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特許7592053環境センサ回路を備えた携帯型接続無線装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】環境センサ回路を備えた携帯型接続無線装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/945 20060101AFI20241122BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20241122BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20241122BHJP
   H03K 17/955 20060101ALI20241122BHJP
   H03K 17/95 20060101ALI20241122BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H03K17/945 N
G01R33/07
G01R33/02 K
H03K17/955 G
H03K17/95 G
H01H36/00 D
H01H36/00 M
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133318
(22)【出願日】2022-08-24
(65)【公開番号】P2023050102
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】63/249,770
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502411492
【氏名又は名称】セムテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】シャウキ・ルエシア
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-512625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0331706(US,A1)
【文献】特開2020-134158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0021680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0055130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74-17/98
G01R 33/07
G01R 33/02
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を生成する磁石又は強磁性素子と、携帯型接続無線装置用の環境センサ回路(1)とを備えた、携帯型接続無線装置であって、
(a)前記環境センサ回路との電気的接続における電極(100)の静電容量の変動を検知することによって、前記携帯型接続無線装置にユーザの身体が近接していることでユーザが前記携帯型接続無線装置の近接内にいるか否かを判定するように構成された、容量性近接センサ(10)と、
(b)前記場に比例した信号を提供する、磁場プローブ(11)と、
を備える、前記環境センサ回路(1)において、
前記環境センサ回路(1)は、前記電極(100)の容量を表す近接デジタル値を生成するように、かつ前記磁場に比例した信号を、前記磁場強度を表す磁場デジタル値に変換するように構成されたアナログデジタル変換器(17)を有し、
前記環境センサ回路(1)が、前記近接デジタル値及び前記磁場デジタル値から不要なノイズ成分及びドリフト成分を抑制するように構成されたデジタル処理部(13)をさらに備える、携帯型接続無線装置
【請求項2】
前記磁場プローブ(11)が検知した磁場が所定のしきい値を超えたときに、論理状態から逆の論理状態に切り替えるように構成された磁場デジタル出力(14)と、
前記近接デジタル値及び前記磁場デジタル値をホストシステム(3)に通信するデジタルバス出力(15)と、
前記近接デジタル値と前記磁場デジタル値との少なくとも一方が所定の条件を満たすときに、前記ホストシステム(3)のアクションを要求する割り込み出力(16)と、
の中の少なくともいずれかを備える、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項3】
磁場と近接状態の所定の組み合わせが検出されたときにホストシステム(3)を起動するように構成されている、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項4】
前記デジタル処理部(13)が非線形フィルタを備える、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項5】
前記デジタル処理部(13)がベースライン及びドリフト抑制ユニット(130)を備える、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項6】
前記アナログデジタル変換器(17)の入力で提示されるアナログ信号からベースライン成分の少なくとも一部を減算するように構成されている、請求項5に記載の携帯型接続無線装置
【請求項7】
前記磁場プローブ(11)はホール効果素子であり、前記環境センサ回路(1)と前記ホール効果素子が同じ半導体チップ上に作製されている請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項8】
携帯型接続無線装置が、前記環境センサ回路が前ユーザとの近接度を決定するときにRF電力を低減するように構成されていて、前記容量性近接センサ(10)の感度が前記磁場強度に依存して可変である、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項9】
前記磁場プローブは、前記磁場の2つ又は3つの独立したベクトル成分の強度を検出可能な多軸プローブである、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【請求項10】
ユーザインタフェースを備え、前記ユーザインタフェースが、前記場に応じて前記ユーザインタフェースの挙動を変更するようにプログラムされている、請求項1に記載の携帯型接続無線装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境センサ及び環境データを処理する回路であって、どちらも、携帯電話、タブレット、又はラップトップコンピュータのような、接続され携帯される装置での用途に適しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
接続携帯装置は、それらが果たすべき仕事には、ある程度の環境意識を必要とする。それら装置には、ここで書き尽くすには多すぎる用途がある。例えば、近接検出器、温度検出器、加速度計、照度計、ホールセンサ検出器、及び他の多くのものを備えた既知の携帯電話がある。このようなセンサから収集された環境情報は、携帯装置の多くのレベルで使用される。近接センサにより、電話機が低電力モードに入ることがある。ホールセンサ及び光センサは、電話機の画面が露出しているか覆われているかを判断し、それに応じてユーザインタフェースの変更に使用されるかもしれないし、またその他の多くが使用されるかもしれない。
【0003】
携帯装置で使用される既知の近接センサには、ユーザの身体(の一部)が装置に近いかどうかを判断する静電容量センサが含まれている。この(センサからの)情報は、装置が本体の近くに持ち運ばれているか、テーブルや引き出しの上に横たわっているかを判断するのに重要である。この情報は、法定の比吸収率(SAR)限度に準拠し、そして装置の使用(状態)の改善に使用される。例えば、電話機内の静電容量式近接センサが装置が耳の近くに保持されていると判定する場合、通話中にタッチスクリーンを無効にすることが知られている。
【0004】
静電容量式近接センサは、多くの場合、導電性パッド、又はその容量が検知されるRFアンテナに(デカップリング回路を介して)接続可能なアナログ入力と、処理ユニットとの通信用の様々な種類のデジタル出力を備えた専用集積回路(IC)の形で提案される。
【0005】
ホールセンサは、磁石又は強磁性素子が設置されている部品の存在、不在、又は位置を決定する非接触スイッチとして、他の用途の中でも特に使用される。これらは、例えば、スクリーンが覆われているか露出しているか、付属品が充電クレードルにあるかどうか、又は決定された付属品又は部品の位置の伝達用に使用される。このようなセンサはまた、しばしば、ホール半導体装置自体、微弱な磁気信号を増幅するアナログフロントエンド、マイクロコントローラ又はマイクロ処理部に適したデジタル信号を提供する弁別器及び駆動部を含む専用集積回路(IC)の形態をとる。
【0006】
静電容量式近接センサは、とりわけ、出願人に譲渡された特許文献1(EP2988479B1)、特許文献2(EP3293953B1)、特許文献3(EP3404835B1)、特許文献4(US10423278B2)、特許文献5(US10298280B2)、特許文献6(US9979389B2)、特許文献7(EP3416031B1)及び特許文献8(EP3422577A1)、特許文献9(EP3595175A1)、特許文献10(EP3595176A1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2988479号明細書
【文献】欧州特許第3293953号明細書
【文献】欧州特許第3404835号明細書
【文献】米国特許第10423278号明細書
【文献】米国特許第10298280号明細書
【文献】米国特許第9979389号明細書
【文献】欧州特許第3416031号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3422577号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3595175号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3595176号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、携帯無線装置用の環境センサ回路の提供であり、この回路は、
ユーザが携帯型接続無線装置にその身体に近接しているか否かを、環境集積回路との電気的接続における電極の静電容量の変動を検知することにより判定する構成とされた、静電容量近接センサと、
磁場強度に比例した信号を提供するホール効果プローブと
を備えている。環境集積回路はまた、電極の容量を表す近接デジタル値及び磁場強度を表す磁場デジタル値を生成するように構成されたアナログデジタル変換器と、近接デジタル値及び磁場デジタル値からの不要なノイズ及びドリフト成分を抑制するよう構成されたデジタル処理部とを備える。
【0009】
好ましくは、本発明の環境センサ回路は、
磁場デジタル出力を備えてもよく、ホール効果プローブによって検知される磁場が所定のしきい値を超えたときに、論理状態から反対の論理状態に切り替えるように構成された磁場デジタル出力と、
近接度及び磁場の値をホストシステムに通信するデジタルバス出力と、
近接度と磁場との少なくとも一方の値が
所定の条件を満たすときにホストシステムのアクションを要求する割り込み出力と
の中の少なくともいずれかを備えてよい。
【0010】
環境集積回路は、磁場と近接状態の所定の組み合わせが検出されたときにホストシステムを起動するように構成されていてもよい。
【0011】
環境集積回路のデジタル処理部が非線形フィルタを備えてもよい。
【0012】
環境集積回路のデジタル処理部がベースライン及びドリフト抑制ユニットを備えてもよい。
【0013】
環境集積回路は、アナログデジタル変換器の入力で提示されるアナログ信号からベースライン成分の少なくとも一部を減算するように構成されてよい。
【0014】
環境集積回路を備える無線携帯接続装置は、集積回路がユーザとの近接度を決定し、かつ近接センサの感度が磁場強度に依存して可変である場合にRF電力を低減するように構成されてよい。
【0015】
環境集積回路を備える無線携帯型接続装置のユーザインタフェースは、磁場強度に依存してその挙動を変更するようにプログラムされてもよい。
【0016】
本発明の例示的な実施形態は、説明に開示され、そして次の図面によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明による環境集積回路の実現の可能性を模式的に示す。
図2図2は、アナログデジタル変換器のスキャン周期のグラフを模式的に示す。
図3図3は、本発明の実施形態においてノイズ及びベースラインドリフトを低減するために使用されるデジタル処理部の一部を概略的に示す。
図4図4は、本発明の実施形態を概略的に説明する。
図5図5は、本発明の実施形態を概略的に説明する。
図6図6は、2つのヒンジ付き部品を備える折りたたみ式携帯装置を概略的に非常に単純化した方法で示す。ここでは、多軸ホール変換器を使用して折りたたみ角度を決定する。
図7図7は、ホールセンサの位置で利用可能な磁場の成分を、折りたたみ角度の関数として示すグラフである。
図8図8は、可能な判別方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、近接信号及び磁場信号を検出し処理する環境集積回路1を模式的に示す。近接信号は、例えば、携帯装置を、ポケットに入れたり、電話をかけるために頭部に近づけたりする行為など、集積回路を支持する携帯装置の環境におけるユーザの相対的な動きから生じる。磁場信号は、カバーのような付属品の位置変化から生じることがある。
【0019】
図1に示す環境集積回路1は、例えば、ユーザの身体の一部が電極に近づいたり、離れたりしたときに、集積回路に接続される導体の容量の変動を検出する1つ又は複数の容量性近接入力を備える。容量性入力の数は、用途と集積回路で使用可能なピンの数によって決まる。
【0020】
導体のいくつかの配置は、それらが、電気誘導を介して、接近する導電性又は誘電体と結合可能であるならば、本発明の枠内の近接検知電極として使用可能である。本発明の回路は、複数の電極に接続する複数端子を備えてよい。当該端子は、指向性検知の実行に、スクリーニング電極の提供に、又は接近する導電性又は誘電体に対する全体的な感度の改善に、使用可能である。近接検知電極は、プリント回路基板上のトラック又は導電性表面であってよく、可能性としては、本発明の集積回路がはんだ付けされたのと同じプリント回路基板であってもよい。容量性電極は、近接検知以外の他の機能を備えてもよい。例えば、それは、装置の構造的な金属要素、又は無線周波数アンテナ(又は無線周波数アンテナの一部)、例えばWi-FiTMアンテナ、Bluetooth(登録商標)アンテナ、又は携帯電話ネットワーク用のアンテナであってもよい。
【0021】
変形例では、本発明の回路の1つの容量性入力を、基準キャパシタンスに接続可能である。基準キャパシタンスは、導電性又は誘電体が近く又は後退することによって影響されないが、依然として温度の変化によって影響されるものである。この信号は、温度ドリフトを補正して近接検出を改善する、敏感な温度計として使用できる。
【0022】
同図において、限定的ではなく代表的であるとみなすべきことは、集積回路1が4つの容量性入力を持つことである。容量性入力の1つは、無線周波数アンテナ4の静電容量の(非図示のデカップリングインピーダンスを介した)読み取り用に使用され、さらに2つはプリント回路基板上のセンスパッチ100及びシールドパッチ101それぞれの読み取り用に使用され、4つ目は基準キャパシタンス107に接続される。
【0023】
容量性入力は、集積回路1のアナログフロントエンド12に接続されている。アナログフロントエンドは、入力で見られる自己容量をデジタル値、例えば電圧レベルへの変換に適したアナログ信号に変換するように構成された容量性読み出し及び制御回路123を備える。このような変換は、例えば「関連技術」セクション([先行技術文献]の記載)の特定文書に開示されるように、いくつかの方法で得られる。好ましくは、読み出し及び制御回路123は、容量性入力に1つずつ接続する。読み出し及び制御回路123は、一方の入力に接続されている間、他の入力を高インピーダンス状態(フローティング)、低インピーダンス状態(接地)、又はその瞬間に読み出される入力と同じ電位(シールドモード)に選択的に設定可能であるように制御可能である。
【0024】
この集積回路は、例えばスマートフォンやタブレットケースに含まれる磁石の動きによって生じる、集積回路1の近接範囲内での磁場の変動を検出するように構成された磁場変換器11をさらに備える。
【0025】
磁場センサは、磁場の局所強度に関連する電気信号を生成可能である任意の適切な変換器を備えてよい。ホール効果半導体は当技術分野において普及しているが、他のセンサを使用してよく、本発明の枠内で使用され得る。具体的には、本発明は、MEMS磁力計、磁気抵抗センサ、フラックスゲートセンサ、又はピックアップコイルを使用可能である。一部の磁気変換器、特にホール効果装置は、有利には、本発明の集積回路が製造されるのと同じダイに集積可能である。しかしながら本発明は、本発明の磁気センサ及び環境センサ回路が、別々のチップ上、同じパッケージ内、又は別個の相互接続されたパッケージ内で製造される変形例を含むものである。
【0026】
以下の説明は、非常に一般的な実装であるホール効果半導体プローブを備えた実施形態を参照するが、これは本発明の限定として意図されるべきではない。
【0027】
アナログフロントエンド12は、ホールセンサの出力を非常に小さくできるので、ホールセンサ11によって生成された電圧信号をアナログデジタル変換器17の入力範囲に一致するレベル(大きさ)にするように構成されたずれ補正部122及び増幅器121を備える。
【0028】
容量性近接センサ及びホール効果プローブによって検出されたアナログ近接信号は、共有アナログデジタル変換器(A/D変換器)17によってデジタル容量性近接信号及びデジタル磁気信号に変換される。容量性近接回路123及びホール効果プローブ11によって行われる測定は、時間多重化される。
【0029】
図2に示す特定の実施形態では、繰り返しスキャン期間2を持つように構成されたA/D変換器17は、
ホール効果プローブがオフの状態で静電容量式近接センサを用いてキャパシタンス20を測定し、
静電容量式センサがオフの状態で前記ホール効果プローブセンサを用いて磁場21を測定し、
前記キャパシタンス及びホール効果測定から得られたアナログ信号22をデジタル信号に変換することを備え、
決められた期間アイドル状態23は、所定の期間であるとする。
このA/D変換器の構成により、アナログ容量性信号とアナログ磁気信号との干渉を防止する。
【0030】
本発明の回路はまた、アナログデジタル変換器によって生成されたデジタル近接及び磁気信号を処理するデジタル処理部を備える。デジタル処理部は、近接デジタル値及び磁場デジタル値からの不要なノイズとドリフト成分との少なくとも一方を抑制するように構成されている。図1に例示した実施形態では、デジタル処理部13はA/D変換器17に従う。
【0031】
図3に描かれた特定の実施形態では、デジタル処理部13は、ドリフトフィルタ130及びノイズフィルタ131を備える。ドリフトフィルタは、ユーザのアプローチなど、測定された静電容量の正当な変動を、例えば静電容量式近接センサ周辺の温度変動から生じる可能性のあるドリフトから識別するため使用される。ノイズフィルタは、センサ周辺の自然な電気的及び磁気的活動から生じる不要なホワイトノイズの抑制に使用される。
【0032】
ドリフトフィルタ130は、ベースライン及びドリフト抑制ユニット1300を備えてもよい。ベースラインは、一定又はゆっくりとドリフトするスプリアス(設計上意図されない成分)値である。このベースラインは、電極のバックグラウンド容量によるものであることがあり、ユーザ身体部分の接近による静電容量の変化がこのバックグラウンド容量の数倍小さい場合があるため、近接信号の識別にベースラインのフィルタが極めて重要であることがある。ベースライン及びドリフト抑制ユニットは、A/D変換器の入力で提示されるアナログ信号からベースライン成分を減算するように構成可能である。ベースライン減算の量は、容量性チャネルと磁気読み出しチャネルに対して個別に調整可能である。所望の減算レベルは、例えば相互集積回路(I2C)、I3C、又はSPIのようなデジタル装置相互接続バスを介して、本発明の装置のレジスタに書き込むことによってデジタル的に調整され得るか、又は任意の適切な方法で適合されてよい。有利には、ドリフト抑制ユニットは、例えば熱変動から生じるドリフトを抑制又は制限するように構成される。
【0033】
図3に描かれたように、デジタル処理部13は、
信号から標準の電気的又は磁気的ノイズ除去用に構成された第1ローパスフィルタ131と、
前記信号からベースライン及びドリフトの除去用に構成された第2ローパスフィルタ130と、
前記信号が所定の許容信号の範囲に属するか否かの判定用に構成された比較処理ブロック132と、
入力されたデジタル信号をバイナリ近接情報への変換用に構成されたデジタル弁別器133を備える。
【0034】
環境集積回路は、ホール効果プローブによって検知された磁場が所定のしきい値を超えたときに論理状態から反対の論理状態に切り替えるように構成された2値デジタル出力を備えてもよい。前述したスマートフォン筐体の例では、筐体に含まれる磁石がホール効果プローブの近くに持ち込まれるため、しきい値を超える磁場が閉じたケースに相当し、しきい値未満の磁場がホール効果プローブから遠いため、磁石が開いたスマートフォン筐体に相当するように、しきい値を決定してもよい。図1に例示される集積回路の実施形態では、2値デジタル出力14は、デジタル処理部13と電気的に接続される。
【0035】
環境集積回路はまた、ホストシステムへの近接度及び磁場の値を通信するデジタルバス出力を備えてもよい。デジタルバス出力は、相互集積回路(I2C)又は任意の適切なタイプのデジタルバス出力であってよい。図1に例示される実施形態では、デジタルバス出力15は、デジタル処理部13と電気的に接続される。
【0036】
環境集積回路はまた、近接と磁場との少なくとも一方の値が所定の条件を満たす場合にホストシステムの作用を要求する割込み出力を備えてもよい。
【0037】
図4に描かれた1実施形態では、環境集積回路1は、ホストシステム3に接続されたI2Cデジタルバス出力15と、共有割込み出力16とを備える。近接値と磁場との少なくとも一方の値の変動が検出されると、割込み出力16はローになり、ホストシステム3は近接値及び磁場値を通信して、どの値が変化したかを識別する。本実施形態では、近接センサ10に接続されている電極100が集積回路に含まれる。
【0038】
図5に図示される別の実施形態では、環境集積回路1は、ホストシステム3に接続されたI2Cデジタルバス出力15と、割込み出力16と、バイナリデジタル出力(2値デジタル出力)14とを備える。割込み出力16は、近接信号の変動が検知された場合にホストシステム3への信号送信専用であるが、バイナリデジタル出力14は、磁場の変動が所定のしきい値を超えると、論理状態から反対の状態、すなわち0から1又は1から0に切り替わる。本実施形態では、電極100は回路の外部にあり、静電容量式近接センサ10に接続されている。
【0039】
前記環境集積回路は、磁場と近接状態の所定の組み合わせが検出されたときにホストシステムを起動するように構成されてもよい。この機能は、例えば、ユーザが電話をかけるために頭がスマートフォンに近づいているときにスマートフォンの画面をロックしたり、スマートフォンのケースが開いたときに画面をアクティブにしたりするのに使用できる。ただし、これらは用途の唯一の例ではない。
【0040】
特定の実施形態では、無線携帯接続装置は、集積回路がユーザとの近接度を決定するときにRF電力を低減するように構成される。これにより、例えば1日の体内線量限界を遵守できる。近接センサの感度は、磁場強度に依存するように構成可能である。
【0041】
環境集積回路が、例えばスマートフォンの画面などのユーザインタフェースを備える無線携帯型接続装置に備わっている場合、ユーザインタフェースは、磁場の強さに応じてその挙動を修正するようにプログラムされてもよい。これは通常、スマートフォンやタブレットが画面を覆う折りたたみ式ケースで保護されている場合である。スクリーンを覆う筐体の部分に含まれる磁石は、カバーが集積回路内のホール効果プローブに近づいたり、遠ざかったりするにつれて磁場の変動を誘発する。状況に応じて、ユーザインタフェースは、ユーザとの相互作用を可能にするように、あるいは代替的に、そのような相互作用を防止するようにプログラムされ得る。
【0042】
これまでに開示された本発明の実施形態は、環境磁場の単一成分に応答する磁場変換器、換言すると、磁場ベクトルBの所与の方向への投影を使用する。しかし、これは本質的な特徴ではなく、本発明はそれらの実現に限定されるものではない。実際、磁場変換器は、磁気ベクトルの2つ又は3つの独立した成分を決定可能である多軸センサであってよく、それによって磁場を2次元平面又は3次元空間内で再構成可能である。このような場合、環境センサ回路は、2つ又は3つの磁場デジタル値を提供するように構成され、それぞれが磁場強度の独立した成分を表す。
【0043】
多軸磁場測定は、2つの相互に旋回可能な要素(1つは本発明のセンサを装備し、もう1つは永久磁石を運ぶ)の間の角度を決定するために有利に使用可能である。図6は例を示す。この例では、携帯装置には、ヒンジ35によって接続された2つの要素31及び要素32があり、それらはいっしょに、開(折りたたみ角度θ=180°)又は閉(θ=0°)で、開閉可能である。この配置は、例えば折りたたみ式スマートフォンに見られる。第1折りたたみ要素31は、磁場を測定する多軸ホールセンサ111、又は別の同等のセンサ、すなわち局所磁場の水平成分Bと、局所磁場の垂直成分Bと、好ましくは、B及びBに直交し、図面に対して直交しているので図面上見えない第2水平成分Bxの測定が可能である。他方の折りたたみ要素は、永久双極子磁石37を備える。
【0044】
折りたたみ要素が開閉されると、角度θが変化するように、これはセンサ111によって見られる磁場Bの強度及び方向の変化に反映される。図7のグラフ(プロット、因果関係)は、成分BとBがフォールド角度θにどのように依存するかを示す。情報に通じた読者には、曲線の形状が、センサ111及び磁石37の位置の選択と、要素32内の磁石37の向きとの結果であるとわかるであろうから、他の形状は、本発明を離れることなく、それら幾何学的変数の変更によって得られるとわかるだろう。重要なことには、これらの幾何学的パラメータは、折りたたみ角度θの各可能な値がB及びBの固有な組み合わせに相当するように選択可能であり、その結果、本発明の回路は、B及びBから折りたたみ角度θ又はその近似表現を計算するように構成可能である。これは、さまざまな方法、例えば三角関数計算やダブルエントリルックアップテーブルで取得できる。
【0045】
多くの場合、折り曲げ角度θの正確な知識は必要なく、角度θが所定の間隔内にあるときを知るだけで十分である。このような場合、本発明の回路は、B及びBの値を2つのしきい値Yth及びZthと比較し、両者の比較が成功した場合に検出フラグを発するように構成可能である。図8は、しきい値Yth及びZthとの関係におけるB及びBの値をプロットして示す。値Yth及びZthは、代表点が領域140にあるとき、すなわちθがおおよそ110°>130°の間であるとき、B>Yth及びB>Zthとなるように選択される。この方法により、折りたたみ角度が決定された間隔にあるときを最小限の計算で判断できる。異なる角度間隔は、しきい値、比較の符号、又は磁石37の位置を回転又は変更することによって選択可能である。
【0046】
上記実施形態の変形例において、本発明の回路は、2つの成分の組み合わせ、例えばB+B又はB-Bを固定しきい値で比較してよい。これは、図8のプロットを軸に対して45°の線に沿って切断することと同じである。
【0047】
上述したように、ホールセンサ11は、磁場Bの2つ又は3つの成分に感応可能である。例として取られた幾何学では、折りたたみ軸に平行な成分Bxは一定であると予想され、折りたたみ角度θに関する情報は伝達されない。この情報を収集して、センサの良好な機能の確認に使用できる。3次元磁場の知識は、他の用途、例えば電子コンパス用途において使用できる。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
(a)環境集積回路との電気的接続における電極(100)の静電容量の変動を検知することによって、携帯型接続無線装置にユーザの身体が近接していることでユーザが前記携帯型接続無線装置の近接内にいるか否かを判定するように構成された、容量性近接センサ(10)と、
(b)磁場強度に比例した信号を与える、磁場プローブ(11)と、
を備える、携帯型接続無線装置用の環境センサ回路(1)において、
前記環境センサ回路(1)は、前記電極(100)の容量を表す近接デジタル値及び磁場強度を表す磁場デジタル値を生成するように構成されたアナログデジタル変換器(17)を有し、
前記集積回路(1)が、前記近接デジタル値及び前記磁場デジタル値から不要なノイズ成分及びドリフト成分を抑制するように構成されたデジタル処理部(13)をさらに備える、携帯型接続無線装置用の環境センサ回路(1)。
[観点2]
磁場プローブ(11)が検知した磁場が所定のしきい値を超えたときに、論理状態から逆の論理状態に切り替えるように構成された磁場デジタル出力(14)と、
前記近接デジタル値及び前記磁場デジタル値をホストシステム(3)に通信するデジタルバス出力(15)と、
近接デジタル値と前記磁場デジタル値との少なくとも一方が所定の条件を満たすときに、ホストシステム(3)のアクションを要求する割り込み出力(16)と、
の中の少なくともいずれかを備える、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点3]
磁場と近接状態の所定の組み合わせが検出されたときにホストシステム(3)を起動するように構成されている、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点4]
前記デジタル処理部(13)が非線形フィルタを備える、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点5]
前記デジタル処理部(13)がベースライン及びドリフト抑制ユニット(130)を備える、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点6]
前記アナログデジタル変換器(17)の入力で提示されるアナログ信号からベースライン成分の少なくとも一部を減算するように構成されている、観点5に記載の環境センサ回路(1)。
[観点7]
前記磁場プローブ(11)はホール効果素子であり、環境センサ回路(1)とホール効果素子が同じ半導体チップ上に作製されている観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点8]
無線携帯接続装置において、前記無線携帯接続装置が、前記集積回路が前ユーザとの近接度を決定するときにRF電力を低減するように構成されていて、前記近接センサ(10)の感度が前記磁場強度に依存して可変である、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点9]
前記磁場プローブは、ベクトル磁場の2つ又は3つの独立した成分の強度を検出可能な多軸プローブである、観点1に記載の環境センサ回路(1)。
[観点10]
ユーザインタフェースを備え、前記ユーザインタフェースが、磁場強度に応じてその挙動を変更するようにプログラムされている、観点1に記載の環境センサ回路(1)を備える、無線携帯接続装置。
【符号の説明】
【0048】
1 環境集積回路
2 スキャン期間
3 ホストシステム
4 アンテナ
11 ホール変換器
12 アナログフロントエンド
13 デジタル処理
14 デジタル出力
15 バス出力
16 割り込み
17 ADC
18 ホストインタフェース
20 静電容量測定
21 磁場測定
22 AD変換
23 アイドル又は待機期間
31 第1ヒンジ付き部品
32 第2ヒンジ付き部品
35 ヒンジ
37 磁石
100 容量性電極
101 シールド電極
107 基準コンデンサ
111 多軸変換器
121 増幅器
122 ずれ補正
123 キャパシタンスから電圧変換器へ
130 ベースラインとドリフトのフィルタ
131 ノイズフィルタ
132 比較ブロック
133 デジタル弁別器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8