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特許7592022抗クローディン18.2抗体及びその用途
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  • 特許-抗クローディン18.2抗体及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】抗クローディン18.2抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241122BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241122BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241122BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P35/02
G01N33/574 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021557129
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2020082369
(87)【国際公開番号】W WO2020200196
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】201910257853.6
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グォ フー
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイカン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513146(JP,A)
【文献】特表2010-528075(JP,A)
【文献】国際公開第2018/006882(WO,A1)
【文献】特表2015-517476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗クローディン18.2抗体であって、
前記重鎖可変領域が、それぞれ配列番号:15、配列番号:16及び配列番号:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号:18、配列番号:19及び配列番号:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、
抗クローディン18.2抗体。
【請求項2】
マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載の抗クローディン18.2抗体。
【請求項3】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項1又は2に記載の抗クローディン18.2抗体であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:5に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:5に対して少なくとも90%の同一性を有し、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:6に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:6に対して少なくとも90%の同一性を有し;又は、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:31に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:31に対して少なくとも90%の同一性を有し、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:28に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:28に対して少なくとも90%の同一性を有する、
抗クローディン18.2抗体。
【請求項4】
ヒト抗体に由来するフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域バリアントを含むヒト化抗体であり、前記フレームワーク領域バリアントが、ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域に1~10個の復帰変異を有する、請求項3に記載の抗クローディン18.2抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗クローディン18.2抗体であって、
前記フレームワーク領域バリアントが、前記軽鎖可変領域に含まれる4L及び22Sからなる群より選択される1個又は複数個の復帰変異、並びに/若しくは、前記重鎖可変領域に含まれる38K、40R、48I、66K、67A、69L、71L及び73Kからなる群より選択される1個又は複数個の復帰変異から選択される変異を含む、
抗クローディン18.2抗体。
【請求項6】
以下に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域:
配列番号:5に示される重鎖可変領域配列及び配列番号:6に示される軽鎖可変領域配列;又は、
配列番号:31、32、33若しくは34に示される重鎖可変領域配列及び配列番号:28、29若しくは30に示される軽鎖可変領域配列
を含む、請求項5に記載の抗クローディン18.2抗体。
【請求項7】
請求項6に記載の抗クローディン18.2抗体であって、
前記抗クローディン18.2抗体又はその抗原結合性フラグメントが、以下に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域:
配列番号:31に示される重鎖可変領域配列及び配列番号:29に示される軽鎖可変領域配列
を含む、抗クローディン18.2抗体。
【請求項8】
重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体であって、
前記重鎖定常領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域並びにこれらのバリアントからなる群より選択され、
前記軽鎖定常領域が、ヒト抗体κ鎖及びλ鎖定常領域並びにこれらのバリアントからなる群より選択される、
抗クローディン18.2抗体。
【請求項9】
請求項8に記載の抗クローディン18.2抗体であって、
前記抗クローディン18.2抗体が、配列番号:7に示される重鎖定常領域及び配列番号:8に示される軽鎖定常領域を含む、
抗クローディン18.2抗体。
【請求項10】
配列番号:37に示される重鎖及び配列番号:38に示される軽鎖;又は、
配列番号:49、50、51若しくは52に示される重鎖及び配列番号:46、47若しくは48に示される軽鎖
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体。
【請求項11】
配列番号:49に示される重鎖及び配列番号:47に示される軽鎖
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体をコードする、1個の核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体を細胞傷害薬にコンジュゲート化することによって形成された、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項15】
治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体又は請求項14に記載の抗体-薬物コンジュゲートと、1種又は複数種の薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、バッファー又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体を、被試験サンプルと接触させるステップ
を含む、クローディン18.2のイムノアッセイ又は検出のための方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗クローディン18.2抗体を含む、キット。
【請求項18】
クローディン18.2に関連する疾患の処置のための請求項15に記載の医薬組成物であって、前記疾患が、腫瘍である、医薬組成物。
【請求項19】
前記疾患が、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、グリオーマ、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽腔がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝臓がん、肝細胞腫瘍、肝細胞がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、胃腸がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎臓がん、淡明細胞型腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、メラノーマ、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんからなる群より選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記リンパ腫が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群より選択され;
前記肺がんが、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんからなる群より選択され;
前記白血病が、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄性白血病からなる群より選択される、
請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体を参照により本明細書に組み込む、2019年4月1日に出願された中国特許出願第201910257853.6号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、抗体薬の分野に関する。特に、本開示は、クローディン18.2抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書中の記載は、本開示に関する背景情報を提供するにすぎず、必ずしも従来技術を構成するとは限らない。
【0004】
クローィン18(CLDN18)は、ヒトクローディン18遺伝子によってコードされるタンパク質であり、細胞内にあるタイトジャンクションタンパク質ファミリーに属する。クローディン18は、細胞の層間での分子の流れを制御することができる。
【0005】
クローディン18タンパク質は、4つの膜貫通領域及び2つの細胞外ループを構造内に含み、N末端及びC末端が細胞質の内部に存在するものである。クローディン18は、クローディン18.1及びクローディン18.2という、2種のスプライシングバリアントを有する。これら2つの配列は、第1の細胞外ループ内にある8個のアミノ酸のみが異なる。クローディン18.1は、クローディン18.2とは異なる様式で発現及び分配される。クローディン18.1は、正常な肺細胞内に選択的に発現するが、これに対してクローディン18.2の発現は、正常な細胞内では非常に限定的であるが、様々な腫瘍(胃がん、肺がん、膵臓がん等)では、異所的に活性化され、過剰発現することが非常に多い。クローディン18.2は、胃がん及び他の種類のがんを対象とする潜在的な治療標的として想定されている。この標的の発見により、胃がんを処置するための新たな選択肢も提供される。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、抗クローディン18.2抗体を提供する。
【0007】
一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
i)重鎖可変領域が、配列番号:3に示される重鎖可変領域中のものと同じHCDR1配列、HCDR2配列及びHCDR3配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号:4に示される軽鎖可変領域中のものと同じLCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含むか;又は、
ii)重鎖可変領域が、配列番号:5に示される重鎖可変領域中のものと同じHCDR1配列、HCDR2配列及びHCDR3配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号:6に示される軽鎖可変領域中のものと同じLCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む。一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
iii)重鎖可変領域が、それぞれ配列番号:9、配列番号:10及び配列番号:11に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、軽鎖可変領域が、それぞれ番号:12、配列番号:13及び配列番号:14に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むか;又は、
iv)重鎖可変領域が、それぞれ配列番号:15、配列番号:16及び配列番号:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、軽鎖可変領域が、それぞれ番号:18、配列番号:19及び配列番号:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0008】
i)、ii)、a)、b)等の項目番号は、列記された技術的解決法又は要素をより明確にして、容易に識別されるものにするためのものにすぎず、いかなる点においても下記の技術的解決法又は要素を限定するものではないことは、当業者ならば理解すべきである。同じ項目番号が使用されている場合、これにより、次の技術的解決法又は要素が同じものであることが意味されるわけではない。
【0009】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、抗クローディン18.2抗体は、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0010】
一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
(v)重鎖可変領域が、配列番号:3若しくは24に示される重鎖可変領域に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号:4若しくは21に示される軽鎖可変領域に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有するか;又は、
(vi)重鎖可変領域が、配列番号:5若しくは31に示される重鎖可変領域に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号:6若しくは28に示される軽鎖可変領域に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有する。
【0011】
一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:3に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:4に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有し;
(2)重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:24に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:24に対して少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:21に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:21に対して少なくとも90%の同一性を有し;
(3)重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:5に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:5に対して少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:6に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:6に対して少なくとも90%の同一性を有し;又は、
(4)重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:31に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:31に対して少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号:28に示されるとおりであるか、若しくは配列番号:28に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0012】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、抗クローディン18.2抗体は、ヒト化抗体であり、ヒト化抗体は、ヒト抗体フレームワーク領域又はそのフレームワーク領域バリアントに由来するフレームワーク領域を含み、フレームワーク領域バリアントは、ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域のそれぞれに最大10個の復帰変異を有する。
【0013】
一部の実施形態において、ヒト抗体重鎖フレームワーク領域は、アミノ酸配列番号:24に示される重鎖可変領域のフレームワーク領域と同じであり、若しくはヒト抗体軽鎖可変領域は、アミノ酸配列番号:21に示される軽鎖可変領域のフレームワーク領域と同じであり;又は、ヒト抗体重鎖フレームワーク領域は、アミノ酸配列番号:31に示される重鎖可変領域のフレームワーク領域と同じであり、若しくはヒト抗体軽鎖可変領域は、アミノ酸配列番号:28に示される軽鎖可変領域のフレームワーク領域と同じである。
【0014】
一部の実施形態において、好ましくは、フレームワーク領域バリアントは、下記(a)又は(b)から選択される変異を含む:
(a)軽鎖可変領域に含まれる22S、85I若しくは87Hのうちの1個又は複数個のアミノ酸復帰変異、並びに/若しくは、重鎖可変領域に含まれる48I、82T及び69Mからなる群より選択される1個又は複数個の復帰変異;又は、
(b)軽鎖可変領域に含まれる4L及び22Sからなる群より選択される1個又は複数個のアミノ酸復帰変異、並びに/若しくは、重鎖可変領域に含まれる38K、40R、48I、66K、67A、69、71L及び73Kからなる群より選択される1個又は複数個の復帰変異。
【0015】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、フレームワーク領域バリアントは、下記(a-1)又は(b-1)から選択される変異を含む:
(a-1)軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸復帰変異22S、85I及び87H、並びに重鎖可変領域に含まれるアミノ酸復帰変異48I及び82T;又は、
(b-1)軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸復帰変異4L。
【0016】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、
(vii)重鎖可変領域配列が、配列番号:3示されたとおりであり、軽鎖可変領域配列が、配列番号:4に示されるとおりであり;又は、
(viii)重鎖可変領域配列が、配列番号:24、25、26若しくは27に示されるとおりであり、軽鎖可変領域配列が、配列番号:21、22若しくは23に示されるとおりであり;又は、
(ix)重鎖可変領域配列が、配列番号:5に示されるとおりであり、軽鎖可変領域配列が、配列番号:6に示されるとおりであり;又は、
(x)重鎖可変領域配列が、配列番号:31、32、33若しくは34に示されるとおりであり、軽鎖可変領域配列が、配列番号:28、29若しくは30に示されるとおりである。
【0017】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、抗クローディン18.2抗体又はその抗原結合性フラグメントは、以下に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(xi)配列番号:31に示される重鎖可変領域配列及び配列番号:29に示される軽鎖可変領域配列;又は、
(xii)配列番号:26に示される重鎖可変領域配列及び配列番号:23に示される軽鎖可変領域配列。
【0018】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、以下の表に示される軽鎖可変領域と重鎖可変領域との組合せであってもよい。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、抗体は、抗体定常領域をさらに含む。一部の特定の実施形態において、抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域並びにこれらのバリアントからなる群より選択され、抗体の軽鎖定常領域は、ヒト抗体κ、λ鎖定常領域及びこれらのバリアントからなる群より選択される。一部の特定の実施形態において、抗体は、配列番号:7に示される重鎖定常領域配列及び配列番号:8に示される軽鎖定常領域配列。一部の特定の実施形態において、抗体は、配列番号:35若しくは42に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有する重鎖、及び配列番号:36若しくは39に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有する軽鎖;又は、
配列番号:37若しくは49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有する重鎖、及び/若しくは配列番号:38若しくは46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の同一性を有する軽鎖
を含む。
【0022】
一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、
(c)配列番号:35に示される重鎖及び/若しくは配列番号:36に示される軽鎖;
(d)配列番号:42、43、44若しくは45に示される重鎖、及び/若しくは配列番号:39、40若しくは41に示される軽鎖;
(e)配列番号:37に示される重鎖及び/若しくは配列番号:38に示される軽鎖;又は、
(f)配列番号:49、50、51若しくは52に示される重鎖、及び/若しくは配列番号:46、47若しくは48に示される軽鎖
を含む。
【0023】
上記抗クローディン18.2抗体の一部の実施形態において、抗体は、上記抗クローディン18.2抗体又はその抗原結合性フラグメントと競合して、ヒトクローディン18.2に結合する。
【0024】
一部の実施形態において、上記抗クローディン18.2抗体は、
アミノ酸配列番号:44に示される重鎖及び配列番号:41に示される軽鎖;又は、
アミノ酸配列番号:49に示される重鎖及び配列番号:47に示される軽鎖
を含む。
【0025】
本開示の別の態様は、上記抗クローディン18.2抗体をコードする核酸分子も提供する。
【0026】
本開示の別の態様は、上記核酸分子を含む発現ベクターも提供する。
【0027】
本開示の別の態様は、上記核酸分子又は上記発現ベクターを含む、宿主細胞であって、好ましくは、細菌細胞、真菌細胞、昆虫動物細胞又はほ乳類細胞である、宿主細胞も提供する。
【0028】
本開示の別の態様は、上記抗クローディン18.2抗体を細胞傷害薬にコンジュゲート化することによって形成された、抗体-薬物コンジュゲートも提供する。
【0029】
本開示の別の態様は、細胞傷害薬に共有結合した上記抗クローディン18.2抗体を含み、又はからなる、抗体-薬物コンジュゲートも提供する。
【0030】
一部の実施形態において、本開示は、上記抗クローディン18.2抗体を調製するための方法を提供する。
【0031】
一部の実施形態において、本開示は、上記抗クローディン18.2抗体-薬物コンジュゲートを調製するための方法を提供する。
【0032】
一部の実施形態において、本開示は、治療有効量の上記抗クローディン18.2抗体又は上記核酸分子又は上記抗体-薬物コンジュゲートと、1種又は複数種の薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、バッファー又は賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0033】
一部の実施形態において、本開示は、上記抗クローディン18.2抗体を、被試験サンプルと接触させるステップを含む、クローディン18.2のイムノアッセイ又は検出のための方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態において、本開示は、ヒトクローディン18.2のイムノアッセイ用の試薬の調製のための、上記抗クローディン18.2抗体の使用を提供する。
【0035】
一部の実施形態において、本開示は、クローディン18.2のイムノアッセイ又は検出に使用するための、上記抗クローディン18.2抗体を提供する。
【0036】
一部の実施形態において、本開示は、上記抗クローディン18.2抗体を含む、キットを提供する。
【0037】
一部の実施形態において、本開示は、がん又は腫瘍を処置する医薬の調製のための、上記抗クローディン18.2抗体又は上記核酸分子又は上記抗体-薬物コンジュゲート又は上記医薬組成物の使用であって、がん又は腫瘍が、好ましくは、クローディン18.2陽性のがん又は悪性腫瘍であり、より好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、グリオーマ、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽腔がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝臓がん、肝細胞腫瘍、肝細胞がん、肝胆がん(liver and gallbladder cancer)、膵臓がん、胃がん、胃腸がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎臓がん、淡明細胞型腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、メラノーマ、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんであり;リンパ腫が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群より選択され;肺がんが、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんからなる群より選択され;白血病が、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄性白血病からなる群より選択される、使用を提供する。
【0038】
一部の実施形態において、本開示は、治療有効量の上記抗クローディン18.2抗体又は上記核酸分子又は上記抗体-薬物コンジュゲート又は上記医薬組成物を対象に投与することを含む、クローディン18.2に関連する疾患を処置する方法であって、疾患が、好ましくは、がん又は腫瘍であり、より好ましくは、クローディン18.2陽性のがん又は悪性腫瘍であり、より好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、グリオーマ、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽腔がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝臓がん、肝細胞腫瘍、肝細胞がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、胃腸がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎臓がん、淡明細胞型腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、メラノーマ、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんからなる群より選択される、方法を提供する。より好ましくは、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群より選択され;肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんからなる群より選択され;白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄性白血病からなる群より選択される。
【0039】
一部の実施形態において、治療有効量は、組成物の単位用量に含まれる上記抗クローディン18.2抗体又は上記抗体-薬物コンジュゲート0.1mg~3000mg又は1mg~1000mgを指す。
【0040】
一部の実施形態において、本開示は、クローディン18.2に関連する疾患の処置に使用するための、上記抗クローディン18.2抗体又は上記核酸分子又は上記抗体-薬物コンジュゲート又は上記医薬組成物であって、疾患が、好ましくは、がん又は腫瘍であり、より好ましくは、クローディン18.2陽性のがん又は悪性腫瘍であり、より好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、グリオーマ、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽腔がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝臓がん、肝細胞腫瘍、肝細胞がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、胃腸がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎臓がん、淡明細胞型腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、メラノーマ、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんからなる群より選択される、上記抗クローディン18.2抗体又は上記核酸分子又は上記抗体-薬物コンジュゲート又は上記医薬組成物を提供する。より好ましくは、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫からなる群より選択され;肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんからなる群より選択され;白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄性白血病からなる群より選択される。
【0041】
一部の実施形態において、がんは、胃がん、食道がん、肺がん又は膵臓がんである。
【0042】
一部の実施形態において、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、上記のように、上記クローディン18.2が高発現、中発現及び低発現しているがんに治療効果を及ぼすことができる。
【0043】
本開示において提供されたクローディン18.2抗体及び抗体-薬物コンジュゲートは、細胞表面抗原に対する優れたアフィニティ、好ましいエンドサイトーシス効率、有力な腫瘍阻害効率、及びより広範な薬学的応用範囲を有し、医薬として臨床で使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】細胞レベルにおけるヒトクローディン18.2へのヒト化抗体の結合のFACS試験結果。
図2】NUGC4細胞におけるヒト化抗体のエンドサイトーシスアッセイ。
図3】クローディン18.2の発現レベルが異なるNUGC4細胞における、抗体のADCC効果の検出の図である。図3Aは、(クローディン18.2が低発現した)野生型NUGC4細胞に対する抗体のADCC効果の検出を示している。図3Bは、クローディン18.2が中発現したNUGC4細胞に対する抗体のADCC効果の検出を示している。図3Cは、クローディン18.2が高発現したNUGC4細胞に対する抗体のADCC効果の検出を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
用語
本開示をより容易に理解するために、下記において、特定の専門用語及び科学技術用語が厳密に規定されている。そうではないと本明細書において明示的に規定されていない限り、本明細書において使用されている他のすべての専門用語及び科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0046】
本開示において使用されているアミノ酸に関する3文字のコード及び1文字のコードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)で説明されている。
【0047】
「細胞傷害薬」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは阻止し、及び/又は細胞死又は細胞破壊を起こす物質を指す。細胞傷害薬は、毒素及び化学療法薬等、細胞を死滅させるために使用することができる、化合物を含む。
【0048】
「毒素」という用語は、細胞の成長又は増殖を可能にする、任意の物質を指すが、このような物質は、細菌、真菌、植物又は動物に由来の低分子毒素及びその誘導体であってよく、エキサテカン等のカンプトテシン誘導体、マイタンシノイド及びDM1、DM3、DM4等のマイタンシノイド誘導体(CN101573384)、オーリスタチンF(Orlistatin F)(AF)及びMMAF、MMAE、3024等のオーリスタチンF誘導体(WO2016/127790A1、化合物7)、ジフテリア毒素、外毒素、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン、α-サルシン、アレウチテス・フォルディ(Aleutites fordii)毒性タンパク質、ジアンチン毒性タンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)毒性タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・カランティア(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが挙げられる。
【0049】
「化学療法薬」という用語は、腫瘍の処置のために使用することができる、化合物である。このような規定は、がんの増殖を促進し得るホルモン作用を調節、低減、遮断又は阻害することが可能であり、一般には、全身的な方式又は全身療法の方式におけるものである、抗ホルモン剤も含む。化学療法薬自体がホルモンであってもよい。化学療法薬の例には、チオテパ等のアルキル化剤;シクロスファミド(シトキサン(商標));ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホネート;ベナオドーパ(benaodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンを含むアジリジン及びメチラメラミン(methylamelamine);クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミノキシド(mechlorethaminoxide)等のニトロゲンマスタード;メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラムスチン;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソ尿素;クラリスロマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン(carabicin)、クロモマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキシ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン等の抗生物質;ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、5-FU等の代謝拮抗物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプテリン、チオメトプテリン、チオグアノプテリン(thioguanopterin)等のメトトレキサートアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アズリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フルオロウリジン、5-FU等のピリミジンアナログ;カルステロン、ドロモスタノロングプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗アドレナリン剤;フォリン酸等の葉酸サプリメント;グルクロン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);コルチシン(colchicine);ジアジコン(diaziquone);エルフォミチン(elfomithine);エリプチニウムアセテート;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ピントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;アルテルナリア・テナース(Alternaria tenuis)ケト酸;トリイミンキノン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンブラスチンアミド;ダカルバジン;マンニトールマスタード;ミトブロニトール;ジブロモニシキギアルコール(dibromo euonymus alcohol);ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、NJ)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、フランス)等のタキサン;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスフェート(ifosphate);ミトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノルビシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸エスペラミシン;カペシタビン;並びに、上記物質のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。上記規定は、腫瘍に対するホルモンの効果を調節又は阻害することができる、抗ホルモン剤も含む。例えば、抗エストロゲンは、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシルタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston);並びに、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン;並びに、上記物質のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体を含む。
【0050】
本明細書において使用されているとき、「抗体」は、免疫グロブリンを指し、完全な抗体は、鎖間ジスルフィド結合によって2本の同一の軽鎖に連結された2本の同一の重鎖によって形成された、4本のペプチド鎖からなる構造である。免疫グロブリン重鎖定常領域は、異なるアミノ酸の組成及び配置を示すため、異なる抗原性を示す。したがって、免疫グロブリンは、5種類に分類することができ、又は、免疫グロブリンアイソタイプ、すなわち、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと呼ばれることもあり、対応する重鎖は、それぞれμ、δ、γ、α及びεである。ヒンジ領域のアミノ酸組成、並びに重鎖ジスルフィド結合の化造及び場所に応じて、同じ種類のIgは、異なるサブタイプにさらに分類することができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に分類することができる。軽鎖は、異なる定常領域に基づいて、κ鎖又はλ鎖に分類することができる。5種類のIgのそれぞれが、κ鎖又はλ鎖を有し得る。
【0051】
抗体重鎖及び軽鎖のN末端に隣接する約110個のアミノ酸配列は可変性が高く、可変領域(Fv領域)として知られており;C末端に近いアミノ酸配列の残り部分は比較的安定であり、定常領域として知られている。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、比較的保存的な配列を有する4つのフレームワーク領域(FR)とを含む。抗体の特異性を決定する3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)としても公知である。各軽鎖可変領域(VL)及び各重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域及び4つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシル末端までの順番は、次のとおりである:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0052】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。
【0053】
本明細書において使用されているとき、「マウス抗体」という用語は、当技術分野における知識及び技能に従って調製された、抗ヒトクローディン18.2モノクローナル抗体を指す。その調製においては、クローディン18.2又はそのエピトープを抗原として試験対象に注射し、その後、所望の配列又は機能的特徴を有する抗体を発現させるハイブリドーマを単離する。本開示の好ましい一実施形態において、マウスクローディン18.2抗体又はその抗原結合性フラグメントは、マウスκ鎖、λ鎖又はこれらのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含み、又は、マウスIgG1、IgG2、IgG3又はこれらのバリアントの重鎖定常領域をさらに含む。
【0054】
「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体の可変領域と、ヒト抗体の定常領域とを融合させることによって得られた抗体であり、このような抗体は、マウス抗体によって誘導される免疫反応を緩和することができる。キメラ抗体を樹立するために、最初に、特異的マウスモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを樹立し、マウスハイブリドーマから可変領域遺伝子をクローニングする。その後には、必要に応じて、ヒト抗体から定常領域遺伝子をクローニング化する。マウス可変領域遺伝子をヒト定常領域遺伝子に連結して、キメラ遺伝子を形成するが、このキメラ遺伝子は、続いて、発現ベクターに挿入することができる。最後に、キメラ抗体分子を、真核生物系又は原核生物系中で発現させる。本開示の好ましい一実施形態において、キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ鎖、λ鎖又はこれらのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含む。クローディン18.2キメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はこれらのバリアントの重鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4の重鎖定常領域を含み、又は、アミノ酸変異(L234A変異及び/又はL235A変異及び/又はS228P変異等)があるIgG1、IgG2若しくはIgG4の重鎖定常領域を含む。
【0055】
CDRグラフト化抗体としても知られる「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体可変領域フレームワークへの非ヒトCDR配列のグラフト化によって生成された抗体、すなわち、異なる種類のヒト生殖細胞系列抗体フレームワーク配列において生成された抗体を指す。ヒト化抗体は、多数の異種タンパク質成分を有するキメラ抗体によって誘導される、異種反応を回避することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を収載した公開DNAデータベース又は公開されている参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖可変領域及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(www.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで入手可能)で確認することもできるし、さらには、Kabat,EAら 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版で確認することもできる。免疫原性の低下によって起きる活性の低下を回避するために、ヒト抗体可変領域中のフレームワーク配列には、活性を維持するように最小限の逆変異(reverse-mutation)又は復帰変異を発生させてもよい。本開示のヒト化抗体は、酵母ディスプレイによってCDRアフィニティ成熟が実施された、ヒト化抗体も指す。
【0056】
本開示の一実施形態において、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、ヒト若しくはマウスκ鎖、λ鎖若しくはこれらのバリアントに由来する軽鎖定常領域をさらに含み、又は、ヒト若しくはマウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4若しくはこれらのバリアントに由来する重鎖定常領域をさらに含み;好ましくは、ヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4に由来する重鎖定常領域を含み、又は、アミノ酸変異(L234A変異及び/又はL235A変異及び/又はS228P変異等)があるIgG1、IgG2若しくはIgG4バリアントを含む。
【0057】
本明細書において記載されているとき、ヒト抗体の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域の「バリアント」は、抗体可変領域の構造及び機能の変更がない、従来技術において開示された重鎖又は軽鎖定常領域バリアントを指す。例示的なバリアントには、重鎖定常領域に対する部位特異的な改変及びアミノ酸置換によって得られた、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域バリアントが挙げられる。特異的置換は例えば、YTE変異、L234A及び/若しくはL235A変異、S228P変異、並びに/又は、ノブ・イントゥ・ホール構造(knob-into-hole structure)(これにより、抗体重鎖は、ノブ型Fcとホール型Fcとの組合せを有する。)を生じさせる変異である。これらの変異は、抗体可変領域の機能を変更することなく、新たな特性を抗体に付与することが実証されている。
【0058】
「ヒト抗体(HuMAb)」、「ヒトに由来する抗体」、「完全ヒト抗体」及び「完全ヒト型抗体」は、互換的に使用されており、ヒトに由来する抗体であってもよいし、又は、抗原刺激に反応して特異的なヒト抗体を生成することが当技術分野において知られた任意の方法によって「改変」された遺伝子組換え生物から得られた抗体であってもよい。一部の技術においては、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素が、胚性幹細胞株に由来する細胞株に導入されるが、この場合、内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座の破壊が目的とされている。トランスジェニック生物は、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することが可能であり、トランスジェニック生物を使用して、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを産生することができる。ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖が、1種以上のヒトDNA供給源に由来するヌクレオチド配列によってコードされるような抗体であってもよい。完全ヒト抗体は、遺伝子若しくは染色体トランスフェクション法及びファージディスプレイ技術によって構築することもできるし、又は、インビトロで活性化されたB細胞から構築することもできるが、これらはすべて、当技術分野において公知である。
【0059】
「完全長抗体」、「完全抗体」、「全抗体」及び「完全な抗体」という用語は、本明細書においては互換的に使用されており、下記に規定された抗原結合性フラグメントとは区別される、実質的に完全な形態の抗体を指す。前述の用語は厳密には、軽鎖及び重鎖中に定常領域を含む抗体を指す。本開示の「抗体」は、「完全長抗体」及びその抗原結合性フラグメントを含む。
【0060】
一部の実施形態において、本開示の完全長抗体は、以下の表の軽鎖と重鎖との組合せに示されているように、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域とを連結し、重鎖可変領域と重鎖定常領域とを連結することによって形成された、完全長抗体を含む。当業者は、実際の必要性に応じて、様々な抗体供給源から、ヒト抗体由来の軽鎖定常領域及び重鎖定常領域等の軽鎖定常領域及び重鎖定常領域を選択することができる。
【0061】
「抗原結合性フラグメント」又は「機能的フラグメント」という用語は、抗原(例えば、クローディン18.2)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1種以上のフラグメントを指す。完全長抗体のフラグメントを使用して、抗原結合機能を獲得できることが示されてきた。抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に含まれる結合性フラグメントの例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域中のジスルフィド架橋によって連結された2個のFabフラグメントによって形成された二価フラグメントである、F(ab’)フラグメント;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)抗体のアームのうちの1つに属するVH及びVLドメインから構成されるFvフラグメント;(v)鎖間ジスルフィド結合を介してVH及びVLによって形成された抗原結合性フラグメントである、dsFv;並びに、(vi)scFv、dsFv及びFab等のフラグメントを含有する二重特異性抗体、二特異性抗体及び多特異性抗体が挙げられる。さらに、FvフラグメントのVLドメイン及びVHドメインは、VLドメインとVHドメインとの対合によって形成された一価分子である単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる。例えば、Birdら(1988)Science 242:423~426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA85:5879~5883を参照されたい。)を生成するように、合成リンカーによって連結されている。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に含まれる。このような抗体フラグメントは、当技術分野において知られた慣用的な技法を用いて得られるが、インタクト抗体の場合と同じ方法を用いることにより、機能的フラグメントについてスクリーニングされる。抗原結合性部分は、組換えDNA技術又はインタクト免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的破壊によって生成することができる。抗体は、異なるアイソタイプ、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体の形態であり得る。
【0062】
Fabは、パパインと同じ活性を有する酵素によってIgG抗体分子を処理することによって得られた抗原結合活性を有する、抗体フラグメントである。
【0063】
F(ab’)は、ペプシンと同じ活性を有する酵素によってIgGを消化することによって得られた抗原結合活性を有する、抗体フラグメントである。
【0064】
Fab’は、上記F(ab’)を切断することによって得られた抗原結合活性を有する、抗体フラグメントである。
【0065】
さらに、Fab’は、Fab’フラグメントをコードするDNAを発現ベクターに挿入し、ベクターを宿主に導入することによって、生成することができる。
【0066】
「一本鎖抗体」、「一本鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーによって抗体軽鎖可変ドメイン(又は領域;VL)に連結された抗体重鎖可変ドメイン(又は領域;VH)を含む、分子を指す。このようなscFv分子は、NH-VL-リンカー-VH-COOH又はNH-VH-リンカー-VL-COOHの一般構造を有する。本開示において使用され得る他のリンカーは、限定されるわけではないが、Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448;Alfthanら(1995)、Protein Eng.8:725~731;Choiら(2001)、Eur.J.Immunol.31:94~106;Huら(1996)、Cancer Res.56:3055~3061;Kipriyanovら(1999)、J.Mol.Biol.293:41~56及びRooversら(2001)、Cancer Immunol等の文献によって説明されている。
【0067】
二重特異性抗体は、scFv又はFabがダイマー化された抗体フラグメントであり、二価抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。これらの2種の抗原は、二価抗原結合活性が同じであってもよいし、又は異なってもよい。
【0068】
二特異性抗体及び多特異性抗体は、2個以上の抗原又は抗原決定基に結合することができる抗体を指す。
【0069】
dsFvは、VH及びVLのそれぞれの中にある1個のアミノ酸残基を、システイン残基によって置換し、次いで、置換されたポリペプチドを、2個のシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結することによって得られる。システイン残基によって置換すべきアミノ酸残基は、公知の方法(例えば、Protein Engineering、7、697(1994))による抗体の三次元構造予測に基づいて選択することができる。
【0070】
「アミノ酸の差異」又は「アミノ酸変異」という用語は、元々のタンパク質又はポリペプチドに比較した、タンパク質バリアント又はポリペプチドバリアント中におけるアミノ酸の変化又は変異を指し、元々のタンパク質又はポリペプチドを基準にした1つ、2つ又は3つ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換を含む。
【0071】
「抗体フレームワーク」又は「FR領域」という用語は、この可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のための足場として機能する、VL又はVHである可変ドメインの一部を指す。本質的には、「抗体フレームワーク」又は「FR領域」は、CDRを有さない可変ドメインである。
【0072】
「相補性決定領域」、「CDR」又は「超可変領域」という用語は、抗原結合の主因となる抗体可変ドメイン中に存在する6つの超可変領域のうちの1つを指す。一般に、各重鎖可変領域中には3種のCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、各軽鎖可変領域中には3種のCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。CDRのアミノ酸配列境界は、様々な周知のスキームのいずれかによって決定することが可能であり、「Kabat」式ナンバリング基準(Kabatら(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、Public Health Service, National Institutes of Health、Bethesda、MDを参照されたい。)、「Chothia」式ナンバリング基準(Al-Lazikaniら、(1997)JMB 273:927~948を参照されたい。)及びImmunoGenTics(IMGT)ナンバリング基準(Lefranc MP、Immunologist、7、132~136(1999);Lefranc,MP等、Dev.Comp.Immunol.、27、55~77(2003))等が挙げられる。例えば、古典的なフォーマットに関しては、Kabat式基準に従った場合、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は、31~35番(HCDR1)、50~65番(HCDR2)及び95~102番(HCDR3)として付番されており;軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は、24~34番(LCDR1)、50~56番(LCDR2)及び89~97番(LCDR3)として付番されている。Chothia式基準に従った場合、VH中のCDRアミノ酸残基は、26~32番(HCDR1)、52~56番(HCDR2)及び95~102番(HCDR3);VL中のアミノ酸残基は、26~32番(LCDR1)、50~52番(LCDR2)及び91~96番(LCDR3)として付番されている。Kabat式とChothia式との両方を組み合わせて、CDRを規定することにより、CDRは、ヒトVH中のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)と、ヒトVL中のアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)とから構成される。IMGT基準に従った場合、VH中のCDRアミノ酸残基は、26~35番(CDR1)、51~57番(CDR2)及び93~102番(CDR3)として概ね付番されており、VL中のCDRアミノ酸残基は、27~32番(CDR1)、50~52番(CDR2)及び89~97番(CDR3)として概ね付番されている。IMGT式基準に従った場合、抗体のCDR領域は、IMGT/DomainGap Align Programによって決定することができる。
【0073】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又は抗体が結合する抗原上の部位(例えば、クローディン18.2分子上にある特定の部位)を指す。エピトープは、一般的に、一意な三次構造の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個の隣接する又は隣接しないアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻、G.E.Morris編(1996)を参照されたい。
【0074】
「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、「選択的結合」又は「特異的結合」という用語は、抗原上にある所定のエピトープへの抗体の結合を指す。一般的に、抗体は、約10-8M未満、例えば、約10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満又はより低いアフィニティ(KD)によって結合する。
【0075】
「KD」という用語は、特定の抗体と抗原との相互作用に関する解離平衡定数を指す。一般に、本開示の抗体は、約10-7M未満、例えば、約10-8M未満又は10-9M未満の解離平衡定数(KD)により、クローディン18.2又はそのエピトープに結合し、例えば、細胞表面抗原に対する本開示の抗体のアフィニティは、FACS法によるKD値の測定によって判定された。
【0076】
同じエピトープに関して競合する抗原結合性タンパク質との関連において「競合」という用語が使用されている場合、この「競合」という用語は、競合が抗原結合性タンパク質間で起きることを意味するが、このような競合は、被試験抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその機能的フラグメント)が、共通抗原(例えば、クローディン18.2抗原又はそのフラグメント)への参照用抗原結合性タンパク質(例えば、リガンド又は参照用抗体)の特異的結合を阻止又は阻害(例えば、低減)する、アッセイによって判定される。ある抗原結合性タンパク質が別の抗原結合性タンパク質と競合するかどうかを判定するためには、数多くの種類の競合的結合アッセイが利用可能である。これらのアッセイは、例えば、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫測定法(EIA)、競合サンドイッチアッセイ(例えば、Stahliら、1983、Methods in Enzymology 9:242~253を参照されたい。);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirklandら、1986、J.Immunol.137:3614~3619を参照されたい。)、固相調節標識アッセイ、固相調節標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane、1988、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Pressを参照されたい。);I-125標識を用いる固相調節標識RIA(例えば、Morelら、1988、Molec.Immunol.25:7~15を参照されたい。);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheungら、1990、Virology 176:546~552を参照されたい。);及び調節標識RIA(Moldenhauerら、1990、Scand.J.Immunol.32:77~82)である。一般的に、アッセイは、無標識の試験用抗原結合性タンパク質と、標識された参照用抗原結合性タンパク質との両方を担持した固体表面又は細胞に結合することができる、精製された抗原の使用を伴う。競合的阻害は、試験用抗原結合性タンパク質の存在下で固体表面又は細胞に結合した標識の量を測定することによって決定される。通常、試験用抗原結合性タンパク質は、過剰に存在する。競合アッセイ(抗原結合性タンパク質と競合する)によって同定される抗原結合性タンパク質は、参照用抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合性タンパク質;及び、参照用抗原結合性タンパク質が結合するエピトープに十分に近いものであるエピトープに結合する抗原結合性タンパク質を含み、これらの2種のエピトープが互いに対して空間的に干渉して、結合を妨害する。競合的結合を判定するための方法に関するさらなる詳細は、本明細書中の実施例において提供されている。一般的に、競合する抗原結合性タンパク質が過剰に存在する場合、これにより、共通抗原への参照用抗原結合性タンパク質の特異的結合の少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%又は75%以上を阻害(例えば、低減)する。場合によっては、前述の結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%又は97%以上阻害される。
【0077】
本明細書において使用されているとき、「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を指す。核酸分子は、一本鎖であってもよいし、又は二本鎖であってもよく、好ましくは、二本鎖DNA又は一本鎖mRNA若しくは修飾mRNAである。核酸は、別の核酸配列との間に機能的関係があるように配置されている場合、「機能可能に連結されている(operably linked)」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、コーディング配列の転写に影響を与える場合、コーディング配列に機能可能に連結されている。
【0078】
アミノ酸配列の「同一性」は、最大の配列同一性の百分率を与えるようにアミノ酸配列がアラインメントされた(必要に応じてギャップも導入する)ときの、第1の配列と第2の配列との間で同一であるアミノ酸残基の百分率を指し、いかなる保存的置換(conservative substitution)も、配列同一性の一部として考えない。アミノ酸配列同一性の百分率を決定するために、アラインメントは、当技術分野の範囲に含まれる様々な方法によって達成することが可能であり、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントの測定に適したパラメータを決定することができる。
【0079】
「発現ベクター」という用語は、自身が連結している別の核酸の輸送を可能にする、核酸分子を指す。一実施形態において、ベクターは「プラスミド」であるが、「プラスミド」は、さらなるDNAセグメントをライゲーションすることもできる、円形の二本鎖DNAループを指す。別の実施形態において、ベクターは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされていてもよい、ウイルスベクターである。本明細書において開示されたベクターは、このベクターが導入された宿主細胞(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーマル型ほ乳類ベクター)内で自己複製することでき、又は、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得るが、これにより、宿主ゲノム(例えば、非エピソーマル型ほ乳類ベクター)と一緒に複製される。
【0080】
抗体及び抗原結合性フラグメントを生成及び精製するための方法は、当技術分野、例えば、Antibodies:a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York、第5~8章及び第15章において周知である。例えば、マウスは、ヒトクローディン18.2又はそのフラグメントによって免疫化することが可能であり、得られた抗体は後で、当技術分野において周知の慣用的な方法によって復元、精製及びアミノ酸配列のシーケンシングを行うことができる。抗原結合性フラグメントは、慣用的な方法によって調製することもできる。本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、非ヒト抗体に由来するCDR領域に1つ以上のヒトフレームワーク領域を組み込むように改変されている。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ウェブサイトhttp://imgt.cines.fr経由でImMunoGeneTics(IMGT)から得ることもできるし、又は、MOEソフトウェアを使用して、IMGTヒト抗体可変生殖細胞系列遺伝子データベースに突き合わせてアラインメントすることにより、The Immunoglobulin Facts Book、2001、ISBN 012441351から得ることもできる。
【0081】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞は、細菌細胞、微生物細胞、植物細胞又は動物細胞を含み得る。トランスフォーメーションしやすい細菌には、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)株又はサルモネラ(Salmonella)株等の腸内細菌のメンバー;バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)等のバシラス科(Bacillaceae);ニューモコッカス(Pneumococcus);ストレプトコッカス(Streptococcus)及びヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)。適切な微生物には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。適切な動物宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)、293細胞及びNS0細胞が挙げられる。
【0082】
本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、慣用的な方法によって調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、発現ベクター内に組み換えることもできる。組換え免疫グロブリンの発現ベクターは、宿主細胞内に安定的にトランスフェクションすることができる。より推奨される一従来技術として、ほ乳類発現系により、抗体を、特に、Fc領域に属する高度に保存されたN末端位をグリコシル化することができる。安定なクローンは、ヒトクローディン18.2に特異的に結合する抗体を発現させることによって、得られる。陽性クローンをバイオリアクター内で増やして、抗体を産生することもできる。抗体が分泌された培地は、慣用的な技法によって精製することができる。例えば、精製は、バッファーによって調整されたプロテインA又はG Sepharose FFカラムによって実施することができる。非特異的結合性成分は、洗い流される。結合した抗体を、pHの勾配によって溶出させ、SDS-PAGEによって抗体フラグメントを検出し、次いで貯留した。抗体は、一般的な技法を用いてろ過及び濃縮することができる。可溶性の混合物及びマルチマーは、サイズ排除又はイオン交換等の一般的な技法によって効果的に取り除くことができる。次いで、得られた生成物は、例えば-70℃で直ちに凍結され、又は凍結乾燥されてもよい。
【0083】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官又は生体液に対して用いられているときの「投与」、「投薬」又は「処置」は、外因性医薬、治療剤、診断薬又は組成物を、動物、人間、対象、細胞、組織、器官又は生体液と接触させることを指す。「投与」、「投薬」又は「処置」は、例えば、治療法、薬物動態に関する方法、診断法、研究方法及び実験方法を指し得る。細胞の処置は、試薬を細胞と接触させることと、試薬を流体と接触させた後、細胞と接触させることとを包含する。「投与」、「投薬」又は「処置」は、試薬、診断薬、結合作用のある化合物(binding compound)又は別の細胞によって、例えば細胞をインビトロ又はエクスビボで処置することも意味する。ヒト、獣医学的対象又は研究対象に適用された場合の「処置」は、治療処置、予防的又は予防措置、研究及び診断の適用を指す。
【0084】
「処置する」は、本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントのいずれかを含む組成物等の治療剤を、それに対して治療剤が治療活性を有することが知られている1種以上の疾患症状のある患者に、内用方式又は外用方式で投与することを意味する。一般的に、治療剤は、処置すべき患者又は集団の1種以上の疾患症状を緩和するのに効果的な量で与えられ、これによって、臨床的に測定できる任意の度合いまでこのような症状の後退を誘導し、又はこのような症状の進行を阻害する。何らかの特定の疾患症状を緩和するのに効果的な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢及び体重、並びに、望ましい反応を患者に誘発させる薬物の能力等の様々な因子に応じて変化し得る。疾患症状が緩和されたかどうかは、その症状の重症度又は進行状況を評価するために医師又は他の熟練の医療従事者によって一般的に使用されている任意の臨床測定によって、評価することができる。本開示の一実施形態(例えば、処置方法又は製造物)は、あらゆる患者にあるターゲットとする疾患症状を緩和するのに有効ではないこともあるが、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン-ホイットニーのU検定、クラスカル-ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール-タプストラ検定及びウィルコクソン検定等の当技術分野において知られた任意の統計学的な検定によって判定されたときに、統計学的に有意な数の患者にあるターゲットとする疾患症状を緩和するはずである。
【0085】
「保存的修飾(conservative modification)」又は「保存的置換又は保存的置きかえ」は、タンパク質の生物活性を変化させることなく高頻度で変更を起こすことができるように、類似の特性(例えば、電荷、側鎖のサイズ、疎水性/親水性、骨格の立体構造及び剛直性等)を有する他のアミノ酸によって、タンパク質中のアミノ酸を置換することを指す。当業者ならば、一般に、ポリペプチドの必須でない領域における単一のアミノ酸置換が、生物活性を実質的に変化させないことを知っている(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、224頁、第4版を参照されたい。)。さらに、構造的に又は機能的に類似するアミノ酸による置換は、生物活性を乱す可能性が低い。例示的な保存的置換は、以下の表の「例示的なアミノ酸の保存的置換」に記載されている。
【0086】
【表3】
【0087】
「有効量」又は「有効用量」は、何らかの1種以上の有益な又は望ましい結果を得るために必要な医薬、化合物又は医薬組成物の量を指す。予防的な用途に関しては、有益な又は望ましい結果は、状態の生化学的徴候、組織学的徴候及び行動上の徴候、状態の合併症、並びに、状態の発症中における中間的な病理学的表現型を含む、疾患の危険性の排除若しくは低減、重症度の低下又は発症の遅延を含む。治療的な用途に関しては、有益な又は望ましい結果は、本開示の標的抗原に関連する様々な状態の罹患率の低下若しくはこのような状態の1種以上の症状の改善、前述の状態を処置するために必要な他の作用物質の投薬量の低減、別の作用物質の有効性の向上、及び/又は、患者における本開示の標的抗原に関連する状態の進行の遅延等の臨床結果を含む。
【0088】
「外因性」は、状況に応じて生物、細胞又は人間の外部で生成された物質を指す。
【0089】
「内因性」は、状況に応じて細胞、生物又は人体で生成された物質を指す。
【0090】
「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド配列間の配列類似性を指す。比較すべき2つの配列の両方に含まれるある位置が、同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれに含まれるある位置がアデニンによって占有されている場合、これらの分子は、前述の位置のところが相同である。2つの配列間の同一性の百分率は、比較すべき位置の数で割った後で100をかけた、2つの配列に共有される一致している位置又は相同な位置の数の関数である。例えば、2つの配列が最適にアラインメントされた場合、2つの配列中にある10の位置のうちの6つが一致している又は相同であるとき、これらの2つの配列は、60%相同であり;2つの配列中にある100の位置のうちの95が一致している又は相同であるとき、これらの2つの配列は、95%相同である。一般に、2つの配列がアラインメントされた場合、比較は、最大の同一性の百分率を与えるように実施される。例えば、比較は、BLASTアルゴリズムによって実施することが可能であり、BLASTアルゴリズムでは、アルゴリズムのパラメータは、各参照配列の全長にわたって各配列間で最大の一致を与えるように選択される。次の参考文献は、配列分析のために頻繁に使用されるBLASTアルゴリズムに言及している:BLAST algorithm(BLAST ALGORITHMS):Altschul、SFら、(1990)J.Mol.Biol.215:403~410;Gish,W.ら、(1993)Nature Genet.3:266~272;Madden,TLら、(1996)Meth.Enzymol.266:131~141;Altschul,SFら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389~3402;Zhang,J.ら(1997)Genome Res.7:649~656。NCBI BLASTから入手可能なもの等、他の慣用的なBLASTアルゴリズムも当業者に周知である。
【0091】
本明細書において使用されているとき、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」という表現は互換的に使用されてており、このような呼称はすべて、子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、継代数にかかわらず、初代被検細胞及びこの細胞由来の培養物を含む。すべての子孫は、意図的な変異又は意図的でない変異のため、DNA含量が正確に同一ではないこともあり得ることも、理解すべきである。最初にトランスフォーメーションされた細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物活性を有する、変異のある子孫も含まれる。はっきりと異なる呼称が意図されている場合、そのことは、文脈から明確に理解されよう。
【0092】
「単離される」は、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、又は、細胞破片及び増殖培地等の他の物質等の他の生体分子を実質的に不含である分子を指す。前述の物質が実験又は治療における本明細書に記載の化合物の使用に有意に干渉する量で存在しない限り、一般には、「単離される」という用語は、前述の物質が完全に存在せず、又は水、バッファー若しくは塩が存在しないことを意味するように意図されていない。
【0093】
「任意選択による」又は「任意選択により」は、後に続く事象又は状況が発生し得るが、必ずしも発生するとは限らないことを意味するが、その記載は、事象又は状況が発生する場合又は発生しない場合が含まれる。
【0094】
「医薬組成物」は、本開示による1種以上の化合物又はその生理学的に/薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと、生理学的に/薬学的に許容されるキャリア及び賦形剤等の他の化学成分とを含む、混合物を指す。医薬組成物は、生物への投与を容易にして、有効成分の吸収を促進することにより、生物学的効果を発揮することを目的とする。
【0095】
「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、抗体又は抗原結合性フラグメントの送達を目的とした製剤中への使用に適した、任意の不活性物質を指す。キャリアは、粘着防止剤、粘着剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤又は希釈剤、保存料(抗酸化剤、抗菌剤又は抗真菌剤等)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤及びバッファー等であってよい。適切な薬学的に許容されるキャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール)デキストロース、植物油(オリーブオイル等)、生理食塩水、バッファー、緩衝生理食塩水、並びに、ショ糖、ポリオール、ソルビトール及び塩化ナトリウム等の等張剤が挙げられる。
【0096】
さらに、本開示は、有効成分として本開示の抗クローディン18.2抗体又はその抗体結合性フラグメントを含む、標的抗原(クローディン18.2等)に対して陽性の細胞に関連する疾患を処置するための作用物質を含む。
【0097】
本開示におけるクローディン18.2関連疾患には、その疾患がクローディン18.2に関連する限り、特に制限はない。例えば、本開示の分子によって誘導される治療反応は、(1)ヒトクローディン18.2への本開示の分子の結合により、クローディン18.2の受容体/リガンドへのクローディン18.2の結合を阻止すること、又は、(2)クローディン18.2を過剰発現した腫瘍細胞を死滅させることを含む。したがって、本開示の分子は、治療用途に適した調製物及び製剤に含まれる場合、腫瘍又はがん、好ましくはメラノーマ、結腸がん、乳がん、肺がん、胃がん、腸がん、腎臓がん、非小細胞肺がん、膀胱がん等を有する人物にとって非常に有用である。
【0098】
さらに、本開示は、標的抗原(例えば、クローディン18.2)の免疫検出又は測定のための方法と、標的抗原(例えば、クローディン18.2)の免疫検出又は測定のための試薬と、標的抗原(例えば、クローディン18.2)を発現した細胞の免疫検出又は測定のための方法と、標的抗原(例えば、ヒトクローディン18.2)を特異的に認識し、細胞外アミノ酸配列又はその三次構造に結合する、本開示の抗体又は抗体フラグメントを有効成分として含む、標的抗原(例えば、クローディン18.2)に対して陽性の細胞に関連する疾患を診断するための診断薬とにも関する。
【0099】
本開示において、標的抗原(例えば、クローディン18.2)の量を検出又は測定するための方法は、任意の公知の方法であってよい。このような方法には、例えば、イムノアッセイ法又は免疫検出法が挙げられる。
【0100】
イムノアッセイ法又は免疫検出法は、標識された抗原又は抗体によって、抗体又は抗原の量を検出又は測定する方法である。イムノアッセイ又は免疫検出法の例には、放射性物質標識免疫抗体方法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA又はELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法、ウエスタンブロッティング及び物理化学的方法等が挙げられる。
【0101】
クローディン18.2陽性細胞に関連する上記疾患は、本開示の抗体又は抗体フラグメントを使用してクローディン18.2を発現した細胞を検出又は測定することによって、診断することができる。
【0102】
ポリペプチドを発現した細胞は、公知の免疫検出法、好ましくは免疫沈降、蛍光細胞染色及び免疫組織染色(immunotissue staining)等によって検出することができる。さらに、FMAT8100HTS系(Applied Biosystem)による蛍光抗体染色法等の方法を使用することもできる。
【0103】
本開示においては、組織、細胞、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液又は培地等、標的抗原(例えば、クローディン18.2)について検出又は測定すべきサンプルには、そのサンプルが、標的抗原(例えば、クローディン18.2)を発現した細胞を含み得る限り、特に制限はない。
【0104】
必要とされる診断法に応じて、本開示のモノクローナル抗体又はその抗体フラグメントを含む診断薬は、抗原-抗体反応を実施するための試薬又は抗原-抗体反応を検出するための試薬を含むこともできる。抗原-抗体反応を実施するための試薬には、バッファー及び塩等が挙げられる。検出のための試薬には、イムノアッセイ法又は免疫検出法において一般的に使用される試薬、例えば、モノクローナル抗体、その抗体フラグメント又はそのコンジュゲートを認識する標識された二次抗体、及び標識に対応する基質が挙げられる。
【0105】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が上記明細書には記載されている。本開示の実施及び試験においては、本明細書に記載されたものに類似する又は同一の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に説明する。本明細書及び特許請求の範囲を通して、本開示に関する他の特徴、目的及び利点が明らかになろう。本明細書及び特許請求の範囲においては、そうではないと文脈により明確に示されていない限り、単数形は、複数の態様も含む。そうではないと本明細書において明示的に規定されていない限り、本明細書において使用されているすべての専門用語及び科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書において引用されたすべての特許及び刊行物は、参照により組み込む。下記の例は、本開示の好ましい実施形態をより完全に説明するために提供されている。これらの例は、いかなる点においても本開示の範囲を限定するものとして解されるべきでなく、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【実施例
【0106】
(実施例1)
クローディン18.2を高発現する細胞株の構築
Lipofectamine3000トランスフェクション試薬を使用して、pCDH-hクローディン18.2レンチウイルス発現ベクタープラスミドと、pVSV-G、pCMV-dR8.91レンチウイルスシステムパッケージングベクターとをウイルスパッケージング細胞293Tにトランスフェクションした。ウイルスを含有する培地の上清を収集し、ろ過し、超高速で遠心分離した。濃縮されたウイルスを使用して、ヒト胃印環細胞がん細胞株NUGC4を感染させ、ピューロマイシンによって2~3週間スクリーニングした後、FACSシングルセルソーティングによってソーティングした。
【0107】
クローディン18.2の発現レベルを、腫瘍IHCスコアに応じて判定した。クローディン18.2の発現レベルがIHCスコア3の腫瘍のものと同等の細胞は、高発現細胞として考えられており、クローディン18.2の発現レベルがIHCスコア2の腫瘍のものと同等の細胞は、中発現細胞として考えられている。レンチウイルスを感染させたNUGC4細胞の表面上におけるクローディン18.2の発現を、FACS検出によって検出し、クローディン18.2の発現が最も多いNUGC4/hクローディン18.2モノクローナル細胞株を選択した。同時に、野生型NUGC4細胞の表面上におけるクローディン18.2の発現を、FACSによって検出し、クローディン18.2が中発現したNUGC4クローン細胞株を選択した。野生型NUGC4は、クローディン18.2が低発現した細胞だった。
【0108】
選択したモノクローナル細胞株を増加及び培養し、凍結させ、後続のアッセイのために貯蔵した。
クローディン18.2配列Genbank:NP_001002026:(配列番号:1)
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV。
クローディン18.2DNA配列:(配列番号:2)
1 AGAATTGCGC TGTCCACTTG TCGTGTGGCT CTGTGTCGAC ACTGTGCGCC ACCATGGCCG
61 TGACTGCCTG TCAGGGCTTG GGGTTCGTGG TTTCACTGAT TGGGATTGCG GGCATCATTG
121 CTGCCACCTG CATGGACCAG TGGAGCACCC AAGACTTGTA CAACAACCCC GTAACAGCTG
181 TTTTCAACTA CCAGGGGCTG TGGCGCTCCT GTGTCCGAGA GAGCTCTGGC TTCACCGAGT
241 GCCGGGGCTA CTTCACCCTG CTGGGGCTGC CAGCCATGCT GCAGGCAGTG CGAGCCCTGA
301 TGATCGTAGG CATCGTCCTG GGTGCCATTG GCCTCCTGGT ATCCATCTTT GCCCTGAAAT
361 GCATCCGCAT TGGCAGCATG GAGGACTCTG CCAAAGCCAA CATGACACTG ACCTCCGGGA
421 TCATGTTCAT TGTCTCAGGT CTTTGTGCAA TTGCTGGAGT GTCTGTGTTT GCCAACATGC
481 TGGTGACTAA CTTCTGGATG TCCACAGCTA ACATGTACAC CGGCATGGGT GGGATGGTGC
541 AGACTGTTCA GACCAGGTAC ACATTTGGTG CGGCTCTGTT CGTGGGCTGG GTCGCTGGAG
601 GCCTCACACT AATTGGGGGT GTGATGATGT GCATCGCCTG CCGGGGCCTG GCACCAGAAG
661 AAACCAACTA CAAAGCCGTT TCTTATCATG CCTCAGGCCA CAGTGTTGCC TACAAGCCTG
721 GAGGCTTCAA GGCCAGCACT GGCTTTGGGT CCAACACCAA AAACAAGAAG ATATACGATG
781 GAGGTGCCCG CACAGAGGAC GAGGTACAAT CTTATCCTTC CAAGCACGAC TATGTGTAAT
841 GCTCTAAGAC CTCTCAGCAC GGGCGGAAGA AACTCCCGGA GAGCTCACCC AAAAAACAAG
901 GAGATCCCAT CTAGATTTCT TCTTGCTTTT GACTCACAGC TGGAAGTTAG AAAAGCCTCG
961 ATTTCATCTT TGGAGAGGCC AAATGGTCTT AGCCTCAGTC TCTGTCTCTA AATATTCCAC
1021 CATAAAACAG CTGAGTTATT TATGAATTAG AGGCTATAGC TCACATTTTC AATCCTCTAT
1081 TTCTTTTTTT AAATATAACT TTCTACTCTG ATGAGAGAAT GTGGTTTTAA TCTCTCTCTC
1141 ACATTTTGAT GATTTAGACA GACTCCCCCT CTTCCTCCTA GTCAATAAAC CCATTGATGA
1201 TCTATTTCCC AGCTTATCCC CAAGAAAACT TTTGAAAGGA AAGAGTAGAC CCAAAGATGT
1261 TATTTTCTGC TGTTTGAATT TTGTCTCCCC ACCCCCAACT TGGCTAGTAA TAAACACTTA
1321 CTGAAGAAGA AGCAATAAGA GAAAGATATT TGTAATCTCT CCAGCCCATG ATCTCGGTTT
1381 TCTTACACTG TGATCTTAAA AGTTACCAAA CCAAAGTCAT TTTCAGTTTG AGGCAACCAA
1441 ACCTTTCTAC TGCTGTTGAC ATCTTCTTAT TACAGCAACA CCATTCTAGG AGTTTCCTGA
1501 GCTCTCCACT GGAGTCCTCT TTCTGTCGCG GGTCAGAAAT TGTCCCTAGA TGAATGAGAA
1561 AATTATTTTT TTTAATTTAA GTCCTAAATA TAGTTAAAAT AAATAATGTT TTAGTAAAAT
1621 GATACACTAT CTCTGTGAAA TAGCCTCACC CCTACATGTG GATAGAAGGA AATGAAAAAA
1681 TAATTGCTTT GACATTGTCT ATATGGTACT TTGTAAAGTC ATGCTTAAGT ACAAATTCCA
1741 TGAAAAGCTC ACTGATCCTA ATTCTTTCCC TTTGAGGTCT CTATGGCTCT GATTGTACAT
1801 GATAGTAAGT GTAAGCCATG TAAAAAGTAA ATAATGTCTG GGCACAGTGG CTCACGCCTG
1861 TAATCCTAGC ACTTTGGGAG GCTGAGGAGG AAGGATCACT TGAGCCCAGA AGTTCGAGAC
1921 TAGCCTGGGC AACATGGAGA AGCCCTGTCT CTACAAAATA CAGAGAGAAA AAATCAGCCA
1981 GTCATGGTGG CCTACACCTG TAGTCCCAGC ATTCCGGGAG GCTGAGGTGG GAGGATCACT
2041 TGAGCCCAGG GAGGTTGGGG CTGCAGTGAG CCATGATCAC ACCACTGCAC TCCAGCCAGG
2101 TGACATAGCG AGATCCTGTC TAAAAAAATA AAAAATAAAT AATGGAACAC AGCAAGTCCT
2161 AGGAAGTAGG TTAAAACTAA TTCTTTAAAA AAAAAAAAAA GTTGAGCCTG AATTAAATGT
2221 AATGTTTCCA AGTGACAGGT ATCCACATTT GCATGGTTAC AAGCCACTGC CAGTTAGCAG
2281 TAGCACTTTC CTGGCACTGT GGTCGGTTTT GTTTTGTTTT GCTTTGTTTA GAGACGGGGT
2341 CTCACTTTCC AGGCTGGCCT CAAACTCCTG CACTCAAGCA ATTCTTCTAC CCTGGCCTCC
2401 CAAGTAGCTG GAATTACAGG TGTGCGCCAT CACAACTAGC TGGTGGTCAG TTTTGTTACT
2461 CTGAGAGCTG TTCACTTCTC TGAATTCACC TAGAGTGGTT GGACCATCAG ATGTTTGGGC
2521 AAAACTGAAA GCTCTTTGCA ACCACACACC TTCCCTGAGC TTACATCACT GCCCTTTTGA
2581 GCAGAAAGTC TAAATTCCTT CCAAGACAGT AGAATTCCAT CCCAGTACCA AAGCCAGATA
2641 GGCCCCCTAG GAAACTGAGG TAAGAGCAGT CTCTAAAAAC TACCCACAGC AGCATTGGTG
2701 CAGGGGAACT TGGCCATTAG GTTATTATTT GAGAGGAAAG TCCTCACATC AATAGTACAT
2761 ATGAAAGTGA CCTCCAAGGG GATTGGTGAA TACTCATAAG GATCTTCAGG CTGAACAGAC
2821 TATGTCTGGG GAAAGAACGG ATTATGCCCC ATTAAATAAC AAGTTGTGTT CAAGAGTCAG
2881 AGCAGTGAGC TCAGAGGCCC TTCTCACTGA GACAGCAACA TTTAAACCAA ACCAGAGGAA
2941 GTATTTGTGG AACTCACTGC CTCAGTTTGG GTAAAGGATG AGCAGACAAG TCAACTAAAG
3001 AAAAAAGAAA AGCAAGGAGG AGGGTTGAGC AATCTAGAGC ATGGAGTTTG TTAAGTGCTC
3061 TCTGGATTTG AGTTGAAGAG CATCCATTTG AGTTGAAGGC CACAGGGCAC AATGAGCTCT
3121 CCCTTCTACC ACCAGAAAGT CCCTGGTCAG GTCTCAGGTA GTGCGGTGTG GCTCAGCTGG
3181 GTTTTTAATT AGCGCATTCT CTATCCAACA TTTAATTGTT TGAAAGCCTC CATATAGTTA
3241 GATTGTGCTT TGTAATTTTG TTGTTGTTGC TCTATCTTAT TGTATATGCA TTGAGTATTA
3301 ACCTGAATGT TTTGTTACTT AAATATTAAA AACACTGTTA TCCTACAGTT。
【0109】
(実施例2)
抗ヒトクローディン18.2モノクローナル抗体の産生
1 免疫化
マウスを免疫化することによって、抗ヒトクローディン18.2モノクローナル抗体を産生した。
【0110】
6~8週齢の雌のSJL白色マウスを、実験(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.、動物生産ライセンス番号:SCXK(北京)2012-0001)のために使用した。給餌環境:SPFレベル。購入後、マウスは、20~25℃の温度、40~60%の湿度において、12/12時間の明暗サイクルで1週間、実験環境の中で飼育した。次いで、環境に順応したマウスを、下記のスキームに従って免疫化した。免疫抗原は、huクローディン18.2-HEK293細胞(ヒトクローディン18.2プラスミドを安定的にトランスフェクションしたHEK-293細胞株)だった。
【0111】
免疫化プロトコル:細胞による一次免疫化の前に、TiterMax(登録商標)Gold Adjuvant(Sigma、カタログ番号T2684)を、0.1ml/マウスでマウスに腹腔内(IP)注射し;30分後、各マウスには、0.1mlの生理食塩水によって1×10/mlの濃度に希釈された細胞液を腹腔内(IP)注射した。ピペッティングによって細胞を均一に分散させた後、0日目、14日目、28日目、42日目及び56日目に細胞に接種した。21日目、35日目、49日目及び63日目に血液サンプルを収集し;マウス血清中における抗体価をELISA法によって判定した。4~5回の免疫化の後、プラトーに達する高い血清抗体価を有するマウスを、脾細胞との融合のために選択した。脾細胞との融合の3日前には、ブースター免疫化のために、1×10個の細胞を腹腔内(IP)注射した。
【0112】
2.脾細胞との融合
PEG媒介式の融合手順を用いることにより、脾臓リンパ球を骨髄腫Sp2/0細胞(ATCC(登録商標)CRL-8287(商標))と融合させることによって、ハイブリドーマ細胞を得た。ハイブリドーマ細胞を、0.5×10~1×10/mlの密度で完全培地(20%FBS、1×HAT、1×OPIを含むIMDM培地)に再懸濁させ、100μl/wellで96ウェルプレートに播種し、37℃及び5%COで3~4日間インキュベートし、100μl/wellのHAT完全培地を添加したら、クローンが形成されるまでさらに3~4日間維持した。上清を取り除き、200μl/wellのHT完全培地(20%FBS、1×HT及び1×OPIを含むIMDM培地)を加え、37℃、5%COで3日間インキュベートした後、ELISA検出に供した。
【0113】
3 ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
ハイブリドーマ細胞の増殖密度に応じて、結合ELISA法(binding ELISA method)によって培養上清を検出した。huクローディン18.2-HEK293細胞への強直な結合能力を有するが、HEK293細胞には結合しない細胞を選択した後、遅滞なく増やし、冷凍保存し;単一の細胞クローンが得られるまでサブクローニングを2~3回実施した。
【0114】
各サブクローニング後の細胞も、細胞結合アッセイによって試験した。上記アッセイによるスクリーニングによって、ハイブリドーマクローンを得た。無血清細胞培養法によって、抗体をさらに調製した。抗体は、精製の例に従って精製し、試験例において使用した。
【0115】
(実施例3)
マウス抗体のヒト化
インビトロ活性が高いモノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb1901及びmAb1902を選択し;モノクローナル抗体配列をクローニングした後、ヒト化し、組換え発現させ、活性について評価した。
【0116】
ハイブリドーマから配列をクローニングする手順は、次のとおりだった。対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集した。キットの取扱説明書に従って、Trizol(Invitrogen、15596-018)によってRNAを抽出し、PrimeScript(商標)逆転写酵素(Takara、カタログ番号2680A)によって逆転写した。逆転写から得られたcDNAは、マウスIg-Primer Set(Novagen、TB326 Rev.B0503)を使用してPCRによって増幅し、増幅された生成物は、シーケンシングのために、ある会社に送付した。得られたDNA配列に対応するアミノ酸配列は、配列番号:3~6に示されている。
mAb1901マウス重鎖可変領域(配列番号:3)
EVQLMESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSDYGIHWVRQAPEMGLEWIAYISRGSSTIYYADTVKGRFTMSRDNAKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCARGGYDTRNAMDYWGQGTSVTVSS。
mAb1901マウス軽鎖可変領域(配列番号:4)
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRASGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYHCQNDLYYPLTFGAGTKLELK。
mAb1902マウス重鎖可変領域(配列番号:5)
EVQLQESGAELVKPGASVKLSCKASGYIFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIHPNSGSTNYNEKFKGKATLTLDKSSSTAYMQLSSLPSEDSAVYYCARLKTGNSFDYWGQGTTLTVSS。
mAb1902マウス軽鎖可変領域(配列番号:6)
DIVLTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQNAYTYPFTFGSGTKLEIK。
【0117】
キメラ抗体ch1901及びch1902を形成するように、上記マウス重鎖及び軽鎖可変領域、それぞれ下記のヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトκ軽鎖定常領域に連結した。
【0118】
定常領域は、以下の配列から選択した:
ヒトIgG1抗体重鎖定常領域(配列番号:7)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
ヒトκ軽鎖定常領域:(配列番号:8)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0119】
当技術分野の多数の文献で開示されているようにして、マウスモノクローナル抗体をヒト化した。簡単に説明すると、親(マウス抗体)定常ドメインをヒト定常ドメインによって置きかえ、マウス抗体とヒト抗体との相同性に基づいて、ヒト生殖細胞系列抗体配列を選択して、CDRグラフト化を実施した。本発明においては、好ましい活性を有する候補分子をヒト化のために選択したが、その結果は、以下のとおりである。
【0120】
1.マウス抗体のCDR領域
表4中のVH/VL CDRアミノ酸残基は、Kabat式ナンバリング基準に従って決定し、注釈を付けた。
マウス抗体のCDR配列は、表4に示されている。
【0121】
【表4】
【0122】
2.ヒト生殖細胞系列FR領域配列の選択
得られたマウス抗体VH/VLCDRの典型的構造に基づいて、重鎖及び軽鎖可変領域配列を抗体生殖細胞系列データベースと比較して、相同性が高いヒト生殖細胞系列テンプレートを得た。ヒト生殖細胞系列軽鎖フレームワーク領域は、ヒトκ軽鎖遺伝子に由来した。
【0123】
2.1 mAb1901のヒト化及び復帰変異の設計
mAb1901マウス抗体のヒト化に適したヒト抗体生殖細胞系列を選択した。マウス抗体mAb1901のCDR領域を、選択したヒト化テンプレートにグラフト化して、ヒト化可変領域を得た。配列番号:24に示されるヒト化重鎖可変領域配列及び配列番号:21に示される軽鎖可変領域配列を、IgG定常領域と合わせて、インタクト抗体を形成する。同時に、ヒト化抗体のV領域中のFR領域を復帰変異させたが、例示的な復帰変異及び組合せは、以下のとおりである。
【0124】
【表5】
表中のすべてのアミノ酸の位置は、Kabat式ナンバリング基準に従って付番した。重鎖可変領域のN82Tの場合、82は、Kabat基準に従った82Aの位置を指す。
【0125】
【表6】
【0126】
上記表に示された対応する重鎖可変領域を、配列番号:7に示されるヒトIgG1重鎖定常領域に連結して、完全長抗体の重鎖を形成することもできるし、軽鎖可変領域を、配列番号:8に示されるヒトκ軽鎖定常領域に連結して、完全長抗体の軽鎖を形成することもできる。他の実施形態において、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を他の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域に別々に連結して、完全長抗体を形成することもできる。
【0127】
2.2 mAb1902のヒト化及び復帰変異の設計
mAb1902マウス抗体のヒト化に適したヒト抗体生殖細胞系列を選択した。マウス抗体mAb1902のCDR領域を、選択したヒト化テンプレートにグラフト化して、ヒト化可変領域を得た。ヒト化重鎖可変領域配列は、配列番号:31に示されるとおりであり、軽鎖可変領域配列は、配列番号:28に示されるとおりであるが;次いで、IgG定常領域によって組み換えて、インタクト抗体を形成した。同時に、ヒト化抗体のV領域中のFR領域を復帰変異させたが、例示的な復帰変異の方法及び組合せは、以下のとおりである。
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
上記表に示された対応する重鎖可変領域を、配列番号:7に示されるヒトIgG1重鎖定常領域に連結して、完全長抗体の重鎖を形成することもできるし、軽鎖可変領域を配列番号:8に示されるヒトκ軽鎖定常領域に連結して、完全長抗体の軽鎖を形成することもできる。
【0131】
一例として、抗体の完全長配列は、以下のとおりである:
キメラ抗体ch1901:
ch1901重鎖:(配列番号:35)
EVQLMESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSDYGIHWVRQAPEMGLEWIAYISRGSSTIYYADTVKGRFTMSRDNAKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCARGGYDTRNAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
ch1901軽鎖(配列番号:36)
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRASGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYHCQNDLYYPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
キメラ抗体ch1902:
ch1902重鎖(配列番号:37)
EVQLQESGAELVKPGASVKLSCKASGYIFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIHPNSGSTNYNEKFKGKATLTLDKSSSTAYMQLSSLPSEDSAVYYCARLKTGNSFDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
ch1902軽鎖(配列番号:38)
DIVLTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQNAYTYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0132】
【表9】
【0133】
完全長抗体の軽鎖配列及び重鎖配列は、以下のとおりである。
【0134】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0135】
【表11】
【0136】
完全長抗体の軽鎖配列及び重鎖配列は、以下のとおりである。
【0137】
【表12-1】
【0138】
本開示のポジティブコントロール抗体は、IMAB-362(WO2016166122から入手可能)だった。
IMAB-362重鎖(配列番号:53)
1 QVQLQQPGAE LVRPGASVKL SCKASGYTFT SYWINWVKQR PGQGLEWIGN
51 IYPSDSYTNY NQKFKDKATL TVDKSSSTAY MQLSSPTSED SAVYYCTRSW
101 RGNSFDYWGQ GTTLTVSSAS TKGPSVFPLA PSSKSTSGGT AALGCLVKDY
151 FPEPVTVSWN SGALTSGVHT FPAVLQSSGL YSLSSVVTVP SSSLGTQTYI
201 CNVNHKPSNT KVDKRVEPKS CDKTHTCPPC PAPELLGGPS VFLFPPKPKD
251 TLMISRTPEV TCVVVDVSHE DPEVKFNWYV DGVEVHNAKT KPREEQYNST
301 YRVVSVLTVL HQDWLNGKEY KCKVSNKALP APIEKTISKA KGQPREPQVY
351 TLPPSREEMT KNQVSLTCLV KGFYPSDIAV EWESNGQPEN NYKTTPPVLD
401 SDGSFFLYSK LTVDKSRWQQ GNVFSCSVMH EALHNHYTQK SLSLSPGK。
IMAB-362軽鎖(配列番号:54)
1 DIVMTQSPSS LTVTAGEKVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
51 KLLIYWASTR ESGVPDRFTG SGSGTDFTLT ISSVQAEDLA VYYCQNDYSY
101 PFTFGSGTKL EIKRTVAAPS VFIFPPSDEQ LKSGTASVVC LLNNFYPREA
151 KVQWKVDNAL QSGNSQESVT EQDSKDSTYS LSSTLTLSKA DYEKHKVYAC
201 EVTHQGLSSP VTKSFNRGEC。
【0139】
慣用的な遺伝子クローニング及び組換え発現方法によって上記抗体をクローニングし、発現させ、精製した。
【0140】
インビトロ生物学的評価
試験例1:細胞レベルにおけるELISA結合アッセイ
細胞ベースのELISAアッセイを用いて、クローディン18.2抗体の結合特性を検出した。クローディン18.2を安定的に発現したNUGC4細胞を、細胞増殖密度が90%に到達するまで96ウェル細胞プレート(Corning、3599)内で培養し、4%パラホルムアルデヒドを加えて、細胞を1時間固定した。PBSTバッファー(0.05%Tween-20を含有するpH7.4のPBS)によってプレートを3回洗浄した後、PBSによって希釈された200μl/wellの5%スキムミルク(Bright脱脂粉乳)をブロッキング溶液として加えることによってブロッキングし、37℃のインキュベーター内で2.5時間又は4℃で終夜(16~18時間)インキュベートした。ブロッキング後、ブロッキング溶液を廃棄し、プレートをPBSTバッファーによって3回洗浄し、サンプル希釈剤(1%スキムミルクを含有するpH7.4のPBS)によって希釈された50μl/wellの試験用抗体を加え、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーションの完了後、プレートをPBSTによって5回洗浄し、サンプル希釈剤によって希釈された100μl/wellのHRP標識ヤギ抗ヒト二次抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-003)を加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBSTによって6回洗浄した後、50μl/wellのTMB発色基質(KPL、カタログ番号52-00-03)を加え、室温で10~15分間インキュベートし、50μl/wellの1M H2SO4を加えて、反応を停止させた。MD Versa Max(商標)マイクロプレートリーダーによって、吸光度の値を450nmで読み取り、クローディン18.2に結合したクローディン18.2抗体を示すEC50値を計算した(その結果は、以下の表に示されている。)。
【0141】
【表13】
【0142】
【表14-1】
【0143】
【表14-2】
【0144】
試験例2:細胞レベルにおける抗体の結合アッセイ
クローディン18.2を安定的に発現したNUGC4細胞と、PBS(Sigma、P4417-100タブ)、pH7.4)中のFACSバッファー(2%ウシ胎児血清(Gibco、10099141)とを用いて、1×10/mlの細胞懸濁液を調製し、100μl/wellで96ウェル丸底プレート(Corning、3795)に加えた。遠心分離して、上清を取り除いた後、FACSバッファーによって希釈された様々な濃度の試験用クローディン18.2抗体を50μl/wellで加え、4℃冷蔵庫内の暗所で1時間インキュベートした。300gで遠心分離し、FACSバッファーによって3回洗浄した後、Alexa Fluor488によってコーティングされた作用濃度の抗ヒトIgG(H+L)(invitrogen、A-11013)を加え、4℃の冷蔵庫内の暗所で40分間インキュベートした。300gで遠心分離し、FACSバッファーによって3回洗浄した後、幾何平均蛍光強度をBD FACS CantoIIフローサイトメーターによって測定し、クローディン18.2を安定的に発現したNUGC4細胞に結合したクローディン18.2抗体を示すEC50値を計算した。その結果は、図1に示されている。
【0145】
試験例3:抗体のエンドサイトーシスアッセイ
5μg/mlの最終濃度になるように、DyLight488NHSエステル(thermofisher、46403)によってあらかじめ標識された試験用クローディン18.2抗体を、クローディン18.2を安定的に発現した1×10/mlのNUGC4細胞に加え、氷の上に置き、暗所で1時間インキュベーションし、遠心分離し、あらかじめ冷却されたFACSバッファー(PBS中の2%ウシ胎仔血清、pH7.4)によって3回洗浄し、上清を取り除いた後、あらかじめ加温された完全培地を加え、37℃、5%COの細胞インキュベーターに入れた。0時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後及び4時間後のそれぞれで細胞を取り出し、暗所において氷の上に置いた。すべてのサンプルを収集し、低温において300gで遠心分離した後、溶出バッファー(0.05Mグリシン、0.1M塩化ナトリウム、pH1.7)を加え、室温で7分間インキュベートした。サンプルを300gで遠心分離し、FACSバッファーによって1回洗浄し、幾何平均蛍光強度をBD FACS CantoIIフローサイトメーターによって測定し、クローディン18.2を安定的に発現したNUGC4細胞に対するクローディン18.2抗体のエンドサイトーシス効率を計算した。その結果により(図2を参照れたい。)、ヒト化抗体が好ましいエンドサイトーシス効率を有することが示されている。
【0146】
試験例4:フローサイトメトリーに基づいた抗体のアフィニティの測定
試験当日には、ウェル1個当たり1×10~2×10個の細胞になるように、HEK293/hクローディン18.2細胞を収集して、丸底96ウェルプレートに入れた。5μg/mlの初期濃度、2倍勾配希釈(12の濃度点)でクローディン18.2抗体を加え、4℃で1時間インキュベートした。ポジティブコントロールは、IMAB362であり、抗体を含まないウェルは、ネガティブコントロールとして設定した。遠心分離によって抗体を取り除いた後、100μl/wellのFITC抗ヒトIgG Fc抗体(200×)を加え、暗所において4℃で30分間インキュベートし、PBS+2%FBSによって2回洗浄し、フローサイトメトリー検出用に調製した。BD FACS CantoIIを始動させ、予備加熱し、新たなアッセイを、BD FACS Divaソフトウェアによって確立した。HEK293/hクローディン18.2ネガティブコントロールサンプルを検出し、FSC電圧及びSSC電圧を適切な値に調整し、保存した。Quantum(商標)FITC-5 MESFキットの取扱説明書に従って、ブランクサンプルB及び標準曲線1をそれぞれ検出した。FITC電圧を適切な値に調整し、保存した。保存した電圧下で、丸底96ウェルプレート内のサンプルを検出し、データを記録した。Flowjoソフトウェアを使用して、実験データを分析し、これによって、Geo Mean値を得たら、Quantum(商標)FITC-5MESFキットの取扱説明書に従って、MESF-Geo Mean標準曲線を当てはめた。HEK293/hクローディン18.2細胞に結合したクローディン18.2抗体のモル濃度及び遊離抗体の濃度を、FITC抗ヒトIgG Fc抗体の濃度蛍光値に基づいて計算し、抗体のBmax及び解離定数KDを、スキャッチャードプロット法を用いることによって計算した。その結果は、表15に示されている。
【0147】
【表15】
【0148】
試験例5:抗体のADCC効果の評価
様々なNUGC4細胞(クローディン18.2の高発現、中発現及び低発現)を消化し、1000rpmで遠心分離し、再懸濁させて、カウントした。10%FBS(ニュージーランド産Ultra-low IgGウシ胎児血清、Gibco、1921005PJ)を含有するフェノールレッド不含RPMI1640(Gibco、カタログ番号11835-030)に、細胞を3×10細胞/mlで再懸濁させた。25μlの細胞を、96ウェルプレート(Corning、3903)の各ウェルに7500細胞/wellで加えた。抗体を上記フェノールレッド不含培地に希釈して、3倍抗体希釈溶液を調製し、25μl/wellの抗体を細胞プレートに加え、37℃の5%COインキュベーター内で0.5時間インキュベートした。
【0149】
(FcrR3A-V158-NFAT-RE-Jurkat細胞)エフェクター細胞を収集し、1000rpmで遠心分離し、再懸濁させて、カウントした。10%FBS(ニュージーランド産Ultra-low IgGウシ胎児血清)を含有するフェノールレッド不含RPMI1640に、細胞を3×10細胞/mlで再懸濁させ、25μlの細胞をアッセイプレート(7.5×10細胞/well)に加え、37℃、5%COインキュベーター内で6時間インキュベートした。
【0150】
75μl/wellのBright-Glo(Promega、E2610)をアッセイプレートの各ウェルに加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer、VITOR3)によって化学発光を検出した。
【0151】
その結果により(表16及び図3A図3Cを参照されたい。)、抗体h1901-11とh1902-5は両方とも、低レベル、中レベル及び高レベルのクローディン18.2を発現したNUGC4細胞内で、非常に強いADCC活性を示すことが示されている。
【0152】
【表16】
図1
図2
図3
【配列表】
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