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特許7592036ワークピースの研磨中のウェーハスリップ検出の現場調整方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ワークピースの研磨中のウェーハスリップ検出の現場調整方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/005 20120101AFI20241122BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20241122BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241122BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B24B37/005 Z
B24B37/013
B24B49/12
H01L21/304 622R
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021576758
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020044109
(87)【国際公開番号】W WO2021025927
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】62/882,417
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519379905
【氏名又は名称】アクス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】トロジャン ダニエル レイ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-096455(JP,A)
【文献】特開2006-035328(JP,A)
【文献】特開2010-036299(JP,A)
【文献】特開2020-188233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0134571(US,A1)
【文献】特開2009-094407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械平坦化(CMP)システムであって、
基板を保持するように構成されたキャリアと、
研磨パッドを支持するプラテンと、
前記研磨パッドの表面の特性を示す信号を生成するように構成されたスリップセンサーと、
プロセッサであって、
前記基板の研磨を開始し、
前記CMPシステムが、前記基板の研磨中に実現される前記研磨パッドの前記表面の前記特性の定常状態を表す定常状態にあることを決定し、
前記CMPシステムが前記定常状態にあると決定したことに応答して、規定された時間の長さにわたって前記スリップセンサーから前記信号を受信し、
前記CMPシステムが前記定常状態にあるときに、前記規定された時間の長さにわたって受信された前記スリップセンサーからの前記信号に基づいて、前記信号の定常値を校正し、
記スリップセンサーから受信した前記信号と、前記校正された定常値とを比較し、
記スリップセンサーから受信した前記信号と校正された前記定常値との差分が閾値より大きいことに応答して、ウェーハスリップを検出するように構成されたプロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの前記表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、更に、
前記基板の研磨中に前記スリップセンサーから受信した前記信号に基づいて、前記定常値をリアルタイムに再校正するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記CMPシステムが前記定常状態にあると決定することは、更に、
前記プラテンの回転、前記キャリアの回転、前記基板に印加された圧力、前記基板を前記キャリア内に保持するように構成された保持リングに印加された圧力、及び/又は前記研磨パッドに供給された流体の流量のうちの少なくとも1つに基づ、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、更に、前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記規定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、前記基板の研磨中に前記スリップセンサーにより測定される前記研磨パッドの各部分を測定することができる、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
化学機械平坦化(CMP)研磨中にウェーハスリップを検出する方法であって、
CMPシステムを用いて基板の研磨を開始することと、
前記CMPシステムが、前記基板の研磨中に実現される研磨パッドの表面の特性の定常状態を表す定常状態にあることを決定することと、
前記CMPシステムが前記定常状態にあると決定したことに応答して規定された時間の長さにわたってスリップセンサーから信号を受信することであって、前記CMPシステムに含まれる前記スリップセンサーは、前記基板を保持するように構成されたキャリアと、前記研磨パッドを支持するプラテンとを含み、前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの前記表面の前記特性を示す前記信号を生成するように構成された前記スリップセンサーから前記信号を受信することと、
前記CMPシステムが前記定常状態にあるときに、前記規定された時間の長さにわたって受信した前記スリップセンサーからの前記信号に基づいて、前記信号の定常値を校正することと、
記スリップセンサーから受信した前記信号と、前記校正された定常値とを比較することと、
記スリップセンサーから受信した前記信号と校正された前記定常値との差分が閾値より大きいことに応答して、ウェーハスリップを検出することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの前記表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の研磨中に前記スリップセンサーから受信した前記信号に基づいて、前記定常値をリアルタイムに再校正することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記CMPシステムが前記定常状態にあると決定することは、更に、プラテンの回転、キャリアの回転、基板に印加された圧力、前記基板を前記キャリア内に保持するように構成された保持リングに印加された圧力、及び/又は前記研磨パッドに供給された流体の流量のうちの少なくとも1つに基づ、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記規定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、前記基板の研磨中に前記スリップセンサーにより測定される前記研磨パッドの各部分を測定することができる、請求項に記載の方法。
【請求項13】
化学機械平坦化(CMP)システムであって、
基板を保持するように構成されたキャリアと、
研磨パッドを支持するプラテンと、
前記研磨パッドの表面の特性を示す信号を生成するように構成されたスリップセンサーと、
プロセッサであって、
前記基板の研磨を開始し、
前記CMPシステムが、前記基板の研磨中に実現される前記研磨パッドの前記表面の前記特性の定常状態を表す定常状態にあることを決定し、
前記CMPシステムが前記定常状態にあると決定することに応答して、規定された時間の長さにわたって前記スリップセンサーから前記信号を受信し、
前記CMPシステムが前記定常状態にあるときに、前記規定された時間の長さにわたって受信した前記スリップセンサーからの前記信号に基づいて、前記信号の定常値を校正し、
記スリップセンサーから受信した前記信号と、校正された前記定常値とを比較し、
前記基板の研磨中に前記スリップセンサーから受信した前記信号と校正された前記定常値との差分が閾値より大きいことに応答して、ウェーハスリップを検出するように構成されたプロセッサと、を含む、システム。
【請求項14】
前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの前記表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、更に、
前記基板の研磨中に前記スリップセンサーから受信した前記信号に基づいて、定常値をリアルタイムに再校正するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、更に、
前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記規定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、前記基板の研磨中に前記スリップセンサーにより測定される前記研磨パッドの各部分を測定することができる、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、薄膜の平坦化のための化学機械平坦化(chemical mechanical planarization、CMP)性能を改善する方法及び装置に関する。
【関連技術の概要】
【0002】
化学機械平坦化(CMP)又は研磨中に、摩耗性で酸性又はアルカリ性のいずれかのスラリーとは、計量ポンプ又は質量流量制御レギュレータシステムを介して、回転研磨パッド/プラテンに塗布される。基板又はウェーハは、回転され、研磨プラテン上の研磨パッドに対して特定の時間にわたって押し付けられるウェーハキャリアによって保持される。スラリーは、通常、シングルパス分配システムで研磨プラテンに運ばれる。ウェーハは、CMPプロセス中に機械的手段(例えば、摩耗)と化学的手段(例えば、腐食)の両方によって研磨(つまり、平坦化)される。
【0003】
CMPプロセス中に、基板、ウェーハキャリア、研磨パッド及び研磨プラテンの間の相互作用により、かなりの力が生じる。この接触中にしっかりと保持されていない基板は、その位置から滑って、プロセスに悪影響を与える可能性がある。したがって、処理中の基板のこのようなスリップを検出する能力を改善して、CMP効率を向上させ、製造コストを削減する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
開示された技術の一態様は、ウェーハの研磨中にウェーハスリップ検出を現場調整(insitu adjustment)する方法である。一態様では、化学機械平坦化(CMP)システムは、基板を保持するように構成されたキャリアと、研磨パッドを支持するプラテンと、前記研磨パッドの表面の特性を示す信号を生成するように構成されたスリップセンサーと、前記スリップセンサーから信号を受信し、前記CMPシステムが定常状態にあるときに、信号の定常値を校正し、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号と、校正された定常値とを比較し、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に応答して、校正された定常値から閾値を超えて異なるウェーハスリップを検出するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0005】
特定の実施形態では、前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む。
【0006】
特定の実施形態では、前記プロセッサは、更に、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に基づいて、前記定常値をリアルタイムに再校正するように構成される。
【0007】
特定の実施形態では、前記プロセッサは、更に、前記プラテンの回転、前記キャリアの回転、前記基板に印加された圧力、前記基板を前記キャリア内に保持するように構成された保持リングに印加された圧力、及び/又は前記研磨パッドに供給された流体の流量のうちの少なくとも1つに基づいて、前記CMPシステムが定常状態にあると決定するように構成される。
【0008】
特定の実施形態では、前記プロセッサは、更に、前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止するように構成される。
【0009】
特定の実施形態では、前記定常値を校正することは、前記スリップセンサーからの信号を設定された時間の長さにわたって読み取って、一連の期待スリップセンサー値を取得することを含む。
【0010】
特定の実施形態では、前記設定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、CMP研磨中に前記スリップセンサーにより測定される研磨パッドの各部分を測定することができる。
【0011】
別の態様に係る化学機械平坦化(CMP)研磨中にウェーハスリップを検出する方法は、研磨パッドを含むCMPシステムの、前記研磨パッドの表面の特性を示す信号を生成するように構成されたスリップセンサーから信号を受信することと、前記CMPシステムが定常状態にあるときに、信号の定常値を校正することと、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号と、校正された定常値とを比較することと、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に応答して、校正された定常値から閾値を超えて異なるウェーハスリップを検出することと、を含む。
【0012】
特定の実施形態では、前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む。
【0013】
特定の実施形態では、前記方法は、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に基づいて、前記定常値をリアルタイムに再校正することを更に含む。
【0014】
特定の実施形態では、前記方法は、前記プラテンの回転、前記キャリアの回転、前記基板に印加された圧力、前記基板を前記キャリア内に保持するように構成された保持リングに印加された圧力、及び/又は前記研磨パッドに供給された流体の流量のうちの少なくとも1つに基づいて、前記CMPシステムが定常状態にあると決定することを更に含む。
【0015】
特定の実施形態では、前記方法は、前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止することを更に含む。
【0016】
特定の実施形態では、前記定常値を校正することは、前記スリップセンサーからの信号を設定された時間の長さにわたって読み取って、一連の期待スリップセンサー値を取得することを含む。
【0017】
特定の実施形態では、前記設定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、CMP研磨中に前記スリップセンサーにより測定される研磨パッドの各部分を測定することができる。
【0018】
また別の態様に係る化学機械平坦化(CMP)システムは、基板を保持するように構成されたキャリアと、研磨パッドを支持するプラテンと、前記研磨パッドの表面の特性を示す信号を生成するように構成されたスリップセンサーと、前記スリップセンサーから信号を受信し、設定された時間の長さにわたって一連の期待センサー値(expected sensor values)を取得し、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号と、一連の期待センサー値とを比較し、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に応答して、前記一連の期待センサー値から閾値を超えて異なるウェーハスリップを検出するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0019】
特定の実施形態では、前記スリップセンサーは、前記研磨パッドの表面の反射率を測定するように構成された光学センサーを含む。
【0020】
特定の実施形態では、前記プロセッサは、更に、CMP研磨中に前記スリップセンサーから受信した信号に基づいて、前記定常値をリアルタイムに再校正するように構成される。
【0021】
特定の実施形態では、前記プロセッサは、更に、前記ウェーハスリップを検出したことに応答して、前記CMPシステムの構成要素の全ての動きを停止するように構成される。
【0022】
特定の実施形態では、前記設定された時間の長さにより、前記スリップセンサーは、CMP研磨中に前記スリップセンサーにより測定される前記研磨パッドの各部分を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
開示された技術の上記ならびに追加の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、開示された技術の特定の実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通じてよりよく理解されるであろう。図面では、特に明記しない限り、同じ要素に同じ参照番号を使用する。
【0024】
図1】プロセス改善システムを備えた化学機械平坦化システムの概略図であり、ウェーハを処理位置に保持するウェーハキャリアを示す。
図2図1の化学機械平坦化システムの図であり、ウェーハを装填位置に保持するウェーハキャリアを示す。
図3】可動支持構造に取り付けられたプロセス改善システムを備えた化学機械平坦化システムの概略図である。
図4】ウェーハの表面へ又はその上での改善システムプロセスの現場適用を可能にするために研磨パッドに埋め込まれたプロセス改善システムを備えた化学機械平坦化システムの概略図である。
図5】本開示の態様に係るスリップセンサーを含む例示的なCMPシステムの図である。
図6】本開示の態様に係るスリップセンサーの概略図である。
図7図6に示されたスリップセンサーの分解図である。
図8】ウェーハの損失又はスリップを検出する例示的な方法を示すフローチャートである。
図9】ウェーハの損失又はスリップを検出する別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図10】ウェーハの損失又はスリップを検出する更に別の例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、開示された技術の詳細な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
化学機械研磨(CMP)システムの紹介
半導体IC、MEMSデバイス及びLEDの製造において、薄膜を平坦化するために、化学機械研磨(CMP)を採用し、使用することは、他の多くの類似した用途の中で、これらのタイプのデバイスのために「チップ」を製造する企業の間で一般的である。この採用(adoption)には、携帯電話、タブレット及び他の携帯デバイス、並びにデスクトップ及びラップトップコンピュータのためにチップを製造することを含む。ナノ技術とマイクロ機械加工の成長は、医療分野、自動車分野、及びモノのインターネット(「IoT」)におけるデジタルデバイスで広範に使用され、適応されるので、絶えず大きな期待が寄せられる。薄膜の平坦化のための化学機械研磨は、1980年代初頭に、IBM社の科学者及び技術者によって発明され、開発された。今日、このプロセスは、世界的に広く普及しており、ほぼ全てのデジタルデバイスの製造において真に可能な技術の1つである。
【0027】
集積回路は、導電性材料(銅、タングステン、アルミニウムなど)、絶縁層(二酸化ケイ素、窒化ケイ素など)及び半導電性材料(ポリシリコン)の複数の層及び交互の層を備えて製造される。これらの層の連続的な組み合わせが、ウェーハの表面に順次適用されるが、その表面にデバイスが埋め込まれるため、二酸化ケイ素絶縁体層の場合と同様に、デバイス構造上にトポグラフィック起伏(topographical undulation)が構築される。これらの望ましくないトポグラフィック起伏は、次の層が堆積される前に、フラットにされるか又は「平坦化」される必要がある。銅層の場合、銅は、表面上に堆積されて、コンタクトビアを充填し、デバイスからデバイスへの電子移動、及び層から層への電子移動のために有効な垂直経路を作る。この手順は、適用される(通常、堆積プロセスによって適用される)各層に続く。導電性材料の複数の層(金属の複数の層)の場合、これは、回路を成功させるために、多数の研磨手順(導体、絶縁体及び半導体材料の各層に対して1つの手順)が生じる可能性がある。
【0028】
CMPプロセスは、これをすべて可能にする多層回路の製造における実現技術である。
【0029】
CMPプロセスにおける主なコスト要因は、研磨スラリー及び研磨パッドなどの消耗品セットに関連する総体コストからなる。CMP処理に使用される典型的な研磨スラリーとしては、例えば、水性媒体に懸濁されるか又は含まれる摩耗性粒子(例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルセリアなど)のコロイド懸濁液が挙げられる。
【0030】
研磨パッドは、典型的には、ポリウレタン系である。その上、典型的なCMP研磨パッドは、通常、直径が18インチ~24インチであり、この寸法は、世界中で使用される一般的な研磨機上の研磨プラテン(つまり、テーブル)のサイズによって決まる。しかしながら、いくつかの用途(例えば、精密光学の用途)では、直径が更に大きくなる場合がある(例えば、最大48インチ以上)。これらの研磨パッドは、非常に平坦な研磨プラテン(つまり、研磨テーブル)に感圧接着剤により取り付けられる。
【0031】
CMPプロセス中に、スラリーは、定量ポンプ又は質量流量制御レギュレータシステム(mass-flow-control regulator system)を介して、回転研磨パッドに塗布される。また、基板又はウェーハは、回転され、研磨プラテンに対して特定の時間にわたって押し付けられるウェーハキャリアによって保持される。「基板」及び「ウェーハ」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、例えば、半導体又はシリコンウェーハ、フラットパネルディスプレイ、ガラスプレート又はディスク、プラスチックワークピース、及び本明細書に開示される装置及びプロセスの1つ以上の実施形態の実施を可能にする、様々な形状(例えば、円形、正方形、長方形など)及びサイズを有する他の実質的に剛性で、平坦で薄いワークピースを含む。その上、スラリーは、例えば、シングルパス分配システムで研磨プラテンに運ばれてもよい。通常、期待されるのは、それらの媒体中のスラリー粒子が、回転ウェーハと、回転プラテン及び/又は研磨パッドとの間に均等に分配されるということである。しかしながら、研磨スラリーの多くが、遠心力によって、及び/又は研磨パッド/プラテンに対するウェーハの「スクイージー」作用(“squeegee” action)によって研磨パッド/プラテンのエッジに掃引されるので、効果がないことも生産的でないことも非常に典型的である(quite typical)。そのため、研磨スラリーのこの部分は、決してウェーハの表面に到達しない可能性があり、スラリーのその部分を研磨動作において非活動的に参加(inactive participant)させる。いくつかの場合、研磨パッドの表面の疎水性は、研磨スラリーが容易に掃引され、最終的には廃棄物の排水管に掃引されることに寄与する。
【0032】
ウェーハと研磨パッドとの間に圧力を提供するようにウェーハに力を(例えば、基板キャリアヘッドによって、例えば、キャリアヘッド内の膜に印加された圧力を介して)印加して、ウェーハをパッドに押し込んで処理する。また、ウェーハとパッドの両方は、相対速度を生み出すための動きを持つ。その動き及び力により、摩耗性粒子又は他の研磨剤がウェーハの表面を横切って移動する間に、摩耗性粒子又は他の研磨剤をウェーハ(すなわち、基板)に押し付けることで、パッドの一部に摩耗を引き起こす。スラリー中の腐食性化学物質は、ウェーハの表面上で研磨される材料を変化させる。化学的変化と組み合わされたこの摩耗の機械的効果は、化学機械平坦化又は研磨(CMP)と呼ばれる。よって、基板からの材料の除去率は、化学的効果又は機械的効果のいずれか一方を単独で使用する場合と比較して、化学的効果と機械的効果との両方を同時に使用することで、桁違いに高くなる可能性がある。同様に、研磨後の表面の滑らかさも、化学的効果と機械的効果を併用することにより最適化してもよい。
【0033】
歩留まりは、多くの製品(例えば、集積回路、MEMS、LEDなど)の製造レベルでの成功を決定する原動力である。よって、ソリッドステートデバイスの製造のための累積コストは、「所有コスト」(“Cost-of-Ownership”(CoO))と呼ばれ、この用語は、必要な製造ステップのそれぞれにも適用される。最終的に、CMPプロセスのCoOは、半導体「チップ」及びそれに関連するデジタルデバイスを製造するために必要な500~800個の製造ステップにおいて、CoO数値が最も高いものの1つである。
【0034】
CMPプロセスにおける2つの課題は、研磨される層ごとに必要な研磨スラリーの最適量を減らすことと、研磨パッド及び研磨スラリーの寿命を延ばすこととである。別の課題は、基板及び/又は機器を損傷し、その結果、歩留まりを低下させてCoOを増加させる可能性がある、研磨中の基板のキャリアからのスリップ又は損失を防止することである。
【0035】
数年の間、様々な個人及び革新的な企業は、研磨スラリーの再生利用システムを製造しようと試みてきた。これらのシステムは、ほとんどが本来オフライン(つまり、研磨室から離れる)又は本来インライン(つまり、各研磨機の近くに位置決めされた使用場所(POU)のスラリー分配システム内)のいずれかである。効果的なCMP研磨スラリーを監視し制御するための4つの重要な要因は、スラリーのpH、摩耗性成分の粒径、スラリーの比重及びスラリーの清浄度である。
【0036】
スラリーが研磨パッド上に分配されると、蒸発などの環境要因は、スラリー中の流体媒体の含有量を変化させる傾向がある。この含有量の変化は、スラリーのpHに影響を与える傾向があり、その結果、スラリーの比重に悪影響を与える傾向がある。研磨プロセス中に、材料(例えば、銅、ポリシリコンなど)がウェーハの表面から除去され、微細な粒子が生成される。これらの微細な粒子は、スラリー中に懸濁したままであるか、又は研磨パッド中に埋め込まれるか、又はその両方である。これらの微細な粒子は、研磨される膜の表面に引っかき傷(scratch)を生じさせて、回路の壊滅的な故障を引き起こす。
【0037】
研磨スラリーの組成におけるこれらの物理的変化は、機械工場及び精密光学製造用途における特定のラッピングスラリー又は微粉砕スラリーに対して壊滅的ではないが、半導体シリコンウェーハの表面を悲劇的に、壊滅的に、及び/又は恒久的に損傷する可能性がある。これらの引っかき傷及び故障は、損傷したチップを無用にするため、歩留まりに悪影響を与える可能性がある。これら及び他の理由により、スラリーの再生利用/再循環システムは、金属ラッピング用途、及び表面品質の許容誤差がミクロン単位である一部の精密光学用途において一般的であるが、表面品質の許容誤差がナノメートル、更にオングストロームで測定されるCMPプロセス産業(例えば、半導体製造工場など)又は、例えば鋳造業(foundries)では特に成功していない。
【0038】
開示された技術は、基板の浪費、歩留まり及びCoOに関して、例えば、CMPプロセスにおける現場ウェーハスリップ検出システムの利用により、CMPの歩留まりを向上させ、CMPプロセスを全体的に改善することで、上記の多くの問題に対処することを目的とする。
【0039】
図1は、CMPプロセスを向上させるプロセス改善システム130を含む化学機械平坦化(CMP)システム100の概略図である。システム100は、ウェーハを保持して処理するように構成されたウェーハキャリア150を含むことができる。図示の実施形態では、ウェーハキャリア150は、処理(つまり、下側)位置にあり、研磨パッド110に対してウェーハ又は基板155(図1には示されず)を保持する。研磨パッド110は、プラテン120の表面などの支持面上に位置決めされてもよい。いくつかの実施形態では、プラテン120は、ウェーハキャリア、パッド調整アーム、プロセス改善システム及びスラリー送達システムなどのシステム100の構成要素と接触するように上方に上昇するように構成されてもよい。
【0040】
図2は、図1の化学機械平坦化システムの図であり、ウェーハキャリア150によって装填(例えば、上側又は上部)位置に保持されたウェーハ155を示す。いくつかの実施形態では、ウェーハ155は、例えば、真空の力によって保持することができる。例えば、ウェーハキャリア150は、研磨されるウェーハ155の表面が、ウェーハ155がウェーハキャリア150に取り付けられたときに研磨パッド110の方を向くように、真空システムでウェーハ155を保持するか又は取り付けることができる。図1及び図2の両方を参照すると、システム100は、処理スラリーをウェーハ155に送達し、処理スラリーを研磨パッド110に対して化学的/機械的に平坦化することを可能にするように構成されたスラリー送達システム140を含むことができる。システム100は、一端にパッドコンディショナ(conditioner)を含み、処理サイクル中に、又は処理サイクルと処理サイクルの間に、パッドの表面粗さ(パッドの他の処理特性)を処理又は「リフレッシュ」するように構成することができるパッド調整アーム160を含むことができる。システム100は、本明細書に記載される方法の機能及び追加の機能を提供するように構成することができるコントローラ165を更に含むことができる。いくつかの実装では、コントローラ165は、以下の「現場ウェーハスリップ検出のためのシステム及び方法」部分(“Systems and Methods for Insitu Wafer Slip Detection”)で記載されるように、現場でウェーハの損失又はスリップの発生を検出するように構成されてもよい。実施形態に応じて、コントローラ165は、プロセッサと、プロセッサに本明細書に記載される方法を実行させるように構成された命令を記憶するメモリと、を含んでもよい。例えば、コントローラ165は、プロセス改善システム(例えば、スリップ検出システム)及び/又は機械的又は電気機械的装置、及び/又は本明細書に記載される他のCMP機器の構成要素、又は他のシステム又は構成要素と(例えば、電子的に)通信して、それらに機能を提供するように構成することができる。
【0041】
図1及び2のシステム100を参照して、研磨パッド110は、軸を中心として回転するプラテン120の頂面にある。当業者が容易に理解するように、他の向き及び移動方向で実施することができる(例えば、垂直軸を中心とする反時計回り、時計回りなど)。プラテン120は、時計回り、反時計回り、ラチェット動作(ratcheting motion)などで前後に回転するように構成されてもよい。
【0042】
プロセス改善システム130は、図1及び2に示すように、研磨パッド110の表面又はその上に対して静止して取り付けることができ、あるいは、本明細書で更に記載されるように、可動支持構造に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、プロセス改善システム130は、プロセス改善システム130が研磨パッド110に近接するように下降するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセス改善システム130は、プロセス改善システム130がキャリア150に近接するように(例えば、移動又は静止するように)構成されてもよい。プロセス改善システム130は、本明細書の他の場所に記載されるCMPプロセスを改善するのに適する任意の方法で(例えば、研磨中の研磨パッドの反射率を測定し、基板のスリップを回避することにより)方向付ける(orient)か又は構成する(configure)ことができる。プロセス改善システムは、ウェーハ研磨プロセス中にプロセス改善を提供することができる。
【0043】
一実施形態では、スラリー送達システム140は、処理済み研磨パッド110の表面にスラリー(例えば、研磨スラリー)を送達することができる。研磨スラリーは、サブミクロンの摩耗性で腐食性の粒子を含むか又は含有する。非限定的な例では、研磨スラリーは、典型的には、摩耗性粒子(例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルセリアなど)のコロイド懸濁液を含む。いくつかの実施形態では、摩耗性粒子は、水性媒体又は任意の他の適切な媒体に懸濁される。様々な実施形態では、スラリー送達システム140は、当業者が理解するように、定量ポンプ、質量流量制御レギュレータシステム又は任意の他の適切な流体送達構成要素を含む。
【0044】
よって、研磨パッド110上のスラリー送達システム140によって堆積されたスラリー中の摩耗性粒子及び腐食性化学物質は、それぞれ、摩耗及び腐食によってウェーハを機械的及び化学的に研磨する。図示されるように、スラリー送達システム140は、システムを通って下向きに流れ、最終的に研磨パッド110上に流れるスラリーを送達する。いくつかの実施形態では、ウェーハキャリア150と研磨パッド110は、研磨を提供するために、多数の異なる方法のいずれかで互いに対して移動することができる。例えば、ウェーハキャリア150は、ウェーハ155が研磨パッド110に押し付けられるように、プラテン120に対して下向きの力を印加することができ、ウェーハ155と研磨パッド110との間のスラリーの摩耗性粒子及び腐食性化学物質は、研磨パッド110とウェーハキャリア150が互いに対して移動するときに、化学的及び機械的研磨を提供することができる。当業者が理解されるように、研磨パッドとウェーハキャリアとの間の相対動きは、様々な方法で構成することができ、一方又は両方は、互いに対して振動するように、直線的に移動するように、及び/又は反時計回り及び/又は時計回りに回転するように構成することができる。この移動は、モーター、リニアアクチュエータ、ロボット、エンコーダ、ギアボックス、トランスミッションなどの様々な機械的又は電気機械的装置、及びそれらの組み合わせを介して提供することができる。
【0045】
パッド調整アーム160は、研磨パッド及びウェーハキャリア155に関して上述した相対動きのように、それらの間を相対的に動かすことで、研磨パッド110に力を印加して押し付けることにより、研磨パッド110の表面を調整する。図示の実施形態のパッド調整アーム160は、一端においてパッドコンディショナで振動することができる。いくつかの実施形態では、パッドコンディショナは、例えば、時計回り又は反時計回りに回転するように構成される。いくつかの実施形態では、パッドコンディショナは、研磨パッド110に接触し、パッドコンディショナが回転するときに接触してもよい。
【0046】
図3は、支持構造に取り付けられたプロセス改善システム133を備えた化学機械平坦化システムの概略図である。例えば、支持構造は、研磨前、研磨後及び/又は研磨中に可変位置決めを提供できるように、移動可能であってもよい。プロセス改善システム133は、既存の調整アームに、或いはパッドコンディショナ及びパッドコンディショナ掃引制御機構とは独立した位置決め専用の別個のアームのいずれかに取り付けることができる。例えば、プロセス改善システム133は、アーム又は移動するか又は振動するパッド調整アーム160などの他の支持構造、に取り付けられて、そのような移動機能を提供することができる。図3のシステム300は、図1及び2に関して上記で記載されたように、研磨パッド110、プラテン120、スラリー送達システム140、ウェーハキャリア150、ウェーハ155及びパッド調整アーム160を含む。しかしながら、図3のシステムは、プロセス改善システム133がパッド調整アーム160に取り付けられて、プロセス改善システムの可変位置決めと、例えば、研磨前及び/又は研磨中の研磨パッド110との接触とを可能にするという点で、図1及び2のシステムとは異なる。様々な実施形態では、プロセス改善システム133は、別個のアーム(図示せず)などの異なる支持構造に取り付けられて、パッド調整アーム160によって提供される移動に対してプロセス改善システム133の独立した位置決めを可能にすることができる。例えば、プロセス改善システムは、CMPシステムの1つ以上の位置及び/又は構成要素との接触を可能にするように位置決めし構成することができる。例えば、プロセス改善システムは、ウェーハの表面と接触するように構成することができる。プロセス改善システムは、ウェーハの表面及び/又は研磨パッドの表面などの、CMPシステムの2つ以上の構成要素と接触するように構成することができる。別の例では、2つ以上のプロセス改善システムは、本明細書に記載されるCMPシステム内に実装することができる。例えば、CMP処理用の複数のプラテンがあるシステムでは、プラテンごとに2つのプロセス改善システムを含んでもよい。
【0047】
図4は、システム400の別の構成要素に埋め込まれた1つ以上のプロセス改善システム136を備えた化学機械平坦化システム400の概略図である。例えば、1つ以上のプロセス改善システム136は、プラテン、ウェーハキャリア又は研磨パッド内に埋め込むことができる。非限定的な例では、プロセス改善システム136は、プロセス改善システムが研磨パッド内から研磨パッドと接触することを可能にするために、研磨パッドに対して位置決めされて組み立てられてもよい。このような実施形態は、プロセス改善システムと、例えば、ウェーハの表面との間の現場接触(in-situ interaction)を可能にすることができる。図4のシステムは、図1~3に関して上記で記載されたように、研磨パッド110、プラテン120、スラリー送達システム140、ウェーハキャリア150、ウェーハ155及びパッド調整アーム160を含む。しかしながら、図4のシステムは、プロセス改善システム136が研磨パッド110に埋め込まれるという点で、図1~3のシステムとは異なる。
【0048】
図1~4はCMP装置(例えば、ウェーハキャリア150、ウェーハ155)の態様を示すが、当業者が理解されるように、CMP機械は多数の異なる方法で組み立てることができる。また、図1~4は、必ずしも完全なCMP装置(そうでなければ、圧力を受けて基板を保持するための保持リングを周りに備えたウェーハキャリアヘッド膜、CMP装置の本体、ウェーハ基板を特定のCMP装置に送達するシステムなどへの参照を含んでよい)を例示する必要がないが、単に本開示の主題である開示された技術を強調するための例示的な例であることを意図する。当業者が理解されるように、CMPシステムの追加の構成要素(例えば、膜など)は、本明細書に記載されるシステムに組み込まれてもよい。例えば、ウェーハキャリアヘッド150は、真空圧又は吸引を使用してウェーハを膜に対して固定するように構成された真空システムを更に含んでもよい。弾力性のある膜は、1つ以上の別個のゾーンを含むことができ、圧縮ガスが膜の上面又は裏側に適用される。上記圧力は、CMP中に材料の除去に影響を与えるために、膜を介してウェーハの上面又は裏面に伝達することができる。ウェーハキャリアヘッドは、膜をその嵌合構成要素に固定すること、膜をその所望の形状及び寸法に保持すること、及び/又は膜をクランプして、密閉し、制御されたガス圧を封じ込めるための密閉体積を提供することのための手段を提供する、1つ以上の剛性支持構成要素を含むことができる。その上、本明細書に記載される装置及びシステムのいずれかは、本明細書に記載される方法の機能及び追加の機能を提供するように構成することができるコントローラ(例えば、図2のコントローラ165)を含むことができる。更に、参照番号170は、回転プラテンに固定された研磨パッドに対してウェーハを研磨する際に、ウェーハキャリアヘッド150に取り付けられたウェーハ150に下向きの力を印加する完全なCMP装置(図示せず)の相対位置を示す。例えば、CMP装置は、ウェーハキャリアが図1に示されるように下側位置に構成される場合、研磨パッド110に対してウェーハキャリアに下向きの力を印加してウェーハ155を研磨する。その上、ウェーハキャリアヘッド150は、ウェーハキャリアヘッド150の残りの本体に取り付けられた膜を含んでもよい。膜(図示せず)は、ウェーハ155と研磨パッド110との間に圧力を提供するように構成することができる。
【0049】
更に、ウェーハキャリア、研磨プラテン及び/又はスラリー分配システムを含むCMPシステムは、制御システム165(図2)によって制御されるように構成されてもよい。制御システムは、CMPシステムからフィードバックを受信し、CMPシステムに制御信号を提供するように構成されてもよい。例えば、制御システムは、システムから受信したフィードバック信号に基づいて、様々な構成要素に可変分配又は可変速度機能を提供するように構成されてもよい。よって、システムは、ウェーハの損失又はスリップの発生を検出したことに応答して、CMPプロセス中にウェーハ及び研磨プラテンの回転速度を調整してもよい。
【0050】
理解されるように、本明細書のプロセス改善システム、方法及び機器は、図1~4に示される完全なCMPシステムなしで実装することができる。その上、他のCMP機器は、マルチヘッドCMPシステム、軌道CMPシステム又は他のCMPシステムを含む、本明細書に記載されるプロセス改善システム機能を実施することができる。例えば、本明細書に記載されるプロセス改善システム、方法及び機器は、サブアパチャーCMPシステム内に実装することができる。サブアパチャーCMPシステムは、ウェーハよりも直径が小さい研磨パッドを含むことができる。典型的には、ウェーハは、その表面にスラリーが塗布された状態で表向きに方向付けられ、パッドがウェーハを横切って掃引するときにウェーハ及び研磨パッドが回転する。
【0051】
CMPプロセスの場合、プロセス改善システムのインライン採用は、既存のレガシーCMP平坦化ツール(研磨機)に対する定常状態のPOU変更として、及び新しいCMP平坦化ツールの機能として適する。
【0052】
現場ウェーハスリップ検出のためのシステム及び方法
図1~4に示されるか又は本明細書の他の場所に一般的に説明される機器などの本明細書に記載される機器は、プロセス改善システムに関して、CMP研磨などのワークピース研磨プロセス中のウェーハの損失又はスリップの発生を検出するための改善された方法及び装置を提供するように適合することができる。例えば、光学反射率センサー又は別の種類の光学センサーを位置決めして、ウェーハ及び/又はウェーハキャリア150の一部の反射率を測定することができる。例えば、1つ以上のセンサーをキャリア150の一部上又はその内部に位置決めして、キャリア150内に位置決めされたウェーハ155の裏面の反射率又は他のパラメータを測定することができる。1つ以上のセンサーを研磨パッド110又はプラテン120の一部上又はその内部に位置決めして、キャリア150内に位置決めされたウェーハ155の前面の反射率又は他のパラメータを測定することができる。以下に記載されるように、センサーから受信した反射率値又は他のパラメータを使用して、CMP中のウェーハの損失又はスリップの発生を検出することができる。
【0053】
図5は、本開示の態様に係るスリップセンサーを含む例示的なCMPシステム200の図である。CMPシステム200は、図1~4のシステム100と類似することができる。例えば、特定の実装では、CMPシステム200は、プラテン220上に位置決めされた研磨パッド210と、処理(例えば、下側)位置でウェーハ又は基板(例えば、図2に示されるウェーハ155)を研磨パッド210に対して保持するように構成されたウェーハキャリア250と、スリップセンサー300と、を含む。スリップセンサー300は、システム制御ユニット(例えば、図2に示されるコントローラ165)に接続することができる。いくつかの実装では、スリップセンサー300は、IO-リンクマスターオムロンPLCカード、ベッコフオートIO-リンクマスターハブなどのような中間デバイスを介して接続される。スリップセンサー300は、図1~4のCMPシステムに関してプロセス改善システム130、133及び136に関して一般的に説明されるように、支持構造に取り付けることができるか、そうでなければシステム200内に実装することができる。
【0054】
図6は、本開示の態様に係るスリップセンサー300の概略図であり、図7は、図6に示されたスリップセンサー300の分解図である。図6及び図7を参照して、スリップセンサーは、視野内の反射率を測定するように構成された光学センサー310、接続ハードウェア320及びスイッチ330を含むことができる。接続ハードウェアを使用して、図5に示すように、スリップセンサー300をウェーハキャリア250に接続することができる。
【0055】
光学センサー310は、研磨中の研磨パッド210の反射率を測定することによりウェーハの損失又はスリップを検出するように構成することができる。光学センサー310は、本明細書の機能を提供するために、コントローラ(例えば、図2のコントローラ165)及び/又は他のファームウェア及びソフトウェアと通信することができる。
【0056】
ウェーハの損失又はスリップを検出するための方法は、研磨中にウェーハを保持するウェーハキャリアの「下流」に位置決めされた光学反射率センサーを位置決めすることに依存することができる。キャリアから滑った(slipe)ウェーハの検出は、以下に概説されて図8に示されるように実行されてもよい。特に、図8は、ウェーハの損失又はスリップを検出する例示的な方法1100を示すフローチャートである。
【0057】
方法1100は、ブロック1101から開始する。ブロック1102では、方法1100は、ウェーハのない研磨パッドの表面の反射率を測定することを含む。ブロック1204では、方法1000は、ウェーハの上向きの表面の反射率を測定することを含む。ブロック1106では、方法1100は、ブロック1102及び1104で測定された2つの反射率値の間にセンサー300の閾値を設定することを含む。いくつかの実装では、閾値は、2つの測定された反射率値の間の中間点であってもよい。ブロック1108では、方法1100は、ウェーハ研磨プロセスを開始することを含む。
【0058】
ブロック1110では、方法1100は、センサー300によって測定された反射率に基づいて、研磨中にウェーハがキャリアから滑ったか否かを検出することを含む。例えば、センサー300は、その視野内の反射率の変化を検出し、ウェーハがウェーハキャリアから滑ったか否かに関する信号を研磨機制御システムに提供する。ブロック1106で設定された閾値を超える反射率に応答して、センサー300によって生成された信号は、ウェーハがウェーハキャリアから滑ったことを示す。ブロック1112では、研磨機制御システムは、センサー300から受信した、閾値を超えた信号に応答して、CMPシステムの関連する構成要素の全ての動き(例えば、研磨パッド、プラテン及びウェーハキャリアの動き)を即座に停止して、それら及び/又はウェーハへの損傷を防止又は最小化する。センサー300によって測定された反射率が閾値を超えない場合、センサーは、CMPプロセスが完了するまで、ブロック1110で反射率を測定し続ける。方法1100は、ブロック1114で終了する。
【0059】
図8の方法の1つの考えられる欠点は、研磨パッドの反射率が、パッドのタイプ(例えば、色、材料など)、研磨プロセスに起因する研磨パッドの表面への流出物の蓄積、水、化学物質及び/又はスラリーなどのパッドの表面上の流体の有無、及び/又はパッドの表面テクスチャの変化を含むいくつかの変数のために時間とともに変化する可能性があるということである。
【0060】
ウェーハの反射率は、異なるウェーハ材料、ウェーハ上に堆積された異なる膜、酸化、研磨、研削及びエッチングなどのウェーハの表面に適用される異なる「上流」プロセス、及び/又はウェーハの表面上に残留する流体の有無を含む他の変数のために時間とともに変化する可能性がある。このような上流プロセス及び変数は、センサー反射率及び下流のスリップ検出精度に影響を与えることができる。
【0061】
これらの欠点のために、研磨中に滑ったウェーハを検出するためのより信頼できる方法を提供する必要がある。いくつかの実施形態では、ウェーハスリップを検出するためのより信頼できる方法及び装置は、以下のように、図9に示されるように行うことができる。特に、図9は、ウェーハの損失又はスリップを検出する別の例示的な方法1200を示すフローチャートである。
【0062】
方法1200は、ブロック1201から開始する。ブロック1202では、方法1200は、研磨プロセスを開始することを含み、このように、センサー300の視野は、研磨中に実現される定常状態を実質的に表す状態を含む。このような定常状態は、パッドの寿命全体にわたって、またあるパッドから別のパッドに変化する場合と変化しない場合があるパッド210の実際の色、スラリー、水及び/又は化学物質などのパッドの表面上の任意の流体の有無、及び/又はパッド表面のテクスチャを含むことができる。
【0063】
ブロック1204では、方法1200は、パッド/プラテンの回転、ウェーハ/キャリアの回転、ウェーハ及び保持リングの圧力、及び/又は流体の流れ、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上に基づく定常状態を待つことを含む。定常状態が確立されると、方法1200は、センサー300を一連の定常状態に対してプログラム又は校正できるブロック1206で継続することができる。この動作は、例えば、バックグラウンドリファレンスをリアルタイムに再プログラム又は再校正することができる、「IOリンク」と商業的に呼ばれる技術を介して実行できる。
【0064】
ブロック1208では、方法1200は、センサー300が、残りの研磨プロセス中に、センサー300の視野内の状態を連続的に測定し、センサー300からの出力と、ブロック1206で決定されたプログラム又は校正された定常状態とを比較することを含む。研磨中にウェーハがキャリアから滑った場合、センサーの視野内の状態が一般にプログラム/校正された状態とは大幅に異なるため、様々な状態及び変数の状態でそのような状態を確実に検出する。そのため、定常値からずれた(例えば、閾値を超えた)センサー300からの読取り値に応答して、方法1200は、基板及び/又は機器の損傷を回避するためにCMPシステムの全ての動きを停止するブロック1210に進む。定常値からのずれが検出されない場合、方法1200は、CMPプロセスが完了するまでブロック1208に留まることができる。
【0065】
方法1200を実行することにより、センサー300は、より信頼できる信号を研磨機制御システムに提供し、次に、センサーから受信した信号に基づいて、ブロック1210で全ての動きを即座に停止して、ウェーハ、研磨パッド、キャリアなどへの損傷を防止又は最小化することができる。より信頼できる信号を提供することにより、本明細書に記載される方法及びシステムは、定常状態が達成される前に起こる可能性がある研磨状態の変化に起因し、他の従来の技術に対する制限である可能性があるスリップの誤検出を防止することができる。
【0066】
図10は、ウェーハの損失又はスリップを検出する更に別の例示的な方法1300を示すフローチャートである。
【0067】
方法1300は、ブロック1301から開始する。ブロック1302では、方法1300は、キャリア250をプラテン220上に下降させ、CMP研磨プロセス中に使用される研磨パラメータを設定することを含む。ブロック1304では、方法1300は、設定された時間の長さにわたってセンサー値を読み取って、一連の期待センサー値を取得することを含む。いくつかの実装では、設定された時間の長さは、約5秒であってもよいが、他の実施形態では、設定された時間の長さは、より長いか又はより短くてもよい。設定された時間の長さにより、センサーは、研磨中にセンサーによって測定される研磨パッドの各部分を見ることができる。期待センサー値は、センサーがCMPプロセスの過程で読み取ると期待できる色の変化の範囲に対応してもよい。そのため、システムは、ウェーハスリップを検出するために使用できる期待センサー値を「学習」することができる。
【0068】
ブロック1306では、方法1300は、センサー出力の監視を開始することを含む。いくつかの実装では、センサーの監視は、研磨レシピの開始に応答して開始してもよい。例えば、システムは、ソフトウェアにフラグを設定して、ウェーハスリップ検出のためのセンサーの継続的な監視を開始してもよい。センサーから出力されたセンサー値を監視して、ウェーハが滑ったか否かを決定してもよい。ブロック1308では、方法1300は、スリップセンサーがトリガされたか否かを決定することを含み、例えば、システムは、現在のセンサー出力とブロック1304で取得した期待センサー値とを比較することができる。現在のセンサー出力が閾値を超えて期待センサー値と異ならない場合、システムは、ウェーハスリップが発生しないと決定することができ、方法1300は、ブロック1308に留まってもよい。現在のセンサー出力が閾値を超えて期待センサー値と異なる場合、システムは、ウェーハが滑ったと決定してもよく、方法1300は、ブロック1310を継続してもよい。ブロック1310では、方法1300は、CMPシステムへの損傷を防止し、及び/又はウェーハの破損を回避するために、全ての動きを停止することを含む。方法1300は、ブロック1312で終了する。
【0069】
その上、他のCMP機器は、マルチヘッドCMPシステム、軌道CMPシステム又は他のCMPシステムを含む、本明細書に記載されるウェーハスリップ検出機能を実施することができる。
【0070】
上記実施形態に対して多くの変形及び修正を行うことができ、その要素は、他の許容可能な実施例の中にあると理解されるべきである。全てのそのような修正及び変形は、本開示の範囲内で本明細書に含まれることが意図される。前述の説明は、特定の実施形態を詳述する。しかしながら、上記がテキストにどれほど詳細に示されていても、システム及び方法は多くの方法で実施できることが理解されるべきである。上述したように、システム及び方法の特定の特徴又は態様を説明する際の特定の用語の使用は、該用語が関連するシステム及び方法の特徴又は態様のいずれかの特定の特性を含むように限定されるように、該用語が本明細書で再定義されることを意味すると解釈すべきではないことに留意すべきである。
【0071】
特に「できる(can)」、「できた(could)」、「し得る(might)」又は「よい(may)」などの条件付きの言葉は、特に明記されない限り又は使用される文脈内で他に理解されない限り、一般的に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むが、他の実施形態が含まないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付きの言葉は、一般的に、1つ以上の実施形態において特徴、要素、及び/又はステップが何らかの形で必要とされること、又は1つ以上の実施形態が、ユーザ入力又は促しの有無にかかわらず、これらの特徴、要素及び/又はステップが含まれるか否か、又は任意の特定の実施形態において実行されるか否かを決定するための論理を必ず含むことを暗示することを意図しない。
【0072】
「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」又は「X、Y又はZのうちの少なくとも1つ」という語句などの接続の文言は、特に明記されない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのいずれか、又はそれらの組み合わせであってもよいことを伝えるために一般的に使用される文脈内で理解される。例えば、「又は(or)」という用語は、(排他的ではなく)包括的な意味で使用されるため、例えば、要素のリストを接続するために使用されたときに、「又は」という用語は、リスト内の要素のうち1つ、いくつか、又は全てを意味する。そのため、そのような接続の文言は、一般的に、特定の実施形態が、それぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、及びZの少なくとも1つを必要とすることを意味することを意図するものではない。
【0073】
本明細書で使用される「1つ(a)」という用語は、排他的解釈ではなく、包括的解釈を与えられるべきである。例えば、特に明記されない限り、「1つ」という用語は、「正確に1つ」又は「1つだけ」を意味すると理解されるべきではなく、代わりに、「1つ」という用語は、特許請求の範囲又は明細書の他の場所で使用されるかにかかわらず、特許請求の範囲又は明細書にある「少なくとも1つ」、「1つ以上」又は「複数」などの数量詞の使用に関係なく、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味する。
【0074】
本明細書で使用される「含む」(comprising)という用語は、排他的解釈ではなく、包括的解釈を与えられるべきである。たとえば、1つ以上のプロセッサを含む汎用コンピュータは、他のコンピュータ構成要素を除外するものとして解釈されるべきではなく、特にメモリ、入出力デバイス及び/又はネットワークインタフェースなどの構成要素を含む可能性がある。
【0075】
上記の詳細な説明は、様々な実施形態に適用されるような新規の特徴を示し、記載し、指摘するが、図示されたデバイス又はプロセスの形態及び詳細の様々な省略、置換及び変更は、本開示の精神から逸脱することなく行われてもよいことが理解される。認識されるように、本明細書に記載される開示された技術の特定の実施形態は、いくつかの特徴が他とは別に使用又は実施されてもよいので、本明細書に記載される特徴及び利点の全てを提供しない形態内に具体化されてもよい。本明細書に開示される技術の特定の態様の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味及び同等性(equivalency)の範囲内にある全ての変更は、それらの範囲内に含まれるものとする。
図1
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