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特許7592075液化天然ガスを輸送および/または貯蔵するためのタンクの壁を修理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】液化天然ガスを輸送および/または貯蔵するためのタンクの壁を修理するための方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20241122BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20241122BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F17C13/00 302C
B65D90/00 P
B63B25/16 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022519227
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 FR2020051670
(87)【国際公開番号】W WO2021058917
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】1910637
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】ガエル、トス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ルイ、ルベイヤール
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、マルタン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、ルプロン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ、デレトレ
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-514334(JP,A)
【文献】特表2014-503762(JP,A)
【文献】特表2018-522173(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第3077277(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B65D 90/00
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガス輸送および/または貯蔵タンク壁(4)を修理するための修理方法であって、前記タンク壁(4)が、少なくとも1つの膜(6)および複数の補強材(12)を備え、前記膜(6)が、複数の波形部(7)を備え、前記複数の波形部(7)の少なくとも1つに、少なくとも1つの前記補強材(12)が配置されており、前記補強材(12)が、主伸長方向に延在し、かつ前記補強材(12)の空洞(18)を画定する少なくとも1つの外壁(17)を備え、前記修理方法中に、少なくとも1つのステップにおいて、前記補強材(12)が、前記タンク壁(4)から分離可能な第1の補強材部分(24)および第2の補強材部分(25)を少なくとも形成するように、その主伸長方向と交差する方向に切断され、別のステップにおいて、前記第1の補強材部分(24)および前記第2の補強材部分(25)が、少なくとも2つの交換部分(27)に置換され、別のステップにおいて、スリーブ(28)が、前記少なくとも2つの交換部分(27)の前記空洞(18)に挿入される、修理方法。
【請求項2】
前記複数の補強材(12)が、切断される前記補強材(12)に隣接する隣接する補強材(33)を備え、前記隣接する補強材(33)が、前記主伸長方向に沿って位置合わせされており、前記方法中に、前記スリーブ(28)が、前記交換部分(27)の配置前に前記隣接する補強材(33)に通される、請求項1に記載の修理方法。
【請求項3】
前記修理方法の過程で、前記スリーブ(28)が、前記隣接する補強材(33)に固定される、請求項2に記載の修理方法。
【請求項4】
前記修理方法の過程で、前記スリーブ(28)が、前記タンク壁(4)への前記交換部分(27)の配置後に、前記交換部分(27)の前記空洞(18)に挿入される、請求項1または3に記載の修理方法。
【請求項5】
前記修理方法の過程で、前記スリーブ(28)が、前記タンク壁(4)への前記交換部分(27)の配置後に、前記交換部分(27)の前記空洞(18)に挿入され、前記修理方法の過程で、前記スリーブ(28)が、前記補強材(12)の主伸長方向において、前記隣接する補強材(33)から前記交換部分(27)の前記空洞(18)内まで平行移動される、請求項に記載の修理方法。
【請求項6】
前記修理方法の過程で、前記スリーブ(28)が、前記交換部分(27)の前記空洞(18)に固定される、請求項5に記載の修理方法。
【請求項7】
前記修理方法の過程で、前記隣接する補強材(33)の空洞(18)が、その中で前記スリーブ(28)が平行移動するのを防止するために閉鎖される、請求項6に記載の修理方法。
【請求項8】
前記修理方法の過程で、前記補強材(12)を切断する前記ステップの前に、前記補強材(12)に面して配置されている膜(6)の部分(P)が除去される、請求項1から7のいずれか一項に記載の修理方法。
【請求項9】
前記修理方法の過程で、前記膜(6)の修理パッチ(32)が、前記補強材(12)に面して固定される、請求項7に記載の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を貯蔵および/または輸送するための、波形膜を有する輸送タンク、特に液化ガスに使用される密閉断熱タンクの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えば-50℃から0℃の温度で液化石油ガス(LPG:liquified petroleum gas)を輸送するための、または大気圧において約-162℃で液化天然ガス(LNG:liquified natural gas)を輸送するためのタンクなど、低温で液体を貯蔵および/または輸送するための密閉断熱タンクの分野に関する。これらのタンクは、陸上または浮体構造に設置され得る。浮体構造の場合、タンクは、液化ガスを輸送すること、または浮体構造の推進用の燃料として使用される液化ガスを収容することを意図され得る。
【0003】
このような液体を低温で貯蔵するために使用される密閉断熱タンクは、通常、断熱材と、液体貨物と接触する複数の波形部から構成される膜とから構成される。断熱材と膜との間では、前記膜の波形部の形状に適合する補強材が、膜の波形部の内側に入れ子にされ得る。そのとき、補強材は、タンクに加えられる機械的圧力に対して膜の波形部を機械的に支持する機能を有する。補強材は、例えば接続部品によって組み立てられて、固定アセンブリを形成する。
【0004】
このようなタンク壁の1つの欠点は、タンク壁を修理することに、より詳細には、膜の波形部の1つに挿入される場合もあれば挿入されない場合もある補強材を修理することにある。具体的には、タンク壁の要素は互いに重ねられて入れ子になっているので、前記タンク壁の要素の各々へのアクセスは、通常、タンク壁の少なくとも一部を解体することを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、タンク壁の過度の解体を必要としない最適化された修理方法を提案することによってこの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の1つの主題は、液化天然ガス輸送および/または貯蔵タンク壁を修理するための修理方法であって、タンク壁が、少なくとも1つの膜および複数の補強材を備え、膜が、複数の波形部を備え、複数の波形部の少なくとも1つに、少なくとも1つの補強材が配置されており、補強材が、主伸長方向に延在し、補強材の空洞を画定する少なくとも1つの外壁を備え、修理方法中に、少なくとも1つのステップにおいて、補強材が、タンク壁から分離可能な第1の補強材部分および第2の補強材部分を少なくとも形成するように、その主伸長方向と交差する方向に切断され、別のステップにおいて、第1の補強材部分および第2の補強材部分が、少なくとも2つの交換部分に置換され、別のステップにおいて、スリーブが、少なくとも2つの交換部分の空洞に挿入される、修理方法である。
【0007】
タンクは、特に、液化天然ガス輸送船のタンクであってもよく、そのとき、前記船は、前記ガスを貯蔵および/または輸送するためのいくつかのタンクを備えてもよい。
【0008】
そのとき、タンク壁は、液体天然ガスを輸送するのに必要な断熱性をタンクに与える少なくとも1つの断熱材を備え、特に、少なくとも1つの断熱層を備えてもよい。膜は、その表面上に配された複数の波形部を備える。このような膜構成は、タンク内に発生する圧力、特に、タンクが冷却されるときの熱収縮、液体貨物の荷重による静水圧、および特に膨張の結果としての貨物の移動による動的圧力に耐えるより大きな能力をそれに与える。したがって、膜の波形部は、これらの圧力に耐えるために膜が変形することを可能にする。
【0009】
より具体的には、膜の複数の波形部は、互いに垂直であり、かつそれらの交差部がノードを形成する第1の一連の波形部および第2の一連の波形部として配置される。そのとき、タンク壁の複数の補強材は、第1の一連の補強材および第2の一連の補強材として配置され、これらは、互いに垂直に、かつそれぞれ第1の一連の波形部および第2の一連の波形部内に延在する。そのとき、十字形の接続部品が、第1の一連の補強材および第2の一連の補強材の補強材の各々の間に、より具体的には膜のノードの下に配置される。したがって、ノードの下に配置された十字形の接続部品は、第1の一連の補強材および第2の一連の補強材の補強材を互いに接続する目的を有し、したがって、補強材の各々の空洞の底部に延在することが理解されよう。
【0010】
本発明は、第1の補強材部分および第2の補強材部分である少なくとも2つの補強材部分を形成するために、タンク壁補強材、例えば損傷したタンク壁補強材を切断しようとする。そのとき、補強材部分は、タンク壁から取り外される限り、分離可能である。スリーブが交換部分の空洞に通されることにより、前記交換部分を補強材の主伸長方向に位置合わせすることが可能になる。スリーブは、より詳細には、交換部分の空洞の上部に配置され、2つの交換部分間の機械的接続を形成する。したがって、本方法中に使用される交換部分に、1つの元々の単体の損傷した補強材、すなわち切断前の個別の補強材を交換することが意図されていることが理解されよう。
【0011】
本発明は、タンク壁を解体する必要なくこのタンク壁の補強材の少なくとも1つを修理することを可能にするという点で好適な用途を見出す。あるいは、本発明は、タンク壁が組み立てられている間に補強材の少なくとも1つを修理することを可能にする限り、好適な用途を見出す。単体の補強材に関する以下に列挙される特徴は、必要な変更を加えて、タンク壁が構成される複数の補強材に適用される。
【0012】
タンク壁修理方法によれば、複数の補強材は、切断される補強材に隣接する隣接する補強材を備え、隣接する補強材は、主伸長方向に沿って位置合わせされており、本方法中に、スリーブが、交換部分の配置前に隣接する補強材に通される。
【0013】
タンク壁の複数の補強材は、第1の一連の補強材および第2の一連の補強材として編成される。したがって、隣接する補強材によって意味されているのは、元々の第1の一連の補強材または元々の第2の一連の補強材のうちで切断された補強材の隣に配置された補強材である。したがって、隣接する補強材は、複数の補強材と同じ構造特性を示し、したがって、スリーブは、前記隣接する補強材の空洞に挿入される。また、隣接する補強材は、損傷した補強材とは異なり、結果として、前記隣接する補強材は、交換部分に交換されることを意図されていないことが理解されよう。
【0014】
タンク壁修理方法によれば、スリーブは、隣接する補強材に固定される。
【0015】
より具体的には、修理方法の後続のステップが実行される前に、スリーブは隣接する補強材に一時的に固定される。隣接する補強材へのスリーブのこの固定は、要素を一緒に保持し、タンク壁の修理作業を容易にする限り、好適である。隣接する補強材へのスリーブの固定は、例えばテフロン製のねじまたはワッシャの形態のスリーブ固定手段を使用して達成され得る。
【0016】
タンク壁修理方法によれば、スリーブは、タンク壁への交換部分の配置後にこれらの交換部分の空洞に挿入される。
【0017】
タンク壁修理方法の代替例によれば、スリーブは、補強材の主伸長方向において、隣接する補強材から交換部分の空洞内まで平行移動される。
【0018】
タンク壁修理方法によれば、スリーブは、交換部分の空洞内に固定される。
【0019】
より具体的には、スリーブは、交換部分の空洞内に確実に固定される。スリーブを交換部分の空洞内に固定することは、例えばテフロン製のねじまたはワッシャであり得る固定手段によって達成される。あるいは、交換部分の空洞内へのスリーブの固定は、交換部分のうちの1つの一端を変形させてスリーブを圧着することによって行われ得る。さらに代替例として、交換部分のうちの1つの空洞内へのスリーブの固定は、溶接作業を使用して外部金属材料を追加することによって交換部分のうちの1つにエンドストップを形成することによって行われ得る。
【0020】
タンク壁修理方法によれば、隣接する補強材の空洞は、その中でスリーブが平行移動するのを防止するために閉鎖される。
【0021】
言い換えれば、隣接する補強材の空洞は、切断された補強材に面するその端部で部分的に閉鎖され、この作業は交換部分の空洞内にスリーブを確実に固定する前に実行することが可能である。この目的のために、例えば接着剤の形態をとり得る閉鎖装置が、上述した条件に従って補強材の空洞を少なくとも部分的に閉鎖するように適用されてもよい。
【0022】
タンク壁修理方法によれば、補強材を切断するステップの前に、補強材に面して配置されている膜の部分が除去される。
【0023】
言い換えれば、タンク壁修理方法の実施の対象を形成する補強材が露出され、このステップは、前記方法の後続のステップの実施に必要である。膜の部分の除去は、例えば、前記膜を機械的に切断することによって、またはレーザを使用することによって行われてもよい。
【0024】
タンク壁修理方法によれば、膜の修理パッチが、補強材に面して固定される。
【0025】
言い換えれば、タンク壁修理方法の最後のステップは、修理方法の実施の対象を形成した少なくとも1つの補強材に面して膜の修理パッチを取り付けることである。したがって、膜の修理パッチの固定は、交換部分がタンク壁に設置された後に行われることが理解されよう。言い換えれば、修理パッチは、修理方法中に以前に除去された膜の部分の代替物として配置される。
【0026】
本発明はまた、少なくとも2つの交換部分であって、該少なくとも2つの交換部分に、タンク壁の少なくとも1つの補強材を交換することが意図された少なくとも2つの交換部分と、2つの交換部分を機械的に接続することを意図された少なくとも1つのスリーブとを備える、液化天然ガス輸送および/または貯蔵タンク壁を修理するための修理キットに関する。修理キットはまた、交換部分を覆うことができる修理パッチを備えてもよい。
【0027】
修理キットは、タンク壁修理方法の実施に関与する。したがって、修理キットの2つの交換部分に、タンク壁のただ1つの元々の単体の損傷した補強材の両方または一部を交換することが意図されていることが理解されよう。言い換えれば、本発明による交換キットは、単体の1つの元々のタンク壁補強材を交換するために使用される。
【0028】
このキットの一態様によれば、スリーブは、交換部分の空洞の上部に収容されるように構成され、空洞の上部の形状は三角形である。
【0029】
別の態様によれば、スリーブは円形断面を有する。
【0030】
本発明の1つの特徴によれば、修理キットは、スリーブを交換部分に対して固定するための少なくとも1つの固定手段を備える。
【0031】
本発明の1つの特徴によれば、修理キットは、交換部分のうちの1つに隣接する補強材の空洞を閉鎖するように構成された少なくとも1つの閉鎖装置を備える。
【0032】
より具体的には、隣接する補強材は、修理方法の対象である補強材、すなわち切断された補強材の主伸長方向に位置合わせされている。したがって、切断された補強材は、交換部分を備える。
【0033】
本発明はまた、タンク壁と、前述の特徴のいずれか1つによる少なくとも1つの修理キットとを備える、船舶用の液化天然ガス輸送および/または貯蔵タンクに関し、交換部分はスリーブによってタンク壁に固定され、交換部分は少なくとも1つの修理パッチによって覆われる。
【0034】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、一方では以下の説明を読むことから、他方では添付の概略図を参照して非限定的な指示として与えられるいくつかの例示的な実施形態からより明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明を備える4つのタンクを有する液体ガス輸送船の斜視側面図である。
図2】断熱材、複数の補強材、および膜の一部を示すタンク壁の拡大図である。
図3】第1の補強材部分、第2の補強材部分、および第3の補強材部分に切断されたタンク壁補強材のうちの1つの拡大図である。
図4】3つの交換部分を備える、図3の補強材の拡大図である。
図5】本発明によるスリーブの斜視図である。
図6図5のスリーブが挿入された図4の補強材の拡大図である。
図7図6の補強材上に配置された修理パッチの拡大図である。
図8】第1の補強材部分、第2の補強材部分、および第3の補強材部分が除去された図3の補強材の拡大図であり、本発明の第2の実施形態に従って図5のスリーブが通された隣接する補強材を示す。
図9図5のスリーブが挿入された図8の隣接する補強材の拡大図であり、固定手段を示す。
図10図7の隣接する補強材に以前に挿入されたスリーブがその中に平行移動で移動された、交換部分を組み込んだ図8の補強材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態の特徴、変形例、および様々な形態は、互いに不適合でないか、または互いに排他的でなければ、様々な組み合わせで互いに組み合わされ得る。特に、特徴の選択が技術的利点を与えるか、または本発明を従来技術の状態から区別するのに十分であれば、記載された他の特徴から分離して以下に記載される特徴の選択のみを備える本発明の変形例が考えられ得る。
【0037】
説明の以下の部分では、縦方向または横方向のラベルは、本発明による膜の方向を指す。縦方向Lは、膜が主に延びる膜の軸線に対応し、一方、横方向は、横方向Tに関する限り、特に膜の縦方向Lに垂直である並行する直線、すなわち縦方向と交わる線に対応する。Vで参照される矢印によって示される、方向のうちの1つは、膜の厚さに対応する。
【0038】
上述した方向は、図に示されている基準LVTの正規直交枠において見られ得る。
【0039】
図1は、液体状態のガス、特に液体天然ガスを貯蔵するための4つのタンク2を備える船舶1、例えばメタンタンカーを示す。タンク2は、コファダムとも呼ばれる二重横隔壁3によって互いに分離される。タンク2の各々は、タンク壁4であって、とりわけ、タンク壁4の断熱部を部分的に形成する図2に見える断熱材5と、液体貨物と接触し、かつ断熱材5に固定されることを意図された少なくとも1つの膜6とを備えるタンク壁4から形成される。
【0040】
図2に見える膜6は、膜6の垂直方向Vに測定して例えば0.5mmから1.5mm、好適には1.2mmの厚さを有する、耐食性材料の、特にステンレス鋼のシートである。膜はまた、膜6の縦方向Lに測定して680mmから3060mmの長さを有してもよい。最後に、膜6は、膜6の横方向Tに測定して680mmから1030mmの幅を有してもよい。
【0041】
膜6は、互いに平行であり、かつ膜の縦方向Lに沿って延在する複数の第1の一連の波形部8および互いに平行であり、かつ膜6の横方向Tに延在する複数の第2の一連の波形部9として配された複数の波形部7を備える。
【0042】
第1の一連の波形部8および第2の一連の波形部9は、互いに垂直な方向に主に延在し、それらの交差部にノード10を形成する。ノード10は、膜6が内接する平面ABから垂直に突出する。波形部7によって意味されているのは、垂直方向Vにおける膜6の表面の変形部である。
【0043】
膜6はまた、四角形の形状の平坦部11を備え、膜6の縦方向Lに延在するその2つの側面は、2つの第1の一連の波形部8によって画定され、膜6の横方向Tに延在するその2つの側面は、2つの第2の一連の波形部9によって画定される。したがって、平坦部11の集合体は、膜6の平面ABに延在し、かつ膜が断熱材5に取り付けられたときにタンク壁4の断熱材5と接触する、膜6の非変形表面を形作る。
【0044】
図2はまた、第1の補強材13および第2の補強材14として配された補強材12の存在を明示する。詳細な説明の以下の部分において、言及された特徴が第1の補強材13および第2の補強材14の両方に当てはまる場合、第1の補強材13および第2の補強材14は、補強材12という名称の下にまとめられる。それにもかかわらず、本発明は、複数の補強材12に限定されず、タンク壁4の少なくとも1つの補強材12に対して修理方法を実施することが必要な場合にはいつでも適用可能である。
【0045】
第1の補強材13は、膜6の縦方向Lに延在する第1の一連の補強材15を少なくとも形成するように位置合わせされる。第2の補強材14は、膜6の横方向Tに延在する第2の一連の補強材16を少なくとも形成するように位置合わせされる。したがって、第1の一連の補強材15および第2の一連の補強材16は交差する、特に垂直に交差する。
【0046】
第1の補強材13は、膜6の第1の一連の波形部8に配置される。第1の補強材13は、波形部7の変形部の内側に入れ子になるように配置され、第1の補強材13の形状は、膜6の第1の一連の波形部8の波形部の形状を補完することが理解されよう。
【0047】
第2の補強材14は、膜6の第2の一連の波形部9に配置される。したがって、第2の補強材14は、波形部7の変形部の内側に入れ子になるように配置され、第2の補強材14の形状は、膜6の第2の一連の波形部9の波形部7の形状を補完することが理解されよう。
【0048】
第1の一連の補強材15と第2の一連の補強材16との交差部は、膜6のノード10の下に配置されることも理解されよう。
【0049】
補強材12は、空洞18を画定する外壁17を備える。したがって、上記から、外壁17が、補強材12が上記の特徴に従って膜6の波形部7に配置され得るように補強材12に形状を与えることが理解されよう。
【0050】
接続部品21は、膜6の第1の補強材13および第2の補強材14に、それらが膜6の一連の波形部8、9の下で互いに接続されるように配置される。したがって、接続部品21は、膜6のノード10に沿って配置され、補強材12の空洞18の各々に挿入される。接続部品21は、例えば、非限定的に十字形22であってよい。したがって、第1の一連の補強材15および第2の一連の補強材16を構成する補強材12の集合体は、上記したようにタンク壁4の膜6と断熱材5との間に配置された固定アセンブリを形成することが理解されよう。
【0051】
次に、図3から図10を参照して、タンク壁4を修理するための方法が記載される。より詳細には、修理方法は、タンク壁4の簡略化された修理、例えば、前記タンク壁4の補強材12の少なくとも1つの修理が実行されることを可能にする。説明の以下の部分において、本方法が、第1の一連の補強材15の補強材12の少なくとも1つおよび/または第2の一連の補強材16の補強材12の少なくとも1つに対して実施され得ることが理解されよう。したがって、第1の補強材13の場合の膜6の縦方向L、および第2の補強材14の場合の膜6の横方向Tは、補強材の主伸長方向という名称の下でまとめられて定義される。
【0052】
タンク2を修理するための方法の第1ステップは、修理方法の対象を形成する補強材12へのアクセスを作業者に与えることにある。これを行うために、前記補強材12に面して位置する膜6の、図2に見える部分Pが、例えば機械的に切断することによって、またはレーザを使用することによって除去される。
【0053】
図示されていない代替例として、修理方法は、タンク壁の組み立て中、タンク壁を構成する補強材を覆うように膜が取り付けられる前に実施されてもよく、そのとき、膜の一部を除去する第1ステップは実行されないことが考慮されるべきである。
【0054】
補強材12が露出された後、修理方法の第2ステップは、補強材部分23、より具体的には、少なくとも第1の補強材部分24および第2の補強材部分25を形成するために、補強材12をその主伸長方向と交差する方向に切断することである。図示の例では、第3の補強材部分26も形成されているが、本方法は、より多くのまたはより少ない補強材部分23に適用され得ることが理解されよう。本方法の第2ステップ中に、補強材12が切断されたときに、タンク壁4の1つの元々の単体の補強材12が第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26になるように、この1つの元々の補強材12が切断されることも理解されよう。
【0055】
その結果、これにより、図3に示されている例によれば、タンク壁4から分離されることを意図された第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26が得られる。タンク壁4から分離可能によって意味されているのは、補強材部分24、25、26がタンク壁4から恒久的に取り外され、交換部分27に交換されることを意図されていることである。
【0056】
あるいは、これは示されていないが、補強材部分24、25、26の少なくとも1つは、補強材部分24、25、26の少なくとも1つが少なくとも1つの交換部分27に置換された後にタンク壁に再び取り付けられ得る限り、取り外し可能であってもよい。
【0057】
図4に見える方法の第1の実施形態によれば、第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26が取り外された後、交換部分27は、前記第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26の代わりになるように取り付けられる。したがって、3つの交換部分27はすべて、補強材12の伸長方向に位置合わせされることが理解されよう。交換部分27に、タンク壁4の1つの単体の元々の補強材12を交換することが意図されていることも理解されよう。
【0058】
その後、追加のステップにおいて、図5に見えるスリーブ28が、2つの交換部分27の少なくとも2つの空洞18に通される。図6に示されている例では、スリーブ28は、3つの交換部分27の3つの空洞18に通されている。
【0059】
スリーブ28は、細長い形状と、スリーブ28の各端部において互いに反対側の端部である第1の端部29および第2の端部30とを有する。前述したようなスリーブ28の挿入は、主に、補強材12の主伸長方向の、第2の端部30から第1の端部29への平行移動によって行われ、それは、したがって、第1の挿入方向I1とみなされる。したがって、スリーブ28は、前記補強材12の伸長方向に垂直な方向において交換部分27間の移動を少なくとも阻止する機能を有する。
【0060】
さらに、この第1の実施形態では、一連の交換部分27の一端に位置する、交換部分27のうちの1つの空洞18によって画定された容積部の外側に前記スリーブ28の第2の端部30を残しつつ、先の挿入特性に従ってスリーブ28が挿入されるようになっていてもよい。その結果、これにより、スリーブ28をその第2の端部30で固定する手段31の取り付けが可能になる。固定手段31は、例えば、非限定的にテフロン製のねじまたはワッシャであってもよい。固定手段31は、この例では、交換部分27に対してエンドストップを形成することによって、上記の平行移動、少なくとも第1の挿入方向I1において、確実にスリーブ28の移動を防止する目的を有する。あるいは、固定手段31は、スリーブ28の移動を防止するような交換部分27のうちの1つの変形部であってもよいし、またはスリーブ28が自由なままであるように、当接エンドストップを形成する金属材料の、交換部分27のうちの1つへの追加品であってもよい。
【0061】
その後、図7に見える膜6の修理パッチ32が、交換部分27を覆うように取り付けられる。したがって、修理パッチ32は、第1ステップ中に除去された部分Pの、縦方向Lおよび横方向Tの寸法と実質的に同一である、膜6の縦方向Lおよび横方向Tの寸法を有することが理解されよう。
【0062】
次に、修理パッチ32は、その液密シールを再確立するために、膜6のそれ以外に溶接され得る。
【0063】
本発明の第2の実施形態によれば、第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26がタンク壁から取り外された後、追加のステップにおいて、スリーブ28が、切断された補強材12、すなわち、修理方法の対象を形成する補強材に隣接する隣接する補強材33の空洞18に通される。隣接する補強材33によって意味されているのは、切断された補強材12の隣に配置され、補強材12の伸長方向に位置合わせされている補強材である。隣接する補強材33はまた、交換部分27に交換されることを意図されていないという点で区別可能であり、これらは、修理の対象である1つの単体の補強材12のみに使用される。言い換えれば、切断された補強材12および隣接する補強材33は、別個ではあるが、元々の第1の一連の補強材15または第2の一連の補強材16の一方の一部を形成し、前記一連の補強材15、16を接続する接続部品21のうちの1つによって互いに直接接続されている。
【0064】
したがって、第1の端部29が、第1の補強材部分24に面して、隣接する補強材33の空洞18によって画定された容積部から突出するように、スリーブ28は、補強材12の主伸長方向の、第1の端部29から第2の端部30に向かって延びる第2の挿入方向I2への平行移動によって、隣接する補強材33の空洞18に挿入される。
【0065】
図9に見られる、本発明の一実施形態では、スリーブ28を固定するための手段31は、その第1の端部29に設置されてもよい。この構成では、固定手段31は、第2の挿入方向I2への前に記載した平行移動においてスリーブ28の移動を一時的に防止する。したがって、固定手段31は、この例では、テフロン製のねじまたはワッシャであってもよい。
【0066】
この第2の実施形態による方法の別のステップは、第1の実施形態と同様に、3つの交換部分27が図10に見られるように補強材12の主伸長方向に位置合わせされるよう、第1の補強材部分24、第2の補強材部分25、および第3の補強材部分26を交換部分27に置換することを含む。
【0067】
図10に示されているように、このステップに続いて、その第1の端部29に配置されたスリーブ28を固定するための手段31が取り外され、前記スリーブ28は、2つの交換部分27の空洞18に少なくとも挿入されるように、補強材12の主伸長方向において第1の挿入方向I1に平行移動される。本発明の一例によれば、第2の端部30は、スリーブ28を固定する手段31がスリーブ28の前記第2の端部30において利用可能であるように、隣接する補強材33に面して位置する交換部分27のうちの1つの空洞18の外側に留まり得る。したがって、第1の挿入方向I1および第2の挿入方向I2へのスリーブ28の平行移動が確実に防止され、固定手段31は、交換部分27および隣接する補強材33に対してエンドストップを形成する。
【0068】
本方法のこの第2の実施形態の追加のステップは、閉鎖装置34によって隣接する補強材33の空洞18を、切断された補強材12に面するその端部で閉鎖することであり得る。言い換えれば、固定手段31を支持するスリーブ28の第2の端部30に面して位置する、隣接する補強材33の空洞18の端部が閉鎖される。このようにして、固定手段31は、スリーブ28の第2の端部30から取り外され得、閉鎖装置34は、スリーブ28が第2の挿入方向I2に向かって隣接する補強材33の空洞18内に平行移動するのを防止する。
【0069】
一例によれば、閉鎖手段34は、接着テープの形態をとり得る。本発明の別の例によれば、閉鎖手段34は、隣接する補強材33の空洞18の形状を補完する形状を有する合成インサートを少なくとも備え得る。そのとき、閉鎖手段34は、隣接する補強材33の空洞18の内側またはその外側に配置され得る。また、この閉鎖手段34は、隣接する補強材33の周りに、または前記隣接する補強材33の空洞18内に強制的に組み付けられてもよく、したがって、隣接する補強材33上または内での前記閉鎖手段34の機械的完全性を保証するために、閉鎖手段34を波形にすることが可能である。
【0070】
あるいは、固定手段31によって交換部分27の空洞18内にスリーブ28を確実に固定する前に、閉鎖装置34が取り付けられてもよい。
【0071】
最後に、本発明の第1の実施形態と同様に、図7に見える膜6の修理パッチ32が、交換部分27を覆うように適用される。したがって、修理パッチ32は、本発明の第1の実施形態と同一の構造特性を有する。
【0072】
しかしながら、本発明は、本明細書に記載および図示された手段および構成に限定されてはならず、任意の同等の手段および構成、ならびにこのような手段の任意の技術的に実行する組み合わせにも及ぶ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10