(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】超伝導キュービット中にジョセフソン接合を形成する方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/01 20230101AFI20241122BHJP
【FI】
H10N60/01 J
(21)【出願番号】P 2022527045
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2020082066
(87)【国際公開番号】W WO2021094541
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-04-24
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アディガ、ヴィヴェカンナンダ
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ラース、デイヴィッド
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-234479(JP,A)
【文献】特開平05-243627(JP,A)
【文献】国際公開第2018/224876(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/004609(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導キュービット中のジョセフソン接合を形成する方法であって、
凸状構造を有し、前記凸状構造がエッジにおいて交わる第1の面と第2の面とを有する、基板を与えることと、
前記基
板の前記第1の面上に超伝導材料の第1の層を堆積させることと、
超伝導材料の前記第1の層の表面上に酸化物材料の層を形成するために、超伝導材料の前記第1の層を酸化させることと、
前記基
板の前記第2の面上に前記超伝導材料の第2の層を堆積させることと
を含み、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において、酸化物材料の前記層の一部を超伝導材料の前記第1の層の一部と超伝導材料の前記第2の層の一部との間に挟んでジョセフソン接合を定義するように、前記第2の層の前記一部が、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において酸化物材料の前記層の前記一部と接触する、方法。
【請求項2】
前記基板の表面上に超伝導材料を堆積させることと、
前記基板上に複数のバスと読出し共振器とを形成するために、前記基板の前記表面の第1の部分をあらわにするために、前記超伝導材料の一部を除去することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超伝導材料上に、および前記基板の前記表面の前記あらわにされた第1の部分上に犠牲材料層を堆積させることと、
前記犠牲材料層の一部を露出するために電子ビームまたは光ビーム・リソグラフィを適用することと、
キュービット・ポケットを定義するための前記基板の前記表面の第2の部分をあらわにするために、前記犠牲材料層の前記露出された一部を除去することと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記超伝導材料上に、および前記基板の前記あらわにされた第1の部分上に前記犠牲材料層を堆積させることが、前記超伝導材料上に、および前記基板の前記あらわにされた第1の部分上にゲルマニウム(Ge)を堆積させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記表面の前記あらわにされた第2の部分が2つの鏡面対称形状を有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記表面の前記あらわにされた第2の部分がH状形状を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板の前記表面の前記あらわにされた第2の部分の前記2つの鏡面対称形状が、前記2つの鏡面対称形状の中線において前記犠牲材料層のより狭いストリップによって分離されている、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板中に前記凸状
構造を形成するために、前記基板の前記表面の前記あらわにされた第2の部分をエッチングすること
をさらに含む、請求項3ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板の前記表面の前記あらわにされた第2の部分をエッチングすることが、水酸化カリウム(KOH)または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使用してエッチングすることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジョセフソン接合を形成するために、残存する犠牲材料層を除去することをさらに含む請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の面および前記第2の面が、前記基板の結晶面内に形成された、請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記基板がシリコン(Si)を備える、請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記超伝導材料が、アルミニウム(Al)とニオブ(Nb)とからなるグループから選択される、請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記酸化物材料が、アルミニウム酸化物とニオブ酸化物とからなるグループから選択される、請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
キュービット・デバイスであって、
凸状構造を有する基板であって、前記凸状構造が、エッジにおいて交わりそれらの間で角を形成する第1の面と第2の面とを有する、基板と、
前記基
板の前記第1の面上に堆積させられた超伝導材料の第1の層と、
超伝導材料の前記第1の層の表面上の酸化物材料の層と、
前記基
板の前記第2の面上の前記超伝導材料の第2の層と
を備え、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において、酸化物材料の前記層の一部を超伝導材料の前記第1の層の一部と超伝導材料の前記第2の層の一部との間に挟んでジョセフソン接合を定義するように、前記第2の層の前記一部が、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において酸化物材料の前記層の前記一部と接触する、キュービット・デバイス。
【請求項16】
前記基板がシリコン(Si)を備える、請求項15に記載のキュービット・デバイス。
【請求項17】
前記超伝導材料が、アルミニウム(Al)とニオブ(Nb)とからなるグループから選択される、請求項15ないし16のいずれかに記載のキュービット・デバイス。
【請求項18】
前記酸化物材料が、アルミニウム酸化物とニオブ酸化物とからなるグループから選択される、請求項15ないし17のいずれかに記載のキュービット・デバイス。
【請求項19】
超伝導キュービット中にジョセフソン接合を形成する方法であって、
基板を与えることと、
前記基板の表面上に超伝導材料を堆積させることと、
前記超伝導材料上に犠牲材料層を堆積させることと、
キュービット・ポケットを定義するために前記基板の前記表面の一部をあらわにするために、前記犠牲材料層の一部を除去することと、
前記基板中に凸状形状を形成するために前記基板の前記表面の前記一部をエッチングすることであって、前記凸状形状がエッジにおいて交わる第1の面と第2の面とを有する、エッチングすることと、
ジョセフソン接合に接続されるキャパシタ・パッドを複数のバスに接続するために電子ビームまたは光ビーム・リソグラフィを適用することなしに、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において、前記ジョセフソン接合を形成することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記ジョセフソン接合を形成することが、
前記基
板中の前記凸状形状の前記第1の面上に超伝導材料の第1の層を堆積させることと、
超伝導材料の前記第1の層の表面上に酸化物材料の層を形成するために、超伝導材料の前記第1の層を酸化させることと、
前記基
板中の前記凸状形状の前記第2の面上に前記超伝導材料の第2の層を堆積させることと
を含み、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において、酸化物材料の前記層の一部を超伝導材料の前記第1の層の一部と超伝導材料の前記第2の層の一部との間に挟んで前記ジョセフソン接合を定義するように、前記第2の層の前記一部が、前記エッジにおいてまたは前記エッジの近傍において酸化物材料の前記層の前記一部と接触する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
リソグラフィを使用して前記複数のバスおよび複数の読出し共振器を定義することと、
前記基板上に前記複数のバスおよび読出し共振器を形成するために前記超伝導材料の一部を除去することと
をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記犠牲材料層の一部を除去することが、単一のリソグラフィ・ステップを適用することを含む、請求項19ないし21のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の現在請求されている実施形態は、超伝導キュービットに関し、より詳細には、超伝導キュービット(superconducting qubit)および超伝導キュービット・デバイス中のジョセフソン接合を形成する方法に関する。
【0002】
量子計算は、量子ビット(本明細書においては全体にわたってキュービットと呼ぶ)の信頼性の高い制御に基づく。量子アルゴリズムを実現するために必要とされる基本的な演算は、単一キュービット演算(single-qubit operation)および2つの別個の量子ビット間の相関関係を確立する2キュービット演算(two-qubit operation)の一式である。高忠実度2キュービット演算の実現は、量子計算のためのエラーしきい値に到達することと信頼性の高い量子シミュレーションに到達することの両方にとって望ましいことがある。
【0003】
(1つまたは複数の超伝導キュービットを有する)超伝導量子プロセッサは、(たとえば、Siまたは高抵抗率Si、Al2O3などの)絶縁性基板上の(たとえば、Al、Nbなどの)超伝導金属を含む。超伝導量子プロセッサは一般に、(たとえば、正方格子、六方格子などの)様々な格子対称に、カプラによって接続された個々のキュービットの平面2次元格子構造であり、フリップチップ上に配置された読出し構造である。カプラは、キャパシタ、共振器、コイルまたはキュービット間の結合を与える任意のマイクロ波構成要素から構成され得る。
【0004】
超伝導キュービットを作製する従来の方法は、ブリッジを形成するためにDolan法またはManhattan法を使用する標準的なジョセフソン接合作製に基づく。上記の方法は多くのリソグラフィのステップを含む多くのステップを必要とし、結果として得られるキュービットは比較的大きくなり得、したがって外部環境との遠距離場結合または近接場結合あるいはその両方に敏感であり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は、超伝導キュービット中のジョセフソン接合を形成する方法を提供することである。本方法は、凸状構造を有し、凸状構造がエッジにおいて交わる第1の面と第2の面とを有する基板を与えることと、基板材料の第1の面上に超伝導材料の第1の層を堆積させることとを含む。本方法は、超伝導材料の第1の層の表面上に酸化物材料の層を形成するために、超伝導材料の第1の層を酸化させることと、基板材料の第2の面上に超伝導材料の第2の層を堆積させることとをさらに含む。エッジにおいてまたはエッジの近傍において、酸化物材料の層の一部を超伝導材料の第1の層の一部と超伝導材料の第2の層の一部との間に挟んでジョセフソン接合を定義するように、第2の層の一部は、エッジにおいてまたはエッジの近傍において酸化物材料の層の一部と接触する。
【0006】
本発明の別の態様は、キュービット・デバイスを提供することである。キュービット・デバイスは凸状構造を有する基板を含み、凸状構造は、エッジにおいて交わりそれらの間で角を形成する第1の面と第2の面とを有する。キュービット・デバイスは、基板材料の第1の面上に堆積させられた超伝導材料の第1の層と、超伝導材料の第1の層の表面上の酸化物材料の層とをさらに含む。キュービット・デバイスはまた、基板材料の第2の面上の超伝導材料の第2の層を含む。エッジにおいてまたはエッジの近傍において、酸化物材料の層の一部を超伝導材料の第1の層の一部と超伝導材料の第2の層の一部との間に挟んでジョセフソン接合を定義するように、第2の層の一部は、エッジにおいてまたはエッジの近傍において酸化物材料の層の一部と接触する。
【0007】
本発明のまた別の態様は、超伝導キュービット中のジョセフソン接合を形成する方法を提供することである。本方法は、基板を与えることと、基板の表面上に超伝導材料を堆積させることと、超伝導材料上に犠牲材料層を堆積させることとを含む。本方法は、キュービット・ポケットを定義するための基板の表面の一部をあらわにするために犠牲材料層の一部を除去することと、基板中に凸状形状を形成するために基板の表面の一部をエッチングすることであって、凸状形状はエッジにおいて交わる第1の面と第2の面とを有する、エッチングすることとをさらに含む。本方法はまた、ジョセフソン接合に接続されたキャパシタ・パッドを複数のバスに接続するために電子ビームまたは光ビーム・リソグラフィを適用することなしに、エッジにおいてまたはエッジの近傍において、ジョセフソン接合を形成することを含む。
【0008】
一実施形態では、ジョセフソン接合を形成することは、基板材料中の凸状形状の第1の面上に超伝導材料の第1の層を堆積させることと、超伝導材料の第1の層の表面上に酸化物材料の層を形成するために、超伝導材料の第1の層を酸化させることと、基板材料中の凸状形状の第2の面上に超伝導材料の第2の層を堆積させることとを含む。エッジにおいてまたはエッジの近傍において、酸化物材料の層の一部を超伝導材料の第1の層の一部と超伝導材料の第2の層の一部との間に挟んでジョセフソン接合を定義するように、第2の層の一部が、エッジにおいてまたはエッジの近傍において酸化物材料の層の一部と接触する。
【0009】
一実施形態では、本方法は、リソグラフィを使用して複数のバスおよび複数の読出し共振器を定義することと、基板上に複数のバスおよび読出し共振器を形成するために超伝導材料の一部を除去することとをさらに含む。一実施形態では、犠牲材料層の一部を除去することは、単一のリソグラフィ・ステップを適用することを含む。
【0010】
本開示、ならびに構造の関係する要素の作動および機能の方法ならびに部品の組合せならびに製造の経済は、添付の図面を参照しながら以下の説明および添付の特許請求の範囲を検討することにより、より明らかになり、それらのすべてはこの明細書の一部を構成し、様々な図において同じ参照番号は一致する部分を示す。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的とし、本発明の限界の定義としては意図されていないことは明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による、超伝導材料の層が堆積させられた基板の概略側面図である。
【
図2】(A)は、本発明の実施形態による、その上に堆積させられた超伝導材料の層をもつ基板であって、超伝導材料の層のいくつかの部分が除去された基板の概略上面図を示す図である。(B)は、本発明の実施形態による、その上に堆積させられた超伝導材料の層をもつ基板の、
図2(A)に示す線2B-2Bに沿った断面図である。
【
図3】(A)は、本発明の実施形態による、超伝導材料の層と犠牲材料層の層とをその上に堆積させ、犠牲材料層は除去された犠牲材料層の部分をもち、基板100の表面の一部をあらわにしてキュービット・ポケットを定義する基板の概略上面図を示す図である。(B)は、本発明の実施形態による、超伝導材料の層と犠牲材料層の層とをその上に堆積させ、犠牲材料層は除去された犠牲材料層の部分をもち、基板の表面の一部をあらわにしてキュービット・ポケットを定義する基板の、
図3(A)中に示された線3B-3Bに沿った断面図である。
【
図4】(A)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分をエッチングするときキュービット・ポケットおよびアンダーカットの範囲を定義する、基板の表面のあらわにされた部分をもつ基板の概略上面図を示す図である。(B)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分をエッチングするときキュービット・ポケットおよびアンダーカットの範囲を定義する、基板の表面のあらわにされた部分をもつ基板の、
図4(A)に示す線4B-4Bに沿った断面図である。(C)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分をエッチングするときキュービット・ポケットおよびアンダーカットの範囲を定義する、基板の表面のあらわにされた部分をもつ基板の、
図4(A)に示す線4C-4Cに沿った断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による、くさび形構造を示す基板の断面図である。
【
図6】(A)は、本発明の実施形態による、ジョセフソン接合(JJ)とバスと共振器とを含む、形成されたキュービット・デバイスの上面図である。(B)は、本発明の実施形態による、
図6(A)に示す線6B-6Bに沿った、形成されたキュービット・デバイスの断面図である。(C)は、本発明の実施形態による、
図6(A)に示す線6C-6Cに沿った、形成されたキュービット・デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態では、超伝導キュービット・デバイスのためのジョセフソン接合を形成する方法がここに提供される。一実施形態では、本方法は、基板100を与えることと、基板100の表面100S上に超伝導材料の層102を堆積させることとを含む。
図1は、本発明の実施形態による、超伝導材料の層102が堆積させられた基板100の概略側面図である。一実施形態では、基板100は、シリコン(Si)およびサファイアを含むが限定されない、任意の不導体材料であり得る。一実施形態では、超伝導材料102は、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)などを含むが限定されない、任意の超伝導材料であり得る。
【0013】
本方法は、基板上に複数のバス202および読出し共振器204を形成するために、基板100の表面100Sの第1の部分100Aをあらわにするために、超伝導材料102の一部を除去することをさらに含む。一実施形態では、超伝導材料の層102の一部の除去は、超伝導材料の層102の一部を(たとえば、酸エッチングなどの化学エッチングを使用して)エッチングすることによって実行され得る。
【0014】
図2(A)は、本発明の実施形態による、その上に堆積させられ、超伝導材料の層102のいくつかの部分が除去された超伝導材料の層102をもつ基板100の概略上面図を示す。
図2(B)は、本発明の実施形態による、その上に堆積させられた超伝導材料の層102をもつ基板の、
図2(A)に示す線2B-2Bに沿った断面図である。
【0015】
本方法は、超伝導材料102の層上および基板100の表面100Sのあらわにされた部分100A上に、犠牲材料層302を堆積させることをさらに含む。本方法はまた、犠牲材料層302の一部を露出するために電子ビームまたは光ビーム・リソグラフィを適用することと、キュービット・ポケット304を定義するために基板100の表面100Sの一部100Bをあらわにするために犠牲材料層302の露出された一部を除去することとを含む。一実施形態では、犠牲材料層302の露出された一部を除去することは、単一のリソグラフィ・ステップを適用することを含む。
【0016】
図3(A)は、本発明の実施形態による、超伝導材料の層102と犠牲材料層302の層とをその上に堆積させ、犠牲材料層302は除去された犠牲材料層302の部分をもち、基板100の表面100Sの一部100Bをあらわにしてキュービット・ポケット304を定義する基板100の概略上面図を示す。
図3(B)は、本発明の実施形態による、超伝導材料の層102と犠牲材料層302の層とをその上に堆積させ、犠牲材料層302は除去された犠牲材料層302の部分をもち、基板100の表面100Sの一部100Bをあらわにしてキュービット・ポケット304を定義する基板100の、
図3(A)に示す線3B-3Bに沿った断面図である。
【0017】
一実施形態では、超伝導材料の層102上、および基板100のあらわにされた部分100B上に犠牲材料層302を堆積させることが、超伝導材料層102上、および基板100のあらわにされた部分100B上にゲルマニウム(Ge)を堆積させることを含む。
【0018】
図3(A)に示すように、一実施形態では、ポケット304を定義する基板100の表面100Sのあらわにされた部分102Bは、2つの鏡面対称形状304Aおよび304Bを有する。
図3(A)に示すように、基板100の表面100Sのあらわにされた部分100BはH状形状を有する。2つの鏡面対称形状304Aおよび304Bは、互いに向き合い、2つの鏡面対称形状304Aおよび304Bの中線において犠牲材料層302の比較的狭いストリップ304Cを形成する。
【0019】
一実施形態では、本方法は、(
図4(C)および
図5に示される)基板100中に凸状構造402を形成するために、基板100の表面100Sの部分100Bをエッチングすることをさらに含む。一実施形態では、部分100Bをエッチングすることは、水酸化カリウム(KOH)または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使用してエッチングすることを含む。
【0020】
図4(A)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分100Bをエッチングするときキュービット・ポケット304およびアンダーカット404の範囲を定義する、基板100の表面100Sのあらわにされた部分100Bをもつ基板100の概略上面図を示す。一実施形態では、
図4(A)に示すように、部分100Bのエッチングによって形成されるアンダーカット404の範囲は、点線によって境界を定められている。
【0021】
図4(B)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分100Bをエッチングするときキュービット・ポケット304およびアンダーカット404の範囲を定義する、基板100の表面100Sのあらわにされた部分100Bをもつ基板100の、
図4(A)に示す線4B-4Bに沿った断面図である。
図4(B)に示す4B-4B断面図に沿って、犠牲材料層302は、基板100の表面100Sの上面上を走り、基板100の表面100Sの部分100Bをエッチングした後に形成されるボイド408をわたるブリッジ構造406を形成する。
【0022】
図4(C)は、本発明の実施形態による、あらわにされた部分100Bをエッチングするときキュービット・ポケット304およびアンダーカット404の範囲を定義する、基板100の表面100Sのあらわにされた部分100Bをもつ基板100の、
図4(A)に示す線4C-4Cに沿った断面図である。
図4(C)に示す4C-4C断面図に沿って、犠牲材料層302は、基板100の表面100Sの上部上および基板100の表面100Sの部分100Bをエッチングした後に形成される凸状構造402の上部上を走るブリッジ構造406を形成する。
【0023】
一実施形態では、凸状構造402は、たとえばくさび形または三角柱プリズム形状を有し得る。一般に、凸状構造402は、エッジ402Cにおいて交わる第1の面402Aと第2の面402Bとを有する。2つの面402Aおよび402Bは、エッジ402Cにおいて角(たとえば、90度よりも小さい鋭角)を定義する。一実施形態では、
図4(C)に示すように、線4C-4Cに沿った凸状構造の断面は三角形形状を有する。一実施形態では、第1の面402Aおよび第2の面402Bは、基板100の(111)結晶面中に形成されている。
【0024】
図5は、本発明の実施形態による、くさび形構造を示す基板の断面図である。一実施形態では、本方法は、基板100中の凸状構造402の第1の面402A上に超伝導材料の第1の層502を堆積させることをさらに含む。一実施形態では、超伝導材料の第1の層502は、たとえば
図5に図示するように、第1の蒸着を使用することによって堆積させられ得る。一実施形態では、超伝導材料の第1の層502は、基板100のエッチング中に形成された第1のトレンチ510および第2のトレンチ512中にも堆積させられる。
【0025】
本方法は、超伝導材料の第1の層502を堆積させた後、超伝導材料の第1の層502の表面上に酸化物材料の層504を形成するために、超伝導材料の第1の層502を酸化させることをさらに含む。酸化物材料の層504は、超伝導材料の第1の層502が基板100と接触しないところに形成される。特に、エッジ402C近傍の超伝導材料の第1の層502の終端部502Aも酸化され、酸化物層504の一部504Aが、超伝導材料の第1の層502の終端部502A上に形成される。さらに、酸化物層504は、超伝導材料の第1の層502の上面上のトレンチ510および512の底部にも形成される。
【0026】
本方法はまた、凸状構造402の第2の面402B上に超伝導材料の第2の層506を堆積させることを含む。一実施形態では、超伝導材料の第2の層506は、たとえば
図5に図示するように、第2の蒸着を使用することによって堆積させられ得る。エッジ402Cにおいてまたはエッジ402Cの近傍において、酸化物材料の層の一部504Aを超伝導材料の第1の層502の一部502Aと超伝導材料の第2の層506の一部506Aとの間に挟んでジョセフソン接合(JJ)を定義するように、超伝導材料の第2の層506の一部506Aは、エッジ402Cにおいてまたはエッジ402Cの近傍において酸化物材料の層504の一部504Aと接触して堆積させられる。一実施形態では、酸化物材料層504は、アルミニウム酸化物とニオブ酸化物とからなるグループから選択される。一実施形態では、超伝導材料の第2の層506は、酸化物層504の上面上のトレンチ510および512内部にも堆積させられる。
【0027】
一実施形態では、超伝導材料の第1の層502と超伝導材料の第2の層506とは、同じか、または異なる超伝導材料からなり得る。たとえば、一実施形態では、超伝導材料の第1の層502と超伝導材料の第2の層506とは、両方アルミニウム層であり得る。別の実施形態では、超伝導材料の第1の層502はアルミニウム層であり得、超伝導材料の第2の層はニオブ層であり得る。さらに、超伝導材料の第1の層502または超伝導材料の第2の層506あるいはその両方は、超伝導材料の層102と同じか、または異なり得る。
【0028】
本方法は、ジョセフソン接合(JJ)およびキュービット・デバイス600を形成するために、残存する犠牲材料層(たとえば、ゲルマニウム)302を除去することをさらに含む。
図6(A)は、本発明の実施形態による、ジョセフソン接合(JJ)ならびにバスならびに共振器202および204を含む、形成されたキュービット・デバイス600の上面図である。
図6(B)は、本発明の実施形態による、
図6(A)に示す線6B-6Bに沿った、形成されたキュービット・デバイス600の断面図である。
図6(C)は、本発明の実施形態による、
図6(A)に示す線6C-6Cに沿った、形成されたキュービット・デバイス600の断面図である。
【0029】
図6(A)~
図6(C)に示すように、キュービット・デバイス600は、凸状構造402を有し、凸状構造402は、エッジ402Cにおいて交わりそれらの間で角を形成する第1の面402Aと第2の面402Bとを有する、基板100を含む。キュービット・デバイス600はまた、基板材料100の凸状構造402の第1の面402A上に堆積させられた超伝導材料の第1の層502を含む。キュービット・デバイス600はまた、超伝導材料の第1の層502の表面上の酸化物材料の層504を含む。キュービット・デバイス600はまた、基板材料402Bの第2の面上の超伝導材料の第2の層506を含む。エッジ402Cにおいてまたはエッジ402Cの近傍において、酸化物材料の層の一部504Aを超伝導材料の第1の層502の一部502Aと超伝導材料の第2の層506の一部506Aとの間に挟んでジョセフソン接合(JJ)を定義するように、超伝導材料の第2の層506の一部506Aは、エッジ402Cにおいてまたはエッジ402Cの近傍において酸化物材料の層504の一部504Aと接触して堆積させられる。
【0030】
一実施形態では、
図6(A)および
図6(B)に示すように、第1のトレンチ510中にも堆積させられる超伝導材料の第1の層502および超伝導材料の第2の層506は、ジョセフソン接合(JJ)に電気的に接続するように、第1のキャパシタ・パッド602を定義する。
図6(A)および
図6(B)に示すように、第2のトレンチ512中にも堆積させられる超伝導材料の第1の層502および超伝導材料の第2の層506は、ジョセフソン接合(JJ)に電気的に接続するように、第2のキャパシタ・パッド604を定義する。一実施形態では、キャパシタ・パッド602および604を、ジョセフソン接合(JJ)に、および複数のバス202または複数の読出し共振器204あるいはその両方に接続するために、電子ビームまたは光ビーム・リソグラフィを適用することなしに、ジョセフソン接合(JJ)がエッジ402Cにおいてまたはエッジ402Cの近傍において形成される。上記の段落において説明したように、基板100上に複数のバスおよび読出し共振器202および204を形成するために、複数のバス202および複数の読出し共振器204はリソグラフィを使用して定義され、超伝導材料層102の一部が除去される。第1のキャパシタ・パッド602と複数のバス202と読出し共振器204との間の間隔および第2のキャパシタ・パッド604と複数のバス202と読出し共振器204との間の間隔は、マイクロ波エネルギーをジョセフソン接合(JJ)に結合させるためのカップリング・キャパシタを定義する。
【0031】
従来の方法では、ジョセフソン接合キャパシタ・パッド材料に接続するようにキャパシタ・パッド材料上に自然形成された酸化物に開口するためにイオン・ミリングが使用される。従来の方法では、このイオン・ミリング・ステップは一般に、接合金属蒸着前に、インサイチュ(in situ)で実行される。対照的に、本発明のいくつかの実施形態では、キャパシタ・パッド602および604ならびにキュービットのジョセフソン接合(JJ)は同じステップ中に形成される。結果として、ジョセフソン接合をキャパシタ・パッドに接続するためのキャパシタ・パッド材料上の自然形成された酸化物に開口するためのイオン・ミリングの使用は必要とされない。実際、イオン・ミリング・ステップは、露出された領域において基板100(たとえば、シリコン)を損傷し得、したがってコヒーレンスに有害に影響を及ぼし得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態による本方法を使用することによって、この問題は回避され得、したがってこの課題は克服され得る。
【0032】
さらに、本発明のいくつかの実施形態による本方法は、外部環境との遠距離場結合および近接場結合を実質的に低減するキュービット・デバイス600の製造を可能にする。さらに、結果として得られるキュービット・デバイス600全体のサイズも低減され、したがってそのために損失を低減し、対称性をもつキュービットの2次元格子の組立てを可能にするコンパクトなキュービット・デバイスを提供する。
【0033】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示しているが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。説明した実施形態の範囲および思想から逸脱することなく、多くの改変および変形は、当業者にとって明らかになるであろう。本明細書で使用する用語は、実施形態の原理、実際の適用または市場に見られる技術に対する技術的改善を最もよく説明するように、あるいは他の当業者が本明細書で開示した実施形態を理解することを可能にするように選定した。