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  • 特許-負極及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】負極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20241122BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241122BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241122BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241122BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241122BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022066749
(22)【出願日】2022-04-14
(65)【公開番号】P2023157080
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 太久哉
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/213499(WO,A1)
【文献】特開2020-087777(JP,A)
【文献】特表2015-537347(JP,A)
【文献】特開2003-249211(JP,A)
【文献】特開2020-140895(JP,A)
【文献】国際公開第2021/006198(WO,A1)
【文献】特開2020-077620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110148708(CN,A)
【文献】国際公開第2022/013070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質二次電池用の負極であって、
集電体、第1活物質層及び第2活物質層をこの順に備え、
前記第1活物質層は、第1バインダーと、黒鉛材料とを含み、
前記第2活物質層は、第2バインダーと、ケイ素含有物質とを含み、
前記第1バインダーおよび前記第2バインダーは互いに異なった樹脂成分を含有し、
前記黒鉛材料のBET比表面は1.6m/g以下であり、
前記第2バインダー中の樹脂成分は、ポリアクリルアミドのみを含む、負極。
【請求項2】
前記第2活物質層中の活物質は、前記ケイ素含有物質のみである、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記第1活物質層中の活物質は、前記黒鉛材料のみであるか、または前記黒鉛材料およびケイ素含有物質である、請求項1または請求項2に記載の負極。
【請求項4】
前記第1活物質層および前記第2活物質層中に含まれる全活物質に対する全ケイ素含有物質の質量比は40%以下である、請求項1または請求項2に記載の負極。
【請求項5】
前記第1バインダーは、ポリアクリルアミドを含まない、請求項1または請求項2に記載の負極。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の負極と、正極と、非水電解質とを含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は負極及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015-179575号公報)には、非水電解質二次電池の高容量化を目的として、負極中の活物質としてケイ素含有物質を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-179575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケイ素含有物質は体積膨張が起こり易く、繰り返しの充放電により極板の厚みが増加し易くなる傾向にある。極板の厚みの増加によって生じる反力(電池缶を押し広げる力)を外部から抑えるために反力に応じた大きさの機構部品が必要となる。しかしながら、電池が搭載されるスペースの観点から機構部品は省スペース性であることが望ましく、反力の低減が要求されている。
【0005】
本開示の目的は、ケイ素含有物質を含有する負極において、体積膨張が抑制された負極及びそれを含む非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の負極及び非水電解質二次電池を提供する。
[1] 非水電解質二次電池用の負極であって、集電体、第1活物質層及び第2活物質層をこの順に備え、前記第1活物質層は、第1バインダーと、黒鉛材料とを含み、前記第2活物質層は、第2バインダーと、ケイ素含有物質とを含み、前記第1バインダー及び前記第2バインダーは互いに異なった樹脂成分を含有し、前記黒鉛材料のBET比表面は1.6m/g以下であり、前記第2バインダー中の樹脂成分は、ケイ素膨化抑制性樹脂を含む、負極。
[2] 前記ケイ素膨化抑制性樹脂はポリアクリルアミドである、[1]に記載の負極。
[3] 前記第2活物質層中の活物質は、前記ケイ素含有物質のみである、[1]又は[2]に記載の負極。
[4] 前記第1活物質層中の活物質は、前記黒鉛材料のみであるか、又は前記黒鉛材料及びケイ素含有物質である、[1]~[3]のいずれかに記載の負極。
[5] 前記第1活物質層及び前記第2活物質層中に含まれる全活物質に対する全ケイ素含有物質の質量比は40%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の負極。
[6] 前記第1バインダーは、ケイ素膨化抑制性樹脂を含まない、[1]~[5]のいずれかに記載の負極。
[7] 前記第2バインダーは、ケイ素膨化抑制性樹脂のみを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の負極。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の負極と、正極と、非水電解質とを含む、非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケイ素含有物質を含有する負極において、体積膨張が抑制された負極及びそれを含む非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態における負極の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、負極の製造方法を示す概略フローチャートである。
図3図3は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
図4図4は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
本開示の負極について図面を参照しながら説明する。図1に示す負極100は、非水電解質二次電池用の負極である。負極100は、集電体10及び負極活物質層20を備える。負極活物質層20は集電体10側から順に第1活物質層30及び第2活物質層40が積層されている。本開示の負極は負極活物質層が集電体の片側にのみ設けられてもよく、両側に設けられてもよい。負極100は、図示されていないが、集電体10及び第1活物質層30の間、及び/又は第1活物質層30及び第2活物質層40の間に別の層が介在していてよく、例えば集電体10上に被覆層があってよく、第1活物質層30及び第2活物質層40の間に成分が混在する中間層があってもよい。
【0011】
集電体10は導電性のシートである。集電体10は、例えばアルミニウム(Al)箔、銅(Cu)箔等を含んでいてもよい。集電体10は、例えば5μmから50μmの厚みを有していてもよい。例えば集電体10の表面に被覆層が形成されていてもよい。被覆層は、例えば導電性の炭素材料等を含んでいてもよい。被覆層は、例えば負極活物質層20に比して小さい厚みを有していてもよい。
【0012】
第1活物質層30は、第1バインダー(図示せず)と黒鉛材料31とを含む。第1バインダーは活物質同士を結着することができる。第1バインダーは活物質と集電体とを結着することができる。第1バインダー及び後述の第2バインダーは互いに異なった樹脂成分を含有する。第1バインダー及び後述の第2バインダーが互いに異なった樹脂成分を含有することにより、負極の体積膨張が抑制され易くなる傾向にある。
【0013】
第1バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。第1バインダーは好ましくは後述のケイ素膨化抑制性樹脂を含まない。第1バインダーの配合量はそれぞれ、第1活物質層30において100質量部の活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0014】
第1活物質層30は、活物質として黒鉛材料31を含む。黒鉛材料31は、黒鉛、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)及びハードカーボン(難黒鉛化性炭素)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。黒鉛材料31のBET比表面は1.6m/g以下であり、好ましくは1.3m/g以下であり、より好ましくは1.1m/g以下である。第1活物質層30においてBET比表面が1.6m/g以下の黒鉛材料を用いることで、第1活物質層30の体積膨張が抑制され易くなる傾向にある。BET比表面積は、BET多点法により測定される。
【0015】
第1活物質層30は、活物質としてケイ素含有物質をさらに含むことができる。ケイ素含有物質は、例えば、実質的にSiメタル(Siの単体)からなっていてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSi基合金を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSiCu合金、SiNi合金、SiAl合金、及びSiZn合金からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSi化合物を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばケイ素酸化物を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSiOx(0.5≦x≦1.5)を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSiと、その他の材料との複合材料を含んでいてもよい。ケイ素含有物質は、例えばSi/C複合材料を含んでいてもよい。Si/C複合材料は、例えば炭素材料(黒鉛、非晶質炭素等)にSiメタル、Si酸化物等が担持されることにより形成され得る。ケイ素含有物質は、例えば、Siメタル、Si基合金、Si酸化物、及びSi/C複合材料からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0016】
第1活物質層30は活物質として、好ましくは黒鉛材料31のみを含むか、又は黒鉛材料31及びケイ素含有物質を含む。第1活物質層30は、第1活物質層30中の活物質100質量部に対して、例えば50質量部から100質量部の黒鉛材料31を含んでよく、好ましくは60質量部から100質量部の黒鉛材料31を含み、より好ましくは80質量部から100質量部の黒鉛材料31含む。第1活物質層30が黒鉛材料31及びケイ素含有物質を含む場合、黒鉛材料及びケイ素含有物質の質量比は例えば99:1から1:99であってよく、好ましくは99:1から70:30であり、より好ましく99:1から90:10である。第1活物質層30は、その他の活物質としてSn、SnO、Sn基合金及びLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0017】
第2活物質層40は、第2バインダー(図示せず)とケイ素含有物質41とを含む。第2バインダーは活物質同士を結着することができる。第2バインダーは活物質と第2活物質層40とを結着することができる。第2バインダー中の樹脂成分は、ケイ素膨化抑制性樹脂を含む。第2活物質層40がケイ素膨化抑制性樹脂を含むことにより、負極の膨張が抑制され易くなる傾向にある。
【0018】
ケイ素膨化抑制性樹脂としては、例えばポリアクリルアミド(PAAm)等が挙げられる。ケイ素膨化抑制性樹脂は、膨化抑制性の観点から好ましくは第1バインダーの樹脂成分に比べて水素結合数が高い樹脂を用いることができる。第1バインダーがCMC及びSBRを含み、及び第2バインダーがPAAmを含む場合が膨化抑制性の観点からより好ましい。第2バインダー中の樹脂成分は、ケイ素膨化抑制性樹脂以外の樹脂をさらに含むことができる。ケイ素膨化抑制性樹脂以外の樹脂としては、上述の第1バインダーの例示が適用される。第2バインダーは、樹脂成分として好ましくはケイ素膨化抑制性樹脂のみを含む。第2バインダーの配合量はそれぞれ、100質量部の活物質に対して、例えば0.1質量部から15質量部であってよい。
【0019】
第2活物質層40は、活物質としてケイ素含有物質41を含む。ケイ素含有物質の説明は上述の第1活物質層30における説明が適用される。第2活物質層40はケイ素含有物質41以外の活物質として上述の第1活物質層30における黒鉛材料及びその他の活物質を含むことができる。第2活物質層40は、活物質として好ましくはケイ素含有物質41のみを含む。
【0020】
第2活物質層40は、第2活物質層40中の活物質100質量部に対して、例えば1質量部から100質量部のケイ素含有物質41を含んでよく、好ましくは50質量部から100質量部のケイ素含有物質41を含み、より好ましくは80質量部から100質量部のケイ素含有物質41を含む。第1活物質層及び第2活物質層中に含まれる全活物質に対する全ケイ素含有物質の質量比は40%以下であり、好ましくは30%以下である。
【0021】
第1活物質層30及び第2活物質層40は活物質を活物質粒子の形態で含むことができる。活物質粒子は活物質を含む。活物質粒子は活物質以外の成分をさらに含んでいてもよい。活物質粒子は任意の大きさを有し得る。活物質粒子の平均粒子径は、例えば1μmから50μmであってよく、1μmから35μmであってもよいし、1μmから25μmであってもよい。本明細書において活物質粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を表す。本明細書において活物質粒子の平均粒子径はD50とも表記することがある。平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により測定され得る。
【0022】
負極100の製造方法は、スラリーの調製(A1)、塗工(B1)、乾燥(C1)及び圧縮(D1)を含むことができる。図2は、負極100の製造方法を示す概略フローチャートである。本開示においては、まず第1活物質層30を形成した後、第1活物質層30上に第2活物質層40を形成することができる。スラリーの調製(A1)は、活物質とバインダと有機溶媒とを混合することを含むことができる。有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。有機溶媒の使用量は任意である。すなわちスラリーは、任意の固形分濃度(固形分の質量分率)を有し得る。スラリーは例えば40%から80%の固形分濃度を有していてもよい。混合は任意の攪拌装置、混合装置、分散装置が使用され得る。
【0023】
塗工(B1)は、スラリーを基材の表面に塗工することにより、塗膜を形成することを含むことができる。本実施形態においては、任意の塗工装置により、スラリーが基材の表面に塗工され得る。例えば、スロットダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。塗工装置は、多層塗工が可能なものであってよい。
【0024】
乾燥(C1)は、塗膜を加熱して乾燥させることを含むことができる。本実施形態においては、塗膜が加熱され得る限り、任意の乾燥装置が使用され得る。例えば熱風乾燥機等により、塗膜が加熱されてもよい。塗膜が加熱されることにより、有機溶媒が蒸発し得る。これにより有機溶媒が実質的に除去され得る。
【0025】
圧縮(D1)は、乾燥後の塗膜を圧縮して活物質層を形成することを含むことができる本実施形態においては、任意の圧縮装置が使用され得る。例えば、圧延機等が使用されてもよい。乾燥後の塗膜が圧縮され、活物質層が形成され、負極100が完成する。負極100は、電池の仕様に応じて、所定の平面サイズに切断され得る。負極100は、例えば帯状の平面形状を有するように切断されてもよい。負極100は、例えば矩形状の平面形状を有するように切断されてもよい。
【0026】
<非水電解質二次電池>
図3は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。電池は非水電解質二次電池である。図3に示す電池200は、外装体90を含む。外装体90は、電極体50及び電解質(不図示)を収納している。電極体50は、正極集電部材81によって正極端子91に接続されている。電極体50は、負極集電部材82によって負極端子92に接続されている。図4は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極20、セパレータ70及び負極100を含む。すなわち電池200は負極100を含む。正極60は、正極活物質層62と正極集電体61とを含む。負極100は、負極活物質層20と集電体(負極集電体)10とを含む。
【実施例
【0027】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0028】
<実施例1>
負極活物質として黒鉛(C)100質量部と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)2.5質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)2.5質量部とを、イオン交換水中で混合し、第1負極合材スラリーを調製した。
負極活物質として酸化ケイ素(SiO)100質量部と、バインダとしてのポリアクリルアミド(PAAm)5質量部をイオン交換水中で混合し、第2負極合材スラリーを調製した。
【0029】
銅箔製の負極集電体の両面に、第1負極合材スラリーを塗布し、乾燥させて、圧延ローラーにより塗膜をプレスして圧延した。次いで、第1負極合材スラリーの乾燥塗膜上に、第2の負極合材スラリーを塗布し、上記と同様に乾燥させて、圧延した。これにより、第1負極合材スラリーによって形成された第1活物質層と、第2負極合材スラリーによって形成された第2活物質層とを含む負極活物質層が、負極集電体上に支持された実施例1の負極シートを得た。
【0030】
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、NCM:AB:PVdF=97:2:1の質量比で、N-メチルピロリドン(NMP)中で混合し、正極合材スラリーを調製した。この正極合材スラリーを、アルミニウム箔上に塗布した。その後、乾燥を行い、所定の厚みにロールプレスして正極シートを作製した。
【0031】
セパレータとしてPP/PE/PEの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを用意した。正極シートと、負極シートとをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせ、捲回して捲回体を得た。この捲回体をプレスして扁平形状の捲回電極体を作製した。
【0032】
電極体に電極端子を取り付け、これをアルミニウムラミネートフィルム製のケースに挿入し、溶着した後、非水電解液を注液した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。その後、ラミネートケースを封止することによって、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0033】
<実施例2から実施例4及び比較例1から比較例3>
表1中に示す材料及びSi比率としたこと以外は実施例1と同様にして負極シートを作製し、それを用いて評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0034】
<評価用リチウムイオン二次電池の活性化>
評価用リチウムイオン二次電池を25℃の環境下においた。活性化(初回充電)は、定電流-定電圧方式とし、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。
【0035】
<膨化率>
セルを3.0Vまで放電後、ミツトヨ製マイクロメーター(スピンドル径Φ6.3)にて、セル内平坦部の数点(3点程度)を測定、平均値をセル厚みとする。セル厚みの変化を一定サイクルごとに測定し、初期からの増加割合(%)を膨化率とする。初期からの増加割合(%)を膨化率として評価した。初期活性化後(放電後)に厚みを測定、その厚みを初期厚みとした。その後サイクル試験を行い、100サイクル後に最後厚みを測定し、増加率を求めた。膨化率が105%未満であれば「◎」、105%以上110%未満であれば「○」、110%以上120%未満であれば「△」、120%以上130%未満であれば「×」、130%以上であれば「××」と評価した。
【0036】
<容量維持率の測定>
活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を25℃の環境下においた。0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電及び0.5Cの電流値で3.0Vまで定電流放電を、1サイクルとする充放電を100サイクル繰り返した。1サイクル目と100サイクル目の放電容量を測定し、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合を容量維持率(%)として算出した。このときの容量維持率が95%以上であれば「◎」、85%以上95%未満であれば「○」、85%未満であれば「△」と評価して、結果を表1に示す。
【0037】
<電池抵抗測定>
活性化した各評価用リチウムイオン二次電池をSOC50%の状態に調整した。25℃の環境下で1時間静置した。次いで、3Cの電流値で10秒間定電流放電を行った。この時の電圧下降量ΔVを取得し、ΔVを電流値(3C)で除することにより、電池抵抗を算出した。実施例1の評価用リチウムイオン二次電池の抵抗を100%としたときに、90%未満であれば「◎」、90%以上120%未満であれば「○」、120%以上であれば「×」と評価して、結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

表中、Si含有率は負極活物質層全体のケイ素含有物質の質量比率を示す。
【0039】
実施例1から実施例4では、膨化率、容量維持率及び電池抵抗をいずれも満たす負極が製造された。比較例1では、電池抵抗が低下傾向にあった。比較例2では、サイクル試験による膨化率の低下が顕著であった。比較例3では電極全体における膨化を抑制する効果が小さい傾向にあった。
【符号の説明】
【0040】
1,2 正極活物質、10 集電体、20 負極活物質層、30 第1活物質層、31 黒鉛材料、40 第2活物質層、41 ケイ素含有物質、50 電極体、60 正極、61 正極集電体、62 正極活物質層、70 セパレータ、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 外装体、91 正極端子、92 負極端子、100 負極、200 電池。
図1
図2
図3
図4