(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ターボ膜O2源を用いた向上させられた半密閉サイクル
(51)【国際特許分類】
F02C 1/08 20060101AFI20241122BHJP
F02C 3/34 20060101ALI20241122BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F02C1/08
F02C3/34
F02C6/18 Z
(21)【出願番号】P 2021533562
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019066537
(87)【国際公開番号】W WO2020124078
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515052268
【氏名又は名称】エンハンスト エネルギー グループ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Enhanced Energy Group LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダン, ポール エム.
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533978(JP,A)
【文献】特表2013-537283(JP,A)
【文献】特開2001-271610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/08
F02C 3/34
F02C 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半密閉サイクル電力システムであって、
燃焼機関と、
酸素を透過し窒素を透過せず、空気を受け取り一方の吐出ポートにおいて酸素を生み出し、他方の吐出ポートにおいて窒素を生み出すように構成される膜ベースの酸素プラントと、
前記機関からの排ガスと水とを混合することで生じる冷却された排ガスから水を分離するように構成される排水セパレータ
(Sep1)と、
前記酸素プラントからの前記酸素と前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第1部分とを混合して前記機関のための人工大気作動流体を生成するように構成される混合容器
(M1)と、
前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第2部分を脱水し、前記脱水された排ガスを生成するように構成される分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)と、
前記脱水された排ガスからCO2を捕捉するように構成される分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)と、
前記酸素プラントからの前記窒素を、前記機関からの排ガスの熱によって加熱するように構成される排気向流熱交換器
(E1)と、
前記膜ベースの酸素プラントに空気を提供するように構成されるコンプレッサと、
前記排気向流熱交換器
(E1)において前記加熱された窒素を拡張させ、前記コンプレッサを駆動するように構成されるシャフト結合エクスパンダ
(EX1)と、
を備える、半密閉サイクル電力システム。
【請求項2】
前記分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)は、熱スイング吸着(TSA)プロセスで動作するように構成され、機関排気廃熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項1に記載の半密閉サイクル電力システム。
【請求項3】
前記分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)は、真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセス、圧力スイング吸着(PSA)プロセスの少なくとも1つで動作するように構成され、VPSAプロセス、PSAプロセスの前記少なくとも1つからの熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項2に記載の半密閉サイクル電力システム。
【請求項4】
前記膜ベースの酸素プラントに提供される前記空気は、前記コンプレッサによって、前記機関のターボチャージャーコンプレッサの出力圧力よりも高い圧力で提供されるように構成される、請求項1に記載の半密閉サイクル電力システム。
【請求項5】
前記機関は、機関ブースト圧で動作するように構成され、
前記膜ベースの酸素プラントのうち、透過側は、前記機関が動作する時の前記機関ブースト圧より高い圧力で動作するように構成される、請求項1に記載の半密閉サイクル電力システム。
【請求項6】
前記分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)は、複数のTSA層をさらに備え、
前記機関は、機関ブースト圧で動作するように構成され、
前記複数のTSA層の上流の、
システム圧力は、前記機関が動作する時の前記機関ブースト圧と等しい、請求項1に記載の半密閉サイクル電力システム。
【請求項7】
システムであって、
機関ブースト圧で動作するように構成される燃焼機関であって、前記機関が圧縮された空気を冷却するように構成される最終冷却器を備える、燃焼機関と、
酸素を透過し窒素を透過せず、前記冷却された空気を受け取り、一方の吐出ポートにおいて酸素を生み出し、他方の吐出ポートにおいて窒素を生み出すように構成される膜ベースの酸素プラントであって、前記膜ベースの酸素プラントのうち、透過側が、前記機関が動作する時の前記機関ブースト圧より高い圧力、および前記機関が動作する時の最終冷却器吐出温度より低い温度で動作するように構成される、膜ベースの酸素プラントと、
前記機関からの排ガスと水とを混合することで生じる冷却された排ガスから水を分離するように構成される排水セパレータ
(Sep1)と、
前記酸素プラントからの前記酸素と前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第1部分とを混合して前記機関のための人工大気作動流体を生成するように構成される混合容器
(M1)と、
前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第2部分を脱水し、前記脱水された排ガスを生成するように構成される分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)と、
前記脱水された排ガスからCO2を捕捉するように構成される分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)と、
を備える、システム。
【請求項8】
前記分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)は、熱スイング吸着(TSA)プロセスで動作するように構成され、機関排気廃熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)は、真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセス、圧力スイング吸着(PSA)プロセスの少なくとも1つで動作するように構成され、VPSAプロセス、PSAプロセスの前記少なくとも1つからの熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)は、複数のTSA層をさらに備え、
前記複数のTSA層の上流の、システム圧力は、前記機関が動作する時の前記機関ブースト圧と等しい、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記酸素プラントからの前記窒素を、前記機関からの排ガスの熱によって加熱するように構成される排気向流熱交換器
(E1)と、
前記膜ベースの酸素プラントに空気を提供するように構成されるコンプレッサと、
前記排気向流熱交換器
(E1)において前記加熱された窒素を拡張させ、前記コンプレッサを駆動するように構成されるシャフト結合エクスパンダ
(EX1)と、
をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記膜ベースの酸素プラントに提供される前記空気は、前記コンプレッサによって、前記機関のターボチャージャーの出力圧力とほぼ等しい圧力で提供されるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
システムであって、
機関ブースト圧で動作するように構成される燃焼機関と、
酸素を透過し窒素を透過せず、空気を受け取り一方の吐出ポートにおいて酸素を生み出し、他方の吐出ポートにおいて窒素を生み出すように構成される膜ベースの酸素プラントであって、前記膜ベースの酸素プラントのうち、透過側が、前記機関が動作する時の前記機関ブースト圧より高い圧力で動作するように構成される、膜ベースの酸素プラントと、
前記機関からの排ガスと水とを混合することで生じる冷却された排ガスから水を分離するように構成される排水セパレータ
(Sep1)と、
前記酸素プラントからの前記酸素と前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第1部分とを混合して前記機関のための人工大気作動流体を生成するように構成される混合容器
(M1)と、
前記排水セパレータ
(Sep1)からの冷却された排ガスの第2部分を脱水し、前記脱水された排ガスを生成するように構成される分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)と、
前記脱水された排ガスからCO2を捕捉するように構成される分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)であって、複数のTSA層の上流の、
システム圧力が、前記機関ブースト圧と等しく、前記機関ブースト圧と等しい前記
システム圧力が、前記複数のTSA層のうち1つまたは複数の必要サイズを低減させる、分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)と、
を備える、システム。
【請求項14】
前記分子篩ベースの脱水ユニット
(3_Bed_TSA)は、熱スイング吸着(TSA)プロセスで動作するように構成され、機関排気廃熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記分子篩ベースの捕捉ユニット
(3_Bed_VPSA)は、真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセス、圧力スイング吸着(PSA)プロセスの少なくとも1つで動作するように構成され、VPSAプロセス、PSAプロセスの前記少なくとも1つからの熱は、複数のTSA層のうち1つを
再生させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記酸素プラントからの前記窒素を、前記機関からの排ガスの熱によって加熱するように構成される排気向流熱交換器
(E1)と、
前記膜ベースの酸素プラントに空気を提供するように構成されるコンプレッサと、
前記排気向流熱交換器
(E1)において前記加熱された窒素を拡張させ、前記コンプレッサを駆動するように構成されるシャフト結合エクスパンダ
(EX1)と、
をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記膜ベースの酸素プラントに提供される前記空気は、前記コンプレッサによって、機関ターボチャージャーの出力圧力とほぼ等しい圧力で提供されるように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コンプレッサは、約15ポンド毎平方インチゲージ(psig)のブースト圧を送達するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、主題が本明細書と矛盾しない範囲で、以下の列挙された出願(単数または複数)(「関連出願」)の全ての主題に関連し、それらの関連出願からの最も早い利用可能な有効出願日(単数または複数)を主張し(例えば、仮特許出願以外の最も早い利用可能な優先日を主張する、仮特許出願に関する35 U.S.C. Section 119(e)(米国特許法第119条(e))下の利益を主張し)、かつ、それらの関連出願を参照することによってその全体として援用し、本出願はまた、主題が本明細書と矛盾しない範囲で、関連出願(単数または複数)の親出願、祖父出願、曾祖父出願等の出願のいずれかおよび全ての主題の全てからの最も早い利用可能な有効出願日(単数または複数)を主張し、それらを参照することによってその全体として援用する。
2018年12月14日に出願されたPaul M. Dunnを発明者とする「Improved Semi-Closed Cycle with Turbo Membrane O2 Source」と題された米国仮特許出願第62/779533号。
【0002】
1.使用分野
本発明は、概して、半密閉サイクル電力システムに関し、より具体的には、炭素捕捉機器を含むかまたは少なくとも濃縮排気CO2レベルを有し、より低いコストのCO2捕捉機器が採用されることを可能にする電力システムに関する。さらに、本発明は、酸素プラントに関し、具体的には、膜酸素プラントの特定の電力を低減させ、膜酸素プラントを真空圧力スイング吸着(VPSA)酸素プラントとの競合力があるものにするための対応する方法を用いる膜酸素プラントに関する。
【背景技術】
【0003】
2.従来技術の説明(背景)
従来の電力システムは、内燃式であるかまたは外燃式であるかにかかわらず、空気とともに燃料を焼やし、概して、未処理の燃焼生成物(排ガス/煙道ガス)を空気に(または水中界面を介して空気に)通気する。これは、天然ガス、ガソリン、および軽油のピストン型機関に当てはまり、また、ガスタービン、ジェット機関、またはさらに蒸気ボイラベースの電力プラントにも当てはまる。
【0004】
空気への未処理の煙道ガスの放出は、実行することは単純であるが、環境上の理由から望ましくない。SO2、NOx、CO、HC(未燃炭化水素)、および、ごく最近ではCO2等のガスが、汚染物質として定義され、抄出が規制される。加えて、特殊目的の用途のために、特に、海中用途のために、システム排気圧力を周辺圧力(高い背圧)に拘束するための要求が、機関サイクルの効率を有意に低下させ得る。
【0005】
歴史的に、(1900年代前半における)種々のクローズドまたは半密閉電力システムに関する先行研究は、大部分が、特殊目的用途に関連していた。ごく最近では、先行研究は、大部分が、より高効率を提供し、かつ/または放出物、特にCO2を効率的に制御し、もしくはシステム放出物を捕捉さえもするための能力についてのものである。本発明者による第US 9,194,340 B2号もまた、関連特許の経過および引用を提供する。
【0006】
最初に、隔離、貧困、または戦争の結果としての従来の燃料の入手不可能性に起因して、および近年は、再生可能燃料を使用したいという要望から、熱分解およびガス化システムの無数の手直し、研究、特許、および商品化が、存在しており、それらの大部分は、高温熱分解を介して、機関内で燃焼させられることができないかまたは容易に燃焼させられない利用可能な原料または燃料(石炭、固体廃棄物、木材廃棄物、紙、プラスチック)を、機関内で容易に燃焼させられる少なくとも1つの成分(概して合成ガス)に分解する。
【0007】
熱分解およびガス化システムは、概して、2つのカテゴリ、すなわち、持続的給送機械またはバッチ(オートクレーブ)タイプ機械に分類される。好ましい機械は、原料、および、かなりの程度まで、その原料がコンベヤ、スクリュー、または他の手段によって反応区域の中に効率的に搬送され得るかどうかに依存し、可能である場合、持続的給送タイプ機械が好ましい。親特許および子特許を伴う第US 8,784,616 B2号は、本分野における10件超の特許および非特許文献への引用の完全なセットを提供する。
【0008】
第PCT/US2018/000163号は、熱分解技術を統合しかつ向上させ、半密閉サイクル(SCC)の排気中の酸素レベルを低減させるための方法を開示し、これは、メトリックを向上させ、カーボンネガティブ電力システムを可能にした。
【0009】
3.最新技術を向上させるための動機
既存の半密閉サイクル電力システムおよび関連する先行技術は、有意な動作上の不利益を被る。先行技術文献において議論される酸素プラントは、たいてい、最も高い運用コストの電力システムであり、生み出される正味電力の有意な部分を消費する。さらに、電力システムの低背圧が、排気中の水蒸気の大部分をもたらし、これは、未加工CO2流が脱水されなければならないため、機関動作を複雑にしながら、また、ガス浄化システム要件も複雑にする。
【0010】
加えて、ガス浄化システムは、分子篩ベースであるとき、排気圧力を(熱スイング吸着(TSA)または真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセスのために)分子篩が効果的であるレベルまで増加させるために、高馬力吹送機を要求する。最後に、TSAプロセスは、吸着層を再発生させるために、有意な量の高温乾燥ガスを要求する。
【0011】
先行技術から理解され得るように、電力システムが非放出状態になり、かつ/または環境へのより少ない悪影響を有するさらなる要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第9194340号明細書
【文献】米国特許第8784616号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1)補助システムを動作させるためにより少ない生み出された電力を消費する半密閉サイクルプロセスの効率を向上させること、2)酸素発生(窒素除去)システムの資本コストを低減させること、3)VPSA酸素プラントより良好ではない場合膜酸素プラントを競合力のあるものにする膜酸素プラントと関連付けられる圧縮電力を低減させること、4)半密閉サイクルのCO2ガス浄化システムと関連付けられるサイズ、複雑性、および寄生電力を低減させることを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明として見なされる主題は、特に、本明細書の結論における請求項において指摘され、明確に主張される。本発明の前述のことおよび他の物体、特徴、ならびに利点は、付随の図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明白である。
【0015】
【
図1】
図1(先行技術)は、VPSAベースの酸素発生および分子篩ベースのガス浄化システムを有する半密閉サイクルで動く公称上400kW、~600hpのピストン型機関のシミュレーションフローシートである。
【0016】
【
図2】
図2は、本明細書で議論される本発明の膜ベースの酸素発生システムと特別な特徴とを有する半密閉サイクルで動く同一の公称上400kW、~600hpのピストン型機関のシミュレーションフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の用語の簡略的定義は、本出願の全体を通して適用されるものとする。
【0018】
用語「comprising(~を備える)」は、「限定ではないが、~を含む」ことを意味し、典型的に本特許の文脈の中で使用される態様として解釈されるべきである。
【0019】
語句「in one embodiment(一実施形態では)」、「according to one embodiment(一実施形態に従って)」、および同等のものは、概して、その語句に続く特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得、本発明の複数の実施形態に含まれ得ることを意味する(重要なこととして、そのような語句は、必ずしも同一の実施形態を指すわけではない)。
【0020】
本明細書が、「exemplary(例示的)」または「example(例)」として何かを説明する場合、それは、非排他的な例を指すことを理解されたい。
【0021】
本明細書が、構成要素または特徴が「preferably(好ましくは)」、「possibly(可能ならば)」、「typically(典型的には)」、「optionally(随意に)」、「for example(例えば)」、含まれもしくはある特性を有「し得る(may)」、「することができる(can)」、「し得る(could)」、「するべきである(should)」、または「する場合がある(might)」(もしくは他のそのような文言)と記載する場合、その特定の構成要素または特徴が含まれまたはその特性を有することは、要求されていない。
【0022】
本発明は、ここで、本発明の例証的実施形態が示される付随の図面を参照してより完全に説明される。下記に説明される例証的実施形態は、当業者によって理解されるような種々の形態で具現化され得る本発明の例示にすぎないため、本発明は、例証される実施形態にいかようにも限定されない。したがって、本明細書に開示されるいかなる構造的詳細および機能的詳細も、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に請求項の基礎として、かつ、本発明を様々に採用するために当業者に教示するための代表として解釈されるべきであることを理解されたい。さらに、本明細書に使用される用語および語句は、限定することを意図しておらず、むしろ、本発明の理解可能な説明を提供することを意図する。
【0023】
ある範囲の値が提供される場合、文脈が明確に別様に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間、およびその記載された範囲内の任意の他の記載されまたは介在する値の、下限の単位の10分の1までの各介在値が、本発明内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立して含まれ得、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限定を条件として、本発明内に包含される。記載される範囲が限定値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限定値のうちのいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0024】
別様に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に説明されるものに類似しまたはそれと同等であるいかなる方法および材料もまた、本発明の実践もしくは試験において使用され得るが、例示的方法および材料が、ここに説明される。本明細書に述べられる文献は全て、それらの文献が引用されるものに関連する方法および/または材料を開示し、説明するために、参照することによって本明細書に援用される。
【0025】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数の指示物を含むことを理解されたい。したがって、例えば、「a stimulus(1つの刺激)」の言及は、複数のそのような刺激を含み、「the signal(信号)」の言及は、1つ以上の信号および当業者に公知のその同等物を含む。
【0026】
本発明は、概して、半密閉サイクルにおける圧縮点火、火花点火、リッチバーン式もしくはリーンバーン式の往復ピストン型機関、またはリーンバーン式のガスタービンを動作させるシステムに関し、このシステムは、非放出型の態様であり、随意に、熱分解を介してそれ自体の燃料または他のもののための燃料を処理する間、ある圧力および電力においてCO2を含むような生成物を生み出す。
【0027】
ある圧力におけるCO2が、プロセスのために要求される。石油増進回収法は、そのようなプロセスのある例である。さらに、本発明のシステムが、2ストロークまたは4ストロークピストン型機関、リッチバーン式もしくはリーンバーン式のロータリピストン型機関、または小型ガスタービンに適用可能であることを理解されたい。
【0028】
(燃焼プロセスのためにより長い時間を要する)中速機関、特に、高「ブースト」(インテークマニホールド)正味平均有効圧力における動作に耐性がある機関(中速対向ピストン型機関または頑丈な低~中速4ストローク機関等)は、サイクルに適しているが、本発明は、そのような中速機関に限定されるものと理解されるべきではない。
【0029】
ここで説明のために、いくつかの図の全体を通して類似の参照記号が類似の要素を示す図面に目を向ける。
【0030】
図1は、包括的SCC電力システムの基本構成要素を図式的に例証し、システムは、N2除去部(酸素プラント)と、ガス浄化システム(GCS)と、生成物圧縮部とを含む。
図1を参照すると、混合器M4までつながる構成要素O2_VAC、O2_BLWR、O2_Beds、ならびに関連付けられる熱交換器および弁が、VPSA酸素プラントの簡略化された図を表している。第PCT/US2018/000163号および他の先行技術に開示されるように、空気が、圧縮され、窒素、CO2、水、ならびに他の汚染物質を吸着する(典型的に2つまたは3つの)層を通って流れ、酸素アルゴン混合物(典型的に88~93%が酸素であり残りがアルゴンおよび窒素である)をもたらす。定期的に、層は、窒素中に装填され、これは、次いで、真空を介して除去され、生成酸素の一部をパージする。
【0031】
図1に示されるように、88%の純度の1日あたり約6.5トンのO2生成物が、約84hpの総機械的寄生負荷で混合器M4に送達される。この高純度酸素は、空気と混合され、M4の吐出において35.5%純度の酸素、窒素、およびアルゴンの混合物を発生させる。
【0032】
CP1とEX1との間の構成要素は、機関を表す。CP1は、約15psigのブースト圧(30psia)を送達するターボチャージャコンプレッサであり、C7は、高温のコンプレッサ排気を300°Fまで冷却する最終冷却器であり、M2は、典型的にインテークマニホールド内で生じる燃料と作動流体との混合を表し、コンプレッサTCSは、ピストン型機関(またはガスタービンのコンプレッサ)の総圧縮ストロークの和を表し、C8は、機関のその部分における熱損失を表し、ERx1は、燃焼、モデル化化学平衡、および付加的な熱損失を表し、TPSおよびEX1は、総電力ストロークおよびターボチャージャタービンの作動を表す。このシミュレーションは、特定のリッチバーン式ターボチャージャ付きの天然ガスピストン型機関に関する(ターボチャージャからの)排気温度および機関ポート(ターボチャージャ入口)の排気温度を正確に予測する。
【0033】
あるピストン型機関の例が、本明細書においてモデル化されたが、全体的排気成分、半密閉サイクル方法、ならびに、ガス浄化および酸素発生要件が、類似の排気温度を伴う小型の産業用ガスタービンにも等しく適用されることを認識されたい。
【0034】
先行技術において議論されているように、水が、M5において排気中に噴霧され、Sep1において分離され、M1を介して機関入口まで戻るように循環させられる冷却された排気(110°F以下)をもたらす。排気は、VPSA/空気混合器M4からの公称上35%のO2と混合させられ、機関のために21~22%の酸素を生産する。この機関動作の方法は、排気CO2濃度を効率的にほぼ倍増させ、コスト効率的な炭素捕捉を可能にする。
【0035】
GCSは、成分を含み、その成分は、SP1において開始し、排気を脱水する3_Bed_TSA、および精製されたCO2を捕捉する3_Bed_VPSAを介して、CO2_Stage_3における最終段階のCO2圧縮で終了する。
【0036】
CO2圧縮を除いて、公称上600hpの機関の正味電力が、84hpのO2プラント負荷、および32hpのTSA吹送機負荷によって低減させられていることに留意されたい。さらに、吹送機吐出熱交換器C3と、TSA吐出熱交換器C5と、TSA層の再発生と関連付けられる熱とを含むようにシステムに負担をかける有意な熱負荷が存在することに留意されたい。典型的には、冷凍器および機関からの排気廃熱の有用な捕捉が、これらの加熱および冷却要件に提供するように採用される。例えば、このシステムのために定寸された冷凍器は、約30トンであり、さらに、機関の正味出力電力を約40hp以下に低減させる。
【0037】
図2は、N2除去部(酸素プラント)と、ガス浄化システム(GCS)と、生成物圧縮部とを含む向上させられたSCC電力システムの基本構成要素を図式的に例証する。
図2を参照すると、構成要素O2_VAC、O2_BLWR、O2_Beds、および関連付けられたアイテムが、
図1から除去されており、膜酸素発生器に置き換えられている。
【0038】
膜酸素発生システムは、商業的に利用可能であり、VPSA O2プラントより低コストである。しかしながら、膜プラントは、同一の酸素含有量を生み出し、より低い純度のその酸素含有量を生み出するために、より高い圧力のより多くの空気流を要求する。本明細書に示されるように、膜は、
図1のVPSAの14psigおよび3,200lbm/hrと比較して、132psia(117psig)および4,000lb/hrの空気を受け取っている。結果として、膜のために要求される圧縮力は、通常、この用途のためには高すぎ、それが従来の方法で提供された場合、200hp超となり得る。
【0039】
本明細書に開示される膜は、選択的膜要素を介して動作し、選択的膜要素は、酸素、CO2、および水のような「高速ガス」を通過させ、多くの窒素またはアルゴンを通過させない。膜は、132psiaの空気を受け取り、1つの吐出ポートにおいて95%純度の122psiaの乾燥窒素を生み出す(1,766lbm/hr)。他方のポートである透過側(2,233lbm/hr)は、より低圧力であり、この例では、30psiaであり、35%の酸素である。
【0040】
前述のように、22%の混合O2純度でのM1における流量は、3,600lb/hr以下であり、これは、機関が動作するために必要とするものであり、差異は、これが、ここで、大気圧ではなく、30psia以下であることである。結果として、機関ターボチャージャおよび最終冷却器は、除去されており、機関は、要求される圧力、およびわずかにより低い温度(107°F)の作動流体を受け取り、これは、性能を向上させ、ノックを低減させる。
【0041】
ターボチャージャタービン入口であった機関排気圧力は、実際には、ターボチャージャを用いるものよりわずかに高いが、依然として、機関能力に一貫している。機関質量流量および排気ポート温度は、ターボチャージャおよびVPSAベースのO2プラントを用いるものよりわずかに高いが、有意に高いわけではない。
【0042】
高温排気は、ここで、前述のようなSCCおよびGCS機器の残りを通して進行する前に、新しい構成要素である向流熱交換器E1を介して流れる。
【0043】
膜プラントに戻ると、膜は、4,000lb/hrで132psiaの空気を要求する。単一の浸油スクリューコンプレッサを使用することではなく、スクリューに先立って第1段階コンプレッサとして機能しているターボチャージャコンプレッサCP1のように見えるものが、存在する。この構成要素は、空気を110°Fまで冷却し戻すC1に、55psiaの空気を提供するために、120hpを消費している。これは、CP2において要求される力を200hp以下から75hpに低減させる。したがって、膜酸素源のためのCP2コンプレッサ要件は、ここで、VPSA酸素源のための先行技術電力要件未満である。
【0044】
膜出力の高圧乾燥窒素側が、向流熱交換器E1を介して加熱され、CP1に直接結合されるターボチャージャ様エクスパンダEX1を介して拡張される。事実上、膜をターボチャージする代わりに、機関ターボチャージャを除去することは、依然として、圧縮された作動流体のための機関要件を充足する。EX1を横断した圧力降下は、105psiにおける典型的なターボチャージャより高い。EX1は、1または2段階コンプレッサを駆動する2段階ターボチャージャエクスパンダであり得る。EX1の段階1と段階2との間で再加熱することもまた可能であり、これはさらに、メトリックを向上させ得る。
【0045】
SP1におけるSCC圧力は、ここで、30psia対14.7psiaの機関ブースト圧にある。したがって、水蒸気濃度は、8.6%から4.3%まで低減させられる。これは、3_Bed_TSAにおける層のサイズを低減させる。
【0046】
より有意に、32hpであったTSA吹送機電力は、ここで、本質的にはゼロhpとなる。シミュレーションは、これが2hpにあることを示すが、事実上、吹送機は、実際にはここでは再循環流のための制御機構として動作しており、弁に置き換えられ得る。
【0047】
最後に、EX1エクスパンダからの排気は、依然として、付加的な構成要素を要求することなく、TSA層を再発生させるために十分な高温(650°F)にあり、十分に乾燥している(-40霧点)。
【0048】
CO2圧縮が約~40hpだけ向上させられたことを除いて、正味電力は、この例である。加えて、冷凍器要件を駆動する水負荷が、有意に低減させられる。