(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】試験方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/28 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01N33/28
(21)【出願番号】P 2022005047
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】南出 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】岡 誠次
(72)【発明者】
【氏名】古田 由利絵
(72)【発明者】
【氏名】増森 俊二
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203991(JP,A)
【文献】特開昭59-188544(JP,A)
【文献】特開2014-106076(JP,A)
【文献】特開2004-039829(JP,A)
【文献】特開2020-196861(JP,A)
【文献】特開2018-203857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184053(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112194899(CN,A)
【文献】B. Wunderle et al.,Accelerated Pump Out Testing for Thermal Greases,IEEE Conference Proceedings,2019年,Vol.2019, No.EuroSimE,Page.1-11,doi:10.1109/EuroSimE.2019.8724540
【文献】柳浦聡, 廣井治,熱伝導性グリースの信頼性評価技術,三菱電機技報,2013年,Vol.87, No.8,Page.467-470
【文献】藤本慶久, 上貝康己,半導体用伝熱グリースのポンピングアウト現象の定量評価,日本機械学会年次大会講演論文集,2010年,Vol.2010,No.7,Page.269-270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/28
G01N 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱グリースのポンピングアウト性能の試験方法であって、
保持板上に前記放熱グリースを配置する工程と、
前記放熱グリースを挟み込むように抑え板を
前記保持板と平行になるように前記保持板と対向配置する工程と、
前記抑え板が前記保持板に対して平行な状態を保ったまま前記保持板と前記抑え板との間の間隔を変化させる工程と、
前記間隔を変化させた後の前記放熱グリースの形状を観察する工程とを備え、
前記ポンピングアウト性能は、前記形状に基づいて判定される、試験方法。
【請求項2】
前記ポンピングアウト性能は、前記間隔が大きくなるように変化させた後の前記形状に基づいて判定される、請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記ポンピングアウト性能は、前記間隔を一旦大きくした上で小さくなるように変化させた後の前記形状に基づいて判定される、請求項1に記載の試験方法。
【請求項4】
前記抑え板は、可視光を透過させる材料により形成されており、
前記形状は、前記抑え板を通して観察される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の試験方法。
【請求項5】
放熱グリースのポンピングアウト性能の試験方法であって、
保持板上に前記放熱グリースを配置する工程と、
前記放熱グリースを挟み込むように抑え板
を前記保持板と平行になるように前記保持板と対向配置する工程と、
前記抑え板が前記保持板に対して平行な状態を保ったまま前記保持板と前記抑え板との間の間隔を変化させる工程と、
前記抑え板に加わる荷重を計測する工程とを備え、
前記ポンピングアウト性能は、前記荷重に基づいて判定される、試験方法。
【請求項6】
前記ポンピングアウト性能は、前記間隔を変化させる際の前記荷重の変化に基づいて判定される、請求項5に記載の試験方法。
【請求項7】
前記ポンピングアウト性能は、前記間隔を変化させた上で前記間隔を保持している際の前記荷重の変化に基づいて判定される、請求項5に記載の試験方法。
【請求項8】
前記ポンピングアウト性能は、前記間隔を第1方向に変化させて保持するとともに、前記間隔を前記第1方向とは逆の第2方向に変化させて保持する際の前記荷重の変化に基づいて判定される、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の試験方法。
【請求項9】
半導体装置の製造方法であって、
半導体パッケージを準備する工程と、
前記半導体パッケージ上に放熱グリースを配置する工程と、
前記放熱グリースのポンピングアウト性能を検査する工程とを備え、
前記検査は、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の前記試験方法により行われ、
前記保持板上への前記放熱グリースの配置は、前記半導体パッケージ上への前記放熱グリースの配置と同一条件で行われ、
前記半導体パッケージ上に配置される前記放熱グリースと前記保持板上に配置される前記放熱グリースは、同一ロットに属している、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記放熱グリースは、フェイズチェンジサーマルインターフェイスマテリアルにより形成されている、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージと放熱フィン等との間に配置される放熱グリースには、ポンピングアウトが生じることがある。ポンピングアウトは、半導体パッケージの温度変化に伴う反りの変化により放熱グリースが本来配置されるべき場所から移動してしまい、放熱グリースの放熱機能が失われる現象である。
【0003】
特開2004-039829号公報(特許文献1)には、放熱グリースのポンピングアウト性能の判定方法が記載されている。特許文献1では、放熱グリースを2枚のガラス板に挟み込んだ状態で冷熱衝撃試験を行うことにより、放熱グリースのポンピングアウト性能が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の放熱グリースのポンピングアウト性能の試験方法では、冷熱衝撃試験を繰り返し行う必要があるため、短時間で放熱グリースのポンピングアウト性能を判定することが困難である。
【0006】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、短時間で放熱グリースのポンピングアウト性能を判定可能な試験方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の試験方法は、保持板上に放熱グリースを配置する工程と、放熱グリースを挟み込むように抑え板を保持板と対向配置する工程と、保持板と抑え板との間の間隔を変化させる工程と、保持板と抑え板との間の間隔を変化させた後の放熱グリースの形状を観察する工程とを備えている。ポンピングアウト性能は、放熱グリースの形状に基づいて判定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の試験方法によると、短時間で放熱グリースのポンピングアウト性能を判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る試験方法の概略を説明する第1断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る試験方法の概略を説明する第2断面図である。
【
図3】保持板10と抑え板30との間の間隔が大きくなるように抑え板30を移動させた際の放熱グリース20の模式的な平面図である。
【
図4】
図3に示される状態から保持板10と抑え板30との間の間隔が小さくなるように抑え板30を移動させた際の放熱グリース20の模式的な平面図である。
【
図5】実施の形態1に係る試験方法に用いられる試験装置100の模式図である。
【
図6】抑え板30の変位と抑え板30に加わっている荷重との間の関係を示す模式的なグラフである。
【
図7A】第1状態における放熱グリース20の断面図である。
【
図7B】第2状態における放熱グリース20の断面図である。
【
図7C】第3状態における放熱グリース20の断面図である。
【
図7D】第4状態における放熱グリース20の断面図である。
【
図7E】第5状態における放熱グリース20の断面図である。
【
図7F】第6状態における放熱グリース20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1に係る試験方法を説明する。
【0012】
(放熱グリースの形状に基づくポンピングアウト特性の判定)
図1は、実施の形態1に係る試験方法の概略を説明する第1断面図である。
図1に示されるように、保持板10は、板状の部材である。保持板10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、保持板10の厚さ方向における端面である。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。
【0013】
保持板10は、例えば金属材料により形成されている。保持板10は、ガラスにより形成されてもよい。保持板10は、放熱グリース20が用いられる半導体パッケージに応じて選択されてもよい。例えば放熱グリース20がニッケルめっきが行われた半導体パッケージの銅ベース上に配置される場合、保持板10は、ニッケルめっきが行われた銅板であってもよい。
【0014】
放熱グリース20は、保持板10上に配置されている。より具体的には、放熱グリース20は、第1主面10a上に配置されている。放熱グリース20の形状は、平面視において、例えば円形である。但し、放熱グリース20の平面形状は、これに限定されない。放熱グリース20は、例えば、シリコーン中にフィラーが分散されている放熱グリースである。放熱グリース20は、例えば、常温で液状である。放熱グリース20は、フェイズチェンジサーマルインターフェイスマテリアル(PC-TIM)により形成されていてもよい。フェイズチェンジサーマルインターフェイスマテリアルは、常温で固体であるが、所定の温度以上において液体となる材料である。
【0015】
放熱グリース20は、保持板10(第1主面10a)上にスクリーン印刷等で印刷されることにより、保持板10(第1主面10a)上に配置される。放熱グリース20がフェイズチェンジサーマルインターフェイスマテリアルにより形成されている場合、放熱グリース20は、保持板10上に印刷するとともに溶剤を揮発させることにより、保持板10上に配置される。
【0016】
抑え板30は、板状の部材である。抑え板30は、第3主面30aと、第4主面30bとを有している。第3主面30a及び第4主面30bは、抑え板30の厚さ方向における端面である。第4主面30bは、第3主面30aの反対面である。抑え板30は、放熱グリース20を挟み込むように、保持板10と対向配置されている。より具体的には、抑え板30は、第3主面30aが放熱グリース20を介在させて第1主面10aと対向するように配置されている。抑え板30は、例えば、可視光を透過させる材料により形成されている。
【0017】
スペーサ40は、保持板10と抑え板30との間(第1主面10aと第3主面30aとの間)に配置されている。スペーサ40により、保持板10と抑え板30との間の間隔が維持されている。すなわち、スペーサ40により、放熱グリース20の厚さを制御することが可能になる。スペーサ40は、例えば、シムテープである。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る試験方法の概略を説明する第2断面図である。
図3は、保持板10と抑え板30との間の間隔が大きくなるように抑え板30を移動させた際の放熱グリース20の模式的な平面図である。なお、
図3中において、変形前の放熱グリース20の形状が点線により示されている。
図2及び
図3に示されるように、保持板10と抑え板30との間の間隔(第1主面10aと第3主面30aとの間の距離)が大きくなるように抑え板30が移動されると、放熱グリース20が引き延ばされ、平面視における放熱グリース20の形状が変化する。
【0019】
放熱グリース20の平面形状は、抑え板30を通して、第1主面10aに直交している方向に沿って観察される。この放熱グリース20の平面形状は、放熱グリース20の変形しやすさ(又は変形しにくさ)に影響される。そのため、抑え板30を移動させた後の放熱グリース20の平面形状を観察することにより、放熱グリース20のポンピングアウト性能が判定される。
【0020】
図4は、
図3に示される状態から保持板10と抑え板30との間の間隔が小さくなるように抑え板30を移動させた際の放熱グリース20の模式的な平面図である。なお、
図4中において、変形前の放熱グリース20の形状が点線により示されている。
図4に示されるように、保持板10と抑え板30との間の間隔を一旦大きくした上で小さくなるように抑え板30を移動させた後では、放熱グリース20中にボイド21が形成されている。ボイド21の大きさ及び/又は数を測定することにより、放熱グリース20のポンピングアウト性能が判定される。なお、
図4に示される状態では、抑え板30が初期位置に戻っている。
【0021】
図3に示される例では、保持板10と抑え板30との間の間隔が大きくなるように抑え板30を移動した後の放熱グリース20の形状に基づいて放熱グリース20のポンピングアウト性能が判定されたが、保持板10と抑え板30との間の間隔が小さくなるように抑え板30を移動した後の放熱グリース20の形状に基づいて放熱グリース20のポンピングアウト性能が判定されてもよい。
【0022】
また、
図4に示される例では、保持板10と抑え板30との間の間隔を一旦大きくした上で小さくなるように抑え板30を移動させた後の放熱グリース20の形状に基づいてポンピングアウト性能が判定されたが、抑え板30の移動方向の組み合わせは
図4に示される例に限定されない。すなわち、抑え板30の移動方向の組み合わせや抑え板30の移動距離は、放熱グリース20の特性に応じて適宜選択されればよい。
【0023】
(抑え板に加わっている荷重の変化に基づくポンピングアウト特性の評価)
図5は、実施の形態1に係る試験方法に用いられる試験装置100の模式図である。
図5に示されるように、試験装置100は、保持板10と、抑え板30と、温度調整器50と、取り付け治具60と、駆動部70とを有している。なお、上記のように、保持板10と抑え板30との間には、放熱グリース20が挟み込まれている。また、保持板10と抑え板30との間には、スペーサ40が配置されていてもよい。
【0024】
温度調整器50上には、保持板10が配置されている。なお、第2主面10bは、温度調整器50に対向している。温度調整器50は、保持板10の温度を調整可能に構成されている。これにより、半導体パッケージの温度上昇を模擬した環境により、放熱グリース20のポンピングアウト性能の判定が可能である。温度調整器50は、例えば、ホットプレートである。但し、温度調整器50は、これに限られるものではない。温度調整器50は、水冷又はペルチェ素子等により保持板10を冷却可能に構成されていてもよい。
【0025】
取り付け治具60は、抑え板30に接続されている。より具体的には、取り付け治具60は、ロッド61により、抑え板30の第4主面30b側に接続されている。取り付け治具60には、撮像装置62が取り付けられていてもよい。撮像装置62により、抑え板30を通して放熱グリース20の平面形状が観察可能である。撮像装置62は、例えば、デジタルカメラである。
【0026】
試験装置100が撮像装置62を有している場合、放熱グリース20の形状の変化やボイド21の大きさ及び数は、撮像装置62により取得された放熱グリース20の画像に対して画像処理を行うことにより測定されてもよい。この画像処理は、例えば、撮像装置62により取得された画像に対して二値化処理である。なお、試験装置100が撮像装置62を有しない場合、放熱グリース20の形状の変化やボイド21の大きさ及び数は、目視により観察されてもよい。
【0027】
駆動部70は、取り付け治具60に接続されている。駆動部70は、取り付け治具60を介して、保持板10と抑え板30との間の間隔が変化するように抑え板30を移動させる。抑え板30に加わっている荷重は、駆動部70に取り付けられている荷重センサ71により測定されている。なお、試験装置100が駆動部70を有している場合、スペーサ40は保持板10と抑え板30との間に配置されていなくてもよい。
【0028】
図6は、抑え板30の変位と抑え板30に加わっている荷重との間の関係を示す模式的なグラフである。
図6のグラフの横軸は抑え板30の変位であり、
図6のグラフの縦軸は抑え板30に加わっている荷重である。
【0029】
抑え板30が
図6中の原点と位置P1との間にある状態を、第1状態とする。抑え板30が
図6中の位置P1と位置P2との間にある状態を、第2状態とする。抑え板30が
図6中の位置P2と位置P3との間にある状態を、第3状態とする。抑え板30が
図6中の位置P3と位置P4との間にある状態を、第4状態とする。抑え板30が
図6中の位置P4と位置P5との間にある状態を、第5状態とする。抑え板30が
図6中の位置P5と位置P6との間にある状態を、第6状態とする。
【0030】
図7Aは、第1状態における放熱グリース20の断面図である。
図7Bは、第2状態における放熱グリース20の断面図である。
図7Cは、第3状態における放熱グリース20の断面図である。
図7Dは、第4状態における放熱グリース20の断面図である。
図7Eは、第5状態における放熱グリース20の断面図である。
図7Fは、第6状態における放熱グリース20の断面図である。
【0031】
図6及び
図7Aに示されるように、第1状態では、駆動部70が抑え板30をスペーサ40から離れるように移動させる。この際、荷重センサ71により、抑え板30や取り付け治具60の自重が検知される。
【0032】
図6及び
図7Bに示されるように、第2状態では、保持板10と抑え板30との間隔が大きくなるように、駆動部70が抑え板30を移動させる。この際、抑え板30の変位が大きくなるに伴って、抑え板30に加わっている荷重が大きくなる。放熱グリース20が変形しやすい材料である場合には、放熱グリース20が抑え板30を引っ張る力が小さいため、位置P1と位置P2との間における
図6のグラフの傾きは小さくなる。他方で、放熱グリース20が変形しにくい材料である場合には、放熱グリース20が抑え板30を引っ張る力が大きいため、位置P1と位置P2との間における
図6のグラフの傾きは大きくなる。そのため、位置P1と位置P2との間における
図6のグラフの傾きに基づいて、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。
【0033】
図6及び
図7Cに示されるように、第3状態では、駆動部70が抑え板30の位置を保持する。抑え板30の移動速度に放熱グリース20の変形が追従できない場合には、放置されることにより放熱グリース20の形状が変化していき、放熱グリース20が抑え板30を引っ張る力が徐々に抜けていく。この挙動によっても、放熱グリース20の変形しやすさ(又は変形しにくさ)が把握できるため、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。
【0034】
図6及び
図7Dに示されるように、第4状態では、保持板10と抑え板30との間隔が小さくなるように、駆動部70が抑え板30を移動させる。この際、抑え板30の変位が小さくなるに伴って、抑え板30に加わっている荷重が小さくなる。第4状態では、概ね第2状態と逆の挙動が示されるため、位置P3と位置P4との間における
図6のグラフの傾きに基づいて、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。
【0035】
図6及び
図7Eに示されるように、第5状態では、保持板10と抑え板30との間隔がさらに小さくなるように、駆動部70が抑え板30を移動させる。この際、放熱グリース20内部のフィラー等が圧縮されることにより、放熱グリース20内部における剪断力が増加し、抑え板30に対して反発力が加わる。放熱グリース20内部のフィラーの大きさや変形しやすさに応じて、位置P4と位置P5との間における
図6のグラフの傾きが変化する。そのため、位置P4と位置P5との間における
図6のグラフの傾きに基づいて、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。
【0036】
図6及び
図7Fに示されるように、第6状態では、駆動部70が抑え板30の位置を保持する。上記の反発力は、放熱グリース20内部におけるフィラーや樹脂の移動により、時間経過とともに抜けていく。この挙動によっても、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。以上のように、第2状態における荷重変化の傾き、第4状態における荷重変化の傾き、第5状態における荷重変化の傾き、第3状態における時間経過に伴う荷重変化及び第6状態における時間経過に伴う荷重変化に基づき、放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができる。
【0037】
放熱グリース20のポンピングアウト特性は、第2状態における荷重変化の傾き、第4状態における荷重変化の傾き、第5状態における荷重変化の傾き、第3状態における時間経過に伴う荷重変化及び第6状態における時間経過に伴う荷重変化の少なくともいずれかにより判定されてもよい。また、放熱グリース20のポンピングアウト特性は、これらのうちの2つ以上を組み合わせることにより判定されてもよい。
【0038】
第2状態、第4状態及び第5状態における抑え板30の移動速度並びに第3状態及び第6状態における保持時間により、同じ放熱グリース20に対して試験を行った場合でも、結果が変化する。そのため、測定しようする放熱グリース20の特性に応じて、抑え板30の移動速度及び保持時間は、それぞれ、1μm/秒以上1mm/秒以下及び0分以上10分以下とされることが好ましい。
【0039】
なお、抑え板30を移動させる際に抑え板30に加わる荷重に基づいて放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定する場合、試験装置100は撮像装置62を有していなくてもよく、抑え板30は可視光を透過させる材料により形成されていなくてもよい。但し、抑え板30を移動させる際に抑え板30に加わる荷重に基づいて放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定する場合であっても、試験に異常がないか確認するため、試験装置100が撮像装置62を有していてもよく、抑え板30が可視光を透過させる材料により形成されていてもよい。
【0040】
(効果)
実施の形態1に係る試験方法では、上記のとおり、放熱グリース20に対して1サイクルの変形を加えることにより放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができるため、短時間で放熱グリースのポンピングアウト性能を判定可能である。
【0041】
実施の形態1に係る試験方法において保持板10と抑え板30との間の間隔を一旦大きくした上で小さくなるように変化させた後の放熱グリース20の平面形状を観察することにより放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定する場合、ボイド21の大きさ又は数によりポンピングアウト特性を短時間かつ定量的に判定可能である。実施の形態1に係る試験方法において撮像装置62を用いて抑え板30を移動させた後の放熱グリース20の平面形状を観察する場合、取得された画像に対する画像処理により短時間かつ定量的に放熱グリースのポンピングアウト性能を判定可能である。
【0042】
実施の形態1に係る試験方法では、上記のとおり、抑え板30を移動させる際又は抑え板30を保持している際に抑え板30に加わる荷重の変化に基づいて放熱グリース20のポンピングアウト特性を判定することができるため、短時間で放熱グリースのポンピングアウト性能を短時間かつ定量的に判定可能である。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する。実施の形態2に係る半導体装置を、半導体装置200とする。
【0044】
図8は、半導体装置200の模式的な断面図である。
図8に示されるように、半導体装置200は、半導体パッケージ210と、放熱グリース20とを有している。半導体パッケージ210の裏面からは、ベース211が露出している。ベース211上には、放熱グリース20が配置されている。なお、半導体装置200には、プリアセンブリ後に放熱フィン220が取り付けられる。放熱フィン220は、放熱グリース20上に配置される。半導体パッケージ
210内部において発生した熱は、ベース211及び放熱グリース20を介して放熱フィン220に伝わり、放熱フィン220から放熱される。
【0045】
図9は、半導体装置200の製造工程図である。
図9に示されるように、半導体装置200の製造方法は、準備工程S1と、印刷工程S2と、乾燥工程S3と、検査工程S4とを有している。準備工程S1では、半導体パッケージ210が準備される。
【0046】
印刷工程S2では、半導体パッケージ210の裏面上に、放熱グリース20が例えばスクリーン印刷により印刷される。放熱グリース20は、例えば、フェイズチェンジサーマルインターフェイスマテリアルである。印刷工程S2が行われた後であって乾燥工程S3が行われる前の段階では、放熱グリース20は、溶剤を含んでいる。乾燥工程S3では、放熱グリース20に含まれている溶剤が揮発される。以上により、半導体装置200が、プリアセンブリされる。
【0047】
検査工程S4では、半導体パッケージ210の裏面上に配置されている放熱グリース20の検査が行われる。より具体的には、第1に、印刷工程S2及び乾燥工程S3と同一条件で、保持板10上に半導体装置200の製造に用いられたものと同一ロットに属している放熱グリース20が配置される。第2に、放熱グリース20を挟み込むように抑え板30が保持板10と対向配置された上で、実施の形態1に係る試験方法が実施される。検査工程S4における合否は、保持板10上に正常に放熱グリース20が配置された場合の試験結果との対比により行われる。検査工程S4は、同一ロットの放熱グリース20が用いされている間に少なくとも1回行われればよい。
【0048】
半導体装置200の製造方法によると、同一ロットに属している放熱グリース20が用いられた半導体装置200について、放熱グリース20に含まれている溶剤の揮発不足、放熱グリース20に含まれているフィラーの配合量不足、放熱グリース20に含まれている樹脂材料の異常等に起因した放熱グリース20のポンピングアウト性能の不良をまとめて検査することができる。
【0049】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 保持板、10a 第1主面、10b 第2主面、20 放熱グリース、21 ボイド、30 抑え板、30a 第3主面、30b 第4主面、40 スペーサ、50 温度調整器、60 取り付け治具、61 ロッド、62 撮像装置、70 駆動部、71 荷重センサ、100 試験装置、200 半導体装置、210 半導体パッケージ、211 ベース、220 放熱フィン、P1,P2,P3,P4,P5,P6 位置、S1 準備工程、S2 印刷工程、S3 乾燥工程、S4 検査工程。