(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/15 20230101AFI20241122BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241122BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241122BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20241122BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241122BHJP
【FI】
H10K50/15
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K85/30
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2021553438
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039313
(87)【国際公開番号】W WO2021079856
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019192483
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
(72)【発明者】
【氏名】チャ スンウク
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジファン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0078482(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0053768(KR,A)
【文献】特開2018-065806(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106866498(CN,A)
【文献】特開2004-204238(JP,A)
【文献】特開2020-083896(JP,A)
【文献】特開2020-136675(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0088235(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0077860(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(1)
(式中、R
1、R
2は重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。R
3は水素
原子を表し、A
1は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、Ar
1~
Ar
2
は置換もしくは無置換の
フェニル基、置換もしくは無置換のビフェニリル基、置換もしくは無置換のターフェニリル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のアントラセニル基、置換もしくは無置換のフルオレニル基、置換もしくは無置換のインデニル基、置換もしくは無置換のピレニル基、置換もしくは無置換のペリレニル基、置換もしくは無置換のフルオランテニル基、置換もしくは無置換のトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、置換もしくは無置換のトリアジニル基、置換もしくは無置換のフリル基、置換もしくは無置換のピロリル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換のイソキノリル基、置換もしくは無置換のベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のベンゾオキサゾリル基、置換もしくは無置換のベンゾチアゾリル基、置換もしくは無置換のキノキサリニル基、置換もしくは無置換のベンゾイミダゾリル基、置換もしくは無置換のピラゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のジベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のナフチリジニル基、置換もしくは無置換のフェナントロリニル基、置換もしくは無置換のアクリジニル基、または置換もしくは無置換のカルボリニル基を表し、
Ar
1
~Ar
2
が置換基を有する場合の置換基は重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、アルケニル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基、芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基、芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基、または芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基であり、Ar
3
は置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニリル基、置換もしくは無置換のターフェニリル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のアントラセニル基、置換もしくは無置換のインデニル基、置換もしくは無置換のピレニル基、置換もしくは無置換のペリレニル基、置換もしくは無置換のフルオランテニル基、置換もしくは無置換のトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、置換もしくは無置換のトリアジニル基、置換もしくは無置換のフリル基、置換もしくは無置換のピロリル基、置換もしくは無置換のチエニル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換のイソキノリル基、置換もしくは無置換のベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のインドリル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のベンゾオキサゾリル基、置換もしくは無置換のベンゾチアゾリル基、置換もしくは無置換のキノキサリニル基、置換もしくは無置換のベンゾイミダゾリル基、置換もしくは無置換のピラゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のジベンゾチエニル基、置換もしくは無置換のナフチリジニル基、置換もしくは無置換のフェナントロリニル基、置換もしくは無置換のアクリジニル基、または置換もしくは無置換のカルボリニル基を表し、Ar
3
が置換基を有する場合の置換基は重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、アルケニル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基、芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基、芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基、または芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基であり、r
1、r
2は
0を表す。)
【請求項2】
前記正孔輸送層が、第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第二正孔輸送層が前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が下記一般式(1a)で表されるアリールアミン化合物であることを特徴とする、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
(1a)
(式中、A
1及びAr
1~Ar
3は前記一般式(1)で定義する通りである。)
【請求項4】
前記一般式(1)または一般式(1a)において、Ar
3が置換もしくは無置換のフェニル基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記一般式(1)または一般式(1a)において、A
1が置換もしくは無置換のベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層が、青色発光性ドーパントを含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記青色発光性ドーパントが、分子中にピレン骨格を有するピレン誘導体であることを特徴とする、請求項6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記青色発光性ドーパントが、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】
(2)
【化4】
(3)
(一般式(2)及び一般式(3)中、Q
1~Q
3は相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族、または置換もしくは無置換の芳香族複素環を表す。XはB、P、P=O、またはP=Sを表す。Y
1~Y
3は相互に同一でも異なってもよく、N-R
4、CR
5R
6、O、S、SeまたはSiR
7R
8の中から選択されるいずれか1つであり、そのR
4~R
8は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。また、R
5とR
6、R
7とR
8はそれぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Y
1~Y
3がN-R
4、CR
5R
6、またはSiR
7R
8の場合、R
4~R
8はそれぞれ隣接するQ
1、Q
2またはQ
3と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、
または一置換アミノ
基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項9】
前記発光層が、分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体を含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記発光層が、前記分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体であるホスト材料を含有することを特徴とする、請求項9記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものであリ、詳しくは特定のアリールアミン化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献1~3参照)
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率良く発光層に受け渡すかが重要であり、キャリアバランスに優れた素子とする必要がある。また、正孔注入性を高め、陰極から注入された電子をブロックする電子阻止性を高めることによって、正孔と電子が再結合する確率を向上させ、更には発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や種々の芳香族アミン誘導体が知られていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こってしまう(例えば、非特許文献4参照)。
また、前記特許文献に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10-3cm2/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られているが(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないなど、更なる高効率化のため、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。また、耐久性の高い芳香族アミン誘導体の報告があるが(例えば、特許文献3参照)、電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料として用いたもので、有機EL素子として用いた例はなかった。
【0010】
耐熱性や正孔注入性などの特性を改良した化合物として、置換カルバゾール構造を有するアリールアミン化合物が提案されているが(例えば、特許文献4および特許文献5参照)、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、耐熱性や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
有機EL素子の素子特性の改善や素子作製の歩留まり向上のために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、正孔および電子が高効率で再結合できる、発光効率が高く、駆動電圧が低く、長寿命な素子が求められている。
【0012】
また、有機EL素子の素子特性を改善させるために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、キャリアバランスのとれた高効率、低駆動電圧、長寿命な素子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平8-048656号公報
【文献】特許第3194657号公報
【文献】特許第4943840号公報
【文献】特開2006-151979号公報
【文献】国際公開第2008/62636号
【文献】国際公開第2014/009310号
【非特許文献】
【0014】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】有機EL討論会第三回例会予稿集13~14ページ(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、正孔の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、や耐久性に優れた有機EL素子用の材料を提供し、さらには、該材料および、正孔および電子の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性に優れた有機EL素子用の各種材料を、それぞれの材料が有する特性が効果的に発揮できるように組み合わせることで、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を提供することにある。
【0016】
本発明が提供しようとする有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)正孔の注入特性が良いこと、(2)正孔の移動度が大きいこと、(3)電子阻止能力に優れていること、(4)薄膜状態が安定であること、(5)耐熱性に優れていることをあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、(4)長寿命であること、をあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、特定の構造を有するアリールアミン化合物が、正孔の注入・輸送能力、薄膜の安定性および耐久性に優れている点に着目し、種々のアリールアミン化合物を選択して、有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明者らは、特定の構造を有するアリールアミン化合物を正孔輸送層の材料として選択すると、陽極側から注入された正孔を効率良く輸送できるという知見を得た。更に、特定の構造を有する発光材料等を組み合わせた種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
【0019】
1)少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極をこの順に有する有機EL素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする有機EL素子。
【0020】
【0021】
(式中、R1、R2は重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。R3は水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。A1は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、Ar1~Ar3は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。r1、r2は0~4の整数を表す。)
【0022】
2)前記正孔輸送層が、第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第二正孔輸送層が前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、前記1)記載の有機EL素子。
【0023】
3)前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が下記一般式(1a)で表されるアリールアミン化合物であることを特徴とする、前記1)または2)記載の有機EL素子。
【0024】
【0025】
(式中、A1およびAr1~Ar3は前記一般式(1)で定義する通りである。)
【0026】
4)前記一般式(1)または一般式(1a)において、Ar3が置換もしくは無置換のフェニル基であることを特徴とする、前記1)~3)のいずれかに記載の有機EL素子。
【0027】
5)前記一般式(1)または一般式(1a)において、A1が置換もしくは無置換のベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基(フェニレン基)であることを特徴とする、前記1)~4)のいずれかに記載の有機EL素子。
【0028】
6)前記発光層が、青色発光性ドーパントを含有することを特徴とする、前記1)~5)のいずれかに記載の有機EL素子。
【0029】
7)前記青色発光性ドーパントが、分子中にピレン骨格を有するピレン誘導体であることを特徴とする、前記6)記載の有機EL素子。
【0030】
8)前記青色発光性ドーパントが、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、前記6)記載の有機EL素子。
【0031】
【0032】
【0033】
(一般式(2)および一般式(3)中、Q1~Q3は相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族、または置換もしくは無置換の芳香族複素環を表す。XはB、P、P=O、またはP=Sを表す。Y1~Y3は相互に同一でも異なってもよく、N-R4、CR5R6、O、S、SeまたはSiR7R8の中から選択されるいずれか1つであり、そのR4~R8は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。また、R5とR6、R7とR8はそれぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Y1~Y3がN-R4、CR5R6、またはSiR7R8の場合、R4~R8はそれぞれ隣接するQ1、Q2またはQ3と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、一置換アミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0034】
9)前記発光層が、分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体を含有することを特徴とする、前記1)~8)のいずれかに記載の有機EL素子。
【0035】
10)前記発光層が、前記分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体であるホスト材料を含有することを特徴とする、前記9)記載の有機EL素子。
【0036】
一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。
【0037】
一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。
【0038】
一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0039】
一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。
【0040】
一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。
【0041】
一般式(1)中のA1で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」の「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」としては、具体的に、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
【0042】
そして、一般式(1)中のA1で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「芳香族炭化水素の2価基」、「芳香族複素環の2価基」または「縮合多環芳香族の2価基」としては、上記「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。また、これらの2価基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。
【0043】
一般式(1)中のAr1~Ar3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
【0044】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。
【0045】
一般式(1)または一般式(1a)において、A1としては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、またはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基が特に好ましい。
【0046】
一般式(1)または一般式(1a)において、Ar1としては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」、カルバゾリル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントラセニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基がより好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0047】
一般式(1)または一般式(1a)において、Ar2としては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントラセニル基、アントラセニル基、フルオレニル基がより好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0048】
一般式(1)または一般式(1a)において、Ar3としては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0049】
また、一般式(1)で表される化合物の中では、一般式(1a)で表される化合物がより好ましい。
【0050】
一般式(2)および一般式(3)中のQ1~Q3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」または「置換もしくは無置換の芳香族複素環」における「芳香族炭化水素」、「縮合多環芳香族」または「芳香族複素環」としては、具体的に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
【0051】
また、これらは置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0052】
一般式(2)および一般式(3)中のXはB、P、P=O、またはP=Sを表す。Bはホウ素原子、Pはリン原子、P=Oは酸素原子が二重結合で結合したリン原子、またはP=Sは硫黄原子が二重結合で結合したリン原子と定義する。
【0053】
一般式(2)および一般式(3)中のY1~Y3は相互に同一でも異なってもよく、N-R4、CR5R6、O、S、SeまたはSiR7R8の中から選択されるいずれか1つである。N-R4はR4を置換基として有する窒素原子、CR5R6はR5およびR6を置換基として有する炭素原子、Oは酸素原子、Sは硫黄原子、Seはセレン原子、またSiR7R8はR7およびR8を置換基として有するシリコン原子と定義する。なお、R4~R8の定義は更に下記の記載で詳細に説明する。
【0054】
一般式(2)および一般式(3)中のY1~Y3がN-R4、CR5R6、またはSiR7R8の場合、R4~R8で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。
また、これらは置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0055】
一般式(2)および一般式(3)中のY1~Y3がN-R4、CR5R6、またはSiR7R8の場合、R4~R8で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。
【0056】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換基を有する炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5~10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
【0057】
一般式(2)および一般式(3)中のY1~Y3がN-R4、CR5R6、またはSiR7R8の場合、R4~R8で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。
【0058】
一般式(2)および一般式(3)中のY1~Y3がN-R4、CR5R6、またはSiR7R8の場合、R4~R8で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)中のR1~R3で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」が有していてもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。
【0059】
一般式(2)および一般式(3)において、Q1~Q3の「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」または「置換もしくは無置換の芳香族複素環」における「芳香族炭化水素」、「縮合多環芳香族」または「芳香族複素環」としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ピリジン、ピリミジン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドールが好ましく、ベンゼン、ナフタレンがより好ましい。
【0060】
一般式(2)および一般式(3)において、Y1~Y3がN-R4、CR5R6またはSiR7R8である場合、R4~R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基であることが好ましく、R4は置換基を有していてもよい炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であることがより好ましい。
一般式(2)および一般式(3)において、Y1としては、N-R4、O、Sが好ましく、O、Sがより好ましい。また、一般式(2)および一般式(3)において、Y2とY3のうち少なくとも一方はN-R4であることが好ましく、両方ともがN-R4であることがより好ましい。R4としては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基がより好ましい。
【発明の効果】
【0061】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔輸送層の構成材料として使用することができる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、(1)正孔の注入特性が良い、(2)正孔の移動度が大きい、(3)電子阻止能力に優れている、(4)薄膜状態が安定であり、(5)耐熱性に優れている、という特性を有している。
【0062】
本発明の有機EL素子は、従来の正孔輸送材料より正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有し、優れたアモルファス性を有し、かつ薄膜状態が安定な、アリールアミン化合物を用いているため、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することが可能である。
【0063】
さらに、本発明においては、正孔輸送層を第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造とし、発光層側に位置する第二正孔輸送層を、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物により形成することによって、該アリールアミン化合物が有する電子阻止性能を最大限に活用することができ、より高効率で長寿命の有機EL素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-1~1-15の構造式を示す図である。
【
図2】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-16~1-20の構造式を示す図である。
【
図3】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-21~1-31の構造式を示す図である。
【
図4】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-32~1-42の構造式を示す図である。
【
図5】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-43~1-55の構造式を示す図である。
【
図6】一般式(1)で表されるアリールアミン化合物として、化合物1-56~1-64の構造式を示す図である。
【
図7】一般式(2)で表される化合物として、化合物2-1~2-15の構造式を示す図である。
【
図8】一般式(2)で表される化合物として、化合物2-16~2-22の構造式を示す図である。
【
図9】一般式(3)で表される化合物として、化合物3-1~3-8の構造式を示す図である。
【
図10】実施例17~29、比較例1~3の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を
図1~
図6に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0066】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(2)、または一般式(3)で表される化合物の中で、好ましい化合物の具体例をそれぞれ
図7~
図8、または
図9に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0067】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって行った。化合物の同定は、NMR分析によって行なった。物性値として、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行った。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性や電子阻止性の指標となるものである。その他、本発明の有機EL素子に用いられる化合物は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって精製を行った後、最後に昇華精製法によって精製したものを用いた。
【0068】
ガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定した。
【0069】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求めた。
【0070】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極からなるもの、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能であり、例えば正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。
本発明の有機EL素子の構造として、正孔輸送層が第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造であることが好ましく、この場合の第二正孔輸送層は発光層に隣接していることが好ましく、この場合、電子阻止層として機能することができる。
【0071】
本発明の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本発明の有機EL素子の正孔注入層として、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの種々のトリフェニルアミン誘導体;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料、などを用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0072】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層として、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が用いられる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物と混合もしくは同時に使用できる、正孔輸送性の材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)のほか、分子中にトリフェニルアミン構造を4個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、または分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などの種々のトリフェニルアミン誘導体などの有機アミン化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる
【0073】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献6参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0074】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層が第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造を有する場合、発光層側に位置する第二正孔輸送層としては、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物が用いられる。前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物と混合もしくは同時に使用できる、正孔輸送性の材料としては、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イル-フェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物をあげることができる。
【0075】
これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0076】
本発明の有機EL素子の発光層として、前記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物が好ましく用いられる。そのほか、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、その場合、ホスト材料として、分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体が好ましく用いられる。またドーパント材料としては、分子中にピレン骨格を有するピレン誘導体、前記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物が好ましく用いられるが、そのほか、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、およびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、インデノフェナントレン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
【0077】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては分子中にアントラセン骨格を有するアントラセン誘導体が好ましく用いられる。そのほか、正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0078】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0079】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3参照)
【0080】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0081】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0082】
本発明の有機EL素子の電子輸送層として、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0083】
本発明の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0084】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0085】
本発明の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0086】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0087】
<(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン(1-2)の合成>
反応容器に(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン:15.0g、9-(4-ブロモ-フェニル)-フェナンスレン:12.3g、tert-ブトキシナトリウム:4.8g、トルエン:240mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.3gを加えて4時間還流撹拌した。放冷した後、濾過して得た濾液を減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン溶媒による再結晶精製を行うことで、(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン(1-2)の白色粉体:18.7g(収率80%)を得た。
【0088】
【0089】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.81(1H)、8.76(1H)、8.11(1H)、8.09(1H)、7.92(4H)、7.80(1H)、7.77(2H)、7.75-7.58(5H)、7.57-7.48(4H)、7.48-7.30(7H)、7.27-7.14(10H).
【実施例2】
【0090】
<(4-ナフタレン-1-イル-フェニル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン(1-3)の合成>
反応容器に(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン:15.0g、1-(4-ブロモ-フェニル)-ナフタレン:9.4g、tert-ブトキシナトリウム:4.3g、トルエン:210mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.1gを加えて一晩還流撹拌した。放冷した後、濾過して得た濾液を減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、(4-ナフタレン-1-イル-フェニル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル-アミン(1-3)の白色粉体:15.9g(収率76%)を得た。
【0091】
【0092】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83(1H)、8.77(1H)、8.12(2H)、7.95(2H)、7.89(1H)、7.80(1H)、7.77-7.60(5H)、7.60-7.41(14H)、7.38(1H)、7.28-7.17(9H).
【実施例3】
【0093】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’;4’’,1’’’]クォーターフェニル-4’-イル-アミン(1-4)の合成>
反応容器にビフェニル-4-イル-(6-ブロモ-[1,1’;4’,1’’]ターフェニル-3-イル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-アミン:10.0g、フェニルボロン酸:2.5g、炭酸カリウム:3.6g、トルエン:80mL、エタノール:30mL、H2O:30mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.3gを加えて一晩還流撹拌した。放冷した後、分液操作にて有機層を分液抽出し、減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をジクロロメタン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’;4’’,1’’’]クォーターフェニル-4’-イル-アミン(1-4)の白色粉体:5.4g(収率54%)を得た。
【0094】
【0095】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.82(1H)、8.76(1H)、8.11(1H)、7.94(1H)、7.78(1H)、7.75-7.56(10H)、7.56-7.37(15H)、7.37-7.30(3H)、7.27-7.20(6H).
【実施例4】
【0096】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4’’-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル)-アミン(1-5)の合成>
反応容器にビフェニル-4-イル-(6-ブロモ-4’-ナフタレン-1-イル-ビフェニル-3-イル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-アミン:10.0g、フェニルボロン酸:2.3g、炭酸カリウム:3.4g、トルエン:80mL、エタノール:30mL、H2O:30mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.3gを加えて一晩還流撹拌した。放冷した後、分液操作にて有機層を分液抽出し、減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4’’-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル)-アミン(1-5)の白色粉体:2.8g(収率28%)を得た。
【0097】
【0098】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.82(1H)、8.76(1H)、8.13(1H)、7.91(4H)、7.79(1H)、7.76-7.58(8H)、7.58-7.39(14H)、7.39-7.25(11H).
【実施例5】
【0099】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4’’-ナフタレン-2-イル-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル)-アミン(1-6)の合成>
反応容器にビフェニル-4-イル-(6-ブロモ-4’-ナフタレン-2-イル-ビフェニル-3-イル)-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-アミン:10.0g、フェニルボロン酸:2.3g、炭酸カリウム:3.4g、トルエン:80mL、エタノール:30mL、H2O:30mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.3gを加えて一晩還流撹拌した。放冷した後、分液操作にて有機層を分液抽出し、減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をジクロロメタン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4’’-ナフタレン-2-イル-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’-イル)-アミン(1-6)の白色粉体:5.8g(収率58%)を得た。
【0100】
【0101】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83(1H)、8.77(1H)、8.14(1H)、8.05(1H)、7.91(4H)、7.79(1H)、7.78-7.59(11H)、7.59-7.34(12H)、7.34-7.22(9H).
【実施例6】
【0102】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,2’;1’,1’’;4’’,1’’’]クォーターフェニル-4’-イル-アミン(1-7)の合成>
反応容器にビフェニル-4-イル-[1,2’;1’,1’’;4’’,1’’’]-クォーターフェニル-4’-イル-アミン:14.5g、9-(4-ブロモ-フェニル)-フェナンスレン:9.3g、tert-ブトキシナトリウム:3.2g、トルエン:93mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.2gを加えて3時間還流撹拌した。放冷した後、H2Oを加え、析出した固体を濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をモノクロロベンゼン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,2’;1’,1’’;4’’,1’’’]クォーターフェニル-4’-イル-アミン(1-7)の白色粉体:14.0g(収率69%)を得た。
【0103】
【0104】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.84(1H)、8.77(1H)、8.14(1H)、7.90(1H)、7.80(1H)、7.78-7.60(10H)、7.60-7.33(17H)、7.33-7.20(7H).
【実施例7】
【0105】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;4’,1’’;2’’,1’’’:4’’’,1’’’’ ]キンクフェニル-4’’-イル-アミン(1-12)の合成>
実施例3のフェニルボロン酸に代えて、4-ビフェニルボロン酸を用いて同様の操作を行い、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;4’,1’’;2’’,1’’’:4’’’,1’’’’ ]キンクフェニル-4’’-イル-アミン(1-12)の白色粉体:8.0g(収率73%)を得た。
【0106】
【0107】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の43個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.76-8.84(2H)、8.12-8.14(1H)、7.94-7.96(1H)、7.79(1H)、7.60-7.75(12H)、7.42-7.56(18H)、7.28-7.39(8H).
【実施例8】
【0108】
<フェニル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミン(1-23)の合成>
反応容器に(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミン:13.3g、ブロモベンゼン:3.7g、tert-ブトキシナトリウム:3.1g、トルエン:130mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.2gを加えて22時間還流撹拌した。放冷した後、濾過して得た濾液を減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンおよびアセトン溶媒による再結晶精製を行うことで、フェニル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミン(1-23)の白色粉体:11.5g(収率77%)を得た。
【0109】
【0110】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.75-8.84(2H)、8.12-8.18(1H)、7.86-7.98(4H)、7.12-7.73(30H).
【実施例9】
【0111】
<フェニル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-2-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミン(1-24)の合成>
実施例8の(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-1-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミンに代えて、(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-2-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミンを用いて同様の操作を行い、フェニル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-(4-ナフタレン-2-イル-[1,1’;2’,1’’ ]ターフェニル-4’ -イル)-アミン(1-24)の白色粉体:9.3g(収率73%)を得た。
【0112】
【0113】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.75-8.83(2H)、8.08-8.12(2H)、7.88-7.95(4H)、7.62-7.79(8H)、7.23-7.54(20H)、7.14-7.16(1H).
【実施例10】
【0114】
<ナフタレン-1-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’,4’’,1’’’ ]クォーターフェニル-5’-イル-アミン(1-29)の合成>
反応容器に(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’,4’’,1’’’]クォーターフェニル-5’ -イル-アミン:20.0g、1-ブロモナフタレン:8.0g、tert-ブトキシナトリウム:5.0g、トルエン:200mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.4g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.7gを加えて2時間還流撹拌した。放冷した後、濾過して得た濾液を減圧下濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンおよびアセトン溶媒による再結晶精製を行うことで、ナフタレン-1-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’,4’’,1’’’]クォーターフェニル-5’-イル-アミン(1-29)の白色粉体:4.4g(収率18%)を得た。
【0115】
【0116】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.73-8.81(2H)、8.17-8.20(1H)、8.07-8.09(1H)、7.97-8.01(1H)、7.86-7.91(2H)、7.29-7.74(22H)、7.14-7.24(8H).
【実施例11】
【0117】
<ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;3’,1’’;2’’,1’’’:4’’’,1’’’’]キンクフェニル-4’’-イル-アミン(1-41)の合成>
実施例3のフェニルボロン酸に代えて、3-ビフェニルボロン酸を用いて同様の操作を行い、ビフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;3’,1’’;2’’,1’’’:4’’’,1’’’’]キンクフェニル-4’’-イル-アミン(1-41)の白色粉体:5.6g(収率51%)を得た。
【0118】
【0119】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の43個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.75-8.84(2H)、8.12-8.14(1H)、7.94-7.96(1H)、7.79(1H)、7.60-7.75(10H)、7.27-7.56(28H).
【実施例12】
【0120】
<[1,1’:3’,1’’]ターフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’ -イル-アミン(1-60)の合成>
反応容器に(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’ -イル-アミン:9.2g、4-ブロモ-[1,1’:3’,1’’]ターフェニル:5.2g、tert-ブトキシナトリウム:1.9g、トルエン:78mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.1gを加えて3時間還流撹拌した。放冷した後、濾過した濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフによる精製を行うことで、[1,1’:3’,1’’]ターフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’]ターフェニル-4’ -イル-アミン(1-60)の白色粉体:7.1g(収率58%)を得た。
【0121】
【0122】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.75-8.84(2H)、8.11-8.13(1H)、7.93-7.95(1H)、7.87(1H)、7.78(1H)、7.48-7.72(15H)、7.17-7.43(18H).
【実施例13】
【0123】
<[1,1’:4’,1’’]ターフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’:3’’,1’’’]クォーターフェニル-5’ -イル-アミン(1-61)の合成>
反応容器に(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’:3’’,1’’’]クォーターフェニル-5’ -イル-アミン:8.9g、4-ブロモ-[1,1’:4’,1’’]ターフェニル:4.0g、tert-ブトキシナトリウム:1.9g、トルエン:40mLを加えて30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。その後、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.2gを加えて5時間還流撹拌した。放冷した後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン/アセトン混合溶媒による晶析精製を行うことで、[1,1’:4’,1’’]ターフェニル-4-イル-(4-フェナンスレン-9-イル-フェニル)-[1,1’;2’,1’’:3’’,1’’’]クォーターフェニル-5’ -イル-アミン(1-61)の白色粉体:9.1g(収率88%)を得た。
【0124】
【0125】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の43個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.76-8.84(2H)、8.11-8.13(1H)、7.94-7.96(1H)、7.79(1H)、7.61-7.75(12H)、7.22-7.56(26H).
【実施例14】
【0126】
<化合物(2-11)の合成>
反応容器に1-ブロモベンゼン(D-置換):45.0g、4-tert-ブチルアニリン:58.0g、酢酸パラジウム(II):1.0g、tert-ブトキシナトリウム:30.0g、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル:2.0g、トルエン:450mLを加えて24時間還流撹拌した。放冷した後、濃縮してカラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11a)の粉体:49.9g(収率78%)を得た。
【0127】
【0128】
反応容器に上記化合物(2-11a):20.0g、下記化合物(2-11b):18.4g、酢酸パラジウム(II):0.5g、tert-ブトキシナトリウム:18.9g、トリ(tert-ブチル)ホスフィン:0.8g、トルエン:200mLを加えて24時間還流撹拌した。放冷した後、濃縮してカラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11c)の粉体:21.5g(収率84%)を得た。
【0129】
【0130】
【0131】
反応容器に上記化合物(2-11c):12.0g、tert-ブチルベンゼン120mLを加えて-78℃でn-ブチルリチウム42.5mLを滴下した後、60℃で3時間撹拌ながら窒素ガスを通気した。次に、-78℃でボロントリブロミド11.3gを滴下した後、常温で1時間撹拌し、さらに0℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン5.9gを滴下した後、120℃で2時間撹拌した。放冷した後、酢酸ナトリウム水溶液を入れて撹拌して、酢酸エチルで抽出して、有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラフにより精製を行うことで、下記化合物(2-11)の粉体:1.7g(収率11%)を得た。
【0132】
【実施例15】
【0133】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によってガラス転移点(Tg)を測定した。
ガラス転移点(Tg)
実施例1の化合物 118.2℃
実施例2の化合物 118.8℃
実施例3の化合物 127.9℃
実施例4の化合物 129.6℃
実施例5の化合物 134.9℃
実施例6の化合物 125.9℃
実施例7の化合物 139.4℃
実施例8の化合物 117.3℃
実施例9の化合物 119.5℃
実施例10の化合物 132.5℃
実施例11の化合物 126.5℃
実施例12の化合物 110.9℃
実施例13の化合物 123.1℃
【0134】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は100℃以上のガラス転移点(Tg)を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例16】
【0135】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 5.70eV
実施例2の化合物 5.73eV
実施例3の化合物 5.74eV
実施例4の化合物 5.74eV
実施例5の化合物 5.74eV
実施例6の化合物 5.73eV
実施例7の化合物 5.74eV
実施例8の化合物 5.77eV
実施例9の化合物 5.77eV
実施例10の化合物 5.77eV
実施例11の化合物 5.73eV
実施例12の化合物 5.73eV
実施例13の化合物 5.71eV
【0136】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物はNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有し、優れた電子の阻止能力を有することが分かる。
【実施例17】
【0137】
有機EL素子は、
図10に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、第一正孔輸送層4、第二正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極(アルミニウム電極)9の順に蒸着して作製した。
【0138】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように正孔注入層3として、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(HTM-1)を、蒸着速度比がAcceptor-1:化合物(HTM-1)=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に、第一正孔輸送層4として下記構造式の化合物(HTM-1)を膜厚55nmとなるように形成した。この第一正孔輸送層4の上に、第二正孔輸送層5として実施例1の化合物(1-2)を膜厚5nmになるように形成した。この第二正孔輸送層5の上に、発光層6として実施例14の化合物(2-11)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比が化合物(2-11):化合物(EMH-1)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。この発光層6の上に、電子輸送層7として下記構造式の化合物(ETM-1)と下記構造式の化合物(ETM-2)を、蒸着速度比が化合物(ETM-1):化合物(ETM-2)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層7の上に、電子注入層8としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極9を形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【実施例18】
【0146】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例2の化合物(1-3)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0147】
【実施例19】
【0148】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例3の化合物(1-4)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0149】
【実施例20】
【0150】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例4の化合物(1-5)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0151】
【実施例21】
【0152】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例5の化合物(1-6)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0153】
【実施例22】
【0154】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例6の化合物(1-7)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0155】
【実施例23】
【0156】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例7の化合物(1-12)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0157】
【実施例24】
【0158】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例8の化合物(1-23)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0159】
【実施例25】
【0160】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例9の化合物(1-24)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0161】
【実施例26】
【0162】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例10の化合物(1-29)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0163】
【実施例27】
【0164】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例11の化合物(1-41)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0165】
【実施例28】
【0166】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例12の化合物(1-60)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0167】
【実施例29】
【0168】
実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて実施例13の化合物(1-61)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0169】
【0170】
[比較例1]
比較のために、実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて下記構造式の化合物(HTM-2)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0171】
【0172】
[比較例2]
比較のために、実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて下記構造式の化合物(HTM-3)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0173】
【0174】
[比較例3]
比較のために、実施例17において、第二正孔輸送層5の材料として実施例1の化合物(1-2)に代えて下記構造式の化合物(HTM-4)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0175】
【0176】
実施例17~29および比較例1~3で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表1にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0177】
【0178】
表1に示す様に、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの発光効率は、比較例1~3の有機EL素子の7.42~9.34cd/Aに対し、実施例17~29の有機EL素子では10.04~11.18cd/Aと高効率であった。また、電力効率においても、比較例1~3の有機EL素子の6.26~7.91lm/Wに対し、実施例17~29の有機EL素子では8.65~9.82lm/Wと高効率であった。さらに、素子寿命(95%減衰)においては、比較例1~3の有機EL素子の206~235時間に対し、実施例17~29の有機EL素子では285~356時間と長寿命化していることが分かる。
【0179】
以上の結果から明らかなように、一般式(1)で表される特定の構造を有するアリールアミン化合物は、比較例1~3で使用した従来のアリールアミン化合物と比べて、正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有しているため、本発明の材料を用いた実施例の有機EL素子は、従来の材料を用いた比較例の有機EL素子と比較して、高発光効率であって、かつ長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の、特定の構造を有するアリールアミン化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が向上するとともに、有機EL素子の耐久性を改善させることができ、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【0181】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 第一正孔輸送層
5 第二正孔輸送層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極