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特許7592087難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物及びそれを用いた難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物及びそれを用いた難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/02 20060101AFI20241122BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241122BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
C08G18/02 020
C08G18/00 F
C08G101:00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022532245
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043771
(87)【国際公開番号】W WO2021255958
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020104560
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆康
(72)【発明者】
【氏名】末竹 貴雄
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149760(JP,A)
【文献】特開2015-78594(JP,A)
【文献】特開2018-83909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートを含む組成物Aと、触媒として、少なくとも三量化触媒を含むが、ペンタメチルジエチレントリアミンは含まない、ポリオール不含の組成物Bとから構成され、ポリオールの不存在下における、該ポリイソシアネートの該三量化触媒によるイソシアヌレート化反応と、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる有機の発泡剤を用いた発泡とにより、ポリイソシアヌレートフォームを形成し得る発泡性組成物にして、
前記組成物Bが、更に、液状の有機リン酸エステルと、少なくとも赤リンを含む粉状のリン含有難燃剤とを含有していることを特徴とする難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記組成物Bにおけるリン濃度が10~30質量%となるように、調整されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記液状の有機リン酸エステルが、前記組成物B中に25~60質量%の割合で含有せしめられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記液状の有機リン酸エステルが、モノリン酸エステル及び縮合リン酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記粉状のリン含有難燃剤が、50μm以下の平均粒子径を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記粉状のリン含有難燃剤として、赤リンリン酸塩とが併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項7】
前記リン酸塩が、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、及び有機ホスフィン酸塩からなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項8】
前記粉状のリン含有難燃剤として、赤リンと有機ホスフィン酸塩とが併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項9】
前記粉状のリン含有難燃剤が、前記液状の有機リン酸エステルの100質量部に対して40~100質量部の割合において、含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項10】
前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩又はカルボン酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項11】
前記組成物Bが、水を含有していない、又は1質量%以下の水含有量となるように調整されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項12】
前記発泡剤が、前記組成物Bに含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項13】
前記発泡剤が、前記液状の有機リン酸エステルの100質量部に対して40~100質量部の割合において、用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物を用いて、かかる発泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き付けて、発泡・硬化せしめることにより、かかる構造体表面に所定厚さのポリイソシアヌレートフォーム層を形成することを特徴とする難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項15】
前記ポリイソシアヌレートフォーム層が、ISO-5660に規定される発熱性試験方法に準拠して、放射熱強度:50kW/m2 にて加熱したときに、加熱開始から20分間の総発熱量が8.0MJ/m2 以下である不燃特性を有していることを特徴とする請求項14に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物、及びそれを用いた難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法に係り、特に、我国の建築基準法にて規定される不燃特性を有するポリイソシアヌレートフォームを有利に形成し得る発泡性組成物と、そのような発泡性組成物から不燃性のポリイソシアヌレートフォームを有利に形成し得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性、軽量性等の特性を利用して、主に断熱材料として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いられ、更には、土木工事において発生する空隙を埋める裏込材や、土木工事に際しての補強材等としても、実用されている。また、そのようなポリウレタンフォームは、一般に、ポリオールに発泡剤、更に必要に応じて、触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなる組成物と、ポリイソシアネートを主体として含む組成物とを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の方式により、発泡させて、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
しかしながら、上記のようにして形成されるポリウレタンフォームは、火に晒された場合は易燃性であるために、その用途上からも高い難燃性が要求されている。そのため、各種の難燃剤を配合せしめてなる難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物が提案されてきており、例えば、特表2014-524954号公報(特許文献1)においては、改善された難燃特性を有する吹付け可能な弾性ポリウレタンコーティングを製造するための反応性処方物として、イソシアネートプレポリマー及び任意の難燃性化合物を含むポリイソシアネート成分と、芳香族ポリエステルポリオール、赤リン及び触媒、そして更なる難燃剤等の成分を含むポリオール成分とからなる反応性処方物が提案され、これによって、改善された燃焼性特性を有する弾性ポリウレタンコーティングが形成され得ることが、明らかにされている。なお、そこでは、更に添加、含有せしめられる難燃性添加物として、ハロゲン含有化合物、ホスフェート類、無機フィラー、アンチモンオキシド、亜鉛等が、例示されている。
【0004】
また、特表2014-532098号公報(特許文献2)においては、ポリウレタンフォームの煙抑制剤として、リン酸トリアルキルを用いることが提案され、これによって、燃やした場合に煙の発生が著しく少ない、即ち、改善された発煙抑制特性を有するポリウレタンフォームが得られることが、明らかにされている。そして、そこでは、ポリウレタンフォームの形成のために、ウレタン触媒やイソシアネートの三量化触媒が用いられることや、加工容易性のための金属系無機充填剤、例えば、金属水和物やホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛塩等を含有せしめることが出来ることを、明らかにしている。
【0005】
さらに、WO2014/112394(特許文献3)においては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、三量化触媒、発泡剤及び整泡剤と共に、赤リンを必須成分とする添加剤を含有する難燃性ウレタン樹脂組成物が明らかにされており、更に、そのようなウレタン樹脂組成物には、添加剤として、赤リンの他に、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤及び金属水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも一つを組み合わせて、含有せしめるとされており、これによって、取り扱いが容易であり、難燃性に優れ、加熱されたときに一定の形状を保つ発泡体を形成することの出来る難燃性ウレタン樹脂組成物を提供し得ることが、明らかにされている。
【0006】
しかしながら、それら特許文献のうち、特許文献1や特許文献2において得られた難燃性ポリウレタンコーティングや発煙抑制性能が改善されたポリウレタンフォームにあっては、その難燃特性において、近年における厳しい難燃化要請に充分に応え得るものではなかったのである。例えば、特許文献1において得られる難燃性ポリウレタンコーティングは、弾性を有する被覆層についての特性を明らかにしているに過ぎないものであって、ポリウレタンフォーム(発泡体)に要求される厳しい難燃特性を充分に満たすものではなかったのであり、更に、特許文献2に開示のポリウレタンフォームにあっても、単に、発煙抑制性能の改善を目的としているに過ぎないものであって、より厳しい難燃性能に係る要請に充分に応え得るものではなかったのである。
【0007】
また、特許文献1や特許文献3において用いられている赤リンは、ポリウレタンフォームの燃焼時に、ポリウレタンフォームの難燃性を高めるのに必要な表面炭化層の形成を促して、炎の伝搬を抑制する等の優れた難燃効果を発揮せしめるものではあるが、難燃効果を高めるべく、その使用量を多くすると、赤リン自体が燃える性質を有しているところから、ポリウレタンフォームに着火した時に、含有せしめられている赤リンが燃焼するようになるために、ポリウレタンフォームの初期発熱量が高くなる問題があり、そして自己消火に至る時間が長くなる問題を内在している。
【0008】
一方、特開2010-195920号公報(特許文献4)や特開2012-236874号公報(特許文献5)等においては、ポリウレタン樹脂に難燃性を付与するためのフィラー(難燃剤)として、有機ホスフィン酸塩化合物を用いることが明らかにされているのであるが、そのような有機ホスフィン酸塩化合物のみを用いて形成されるポリウレタン発泡体にあっては、その着火時に、良好な自己消火性を発揮するものの、その難燃性を高めるのに必要な、ポリウレタン発泡体表面における炭化層の形成が不充分となり、燃焼熱によって炭化層にひび割れが発生し易い問題を内在している。そして、炭化層にひび割れが発生すると、そこから更なる燃焼を招き、発熱量が増大することになる恐れを内在している。
【0009】
ところで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応と、発泡剤による発泡とによって形成されるポリウレタンフォームは、一般に、多数の発泡セルの積層構造からなるコア層(本体部)と、このコア層の表面に形成される、実質的に発泡セルが存在しない、密度の高いスキン層(表皮部)とから、構成されるものであるが、かかるポリウレタンフォームの材質(樹脂)自体は可燃性の物質であり、特にフォーム表面に形成されるスキン層は、密度が高くて、燃え易くなっているのである。このため、上述の公報にて提案されている各種難燃剤を用いて、得られるポリウレタンフォームの難燃化を図った場合において、フォーム本体部であるコア層の部分では、優れた難燃性乃至は不燃性が発揮されるものであっても、フォーム表皮であるスキン層の部分では、燃えてしまい、これによって発熱量が高くなって、自己消火性も悪くなるところから、目的とする高度の難燃性や不燃性を充分に発揮し得るものではなかったのである。
【0010】
なお、我国の建築基準法においては、材料の耐火・防火性能に関して、難燃材料、準不燃材料、及び不燃材料に区分されて、難燃材料から、準不燃材料、更には不燃材料となる程、より厳しい防火性能が要求されているのであるが、ポリオールとポリイソシアネートとを反応せしめると共に、発泡させて得られるポリウレタンフォームからなる発泡体材料に対し、高度の難燃性を付与せしめるべく、上記した公報に開示の如き従来の難燃剤を用いたところで、最も厳しい防火性能の要求される不燃材料における不燃性能を満たすことは、困難なことであった。特に、かかる建築基準法にて規定される不燃材料に要求される特性、即ち放射熱強度:50kW/m2 にて加熱したときに、加熱開始後から20分間の総発熱量が8.0MJ/m2 以下となる不燃特性を得るために、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物に対して、上記した公知の難燃剤の配合量を増加せしめたりすると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が阻害されて、目的とする発泡体を得ることが出来なくなったり、また、得られる発泡体の熱伝導率等の物理的乃至は機械的特性が悪化する等の問題が、惹起されるようになるのである。
【0011】
また、前記建築基準法の規定(施行令第1条第五号)によれば、不燃材料は、上記せる総発熱量を満たすものであると共に、最高発熱速度が、10秒を超えて連続して200kW/m2 を超えることがないこと、そして防炎上有害な、裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこととされているのであるが、従来の難燃剤を配合してなるポリウレタン発泡体材料は、ポリウレタン樹脂としての有用な物理的乃至は機械的特性を確保しつつ、そのような不燃性能の要請に充分に応え得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2014-524954号公報
【文献】特表2014-532098号公報
【文献】WO2014/112394
【文献】特開2010-195920号公報
【文献】特開2012-236874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、スキン層の存在下においても、難燃性をより一層高めてなるポリイソシアヌレートフォームを有利に形成し得ると共に、燃焼時の発熱量が低く且つ優れた自己消火性を有するポリイソシアヌレートフォームを与え得る発泡性組成物を提供することにあり、また、そのようなポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物を用いて、かかる優れた難燃性を有するポリイソシアヌレートフォームを有利に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載から把握され得る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0015】
(1) ポリイソシアネートを含む組成物Aと、触媒として、少なくとも三
量化触媒を含む、ポリオール不含の組成物Bとから構成され、ポリオ
ールの不存在下における、該ポリイソシアネートの該三量化触媒によ
るイソシアヌレート化反応と、発泡剤による発泡とにより、ポリイソ
シアヌレートフォームを形成し得る発泡性組成物にして、前記組成物
Bが、更に、液状の有機リン酸エステルと粉状のリン含有難燃剤とを
含有していることを特徴とする難燃性ポリイソシアヌレートフォーム
用発泡性組成物。
(2) 前記組成物Bにおけるリン濃度が10~30質量%となるように、
調整されていることを特徴とする前記態様(1)に記載の難燃性ポリ
イソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
(3) 前記液状の有機リン酸エステルが、前記組成物B中に25~60質
量%の割合で含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)又は
前記態様(2)に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡
性組成物。
(4) 前記液状の有機リン酸エステルが、モノリン酸エステル及び縮合リ
ン酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする前記態様(
1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の難燃性ポリイソシアヌ
レートフォーム用発泡性組成物。
(5) 前記粉状のリン含有難燃剤が、50μm以下の平均粒子径を有して
いることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1
つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
(6) 前記粉状のリン含有難燃剤が、赤リン及びリン酸塩からなる群より
選択されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(5)の何
れか1つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成
物。
(7) 前記リン酸塩が、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、及
び有機ホスフィン酸塩からなる群より選択されることを特徴とする前
記態様(6)に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性
組成物。
(8) 前記粉状のリン含有難燃剤として、赤リンと有機ホスフィン酸塩と
が併用されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(7)の
何れか1つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組
成物。
(9) 前記粉状のリン含有難燃剤が、前記液状の有機リン酸エステルの1
00質量部に対して40~100質量部の割合において、含有せしめ
られることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか
1つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
(10) 前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩又はカルボン酸アルカ
リ金属塩であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(9)
の何れか1つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性
組成物。
(11) 前記発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン
及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる有機
の発泡剤であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(10
)の何れか1つに記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡
性組成物。
(12) 前記発泡剤が、前記組成物Bに含有せしめられることを特徴とす
る前記態様(1)乃至前記態様(11)の何れか1つに記載の難燃性
ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
(13) 前記発泡剤が、前記液状の有機リン酸エステルの100質量部に
対して40~100質量部の割合において、用いられることを特徴と
する前記態様(1)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載の難燃
性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物。
(14) 前記態様(1)乃至前記態様(13)の何れか1つに記載の難燃
性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物を用いて、かかる発
泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き付けて、発泡・硬化せしめ
ることにより、かかる構造体表面に所定厚さのポリイソシアヌレート
フォーム層を形成することを特徴とする難燃性ポリイソシアヌレート
フォームの製造方法。
(15) 前記ポリイソシアヌレートフォーム層が、ISO-5660に規
定される発熱性試験方法に準拠して、放射熱強度:50kW/m2
て加熱したときに、加熱開始から20分間の総発熱量が8.0MJ/
2 以下である不燃特性を有していることを特徴とする前記態様(1
4)に記載の難燃性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリオールを用いないようにして、ポリイソシアネートのヌレート化を更に促進させると共に、反応触媒として、少なくとも三量化触媒が用いられ、更には難燃剤として、液状の有機リン酸エステルと粉状のリン含有難燃剤とが併用されているところから、かかる三量化触媒によって導入されるイソシアヌレート構造の存在下において、それら有機リン酸エステルとリン含有難燃剤とが、それぞれの有する難燃化作用を効果的に発現せしめ得ることとなるのであり、これによって、フォーム表面にスキン層が存在していても、得られるポリイソシアヌレートフォームの難燃性がより一層高められ得て、総発熱量を効果的に低減せしめ、以て、不燃性能の実現も有利に達成され得ることとなるのである。
【0017】
特に、そのような本発明に従う発泡性組成物から形成されるポリイソシアヌレートフォームにあっては、可燃樹脂成分となるポリオールの不使用により、形成されるフォーム中の可燃分が限界まで低減されていることも寄与して、燃焼時の初期発熱量が有利に低減せしめられ得て、自己消火性を高める効果が効果的に発揮され、以て、その難燃性が有利に高められ得ることとなることに加えて、着火時に、ポリイソシアヌレートフォームの表面に炭化層が生成するのを効果的に促進して、その表面にひび割れが発生するのを抑制し、これにより、そのひび割れの箇所からの燃焼を阻止して、発熱量が増大するのを阻止する効果をもたらすことになる。
【0018】
かくして、本発明に従って、イソシアヌレート構造の有効な導入と共に、有機リン酸エステルとリン含有難燃剤との併用によって、上述の如き難燃作用の相乗効果により、ポリイソシアヌレートフォームの燃焼に際して、その表面に生成する炭化層と自己消火性のバランスがより一層良好となり、着火しても燃え続けることがなく、且つ高い耐熱分解性を有するポリイソシアヌレートフォームとなるのであり、これによって、スキン層が存在していても、極めて燃焼し難く、また自己消火性の高められたポリイソシアヌレートフォームが、有利に提供され得ることとなったのである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に従う難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物について詳細に説明して、その具体的構成を、更に明らかにすることとする。
【0020】
先ず、本発明に従う難燃性ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物は、ポリイソシアネートを含む組成物Aと、触媒として、少なくとも三量化触媒を含む、ポリオール不含の組成物Bとから構成され、ポリオールの不存在下における、ポリイソシアネートの三量化触媒によるイソシアヌレート化反応と共に、発泡剤による発泡にて、目的とするポリイソシアヌレートフォームが形成されることとなる発泡性組成物であるが、そこで用いられる組成物Aを構成する主たる成分であるポリイソシアネートは、三量化触媒によって、イソシアヌレート構造を形成し、更に、高分子量化によって、ポリイソシアヌレート(樹脂)を与える、公知の各種のポリイソシアネート化合物が、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられることとなる。
【0021】
具体的には、ポリイソシアネートは、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。一般的には、反応性や経済性、取り扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0022】
一方、組成物Bには、上記した組成物Aに含まれるポリイソシアネートをヌレート化させて、ポリイソシアヌレート(樹脂)の硬質フォームを形成すべく、触媒として少なくとも三量化触媒、換言すればポリイソシアネートの有するイソシアネート基を反応させて、三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒(イソシアヌレート化触媒)が含有せしめられることとなる。この三量化触媒としては、公知の各種のものを適宜に選択して、用いることが可能であるが、好ましくは、第四級アンモニウム塩や、カルボン酸アルカリ金属塩;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等の含窒素芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩等を挙げることが出来る。これらのうち、第四級アンモニウム塩又はカルボン酸アルカリ金属塩を用いることが、難燃性の向上の点から、好ましく、中でも、2種類以上の第四級アンモニウム塩を併用することが、更なる難燃性の向上とポリイソシアヌレートフォームの密度を低減させることによる施工性の向上の点からも、特に好ましい。
【0023】
ここで有利に用いられる第四級アンモニウム塩における第四級アンモニウム基(窒素原子に4個の有機基が共有結合した形態の1価のカチオン)としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム基、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等のヒドロキシアンモニウム基、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム基等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能であるところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム等の第四級アンモニウム基が、好ましく採用されることとなる。
【0024】
また、かくの如き第四級アンモニウム基とイオン結合して、第四級アンモニウム塩を構成する1価のアニオンである有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、及び炭酸基が、好ましく採用される。
【0025】
ところで、上述のような構成の第四級アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT 18X、U-CAT 2313(サンアプロ株式会社製)や、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0026】
また、カルボン酸アルカリ金属塩としては、炭素数1~8の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩が、好ましく用いられる。そこにおいて、脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸等が挙げられ、その中でも、好ましくは蟻酸、酢酸、ヘキサン酸、オクチル酸等のカルボン酸が用いられる。また、アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、好ましくはカリウム及びナトリウムが用いられる。本発明で対象とされる脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩は、前述の脂肪族カルボン酸とアルカリ金属との組合せにおける何れの化合物でもよいが、好ましい例として、オクチル酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、蟻酸カリウム等が挙げられる。
【0027】
なお、このように、触媒の一つとして用いられる三量化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリイソシアネート全体の100質量部に対して、3~10質量部、好ましくは4~9質量部の範囲内において、選択されることとなる。この三量化触媒の使用量が、3質量部よりも少なくなると、ポリイソシアネートの三量化が充分に実現され得ず、そのために難燃性の向上効果を充分に達成することが困難となる等の問題があり、一方10質量部よりも多くなると、反応が進み過ぎて、固化が早くなるため、吹付け発泡操作等に問題を生じ、施工が困難となる。
【0028】
そして、本発明にあっては、かかる三量化触媒と共に、樹脂化触媒を併用することも、可能である。この樹脂化触媒としては、ジブチルスズジラウレート;オクチル酸ビスマス(2-エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩;ナフテン酸鉛等の公知のものを挙げることが出来る。
【0029】
また、そのような樹脂化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリイソシアネート全体の100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、この樹脂化触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題があり、一方5質量部よりも多くなると、樹脂化反応時に発熱が高くなり、フォームの黄変等、外観に異常をきたし、発泡中に発生する飛沫に含まれる第四級アンモニウム塩又はカルボン酸アルカリ金属塩を含む触媒により、吹付け施工を行なっている作業現場の作業環境を悪化せしめる恐れがある。
【0030】
さらに、上述の如き三量化触媒や樹脂化触媒に加えて、更に必要に応じて、従来からポリウレタンフォームの製造に際して用いられている公知の触媒も、適宜に選択されて、三量化触媒等を含む組成物B中に含有せしめることが可能である。例えば、アミン系触媒は、ポリウレタンの初期発泡性を有利に向上せしめ得るものであり、またスキン層とコア層との密度差を変えることなく、フォームの密度を全体的に下げる作用があり、更にフォームのべたつきを改善して、ゴミ等の付着による外観の悪化を有利に阻止し得ると共に、スプレー発泡法においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性の悪化等を改善する特徴を発揮するものである。そして、そのようなアミン系触媒としては、化学構造内にOH基やNH基を有する反応性アミン化合物や、環状構造を有する環式アミン化合物を用いることが推奨され、中でも、反応性アミン化合物を触媒として用いることによって、より一層臭気の低減を図ることが出来る。
【0031】
なお、そのようなアミン系触媒として用いられる反応性アミン化合物や環式アミン化合物は、公知のウレタン化触媒の中から適宜に選択され得るところであって、例えば、反応性アミン化合物としては、テトラメチルグアニジン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、エトキシ化ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)、2-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン等を挙げることが出来る。また、環式アミン化合物としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソプロピル-2-メチルイミダゾール、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルフォリン、4,4’-オキシジエチレンジモルフォリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、1,8-ジアゾビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等を挙げることが出来る。
【0032】
そして、かかる触媒の一つとして用いられるアミン系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るべく、組成物A中のポリイソシアネート全体の100質量部に対して、0.1~7質量部、好ましくは0.2~3質量部、より好ましくは0.3~1質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、このアミン系触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、触媒としての機能を充分に発揮せしめ難くなると共に、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる等の問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題を惹起する。また、かかるアミン系触媒の使用量が7質量部よりも多くなると、得られるポリイソシアヌレートフォームの臭気が顕著となり、また発泡中に揮発するアミン系触媒により、吹付け作業環境が悪化する問題を惹起するようになる。このため、臭気の点から、かかるアミン系触媒は、その使用量が少ないことが好ましいのである。
【0033】
しかも、本発明にあっては、上述の如き三量化触媒を、少なくとも触媒の一つとして含む組成物Bを用いて、組成物A中のポリイソシアネートのヌレート化反応を進行させて、ポリイソシアヌレート(樹脂)を生成せしめることに加えて、難燃剤として、液状の有機リン酸エステルと粉状のリン含有難燃剤とを併用することにより、生成するポリイソシアヌレートフォームの難燃性が相乗的に高められ得るようにしたのであり、これによって、それら難燃剤を単独で使用するよりも、更にはポリオールをポリイソシアネートに反応せしめて、ポリウレタンフォームを形成する場合よりも、更に高度の難燃性を有するポリイソシアヌレートフォームを、有利に提供せしめ得たのである。
【0034】
ところで、かかる本発明において用いられる液状の有機リン酸エステルは、フォームの燃焼時の発熱量を低下せしめる効果を有することで、本発明に従う発泡性組成物から形成されるポリイソシアヌレートフォームの難燃性を、相乗的に、より一層向上せしめ得るものであると共に、組成物Bを液状の薬液と為して、その粘度を効果的に低下させて、吹付け等の施工作業性を向上せしめ得る減粘剤としても、作用するものである。そして、ここで用いられる液状の有機リン酸エステルとしては、液状であれば特に限定されるものではなく、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等の公知のものを、単独で又は組み合わせて、用いることが出来る。
【0035】
具体的には、それら有機リン酸エステルの中で、モノリン酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナントレン、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート等を挙げることが出来る。
【0036】
また、縮合リン酸エステルとしても、特に限定されるものではないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート、並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げることが出来る。更に、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(株式会社ADEKA製アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェ-ト(FP-600、FP-700)等を挙げることが出来る。
【0037】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度を低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いため、モノリン酸エステルを使用することが好ましく、特にトリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェートを使用することが、より好ましい。
【0038】
そして、このような有機リン酸エステルの使用量としては、組成物B中において、一般に25~60質量%、好ましくは30~50質量%程度となる割合が採用されることとなる。なお、この有機リン酸エステルの使用量が少なくなり過ぎると、その添加効果を充分に発揮させ難くなる等の問題があり、一方、その使用量が多くなり過ぎると、ポリイソシアヌレートフォームを形成するための触媒効果の低下や発泡阻害等の問題が惹起されるようになる。また、この有機リン酸エステルは、組成物A中のポリイソシアネートの100質量部に対して、一般に10~70質量部程度、好ましくは30~50質量部程度の割合において用いられるものである。
【0039】
また、かくの如き有機リン酸エステルと共に用いられて、形成されるポリイソシアヌレートフォームに、有効な難燃性を付与せしめる粉状のリン含有難燃剤は、有利には、50μm以下の平均粒子径を有するものであり、中でも、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは0.5~40μm、更に好ましくは1~36μmの平均粒子径を有している。このリン含有難燃剤の平均粒子径が大きくなり過ぎると、発泡性組成物中における均一な分散効果を得ることが難しく、そのために、本発明の目的を充分に達成し得なくなる問題を惹起するからである。なお、かかるリン含有難燃剤の粒径が小さくなり過ぎると、その取扱いや発泡性組成物中への均一な分散が困難となる等の問題を惹起するようになるところから、その下限としては、0.1μm程度とすることが望ましいのである。そして、このような粉状のリン含有難燃剤は、前記した液状の有機リン酸エステルの100質量部に対して、一般に、40~100質量部程度、好ましくは50~80質量部程度の割合において、用いられることとなる。なお、かかるリン含有難燃剤の添加量が少なくなり過ぎると、その添加効果を充分に発揮し難くなる問題があり、一方、その添加量が多くなり過ぎると、組成物Bの液状化を阻害して、吹付け作業性の悪化を招く等の問題を惹起するようになる。
【0040】
ところで、かくの如き粉状のリン含有難燃剤としては、公知の各種の粉状のものを用いることが可能であるが、特に、本発明にあっては、赤リン及びリン酸塩からなる群より選ばれることが望ましい。なお、本発明において、赤リンは、リン含有難燃剤として取り扱うこととする。また、液状の有機リン酸エステルと粉状のリン含有難燃剤の組合せとしては、有機リン酸エステルと赤リンとの組合せの他、有機リン酸エステルとリン酸塩との組合せでもよく、更にはそれら有機リン酸エステルやリン含有難燃剤は、その複数を用いた組合せであっても、何等差支えない。
【0041】
そして、そのようなリン含有難燃剤の一つとして、好適に用いられる赤リンとしては、公知のものが、何れも対象とされ、通常、市販品の中から適宜に選択して、用いられることとなる。(例えば、燐化学工業株式会社製の「NOVARED」、「NOVAEXCEL」、日本化学工業株式会社製の「HISHIGUARD」、クラリアントケミカルズ株式会社製の「EXOLIT RP」等の名称にて販売されているものを挙げることが出来る。中でも、そのような粉末状の赤リンは、取扱い性乃至は作業性の向上と共に、樹脂組成物中への分散性を高め、その添加効果を有利に向上せしめる上において、その表面に、コーティング層が形成されているものであることが望ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の金属の水酸化物や、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属の酸化物からなる無機化合物、及び/又はフェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂からなる被覆層を、粒子表面に形成してなる赤リン粉末が、有利に用いられることとなる。なお、かかる被覆層は、一般に、赤リンの100質量部に対して、1~30質量部程度の割合において、形成されている。
【0042】
また、粉状のリン含有難燃剤の好適に用いられる他の一つとして指摘したリン酸塩としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、有機ホスフィン酸塩等を挙げることが出来、それらの中から選択された一つ又は複数が、組成物B中に含有せしめられることとなる。
【0043】
なお、そのようなリン酸塩含有難燃剤の具体例の一つであるモノリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩;リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩;リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩;リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩;リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩;リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩;リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等を挙げることが出来る。
【0044】
また、ピロリン酸塩としても、特に限定されるものではないが、例えば、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸アセトグアナミン、ピロリン酸ベンゾグアナミン、ピロリン酸アクリルグアナミン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-ハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2-アミノ-4,6-ジハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、ピロリン酸2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン等を挙げることが出来る。
【0045】
さらに、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等を挙げることが出来る。
【0046】
加えて、リン含有難燃剤の一つである有機ホスフィン酸塩は、ホスフィン酸を構成するリン原子に、炭素数が1~6の直鎖状のアルキル基やフェニル基等の有機基の1つ又は2つが共有結合されてなる構造の有機ホスフィン酸に、公知の各種の金属がイオン結合して、塩形態を呈するものであって、一般に、リン原子には、メチル基、エチル基又はフェニル基が結合したものが好ましく、また金属としては、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであることが望ましく、特に、Al又はZnであることが好ましい。具体的には、(モノ又はジ)メチルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)エチルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)フェニルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)メチルホスフィン酸アルミニウム、(モノ又はジ)エチルホスフィン酸アルミニウム、(モノ又はジ)フェニルホスフィン酸アルミニウム等を挙げることが出来る。
【0047】
特に、本発明にあっては、リン含有難燃剤として、赤リンと有機ホスフィン酸塩とを併用することが望ましく、その併用によって、ポリイソシアヌレートフォームの燃焼時に、フォーム表面に充分な強度を有する炭化層の形成を促し、かかる炭化層にひび割れを生じさせることなく、ポリイソシアヌレートフォームの総発熱量の増大を効果的に阻止する効果を奏すると共に、ポリイソシアヌレートフォームの燃焼時の初期発熱量を低減せしめ、自己消火性を高める効果が有利に奏され得るようにすることにより、有機ホスフィン酸塩と赤リンのどちらか一方を、単独でポリイソシアヌレートフォームに含有せしめる場合よりも、それら難燃剤の持つ難燃特性を相乗的に発揮せしめ得るようにして、以て、極めて燃焼し難く、自己消火性の高められたポリイソシアヌレートフォームが有利に形成され得ることとなる。
【0048】
そして、本発明に従う発泡性組成物の構成成分の一方である組成物Bに、上記した有機リン酸エステルやリン含有難燃剤が含有せしめられることにより、組成物Bは、一般に10~30質量%、好ましくは12~25質量%のリン濃度を有するように、調整されることとなる。なお、この組成物B中のリン濃度が少なくなり過ぎると、フォームの難燃性を充分に高めることが困難となる問題があり、一方、リン濃度が高くなり過ぎると、難燃性は向上するものの、ポリイソシアネートのヌレート化反応や吹付け発泡作業等に悪影響をもたらす問題を惹起する。ところで、かかる組成物Bにおけるリン濃度は、以下の如くして求められることとなる。先ず、添加される難燃剤(有機リン酸エステルやリン含有難燃剤)のそれぞれの化合物におけるP(リン原子)の含有量が、リン濃度(質量%)として、測定又は算出される。この算出の場合にあっては、[化合物中のPの原子量の総和]÷[化合物の分子量]×100(%)なる式に従って、それぞれの難燃剤のリン濃度が計算される。次に、各難燃剤の添加量からそれぞれの組成物Bにおけるリン濃度を計算し、各難燃剤のリン濃度の合計を算出することにより、組成物Bにおけるリン濃度として、求められることとなる。勿論、難燃剤を含有する組成物Bから、直接、定量分析によって、リン濃度(合計量)を測定することも可能である。そして、そのような定量分析には、ICP発光分光分析、蛍光X線分析、オージェ電子分光法等が用いられるのである。
【0049】
また、本発明に従う難燃剤ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物を構成する組成物A又は組成物Bには、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に、生成するポリイソシアヌレート(樹脂)を発泡させるための発泡剤が配合され、加えて、必要に応じて、公知の整泡剤や、更なる他の難燃剤等の、従来から知られている各種の助剤を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0050】
そして、ここで用いられる発泡剤としては、公知の各種非フロン系・フロン系の発泡剤が、適宜に選択され得るものであるが、特に、本発明にあっては、非フロン系発泡剤(及び/又はその発生源)が有利に用いられ、具体的には、ハイドロカーボン(HC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等の有機の発泡剤が、含有せしめられる。
【0051】
例えば、それら本発明において用いられ得る発泡剤の一つである、フロン系発泡剤のハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等を挙げることが出来る。
【0052】
また、本発明において好適に用いられる非フロン系発泡剤の一つであるハイドロカーボン(HC)としては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等を挙げることが出来る。更に、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来、加えて、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等を挙げることが出来る。特に、これらハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、好適に用いられ得るのである。
【0053】
なお、本発明にあっては、発泡剤として、上述したものの他、水を使用することも可能である。しかしながら、水は、ポリイソシアネートと反応するものであるところから、そのような水は組成物Aには存在せしめられ得ず、また、組成物B中に存在するようになると、かかる組成物Bが、ポリイソシアネート含有の組成物Aに混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、ポリイソシアネートが消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなることで、イソシアヌレート環の総量が少なくなり、生成するポリイソシアヌレートフォームの難燃性の低下を招くようになる恐れがある。このことから、本発明に従う発泡性組成物中において、水は実質的に含有されていないことが望ましい。ここで、実質的に水が含有されていないとは、各組成物において、水の含有量が0.1質量%未満である状態をいうものとする。各組成物において、0.1質量%未満の微量な水が検出されたとしても、誤差と見做して、水が含有されていないと判断する。なお、水を含有させる場合は、難燃性が低下しない範囲内で許容され、水の含有量は、組成物B中、一般に1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下となるように、調整されることとなる。
【0054】
ところで、本発明に従う難燃剤ポリイソシアヌレートフォーム用発泡性組成物に含有せしめられる上記の発泡剤は、前記した液状の有機リン酸エステルの100質量部に対して、一般に、40~100質量部程度、好ましくは50~90質量部程度の割合において、用いられることが望ましい。なお、かかる発泡剤の含有量が少なくなり過ぎると、発泡特性が悪化して、例えば、吹付発泡において充分な発泡が得られない等の問題があり、また多くなり過ぎると、フォームの収縮等の問題を惹起するようになる。
【0055】
また、整泡剤は、ポリイソシアヌレートフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーン系のものや非イオン系界面活性剤が、好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、組成物B中において0.5~5質量%程度、好ましくは1~3質量%程度の範囲内で選択される。
【0056】
そして、上述の如くして得られた、ポリイソシアネートを含む組成物Aと、触媒として少なくとも三量化触媒を含み、更に、液状の有機リン酸エステルや粉状のリン含有難燃剤を含有する組成物Bとを用いて、それらを、体積比にて、一般に組成物A:組成物B=2:1~1:1の割合において、混合することにより、ポリオールの不存在下において、三量化触媒によるポリイソシアネートのイソシアヌレート化反応と、発泡剤による発泡とにより、目的とするポリイソシアヌレートフォームが形成されることとなるのである。
【0057】
なお、かかるポリイソシアヌレートフォームの形成に際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が、そのまま採用され得るところであって、例えば、それら組成物Aと組成物Bとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内、土木工事において発生する空隙内等に注入、充填して、発泡・硬化を行なう注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法等によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられることにより、目的とする、ポリイソシアヌレートフォームが形成されることとなるのである。
【0058】
かくの如くして、本発明に従う組成物A及び組成物Bを用いて、それらを混合せしめて、発泡・硬化することにより、形成されたポリイソシアヌレートフォーム(発泡体)にあっては、樹脂成分となるポリオールを不使用として、フォームを構成する可燃物を限界まで低減せしめつつ、イソシアヌレート構造と、難燃剤としての有機リン酸エステルとリン含有難燃剤との相乗的な作用に基づいて、スキン層の存在下においても、高度の難燃性を発揮し得るフォームとして、効果的に実現せしめられてなるものであるところから、我国の建築基準法により規定される不燃材料が有利に提供され得たのである。
【実施例
【0059】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0060】
また、以下の実施例や比較例において求められたポリイソシアヌレートフォームの密度や最大発熱速度、総発熱量、自己消火時間及び燃焼試験後の表面のひび割れの状態について、それぞれ、以下の如くして評価乃至は測定した。
【0061】
(1)最大発熱速度及び総発熱量の測定
実施例や比較例において吹付け発泡して得られたポリイソシアヌレートフォーム層(肉厚:約60mm)から、そのフォーム表面のスキン層を残したまま、肉厚:50mmの試験片となるように切り出して、100mm×100mm×50mmのサイズのポリイソシアヌレートフォーム試験片を採取する。
【0062】
次いで、この採取された試験片を、ISO-5660に規定される燃焼試験法に準拠して、放射熱強度:50kW/m2 にて、20分間加熱したときの最大発熱速度及び総発熱量を、それぞれ、測定する。そして、かかる最大発熱速度が200kW/m2 以下である場合及び総発熱量が8MJ/m2 以下である場合を、合格とする。
【0063】
(2)密度の測定
前記ポリイソシアヌレートフォーム層から切り出された試験片について、その寸法を、ノギスを使用して正確に計測する一方、電子天秤を用いて、その質量を計測して、それら得られた計測値から、かかるサンプル(発泡体)の密度をJIS K7222に準拠して算出する。
【0064】
(3)自己消火時間の測定
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときの、加熱による着火から火が消えるまでの時間を測定した。
【0065】
(4)ひび割れ(残渣)の状態の評価
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときに得られる、試験終了後の前記試験片において、表面にひび割れが認められない場合には「○」とし、その表面にひび割れが観察される場合には「×」とし、更に、ひび割れがその試験片の裏面まで到達した場合には「××」として、評価する。
【0066】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられる成分として、以下の各種原料を準備した。
ポリオール化合物:フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株
式会社製RDK133、水酸基価:315mgKOH
/g)
三量化触媒:第四級アンモニウム塩(サンアプロ社製U-CAT18X)
:第四級アンモニウム塩(花王株式会社製カオーライザーNo
.420)
樹脂化触媒:オクチル酸ビスマス(日本化学産業株式会社製プキャット2
5)
難燃剤:有機リン酸エステル:TCPP(ワンシャン社製トリス(1-ク
ロロ-2-プロピル)ホスフェート:液体、リン濃度:9.5質
量%)
:有機リン酸エステル:ポリリン酸エステル(株式会社ADEKA
製アデカスタブPFR:液体、リン濃度:10.9質量%)
:有機リン酸エステル:トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフ
ェート(大八化学工業株式会社製CR-900:粉体、リン濃度
:3.0質量%)
:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140、リン濃度
:94質量%、平均粒子径:24~36μm)
:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバレッド120、リン濃度:
85質量%、平均粒子径:20~30μm)
:リン酸二水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬株式会社製試
薬、平均粒子径:5μm、リン濃度:27質量%)
:ポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製E
XOLITAP422、平均粒子径:15μm、リン濃度:31
質量%)
:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株
式会社製EXOLIT OP930、平均粒子径(D50):3~
5μm、リン濃度:23質量%)
:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株
式会社製EXOLIT OP935、平均粒子径(D50):2~
3μm、リン濃度:23質量%)
発泡剤:HCFO-1233zd(Honeywell社製1-クロロ-
3,3,3-トリフルオロプロペン)
:HFO-1336mzz(Chemours社製1,1,1,4
,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン)
:HFC365mfc(SOLVAY社製1,1,1,3,3-ペ
ンタフルオロブタン)
:HFC245fa(セントラル硝子株式会社製1,1,1,3,
3-ペンタフルオロプロパン)
:水
整泡剤:シリコーン系整泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリア
ルズ・ジャパン合同会社製Niax Silicone L-6
100)
【0067】
-ポリイソシアネート組成物(組成物A)の調製-
ポリイソシアネートとして、ポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM-130)を準備して、このポリイソシアネートのみによって、組成物Aを構成した。
【0068】
-触媒組成物(組成物B)の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち、三量化触媒、樹脂化触媒、難燃剤(有機リン酸エステル、赤リン、有機ホスフィン酸塩)、発泡剤及び整泡剤を、下記表1~表3に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~16及び比較例1~9に係る各種の触媒組成物を、組成物Bとして、それぞれ、調製した。
【0069】
-ポリイソシアヌレートフォームの製造-
上記で得られた各種の触媒組成物とポリイソシアネート組成物とを、体積比1:1で用い、現場スプレー発泡機(商品名:A-25、グラコ社製)により、混合せしめて、発泡原液とし、これを、雰囲気温度:15℃の条件下において、被着体である無機フレキシブルボード(910mm×910mm)の表面に、下吹き1回及び上吹き1回の吹付け作業を実施し、発泡・硬化させることにより、下吹き層が約5mmであり且つ上吹き層が50~60mmの硬質イソシアヌレートフォームからなる、実施例1~16及び比較例1~9に係る各種の発泡層(肉厚:約60mm)を、それぞれ、作製した。
【0070】
そして、かくして得られた各種のポリイソシアヌレートフォームを用いて、その密度、最大発熱速度、総発熱量、自己消火時間及びひび割れ(残渣)の状態について、それぞれ測定乃至は評価して、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1~表3にまとめて示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~16において採用された、ポリイソシアネート組成物(組成物A)と触媒組成物(組成物B)との組み合わせからなる発泡性組成物にあっては、何れも、ISO-5660に準拠した燃焼試験法において、総発熱量(20分)が8MJ/m2 以下となる、高度の難燃性を有するポリイソシアヌレートフォームを得ることが出来ると共に、火が着いてから自己消火に至るまでの時間が短いことが、確認された。また、燃焼試験後の試験片においては、何れも、その表面に、ひび割れは何等認められず、高い難燃性を実現出来るものであることが、理解される。
【0075】
これに対して、表3に示される結果から明らかな如く、ポリイソシアネート組成物(組成物A)に組み合わされる触媒組成物(組成物B)に、ポリオールが添加せしめられて、そのようなポリオールがポリイソシアネートと反応せしめられて得られる比較例1~4のフォームにあっては、目的とする高度の難燃性を得ることが出来ず、最大発熱速度や総発熱量(20分)において劣るものとなった。また、液状の有機リン酸エステルを組成物Bに添加配合せしめていない比較例5~6や、粉状の有機リン酸エステルが配合されてなる比較例7にあっては、吹付け作業が出来ず、有効なポリイソシアヌレートフォームを得ることが出来ず、更に、液状の有機リン酸エステルに粉状のリン含有難燃剤を組み合わせていない比較例8~9において得られたフォームにあっては、最大発熱速度や総発熱量(20分)の値が悪く、且つひび割れが顕著であるものとなり、高度の難燃性を有するポリイソシアヌレートフォームの形成が困難であることが、認められた。