(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】栄養および医薬組成物のタンパク質カプセル化
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20241122BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241122BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20241122BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20241122BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20241122BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241122BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241122BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241122BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20241122BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241122BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241122BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241122BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A23L33/12
A23L5/00 C
A61K31/232
A61K31/202
A61K31/201
A61P3/02
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/50
A61K47/44
A61K47/22
A61K47/42
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2021503844
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 AU2019050763
(87)【国際公開番号】W WO2020019019
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518365581
【氏名又は名称】クローバー・コーポレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Clover Corporation Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ルーデス・アーバン-アランデト
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エリオット
(72)【発明者】
【氏名】メック・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ボー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ライアン
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155490(JP,A)
【文献】国際公開第2012/106751(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128831(US,A1)
【文献】国際公開第2008/085997(WO,A2)
【文献】安達 修二,脂質の粉末化と酸化抑制,日本食品科学工学会誌,1996年,第43巻、第9号,pp.977-982
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K、A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含むマイクロカプセル化組成物であって、カプセル化剤が、タンパク質
および1つ以上の炭水化物を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなり、該マイクロカプセル化組成物が、噴霧乾燥粉末の形態である、組成物。
【請求項2】
1つ以上のタンパク質の分子量が、約40kDa未満、約30kDa未満、または約20kDa未満である、請求項1に記載のマイクロカプセル化組成物
【請求項3】
1つ以上のタンパク質が、タンパク質画分の形態である、請求項1または2に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項4】
1つ以上の炭水化物が、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物から選択されるか、またはそれらの組み合わせである、請求項
1~3のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項5】
1つ以上のタンパク質が、組成物の総重量に基づいて、約5%w/w~約25%w/wで存在する、請求項1~
4のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項6】
カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比が、約1:10~約1:2である、請求項1~
5のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項7】
LCPUFAが、オメガ3脂肪酸である、請求項1~
6のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項8】
LCPUFAが、トリグリセリド形態で存在する、請求項1~
7のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項9】
LCPUFAが、1つ以上のLCPUFA含有油中に存在する、請求項1~
8のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項10】
1つ以上の油が、魚油を含む、請求項
9に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項11】
組成物が、少なくとも1つのビタミンC源をさらに含む、請求項1~
10のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項12】
組成物が、約1%の表面遊離脂肪含有量を有する、請求項1~
11のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項13】
トリグリセリド形態の1つ以上のLCPUFAを含むマイクロカプセル化組成物であって、カプセル化剤が、タンパク質を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなり、該マイクロカプセル化組成物が、噴霧乾燥粉末の形態であり、該マイクロカプセル化組成物が、約1%の表面遊離脂肪含有量を有する、組成物。
【請求項14】
1つ以上のLCPUFA、または1つ以上のLCPUFAを含む1つ以上の油を、酸化分解から保護するための方法であって、タンパク質
および1つ以上の炭水化物を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなるカプセル化剤で、LCPUFAまたは油をカプセル化し、カプセル化LCPUFAまたは油を噴霧乾燥して、噴霧乾燥粉末を形成することを含む、方法。
【請求項15】
酸化分解から1つ以上のLCPUFA、または1つ以上のLCPUFAを含む1つ以上の油の酸化安定性を改善するための方法であって、タンパク質
および1つ以上の炭水化物を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなるカプセル化剤で、LCPUFAまたは油をカプセル化し、カプセル化LCPUFAまたは油を噴霧乾燥して、噴霧乾燥粉末を形成することを含む、方法。
【請求項16】
1つ以上のLCPUFAが、トリグリセリド形態である、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含むマイクロカプセル化組成物であって、カプセル化剤が、タンパク質を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなり、該マイクロカプセル化組成物が、噴霧乾燥粉末の形態であり、該組成物が、約2%未満の表面遊離脂肪含有量を有する、組成物。
【請求項18】
1つ以上のタンパク質の分子量が、約40kDa未満、約30kDa未満、または約20kDa未満である、請求項17に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項19】
1つ以上のタンパク質が、タンパク質画分の形態である、請求項17または18に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項20】
カプセル化剤が、1つ以上の炭水化物をさらに含む、請求項17~19のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項21】
1つ以上の炭水化物が、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物から選択されるか、またはそれらの組み合わせである、請求項20に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項22】
1つ以上のタンパク質が、組成物の総重量に基づいて、約5%w/w~約25%w/wで存在する、請求項17~21のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項23】
カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比が、約1:10~約1:2である、請求項20に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項24】
LCPUFAが、オメガ3脂肪酸である、請求項17~23のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項25】
LCPUFAが、トリグリセリド形態で存在する、請求項17~24のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項26】
LCPUFAが、1つ以上のLCPUFA含有油中に存在する、請求項17~25のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項27】
1つ以上の油が、魚油を含む、請求26に記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項28】
組成物が、少なくとも1つのビタミンC源をさらに含む、請求項17~27のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項29】
組成物が、約1%の表面遊離脂肪含有量を有する、請求項17~28のいずれか1つに記載のマイクロカプセル化組成物。
【請求項30】
1つ以上のLCPUFA、または1つ以上のLCPUFAを含む1つ以上の油を、酸化分解から保護するための方法であって、タンパク質を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなるカプセル化剤で、LCPUFAまたは油をカプセル化し、カプセル化LCPUFAまたは油を噴霧乾燥して、噴霧乾燥粉末を形成することを含み、該粉末が、約2%未満の表面遊離脂肪含有量を有する、方法。
【請求項31】
酸化分解から1つ以上のLCPUFA、または1つ以上のLCPUFAを含む1つ以上の油の酸化安定性を改善するための方法であって、タンパク質を含み、該タンパク質が、約50kDa未満の分子量を有する1つ以上の低分子量タンパク質からなるカプセル化剤で、LCPUFAまたは油をカプセル化し、カプセル化LCPUFAまたは油を噴霧乾燥して、噴霧乾燥粉末を形成することを含み、該粉末が、約2%未満の表面遊離脂肪含有量を有する、方法。
【請求項32】
1つ以上のLCPUFAが、トリグリセリド形態である、請求項30または31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、栄養および医薬用途の両方に適した長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)含有油を含むカプセル化組成物、およびカプセル化組成物中のLCPUFA含有油を酸化および酸化分解から保護するための手段に広く関係する。
【背景技術】
【0002】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は人間の食事の重要な栄養成分であり、多くの人がこれらの必須脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3脂肪酸を十分な量摂取できないことはよく知られている。多くの研究で、オメガ3脂肪酸が心臓、脳および眼の健康に影響を与えることがわかっている。たとえば、最近の研究は、EPAとDHAが運動中の心拍数と酸素消費量を減少させる能力を持っている可能性があり、そのため、アスリートの身体的および精神的パフォーマンスの向上に貢献していることを示唆している(Peopleら、Journal of Cardiovascular Pharmacology、2008、52: 540-547)。それらの本質的な栄養的役割のために、オメガ3脂肪酸を含む組成物は、栄養補給の観点から、そして医薬品としての両方の観点から重要である。
【0003】
したがって、公衆衛生を促進するために、オメガ3脂肪酸、たとえば、魚油、藻油およびいくつかの植物種子油を食品に組み込む傾向が高まっている。しかしながら、これらの脂肪酸の食品の製造および保管中によく発生する、酸素、高温または光への曝露による酸化または分解への感受性のため、オメガ3脂肪酸の安定性と活性を維持しながらオメガ3脂肪酸で製品を正常に強化することは課題である。オメガ3脂肪酸の酸化および/または分解は、製剤の官能特性または生理学的特性に悪影響を与える可能性のある、望ましくない酸化分解生成物を生成する。
【0004】
生理活性化合物を物理的な保護シェル材料内に閉じ込めることができるマイクロカプセル化技術は、オメガ3脂肪酸を酸化および分解から保護するために成功裏に使用されてきた。噴霧乾燥は、マイクロカプセル粉末を製造するために最も広く使用されている技術である。典型的には、オメガ3に富む油を含む噴霧乾燥マイクロカプセル粉末は、約30%(w/w)の油負荷および約1%(w/w)の表面遊離脂肪含有量を有する。メイラード反応生成物(MRP)の優れた機能特性により、オメガ3油を含むマイクロカプセル粉末は、約1%(w/w)の表面遊離脂肪含有量を維持しながら、48±2%もの高い油負荷で製造されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、オメガ3リッチオイルの酸化安定性を改善することができるカプセル化およびデリバリーシステムの開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概略
本開示は、1つ以上の低分子量タンパク質を含むカプセル化剤または低分子量タンパク質画分を含む乳化剤を使用することにより、オメガ3リッチオイルを含む組成物およびエマルジョンの酸化安定性を改善することができるという発明者の予想外の発見に基づいている。
【0007】
本開示の第1の態様は、1つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含むマイクロカプセル化組成物を提供し、ここで、カプセル化剤は、1つ以上の低分子量タンパク質を含む。
【0008】
1つの実施態様では、1つ以上のタンパク質の分子量は、約50kDa未満、約40kDa未満、約30kDa未満、または約20kDa未満である。タンパク質は、任意選択で天然源からのタンパク質画分の形態でありうる。例示的実施態様では、タンパク質は、分子量が約30kDa未満、または約20kDa未満のタンパク質を含むポテトタンパク質画分の形態である。
【0009】
1つの実施態様では、カプセル化剤は1つ以上の炭水化物をさらに含む。1つの例示的実施態様では、1つ以上の炭水化物は、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物から選択される。1つの例示的実施態様では、炭水化物は、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物を含む。
【0010】
特定の実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比(重量比)は、約1:10~約1:1.5でありうる。例示的実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分は、組成物の総重量に基づいて、約15% w/w~約21% w/wを含む。例示的実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比(重量比)は、約1:2である。
【0011】
1つの実施態様では、LCPUFAは、DHAおよび/またはEPAなどのオメガ3脂肪酸である。LCPUFAは、たとえば、トリグリセリド形態またはリン脂質形態で存在しうる。本明細書に開示される特定の実施態様では、LCPUFAは、トリグリセリドの形態で存在する。LCPUFAは、1つ以上のLCPUFA含有油中に存在しうる。LCPUFA含有油は、天然に存在するか、天然に由来するか、または合成でありうる。LCPUFAを含む油は、LCPUFAが豊富でありうる。1つの例示的実施態様では、油は、マグロ油などの魚油である。
【0012】
1つの実施態様では、組成物は、ビタミンC源をさらに含む。1つの例示的実施態様では、ビタミンC源は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムである。
【0013】
典型的には、組成物は、約2%未満の表面遊離脂肪含有量を有する。1つの実施態様では、組成物は、約1%の表面遊離脂肪含有量を有する。
【0014】
組成物は、水中油型エマルジョンなどのエマルジョンの形態でありうる。組成物は、噴霧乾燥粉末などの粉末の形態でありうる。粉末は、水中油型エマルジョンを乾燥させることによって得ることができる。
【0015】
本開示の第2の態様は、1つ以上のLCPUFAを含む油を、1つ以上の低分子量タンパク質を含むカプセル化剤でカプセル化することを含む、1つ以上のLCPUFAを酸化分解から保護するための方法を提供する。
【0016】
1つの実施態様では、1つ以上のタンパク質の分子量は、約50kDa未満、約40kDa未満、約30kDa未満、または約20kDa未満である。タンパク質は、任意選択で天然源からのタンパク質画分の形態でありうる。1つの例示的実施態様では、タンパク質は、分子量が約30kDa未満、または約20kDa未満のタンパク質を含むポテトタンパク質画分の形態である。
【0017】
1つの実施態様では、カプセル化剤は1つ以上の炭水化物をさらに含む。1つの例示的実施態様では、1つ以上の炭水化物は、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物から選択される。1つの例示的実施態様では、炭水化物は、マルトデキストリンおよびデキストロース一水和物を含む。
【0018】
特定の実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比(重量比)は、約1:10~約1:1.5でありうる。例示的実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分は、組成物の総重量に基づいて、約15% w/w~約21% w/wを含む。例示的実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比(重量比)は、約1:2である。
【0019】
1つの実施態様では、LCPUFAは、DHAおよび/またはEPAなどのオメガ3脂肪酸である。LCPUFAは、たとえば、トリグリセリド形態またはリン脂質形態で存在しうる。本明細書に開示される特定の実施態様では、LCPUFAは、トリグリセリドの形態で存在する。LCPUFAは、1つ以上のLCPUFA含有油中に存在しうる。LCPUFA含有油は、天然に存在するか、天然に由来するか、または合成でありうる。LCPUFAを含む油は、LCPUFAが豊富でありうる。1つの例示的実施態様では、油は、マグロ油などの魚油である。
【0020】
1つの実施態様では、組成物は、ビタミンC源をさらに含む。1つの例示的実施態様では、ビタミンC源は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムである。
【0021】
典型的には、組成物は、約2%未満の表面遊離脂肪含有量を有する。1つの実施態様では、組成物は、約1%の表面遊離脂肪含有量を有する。
【0022】
組成物は、水中油型エマルジョンなどのエマルジョンの形態でありうる。組成物は、噴霧乾燥粉末などの粉末の形態でありうる。粉末は、水中油型エマルジョンを乾燥させることによって得ることができる。
【0023】
本開示の第3の態様は、1つ以上のLCPUFAを含む油を、1つ以上の低分子量タンパク質を含むカプセル化剤でカプセル化することを含む、酸化分解から1つ以上のLCPUFAの酸化安定性を改善するための方法を提供する。
【0024】
本開示の第4の態様は、1つ以上のLCPUFAを含む安定なエマルジョン、任意選択で1つ以上のLCPUFAを含む油を提供し、ここで、前記エマルジョンは、1つ以上の低分子量タンパク質をさらに含む。
【0025】
通常、エマルジョンは、水中油型エマルジョンである。
【0026】
本開示の第5の態様は、1つ以上のLCPUFA、任意選択で1つ以上のLCPUFAを含む油、および1つ以上の低分子量タンパク質を含む組成物を提供する。
【0027】
組成物は、水中油型エマルジョンなどのエマルジョンの形態でありうる。組成物は、噴霧乾燥粉末などの粉末の形態でありうる。
【0028】
本開示の例示的な実施態様は、以下の図面を参照して、非限定的な例としてのみ本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】タンパク質/タンパク質画分の分子量(kDa):M、分子量マーカー;PPH、高分子量のポテトタンパク質画分(2レーン);PPL、低分子量のポテトタンパク質画分(2レーン;SC、カゼイン酸ナトリウム;MRP、SCと炭水化物ポリマーとの間のメイラード反応生成物;WPI、ホエイプロテイン単離物。
【
図2】実施例1に記載されているように、カプセル化剤としてタンパク質(PPH、PPL、SCおよびWPI)、デキストロース一水和物(DM)およびマルトデキストリン(MAL)またはMRPによる、LCPUFAに富むマグロ油のマイクロカプセル化の例示的なプロセスフロー。
【
図3】70℃および5バールの酸素での異なるマイクロカプセル化マトリックスにおけるさまざまなマグロ油(TO)含有マイクロカプセル粉末の誘導期間。グラフの左から右へ(矢印の付いた円の位置に基づく):MRPベースTO粉末、~50%油負荷、カプセル化剤としてSCと炭水化物との間のメイラード反応生成物;WIPベースTO粉末、~30%油負荷、カプセル化剤としてホエイプロテイン単離物と炭水化物ポリマー;PPL~ベースTO粉末、~50%油負荷、カプセル化剤として低分子量のポテトタンパク質画分と炭水化物ポリマー;およびSCベースTO粉末、~30%油負荷、カプセル化剤としてカゼイン酸ナトリウムと炭水化物ポリマー。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な記載
本明細書全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形は、記載されたステップまたは要素または整数、またはステップまたは要素または整数のグループを含むことを意味すると理解されるが、他のステップまたは要素または整数、または要素または整数のグループを除外するものではない。したがって、本明細書の文脈において、「含む」という用語は、「主として含むが、必ずしもそれだけではないこと」を意味する。
【0031】
本明細書の文脈において、「約」という用語は、当業者が、同じ機能または結果を達成する文脈において列挙された値と同等であると見なすであろう数の範囲を示すと理解される。
【0032】
本明細書の文脈において、用語「a」および「an」は、冠詞の文法的目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を示す。例として、「要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、LCPUFAに関連する「酸化安定性」という用語は、酸素の存在下でのLCPUFAまたはLCPUFA含有油の安定性、および酸化または酸化分解に対する耐性を意味する。したがって、より高い酸化安定性は、酸化および酸化分解に対するより大きな耐性を示す。通常、本開示によるカプセル化から生じる改善された酸化安定性への言及は、本開示によるカプセル化剤の不在下または代替のカプセル化剤の存在下で観察される酸化安定性に対する改善を意味する。
【0034】
本開示の特定の実施態様は、1つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含むマイクロカプセル化組成物を提供し、ここで、カプセル化剤は、1つ以上の低分子量タンパク質を含む。
【0035】
また、1つ以上の低分子量タンパク質を使用して、1つ以上のLCPUFAまたは1つ以上のLCPUFAを含む油をカプセル化し、LCPUFAまたはLCPUFA含有油を酸化または酸化分解から保護する方法および組成物も提供される。酸化または酸化分解からの保護は、当業者に周知の任意の適切な手段によって決定することができる。
【0036】
本開示のマイクロカプセル化された組成物は、例えば、エマルジョンの形態でありうるか、または固体形態でありうる。エマルジョンは、水中油型エマルジョンを含みうる。固体形態は粉末でありうる。粉末は、たとえば、エマルジョンの噴霧乾燥によって得ることができる。1つの実施態様では、組成物は、自由流動性粉末である。粉末は、約10μm~1000μmの間、または約50μm~800μmの間、または約100μm~300μmの間の平均粒径を有しうる。代替の実施態様では、組成物、は顆粒の形態でありうる。
【0037】
本開示の組成物は、マイクロカプセル化によって生成され、ここで、カプセル化剤は、1つ以上の低分子量タンパク質を含むか、またはそれからなる。1つ以上のタンパク質は、単離されたタンパク質でありうるか、または、たとえば、細胞または組織源などの天然源から得られたタンパク質画分の形態でありうる。細胞または組織の供給源は、動物または植物供給源などの任意の適切な供給源から得ることができる。タンパク質の分子量は、たとえば、約1kDa~約50kDa、約4kDa~約40kDa、または約10kDa~約30kDaの範囲でありうる。たとえば、タンパク質の分子量は、最大で約1kDa、2kDa、4kDa、6kDa、8kDa、10kDa、12kDa、14kDa、16kDa、18kDa、20kDa、22kDa、24kDa、26kDa、28kDa、30kDa、32kDa、34kDa、36kDa、38kDa、40kDa、42kDa、44kDa、46kDa、48kDa、または最大で約50kDaである。タンパク質画分の場合、画分に存在するタンパク質が上記で定義された範囲の分子量を有することは必須ではないが、画分中のタンパク質の少なくとも1つが上記の範囲内にある分子量を有することは必須である。
【0038】
本開示の範囲は、特定のタンパク質を参照することによって限定されるべきではない。例示的な実施態様では、低分子量タンパク質は、プロテアーゼ阻害剤I(約39kDa)、カルボキシペプチダーゼ阻害剤(約4100Da)、プロテアーゼ阻害剤IIaおよびIIb(約20.7kDa)およびプロテアーゼ阻害剤A5(約20.7kDa)などのプロテアーゼ阻害剤を含みうるポテトタンパク質画分の形態である。
【0039】
1つ以上の低分子量タンパク質は、均一な水性分散液またはスラリーが形成されるように、エマルジョンまたは組成物の調製の任意の段階でエマルジョンまたは組成物に導入することができる。当業者は、過度の負担または実験なしに、導入されるタンパク質の量および分子量を最適化することができるであろう。タンパク質の分子量は、マイクロカプセル化を容易にするのに十分に低くなければならず、一方、前記タンパク質の量は、カプセルとしての効果的な保護を提供するのに十分でなければならない。水中油型エマルションの場合、粘度も制御する必要がある。粘度が高すぎると噴霧乾燥が妨げられる可能性がある。適切なタンパク質含有量および適切な粘度を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0040】
例示的に、1つ以上の低分子量タンパク質は、組成物の総重量に基づいて、約5%(w/w)~約30%(w/w)の間で存在しうる。水中油型エマルジョンの場合、これは、水相と油相の総重量に基づいて、約5%(w/w)~約30%(w/w)の間を意味する。たとえば、1つ以上のタンパク質は、組成物の総重量に基づいて、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%w/wで存在しうる。
【0041】
本明細書に記載の特定の実施態様では、カプセル化剤は、1つ以上の低分子量タンパク質に加えて、化合物、物質または部分を含む。たとえば、カプセル化剤は、1つ以上の低分子量タンパク質と1つ以上の多糖または炭水化物成分との組み合わせを含みうる。たとえば、還元糖官能基を有する炭水化物は、タンパク質、デキストロース(デキストロース一水和物を含む)、グルコース、ラクトース、スクロース、オリゴ糖、および乾燥グルコースシロップと反応させることができる。さらなる実施態様において、多糖類である高メトキシペクチンまたはカラギーナンは、いくつかの製剤において、タンパク質-炭水化物混合物に添加されうる。タンパク質と炭水化物を反応させるには注意が必要であり、タンパク質が良好なフィルムを形成することができなくなるので、条件がタンパク質の広範囲のゲル化または凝固をもたらさないようにする必要がある。
【0042】
例示的に、本開示の組成物は、タンパク質およびカプセル化剤の多糖または炭水化物成分を水相に、任意選択で高せん断ミキサーを使用して可溶化することによって調製することができる。次に、混合物を約60℃~80℃の温度に加熱することができ、その後、必要に応じて、1つ以上の酸化防止剤を加えることができる。LCPUFA含有油は、高せん断ミキサーを通過して粗いエマルジョンを形成する水性混合物にインラインで投与されうる。次に、粗いエマルジョンを均質化することができる。粉末製品を調製することが望まれる場合、エマルジョンは、約180℃の入口温度および80℃の出口温度で加圧および噴霧乾燥されうる。
【0043】
例として、適切な多糖および炭水化物成分は、マルトデキストリン、デキストロース(デキストロース一水和物を含む)、グルコース、ラクトース、スクロース、オリゴ糖および乾燥グルコースシロップ、またはそれらの1つ以上の組み合わせを含みうる。さらなる実施態様において、多糖類である高メトキシペクチンまたはカラギーナンは、いくつかの製剤において、タンパク質-炭水化物混合物に添加されうる。タンパク質と炭水化物を反応させるには注意が必要であり、タンパク質が良好なフィルムを形成することができなくなるので、条件がタンパク質の広範囲のゲル化または凝固をもたらさないようにする必要がある。カプセル化剤の低分子量タンパク質と、多糖または炭水化物成分との比(重量比)は、たとえば、約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5または1:10でありうる。
【0044】
特定の実施態様では、カプセル化剤のタンパク質成分とカプセル化剤の炭水化物成分との比(重量比)は、約1:10~約1:1.5でありうる。たとえば、タンパク質成分と炭水化物成分との比は、約1:10、1:9.5、1:9、1:8.5、1:8、1:7.5、1:7、1:6.5、1:6、1:5.5、1:5、1:4.5、1:4、1:3.5、1:3、1:2.5、1:2または1:1.5でありうる。タンパク質成分と炭水化物成分との比は、約1:3~約1:1.5、たとえば、約1:3、1:2.9、1:2.8、1:2.7、1:2.6、1:2.5、1:2.4、1:2.3、1:2.2、1:2.1、1:2、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6または1:1.5でありうる。タンパク質成分と炭水化物成分との比は、約1:2~約1:1.9、たとえば、約1:2、1:1.99、1:1.98、1:1.97、1:1.96、1:1.95、1:1.94、1:1.93、1:1.92、1:1.91または1:1.9でありうる。例示的実施態様では、タンパク質成分と炭水化物成分との比は、約1:1.94である。
【0045】
多糖または炭水化物成分は、約0~100、約10~70、約20~60、または約30~50の間のDE値を有しうる。DE値は、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100でありうる。
【0046】
当業者は、代替の炭水化物源もまた、1つ以上の低分子量タンパク質と組み合わせてカプセル化剤に使用されうることを理解するであろう。たとえば、炭水化物源は、WO2012/106777(開示内容は、参照により本願に組み込まれる)に以前に記載されているように、約0~80の間のデキストロース当量値を有する、オクテニルコハク酸無水物で修飾されたデンプンおよび1つ以上または2つ以上の還元糖源を含みうる。簡単に言えば、デンプンは一次および/または二次修飾を含むことができ、エステルまたは半エステルでありうる。適切なオクテニルコハク酸無水物修飾デンプンとして、たとえば、ワキシートウモロコシをベースとし、Ingredion ANZ Pty Ltd、Seven Hills、NSW、オーストラリアによって、PURITY GUM(登録商標)、CAPSUL(登録商標)IMFおよびHICAP(登録商標)IMFの商品名で販売されているものが挙げられる。オクテニルコハク酸無水物修飾デンプンは、組成物の総量の約18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%未満、または1%未満の量で存在しうる。
【0047】
還元糖の供給源は当業者に周知であり、単糖および二糖、たとえば、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グリセルアルデヒドおよびラクトースが挙げられる。還元糖の適切な供給源として、オリゴ糖、たとえば、デキストリンおよびマルトデキストリンなどのグルコースポリマー、ならびにグルコースシロップ固形物も挙げられる。還元糖はまた、典型的には20重量%以上の還元糖を含むグルコースシロップに由来しうる。
【0048】
本開示のマイクロカプセル化組成物の表面遊離脂肪含有量は、10%未満または約10%、9%未満または約9%、8%未満または約8%、7%未満または約7%、6%未満または約6%、5%未満または約5%、4%未満または約4%、3%未満または約3%、2.5%未満または約2.5%、2.4%未満または約2.4%、2.3%未満または約2.3%、2.2%未満または約2.2%、2.1%未満または約2.1%、2%未満または約2%、1.9%未満または約1.9%、1.8%未満または約1.8%、1.7%未満または約1.7%、1.6%未満または約1.6%、1.5%未満または約1.5%、1.4%未満または約1.4%、1.3%未満または約1.3%、1.2%未満または約1.2%、1.1%未満または約1.1%、または1%未満または約1%でありうる。特定の実施態様では、この表面遊離脂肪含有量は、エマルジョンから誘導または生成された粉末において決定される。
【0049】
本開示の組成物およびエマルジョンは、1つ以上のLCPUFA、または1つ以上のLCPUFAを含む油を含む。油は、天然に存在するか、天然に由来するか、または遺伝子組み換えまたは非遺伝子組み換えの供給源から合成することができる。本開示の文脈において、「天然に存在する」および「天然に由来する」には、本明細書に記載の生物などの天然源から抽出されうるか、またはそのような天然源に見られる油または1つ以上の脂質から誘導または修飾されうる油および脂質組成物が含まれる。当業者は、本開示の範囲が、1つ以上のLCPUFAまたは1つ以上のLCPUFAを含む油の同一性または供給源を参照することによって限定されないことを理解するであろう。
【0050】
LCPUFA含有またはLCPUFAリッチであるか、またはそれに修飾することができる例示的な油として、たとえば、オキアミなどの甲殻類、カキなどの軟体動物、およびマグロ、サーモン、トラウト、イワシ、サバ、シーバス、メンハーデン、ニシン、ピルチャード、キッパー、ウナギまたはシラスなどの魚などの海洋生物からの油が挙げられる。油は、本明細書に記載されているものなどの1つまたは海洋生物の卵からのものでありうる。例示的な実施態様では、油は、マグロ油、オキアミ油、または魚卵からの脂質抽出物であるか、またはそれらを含む。
【0051】
LCPUFA含有またはLCPUFAリッチになるように修飾されているか、または修飾されうる他の例示的な油には、植物源および微生物源が含まれる。植物源には、亜麻仁、クルミ、ヒマワリの種、カノーラ、ベニバナ、大豆、小麦胚芽、トウモロコシ、およびケール、ほうれん草およびパセリなどの葉もの植物が含まれるが、これらに限定されない。微生物源には、藻類および真菌が含まれる。
【0052】
油は、組成物の総重量の約0.1%~80%の間の量で、または組成物の総重量の約1%~80%の間の量で、または約1%~75%の間の量で、または約5%~80%の間の量で、または約5%~75%の間の量で、または約5%~70%の間の量で存在しうる。例示的な実施態様では、油がマグロ油である場合、油は、組成物の総重量の約2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54 %、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%または80%の量で存在しうる。
【0053】
LCPUFAは、典型的には、1つ以上のオメガ3脂肪酸および/または1つ以上のオメガ6脂肪酸、またはそれらの混合物を含む。脂肪酸は、DHA、AA、EPA、DPAおよび/またはステアリドン酸(SDA)、またはそれらの混合物を含みうる。1つの実施態様では、脂肪酸は、DHAおよびEPAを含む。
【0054】
本開示によって企図される組成物は、追加の成分、たとえば、酸化防止剤、固化防止剤、香味剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、キレート剤などをさらに含みうる。
【0055】
適切な酸化防止剤は、当業者に周知であり、水溶性または油溶性でありうる。適切な水溶性酸化防止剤として、たとえば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸、グルタチオン、リポ酸および尿酸が挙げられる。1つの実施態様では、水溶性酸化防止剤は、組成物全体の約0~10%wt/wtの範囲で組成物中に存在しうる。適切な油溶性酸化防止剤として、たとえば、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、トコトリエノール、フェノール、ポリフェノールなどが挙げられる。1つの実施態様では、油溶性酸化防止剤は、油相中に全組成物の約0~10%wt/wtの範囲で存在する。
【0056】
本開示の組成物と適合性のある固化防止剤は、当業者の間でよく知られており、リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムなどの炭酸塩および二酸化ケイ素が含まれる。
【0057】
組成物は、1つ以上の低分子量乳化剤をさらに含みうる。適切な低分子量乳化剤として、たとえば、モノグリセリドおよびジグリセリド、レシチンおよびソルビタンエステルが挙げられる。他の適切な低分子量乳化剤は、当業者によく知られているであろう。低分子量乳化剤は、組成物の総重量の約0.1%~3%の量で、または約0.1%~約2%の量で、または約0.1%~0.5%の量で、または組成物の総重量の約0.1%~0.3%の間の量で存在しうる。たとえば、低分子量乳化剤は、組成物の総重量の約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2%の量で存在しうる。
【0058】
本明細書で企図される組成物は、任意の適切な経路、典型的には経口投与による対象への投与用に製剤されうる。組成物は、液体または固体の形態であることができ、そしてそれ自体で消費されうる(たとえば、シロップまたは他の適切な液体の形態で、またはカプセルまたは他の適切な固体形態として)。あるいは、組成物は、食品または飲料製品に配合されうる。
【0059】
広く記載されているように、本発明の真の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明に対して多数の変形および/または変更を行うことができることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施態様は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【0060】
次に、本発明は、以下の特定の例を参照することによってさらに詳細に説明されるが、これらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0061】
実施例1
低分子量タンパク質カプセル化剤を使用したリン脂質含有油のカプセル化
噴霧乾燥粉末の形態でマイクロカプセル化されたリン脂質に富む油を安定化するそれらの能力について、異なる分子量のさまざまなタンパク質およびタンパク質画分を調査した。天然トコフェロールとパルミチン酸アスコルビルを混合した精製マグロ油をコア素材として使用した。カゼイン酸ナトリウム、ホエイタンパク質単離物、高分子量ポテトタンパク質画分、および低分子量ポテトタンパク質画分を含む、さまざまな分子量を有するいくつかのタンパク質およびタンパク質画分を、カプセル化のためのタンパク質源として選択した。
【0062】
これらのタンパク質およびタンパク質画分の分子量は、非還元条件下でSDS-PAGEを使用して決定された。結果を
図1に示す。カゼイン酸ナトリウムは、カゼインタンパク質に対して約30kDaのバンド、α-ラクトグロブリンとして約14kDaに、および50kDaを超えてスメアを示し、これらは、κ-カゼインおよびα
s2-カゼインを表す可能性がある。メイラード反応の結果、カゼイン酸ナトリウムは炭水化物ポリマーと結合したので、その分子量は大幅に増加した;メイラード反応生成物(MRP)の分子量は、200kDaを超えた。ホエイプロテイン単離物(WPI)は、α-およびβ-ラクトグロブリンに対して14および18kDa、ウシ血清アルブミンに対して66kDa、160~200kDaの間のバンドを示した。高分子量のジャガイモタンパク質画分(PPH)は、パタチンに対して約40kDaの主要なバンドとともに、約80kDaにて二量体を示した。低分子量ポテトタンパク質画分(PPL)では、40kDa未満のプロテアーゼ阻害剤のバンドが検出され、プロテアーゼ阻害剤I(分子量39kDa)、カルボキシペプチダーゼ阻害剤(分子量4100Da)、プロテアーゼ阻害剤IIaおよびIIb(約20.7kDaの分子量)およびプロテアーゼ阻害剤A5(分子量約20.7kDa)の存在が示唆される。
【0063】
マグロ油は、必要に応じて、炭水化物ポリマーであるデキストロース一水和物およびマルトデキストリン(約30のDE値)とともに、タンパク質源として上記のタンパク質およびタンパク質画分を使用して、マイクロカプセル化された。アスコルビン酸ナトリウムとアスコルビン酸は、それぞれ中性および低pH条件でビタミンC源として使用された。
【0064】
最終的な噴霧乾燥粉末の酸化安定性に対する表面遊離脂肪の変化の影響を排除するために、同様の表面遊離脂肪含有量(約1%)を有するマイクロカプセルを製造した。この目的のために、カゼイン酸ナトリウムおよびWPIベースのマイクロカプセルの油負荷を28±2%に制御し(表1を参照)、MRP、PPHおよびPPLベースのマイクロカプセルの油負荷を48±2%に制御した(表2を参照)。
【0065】
【表1】
【表2】
MRPs, カゼイン酸ナトリウムと炭水化物ポリマーとの間のメイラード反応生成物; PPH, 高分子量ポテトタンパク質画分; PPL、低分子量ポテトタンパク質画分; SC, カゼイン酸ナトリウム; DM, デキストロース一水和物; MAL, マルトデキストリン (約30のDE値); SA, アスコルビン酸ナトリウム; TO, マグロ油
【0066】
マイクロカプセル化のプロセスフローを
図2に示す。
図2Aに示すように、SC、WPI、PPH、およびPPL(
図2Aでは総称して「タンパク質」)を使用して生成されたマイクロカプセルの場合、カプセル化剤成分を60℃にて水に加え、続いて80℃に加熱した。アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸を水相に加えた後、高せん断ミキサーを使用して、精製マグロ油を混合物中で均質化して、粗い水中油型エマルジョンを生成した。このエマルジョンを、600バールにて3パス、2段階ホモジナイザーを使用してさらに均質化し、続いて180/80℃にて噴霧乾燥した。
【0067】
図2Bに示すように、MRPを使用して生成されたマイクロカプセルの場合、カプセル化の前にメイラード反応が誘発された。簡単に言えば、カゼイン酸ナトリウム、デキストロース一水和物およびマルトデキストリンを60℃の水に加え、pHを7~7.5に調整した。スラリーを90℃に加熱してメイラード反応を誘発し、生成されたMRPを80℃に冷却した。アスコルビン酸ナトリウムを添加した後、精製マグロ油を、高せん断ミキサーを使用して水相中で均質化し、続いて600バールで3パス、2段階ホモジナイザーを使用して均質化し、続いて180/80℃にて噴霧乾燥した。
【0068】
実施例2
実施例1のマイクロカプセル化粉末の酸化安定性
約4gのマグロ油を含むマイクロカプセル化粉末を5バールの密閉チャンバー内で、酸素下で70℃に加熱し、ML Oxipres(商標)(Mikrolab Aarhus A/S、デンマーク)を使用して密閉チャンバーの圧力をモニターした。それを越えると酸素の消費により圧力が劇的に低下する誘導期間(IP)が、LCPUFAを含むマイクロカプセル粉末の酸化安定性を評価するための指標として使用された。具体的には、酸素の減少は、酸化を示す誘導期間として記録された(
図3を参照)。PPHベースの水中マグロ油型エマルションは粘度が高いので、他の製剤の固形分が50%であっても、噴霧乾燥できず、酸化安定性データを取得することができなかった。
【0069】
図3に示すように、表面遊離脂肪含有量が約1%の場合、実施例1で記載したようにさまざまなカプセル化剤で製造されたマグロ油含有マイクロカプセル粉末は、さまざまなレベルの酸化安定性を表す、さまざまな誘導期間を示した:
・28±2%の油負荷誘導期間が158時間であるカゼイン酸ナトリウムベースの粉末;
・48±2%のオイル負荷-誘導期間が136時間であるPPLベースの粉末;
・28±2%のオイル負荷-誘導期間が117時間であるWPIベースの粉末;
・48±2%のオイル負荷誘導期間が41時間であるMRPベースの粉末。
【0070】
したがって、48±2%の油負荷で、PPLを使用してカプセル化されたマイクロカプセル化粉末は、MRPでカプセル化された粉末と比較して、著しく改善された酸化安定性を示した。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、均質化中に、PPL中のより小さな分子量を有するタンパク質が、より活発に油/水界面に移動する傾向があることを示唆する。
【0071】
異なるマグロ油負荷(それぞれ、48±2%および28±2%)を有したPPLベースおよびカゼイン酸ナトリウムベースの粉末の誘導期間の値の比較は、8gのPPLの粉末(約4gのマグロ油と約0.36gのビタミンC(アスコルビン酸)を含む)および13.33gのカゼイン酸ナトリウムベースの粉末(約4gのマグロ油と約0.70gのビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム、0.62gのアスコルビン酸に相当)が、同じ温度および同じ酸素圧下で加熱されるという事実を考慮する必要がある。したがって、PPLベースの粉末は、ビタミンCが少なく、酸素との接触表面積が大きいカゼイン酸ナトリウムベースの粉末よりも優れた酸化安定性を示した。
【0072】
結論として、本発明者らは、マグロ油を酸化に対して安定化するために、28±2%または48±2%のマグロ油負荷のいずれかで、表面遊離脂肪含有量が約1%であるいくつかの異なるマイクロカプセル化送達システムを製造した。
【0073】
・約50%の油負荷で、PPLと炭水化物ポリマーを使用して製造されたマイクロカプセル化マグロ油含有粉末は、カゼイン酸ナトリウムと炭水化物ポリマーのMRPを使用して製造されたマイクロカプセル化マグロ油含有粉末と比較して、改善された酸化安定性を示した。本発明者らは、これは、MRPと比較してPPLの分子量が小さいことによると示唆する。
【0074】
・48±2%のマグロ油負荷を有するPPLベースのマイクロカプセル化システムは、SCベースのマイクロカプセル化(28±2%マグロ油負荷)よりも、より低いビタミンC(0.36対0.7g)含有量および酸素とのより高い接触表面積(同じ温度および同じ酸素圧下で8対13gの粉末)であっても、マグロ油に対してより効果的な保護を提供した。
【0075】
・タンパク質カプセル化剤成分としてPPLを使用することにより、メイラード反応なしで、約50%の油負荷および低い表面遊離脂肪含有量(1%)のマイクロカプセル粉末を製造することができる。
【0076】
・プロテアーゼ阻害剤I(分子量39kDa)、カルボキシペプチダーゼ阻害剤(分子量4100Da)、プロテアーゼ阻害剤IIaおよびIIb(分子量約20.7kDa)およびプロテアーゼ阻害剤A5(分子量約20.7kDa)を含むPPLは、生物活性オメガ3油の安定化のための新規マイクロカプセル化マトリックスを生成するための例示的な低分子量タンパク質成分として使用される。