(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ワーク取出システム及びワーク取り出し方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241122BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021123162
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】598059387
【氏名又は名称】株式会社PALTAC
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】金山 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 木太郎
(72)【発明者】
【氏名】田所 祐一
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0069898(US,A1)
【文献】特開2018-111138(JP,A)
【文献】特開2004-023027(JP,A)
【文献】特開平10-277979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ積みされたワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方と、前記ワークの姿勢とを検出する検出部と、
前記ワークを吸着して保持する保持部を有する保持装置と、
前記保持装置を制御する保持制御部と、
前記ワークに空気を吹き付ける空気吹出部を有する吹付装置と、
前記吹付装置を制御する吹付制御部と、
前記ワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方と、前記ワークの姿勢とに基づいて、前記吹付装置により前記ワークに空気を吹き付ける吹き付け動作を実行するか否かを判定する判定部と
を備え、
前記ワークの形状は、立方体を除く略直方体形状、又は、細長形状であり、
前記判定部が前記ワークの姿勢が起立姿勢であ
ると判定した場合に、前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行すると判定
し、前記吹付制御部は、前記ワークに空気を吹き付けるように前記吹付装置を制御し、
前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行しないと判定した場合、前記保持制御部は、前記ワークを吸着して保持するように前記保持装置を制御する、ワーク取出システム。
【請求項2】
前記保持部は、前記空気吹出部を兼ねており、
前記保持部は、前記ワークを吸着する際に空気を吸引し、前記ワークに空気を吹き付ける際に空気を吹き出す、請求項1に記載のワーク取出システム。
【請求項3】
前記空気吹出部は、前記保持部と一体的に移動する、請求項1又は請求項2に記載のワーク取出システム。
【請求項4】
前記空気吹出部は、鉛直方向に対して交差する方向に空気を吹き出す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワーク取出システム。
【請求項5】
前記ワークはトレイ内にバラ積みされ、
前記吹付制御部は、前記トレイの側壁に沿って前記空気吹出部を移動させながら、前記空気吹出部から空気を吹き出させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワーク取出システム。
【請求項6】
前記ワークの形状、大きさ及び重さの少なくとも1つを含むワーク情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記吹付制御部は、前記ワーク情報と前記
検出部が検出した検出結果とに基づいて、前記空気吹出部から吹き出す空気の吹出量、吹出速度、吹出時間、及び、前記空気吹出部の吹出位置の少なくとも1つを設定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワーク取出システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記検出部がトレイ内に前記ワークを検出したか否かを判定し、
前記検出部が前記ワークを検出していないと前記判定部が判定した場合、前記吹付制御部は、前記トレイ内に空気を吹き付けるように前記吹付装置を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワーク取出システム。
【請求項8】
バラ積みされたワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方と、前記ワークの姿勢とを検出部で検出する工程と、
前記ワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方と、前記ワークの姿勢とに基づいて、吹付装置により前記ワークに空気を吹き付ける吹き付け動作を実行するか否かを判定部で判定する工程と
を有し、
前記ワークの形状は、立方体を除く略直方体形状、又は、細長形状であり、
前記判定部が前記ワークの姿勢が起立姿勢であ
ると判定した場合に、前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行すると判定
し、前記吹付装置は、前記ワークに空気を吹き付け、
前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行しないと判定した場合、保持装置は、前記ワークを吸着して保持する、ワーク取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク取出システム及びワーク取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレイなどの容器内にバラ積みされたワークを取り出すワーク取出システムが知られている。このようなワーク取出システムにおいて、例えばワークを最後の1つまで安定して取り出すことは、一般的に困難である。また、ワークの位置及び姿勢がピッキングできない状態である場合に、ワークの位置及び姿勢を変更することによって、ピッキング可能な状態にするワーク取出システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ワーク位置姿勢計測装置と、突出部とを備えたワークピッキング装置が記載されている。ワーク位置姿勢計測装置は、容器本体内にバラ積みされたワークの位置及び姿勢を検出する。容器本体の底面には、複数の穴が形成されている。突出部は、底面の穴を介して容器本体の内部に突出可能である。特許文献1のワークピッキング装置では、例えば、ピッキング可能なワークがない場合、突出部を動作させ、ワークのバラ積み状態を変化させる。ワークの位置及び姿勢が変化してピッキング可能になると、ロボットによってワークをピッキングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたワークピッキング装置では、バラ積みされたワークを突出部で下方から突き上げることによって、ワークの位置及び姿勢を変化させる。従って、突出部がワークに接触することに起因して、ワークが損傷する場合があるという問題点がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークが損傷することを抑制しながら、ワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方を変化させることが可能なワーク取出システム及びワーク取り出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るワーク取出システムは、検出部と、保持装置と、保持制御部と、吹付装置と、吹付制御部と、判定部とを備える。前記検出部は、バラ積みされたワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方を検出する。前記保持装置は、前記ワークを保持する保持部を有する。前記保持制御部は、前記保持装置を制御する。前記吹付装置は、前記ワークに空気を吹き付ける空気吹出部を有する。前記吹付制御部は、前記吹付装置を制御する。前記判定部は、前記検出部が検出した検出結果に基づいて、前記吹付装置により前記ワークに空気を吹き付ける吹き付け動作を実行するか否かを判定する。前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行すると判定した場合、前記吹付制御部は、前記ワークに空気を吹き付けるように前記吹付装置を制御する。前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行しないと判定した場合、前記保持制御部は、前記ワークを保持するように前記保持装置を制御する。
【0008】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記保持部は、前記ワークを吸着して保持してもよい。
【0009】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記保持部は、前記空気吹出部を兼ねていてもよい。前記保持部は、前記ワークを吸着する際に空気を吸引し、前記ワークに空気を吹き付ける際に空気を吹き出してもよい。
【0010】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記空気吹出部は、前記保持部と一体的に移動してもよい。
【0011】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記空気吹出部は、鉛直方向に対して交差する方向に空気を吹き出してもよい。
【0012】
本発明のワーク取出システムは、前記検出部は、前記ワークの姿勢をさらに検出してもよい。前記判定部は、前記ワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方と、前記ワークの姿勢とに基づいて、前記吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。
【0013】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記ワークの姿勢が起立姿勢である場合、前記判定部は、前記吹き付け動作を実行すると判定してもよい。
【0014】
本発明のワーク取出システムにおいて、前記ワークはトレイ内にバラ積みされてもよい。前記吹付制御部は、前記トレイの側壁に沿って前記空気吹出部を移動させながら、前記空気吹出部から空気を吹き出させてもよい。
【0015】
本発明のワーク取出システムは、記憶部をさらに備えてもよい。前記記憶部は、前記ワークの形状、大きさ及び重さの少なくとも1つを含むワーク情報を記憶してもよい。前記吹付制御部は、前記ワーク情報と前記検出結果とに基づいて、前記空気吹出部から吹き出す空気の吹出量、吹出速度、吹出時間、及び、前記空気吹出部の吹出位置の少なくとも1つを設定してもよい。
【0016】
本発明のワーク取出システムは、前記判定部は、前記検出部が前記ワークを検出したか否かを判定してもよい。前記検出部が前記ワークを検出していないと前記判定部が判定した場合、前記吹付制御部は、前記ワークに空気を吹き付けるように前記吹付装置を制御してもよい。
【0017】
本発明の他の局面に係るワーク取り出し方法は、バラ積みされたワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方を検出部で検出する工程と、検出した検出結果に基づいて、吹付装置により前記ワークに空気を吹き付ける吹き付け動作を実行するか否かを判定部で判定する工程とを有する。前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行すると判定した場合、前記吹付装置は、前記ワークに空気を吹き付ける。前記判定部が前記吹付装置による前記吹き付け動作を実行しないと判定した場合、保持装置は、前記ワークを保持する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、判定部が吹付装置による吹き付け動作を実行すると判定した場合、吹付装置は、ワークに空気を吹き付ける。従って、ワークを突出部で下方から突き上げる場合とは異なり、ワークが損傷することを抑制できる。よって、ワークが損傷することを抑制しながら、ワークの水平方向の位置及び高さの少なくとも一方を変化させることが可能なワーク取出システム及びワーク取り出し方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態のワーク取出システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のワーク取出システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3A】保持装置によって少なくとも1つのワークが取り出し可能である状態を示す図である。
【
図3B】全てのワークが取り出しできない状態を示す図である。
【
図3C】
図3Bに示したワークに空気を吹き付けた後の状態を示す図である。
【
図3D】保持装置によってワークが取り出される状態を示す図である。
【
図4】本実施形態のワーク取出システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態のワーク取出システムの保持装置の保持部周辺の構造の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態のワーク取出システムの保持装置の保持部周辺の構造の他の例を示す図である。
【
図7】本実施形態のワーク取出システムの吹き付け動作の一例を説明するための平面図であり、吹出ノズルの軌跡を示す図である。
【
図8】本実施形態のワーク取出システムの吹き付け動作の一例を説明するための断面図であり、吹出ノズルによる吹き付け方向を説明するための図である。
【
図9】本実施形態の保持部によって吸着しにくいワークの形状の一例を説明するための図である。
【
図10】本実施形態のワーク取出システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本発明の第2実施形態のワーク取出システムの保持装置の保持部周辺の構造を示す図である。
【
図12】本発明の第3実施形態のワーク取出システムの吹付装置の吹出ノズルを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0021】
(第1実施形態)
図1~
図10を参照して、本発明の第1実施形態に係るワーク取出システム1000について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のワーク取出システム1000の全体構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1実施形態のワーク取出システム1000の構成を概略的に示す図である。
図3Aは、保持装置100によって少なくとも1つのワーク10が取り出し可能である状態を示す図である。
図3Bは、全てのワーク10が取り出しできない状態を示す図である。
図3Cは、
図3Bに示したワーク10に空気を吹き付けた後の状態を示す図である。
図3Dは、保持装置100によってワーク10が取り出される状態を示す図である。
【0022】
図1に示すように、ワーク取出システム1000は、保持装置100と、吹付装置300と、保持制御部510と、吹付制御部530と、検出部550と、判定部560とを備える。例えば、保持制御部510、吹付制御部530、検出部550及び判定部560は、制御装置500に含まれる。保持装置100は、ワーク10(
図2参照)を保持する。吹付装置300は、ワーク10に空気を吹き付ける。吹付制御部530は、吹付装置300を制御する。検出部550は、ワーク10を検出する。判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行するか否かを判定する。
【0023】
保持装置100は、保持部110を有する。保持部110は、ワーク10(
図2参照)を保持する。保持部110がワーク10を保持する構成は、特に限定されるものではない。例えば、保持部110は、ワーク10を吸着することによって保持してもよいし、ワーク10を挟持することによって保持してもよい。本明細書において、ワーク10を保持するとは、ワーク10を吸着したり、挟んだりして、ワーク10を持つことを意味する。
【0024】
図2に示すように、保持装置100は、バラ積みされたワーク10を保持する。保持装置100は、例えば、多関節ロボットを含んでもよい。保持装置100は、トレイ20内のワーク10をトレイ20の外部に取り出すための装置である。ワーク10は、例えば、トレイ20内にバラ積みされる。つまり、ワーク10は、トレイ20内に無秩序に収容されている。ワーク10の種類は、特に限定されない。ワーク10は、例えば、略直方体形状を有する箱であってもよいし、略円筒形状を有する容器であってもよい。また、ワーク10は、例えば、タブレット状の固形物を収容してもよいし、液体を収容してもよい。また、ワーク10は、例えば空箱であってもよい。
【0025】
保持制御部510は、保持装置100を制御する。保持制御部510は、例えば、保持装置100によるワーク10の取り出し動作を制御する。具体的には、保持制御部510は、例えば、保持部110を所定の水平方向の位置及び高さに配置する。また、保持制御部510は、例えば、吸引装置を制御することによって保持部110でワーク10を吸着したり、モータ等のアクチュエータを制御することによって保持部110でワーク10を挟持したりする。
【0026】
吹付装置300は、吹出ノズル310を有する。吹出ノズル310は、本発明の「空気吹出部」の一例である。吹出ノズル310は、ワーク10に空気を吹き付ける。吹付装置300は、ワーク10に空気を吹き付けることによって、ワーク10の水平方向の位置及び高さの少なくとも一方を変化させる。このように、吹付装置300は、ワーク10に空気を吹き付けるため、ワークを突出部で下方から突き上げる場合とは異なり、ワーク10が損傷することを抑制できる。以下、「水平方向の位置」を「水平位置」と記載することがある。また、例えば、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方を変化させるためにロボットのアーム等をワーク10に接触させる場合と異なり、ロボットに負荷がかかることを抑制できる。従って、ロボットがエラー停止することを抑制できる。
【0027】
なお、吹付装置300は、ワーク10に向かって空気を吹き出すことによって、吹出ノズル310から直接的にワーク10に空気を当ててもよい。また、吹付装置300は、トレイ20の内面(底面又は内側面)に向かって空気を吹き出すことによって、吹出ノズル310から間接的にワーク10に空気を当ててもよい。つまり、本発明の「ワークに空気を吹き付ける」とは、吹出ノズル310(空気吹出部)から直接的にワーク10に空気を吹き付ける場合も、間接的にワーク10に空気を吹き付ける場合も含む。
【0028】
吹付装置300は、吹出ノズル310の水平位置、高さ及び姿勢の少なくとも1つを変化できるように構成されていてもよい。また、吹出ノズル310は、例えば、トレイ20の上方、側方、又は下方の決められた位置に固定されていてもよい。また、吹付装置300は、吹出ノズル310を1つだけ含んでもよいし、吹出ノズル310を複数含んでもよい。
【0029】
吹付制御部530は、例えば、吹付装置300による吹き付け動作を制御する。吹き付け動作とは、吹出ノズル310から圧縮空気を排出し、ワーク10に対して空気を吹き付けることを意味する。具体的には、吹付制御部530は、吹出ノズル310の水平位置、高さ及び姿勢を変化させてもよい。また、吹付制御部530は、圧縮機を制御することによって吹出ノズル310からワーク10に空気を吹き付ける。
【0030】
検出部550は、バラ積みされたワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方を検出する。具体的には、検出部550には、ワーク状態取得装置50から取得情報が送信される。取得情報は、ワーク状態取得装置50が取得した情報である。取得情報は、例えば、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方を検出するために必要な情報である。また、取得情報は、例えば、ワーク10の姿勢を検出するために必要な情報を含んでいてもよい。つまり、検出部550は、ワーク10の姿勢を検出してもよい。取得情報としては、例えば、ワーク10を含むトレイ20全体のRGBDデータや点群データなどが挙げられるが、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方を検出できれば、これら以外のデータであってもよい。
【0031】
検出部550は、ワーク状態取得装置50が取得した情報に基づいて、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方を検出する。ワーク状態取得装置50は、例えば、トレイ20の上方で移動しないように固定されていてもよいし、保持装置100のアーム等に固定されていてもよい。ただし、ワーク状態取得装置50が保持装置100のアーム等に固定される場合、ワーク状態取得装置50も動く(移動する)ため、ワーク状態取得装置50として大型の高精度カメラを用いることができない。
【0032】
判定部560は、検出部550が検出した検出結果に基づいて、吹付装置300による吹き付け動作を実行するか否かを判定する。すなわち、判定部560は、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方に基づいて、吹き付け動作を実行するか否かを判定する。例えば、ワーク10が保持装置100によって取り出しできない水平位置又は高さである場合、判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定する。その一方、例えば、ワーク10が保持装置100によって取り出し可能な水平位置又は高さである場合、判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行しないと判定する。このように、検出部550でワーク10を検出し、その検出結果に基づいて吹き付け動作を実行するか否かを判定する判定部560を設けることによって、様々な形状、重さ及びサイズのワーク10を取り出すことができる。また、新規のワーク10であっても保持装置100によって取り出すことが可能である。
【0033】
なお、判定部560は、トレイ20内の少なくとも1つのワーク10が保持装置100によって取り出し可能である場合、吹き付け動作を実行しないと判定する。一方、判定部560は、トレイ20内の全てのワーク10が保持装置100によって取り出しできない場合、吹き付け動作を実行すると判定する。
【0034】
判定部560は、ワーク10が保持装置100によって取り出し可能であるか否かを判定して、吹き付け動作を実行するか否かを判定するが、判定部560による判定方法はこれに限らない。判定部560は、例えば、ワーク10の検出結果(例えば、水平位置、高さ、姿勢)、後述するワーク情報(ワーク10の形状、大きさ、重さ)の各項目を、ワーク10の取りやすさで評価してスコア化し、スコアの合計に基づいて、吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。例えば、スコアの合計が閾値以上であれば、吹き付け動作を実行せずに取り出し動作を実行し、スコアの合計が閾値未満であれば、吹き付け動作を実行する。このように、ワーク10の取りやすさを総合的に評価することによって、吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。また、この場合、ワーク状態取得装置50が取得した情報を、正確さで評価してスコア化し、上記スコアの合計に加えてもよい。また、保持部110、アーム130又は取付部材140の情報(大きさ、形状、動作範囲)の各項目もスコア化し、上記スコアの合計に加えてもよい。
【0035】
また、判定部560は、ワーク10の検出結果に基づいてワーク10の姿勢が起立姿勢であるか否かを判定してもよい。ここで、起立姿勢は、ワーク10が例えば略直方体である場合、つまりワーク10が略直交する3辺を有する場合、ワーク10の上方に配置されたワーク状態取得装置50によってワーク10の最も長い辺が検出されないときの姿勢を含む。言い換えると、起立姿勢は、ワーク10の最も長い辺が鉛直方向に延びるときの姿勢を含む。また、起立姿勢は、ワーク10の上方に配置されたワーク状態取得装置50によってワーク10の2番目に長い辺が検出されないときの姿勢を含む。言い換えると、起立姿勢は、2番目に長い辺が鉛直方向に延びるときの姿勢を含む。また、起立姿勢において、ワーク10の最も長い辺、又は、2番目に長い辺は、鉛直方向に対して平行でなくてもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。なお、鉛直方向に延びる辺がワーク状態取得装置50によって検出できない場合であっても、ワーク情報に含まれる3辺の長さ又は長さの比から、鉛直方向に延びる辺(検出できない辺)が3辺のうちのいずれの辺であるかを容易に判別可能である。
【0036】
また、ワーク10の種類毎にユーザが起立姿勢を定義(設定)してもよい。具体的には、ワーク10は、例えば洗剤等を収容する容器のように、曲面のみ(又は曲面と平面との組み合わせ)によって形成されている場合もある。この場合、ワーク10の上部又は上端の形状をユーザが予め登録することによって、ワーク10の起立姿勢を定義(設定)できる。なお、ワーク10が略直方体である場合にワーク10の起立姿勢を定義(設定)してもよい。
【0037】
また、判定部560は、ワーク10の検出結果に加え、トレイ20内から取り出したワーク10を別のトレイ又は収納箱に配置する際のワーク10の姿勢に基づいて、吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。具体的には、判定部560は、ワーク10を別のトレイ又は収納箱に配置する際に、ワーク10を立たせた状態で配置するか、又は、横にした状態で配置するかによって、吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。
【0038】
また、判定部560は、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方と、ワーク10の姿勢とに基づいて、吹き付け動作を実行するか否かを判定してもよい。このように、検出部550によってワーク10の姿勢をさらに検出することによって、ワーク10を保持装置100によって取り出しできるか否かを精度よく判定できる。つまり、吹き付け動作を実行するか否かを適切に判定でき、ワーク10をより取り出しやすくできる。
【0039】
判定部560が吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定した場合、吹付制御部530は、バラ積みされたワーク10に空気を吹き付けるように吹付装置300を制御する。従って、例えば、ワーク10の水平位置及び高さの少なくとも一方が取り出しできない状態である場合、吹き付け動作を実行することによって、ワーク10の水平位置、高さ及び姿勢などを変化させることができる。
【0040】
その一方、判定部560が吹付装置300による吹き付け動作を実行しないと判定した場合、保持制御部510は、バラ積みされたワーク10を保持するように保持装置100を制御する。従って、例えば、吹き付け動作によりワーク10の水平位置、高さ及び姿勢が変化することによって、ワーク10が取り出しできる状態になった場合、保持装置100によってワーク10を取り出しできる。
【0041】
具体的には、
図3Aに示すように、例えば、少なくとも1つのワーク10がトレイ20の中央部に位置し、且つ、ワーク10の姿勢が水平になっている場合、判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行しないと判定する。言い換えると、判定部560は、保持装置100によって少なくとも1つのワーク10を取り出し可能であると判定する。そして、保持装置100によってワーク10が取り出される。
【0042】
一方、
図3Bに示すように、例えば、全てのワーク10がトレイ20の側壁21に沿って配置され、且つ、ワーク10の姿勢が鉛直になっている場合、保持部110、取付部材140又はアーム130等がトレイ20に接触してしまい、ワーク10を保持できない。従って、判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定する。言い換えると、判定部560は、全てのワーク10が取り出しできないと判定する。
【0043】
この場合、吹付装置300によってワーク10に対して空気を吹き付ける。これにより、ワーク10の水平位置及び姿勢が変化する。そして、
図3Cに示すように、例えば、少なくとも1つのワーク10がトレイ20の側壁21から離隔したり、ワーク10の姿勢が水平になったりした場合、判定部560は、吹付装置300による吹き付け動作を実行しないと判定する。言い換えると、判定部560は、保持装置100によって少なくとも1つのワーク10を取り出し可能であると判定する。
【0044】
そして、
図3Dに示すように、保持装置100によってワーク10が取り出される。
【0045】
保持装置100は、トレイ20内から取り出したワーク10を、例えば、別のトレイ又は収納箱の内部に配置する。
【0046】
また、本実施形態では、判定部560は、トレイ20内にワーク10があるか否かを判定してもよい。具体的には、例えば、判定部560は、トレイ20内にバラ積みされたワーク10の数と、保持部110によって取り出したワーク10の数とを比較することによって、トレイ20内にワーク10があるか否かを判定してもよい。言い換えると、判定部560は、トレイ20内のワーク10を取り出す(移す)指示の数と同じ個数のワーク10を取り出し終えたか否かを判定してもよい。また、例えば、トレイ20の下方に、トレイ20の重さを測定する重量測定装置(図示せず)を設けてもよい。そして、重量測定装置の測定結果と、予め測定した空のトレイ20の重さとを比較することによって、判定部560は、トレイ20内にワーク10があるか否かを判定してもよい。
【0047】
次に、
図4を参照して、本実施形態のワーク取出システム1000についてさらに説明する。
図4は、本実施形態のワーク取出システム1000の構成を示すブロック図である。
【0048】
図4に示すように、本実施形態では、ワーク取出システム1000は、保持装置100と、吹付装置300と、制御装置500とを備える。また、本実施形態では、ワーク取出システム1000は、ワーク状態取得装置50をさらに備える。
【0049】
本実施形態では、保持装置100は、保持部110と、アーム130と、吸引装置150とを含む。本実施形態では、保持部110は、ワーク10を吸着して保持する。従って、例えば、ワーク10を挟持して保持する場合に比べて、保持部110を小さくできる。具体的には、保持部110がワーク10を挟持して保持する場合、保持部110は、ワーク10よりも大きく開く必要があるため、トレイ20や他のワーク10に接触しやすい。その一方、保持部110がワーク10を吸着して保持する場合、保持部110は、ワーク10よりも大きく開く必要がないため、トレイ20や他のワーク10に接触することを抑制できる。
【0050】
保持部110は、例えば、吸着パッド等の吸着部材である。保持部110は、ワーク10の上面を吸着して保持する。保持部110は、アーム130の先端に取り付けられる。アーム130は、例えば、複数軸の回りに回転可能な、多関節アームである。保持装置100は、例えば、6軸ロボット又は5軸ロボットを含む。アーム130は、保持部110を任意の水平位置、高さ及び姿勢に配置可能である。
【0051】
吸引装置150は、例えば、空気を吸引するエジェクターや吸引ポンプ等の真空発生器を含む。吸引装置150は、保持部110に繋がっており、吸引装置150が駆動することによって、保持部110がワーク10を吸着可能である。
【0052】
本実施形態では、吹付装置300は、吹出ノズル310と、コンプレッサ330とを含む。本実施形態では、吹出ノズル310は、少なくとも水平位置及び高さを変化可能である。吹付装置300は、保持装置100と同様、吹出ノズル310の水平位置及び高さを変化させるロボットアームを含んでもよいが、本実施形態では、吹出ノズル310は、保持装置100の保持部110に設けられている。これにより、吹出ノズル310は、保持部110と一体的に移動する。従って、吹出ノズル310を移動させるためのロボットアームを別途設ける必要がない。その結果、ワーク取出システム1000の構造が複雑になることを抑制できる。
【0053】
コンプレッサ330は、空気を圧縮し、圧縮した空気を送り出す。コンプレッサ330は、吹出ノズル310に繋がっており、コンプレッサ330により圧縮された空気は、吹出ノズル310から吹き出される。
【0054】
本実施形態では、制御装置500は、保持制御部510と、吹付制御部530と、検出部550と、判定部560と、主制御部570と、記憶部590とを含む。
【0055】
制御装置500は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む。制御装置500のプロセッサは、記憶部590の記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行して、保持制御部510、吹付制御部530、検出部550、判定部560及び主制御部570として機能する。
【0056】
記憶部590は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータプログラムを記憶する。記憶部590は、例えば、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体の一例である。具体的には、記憶部590は、半導体メモリのような主記憶装置と、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。記憶部590は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。また、記憶部590は、ワーク状態取得装置50が取得した情報、検出部550が検出した検出情報、ワーク10に関する情報、保持装置100に関する情報、及び、吹付装置300に関する情報等を記憶する。
【0057】
保持制御部510は、アーム130及び吸引装置150を制御する。保持制御部510は、アーム130の動作を制御することによって、保持部110の水平位置及び高さを制御する。また、具体的には、保持制御部510は、モータ等のアクチュエータを制御することによって、アーム130の動作を制御する。
【0058】
また、保持制御部510は、吸引装置150の駆動(オンオフ)を制御する。また、保持制御部510は、バルブ(図示せず)の開閉動作を制御する。バルブは、吸引装置150と保持部110との間、又は、吸引装置150に配置される。保持制御部510は、吸引装置150及びバルブを制御することによって、保持部110による空気の吸引動作を制御する。
【0059】
そして、保持制御部510は、保持部110の水平位置及び高さと、吸引動作とを制御することによって、保持装置100によるワーク10の取り出し動作を制御する。また、本実施形態では、保持制御部510は、保持部110の水平位置及び高さに加え、ワーク10の姿勢も制御する。
【0060】
吹付制御部530は、コンプレッサ330を制御する。吹付制御部530は、コンプレッサ330の駆動(オンオフ)を制御する。また、吹付制御部530は、バルブ(図示せず)の開閉動作を制御する。バルブは、コンプレッサ330と吹出ノズル310との間、又は、コンプレッサ330に配置される。吹付制御部530は、コンプレッサ330及びバルブを制御することによって、吹出ノズル310による空気の吹き付け動作を制御する。なお、吹付装置300が吹出ノズル310を移動させるロボットアームを含む場合、吹付制御部530は、保持制御部510と同様、ロボットアームの動作を制御することによって、吹出ノズル310の水平位置及び高さを制御する。この場合、吹付制御部530は、吹出ノズル310の水平位置及び高さに加え、姿勢(吹き出し方向)を制御してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、吹付制御部530は、ワーク情報と検出部550が検出した検出結果とに基づいて、吹出ノズル310から吹き出す空気の吹出量、吹出速度、吹出時間、及び、吹出ノズル310の吹出位置の少なくとも1つを設定する。ワーク情報は、例えば、ワーク10の種類毎に設けられている。ワーク情報は、例えば、ワーク10の形状、大きさ及び重さの少なくとも1つを示す情報を含む。吹出ノズル310の吹出位置は、例えば、吹き出しを行う高さを含むが、吹出ノズル310とワーク10との距離、又は、吹付角度(ノズルの向き)を調整できれば、吹き出しを行う高さ以外を含んでもよい。例えば、吹出ノズル310の吹出位置は、吹出ノズル310の水平位置を含んでもよい。また、吹出ノズル310の吹出位置は、吹出ノズル310の水平位置と高さとを含んでもよい。
【0062】
また、吹付制御部530は、ワーク情報と検出部550が検出した検出結果とに基づいて、吹出ノズル310の種類を設定してもよい。例えば、吹付装置300が複数種類の吹出ノズル310と、吹出ノズル310を交換するツールチェンジャーとを有し、吹付制御部530は、吹出ノズル310を交換するように、ツールチェンジャーを制御してもよい。なお、吹付装置300はツールチェンジャーを有してなくてもよい。この場合、吹付制御部530は、ユーザに吹出ノズル310の交換を促すように、報知部(図示せず)を制御してもよい。
【0063】
吹付制御部530が、ワーク情報に基づいて、吹出ノズル310から吹き出す空気の吹出量、吹出速度、吹出時間、及び、吹出ノズル310の吹出位置の少なくとも1つを設定することによって、ワーク10の水平位置及び高さを容易に変化させることができる。
【0064】
本実施形態では、検出部550は、バラ積みされたワーク10の水平位置及び高さを検出する。具体的には、検出部550は、ワーク状態取得装置50が取得した情報に基づいて、ワーク10の水平位置及び高さを検出する。本実施形態では、ワーク状態取得装置50は、トレイ20の上方の天井60(
図2参照)に固定される。ワーク状態取得装置50は、例えば、トレイ20内を撮像する撮像装置を含んでもよい。また、ワーク状態取得装置50は、例えば、トレイ20内の3D(3次元)情報を取得する取得装置を含んでもよい。取得装置は、例えば、3Dカメラ又はLIDAR(Light Detection And Ranging)を含んでもよい。
【0065】
検出部550は、例えば、ワーク状態取得装置50による取得結果に基づいて、ワーク10の水平位置を検出する。また、検出部550は、例えば、ワーク状態取得装置50による取得結果に基づいて、対象物の高さを検出する。従って、検出部550は、ワーク10の上面11を検出できる。なお、ワーク10の上面11とは、トレイ20内に配置された状態におけるワーク10の上面11である。例えば、ワーク10の上面11とは、ワーク10のうちトレイ20の底面22から最も遠い面である。
【0066】
具体的には、検出部550は、ワーク状態取得装置50による取得結果に基づいて、保持装置100を用いてワーク10を保持する際の保持位置、及び、ワーク10の姿勢を算出する。これらワーク10の保持位置及び姿勢は、一般的に知られている算出方法を用いて導出してもよい。ここでは、一例として、ワーク状態取得装置50としてトレイ20の上方の天井60に固定された3Dカメラを用いて、検出部550がワーク10の保持位置及び姿勢を算出する例について説明する。
【0067】
ワーク状態取得装置50は、トレイ20全体の取得情報(2次元カラー画像及び3次元点群データ)を出力する。なお、2次元カラー画像の画像座標系と3次元点群データの3次元座標系とを相互に変換可能な変換行列は、カメラキャリブレーションにより既知である。まず、ワーク状態取得装置50は、撮像した2次元カラー画像を検出部550に入力する。検出部550は、2次元カラー画像が入力されると、2次元カラー画像上でワーク10を囲む外接矩形(バウンディングボックスともいう)の中心座標と、外接矩形のサイズ(縦横の長さ)とをカメラ座標系で出力する。つまり、トレイ20内におけるワーク10の位置及びサイズが検出される。なお、検出部550によるワーク10の位置及びサイズの検出手法は、特に限定されるものではなく、例えば、近年一般的に用いられるニューラルネットワークを用いてもよいし、その他の手法を用いてもよい。
【0068】
次に、検出部550は、検出した外接矩形の中心座標及びサイズの情報(カメラ座標系)と、変換行列とを用いて、トレイ20全体の3次元点群データからワーク10周辺の3次元領域を抽出する。さらに、検出部550は、抽出したワーク10周辺の3次元領域の点群データのうち3次元勾配が緩やかに連続している点群をワーク10の上面11の3次元点群データとして抽出する。例えば、保持方法として吸着を利用する場合、このように抽出されたワーク10の3次元点群データおいて3次元勾配が最も緩やかに連続している領域(上面11)の中心を保持位置として出力し、当該領域の垂直方向を保持部110の姿勢の方向として出力する。
【0069】
なお、ワーク状態取得装置50は、例えば、撮像装置、3Dカメラ及びLIDARを含まなくてもよい。ワーク状態取得装置50として、例えば、トレイ20の内部を複数の方向から撮像するために複数の撮像装置を用いてもよい。この場合も、ワーク10の水平位置及び高さを検出できる。
【0070】
判定部560は、例えば、検出部550が算出したワーク10の保持位置及び姿勢に基づいて、保持部110による取り出し動作を実際に実行可能であるか否かを判定し、吹付装置300による吹き付け動作を実行するか否かを判定する。
【0071】
具体的には、まず、記憶部590に記憶されている保持装置100、吹付装置300及びトレイ20の形状を記述した接触判定用の3次元モデルを読み込む。なお、トレイ20のモデルは、ワーク状態取得装置50が取得したトレイ20の情報に基づいて主制御部570が作成したものであってもよい。
【0072】
次に、保持部110を現在の位置からワーク10を保持する位置まで移動させたときに、保持部110の移動経路全体を通して、保持部110及びその周辺の部材(アーム130及び取付部材140)がトレイ20に接触するか否かを判定する。なお、保持部110の移動経路の生成方法は、例えば産業用ロボットアームで一般的に用いられている方法を用いてもよい。そして、いずれのワーク10に対しても取り出し動作を実行しようとした場合に保持部110等がトレイ20に接触すると判定部560が判定した場合、そのままの状態(位置及び姿勢)で保持できるワーク10はトレイ20内に存在しない。従って、判定部560は、吹き付け動作を実行すると判定する。その一方、取り出し動作を実行しようとした場合に保持部110等がトレイ20に接触しないと判定部560が判定した場合、判定部560は、取り出し動作を実行すると判定する。例えば、ワーク10がトレイ20の中央部に位置し、且つ、ワーク10の姿勢が水平である場合、判定部560は、保持部110等がトレイ20に接触しないと判定し、取り出し動作を実行すると判定する。また、例えば、ワーク10がトレイ20の側壁21に沿って配置され、且つ、ワーク10の姿勢が鉛直になっている場合、判定部560は、保持部110等がトレイ20に接触すると判定し、吹き付け動作を実行すると判定する。
【0073】
また、判定部560は、保持部110等が他のワーク10に接触するか否かも判定し、保持部110等が他のワーク10に接触しないと判定した場合に取り出し動作を実行すると判定してもよい。
【0074】
主制御部570は、保持制御部510及び吹付制御部530を制御する。主制御部570は、判定部560の判定結果に基づいて、吹き付け動作又は取り出し動作を実行する。具体的には、判定部560が吹き付け動作を実行すると判定した場合、主制御部570は、保持制御部510に対しては取り出し動作を実行せず、吹付制御部530に対しては吹き付け動作を実行するように指示する。なお、本実施形態では、吹付装置300の吹出ノズル310は保持装置100の保持部110に設けられているため、吹き付け動作の実行時にも保持制御部510はアーム130の水平位置及び高さを制御する。また、主制御部570は、保持部110の移動及び停止と、吹出ノズル310の吹き付けとのタイミングを計って保持制御部510及び吹付制御部530に対して指示する。
【0075】
また、主制御部570は、保持部110によるワーク10の吸着(取り出し)が失敗した場合に、吹き付け動作を実行してもよい。例えば、保持部110によるワーク10の吸着が失敗したか否かを判定部560によって判定し、保持部110によるワーク10の吸着が失敗したと判定部560が判定した場合に主制御部570は、吹き付け動作を実行してもよい。また、保持部110によるワーク10の吸着が失敗したか否かを判定部560によって判定することなく、例えば重量測定装置(図示せず)の測定結果が変化しなかった場合に主制御部570は、吹き付け動作を実行してもよい。
【0076】
次に、
図2、
図5及び
図6を参照して、保持部110周辺の構造について説明する。
図5は、本実施形態のワーク取出システム1000の保持装置100の保持部110周辺の構造の一例を示す図である。
図6は、本実施形態のワーク取出システム1000の保持装置100の保持部110周辺の構造の他の例を示す図である。
【0077】
図2に示すように、保持部110は、アーム130の先端に対して着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、保持装置100は、取付部材140を備える。保持部110は、取付部材140を介してアーム130の先端に取り付けられる。なお、例えば、取付部材140と保持部110とは、一体成形品であってもよい。また、例えば、取付部材140とアーム130とは、一体成形品であってもよい。
【0078】
図5に示すように、保持部110は、貫通孔110aを有する。貫通孔110aは、保持部110を貫通する。貫通孔110aは、ゴムホース等を介して吸引装置150に繋がっている。
【0079】
保持部110は、吸着面である下面110bを有する。保持部110は、取り出し動作の実行時には、ワーク10の表面に対して垂直に延びるように配置される。このため、下面110bがワーク10の表面と平行になった状態で、取り出し動作が実行される。
【0080】
また、保持部110の下端部は、他の部分に比べて大きい直径を有してもよい。言い換えると、保持部110は、他の部分に比べて大きい直径を有する鍔部110cを有してもよい。そして、鍔部110cは、吸着面である下面110bを有してもよい。この場合、吸着面(下面110b)の面積が大きくなるため、保持部110のワーク10に対する吸着性が安定する。
【0081】
また、吹出ノズル310は、取付部材140に配置される。吹出ノズル310は、例えば、取付部材140に取り付けられていてもよい。また、吹出ノズル310と取付部材140とは、例えば、一体成形品であってもよい。
【0082】
吹出ノズル310は、貫通孔310aを有する。貫通孔310aは、吹出ノズル310を貫通する。貫通孔310aは、ゴムホース等を介してコンプレッサ330に繋がっている。
【0083】
また、貫通孔310aの内径は、保持部110の貫通孔110aの内径に比べて大きくてもよい。この場合、吹出ノズル310による空気の吹出量を容易に多くできる。また、貫通孔310aは、複数設けられていてもよいし、例えば、円形状ではなく、横長形状又はスリット形状に形成されていてもよい。
【0084】
また、吹出ノズル310は、例えば、保持部110に対して略平行に配置される。この構成で、吹出ノズル310の先端部311が鉛直下向きになるようにアーム130の姿勢を動かした場合、吹出ノズル310から空気が鉛直下方向に吹き出される。また、例えば、吹出ノズル310の先端部311は、保持部110に対して交差する方向に延びていてもよい。この場合、吹出ノズル310から空気を鉛直方向に対して交差(傾斜)する方向に吹き出させることができる。また、
図6に示すように、吹出ノズル310の先端部311は、保持部110に対して直交する方向に延びていてもよい。この場合、吹出ノズル310から空気を水平方向に吹き出させることができる。これにより、ワーク10に対して真横(水平方向)から空気を吹き付けやすくなる。この構成は、起立姿勢のワーク10を空気で倒したい場合に特に有効である。なお、例えば、吹出ノズル310の先端部311が保持部110に対して略平行に配置されている場合であっても、アーム130の姿勢を変更することによって吹出ノズル310から空気を鉛直方向に対して交差(傾斜又は直交)する方向に吹き出させることも可能である。ただし、アーム130の関節部は可動範囲が限られており、また、吹出ノズル310を水平に近づけると、トレイ20にアーム130が接触しやすくなるので、吹出ノズル310の先端部311が保持部110に対して略平行に配置されている場合、吹出ノズル310の吹き出し方向を水平に近づけにくくなる。
【0085】
また、吹出ノズル310は、取付部材140から最も遠い位置に配置される下端310bを有する。保持部110が鉛直下方向に延びるように配置された状態で、吹出ノズル310の下端310bは、保持部110の下面110bよりも上方に配置される。従って、保持部110による取り出し動作の実行時に、吹出ノズル310がワーク10に接触することを抑制できる。
【0086】
次に、
図7及び
図8を参照して、吹付装置300による吹き付け動作について説明する。
図7は、本実施形態のワーク取出システム1000の吹き付け動作の一例を説明するための平面図であり、吹出ノズル310の軌跡を示す図である。
図8は、本実施形態のワーク取出システム1000の吹き付け動作の一例を説明するための断面図であり、吹出ノズル310による吹き付け方向を説明するための図である。
【0087】
図7に示すように、ワーク10がトレイ20の側壁21に沿って配置されている場合、例えば、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って約1周にわたって移動させながら、吹出ノズル310から空気を吹き出させてもよい。このように、吹付制御部530は、予め決められた経路で吹出ノズル310を移動させてもよい。この場合、吹出ノズル310を目的のワーク10の近傍まで移動させて空気を吹き付ける場合に比べて、吹出ノズル310の位置を高い精度で制御する必要がない。また、トレイ20内のワーク10の水平位置や姿勢などによらず、ワーク10の多くの状況(水平位置及び姿勢)において、ワーク10に空気を吹き付けることができる。従って、検出部550がワーク10の検出に失敗した場合(ワーク10の水平位置及び高さなどが検出されなかった場合)であっても、ワーク10に空気を吹き付けることができる。
【0088】
吹付制御部530が、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って約1周にわたって移動させながら、吹出ノズル310から空気を吹き出させることによって、トレイ20の側壁21に沿って空気を吹き出すことができる。従って、ワーク10を側壁21から容易に遠ざけることができる。具体的には、吹付制御部530は、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21の内面21aに沿って約1周にわたって移動させる。この場合、吹出ノズル310の吹き出し方向を側壁21側(つまり外側)に向かって、5°~25°、好ましくは5°~15°傾けることによって、空気が側壁21に反射するため、ワーク10の位置及び姿勢を変更させやすくなる。
【0089】
また、ワーク10が側壁21の近傍に配置されている場合に吹き付け動作が実行されやすいため、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って約1周にわたって移動させることは有効である。
【0090】
また、検出部550によりワーク10の水平位置及び高さが検出されなかった場合に、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って約1周にわたって移動させてもよい。ワーク10が側壁21の近傍に配置されている場合にワーク10の水平位置及び高さが検出されにくいため、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って約1周にわたって移動させることは有効である。なお、ワーク10が側壁21の近傍に配置されている場合は、側壁21の影でワーク10が暗くなり、ワーク10が検出されない場合がある。また、例えば、直方体形状のワーク10同士が隙間なく配置されている場合、ワーク10同士の境界が不明瞭になり、ワーク10の位置が検出されない場合がある。
【0091】
また、トレイ20の側壁21が例えば格子状に形成されている場合、すなわちトレイ20の側壁21が複数の開口部(図示せず)を有する場合、吹出ノズル310をトレイ20の外部から側壁21に沿って約1周にわたって移動させてもよい。この場合、吹出ノズル310を略水平に配置し、側壁21の外部からトレイ20の内部に向かって空気を吹き出してもよい。
【0092】
なお、ワーク10がトレイ20の側壁21に沿って配置されている場合に、例えば、吹出ノズル310の位置を所定位置に移動し、吹出ノズル310をその位置に固定した状態で、ワーク10に空気を吹き付けてもよい。この場合、吹付制御部530は、検出部550の検出結果に基づいて、吹出ノズル310の位置を設定してもよい。
【0093】
また、吹出ノズル310から空気を吹き出す時間は、特に限定されないが、例えば、吹出ノズル310が移動しない場合は一定時間(例えば数秒)吹き出してもよいし、吹出ノズル310が移動している間は常に吹き出してもよい。また、吹出ノズル310から1秒よりも短い時間(例えば数m秒以上数十m秒以下)吹き出すことを繰り返してもよい。言い換えると、吹出ノズル310から間欠的に空気を吹き出してもよい。このように、吹出ノズル310から空気を間欠的に吹き出す場合、ワーク10がトレイ20の反対側の側壁21まで移動することを抑制しながら、ワーク10の水平位置、高さ及び姿勢を変化させることができる。詳細には、ワーク10を動かすためには、風の強さがある程度以上必要であるが、動き出したワーク10に強い風を当て続けると、ワーク10は風下側の側壁21まで移動してしまう場合がある。一方、ワーク10に対して間欠的に風を当てることにより、動いたワーク10が一旦止まり、つまり動摩擦から静止摩擦に戻るため、ワーク10が風下の側壁21まで移動することを抑制できる。
【0094】
図8に示すように、例えばペットボトル形状を有するワーク10aが立っている場合、保持部110ではワーク10aを吸着しにくい。なお、本明細書では、種々のワーク10のうち、ペットボトル形状のワークをワーク10aとして記載する。
【0095】
具体的には、ワーク10aのキャップの上面11が湾曲していることに起因してワーク10aを吸着しにくい場合がある。この場合、判定部560は、検出部550の検出結果、及び、ワーク情報等に基づいて、吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定する。言い換えると、検出部550は、ペットボトル形状を有するワーク10aの姿勢を検出する。そして、判定部560は、ワーク10aが起立姿勢であると判定し、吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定する。従って、ワーク10aの上面11を吸着することが困難である場合に、判定部560は、ワーク10aを横に倒す必要があると判定する。
【0096】
この場合、吹出ノズル310から鉛直下方向に空気を吹き出してもよいが、例えば、鉛直方向に対して交差(傾斜又は直交)する方向に、吹出ノズル310から空気を吹き出させることが好ましい。吹出ノズル310が鉛直方向に対して交差する方向に空気を吹き出すことによって、立っているワーク10a(起立姿勢のワーク10a)を容易に転倒させることができる。これにより、ワーク10aの多角形状の外周面の一部が水平に配置されるため、保持部110によってワーク10aを容易に吸着できる。なお、起立姿勢のワーク10を横に倒すのは、ワーク10の上面11を吸着しにくい場合に限らない。例えば、ワーク10を別のトレイ又は収納箱に配置する際に、ワーク10を横にした状態で配置する場合、起立姿勢のワーク10を横に倒してもよい。
【0097】
鉛直方向に対して交差(傾斜又は直交)する方向に吹出ノズル310から空気を吹き出させる場合、例えば
図5に示した吹出ノズル310を用いて、保持部110及び吹出ノズル310の姿勢を鉛直方向に対して交差(傾斜又は直交)させた状態で、吹出ノズル310から空気を吹き出させてもよい。また、例えば
図6に示した吹出ノズル310を用いて、保持部110の姿勢を鉛直方向に配置した状態で、吹出ノズル310から空気を吹き出させてもよい。
【0098】
なお、吹付装置300による吹き付け動作を実行するのは、ワーク10がトレイ20の側壁21の近傍に配置されている場合、及び、ペットボトル形状のワーク10aが立っている場合に限らない。例えば、ワーク10同士が重なり合うことで取り出しできない場合や、ワーク10が水平面に対して傾斜しているために、ワーク10の上面11(保持部110で吸着する面)に対して垂直方向から保持部110を近づけようとするとトレイ20又は他のワーク10に保持部110やアーム130が接触することで取り出しできない場合にも、吹付装置300による吹き付け動作を実行する。
【0099】
なお、
図8では、ワーク10の上面11を吸着しにくい例として、ペットボトル形状のワーク10aを示したが、ペットボトル形状以外の形状を有するワーク10であっても、上面11を吸着しにくい場合がある。
【0100】
図9は、本実施形態の保持部110によって吸着しにくいワーク10の形状の一例を説明するための図である。
図9に示すように、例えばヘッダー付き箱であるワーク10bが立っている場合、保持部110ではワーク10bを吸着しにくいことがある。なお、本明細書では、種々のワーク10のうち、ヘッダー付き箱であるワークをワーク10bとして記載する。
【0101】
具体的には、ワーク10bは、略直方体形状を有する本体12と、ヘッダー13とを有する。ヘッダー13は、例えば、ワーク10bを吊り下げて陳列するための孔13aを有する。例えば、ワーク10bが立っている場合であって、ヘッダー13がワーク10bの上面11を覆うように倒れている場合、ワーク10bを吸着しにくい。この場合、ワーク10bの上面11のうち、ヘッダー13によって覆われていない部分のみが、上面として検出部550によって検出される。そして、判定部560は、ワーク10bの上面11が狭いため、吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定する。
【0102】
次に、
図10を参照して、本実施形態のワーク取出システム1000のワーク取り出し方法について説明する。
図10は、本実施形態のワーク取出システム1000の処理を説明するためのフローチャートである。ワーク取出システム1000の処理は、ステップS1~ステップS6を含む。
【0103】
図10に示すように、ステップS1において、ワーク状態取得装置50は、トレイ20内を撮像するとともに、トレイ20内の全域の高さを測定する。ワーク状態取得装置50は、取得した情報(撮像結果及び距離測定結果)を制御装置500に送信する。
【0104】
次に、ステップS2において、検出部550は、ワーク状態取得装置50から受信した情報に基づいて、ワーク10の水平位置及び高さを検出する。
【0105】
次に、ステップS3において、判定部560は、検出部550が検出した結果と、ワーク情報とに基づいて、吹付装置300による吹き付け動作を実行するか否かを判定する。
【0106】
ステップS3で吹付装置300による吹き付け動作を実行すると判定部560が判定した場合、ステップS4に進む。
【0107】
次に、ステップS4において、吹付制御部530は、吹き付け動作を実行する。本実施形態では、吹出ノズル310が保持部110に配置されているため、吹き付け動作を実行する際に、保持制御部510によって保持部110の水平位置及び高さを制御する。ステップS4では、ワーク10に空気が吹き付けられるため、ワーク10の水平位置、高さ及び姿勢が変化する。そして、ステップS1に戻る。
【0108】
一方、ステップS3で吹付装置300による吹き付け動作を実行しないと判定部560が判定した場合、ステップS5に進む。
【0109】
次に、ステップS5において、保持制御部510は、取り出し動作を実行する。すなわち、保持制御部510は、保持部110によりトレイ20内からワーク10を取り出すとともに、取り出したワーク10を別のトレイ又は収納箱の内部に配置する。そして、ステップS6に進む。
【0110】
次に、ステップS6において、判定部560は、終了条件を満たしたか否かを判定する。終了条件は、例えば、トレイ20内のワーク10を別のトレイ又は収納箱に移す指示の数と同じ個数を移し終えたという条件であってもよいし、トレイ20内にワーク10が残っていないという条件であってもよいし、別の条件であってもよい。
【0111】
ステップS6で終了条件を満たしていないと判定部560が判定した場合、ステップS1に戻る。なお、上記ステップS5で保持部110によるワーク10の吸着が失敗した場合、具体的には例えば重量測定装置(図示せず)の測定結果が変化しなかった場合、ステップS6に進んでもよいが、ステップS4に進み、吹き付け動作を行ってもよい。
【0112】
一方、ステップS6で終了条件を満たしたと判定部560が判定した場合、処理を終了する。
【0113】
(第2実施形態)
図11を参照して、本発明の第2実施形態に係るワーク取出システム1000について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態のワーク取出システム1000の保持装置100の保持部110周辺の構造を示す図である。第2実施形態では、保持部110が吹出ノズル310を兼ねる例について説明する。
【0114】
図11に示すように、本実施形態の保持装置100は、第1実施形態と同様、保持部110と、取付部材140とを含む。その一方、第1実施形態と異なり、取付部材140には、吹出ノズル310が設けられていない。本実施形態では、保持部110は、吹出ノズル310を兼ねる。
【0115】
具体的には、例えば、貫通孔110aには、連結管170が接続される。連結管170は、吸引管171と吹出管172とに分岐する。吸引管171は、吸引装置150に繋がっている。吹出管172は、コンプレッサ330に繋がっている。例えば、吸引管171及び吹出管172には、それぞれ、バルブ171a及びバルブ172aが配置されている。なお、バルブ171a及びバルブ172aは、吸引装置150の内部、及び、コンプレッサ330の内部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0116】
保持制御部510は、バルブ171aの開閉動作を制御する。吹付制御部530は、バルブ172aの開閉動作を制御する。
【0117】
本実施形態では、保持部110は、ワーク10を吸着する際に空気を吸引し、ワーク10に空気を吹き付ける際に空気を吹き出す。従って、吹出ノズル310を設ける必要がないため、保持部110周辺(つまり、アーム130の先端周辺)を小型化できる。よって、保持部110等がトレイ20又は他のワーク10に接触することを抑制できる。その結果、吹き付け動作を実行することなく取り出しできるワーク10の数が増える。また、吹出ノズル310を設ける必要がないため、部品点数を削減できる。
【0118】
具体的には、ワーク10を吸着する際には、バルブ172aを閉じるとともにバルブ171aを開いた状態で、吸引装置150を駆動することによって、保持部110の貫通孔110aから空気を吸引する。その一方、ワーク10に空気を吹き付ける際には、バルブ171aを閉じた状態でバルブ172aを開くことによって、コンプレッサ330で圧縮した空気が、保持部110の貫通孔110aから吹き出す。
【0119】
本実施形態のその他の構成、ワーク取り出し方法、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0120】
(第3実施形態)
図12を参照して、本発明の第3実施形態に係るワーク取出システム1000について説明する。
図12は、本発明の第3実施形態のワーク取出システム1000の吹付装置300の吹出ノズル310を説明するための断面図である。第3実施形態では、吹付装置300の吹出ノズル310が移動しない例について説明する。
【0121】
図12に示すように、本実施形態では、吹出ノズル310は、例えば、トレイ20の外部でトレイ20の側壁21に対向して複数配置されてもよい。この場合、側壁21のうち、少なくとも吹出ノズル310の先端に対向する部分には、開口部21bが形成される。
【0122】
また、吹出ノズル310は、例えば、トレイ20の外部でトレイ20の底面22に対向して複数配置されてもよい。この場合、底面22のうち、少なくとも吹出ノズル310の先端に対向する部分には、開口部22aが形成される。
【0123】
なお、
図12では、図面数を抑えるために、吹出ノズル310を側壁21に対向して配置する場合と、吹出ノズル310を底面22に対向して配置する場合とを1つの図に描いている。
【0124】
本実施形態では、吹出ノズル310を移動させないため、吹出ノズル310とコンプレッサ330とを接続する接続管又はホース等を太くできる。すなわち、接続管又はホース等の内径を大きくできる。従って、吹出ノズル310を移動させる構成に比べて、空気の吹出量を多くできる。このため、例えば、ワーク10が重い場合や、トレイ20内にワーク10が隙間なく詰め込まれた場合など、ワーク10の位置及び姿勢を変更しにくい場合であっても、多くの空気をワーク10に吹き付けることによって、ワーク10の位置及び姿勢を変更できる。
【0125】
また、本実施形態では、吹出ノズル310を移動させないため、吹き付け動作にかかる時間を短縮できる。また、本実施形態では、ワーク10が側壁21又は底面22に近接している場合、ワーク10と側壁21又は底面22との間に高圧力領域を形成できる。つまり、ホバークラフトの原理のように側壁21又は底面22とワーク10との間に高圧力領域を形成できる。従って、空気の吹出量が少ない場合であっても、ワーク10の水平位置又は姿勢を効果的に変更することができる。
【0126】
本実施形態のその他の構成、ワーク取り出し方法、及び効果は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0127】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0128】
例えば、上記の第1実施形態から第3実施形態では、保持装置100が1つの保持部110を有する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、保持装置100は、複数の保持部110を有してもよい。例えば、2つ以上の保持部110が並んで配置された保持装置100を用いた場合、ペットボトルのような細長形状を有するワーク10を容易に吸着できる。
【0129】
また、上記の第1実施形態から第3実施形態では、トレイ20内のワーク10のみに空気を吹き付ける例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、トレイ20内からワーク10を取り出す際に、保持部110からワーク10が落下する場合がある。この場合、ワーク10を吸着又は挟持できるように、ワーク10に空気を吹き付けてもよい。具体的には、トレイ20内からワーク10を取り出す際に、ワーク10が保持部110から落下してトレイ20の側壁21上に載る場合がある。この場合、ワーク10がトレイ20内に戻る(落下する)ように、吹出ノズル310によってワーク10に空気を吹き付けてもよい。
【0130】
また、上記の第1実施形態から第3実施形態では、吹出ノズル310をトレイ20の側壁21に沿って移動させながらワーク10に空気を吹き付ける例、吹出ノズル310をワーク10の近傍まで移動させ吹出ノズル310をその位置に固定した状態で空気を吹き付ける例、及び、吹出ノズル310を移動させない例などについて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、吹出ノズル310をランダムな水平位置及び高さに移動させ、空気を吹き出させてもよい。
【0131】
また、上記の第1実施形態から第3実施形態では、空気吹出部がノズル(吹出ノズル)である場合について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、空気吹出部は、1つ以上の空気吹出口が形成された平面を有する中空の部材であってもよいし、空気を吹き出す管又はホースの先端部であってもよい。
【0132】
また、上記の第1実施形態から第3実施形態では、トレイ20内にバラ積みされたワーク10をワーク取出システム1000によって取り出す例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、床上などの平坦な所定領域にバラ積みされたワーク10を、ワーク取出システム1000によって取り出してもよい。
【0133】
また、上記の第1実施形態から第3実施形態では、空気が通過する貫通孔310aを有する吹出ノズル310、又は、貫通孔110aを有する保持部110から空気を吹き出してワーク10に空気を吹き付ける例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、ダクトファン及びターボファンなどのファンを用いて、ワーク10に空気を吹き付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、ワーク取出システム及びワーク取り出し方法を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0135】
10,10a,10b :ワーク
11 :上面
20 :トレイ
21 :側壁
100 :保持装置
110 :保持部
300 :吹付装置
310 :吹出ノズル(ノズル)
510 :保持制御部
530 :吹付制御部
550 :検出部
560 :判定部
590 :記憶部
1000 :ワーク取出システム