(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】自動走行制御システムおよび圃場作業車
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303M
A01B69/00 303V
(21)【出願番号】P 2021147165
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】大久保 樹
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 了介
(72)【発明者】
【氏名】宇谷 直晃
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184974(JP,A)
【文献】特開2021-108613(JP,A)
【文献】特開2020-110108(JP,A)
【文献】特開2021-108594(JP,A)
【文献】特開2020-022429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部経路と旋回経路とからなる走行経路を走行する自動往復走行を繰り返すことにより圃場に農業資材を供給する圃場作業を行う圃場作業車の自動走行制御システムであって、
前記圃場作業車は、所定の補給辺で資材補給を行うために、前記補給辺に向かう前記内部経路の終端領域で走行を停止する補給準備処理を行い、
前記補給準備処理を含む自動走行を制御する走行制御部と、
前記圃場作業を制御する作業制御部と、
前記圃場作業車とデータ通信が可能で、表示部を有する情報端末と、
前記補給辺を設定する資材補給設定部と
、
所定の報知を行う報知部
と、
前記農業資材としての
マット状苗を載置するとともに、所定の縦送り量で継続的に前記マット状苗を送り出すと共に、所定の横送り回数で継続的に前記マット状苗を前記圃場作業車の機体の左右方向に横送りする苗載せ台と、
送り出された
前記マット状苗から苗を取り出して前記圃場に植え付ける植付機構と、
前記マット状苗のマット残量を検出するセンサと、
搭載される前記マット状苗の情報、前記縦送り量の情報、前記横送り回数の情報、前記植付機構による苗取り量の情報、および前記株間の情報の少なくともいずれかから、実苗残量を推定する残量推定部とを備え、
前記センサが検出した前記マット残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知し、前記実苗残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知する自動走行制御システム。
【請求項2】
前記所定量は、
前記自動往復走行において前記資材補給設定部によって設定された前記補給辺で前記資材補給するまでに必要となる量である請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項3】
前記資材補給設定部は、選択された前記内部経路
の進行方向側に存在する前記圃場
の外周辺に加え、選択された前記内部経路の前記進行方向と逆側に存在する前記圃場の前記外周辺を前記補給辺として設定する請求項1または2に記載の自動走行制御システム。
【請求項4】
前記補給準備処理を実行しない無補給準備モードを選択することができ、
前記自動往復走行中に前記資材補給を行う人為的な資材補給指示を受け付ける資材補給操作部をさらに備え、
前記資材補給設定部は、前記資材補給指示が受けつけられると、前記資材補給指示が行われた際に走行中の前記内部経路に基づいて前記補給辺を設定する請求項1から3のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項5】
前記資材補給設定部は、前記
マット残量または前記実苗残量に応じて、以降の前記補給辺を修正する請求項1から4のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項6】
前記報知部は前記情報端末に設けられる請求項1から
5のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項7】
前記マット残量および前記実苗残量のいずれを使用するかを人為的に選択する残量選択操作部が備えられ、前記残量選択操作部によって前記マット残量を使用することが選択された際には、前記センサが検出した前記マット残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知し、前記残量選択操作部によって前記実苗残量を使用することが選択された際には、前記実苗残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知する請求項1から6のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の自動走行制御システムを用いて農業資材管理を行う圃場作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行しながら農業資材を圃場に供給し、または、収穫した農作物を排出する圃場作業車および圃場作業車の自動作業走行を制御する自動走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に農業資材を供給する自動作業走行を行う圃場作業車は、自動作業走行中に、農業資材の補給、または収穫した農作物の排出を行う。
【0003】
特許文献1に開示された圃場作業車(田植機)は、圃場を往復する毎に機体を停止させ、農業資材(苗)を補給する必要がある場合は農業資材の補給を行い、農業資材を補給する必要がない場合は作業走行を継続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動作業走行において、さらに効率的に農業資材の補給を行ことが求められている。
【0006】
本発明は、効率的に農業資材の補給、または収穫した農作物の排出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る自動走行制御システムは、内部経路と旋回経路とからなる走行経路を走行する自動往復走行を繰り返すことにより圃場に農業資材を供給する圃場作業を行う圃場作業車の自動走行制御システムであって、前記圃場作業車は、所定の補給辺で資材補給を行うために、前記補給辺に向かう前記内部経路の終端領域で走行を停止する補給準備処理を行い、前記補給準備処理を含む自動走行を制御する走行制御部と、前記圃場作業を制御する作業制御部と、前記圃場作業車とデータ通信が可能で、表示部を有する情報端末と、前記補給辺を設定する資材補給設定部と、所定の報知を行う報知部と、
前記農業資材としてのマット状苗を載置するとともに、所定の縦送り量で継続的に前記マット状苗を送り出すと共に、所定の横送り回数で継続的に前記マット状苗を前記圃場作業車の機体の左右方向に横送りする苗載せ台と、
送り出された前記マット状苗から苗を取り出して前記圃場に植え付ける植付機構と、
前記マット状苗のマット残量を検出するセンサと、
搭載される前記マット状苗の情報、前記縦送り量の情報、前記横送り回数の情報、前記植付機構による苗取り量の情報、および前記株間の情報の少なくともいずれかから、実苗残量を推定する残量推定部とを備え、
前記センサが検出した前記マット残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知し、前記実苗残量が所定量以下である場合に、前記報知部はその旨を報知する。
【0008】
本発明の一実施形態に係る圃場作業車は、内部経路と旋回経路とからなる走行経路を走行する自動往復走行を繰り返すことにより圃場に農業資材を供給する圃場作業を行い、所定の補給辺で資材補給を行うために、前記補給辺に向かう前記内部経路の終端領域で走行を停止する補給準備処理を行う圃場作業車であって、前記圃場作業を行う作業装置と、前記補給準備処理を含む自動走行を制御する走行制御部と、前記圃場作業を制御する作業制御部と、表示部を有する情報端末と、前記補給辺を設定する資材補給設定部とを備え、前記資材補給設定部は、進行方向が表示された前記内部経路を前記情報端末の前記表示部に表示させ、前記情報端末により人為的に選択された前記内部経路の前記進行方向側に存在する前記圃場の外周辺を前記補給辺として設定する。
【0009】
以上のような構成により、情報端末に表示された内部経路から任意の内部経路を選択するだけで、補給辺を設定することができる。そのため、容易に補給準備処理の設定を行うことができ、効率的な作業走行を行うことができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る自動走行制御システムは、内部経路と旋回経路とからなる走行経路を走行する自動往復走行を繰り返すことにより圃場から農作物を収穫する圃場作業を行う圃場作業車の自動走行制御システムであって、前記圃場作業車は、所定の排出辺で収穫した前記農作物を排出するために、前記排出辺に向かう前記内部経路の終端領域で走行を停止する排出準備処理を行い、前記排出準備処理を含む自動走行を制御する走行制御部と、前記圃場作業を制御する作業制御部と、前記圃場作業車とデータ通信が可能で、表示部を有する情報端末と、前記排出辺を設定する資材排出設定部とを備え、前記資材排出設定部は、進行方向が表示された前記内部経路を前記情報端末の前記表示部に表示させ、前記情報端末により人為的に選択された前記内部経路の前記進行方向側に存在する前記圃場の外周辺を前記排出辺として設定する。
【0011】
以上のような構成により、情報端末に表示された内部経路から任意の内部経路を選択するだけで、排出辺を設定することができる。そのため、容易に排出準備処理の設定を行うことができ、効率的な作業走行を行うことができる。
【0012】
また、前記資材補給設定部は、選択された前記内部経路の前記進行方向側に存在する前記圃場の前記外周辺に加え、選択された前記内部経路の前記進行方向と逆側に存在する前記圃場の前記外周辺を前記補給辺として設定しても良い。
【0013】
農業資材の補給は、圃場の複数の外周辺において行うことが可能な場合がある。そして、農業資材の補給は、内部経路の進行方向側および進行方向と逆側で行うことが可能な場合がある。
【0014】
上記構成によると、このような場合に、農業資材の補給が可能な2つの外周辺に補給辺を設定することができ、効率的に農業資材の補給を行い、効率的な作業走行を行うことができる。
【0015】
また、前記補給準備処理を実行しない無補給準備モードを選択することができ、前記自動往復走行中に前記資材補給を行う人為的な資材補給指示を受け付ける資材補給操作部をさらに備え、前記資材補給設定部は、前記資材補給指示が受けつけられると、前記資材補給指示が行われた際に走行中の前記内部経路に基づいて前記補給辺を設定することが好ましい。
【0016】
このような構成により、定期的に補給準備処理を行わない場合にも、作業者の判断で補給辺を設定し、補給準備処理を行うことができる。これにより、不要な停止をさらに抑制し、より効率的に農業資材の補給を行い、効率的な作業走行を行うことができる。
【0017】
また、所定の報知を行う報知部をさらに備え、前記資材補給設定部は、前記補給辺を設定すると、次の前記自動往復走行において設定された前記補給辺で前記資材補給するまでに必要な前記農業資材の補給量を前記報知部に報知させても良い。
【0018】
このような構成により、農業資材を補給する際に、適切な量の農業資材を補給することができ、効率的に農業資材の補給を行うことができる。
【0019】
また、前記資材補給設定部は、前記補給量に応じて、以降の前記補給辺を修正しても良い。
【0020】
農業資材の補給量と内部経路の長さ等とに応じて、補給準備位置をより最適化することができる場合がある。
【0021】
上記構成により、補給辺を最適化して、より効率的に農業資材の補給を行うことができる。
【0022】
また、前記圃場作業車は前記農業資材として苗を前記圃場に植え付ける苗移植車であり、所定の報知を行う報知部と、前記報知部を制御する報知制御部とをさらに備え、前記苗移植車は、マット状苗を載置する苗載せ台と、前記マット状苗から前記苗を取り出して前記圃場に前記苗を植え付ける植付機構とを有し、前記苗載せ台は前記マット状苗のマット残量を検出するセンサを有し、前記報知制御部は、前記センサが検出した前記マット残量が所定量以下である場合、前記報知部にその旨の報知を行わせ、前記資材補給設定部は、前記報知が行われた後に、前記内部経路の人為的な選択を受け付けても良い。
【0023】
このような構成により、実際に残存する農業資材の量に応じて農業資材の補給を行うことができ、より効率的に農業資材の補給を行うことができる。
【0024】
また、前記苗載せ台は、所定の縦送り量で継続的に前記植付機構に前記マット状苗を送り出すと共に、所定の横送り回数で継続的に前記マット状苗を前記苗移植車の機体の左右方向に横送りし、前記植付機構は、前記マット状苗から所定の苗取り量の前記苗を取り出して、所定の株間で前記苗を前記圃場に植え付け、搭載される前記マット状苗の情報、前記縦送り量の情報、前記横送り回数の情報、前記苗取り量の情報、および前記株間の情報の少なくともいずれかから、実苗残量を推定する残量推定部と、前記マット残量および前記実苗残量のいずれを使用するかを人為的に選択する残量選択操作部とをさらに備え、前記報知制御部は、前記残量選択操作部によって前記マット残量を使用することが選択された際には、前記センサが検出した前記マット残量が所定量以下である場合に、前記報知部にその旨の前記報知を行わせ、前記残量選択操作部によって前記実苗残量を使用することが選択された際には、前記実苗残量が所定量以下である場合に、前記報知部にその旨の前記報知を行わせても良い。
【0025】
このような構成により、マット残量および実苗残量うちから、圃場や作業走行の状況に応じた農業資材の残量を選択して、農業資材の不足が判断される。そのため、圃場や作業走行の状況に応じ、より効率的に農業資材の補給を行うことができる。
【0026】
また、前記報知部は前記情報端末に設けられることが好ましい。
【0027】
作業走行中において、情報端末は、作業者の近傍に置かれることが多い。上記構成により、作業者は報知されていることを容易に把握することができ、より効率的に農業資材の補給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】実施形態1における自動走行制御システムの機能構成を例示するブロック図である。
【
図4】実施形態1における補給辺および実施間隔の設定画面を例示する図である。
【
図5】実施形態1における補給設定と実施間隔の変更とを行う工程を例示する図である。
【
図6】実施形態2における自動走行制御システムの機能構成を例示するブロック図である。
【
図7】実施形態2における補給辺および実施間隔の設定画面を例示する図である。
【
図8】実施形態2における補給設定と補給準備位置の変更とを行う工程を例示する図である。
【
図9】実施形態2における補給準備位置を説明する図である。
【
図10】実施形態3における自動走行制御システムの機能構成を例示するブロック図である。
【
図11】実施形態3における補給辺の設定画面を例示する図である。
【
図12】実施形態3における補給設定を行う工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本発明の圃場作業車として、圃場に苗(農業資材)を植え付ける(圃場作業)田植機を例に説明する。
【0030】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味し、「左」は
図1における紙面の手前の方向、「右」は
図1における紙面の奥向きの方向を意味するものとする。
【0031】
〔全体構造〕
図1に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体1を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、および、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4等を備える。
【0032】
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン2、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速装置)である。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2から出力される動力は、走行用伝達機構を介して無段変速装置9に伝えられ、無段変速装置9から前輪12A、後輪12B、作業装置(苗植付装置3、施肥装置4等)等にも伝達される。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。
【0033】
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
【0034】
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで継続的に左右方向に往復移動(横送り)し、所定の横送り回数の横送りにより苗載せ台21が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定のピッチ(縦送り量)で縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗)を切り取って、整地後の泥土部に所定の株間で植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付ける(供給する)ことができる。
【0035】
また、苗載せ台21は、マット状苗の残量を検出するセンサ23を備えても良い。例えば、センサ23は光センサであり、苗載せ台21の表面(載置面)に設けられ、載置されたマット状苗がセンサ23に光が入射することを遮ることにより、マット状苗がセンサ23の配置位置において存在するか否かを検出し、マット状苗が所定量以上存在するか否かを検出する構成であっても良い。
【0036】
なお、横送り回数、縦送り量、株間、一株分の苗の量である苗取り量、およびマット状苗の寸法(長さや幅)等の情報は、情報端末5等と通信可能な任意の記憶部(後に
図3等で説明される記憶部35や記憶部42等)に記憶される。なお、横送り回数、縦送り量、株間、苗取り量は固定であっても良いが、任意に設定変更可能な構成であっても良い。この場合、記憶部は設定されている情報を記憶する。
【0037】
施肥装置4(供給装置)は、粒状または粉状の肥料(薬剤やその他の農業資材)を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰出された肥料を搬送すると共に肥料を圃場に排出する施肥ホース28とを有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場へ排出される。このように、施肥装置4は圃場に肥料を供給する。
【0038】
図1に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネル50(
図3等参照 「表示部」に相当)を有し、着脱可能な情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。副変速レバー7Bは、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。
【0039】
さらに、機体1は測位ユニット8を備える。測位ユニット8は、機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8Aと、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8Bが含まれている。測位ユニット8は、予備苗支持フレーム17の上部に支持される。なお、算出された位置情報や方位情報は、上述の記憶部に記憶される。
【0040】
また、情報端末5や機体1を遠隔操作可能なリモコン6(
図3等参照)がさらに設けられても良い。
【0041】
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場に苗植付作業を行う自動作業走行について
図1、
図2を用いて説明する。
【0042】
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。手動走行(手動作業走行)と自動走行(自動作業走行)とは、運転部14に配置される自動・手動切替スイッチ(図示せず)を切り替えることにより選択される。
【0043】
田植機が苗植付作業を行う際には、まず、圃場の外周(外縁)に沿って、運転者が手動操作で、田植機を走行させる。この際に、作業を行いながら走行しても良いし、非作業走行で走行しても良い。この外周走行によって、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成され、圃場が外周領域OAと内部領域IAに区分けされる(マップ作成処理)。また、この際、圃場の外周辺のうちの一辺または指定された複数辺が、田植機にマット状苗や肥料、薬剤、燃料等の農業資材を補給するための補給辺SLとして設定される。
【0044】
圃場マップが生成されると、田植機が作業走行を行う目標走行経路が設定される(ルート作成処理)。内部領域IAでは、目標走行経路(「走行経路」に相当)として、内部往復経路IPL(「内部経路」に相当)と旋回経路とが生成される。内部往復経路IPLは、圃場の一つの辺に略平行な複数の経路であり、旋回経路は2つの内部往復経路IPLを繋ぐ経路である。内部往復経路IPLは、内部領域IAの全体をくまなく作業走行する走行経路である。自動作業走行は内部往復経路IPLに沿って行われる。内部往復経路IPLを繋ぐ旋回経路の旋回走行は、あらかじめ定められた手法により自動走行で行われる。
【0045】
外周領域OAでは、圃場の外周(外縁)に沿って外周領域OA内を1または複数回周回する周り植え走行が行われる。例えば、周り植え走行を行う経路として、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLの2つの走行経路が生成される。内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを作業走行することにより、外周領域OAの全体の作業走行が行われる。内側周回経路IRLは無人自動作業走行または有人自動作業走行(人が搭乗した状態での自動作業走行)で作業走行が行われ、外側周回経路ORLは手動作業走行で作業走行が行われる。また、モード選択によって、内側周回経路IRLは手動作業走行で作業走行が行われ、外側周回経路ORLは自動走行で作業走行が行われても良い。
【0046】
田植機は、苗切れが生じると苗補給を行う。苗補給時には、前進走行で、補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。苗補給が終了すると、機体1は後進し、走行経路に復帰する。
【0047】
具体的には、自動走行(自動往復走行)中において、内部往復経路IPLから旋回経路に移行する際に機体1が補給準備位置SPPで一時的に停止(苗補給辺自動停止/補給準備処理)され、その間に人為的な操作を行うことにより、機体1が所定の速度で補給辺SLの補給点(「資材補給点」に相当)SPまで前進し(チョイ寄せ)、補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。補給準備処理を行う補給準備位置SPPは、内部往復経路IPLの終端領域や、内部往復経路IPLと旋回経路との境界の近傍の領域に設定される。なお、このような補給準備処理は、苗補給に限らず、肥料、薬剤、燃料等の種々の農業資材を補給する際に行われても良い。
【0048】
なお、苗を補給する補給位置は、内部往復経路IPLから補給辺SLまで直進した位置である補給点SPに限らず、補給辺SLに沿って任意に設けられる補給ポイントSAであっても良い。補給ポイントSAで苗の補給を行う際は、補給準備位置SPPから補給ポイントSAまで、機体1が移動される。
【0049】
田植機は、自動走行を行うために、上記のようなマップ作成処理や、ルート作成処理が行わる。ルート作成処理において、補給辺の設定や補給準備処理に係る設定(補給設定)等が合わせて行われる。このような各種の処理・設定は、機体1において行うこともできるが、情報端末5を用いて行われても良い。
【0050】
〔補給設定〕
図3に示すように、自動走行制御システムは、機体1に設けられる制御ユニット30と、機体1に設けられる測位ユニット8と、情報端末5とを備える。また、情報端末5は、田植機に通信可能な状態で接続される。情報端末5は、運転部14に装着されても良いが、機体1から離れた作業者が操作可能な状態で保持しても良い。
【0051】
制御ユニット30は、情報端末5等により設定された条件に応じて、田植機の自動作業走行を制御する。制御ユニット30は、走行を制御する走行制御部32と、作業を制御する作業制御部33と、情報端末5等と通信を行う通信部34と、記憶部35とを備える。
【0052】
情報端末5は、制御部38と、通信部39と、タッチパネル50と、苗補給設定部41(「資材補給設定部」に相当)と、記憶部42とを備える。また、情報端末5は、タッチパネル50に表示される情報を変更したり、各種設定を行ったりするためのスイッチやボタン等の操作部を備える。
【0053】
制御部38は情報端末5の各機能ブロックの動作を制御する。通信部39は機体1等と通信を行う。タッチパネル50は、各種情報が表示され、各種のソフトウェアスイッチが表示される。苗補給設定部41は、タッチパネル50に表示される情報を参照しながら、操作具やソフトウェアスイッチ等の操作に基づいて、補給辺SLや補給準備位置SPP等の設定を行う。記憶部42は各種の情報を記憶する。
【0054】
以下、
図2~
図5を用いて、実施形態1における補給設定について説明する。補給設定は、マップ作成処理を行い、ルート作成処理において目標走行経路が設定された後に行われる。
【0055】
補給設定において、
図4に示されるような設定画面が、タッチパネル50に表示される(
図5のステップ#1)。設定画面にはソフトウェアスイッチとして補給辺設定操作部52が表示される。補給辺SLは補給辺設定操作部52により選択的に設定される。設定画面には、圃場の外周形状と、内部往復経路IPLに対応する矢印等の図柄とが表示され、内部往復経路IPLの始端および終端に相当する辺が、補給辺SLの候補として表示される。
【0056】
補給辺設定操作部52は候補となる辺のいずれか、候補となる全ての辺、または補給準備処理を行わない(辺を選ばない)のうちのいずれかを選択することができる。補給辺設定操作部52で選択された辺が補給辺SLとして設定される(
図5のステップ#2)。なお、
図4の例では、候補となる辺がA辺とB辺の2つであるが、1または3以上の辺が候補とされても良く、候補となる辺が複数ある場合は、そのうちの複数の辺が選択されても良い。
【0057】
また、補給辺設定操作部52にて「補給準備処理を行わない」を選択した場合、補給準備処理を行わない無補給準備モードに設定され、補給のための一時停止が行われない。この場合、作業者が補給の必要性を判断して任意の位置で作業を中断し、機体1を補給位置に移動させて補給を行う。なお、この補給位置への移動は自動で行われても良い。
【0058】
また、無補給準備モードは、補給辺設定操作部52で「補給準備処理を行わない」を選択した場合に限らず、別途設けられた操作具(図示せず)により設定されても良い。この場合、補給辺設定操作部52で補給辺SLが設定されたうえで、無補給準備モードに設定することができる。
【0059】
次に、補給準備処理を、内部往復経路IPLを何往復する毎に行うかの自動停止間隔が設定される。内部往復経路IPLの往復は、補給辺側の内部往復経路IPLの端部から内部往復経路IPLの走行を行い、旋回走行を挟んで、次の内部往復経路IPLを走行し、補給辺側の内部往復経路IPLの端部に至るまでの走行である。具体的には、設定画面にはソフトウェアスイッチとして走行回数操作部53が表示される。走行回数操作部53は往復回数を選択できる。苗補給設定部41は、走行回数操作部53で選択された回数を補給準備処理の往復回数(実施間隔)として設定して記憶部42に記憶し、走行制御部32にその情報を送信する。走行制御部32は、設定された往復回数を記憶部35に記憶し、設定された回数の往復走行を行う毎に補給準備処理を実施するために、機体1を一時停止させる(
図5のステップ#3)。
【0060】
例えば、往復回数として1往復が設定されると、
図2の補給準備位置SPPの次に、位置SP1で苗補給準備処理が実施され、往復回数として2往復が設定されると、補給準備位置SPPの次に、位置SP2で苗補給準備処理が実施され、往復回数として3往復が設定されると、補給準備位置SPPの次に、位置SP3で苗補給準備処理が実施される。そして、必要な設定の全てが行われると、所定の操作を受け付けることにより自動作業走行が開始される(
図5のステップ#4)。
【0061】
内部往復経路IPLに沿って1往復する毎に補給準備処理を行っても、補給を行わずに作業走行を継続できる場合がある。そのような場合、機体1が停止する際に、作業者の所定の操作によって作業走行が再開される。このような、不要な作業走行の停止と作業走行を再開させるための操作とを行うと作業効率が低下する。
【0062】
また、圃場の大きさ(内部往復経路IPLの長さ)や、搭載するマット状苗の量、苗取り量、条間等によって、補給が必要となるまでの走行距離(補給準備処理の実施間隔)が予測できる場合がある。
【0063】
そのため、補給準備処理の実施間隔である往復回数を設定できる構成とすることにより、不要な作業走行の停止と作業走行を再開させるための操作とを行うことが抑制され、作業効率を向上させることができる。
【0064】
なお、補給辺が内部往復経路IPLの進行方向の前後両側に設定された場合、補給準備処理は、内部往復経路IPLの走行毎に行うことができる。そのため、走行回数操作部53は、補給準備処理の実施間隔として往復回数に限らず、内部往復経路IPLの走行回数を選択する構成としても良い。
【0065】
例えば、走行回数として3回が設定されると、
図2の補給準備位置SPPの次に、位置SP4で苗補給準備処理が実施される。
【0066】
内部往復経路IPLを設定された走行回数で走行する度に補給準備処理を行うことにより、補給の必要性に応じた補給準備処理をより精度良く行うことができ、さらに作業効率が向上する。
【0067】
補給が必要となるまでの走行距離(補給準備処理の実施間隔)を正確に予測できない場合があり、圃場の状況等により走行距離当たりの苗の消費量が変化する場合もある。このような場合、あらかじめ設定した実施間隔で補給準備処理を行っても、苗の補給を適切なタイミングで行うことができない場合がある。
【0068】
例えば、作業走行中に、次の補給準備位置SPPまでに苗がなくなると予測できる場合や、補給準備処理が実施されても、まだ十分な苗が残っている場合がある。
【0069】
このような場合、自動作業走行中に次の補給準備位置SPP(補給準備処理の実施間隔)を変更できる構成であると好適である。これにより、より効率的に作業走行を行うことができる。
【0070】
そのため、自動作業走行中に実施間隔の変更が可能となる回数変更操作部54が設けられても良い。例えば、回数変更操作部54は、作業走行中にタッチパネル50に表示されるソフトウェアスイッチである。回数変更操作部54は、走行回数操作部53と同様に実施間隔を選択できる構成であっても良いし、実施間隔を増減できる構成であっても良い。例えば、回数変更操作部54は、操作された回数に応じて実施間隔が決定される構成であっても良い。あるいは、回数変更操作部54は、回数変更操作部54が操作している間(長押し等)にタッチパネル50に表示される実施間隔が順に変化し、操作をやめた時点で表示されている実施間隔に変更される構成であっても良い。さらに、回数変更操作部54は、直接実施間隔が入力されるのではなく、実施間隔を1往復(1走行回数)だけ速める操作と延ばす(実施間隔を増減する)操作とを行う構成としても良い。
【0071】
そして、自動作業走行中に、次の補給準備位置SPPまでに苗がなくなると予測できる場合や、次の補給準備位置SPPまで作業走行しても十分な苗が残ると予測できる場合には、回数変更操作部54が操作されて(
図5のステップ#5)、次の補給準備位置SPPが変更される。つまり、あらかじめ設定された実施間隔より早く補給を行ったり、補給準備位置SPPをスキップしたりすることができる。
【0072】
例えば、往復回数として2往復が設定されているとし、
図2の補給準備位置SPPで補給を行って自動作業走行している途中で、十分なマット状苗が搭載されていると判断すると、作業者は回数変更操作部54にて往復回数を3往復に変更する操作を行う。回数変更操作部54はこの操作に基づいて苗補給設定部41に変更指示を送信する。苗補給設定部41はこの情報を走行制御部32に送信し、走行制御部32はこの情報に基づいて補給準備処理を実施する。具体的には、補給準備位置SPPの次の補給準備処理は、位置SP2で行われず、位置SP3で行われる。
【0073】
なお、回数変更操作部54が操作されると、直前の補給準備処理から次の補給準備処理までの実施間隔のみが変更され、その後の実施間隔が当初設定された実施間隔に戻される構成であっても良いが(
図5のステップ#6-1)、次回以降の実施間隔が変更される構成であっても良い(
図5のステップ#6-2)。つまり、設定された実施間隔自体が変更されても良い。
【0074】
この場合、苗補給設定部41は記憶部42に記憶されている実施間隔を、回数変更操作部54の操作に応じた実施間隔に変更すると共に、走行制御部32に変更後の実施間隔を送信する。そして、走行制御部32は、記憶部35に記憶された実施間隔を変更後の実施間隔に変更し、以降の苗補給準備処理を変更後の実施間隔で実施する。
【0075】
なお、実施間隔を早めるまたは延ばす操作を行う構成の場合、設定された実施間隔に対して、早める操作の場合は1往復(1走行回数)減じ、延ばす操作の場合は1往復(1走行回数)加えて設定された実施間隔を変更する。
【0076】
さらに、次の実施間隔のみを変更するか、以降の実施間隔を全て変更するかを選択可能な構成とされても良い。圃場の状況等により走行距離当たりの苗の消費量が変化した場合は、一時的に実施間隔が適切ではなくなることが多い。一方、苗の消費量の予測が実作業と異なる場合は、作業走行全体において実施間隔が適切ではなくなる場合がある。そのため、実施間隔の変更期間を、次回のみ、または、次回以降の全てから選択可能な構成とすることにより、その時の状況に応じて、適切に実施間隔を変更することができる。
【0077】
なお、補給辺設定操作部52にて「補給準備処理を行わない」を選択して無補給準備モードに設定されている際に、作業者の判断で補給を行う場合に回数変更操作部54が用いられても良い。この場合、自動作業走行中に、補給が必要だと作業者が判断して回数変更操作部54を操作すると、走行制御部32は回数変更操作部54が操作された情報を受信し、苗補給を行うために圃場の外周辺(補給辺SL)に向けて走行するように制御する。
【0078】
具体的には、回数変更操作部54が操作されると、走行制御部32は、走行中の内部往復経路IPLの走行後、旋回走行に移行せず、機体1を停止させるように制御する。その後、そのまま機体1が前進されて、圃場の外周辺(補給辺SL)に至ると機体1が停止される。
【0079】
また、補給辺SLが設定され、かつ、無補給準備モードに設定されている場合に、回数変更操作部54が操作されると、次の補給辺SLに向かう内部往復経路IPLの走行後に旋回走行が行われず、次の補給辺SLで補給が行われても良い。その後、苗補給設定部41は、作業走行の開始から回数変更操作部54の操作によって補給が行われた往復回数(走行回数)に基づいて実施間隔を決定し、補給準備処理を実施するように設定しても良い。
【0080】
また、以上の構成において、回数変更操作部54に代わり、実施間隔の変更がオペレータ(作業者)の声に基づいて行われる構成としても良い。例えば、オペレータが、「回数変更」との声を発した後、「3回」との声を発すると、実施間隔が3回に変更されても良い。また、「回数変更」との声を発した後、「増」または「減」との声を発することにより、実施間隔が1回ずつ増減される構成であっても良い。また、これらの音声認識技術は人工知能による深層学習に基づいて音声が認識される構成であっても良い。
【0081】
具体的には、情報端末5は、マイク44と、予め決められた音声に反応してその音声を認識する音声認識部45とを備える。マイク44は作業者の音声による指示が入力されると音声認識部45に音声データを転送し、音声認識部45で音声データを具体的な指示の内容として認識する。音声認識部45は指示の内容を走行制御部32に送信し、走行制御部32は指示の内容に応じて、苗補給を行うために圃場の外周辺(補給辺SL)に向けて走行するように機体1を制御する。
【0082】
さらに、情報端末5は、所定の報知を行う報知部47と、残量判定部48とを備え、設定された実施間隔で補給準備処理を実施すると、苗の残量が不足すると予測される場合にその旨を報知する構成としても良い。
【0083】
具体的には、残量判定部48は、記憶された、苗取り量の情報、縦送り量の情報、マット状苗の長さの情報、および株間の情報から、単位走行距離当たりの苗の消費量を算出すると共に、マット残量の情報から苗の残量を算出する。そして、残量判定部48は、算出された消費量および残量に基づいて、次に補給準備処理を行うまでの作業走行中に苗の残量が不足するか否かを判定する。残量判定部48は、苗の残量が不足すると判定すると、報知部47に、苗の残量が不足することを警告する報知を行わせる。
【0084】
このように、苗の残量が不足することを警告することにより、苗の残量が不足する場合には、作業者は補給準備処理の前に補給を行うことができ、自動作業走行中に苗切れが生じることを抑制し、効率的に作業走行を行うことができる。
【0085】
〔実施形態2〕
次に、
図6~
図9を用いて、実施形態2として補給設定の別の実施形態について説明する。実施形態2の補給設定は、実施間隔を往復回数(走行回数)で設定するのではなく、作業距離で設定する点が実施形態1の補給設定と異なる。なお、以下の説明において、実施形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0086】
図6に示すように、自動走行制御システムは、機体1に設けられる制御ユニット30と、機体1に設けられる測位ユニット8と、情報端末5とを備える。また、情報端末5は、田植機に通信可能な状態で接続される。情報端末5は、運転部14に装着されても良いが、機体1から離れた作業者が操作可能な状態で保持しても良い。
【0087】
情報端末5は、制御部38と、通信部39と、タッチパネル50と、苗補給設定部41(「資材補給設定部」に相当)と、記憶部42とを備える。また、情報端末5は、タッチパネル50に表示される情報を変更したり、各種設定を行ったりするためのスイッチやボタン等の操作部を備える。
【0088】
実施形態2の補給設定において、
図7に示されるような設定画面が、タッチパネル50に表示される(
図8のステップ#1)。設定画面にはソフトウェアスイッチとして補給辺設定操作部52が表示される。補給辺SLは補給辺設定操作部52により選択的に設定される。設定画面には、圃場の外周形状と、内部往復経路IPLに対応する矢印等の図柄とが表示され、内部往復経路IPLの始端および終端に相当する辺が、補給辺SLの候補として表示される。
【0089】
補給辺設定操作部52は候補となる辺のいずれか、候補となる全ての辺、または補給準備処理を行わない(辺を選ばない)のうちのいずれかを選択することができる。補給辺設定操作部52で選択され辺が補給辺SLとして設定される(
図8のステップ#2)。なお、
図7の例では、候補となる辺がA辺とB辺の2つであるが、1または3以上の辺が候補とされても良く、候補となる辺が複数ある場合は、そのうちの複数の辺が選択されても良い。
【0090】
なお、補給辺設定操作部52にて「補給準備処理を行わない」を選択した場合、補給準備処理を行わない無補給準備モードに設定され、補給のための一時停止が行われない。この場合、作業者が補給の必要性を判断して任意の位置で作業を中断し、機体1を補給位置に移動させて補給を行う。
【0091】
また、無補給準備モードは、補給辺設定操作部52で「補給準備処理を行わない」を選択した場合に限らず、別途設けられた操作具(図示せず)により設定されても良い。この場合、補給辺設定操作部52で補給辺SLが設定されたうえで、無補給準備モードに設定することができる。
【0092】
次に、補給準備処理を行う実施間隔が設定される。具体的には、設定画面にはソフトウェアスイッチとして作業距離入力部56が表示される(
図8のステップ#3)。作業距離入力部56は補給される苗で作業走行可能な作業距離が入力される。作業距離入力部56は作業距離に相当する数字を直接入力する構成であっても良いが、
図7のように、数字を増減させる構成であっても良い。作業距離は、苗載せ台21に搭載されるマット状苗の量や、横送り回数、縦送り量、株間等の情報からあらかじめ予測でき、圃場の状況等を加味して経験的に決定されても良い。苗補給設定部41は、作業距離入力部56で入力された作業距離と補給辺SLとに基づいて補給準備位置SPPを設定して記憶部42に記憶し、走行制御部32にその情報を送信する。走行制御部32は、設定された補給準備位置SPPを記憶部35に記憶し、設定された補給準備位置SPPで補給準備処理を実施するために、機体1を一時停止させる。
【0093】
例えば、植付開始位置Sから内部往復経路IPL1、内部往復経路IPL2、内部往復経路IPL3を走行し、内部往復経路IPL4上の位置PAまで走行した距離が設定された作業距離となる場合、走行経路上で位置PAに最も補給辺SLに近い内部往復経路IPLの端部領域が補給準備位置SPPに設定される。
図9の例では、位置PBが補給準備位置SPPに設定される。
【0094】
ここで、位置植付開始位置から位置PAまでの走行距離は設定された作業距離より長くなる。このような場合、株間を長くしたり、苗取り量を少なくしたりして、植付開始位置Sから補給準備位置SPP(位置PB)まで作業走行ができるように調整される。
【0095】
なお、部分的に株間の調整が行われると美観を損なう場合がある。このような場合、株間の調整は圃場の中央部で行われることが好ましい。例えば、圃場の外縁部から所定の距離以上離れた領域でのみ株間の調整が行われる。
【0096】
また、位置PAから補給辺SLまでの距離が長い場合、株間や苗取り量の調整を行っても、植付開始位置Sから位置PBまで作業走行を行いない場合もある。このような状態が予想される場合、位置PAを含む内部往復経路IPLの次に植付開始位置S側の、補給辺SLに向かう内部往復経路IPLの端部領域が補給準備位置SPPに設定される。例えば、
図9において補給辺SLとして補給辺SLBが含まれる場合、位置PCが補給準備位置SPPに設定される。また、補給辺SLが補給辺SLAのみの場合、位置PDが補給準備位置SPPに設定される。そして、必要な設定の全てが行われると、所定の操作を受け付けることにより自動作業走行が開始される(
図8のステップ#4)。
【0097】
このように、補給準備位置SPPを作業距離に基づいて設定することにより、補給される苗の量に応じてより精度良く補給準備位置SPPを設定することができる。その結果、不要な作業走行の停止と作業走行を再開させるための操作とを行うことが抑制され、作業効率をより向上させることができる。
【0098】
また、株間や苗取り量の調整は、自動作業走行中に、作業距離を決定する際に考慮される理論苗消費量と、作業走行の結果求められる実消費量とが比較され、両者に差異がある場合に行われても良い。また、車輪回転数センサが設けられ、車輪回転数センサから算出される走行距離と、測位ユニット8が出力する測位データに基づいて算出される走行距離との比較によって圃場内のスリップ率が計測され、スリップ率に基づいて適切な株間が算出され、作業装置の駆動系に設けられる無段静油圧式機構(HST)等の無段変速機構により株間が調整されることで、精度の高い苗消費量を算出することが可能である。
【0099】
具体的には、情報端末5は、さらに、位置算出部57と、消費量予測部58と、消費量算出部59とを備える。
【0100】
位置算出部57は、目標走行経路上の機体1の位置を任意の方法で算出する。例えば、位置算出部57は、測位ユニット8が出力する測位データを継続的に取得し、圃場における機体1の位置を継続的に算出する。算出された機体1の位置の情報は記憶部42および記憶部35の少なくとも一方に記憶される。なお、記憶される機体1の位置は、少なくとも各内部往復経路IPLの始端部と終端部との位置のみであっても良いが、継続的に算出された機体1の位置のうちの任意の割合のもの、または全てであっても良い。
【0101】
消費量予測部58は、苗植付装置3の縦送り量および横送り回数と、マット状苗の長さおよび幅とから、作業距離を走行する際に消費する理論苗消費量を予測して制御ユニット30に送信する(
図8のステップ#5-1)。
【0102】
消費量算出部59は、位置算出部57で算出された機体1の位置の内部往復経路IPL上での変化量と、記憶されている縦送り量の情報と、横送り回数の情報とから、単位距離当たりの苗の消費量を算出し、このままの設定で作業距離を走行した場合に消費される実苗消費量を算出して制御ユニット30に送信する(
図8のステップ#6-1)。
【0103】
そして、作業制御部33は、理論苗消費量および実苗消費量を受け取って、両者を比較し、比較結果に応じて株間および苗取り量の少なくともいずれかを調整する(
図8のステップ#7-1)。
【0104】
これにより、株間および苗取り量の調整が必要になった場合のみに行われ、より精度良く苗植付け作業を行いながら、効率的に作業走行を行うことができる。
【0105】
また、圃場の状況等により、作業距離に誤差が生じる場合がある。このような場合、搭載する苗の量で実際に作業走行できる距離に応じて、補給準備位置SPPが変更されても良い。
【0106】
このような構成を実現するために、情報端末5は、位置算出部57と、距離比較部61と、位置変更操作部62と、報知部47とを備えても良い。
【0107】
距離比較部61は、まず、消費量算出部59が算出する単位距離当たりの苗の消費量と、搭載される苗の量とから、直前の補給準備位置SPPから次に苗の補給が必要となるまでの走行可能な走行距離を算出する(
図8のステップ#5-2)。次に、距離比較部61は、算出された走行可能な走行距離と、設定に用いられた作業距離とを比較する(
図8のステップ#6-2)。そして、距離比較部61は、走行可能な走行距離と作業距離とに、所定のしきい値以上の差がある場合、報知部47にその旨を報知させる(
図8のステップ#7-2)。この際、どちらの距離の方が長いかが合わせて報知されることが好ましい。
【0108】
位置変更操作部62は、補給準備位置SPPを変更するための操作を受け付ける。作業者は、報知部47の報知を受けて補給準備位置SPPを変更する必要があると判断した場合、位置変更操作部62を操作する(
図8のステップ#8-2)。そして、苗補給設定部41は、位置変更操作部62の操作に応じて、進行方向の前方または後方の内部往復経路IPLの終端領域のうちの補給辺SLと隣り合う位置に補給準備位置SPPを変更する(
図8のステップ#9-2)。
【0109】
これにより、実際の苗の消費量に応じた作業距離に補給準備位置SPPを変更することができ、より効率的に苗の補給を行うことができる。なお、位置変更操作部62を作業者が操作することにより補給準備位置SPPが変更される構成に限らず、距離比較部61の比較結果に応じて、自動的に補給準備位置SPPが変更される構成であっても良い。
【0110】
上述のように、横送り回数、縦送り量、および苗取り量は設定変更が可能である。また、株間が変更される場合がある。これらが変更されることにより、苗の補給を行ってから作業走行を行うことができる距離が変化する。これに伴い、補給準備位置SPPが変更されることが好適である。
【0111】
そのため、苗補給設定部41は、横送り回数、縦送り量、苗取り量、または株間が変更された際には(
図8のステップ#5-3)、変更量に応じて補給準備位置SPPを変更しても良い(
図8のステップ#6-3)。
【0112】
〔実施形態3〕
次に、
図10~
図12を用いて、実施形態3として補給設定の別の実施形態について説明する。実施形態3の補給設定は、実施形態1または実施形態2において、上述の構成と異なる構成で苗補給辺を設定する。なお、以下の説明において、実施形態1または実施形態2と同様の構成については説明を省略する。
【0113】
図10に示すように、自動走行制御システムは、機体1に設けられる制御ユニット30と、機体1に設けられる測位ユニット8と、情報端末5とを備える。また、情報端末5は、田植機に通信可能な状態で接続される。情報端末5は、運転部14に装着されても良いが、機体1から離れた作業者が操作可能な状態で保持しても良い。
【0114】
情報端末5は、制御部38と、通信部39と、タッチパネル50と、苗補給設定部41(「資材補給設定部」に相当)と、記憶部42とを備える。また、情報端末5は、タッチパネル50に表示される情報を変更したり、各種設定を行ったりするためのスイッチやボタン等の操作部を備える。
【0115】
実施形態3の補給設定において、
図11に示されるような設定画面が、タッチパネル50に表示される(
図12のステップ#1)。設定画面にはソフトウェアスイッチとして補給辺設定操作部52と経路選択操作部64とが表示される。補給辺設定操作部52は、補給準備処理を行うか否かの選択操作を受け付ける(
図12のステップ#2)。補給辺設定操作部52で補給準備処理を行わないことが選択された場合、補給辺SLの設定が行われない。なお、設定画面には、圃場の外周形状と、内部往復経路IPLに対応する矢印等の図柄とが表示される。補給辺SLの候補は、圃場の外周辺のうち、内部往復経路IPLの始端および終端に相当する辺である。
【0116】
補給準備処理を行うことが選択されると(
図12のステップ#2 Yes)、作業者は経路選択操作部64を操作して内部往復経路IPLを選択する(
図12のステップ#3)。作業者は、内部往復経路IPLに表示される矢印等から進行方向を把握し、進行方向側の外周辺が補給辺SLとなるように内部往復経路IPLを選択することにより、補給辺SLを選択する。経路選択操作部64は表示された内部往復経路IPLの1つを選択できる操作具であり、例えば、複数の内部往復経路IPLのうちの1つを選択できるスイッチであっても良いし、
図11に示すように、選択される内部往復経路IPLを左右に順送りする操作具であっても良い。さらに、経路選択操作部64を設けず、タッチパネル50上で内部往復経路IPLに対応する図柄を直接タッチすることにより内部往復経路IPLが選択される構成であっても良い。なお、選択された内部往復経路IPLは、発光したり着色されたりして選択された内部往復経路IPLが識別できるように変化する。
【0117】
設定画面に表示される内部往復経路IPLには進行方向を示す矢印等の図柄が表示されている。苗補給設定部41は、経路選択操作部64により選択された内部往復経路IPLの進行方向の側の圃場の外周辺LAを補給辺SLに設定する(
図12のステップ#4)。なお、苗補給設定部41は、複数の補給辺SLが設定可能である場合、外周辺LAに加え、内部往復経路IPLの進行方向と逆側の圃場の外周辺LBも補給辺SLに設定しても良い。
【0118】
そして、補給準備位置SPPの設定等の必要な設定の全てが行われると、所定の操作を受け付けることにより自動作業走行が開始される。また、補給準備処理を行わないことが選択された場合にも(
図12のステップ#2 No)、補給準備位置SPPの設定等の必要な設定の全てが行われ後に、所定の操作を受け付けることにより自動作業走行が開始される(
図12のステップ#5)。
【0119】
このように、補給辺SLの設定を、設定画面に表示された内部往復経路IPLを選択するという簡単な方法で行うことができ、容易に補給辺SLの設定を行って、効率的に設定処理を行うことができる。
【0120】
なお、補給辺設定操作部52にて補給準備処理を行わないことが選択された場合、補給準備処理を行わない無補給準備モードに設定され、補給のための一時停止が行われない。この場合、作業者が補給の必要性を判断して任意の位置で作業を中断し、機体1を補給位置に移動させて補給を行う。
【0121】
作業者が任意に苗の補給を行うために、苗補給操作部65(「資材補給操作部」に相当)を備えても良い。苗補給操作部65は、情報端末5のタッチパネル50に表示されるソフトウェアスイッチとすることができる。自動作業走行中に、補給が必要だと作業者が判断して苗補給操作部65を操作すると、走行制御部32は苗補給操作部65が操作された情報を受信し、苗補給を行うために圃場の外周辺(補給辺SL)に向けて走行するように制御する(
図12のステップ#6)。
【0122】
具体的には、苗補給操作部65が操作されると、走行制御部32は、走行中の内部往復経路IPLの走行後、旋回走行に移行せず、そのまま前進させて、圃場の外周辺(補給辺SL)に至ると機体1を停止させるように制御する。
【0123】
また、苗補給操作部65を設けることに代わり、無補給準備モード中の自動作業走行中にも経路選択操作部64と内部往復経路IPLに対応する図柄が表示され、経路選択操作部64により内部往復経路IPLを選択する構成としても良い。苗補給設定部41は、選択された内部往復経路IPLの走行後に、苗の補給を行うために圃場の外周辺に向けて機体1を走行させるように走行制御部32に情報を送信する。
【0124】
さらに、苗補給設定部41は、苗補給操作部65が操作されて苗の補給が行われると、苗の補給が行われる直前に走行していた内部往復経路IPLの進行方向側の外周辺、つまり、苗の補給が行われた外周辺を補給辺SLとして設定しても良い(
図12のステップ#7)。
【0125】
また、補給辺SLが設定されて補給準備位置SPPの設定が行われた後に、補給の際に必要となる苗の補給量が報知されても良い。この補給量は、苗の補給後、次の補給準備位置SPPまで作業走行を行うために必要となる苗の量である。必要な補給量は、補給準備位置SPP間の作業走行距離と、縦送り量、横送り回数、苗取り量、マット状苗の寸法等とから算出することができる。
【0126】
このような構成を実現するために、情報端末5は、さらに、報知部47と、報知制御部66とを備えても良い。
【0127】
報知制御部66は、補給準備位置SPPの設定が行われた後に、算出された補給量を報知部47に報知させる。
【0128】
さらに、苗補給設定部41は、算出された補給量に応じて、補給辺SLおよび補給準備位置SPPの少なくともいずれかを修正しても良い。例えば、算出された補給量が、苗載せ台21に搭載可能なマット状苗の量に比べて大幅に少ない場合、補給準備位置SPPをより離れた位置に設定することができる場合がある。また、補給辺SLを圃場の別の外周辺に設定できる場合もある。このような場合、苗補給設定部41は補給辺SLを修正しても良い。
【0129】
また、無補給準備モードに設定された際の自動作業走行において、苗切れを検出した旨の報知が行われることによって初めて、苗補給操作部65の操作を受け付ける構成としても良い。
【0130】
報知制御部66は、センサ23等により苗切れが検出されると、報知部47にその旨を報知させる。このような報知がされた後、補給準備位置SPPおよび補給辺SLの少なくともいずれかの設定が可能となる構成であっても良い。センサ23は苗切れを直接的に検出する構成であっても良いが、上述のように苗(マット状苗)の残量を検出する構成であっても良い。センサ23が苗の残量を検出する構成である場合、報知制御部66は、苗の残量が所定の量以下である場合、苗切れの状態であると判断して、報知部47に報知を行わせる。
【0131】
苗切れの検出は、センサ23に限らず、残量推定部68を用いて行われても良い。残量推定部68は情報端末5に設けることができる。残量推定部68は、補給後の作業走行における縦送り量の情報・横送り回数の情報・苗取り量の情報・株間の情報・走行距離の情報等を用いて予想消費量を算出する。そして、残量推定部68は、苗の補給時に搭載され、情報端末5の記憶部42等に記憶されたマット状苗の量から、算出された予想消費量を減算して実苗残量を推定する。
【0132】
さらに、センサ23による苗の残量の検出と、残量推定部68による実苗残量の推定の両方が行われる構成としても良い。この場合、報知制御部66は、センサ23が検出する苗の残量と実苗残量とのうちの作業者により選択されたいずれか一方を用いて報知を制御しても良い。
【0133】
そのために、残量選択操作部69が設けられても良い。残量選択操作部69は、情報端末5のタッチパネル50に表示されるソフトウェアスイッチ等として設けられる。
【0134】
自動作業走行中に、作業者は、残量選択操作部69を操作して、センサ23が検出する苗の残量と実苗残量とのうちの一方を選択する。報知制御部66は、選択された苗の残量または実苗残量が所定量以下となった場合に苗切れと判断し、報知部47にその旨を報知させる。
【0135】
〔別実施形態〕
(1)上記各実施形態において、制御ユニット30および情報端末5は上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されても良い。例えば、制御ユニット30および情報端末5の各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられても良い。また、制御ユニット30および情報端末5の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されても良い。また、制御ユニット30および情報端末5の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されても良い。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部35、記憶部42等の任意の記憶装置に記憶され、制御ユニット30または情報端末5が備えるCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
【0136】
(2)上記各実施形態において、苗補給設定部41、マイク44、音声認識部45、報知部47、残量判定部48、位置算出部57、距離比較部61、消費量予測部58、消費量算出部59、報知制御部66、残量推定部68は、情報端末5に設けられる構成に限らず、これらの内の少なくとも1つが制御ユニット30に設けられても良く、機体1の他のユニットまたは機体1と通信可能な外部の管理コンピュータ等に設けられても良い。例えば、マイク44と報知部47は運転部14に設けられ、苗補給設定部41、音声認識部45、残量判定部48、位置算出部57、距離比較部61、消費量予測部58、消費量算出部59、報知制御部66、残量推定部68の少なくともいずれかは、機体1に設けられる制御ユニット30等に設けられても良い。また、走行回数操作部53、回数変更操作部54、作業距離入力部56、位置変更操作部62、経路選択操作部64、苗補給操作部65の少なくともいずれかは運転部14等の機体1に設けられても良い。苗補給設定部41、マイク44、音声認識部45、報知部47、残量判定部48、位置算出部57、距離比較部61、消費量予測部58、消費量算出部59、報知制御部66、残量推定部68、走行回数操作部53、回数変更操作部54、作業距離入力部56、位置変更操作部62、経路選択操作部64、苗補給操作部65の少なくともいずれかは、リモコン6に設けられても良い。
【0137】
(3)上記各実施形態において、機体1に機体1の周辺を撮影する撮像装置19と苗補給ポイント検出部20とが設けられる構成であっても良い。補給位置として補給ポイントSAで苗の補給が行われる際に、苗補給ポイント検出部20は、撮像装置19の撮影画像から画像解析により補給ポイントSAを識別し、走行制御部32は、識別された補給ポイントSAに自動走行で移動する構成としても良い。
【0138】
(4)上記各実施形態において、自動走行制御システムまたは圃場作業車は、コンバインと連携可能な構成であっても良い。さらに、田植機が苗植付作業を行う際に設定された補給辺SLの情報がコンバインに伝達され、コンバインによる収穫作業の際の穀物の排出位置が補給辺SLの情報に基づいて決定されても良い。
【0139】
また、コンバインはライダーセンサ等を備え、収穫作業中に圃場の3Dデータを収集することができる場合、自動走行制御システムまたは圃場作業車は、補給辺SLを設定する際に、圃場の3Dデータを考慮しても良い。
【0140】
圃場の外周辺は、畦の高さや畦(圃場の外周)のうねり等により、補給辺SLとして適切でない場合がある。前年等に取得された圃場の3Dデータを考慮して補給辺SLが設定されることにより、不適切な位置に補給辺SLが設定されることが抑制され、適切に補給辺SLが設定される。
【0141】
(5)上記各実施形態において、センサ23は、このようなセンサ23が複数縦送り方向に並べて配置されることにより、マット状苗がどの程度残っているかを検出する構成であっても良い。さらに、センサ23は苗載せ台21上のマット状苗を撮影するカメラであっても良く、撮影画像を解析することによりマット状苗の残量を検出する構成であっても良い。また、センサ23は重量センサであり、苗載せ台21に搭載されるマット状苗の重さの変化から、苗の残量を計測する構成であっても良い。
【0142】
また、センサ23に代わりドローンが搭載される構成であっても良い。この場合、ドローンにより苗載せ台21上が撮影され、撮影画像が画像解析されることにより、苗載せ台21上の苗の残量が検出される。
【0143】
また、センサ23により苗の残量を検出することに代わり、作業者の発する音声により、苗切れ等が認知される構成であっても良い。この場合、情報端末5、機体1、またはリモコン6に音声認識システムが設けられ、音声認識システムは、作業者の発する音声を解析して苗切れ等を認知する。
【0144】
例えば、音声認識システムは、作業者の「苗切れ」との音声を認識して苗切れが生じていることを検知する。また、音声認識システムは、作業者の「苗が多い」との音声を認識して、予定より作業走行を長距離行えることを検知する。
【0145】
これらの検知内容に応じて、苗補給設定部41は、補給準備処理を行うタイミングを変更する。
【0146】
(6)上記各実施形態において、農場作業車は、田植機に限らず、圃場に農協資材を供給する播種機、薬剤散布機、施肥機等の他の作業車であっても良く、圃場で収穫した農作物を排出するコンバイン等の収穫機であっても良い。
【0147】
この場合、圃場の外周辺から、収穫した農作物を排出する排出位置に沿う排出辺が設定され、資材排出設定部によって設定された内部往復経路IPLの排出準備位置で排出準備処理が実施される。すなわち、田植機の自動走行制御システムにおける「補給辺」は収穫機の自動走行制御システムにおける「排出辺」に相当し、「農業資材」は「収穫された農作物」に相当し、「資材補給設定部」は「資材排出設定部」に相当し、「補給準備位置」は「排出準備位置」に相当し、「補給準備処理」は「排出準備処理」に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、田植機等の苗移植車に限らず、コンバインやトラクタ等の各種の圃場作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0149】
3 苗植付装置(作業装置)
5 情報端末
21 苗載せ台
22 植付機構
23 センサ
32 走行制御部
33 作業制御部
41 苗補給設定部(資材補給設定部)
47 報知部
50 タッチパネル(表示部)
65 苗補給操作部(資材補給操作部)
66 報知制御部
68 残量推定部
69 残量選択操作部
IPL 内部往復経路(内部経路)
SL 補給辺