(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】フォールトツリー作成方法、フォールトツリー作成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241122BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20241122BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2021183816
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝生
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 卓
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145917(JP,A)
【文献】特開2020-017238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行されるフォールトツリー作成方法であって、
前記コンピュータが、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと、
前記コンピュータが、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと、
を有
し、
前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出するステップでは、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、前記コンピュータが、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する、
フォールトツリー作成方法。
【請求項2】
前記ブロックは、前記対象系統の前記始点から前記終点までを分岐点または合流点ごとに分解してできるそれぞれの範囲である、
請求項
1に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項3】
前記ブロックの異常によって前記対象系統の前記始点から前記終点までの流れが通らなくなる場合、
前記コンピュータは、前記ブロックを前記フォールトツリーの頂上事象にOR条件で接続する、
請求項
1または請求項
2に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項4】
前記終点から前記対象系統における上流へ前記ブロックをたどり、上流に複数の前記ブロックへの分岐が存在する場合、
前記コンピュータが、前記複数の前記ブロック同士をAND条件で接続し、AND条件で接続した前記複数の前記ブロックを頂上事象にOR条件で接続する、
請求項
1から請求項
3の何れか1項に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項5】
前記複数の前記ブロックの各々を中間ブロックとする場合、当該中間ブロックより上流に存在する前記ブロックの異常によって前記始点から前記中間ブロックまでの流れが通らなくなる場合、
前記コンピュータは、前記ブロックを前記中間ブロックにOR条件で接続する、
請求項
4に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項6】
前記中間ブロックから上流へ前記ブロックをたどり、上流に複数の前記ブロックへの分岐が存在する場合、
前記コンピュータは、当該複数の前記ブロック同士をAND条件で接続し、AND条件で接続した当該複数の前記ブロックを前記中間ブロックにOR条件で接続する、
請求項
5に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項7】
前記対象系統に接続され、前記始点から前記終点までの流れの経路には含まれない枝管について、
前記コンピュータは、前記枝管をひとまとめにして頂上事象にOR条件で接続し、ひとまとめにした前記枝管の配下にそれぞれの前記枝管を互いにOR条件で接続する、
請求項
1から請求項
6の何れか1項に記載のフォールトツリー作成方法。
【請求項8】
プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得する手段と、
前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出する手段と、
算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成する手段と、
を有
し、
前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出する手段は、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する、
フォールトツリー作成装置。
【請求項9】
コンピュータに、
プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップと、
前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと、
算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと、
を有し、
前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出するステップでは、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォールトツリー作成方法、フォールトツリー作成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントのリスク評価に確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment:PRA)モデル(以下、PRAモデルと記載する。)が用いられる。PRAモデルを漏れなく作成するために、プラントの系統図から機器等を網羅的に抽出し、抽出した機器等の故障モードの検討を行って、イベントツリーやフォールトツリーを作成する。特許文献1には、システムを構成する機器とその機器の機能不全モードを入力し、各機器の機能不全モードを組み合わせて、危険な事象の発生につながる危険シナリオを作成し、作成した危険性シナリオをフローチャート形式で表して、そのフローチャートからフォールトツリーを作成するシステムが開示されている。特許文献1には、プラントの系統図からフォールトツリーを作成することについては記載が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PRAモデルの構築を行う場合、プラントの系統図から機器を抽出し、フォールトツリーを作成するという作業を行うが、現状、この作業は手動で実施されており、多くの労力や作業時間を要している。系統図からフォールトツリーを作成する作業を効率的に行う方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができるフォールトツリー作成方法、フォールトツリー作成装置およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の評価対象のフォールトツリー作成方法は、コンピュータによって実行されるフォールトツリー作成方法であって、前記コンピュータが、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップと、前記コンピュータが、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと、前記コンピュータが、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと、を有し、前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出するステップでは、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、前記コンピュータが、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する。
【0007】
また、本開示のフォールトツリー作成装置は、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得する手段と、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出する手段と、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成する手段と、を有し、前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出する手段は、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する。
【0008】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップと、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、前記対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと、を有し、前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記論理条件を算出するステップでは、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上述のフォールトツリー作成方法、フォールトツリー作成装置およびプログラムによれば、系統図から、フォールトツリーを自動的に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のフォールトツリー作成装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2A】実施形態に係る系統図データの一例を示す第1図である。
【
図2B】実施形態に係る系統図データの一例を示す第2図である。
【
図2C】実施形態に係る系統図データの一例を示す第3図である。
【
図3A】実施形態に係るブロック分割処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3B】実施形態に係るブロック分割後の系統図の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る機器リストの一例を示す図である。
【
図5A】実施形態に係るFT作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5B】実施形態に係るFT作成処理を説明する第1図である。
【
図5C】実施形態に係るFT作成処理を説明する第2図である。
【
図5D】実施形態に係るFT作成処理を説明する第3図である。
【
図5E】実施形態に係るFT作成処理を説明する第4図である。
【
図5F】実施形態に係るFT作成処理を説明する第5図である。
【
図6A】実施形態に係る枝管に対する処理を説明する第1図である。
【
図6B】実施形態に係る枝管に対する処理を説明する第2図である。
【
図7】実施形態に係るフォールトツリー作成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係るフォールトツリー作成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示のフォールトツリー作成方法について、
図1~
図8を参照して説明する。
(システム構成)
図1は、実施形態に係るフォールトツリー作成装置の一例を示す機能ブロック図である。フォールトツリー作成装置10は、原子力プラント等の評価対象の系統図からフォールトツリーを自動的に作成する。以下、フォールトツリー作成装置10をFT作成装置10、フォールトツリーをFTと記載する場合がある。
【0012】
FT作成装置10は、評価対象の系統図データを取得するデータ取得部11と、ユーザの操作を受け付ける入力受付部12と、系統図データからFTを作成する処理の実行制御を行う制御部13と、作成されたFT等を表示装置や電子ファイルとして出力する出力部14と、系統図データや処理中の各種データなどを記憶する記憶部15と、を備える。
【0013】
(系統図データ)
データ取得部11は、CADデータなどのプラントの系統図データを取得する。ここで、
図2A~
図2Cを参照する。
図2A~
図2Cに、系統図データの一例として、あるプラントのCADデータの一部を示す。
図2Aの系統図において、P1~P8は配管、D1~D3は機器、C1~C3は分岐点又は合流点を示し、流体の流れの始点と終点1、終点2が示されている。例えば、バルブD1は、配管P2と配管P3とを接続する。また、配管P3には、バルブD1の他にバルブD2、分岐点C2において配管P8が接続されている。一般にプラント系統図を表示するCADデータには、
図2Bに例示する配管構成データ、
図2Cに例示する配管接続データが含まれ、これらのデータに基づいて、
図2Aに例示する系統図が出力される。あるいは、
図2Aの系統図に基づいて、
図2Bの配管構成データ、
図2Cの配管接続データを作成することが可能である。
図2Bに例示するCADデータは配管P3に関するデータを抜粋したものであり、
図2Cに例示するCADデータは配管P1、P3、P4に関するデータを抜粋したものである。
【0014】
図2Bに例示するように、配管構成データには、配管ごとにその配管に接続されるバルブ等の機器や分岐、合流の情報などが設定されている。
図2Aを参照して説明したように、例えば、配管P3には、バルブD1~D2、分岐点C2において配管P8が接続されている。この構成は、
図2Bの配管構成データでは、2~4行目に設定されている。つまり、配管P3に対し、バルブD1、バルブD2、分岐点C2のTYPE(機器の種類)、合流/分岐の区分、サイズ(配管径)、機器が配置されている位置のXY座標情報などが設定されている。XY座標情報は、
図2Aの系統図における座標位置を示している。
【0015】
図2Cの配管接続データには、配管同士の接続情報と配管を流れる流体の流れ方向が設定されている。例えば、配管P3は、配管P2、配管P4、配管P8と接続している。また、流体は、配管P2、配管P3、配管P4の方向、又は、配管P2、配管P3、配管P8の方向、又は、配管P8、配管P3、配管P4の方向に流れる。この接続情報を定義するために、ライン番号の欄に配管P3、FROM欄に配管P2、TO欄に配管P4、P8が設定されている。また、配管P8から流体が流れ込む場合について、配管P3、FROM欄に配管P8、TO欄に配管P4が設定されている。同様に配管P4については、FROM欄に配管P3、TO欄に「終点1」が設定され、配管P1については、FROM欄に「始点」、TO欄に配管P2、P5が設定されている。
【0016】
このように、系統図データ(配管構成データや配管接続データ)では、配管と配管の接続関係、配管と機器(バルブ、ポンプなど)の接続関係が定義され、系統における合流点や分岐点を解析できるようになっている。データ取得部11は、系統図データとして、配管構成データ(
図2B)と配管接続データ(
図2C)を取得する。
【0017】
なお、
図2Aでは、後の説明のために、CADデータに加え、流体の流れ方向を追加で示している。
図2Aに例示する系統は、2つの機能を発揮する。1つ目は、始点から終点1へ流体を注入する機能、2つ目は、始点から終点2へ流体を注入する機能である。1つ目の機能(機能1と記載する。)を発揮する場合、流体は、配管P1、配管P2、配管P3、配管P4を通過して終点1へ流れ込む。あるいは、流体は、配管P1、配管P5、配管P6、配管P8、配管P4を通過して終点1へ流れ込む。2つ目の機能(機能2と記載する。)を発揮する場合、流体は、配管P1、配管P5、配管P6、配管P7を通過して終点2へ流れ込む。あるいは、流体は、配管P1、配管P2、配管P3、配管P8、配管P7を通過して終点2へ流れ込む。配管P8は、配管P3と配管P6および配管P7とを結ぶタイラインであって、矢印で示すように分岐点C2から分岐点C3の方向、分岐点C3から分岐点C2の方向のどちらにも流体が流れ得る。
図2Aの系統図からFTを作成する場合には、機能1又は機能2の何れかに注目してその機能が失われることを頂上事象とするFTを作成する。また、注目する機能の発揮のために流体が流れる配管(系統の機能達成に必要な経路)を主配管とよび、流れない配管であるが系統の機能達成にあたり評価対象とすべき経路を枝管とよぶ。例えば、機能1の場合、配管P7には流体が流れないが、配管P7でリークが生じると機能1に影響を及ぼす可能性があるため配管P7は枝管であり、他の配管P1~P6、配管P8は主配管となる。機能2の場合、配管P4は枝管であり、他の配管P1~P3、配管P5~P8は主配管となる。
【0018】
図1に戻り、入力受付部12は、タッチパネル、キーボードなどの入力装置を含んで構成され、ユーザが入力装置を用いて行った操作を受け付け、操作に応じた情報を生成し、生成した情報を制御部13に出力する。
【0019】
制御部13は、系統図データからFTを作成する。制御部13は、系統図データを解析する解析部131と、その解析結果を用いてFTを作成するFT作成部132と、を備える。
【0020】
(ブロックへの分割)
解析部131は、系統図データを解析して、系統図をブロックに分割する。ブロックに分割することにより、1つのブロックを1つの構成とみなして、各構成の故障を基事象とするFTを作成する。これにより、簡潔で視認性の高いFTを自動的に作成することができる。次に
図3Aを参照して、系統図をブロックへ分割する処理について説明する。解析部131は、系統図のデータから始点、終点、分岐点、合流点を抽出する(ステップS1)。解析部131は、配管構成データ(
図2B)の「合流/分岐」欄や、配管接続データ(
図2C)の「FROM」欄、「TO」欄を参照して始点、終点、分岐点、合流点を抽出する。次に、解析部131は、始点から終点へ辿りブロックを設定する(ステップS2)。解析部131は、始点から流れの下流の方向へ配管を辿っていき、分岐点、合流点、終点のいずれかに到達するまでを1ブロックと設定することを繰り返す。
図2Aの系統図を例に具体的に説明する。まず、解析部131は、始点から終点1までの流れについてブロック分割を行う。解析部131は、始点から開始して配管P1を下流へ辿る。合流点C1にぶつかると、解析部131は、始点から合流点C1までを一つのブロックとして設定する。このブロックをBLK001とする。BLK001を
図3Bに示す。次に解析部131は、合流点C1から配管P2に沿った流れを下流へ辿り、バルブD1に遭遇するが、これは、始点、終点、分岐点、合流点の何れでもない為、続いて配管P3に沿って下流方向に辿り分岐点C2に至る。分岐点C2は配管P8への分岐点となる為、解析部131は、合流点C1から分岐点C2までを1つのブロック、BLK002として設定する(
図3B)。同様にして、解析部131は、分岐点C2から終点1までを1つのブロック、BLK004として設定する。解析部131は、合流点C1から配管P5に沿った流れについても同様の処理を行い、
図3Bに例示するように、合流点C1から分岐点C3までをBLK003、分岐点C3から分岐点C2までを1つのブロックとして設定する。また、解析部131は、始点から終点2までの流れについてブロック分割を行う。始点から終点2までのブロック分割では、始点から終点1までのブロック分割で設定済みのBLK001、BLK002、BLK003が設定され、それに加えて、分岐点C2から分岐点C3までのブロックと、分岐点C3から終点2までをBLK006が設定される。次に解析部131は、タイライン(配管P8)への対応を行う(ステップS3)。解析部131は、作成したブロックのうち、両端及び配管上の機器が等しく流れ方向のみ異なる2つのブロックは、同じブロック名(BLK005)にして”_数字”を付記し区別する。例えば、解析部131は、分岐点C2から分岐点C3までをBLK005_1、分岐点C3から分岐点C2までをBLK005_2として設定する。
図3Bにブロック分割後の系統図を示す。
【0021】
また、解析部131は、系統図のデータから機器リストを作成する。
図4に機器リストの一例を示す。解析部131は、系統図データ(
図2B)から機器や合流点、分岐点を抽出し、
図4に例示する機器リストを作成する。機器リストは、PRAで評価対象となる機器に対し要求される機能を整理したものであり、ブロック分割後の系統図(ブロック系統図と記載する。)に基づいて、ブロック単位の故障を基事象とするFTを作成した後に、より詳細なFTを作成する際に参照される。
【0022】
(フォールトツリーの作成)
FT作成部132は、ブロック分割後の系統図(
図3B)からFTを作成する。
図3Bのブロック系統図を前提として、
図5Aのフローチャートに沿って、FT作成処理の手順を説明する。まず、ユーザが、FT作成対象の機能を指定する。例えば、機能1のFTを作成する場合、ユーザは、機能1を指定する操作をFT作成装置10に対して行う。例えば、ユーザは、
図3Bのブロック系統図における始点と終点1をFT作成装置10に入力する。入力受付部12は、この操作を受け付けて制御部13へ出力する。制御部13は、始点から終点1までをFT作成の対象として設定する(ステップS11)。例えば、制御部13は、設定された始点と終点1を評価対象系統の始点と終点として記憶部15に記録する。この設定に基づいて、FT作成部132は、処理対象外のブロックと枝管で構成されたブロックを特定する(ステップS12)。この例の場合、FT作成部132は、タイラインのうちのBLK005_1を処理対象外として設定し、BLK006を枝管で構成されたブロックに設定する。また、FT作成部132は、頂上事象を設定する(ステップS13)。FT作成部132は、頂上事象に「終点1への注入不可」を設定する。
図5BにステップS13までの処理結果を図示する。
図5BのW1にFTの頂上事象を設定した状態を示し、W2にBLK005_1を処理対象外、BLK006を枝管としたブロック系統図を示す。
【0023】
次にFT作成部132は、頂上事象をFT作成におけるターゲットとする事象として設定する(ステップS14)。次にFT作成部132は、ターゲット(頂上事象)にORで接続するブロックを特定する(ステップS15)。具体的には、FT作成部132は、そのブロックが故障すると、頂上事象が生じるようなブロックを特定する。
図5CのW2を参照する。FT作成部132は、処理対象のブロックであるBLK001~BLK004、BLK005_2の各々について、そのブロックが故障すると機能1が失われるかどうかを判定する。例えば、BLK001やBLK004が故障すると、流体は始点から終点1まで流れなくなる。一方、BLK002が故障したとしても、BLK001、BLK003、BLK005_2、BLK004を通過して、始点から終点1まで流体は流れるので、BLK002が故障しても頂上事象「終点1への注入不可」は生じない。また、BLK003やBLK005_2が故障したとしても、BLK001、BLK002、BLK004の経路が機能する為、「終点1への注入不可」は生じない。これらのことから、FT作成部132は、BLK001とBLK004を頂上事象に直接ORで接続するブロックとして特定し、これらを頂上事象にORで接続する。
図5CのW1に頂上事象にBLK001の故障とBLK004の故障をORで接続した作成中のFTを示す。
【0024】
次にFT作成部132は、終点1から始点に向けて1つずつ上流にブロックを辿りながら(ステップS16)、以下の処理を実行する。まず、FT作成部132は、上流に2ブロック以上の分岐が存在するかどうかを判定する(ステップS17)。例えば、終点1から上流に1ブロック辿るとBLK004である。BLK004の上流には、BLK002とBLK005_2の2つのブロックが存在する。このような場合、ステップS17の判定はYesとなる。上流に2ブロック以上の分岐が存在する場合(ステップS17;Yes)、それらブロックが全て故障すると頂上事象に至ることから、上流ブロック(BLK002とBLK005_2)同士をANDで接続し、ターゲットである頂上事象にORで接続する(ステップS18)。ステップS17~S18の処理内容を
図5DのW2に示す。
図5CのW1に、BLK002の故障とBLK005_2の故障をANDで接続してできた中間事象「BLK002の故障&BLK005_2の故障」を頂上事象にORで接続したFTを示す。上流に2ブロック以上の分岐が存在しない場合(ステップS17;No)、ステップS19へ進む。次にFT作成部132は、作成中のFTにおける重複するブロックを除外する(ステップS19)。
図5DのW1を参照すると、作成中のFTに含まれるブロックは、BLK001、BLK002、BLK004、BLK005_2であり重複は無い為、ブロックの削除は行わない。
【0025】
次にFT作成部132は、ターゲットを変更する(ステップS20)。例えば、現在BLK004から1つ上流にBLK005_2とBLK002の分岐が存在するので、BLK005_2又はBLK002へ移動し(1ブロック上流へ辿り)、移動先のブロックへの注入不可をターゲットの事象に設定する。ここでは、BLK005_2に移動するとする。この場合、FT作成部132は、「BLK005_2の終点への注入不可」をターゲットに設定する。また、FT作成部132は、FT中の基事象「BLK005_2の故障」を「BLK005_2終点への注入不可」に変更する。次にFT作成部132は、始点まで到達したかどうかを判定する(ステップS21)。始点まで到達していないので、ステップS21の判定はNoとなる。始点まで到達していない場合(ステップS21;No)、ステップS15からの処理を繰り返し実行する。
【0026】
FT作成部132は、BLK005_2から始点まで辿ったときのBLK005_2、BLK003、BLK001という経路を対象として、そのブロックが故障すると、始点からターゲットBLK005_2の終点へ流体が流れなくなるようなブロックを特定し(ステップS15)、特定したブロックをターゲットとする「BLK005_2の終点への注入不可」にORで接続する。この例の場合、BLK005_2、BLK003、BLK001の何れが故障しても「BLK005_2終点への注入不可」が生じるので、BLK005_2、BLK003、BLK001をターゲットである「BLK005_2終点への注入不可」にORで接続する。
図5EのW2に今回のステップS15の処理内容を示し、W1にターゲットにBLK005_2の故障とBLK003の故障とBLK001の故障を、現在のターゲット事象である「BLK005_2終点への注入不可」にORで接続したFTを示す。
【0027】
次にFT作成部132は、上流に複数ブロックの分岐があるかどうかを判定する(ステップS17)。BLK005_2から上流へ辿っても複数のブロックに分岐している箇所は無い為、ステップS17の判定はNoとなる。次にFT作成部132は、作成中のFTにおける重複するブロックを除外する(ステップS19)。
図5EのW1のFTを参照すると、頂上事象にORで接続された「BLK001の故障」と現在のターゲットである「BLK005_2終点への注入不可」にORで接続された「BLK001の故障」が重複している。このような場合、FTの上階層で設定された「BLK001の故障」を残し、下階層の現在のターゲットに接続された「BLK001の故障」を除外する。除外後のFTを
図5Fに示す。
【0028】
次にFT作成部132は、1つ上流に移動してターゲットを「BLK003終点への注入不可」に変更して、ステップS15以降の処理を実行する。ターゲットをBLK003にした場合、ステップS15で特定されるブロックは上階層で設定済みのブロックと重複する為、ステップS19にて除外される。また、上流に複数のブロックに分岐する箇所は無い(ステップS17;No)。つまり、ターゲットの移動に伴いFTの変更はない。この場合、FT作成部132は、ターゲットとしていた「BLK003終点への注入不可」を「BLK003故障」に戻す。次にFT作成部132は、ターゲットを「BLK001終点への注入不可」に変更して、ステップS15以降の処理を実行する。この場合の処理はBLK003の場合と同様である。次にFT作成部132は、ターゲットを「BLK002終点への注入不可」に変更して、ステップS15以降の処理を実行する。この場合もBLK003の場合と同様である。次にFT作成部132は、ターゲットを「BLK001終点への注入不可」に変更して、ステップS15以降の処理を実行するが、この処理は既に実行済みである。次にFT作成部132は、始点まで到達したと判定し(ステップS21)、
図5Aのフローチャートを終了する。最終的に作成されたFTを
図5Fに示す。
【0029】
(枝管の処理)
次に、
図6A~6Bを参照して、枝管で構成されたブロックをFTに追加する処理について説明する。
図6Aに、ブロック系統図の一例を示す。
図6Aのブロック系統図は、
図3Bのブロック系統図に対して、ブロックBLK007が追加されている。BLK007では、矢印方向に流体が流れる。始点から終点1へ注入する機能1の観点からは、BLK007は流体の注入経路とはならない為、BLK006と同様、枝管となる。BLK006およびBLK007は、「終点1への注入不可」に直接的には関与しないが、例えば、BLK006又はBLK007でリークが発生すると系統全体に影響が及び「終点1への注入不可」の原因となる可能性がある。従って、枝管の故障は頂上事象に接続する。具体的には、FT作成部132は、枝管に対応するブロック同士をORで接続して「枝管故障」として集約し、集約した「枝管故障」を頂上事象にORで接続する。
図6Bに「枝管故障」を追加したFTを例示する。
【0030】
(処理全体の流れ)
次に
図7を参照して、フォールトツリー作成処理の全体の流れを説明する。
まず、データ取得部11が、
図2B~
図2Cに例示する系統図データを取得し(ステップS31)、取得した系統図データを記憶部15に記録する。次に解析部131が、ブロック分割を行う(ステップS32)。解析部131は、ステップS31で取得された系統図データから
図3B、
図6B等で例示するブロック系統図を作成する。この処理については
図3Aを用いて説明したとおりである。次にユーザがFTの対象機能(例えば機能1)を指定する。制御部13は、この指定に基づいて、FTの対象機能を設定する(ステップS33)。この処理は
図5AのステップS11に対応する。次にFT作成部132は、主配管と枝管を分別する(ステップS34)。FT作成部132は、ステップS33にて設定された機能に基づいて、その機能の発揮に必要なブロックを主配管として設定し、機能の発揮に必要ではないが、そのブロックの故障によって機能の発揮に影響するブロックを枝管として設定する。例えば、FT作成部132は、主配管に接続され、且つ、始点から終点までの流れの経路には含まれないブロックを枝管として設定する。この処理は
図5AのステップS12に対応する。次にFT作成部132は、主配管として分別したブロックを対象にしてFTを作成する(ステップS35)。FT作成部132は、
図5Aを用いて説明したようにしてFTを作成する。この処理は
図5AのステップS13~S21に対応する。次にFT作成部132は、枝管を集約してFTへ追加する(ステップS36)。FT作成部132は
図6A~
図6Bを用いて説明したように枝管を集約してFTへ追加する。次に出力部14は、作成後のFTを表示装置などへ出力する(ステップS37)。なお、FT作成部132は、FTのツリー構造を表現する任意のデータ形式(テキストデータ)を用いてFT構造を規定し、このテキストデータは記憶部15に保存されている。出力部14は、FT構造が規定されたテキストデータを記憶部15から読み出して、所定のソフトウェアを用いて
図6B等に例示するFTの画像に変換し、この画像を出力する。
【0031】
(効果)
従来は、系統図に対して機器等を手作業で抽出し、抽出した機器等の故障モードの検討を行って、フォールトツリーを作成する。これに対し、本実施形態によれば、系統図データを入力するだけで、構成要素の接続関係に基づいて、基事象(例えば、構成要素の故障)の論理条件を判断して自動的にFTを作成する。これにより、FT作成に要する作業時間や作業負荷を低減することができる。また、系統図に記載されている構成要素を一定のまとまり(ブロック)毎に分割して捉えることで、技術者が理解しやすいシンプルで体系的なフォールトツリーを生成することができる。また、必要に応じて、
図4に例示する機器リストを参照しながらより詳細なFTを作成することができるが、その際、自動作成されたシンプルなFTを利用することができるので作業負荷を軽減することができる。また、注入経路の探索を行い、手動でFTを作成するときと同様に注入経路(主配管)とそれ以外を区別することで、手動作業時と同等のフォールトツリーを生成することができる。
【0032】
上記実施形態では、原子力プラントの信頼性評価のPRAモデル作成のために、原子力プラントの系統図のCADデータに基づいて信頼性評価の対象範囲を抽出することとしたが、FT作成装置10の適用分野は、原子力プラントの信頼性評価に限定されない。また、PRAモデルに限らず、他の手法で信頼性評価を行う産業分野にも適用が可能である。また、系統図は、プラントに限らず電気配線の系統図や制御系の系統図であってもよい。
【0033】
また、上記の実施形態ではブロックとして、始点から分岐点、合流点、終点の何れかに到達する毎に1つのブロックとして分割する例を説明したが、ブロックの分割方法はこれに限定されず、例えば、始点から終点へ辿りながら機器に到達する毎に、機器および機器を接続する配管ごとに分解してできるそれぞれの範囲をブロックとしてもよい。
【0034】
また、上記の実施形態ではFTの対象機能の指定として、始点と終点1を選ぶ例を説明したが、FTの対象機能の指定方法はこれに限定されず、例えば、経由点を設定することで処理対象外や枝管のブロックを任意に変更してもよい。
【0035】
図8は、実施形態に係るフォールトツリー作成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述のフォールトツリー作成装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0036】
なお、フォールトツリー作成装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0037】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0038】
<付記>
各実施形態に記載のフォールトツリー作成方法、フォールトツリー作成装置およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る評価対象のフォールトツリー作成方法は、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップ(S31)と、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、当該対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと(S15~S18、S36)、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと(S35、S36)、を有する。
これにより、プラント等の系統図からフォールトツリーを自動的に作成することができる。
【0040】
(2)第2の態様に係る評価対象のフォールトツリー作成方法は、(1)のフォールトツリー作成方法であって、前記構成要素は、前記対象系統の始点から終点までを所定の範囲ごとに分割したブロックであって、前記ブロックが正常な場合には前記始点から前記終点に向けた流れ方向における前記ブロックの上流端から下流端への流れが通り、前記ブロックが異常な場合には前記流れが通らないとみなすときに、一つ又は複数の前記ブロックの異常が前記始点から前記終点までの流れを阻害するか否かに基づいて当該一つ又は複数の前記ブロックについての前記論理条件を算出する(S15、S18)。
流れを阻害する場合、一つ又は複数のブロックを頂上事象にORで接続するように論理条件を算出する。このような処理により、自動的にフォールトツリーを作成することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(1)~(2)のフォールトツリー作成方法であって、前記ブロックは、前記対象系統の始点から終点までを分岐点または合流点ごとに分解してできるそれぞれの範囲である(
図3A)。
これにより、
図5Aの処理によってFTの自動作成が可能になり、シンプルで見通しの良いFTを作成することができる。
【0042】
(4)第4の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(2)~(3)のフォールトツリー作成方法であって、前記ブロックの異常によって前記系統の前記始点から前記終点までの流れが通らなくなる場合、前記ブロックを前記フォールトツリーの頂上事象にOR条件で接続する(S15)。
このような処理により、フォールトツリーにおける頂上事象に接続される構造を決定することができる。
【0043】
(5)第5の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(2)~(3)のフォールトツリー作成方法であって、前記終点から前記系統における上流へ前記ブロックをたどり、上流に複数の前記ブロックへの分岐が存在する場合、前記複数の前記ブロック同士をAND条件で接続し、AND条件で接続した前記複数の前記ブロックを頂上事象にOR条件で接続する(S18)。
このような処理により、フォールトツリーにおける頂上事象に接続される構造を決定することができる。
【0044】
(6)第6の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(5)のフォールトツリー作成方法であって、前記複数の前記ブロックの各々を中間ブロックとする場合、当該中間ブロックより上流に存在する前記ブロックの異常によって前記始点から前記中間ブロックの終端までの流れが通らなくなる場合、前記ブロックを前記中間ブロックにOR条件で接続する(S15)。
このような処理により、フォールトツリーにおける下階層の構造を決定することができる。
【0045】
(7)第7の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(5)~(6)のフォールトツリー作成方法であって、前記中間ブロックから上流へ前記ブロックをたどり、上流に複数の前記ブロックへの分岐が存在する場合、当該複数の前記ブロック同士をAND条件で接続し、AND条件で接続した当該複数の前記ブロックを前記中間ブロックにOR条件で接続する(S18)。
このような処理により、フォールトツリーにおける下階層の構造を決定することができる。
【0046】
(8)第8の態様に係るフォールトツリー作成方法は、(2)~(7)のフォールトツリー作成方法であって、前記対象系統に接続され、前記始点から前記終点までの流れの経路には含まれない枝管について、前記枝管が1つの場合は前記枝管を頂上事象にOR条件で接続し、前記枝管が2つ以上の場合、前記枝管をひとまとめにして頂上事象にOR条件で接続し、ひとまとめにした前記枝管の配下にそれぞれの前記枝管を互いにOR条件で接続する。
これにより、異常時に機能の発揮に影響を及ぼす枝管をFTに追加することができる。
【0047】
(9)第10の態様に係るフォールトツリー作成装置10は、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得する手段と、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、当該対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出する手段と、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成する手段と、を有する。
【0048】
(10)第11の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、プラントの構成要素の接続関係を示す系統図を取得するステップと、前記系統図に含まれる評価対象の系統である対象系統が有する前記構成要素の接続関係に基づいて、当該対象系統が機能を喪失するときの前記構成要素の状態についての論理条件を算出するステップと、算出された前記論理条件に基づいて、前記対象系統が機能を喪失することを頂上事象とするフォールトツリーを作成するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・フォールトツリー作成装置
11・・・データ取得部
12・・・入力受付部
13・・・制御部
131・・・解析部
132・・・FT作成部
14・・・出力部
15・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース