回転数が予め設定された所定回転数Nlに到達すると、所定回転数Nlに維持する。ここで、燃料Fは、起立状態になり、サーボポンプ11の回転数を所定回転数Nlに維持することで、燃料Fの起立状態が維持される。なお、燃料Fの横倒し動作時における所定回転数Nlと、燃料Fの起立時における所定回転数Nlは、水圧シリンダ12の移動速度を計測して予め設定される。
【0037】
ところで、サーボモータ33は、電源部から電力を得て駆動するものであるから、サーボポンプ11は、電源部が損傷を受けて電力を喪失すると作動することができない。このとき、サーボポンプ11は、水圧シリンダ12に対する水の給排が停止する。サーボポンプ11の電力喪失時、サーボポンプ11が水圧シリンダ12を作動して燃料Fを移動中であったとき、燃料Fが転倒してしまうおそれがある。
【0038】
このとき、開閉弁31,32は、電源部から電力の供給を受けて開放状態に維持されている。そのため、開閉弁31,32は、電力を喪失すると閉止し、給排経路L11,L12における水圧シリンダ12とサーボポンプ11との間を遮断する。すると、水圧シリンダ12は、部屋R1,R2と給排経路L11,L12との間の水の給排が停止され、ピストン22が停止状態に維持される。そのため、水圧シリンダ12が作動して燃料Fを移動中であったとしても、燃料Fの動作が維持され、燃料Fの転倒が阻止される。
【0039】
そして、作業者は、開閉弁43,44を操作して開放する。また、作業者は、例えば、手動切替弁41により非常用給排経路L21と給水経路L23を接続し、非常用給排経路L22と排水経路L24を接続する。すると、非常用給排経路L21は、給排経路L11に接続され、非常用給排経路L22は、給排経路L12に接続される。この状態で、作業者は、手動ポンプ45を作動する。すると、水タンク42の水が給水経路L23および非常用給排経路L21を介して給排経路L11に供給される。そのため、給排経路L11の水が水圧シリンダ12の部屋R1に供給され、部屋R2の水が給排経路L12に排出される。すると、水圧シリンダ12は、ピストン22およびロッド23が前進し、連結部24を介してアーム25を回動し、燃料Fをゆっくりと横倒し状態にすることができる。
【0040】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る燃料起倒装置は、水を供給するサーボポンプ11と、燃料Fを起立状態と横倒し状態とに移動可能な水圧シリンダ12と、サーボポンプ11と水圧シリンダ12とを接続すると共に水を給排させて水圧シリンダ12を作動させる一対の給排経路L11,L12と、一対の給排経路L11,L12にそれぞれ設けられる一対の速度制御弁13,14とを備える。
【0041】
第1の態様に係る燃料起倒装置によれば、サーボポンプ11を駆動すると、水が一対の給排経路L11,L12を介して水圧シリンダ12に供給され、燃料Fを起立状態と横倒し状態と間で移動することができる。このとき、給排経路L11,L12と水圧シリンダ12との間で給排される水は、速度制御弁13,14により速度が調整される。そのため、サーボポンプ11を用いることで、例えば、パターン制御が可能となり、水圧シリンダ12を介して燃料Fの位置制御を高精度に行うことが可能になり、配管構成を簡素化することでメンテナンス性の向上を図ることができる。また、速度制御弁13,14を用いることで、燃料Fの起立動作や横倒し動作の速度を制限して低下させることで、安全性を向上することができる。
【0042】
第2の態様に係る燃料起倒装置は、一対の速度制御弁13,14は、水圧シリンダ12から一対の給排経路L11,L12に水を排出する方向の水の流速を低下させる。これにより、燃料Fを起立状態から横倒し状態にするとき、また、燃料Fを横倒し状態から起立状態にするとき、水圧シリンダ12からの水の排出を制限して燃料Fの動作速度を低下させることで、安全性を向上することができる。
【0043】
第3の態様に係る燃料起倒装置は、サーボポンプ11を駆動する電源が遮断されたときに一対の給排経路L11,L12における水の流れを停止させる一対の開閉弁31,32が設けられる。これにより、サーボポンプ11が停止しても、開閉弁31,32により給排経路L11,L12における水の流れが停止されるため、サーボポンプ11からの水の排出が阻止され、水圧シリンダ12の不測の作動による燃料Fの転倒を防止することができる。
【0044】
第4の態様に係る燃料起倒装置は、開閉弁31,32が作動したときに一対の給排経路L11,L12に対して水の給排を行う手動ポンプ45が設けられる。これにより、サーボポンプ11が停止したとき、作業者が手動ポンプ45を操作して駆動することで、サーボポンプ11に水を供給して作動させ、燃料Fを横倒し状態または起立状態に移動することができる。
【0045】
第5の態様に係る燃料起倒装置は、サーボポンプ11の回転数を駆動制御する制御装置51が設けられ、制御装置51は、予め設定された所定回転数まで上昇した後、所定回転数を予め設定された所定時間だけ維持することで、水圧シリンダ12を作動して燃料Fを起立状態と横倒し状態との間で移動する。これにより、サーボポンプ11による水圧シリンダ12の作動制御の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 燃料起倒装置
11 サーボポンプ
12 水圧シリンダ
13,14 速度制御弁
13a,14a 絞り弁
13b,14b 逆止弁
21 シリンダ
22 ピストン
23 ロッド
24 連結部
25 アーム
31,32 開閉弁
33 サーボモータ
34 電動ポンプ
35 水タンク
36,37 逆止弁
38,39 リリーフ弁
41 手動切替弁
42 水タンク
43,44 開閉弁
45 手動ポンプ
51 制御装置
F 燃料
L11,L12 給排経路
L11a,L12a 主経路
L11b,L12b バイパス経路
L13 第1迂回経路
L14 第2迂回経路
L15 第1給水路
L16 第2給水路
L21,L22 非常用給排経路
L23 給水経路
L24 排水経路
P1,P2 給排ポート
R1,R2 部屋
図1
図2
図3