(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】パネル又はポールを製造するための湿式方法、前記方法によって製造された製品、及び前記方法によって製造された製品の使用
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20241122BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20241122BHJP
D21H 13/36 20060101ALI20241122BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16L59/065
D21H15/02
D21H13/36
F16L59/04
(21)【出願番号】P 2021504500
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2019051898
(87)【国際公開番号】W WO2020025908
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(73)【特許権者】
【識別番号】506410039
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニク ドゥ グルノーブル
(73)【特許権者】
【識別番号】521033446
【氏名又は名称】アゲフィ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】エベリーヌ モーレ
(72)【発明者】
【氏名】フラビアン ロザーノ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ リュエフ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ パッソン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0152859(US,A1)
【文献】特開昭62-111053(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105040513(CN,A)
【文献】米国特許第04159224(US,A)
【文献】特開平04-011091(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01107413(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0231814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
F16L59/00-59/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、
真空断熱パネルを製造する方法:
-無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有する液体スラリーを作製すること、
-少なくとも1つの有孔要素上に、前記スラリーからウェブを作製すること、
-前記ウェブから水を抽出すること
、
-前記ウェブを乾燥させて製品を作ること
、及び
-前記製品を、前記真空断熱パネルのコア材料として使用すること
ここで、前記方法は、以下を特徴とする:
-前記無機繊維及び前記セルロース繊維を含むスラリーのpHが、2~6の範囲にあること、並びに
-前記セルロース繊維のISO 5267によるSchopper-Riegler指数が、50以上であること。
【請求項2】
前記セルロース繊維の、ISO 5267によるSchopper-Riegler指数が60以上、及び/又はISO 5267によるSchopper-Riegler指数が100以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pHの値が、3~5の範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記pH値を、酸解離定数pKaが3以下の強酸により調整することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機繊維が、ミネラルウール繊維、すなわちグラスウール、ストーンウール又はスラグウール繊維であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記セルロース繊維が、パルプ繊維であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記無機繊維のマイクロネアが、20リットル/分以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機繊維が、固形分の90重量%以上であり、かつ前記セルロース繊維が、固形分の0重量%超10重量%未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーが
、バインダーを全く含まないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーが、バインダーを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により
得ることができる、真空断熱パネル。
【請求項12】
1バールの圧縮に曝された前記製品の全体密度の増大が、250Paの圧縮に曝された製品の全体密度の150%未満であることを特徴とする、請求項11に記載の
真空断熱パネル。
【請求項13】
1バールの圧縮に曝された前記製品の全体密度が、250kg/m
3以下であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の
真空断熱パネル。
【請求項14】
引張強度指数が、少なくとも1.5Nm/gであることを特徴とする、請求項11に記載の
真空断熱パネル。
【請求項15】
真空断熱パネルの
コア材料としての、
以下を含む方法により得られる製品の使用
:
-無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有する液体スラリーを作製すること、ここで、前記無機繊維及び前記セルロース繊維を含むスラリーのpHが、2~6の範囲にあり、かつ前記セルロース繊維のISO 5267によるSchopper-Riegler指数が、50以上である、
-少なくとも1つの有孔要素上に、前記スラリーからウェブを作製すること、
-前記ウェブから水を抽出すること、及び
-前記ウェブを乾燥させて製品を作ること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式処理によってボード又はマットを製造するための方法、この方法によって製造された製品、及びこの製品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物及び産業施設の断熱に人工の鉱物繊維を使用することは、何十年も前から最先端の技術となっている。
【0003】
鉱物繊維ボードの製造は、当業者に周知の2つの方法によって行うことができる。従来の方法、いわゆるエアレイド法は、それぞれTEL法若しくはREX法とも呼ばれる内部又は外部遠心などの回転法、又はノズルブラスト法による溶融ガラス塊の繊維化から始まる。これらの方法は例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Vol.A11,Fibers,5.Synthetic Inorganicに記載されている。
【0004】
それらの方法は、移動している有孔要素に向かう空気の流れ、繊維含有ガス流に任意に添加される他の化合物、例えばバインダーと一緒に同伴される繊維の一次形成によって定義され、フェルトを形成する。このフェルトを通常、乾燥又は硬化工程を含む方法により、更に処理して、マット又はボードを形成する。
【0005】
これらの形成方法の特徴は、繊維で形成されたマット又はボードの本質的に層状の配向であり、前記繊維は、主として水平方向に配向されている。製品の意図される用途に応じて、この層状配向は、いくつかの特性、特に耐熱性のためには有益であり得るが、その一方で、目標とされる主な特性が圧縮抵抗又は引裂き強度などの機械的性能である場合には、あまり望ましくない。
【0006】
エアレイド法から生じる製品のこの欠点を克服するために、例えば、乾燥又は硬化の前にフェルト中の繊維を再配向させることによって、機械的性能を増大させるための様々な提案がなされている。
【0007】
機械的性質に敏感な用途の分野の一つに、真空断熱パネルのコア材料としての鉱物繊維ボード又はマット要素の使用がある。真空引きされる気密箔材料にコア材料が埋め込まれているため、真空断熱パネルの耐用年数の全期間中、コア材料は、大気圧に耐えなければならない。全体密度を増加させることによって、又はバインダー含有率を増加させることによって、機械的性能を増大させることができるが、第1の選択肢は、高い重量及び材料の必要性のために敬遠されており、一方、後者の選択肢は、バインダーが分解し、これによって、真空を悪化させ、その結果、内部圧力を増加させる可能性があるという欠点を有する。その結果、真空断熱パネルの耐用年数が有意に影響を受けることがある。
【0008】
代替として、機械的特性に対する高い要求を有する製品は、湿式法によって製造してもよい。湿式法は、エアレイド形成の繊維が収集され、更に処理される液体中に懸濁されるという点で、エアレイド形成とは異なる。
【0009】
国際公開第00/70147号パンフレットは、無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有するスラリーを作製すること、その後、少なくとも1つの運動している有孔要素に、スラリーからウェブを作製することを含む、ボード又はマットを製造する方法を開示している。水は、ウェブから抽出され、ウェブは、ウェブに高温空気を通すことによって乾燥される。この方法の目的は、特にリサイクルされたガラス繊維、鉱物繊維、ロックウール又は他の無機繊維をインプット繊維として使用する鉱物繊維ボードの製造を可能にする方法を提供することであり、この鉱物繊維ボードは、エアレイド法で製造されたボードと比較して向上した均一性及び圧縮強度を有する。アラミド、熱可塑性及びセルロース繊維などの他の繊維を鉱物繊維に添加してもよい。国際公開第00/70147号パンフレットに従って製造された製品は、ほとんどの場合、バインダーを含むが、この方法は、バインダーを含まない製品の製造を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、高い機械的性質、特に圧縮強度及び/又は引張強度を有する鉱物繊維ベースの製品を、このような性質を要求する用途、特に真空断熱パネル用のコア材料、例えばフィルター材料、特に濾紙又は電池セパレーターの用途のために提供することには、依然として関心が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、以下を含む、ボード又はマットを製造する方法によって達成される:
-無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有する液体スラリーを作製すること、
-少なくとも1つの有孔要素、好ましくは運動している有孔要素に、スラリーからウェブを作製すること、
-ウェブから水を抽出すること、並びに
-ウェブを乾燥させて製品を作ること
ここで、前記方法は、以下を特徴とする:
-無機繊維及びセルロース繊維を含むスラリーのpHが、2~6の範囲にあること、並びに
-セルロース繊維のISO 5267によるSchopper-Riegler指数が、50以上である。
【0012】
この方法によって製造された製品もこの目的を達成する。使用に関して、この目的は、真空断熱パネルのコア材料として、又はフィルター材料として、特に濾紙として、又は電池セパレーターとして、前記製品を使用することによって達成される。
【0013】
本発明は特に、以下の工程を含む、ボード又はマットを製造する方法に関する:
-無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有するスラリーを作製すること、
-少なくとも1つの有孔要素、好ましくは運動している有孔要素に、スラリーからウェブを作製すること、
-ウェブから水を抽出すること、並びに
-ウェブを乾燥させて製品を作ること
ここで、無機繊維及びセルロース繊維を含むスラリーのpHは、2~6のpH範囲であり、かつ
前記セルロース繊維が、ISO 5267による50以上のSchopper-Riegler指数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0015】
ウェブは、任意の厚さを有することができ、これによれば、紙と同程度に薄くすることができる。所望の厚さの製品を製造するためには、折り畳み、積み重ね等の公知の方法によって複数のウェブ層を互いの上に積層する工程を予見することが必要であり得る。
【0016】
ISO 5267に従って決定されるSchopper-Riegler(ショッパー・リーグラ)指数は、叩解指数(ろ水度)を決定するための尺度である。叩解は、中でも、マクロフィブリルの遊離による繊維壁の解繊を可能にし、これは、最終製品においてより多くの繊維間接続を生じさせる。このような繊維間接続の発生は、最終製品の機械的性質を増加させる。
【0017】
本発明者らは、方法が特定の範囲のセルロース繊維で行われている場合に、圧縮強度及び/又は引張強度が実質的に増加することを認識している。この増加は、セルロース繊維間の水素結合の形成によるものである。
【0018】
叩解されたセルロース繊維は、ISO 5267によるSchopper-Riegler指数が60以上、及び/又はISO 5267によるSchopper-Riegler指数が100以上であることが好ましい。
【0019】
pH値は、3~5、特に3~4の範囲にあることが好ましい。過度の酸性条件は、圧縮強度の低下を示したが、有利な効果は、pH値が中性に近づくにつれて低下する。
【0020】
好ましくは、pH値は、硫酸又は塩酸などの3以下の酸解離定数pKaを有する強酸によって調節する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、無機繊維は、ミネラルウール繊維、すなわちグラスウール繊維、ストーンウール繊維又はスラグウール繊維から選択され、好ましくは回転法又はノズルブラスト法によって製造される。これらの繊維は、低コストで大量に入手可能である。
【0022】
無機繊維のマイクロネアは、20リットル/分以下、好ましくは12リットル/分以下、特に8リットル/分以下であることが好ましい。
【0023】
これにより、マイクロネアは、国際公開第2003/098209号パンフレットに記載されている公知の技術に従って測定される。この特許出願は実際に、繊度指数を測定するための装置を含む、繊維の繊度指数を判定するための装置に関する。前記繊度指数を測定するための装置は、一方では複数の繊維から構成される試料を受け入れるように設計された測定セルに接続されている少なくとも1つの第1のオリフィス、及び他方では前記試料の両側に位置する、差圧を測定するための装置に接続された第2のオリフィスを有する。前記差圧を測定するための装置は、流体流生成装置に接続されるように設計され、繊度指数を測定するための装置は、前記セルを通過する流体のための少なくとも1つの体積流量計を含むことを特徴とする。この装置は、「マイクロネア」値とリットル/分(リットル/分)との間の対応関係を提供する。
【0024】
低い繊維指数、すなわち低いマイクロネア値は、多数の比較的薄い微細な繊維を意味する。微細繊維の使用は、高い機械的圧縮強度及び改善されたラムダ性能を有する製品を提供するために有益である。
【0025】
好ましくは、セルロース繊維は、パルプ繊維、特に、トウヒ、マツ、モミ、ラーチ、及びヘムロックなどの針葉樹の木材パルプ、並びにユーカリ、アスペン、及びカバノキなどの広葉樹の木材パルプである。パルプを製造するために適用されるパルプ化処理は、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミカルパルプ(クラフト、亜硫酸塩及びオルガノソルブ)、リサイクルパルプなどの標準的なパルプ化処理であり得る。クラフトパルプ、特に、トウヒ、マツ、モミ、ラーチ、及びヘムロックなどの針葉樹、並びにユーカリ、アスペン、及びカバノキなどの広葉樹からの化学漂白クラフト木材パルプを使用することが特に好ましい。異なるパルプは、単独で、又は様々な混合物で使用することができる。
【0026】
特に好ましいのは、ユーカリ繊維の漂白クラフトパルプの使用である。この材料は、低コストで大量に国際市場で入手可能である。
【0027】
セルロース繊維は、0.2mm~5mmの算術平均長さ及び10μm~70μmの算術平均直径を有することが好ましい。
【0028】
形態上のパラメータの長さ及び直径は、長さが200μm~10mmの範囲にあり、直径が5μm~75μmにある要素を繊維として定義する測定方法により、機器MorFi(Techpap、Grenoble、France)を測定装置として使用して測定される。微細部分は、長さ200μm未満及び/又は幅5μm未満の要素からなる。
【0029】
測定原理は、CCDカメラを用いて流体中の繊維懸濁液の画像を撮影すること、及び物体の形態を判定するための特定のソフトウェアを用いて画像を処理することを含む。これによれば、測定は、懸濁された繊維、すなわちパルプ化された材料に対して行われる。平均は、分析された少なくとも5000本の繊維のサンプルから計算される。
【0030】
叩解されたセルロース繊維は、繊維壁の外面に見えるマクロフィブリルの存在を特徴とする。マクロフィブリル含有率の測定値は、以下のように定義される:
【0031】
【0032】
マクロフィブリル含有率は、0.1%~1.5%であることが特に好ましい(上記定義による少なくとも300本の繊維の評価に基づく)。
【0033】
微細繊維含有率は、5~80%であることが更に好ましい。これによれば、微細繊維含有率は、以下の式によって定義される:
【0034】
【0035】
好ましくは、無機繊維の割合は、90%以上であり、セルロース繊維の割合は、0%超10%以下である。特に好ましい実施形態では、無機繊維の割合は、92~98%であり、かつセルロース繊維の割合は、2~8%である。特に、無機繊維の割合は、94~98%であり、かつセルロース繊維の割合は、2~6%であることが好ましい。これらの%値は、スラリー中の固形分の重量を指す。
【0036】
好ましくは、スラリーの固体物質の形成に寄与する他の化合物の割合は、固形分の3重量%以下である。そのような他の非バインダー化合物は例えば、乳白剤、充填剤、染料などであってもよい。
【0037】
スラリーは、いかなる追加のバインダーも含まないことが更に好ましい。無機繊維とセルロース繊維との相乗的相互作用により、十分な機械的特性が提供され、これにより、向上した機械的特性を得るためのバインダーの使用を回避することが可能になる。更に、バインダーを含まない製品は、真空断熱パネル用のガスを排出しない/劣化しないコア材料としての使用など、様々な特定の用途に興味深い。
【0038】
機械的特性についての特定の要件の場合、スラリーは、バインダーを含んでもよく、バインダーは、特に、バインダー固体物質を含まないスラリーの固形分100重量部に対して、バインダー固体物質4重量部以下の質量関係で添加されてもよい。
【0039】
また、上述した製造プロセスに従って製造された製品に対しても、特別な保護が要求される。
【0040】
好ましい実施形態では、1バールの圧縮に曝された製品の原料密度が250kg/m3以下、好ましくは200kg/m3以下、最も好ましくは180kg/m3以下である。
【0041】
好ましくは、1バールの圧縮に曝された製品の全体密度の増大が、250Paの圧縮に曝された製品の全体密度の150%未満、特に100%未満である。結果として、本製品は、この特定の用途の標準条件に曝されたときの機械的圧縮強度により、真空断熱パネルのコア材料としての使用に適している。
【0042】
結果として、本製品はこの特定の用途の標準条件に曝されたときの機械的圧縮強度により、真空断熱パネルのコア材料としての使用に適している。
【0043】
圧縮率測定は、例えばBuchel-Van Der Korputプレスなどの、5kNの測定セルを備えた剛体プラテン試験機で行われる。試験中のプラテンの速度は、1.4cm/分であり、選択された測定範囲は、0~5000Nである。250Paでの厚さ(ISO 29466:2008)は、別個の装置を用いて測定する。圧力を受ける表面は、10×10cm2である。この測定値は、圧縮率の算出に用いた基準厚さに相当する。250Paでの厚さが測定されると、マットを圧縮するように上昇する底ボード上に10cmの半径のディスクが置かれる。装置の上方に配置されたセンサーは、上部プレート上で検出された力を測定する。この実験の間、力が1バール(直径20cmの試験片では3140N)の圧力に対応する値に達したときに圧縮を停止し、直ちに厚さを測定する。圧力を30秒間維持する。次いで、底ボードを下げ、マットを5分間解放し、その後、圧縮手順を繰り返す。圧縮試験を実施するのに十分な厚さ(約10mm)を得るために、半径10cmの複数の試験片を積み重ねる。
【0044】
実際の実験は、5分間の圧力開放後の厚さが長期間にわたって実質的に一定のままであることを示している。実用上の理由から、厚さのデータは、試験された実施形態について全体密度に変換してい。
【0045】
好ましい実施形態において、製品の引張強度指数は、少なくとも1.5Nm/g、好ましくは少なくとも2.0Nm/g、最も好ましくは少なくとも2.5Nm/gであり、それによって、可動有孔ベルトを使用する動的製造法の場合の引張強度指数は、走行方向に測定される。
【0046】
静的製造法の場合、引張強度指数は、配向の大きな影響を示さない。この場合、引張強度指数は、両方向の引張強度指数のうちの低い方である。
【0047】
その結果、製品はフィルター材料、特に濾紙ー又は電池セパレーターとして使用するのに適しており、いずれの用途も引張強度特性の増加を必要とする。
【0048】
引張強度指数(TSI)は、以下のようにして決定される:
【0049】
引っ張り試料(150mm×20mm)を、(エッジ効果を制限するために)カッターを使用して、走行方向、並びに作られたマット又はシートの交差方向で切断する。走行方向は、装置の製造方向を表し、この方向は、ほとんどの場合、繊維の優先的な配向を示す。交差方向は、走行方向に対して垂直に位置している。
【0050】
次いで、これらのサンプルを、標準的な張力測定機器、例えば、Bluehill取得ソフトウェアに接続されたINSTRON装置を使用して、10mm/分の一定速度で試験する。2kNの範囲のセンサーの引張強度試験のための通常のフォースセルを、最大容量10Nのフォースセルに置き換えて、約1Nの大きさで試験された試料の典型的な破断力に適合させる。
【0051】
引張強度指数は、以下の式を用いて、直接比較するための試験試料の破断時の引張強度値(Nで表す)を、幅(20mm)、すなわち試験試料の引裂力に対する垂直方向の伸長、及び坪量(g/m2で表す)で正規化して算出する:
【0052】
【0053】
本発明は、有利な実施形態の説明からより詳細に理解される筈である。
【実施例】
【0054】
〈本発明による試料及び比較試料の作製〉
ブラジルのCenibraによって市販されているユーカリをベースとする漂白クラフトパルプを、セルロース繊維化合物の原料として使用している。
【0055】
第1の工程では、ISO 5264に従って、叩解機器PFIで漂白クラフトパルプを更に前処理し、叩解している。叩解指数、すなわちSchopper-Riegler指数を、原料パルプ及び叩解パルプの両方について判定した。この指数を、ISO 5267に従って正規化する。漂白クラフトパルプの叩解は、第1の叩解パルプについては40+/-5、第2の叩解パルプについては70+/-5のSchopper-Riegler指数を得ることを目的とする。
【0056】
表1は、原料漂白クラフトパルプ及び叩解プロセス後の漂白クラフトパルプの形態学的パラメータを示す。
【0057】
【0058】
引張強度指数へのSchopper-Riegler指数の影響を評価するために、それぞれ83及び85のSchopper-Riegler指数を有する2つの更なる叩解パルプ3及び4を同様に作製した。
【0059】
2つの異なるガラス繊維、すなわち、それぞれ18リットル/分及び4リットル/分のマイクロネアを有する繊維1及び繊維2を提供した。
【0060】
繊維1及び繊維2をそれぞれ含む液体スラリー、及び叩解ユーカリパルプを作製し、滴定によりpH値3に調整し、動的処理を用いてマットに加工する。追加のバインダーは、添加していない。懸濁液を、回転しているウェブ上に形成した水の壁に噴射して、製紙機械又は浸漬成形機の重要な特徴である配向効果を再現する。動的形成には、繊維がドラムの回転方向、すなわち走行方向に向く異方性ネットワークを作る効果がある。繊維のこの配向は、シートの方向とその垂直な交差方向との間の機械的強度の差をもたらす。このようにして作ったマットを、一定の質量が得られるまで、オーブン中で130℃の温度で乾燥させた。この方法は、VIPコア要素の乾燥後に坪量が400g/m3を有する試料を製造することを目的とし、一方、電池セパレーター紙の目標とする坪量は、乾燥後において300g/m3とした。
【0061】
〈圧縮強度特性を改善した製品のサンプル〉
したがって、第1の試験では、異なるSchopper-Riegler指数を有する表1の3つのユーカリパルプを使用して、叩解ユーカリパルプの固形分の6重量%で繊維1を用いて、実施例を製造した。
【0062】
圧縮率の測定は、上記のように5kNの測定セルを備えたBuchel-Van Der Korputプレスを用いて行った。
【0063】
表2は、マットの圧縮率の測定値から計算した、スラリーパラメーター及びスラリーから製造されたマットの全体密度を列挙する。250Paの荷重及び1バールの荷重での基準値について、全体密度を示す。
【0064】
表2:スラリーパラメーター及びスラリーから製造されたマットの全体密度。
【0065】
【0066】
表は、Schopper-Riegler指数が製品の機械的性質に有意な影響を与えることを示している。約40のSR指数を有する叩解パルプを使用する場合、全体密度は、1バールの荷重で約280kg/m3まで増加する。未処理の未叩解原料では、この原料密度が約480kg/m3にさえ増加する。大気圧下で使用されているVIP(真空断熱パネル)要素について生じ得る280kg/m3の全体密度は、非常に高く、これにより、VIP要素をより重くし、シーム溶接及び/又は気密被覆層の損傷のリスクを潜在的に増加させるので、受け入れられない。未処理のパルプで達成される原料密度は、VIP要素のコア材料として使用するには著しく高すぎる。
【0067】
実施例及び比較例は、pH調整なしで、又は67の最も高いSchopper-Riegler指数を有する叩解ユーカリパルプ2を添加せずに、記載した工程と同様にして行った。調整なしの液体スラリーのpH値は、約9であり、このpH値は、使用されるガラス繊維のpHによって主に決定され、スラリーに添加したユーカリ繊維は、pH値にほとんど影響を及ぼさない。
【0068】
一連の第1の試験と同様に、圧縮率測定は、上記のように5kNの測定セルを備えたBuchel-Van Der Korputプレスを用いて行った。表3は、スラリーパラメーター、及び第1の繊維を用いてスラリーから製造されたマットの、圧縮率の測定値から計算される全体密度のリストを示す。表2と同様に、250Paの荷重に対する基準値及び1バールの荷重における値の両方を列挙している。
【0069】
表4は、第2の繊維についての同じパラメータを列挙する。
【0070】
表3:スラリーパラメーター及び第1の繊維を用いてスラリーから製造されたマットの全体密度
【0071】
【0072】
表4:スラリーパラメーター及び第2の繊維を用いてスラリーから製造されたマットの全体密度
【0073】
【0074】
比較例3及び4の場合、バインダーが存在しない繊維1の粗い構造のため、原料密度を測定することができなかった。圧力荷重に対して特定の機械的抵抗を与える繊維2のより微細な繊維分布は、全体密度の測定を可能とした。
【0075】
提示した全体密度のデータは、荷重下の全体密度が、使用したパルプのSchopper-Riegler指数、マット作製中のスラリーのpH値、及びセルロース繊維/パルプの量に依存することを実証している。特に興味深いのは、SR指数である(表2及び結果分析を参照されたい)。pH3からpH9へのpHの増大は、同一の他のパラメーター(ガラス繊維の種類及びガラス繊維含有率、叩解パルプ含有率;例えば、実施例1から比較例7)についての荷重下での全体密度の増大をもたらす。この全体密度の増大は、少なくとも70kg/m3であり、これは、実施例と比較して過剰な質量過剰である。
【0076】
材料コストなどの他の利点に加えて、VIP処理におけるコア材料の全体密度の減少は、主にコア排気のための時間の大幅な減少によるより速い動作を可能にし、かつ原則として、コア材料の熱伝導率の減少によるVIPコア要素の改善された熱特性を可能にする。
【0077】
直接比較すると、繊維1及び繊維2の両方について、マット作製中のスラリーのpH値の変更の影響により、1バール未満の全体密度が改善される:
-比較例5と実施例1との比較では、282kg/m3から221kg/m3、すなわち約21%である。
-比較例6と実施例2との比較では、578kg/m3から296kg/m3、すなわち約49%である。
-比較例9と実施例3との比較では、263kg/m3から160kg/m3、すなわち約39%である。
-比較例10と実施例4との比較では、454kg/m3から277kg/m3、すなわち約39%である。
【0078】
真空断熱パネルのコア材料としての使用については、異なる繊維の全体密度のデータは、それ自体で比較すべきではないことを念頭に置く必要がある。繊維1及び繊維2の異なる繊維形態は、VIP要素と対応するコア材料との熱特性の差をもたらす。
【0079】
改良された圧縮強度の主要な目標の他に、本発明による試験試料は、引張強度指数の増大を更に示した。しかしながら、圧縮強度の最適化により、その増加は、以下に記載する引張強度を最適化した製品と比較して、それほど有意ではなかった。
【0080】
引張強度指数を向上させた製品サンプル
【0081】
300g/m3の目標とする坪量を目指して、上記の動的法で、ガラス繊維1(マイクロネア18リットル/分)及び叩解ユーカリパルプ2、3、及び4を用いて、走行方向及び交差方向の両方における試験実施形態を作製した。比較例として、叩解繊維を添加しないガラス繊維1及びガラス繊維2からなる実施形態を作製した。
【0082】
pHの影響に関する知見を考慮して、比較例を含むすべての実施形態は、3の改善させたpHで製造された。
【0083】
試験したすべての実施形態について、上述の方法に従って、坪量、250Paの荷重での全体密度、及び引張強度指数(TSI)を測定した。走行方向における実施形態の値を、以下の表に要約する:
【0084】
表5:スラリーパラメーター、全体密度及びスラリーから製造されたマットの引張強度指数
【0085】
【0086】
叩解ユーカリパルプの種類及び濃度の関数としての引張強度指数も
図1に示す。見やすくするために、比較例2は、
図1には示していない。
【0087】
両方の比較例についての引張強度指数は非常に低いが、実施例5~15は、パルプ濃度及びSchopper-Riegler指数の両方に依存して、引張強度指数の定常的な増大を実証している。
【0088】
少なくとも1.5Nm/gの好ましい引張強度指数は、
図1のグラフでの表示に従う各パルプについてのパルプ含有率とSchopper-Riegler指数との組合せによって達成される。
【0089】
実施例7(7%パルプ2、SR69)、実施例10(7%パルプ3、SR83)及び実施例13(5%パルプ4、SR85)は、好ましいTSIを超える測定値を示している。
【0090】
改良された引張強度指数の主要な目標の他に、本発明による試験試料は、更に圧縮強度の増大を示していた。しかしながら、引張強度の最適化に起因して、特にVIPコアとしての用途については、増加は、上述の圧縮強度を最適化した製品のそれと比較して、それほど有意ではなかった。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1~16に記載する。
〈項目1〉以下を含む、ボード又はマットを製造する方法:
-無機繊維及びセルロース繊維を含む固形分を有する液体スラリーを作製すること、
-少なくとも1つの有孔要素上、好ましくは移動している有孔要素上に、前記スラリーからウェブを作製すること、
-前記ウェブから水を抽出すること、及び
-前記ウェブを乾燥させて製品を作ること
ここで、前記方法は、以下を特徴とする:
-前記無機繊維及び前記セルロース繊維を含むスラリーのpHが、2~6の範囲にあること、並びに
-前記セルロース繊維のISO 5267によるSchopper-Riegler指数が、50以上であること。
〈項目2〉前記セルロース繊維の、ISO 5267によるSchopper-Riegler指数が60以上、及び/又はISO 5267によるSchopper-Riegler指数が100以下であることを特徴とする、項目1に記載の方法。
〈項目3〉前記pHの値が、3~5、特に3~4の範囲にあることを特徴とする、項目1又は2に記載の方法。
〈項目4〉前記pH値を、酸解離定数pKaが3以下の強酸により調整することを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
〈項目5〉前記無機繊維が、ミネラルウール繊維、すなわちグラスウール、ストーンウール又はスラグウール繊維であり、好ましくは回転法又はノズルブラスト法によって製造されるミネラルウール繊維であることを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
〈項目6〉前記セルロース繊維が、パルプ繊維、特に、トウヒ、マツ、モミ、ラーチ、及びヘムロックなどの針葉樹、並びにユーカリ、アスペン、及びカバノキなどの広葉樹からの木材パルプ、特に、トウヒ、マツ、モミ、ラーチ、及びヘムロックなどの針葉樹、並びにユーカリ、アスペン、及びカバノキなどの広葉樹からの化学漂白クラフト木材パルプであることを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
〈項目7〉前記無機繊維のマイクロネアが、20リットル/分以下、好ましくは12リットル/分以下、特に8リットル/分以下であることを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
〈項目8〉前記無機繊維が、固形分の90重量%以上、好ましくは92~98重量%、最も好ましくは94~98重量%であり、かつ前記セルロース繊維が、固形分の0重量%超10重量%未満、好ましくは2~8重量%、最も好ましくは2~6重量%であることを特徴とする、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
〈項目9〉前記スラリーが、追加のバインダーを全く含まないことを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
〈項目10〉前記スラリーが、バインダーを含み、好ましくは~バインダー固体物質を含まないスラリーの固形分100重量部に対して、バインダー固体物質4重量部以下の質量関係でバインダーを含むことを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
〈項目11〉項目1~10のいずれか一項に記載の方法により製造した製品。
〈項目12〉1バールの圧縮に曝された前記製品の全体密度の増大が、250Paの圧縮に曝された製品の全体密度の150%未満、好ましくは100%未満であることを特徴とする、項目11に記載の製品。
〈項目13〉1バールの圧縮に曝された前記製品の全体密度が、250kg/m
3
以下、好ましくは200kg/m
3
以下、最も好ましくは180kg/m
3
以下であることを特徴とする、項目11又は12に記載の製品。
〈項目14〉引張強度指数が、少なくとも1.5Nm/g、好ましくは少なくとも2.0m/g、最も好ましくは少なくとも2.5Nm/gであることを特徴とする、項目11に記載の製品。
〈項目15〉真空断熱パネルの芯材としての、項目11~13のいずれか一項に記載の製品の使用。
〈項目16〉フィルター材料として、特に濾紙として、又は電池セパレーターとしての、項目11又は14に記載の製品の使用。