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特許7592093Bacillus xiaoxiensis及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】Bacillus xiaoxiensis及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241122BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20241122BHJP
   C12P 19/18 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
C12N9/10
C12P19/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022538391
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2021143099
(87)【国際公開番号】W WO2023000618
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】202110831065.0
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 22625
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李才明
(72)【発明者】
【氏名】李兆豊
(72)【発明者】
【氏名】陳双▲でぃ▼
(72)【発明者】
【氏名】顧正彪
(72)【発明者】
【氏名】程力
(72)【発明者】
【氏名】洪雁
(72)【発明者】
【氏名】班宵逢
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/012902(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/003337(WO,A1)
【文献】KUDO, T et al.,Draft Genome Sequences of Cyclodextrin-Producing Alkaliphilic Bacillus Strains JCM 19045, JCM 19046, and JCM 19047,Genome announcements,2014年,Vol. 2,e00211-14
【文献】YANG, L et al.,Effect of cyclodextrin glucosyltransferase extracted from Bacillus xiaoxiensis on wheat dough and bread properties,Frontiers in Nutrition,2022年11月01日,Vol. 9,pp. 1026678
【文献】CHEN, Yi-Guang et al.,Bacillus xiaoxiensis sp. nov., a slightly halophilic bacterium isolated from non-saline forest soil,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,2011年,Vol. 61,pp. 2095-2100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2021年5月28日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託された、受託番号がCGMCC NO.22625である、Bacillus xiaoxiensis。
【請求項2】
請求項1に記載のBacillus xiaoxiensisを含む微生物製剤。
【請求項3】
β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの調製における、請求項1に記載のBacillus xiaoxiensis又は請求項2に記載の微生物製剤の使用。
【請求項4】
請求項1に記載のBacillus xiaoxiensisを、25~30℃下で少なくとも72時間発酵させることを特徴とする、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを調製する方法。
【請求項5】
発酵のための培地は、酵母粉末を炭素源とすることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
発酵のための培地は、魚のペプトンを窒素源とすることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
発酵のための培地は、コーンシロップパウダー、NaCO、MgSO・7HO、KHPO及びタピオカデンプンを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
シクロデキストリンの調製における、請求項1に記載のBacillus xiaoxiensisの使用。
【請求項9】
請求項1に記載のBacillus xiaoxiensisを用いてβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを調製し、さらに、前記β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを2U/g(マルトデキストリンドライベース)の量でマルトデキストリン含有系に加え、45℃下で24時間反応させ、10分間煮沸して酵素を消滅させた後、2U/g(マルトデキストリンドライベース)のグルコアミラーゼを加え、30℃下で1時間糖化させることを特徴とする、シクロデキストリンを調製する方法。
【請求項10】
食品分野でのマルトデキストリン分解における、請求項1に記載のBacillus xiaoxiensisの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bacillus xiaoxiensis及びその使用に関し、微生物の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは、6個以上のグルコースユニットがα-1,4-グリコシド結合により結合してなる環状ポリマーであり、やや円錐形の中空円柱形を示す。中でも、最も一般的にみられるα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンは、それぞれ6個、7個及び8個のグルコースユニットが互いに結合することで形成されたものであり、工業的に最も広く使用され、特にβ-シクロデキストリンが広く使用されている。シクロデキストリンは、その外周を取り囲むグルコースの水酸基-OH、及びその内周を取り囲むエーテル結合C-O-Cにより、親水性の表面及び疎水性の空洞構造を有しているため、これを利用し、疎水性のゲスト分子をカプセル化して当該ゲスト分子の溶解性、揮発性及び化学的特性などの物理化学的特性を改善するためによく用いられており、食品、医薬品、化粧品などの業界で広く使用されている。
【0003】
現在、シクロデキストリンの生産では、主に、デンプン又はその関連誘導体への、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTase)による作用に基づく酵素法を用い、合成を行う。その主な生成物は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンの混合物であるが、反応の初期段階での主な生成物の違いに応じて、それぞれ、α-CGTase、β-CGTase及びγ-CGTaseと命名されている。中でも、β-CGTaseに関する研究が最も多くなされている。CGTaseは、野生の菌や遺伝子工学の菌で発現した後、酵素液中に大量のその他の酵素が存在することが多いため、以下の問題を引き起こす。(1)その他の酵素が多いため、酵素を分離、精製する必要があるが、プロセスはしばしば面倒で複雑であり、その酵素学的特性及び生成物の分析や研究に、大きな困難をもたらす。(2)シクロデキストリンの生産過程において、副生成物が多いため、シクロデキストリンの生産効率及び生成物の分離・精製へ一定の影響を与える。Rossoらは、スクリーニングによる分離を行い、β-CGTaseを高収量で生成する菌株Bacillus circulans DF9Rを得ている。その発酵液は、酵素活性が5.8U/mLであり、電気泳動図に複数のさまざまなバンドが存在しているが、そのいずれの場合も、発酵周期が長く、特定の発酵条件が必要であり、細胞外で生成できる酵素が少なく且つその純度が低く、分離・精製が難しく、熱安定性が悪いという欠陥があるため、工業的応用においては制限される。したがって、純度が高く且つ安定性が強い高活性β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼのスクリーニングは、幅広い応用が見込まれる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、研究・生産上の課題を解決し、高純度のβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを得ることにある。本発明は、分離・精製ステップを省くことができ、シクロデキストリンの調製に有利である。
【0005】
本発明は、中国微生物株保存管理委員会総合微生物センターに保存された、番号がSTB08、受託番号がCGMCC NO.22625、受託日付が2021年5月28日であるBacillus xiaoxiensisを提供する。
【0006】
また、本発明は、上記Bacillus xiaoxiensisを含む微生物製剤を提供する。
【0007】
また、本発明は、Bacillus xiaoxiensisに由来するβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼであって、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であって、配列番号2で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子を提供する。
【0009】
また、本発明は、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの調製における、上記Bacillus xiaoxiensis又は上記微生物製剤の使用を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記Bacillus xiaoxiensisを、25~30℃下で少なくとも72時間発酵させ、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを調製する方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態において、発酵のための培地は、酵母粉末を炭素源とする。
【0012】
本発明の一実施形態において、発酵のための培地は、魚のペプトンを窒素源とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、発酵のための発酵培地は、コーンシロップパウダー、NaCO、MgSO・7HO、KHPO及びタピオカデンプンを含む。
【0014】
また、本発明は、シクロデキストリンの調製における、上記Bacillus xiaoxiensisの使用を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記Bacillus xiaoxiensisを用いてβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを調製し、さらに、前記β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを2U/g(マルトデキストリンドライベース)の量でマルトデキストリン含有系に加え、45℃下で24時間反応させ、10分間煮沸して酵素を消滅させた後、2U/g(マルトデキストリンドライベース)のグルコアミラーゼを加え、30℃下で1時間糖化し、シクロデキストリンを調製する方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、食品分野でのマルトデキストリン分解における、上記Bacillus xiaoxiensisの使用を提供する。
【0017】
(本発明の有利な効果)
(1)本発明が提供するBacillus xiaoxiensis STB08は、純度が高いβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを分泌することができ、当該酵素は、熱安定性がよく、50℃以下で2時間保温した場合、その酵素活性が80%以上に維持され、60℃及び65℃下での半減期がそれぞれ42分間及び9分間である。そのため、産業上の応用において潜在価値を有し、シクロデキストリンの調製に有利である。また、マルトデキストリンを分解して得られるβ-シクロデキストリンが11.6g/Lに達し、総シクロデキストリンの74.3%を占め、比較的に高いβ-シクロデキストリン生成特異性を有する。
(2)本発明は、平板培養の条件及び種子培養の条件の最適化により、Bacillus xiaoxiensis STB08の迅速かつ正常な増殖を実現し、菌の保存とその後の利用に有利である。
(3)本発明は、発酵培養の条件の最適化により、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの高分泌性及び高純度の発現性を実現する。
【0018】
(生物材料の保存)
Bacillus xiaoxiensis STB08は、分類されてBacillus xiaoxiensisと命名され、2021年5月28日に中国微生物株保存管理委員会総合微生物センターに保存された。その受託番号がCGMCC NO.22625であり、保存所の住所は北京市朝陽区北辰西路1号院3番である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼのSDS-PAGEゲル電気泳動図である。
図2】β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの熱安定性解析グラフであり、ただし、横座標は時間を表し、縦座標は相対活性を表す。
図3】β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼをマルトデキストリン(DE=4)に作用させてシクロデキストリンを調製するプロセスを示すグラフであり、横座標は時間を表し、縦座標はシクロデキストリンの収量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(酵素活性の測定方法)
適切に希釈した酵素溶液0.1mLを取り、予め10mMのリン酸緩衝液(pH6.5)を用いて調製した1%(w/v)のマルトデキストリン(DE=4)溶液を0.9mL入れた試験管に加え、50℃下で10分間反応させた後、30mMのNaOHを3.5mL加えて反応を停止させ、5mMのNaCO溶液を用いて調製した0.02%(w/v)のフェノールフタレイン溶液をさらに0.5mL加え、室温下で20分間発色させ、550nmにおける吸光度を測定する。失活した酵素をブランクとする。酵素活性単位は、上記の条件下で1分間当たり1μmolのβ-シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量を酵素活性単位と定義する。
【0021】
(β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの純度の測定方法)
シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの純度は、SDS-PAGEゲル電気泳動により測定する。Beyotime Biotechnology製のSDS-PAGE Gel Rapid Preparation Kitの説明書を参考してSDS-PAGEゲルを調製し、電気泳動に供する。ここで、用いられる濃縮ゲルの濃度は5%であり、用いられる分離ゲルの濃度は10%であり、また、0.125%のCoomassie Brilliant Blue G-250を用いて染色を行う。最後に、ゲルイメージングアナライザーを用いて電気泳動解析を行う。
【0022】
(実施例1 Bacillus xiaoxiensisの分離及び同定)
1.分離:澱粉工場の周辺の土壌を採取して無菌瓶に入れ、常法により平皿から菌株を15株分離した。
【0023】
2.同定:分離した菌株について、菌株の同定及び物理化学的性質の解析を行った。
(1)物理化学的性質の解析
プレート上の菌株を種子培地に接種して活性化させた後、活性化液を発酵培地に添加して発酵させた。当該発酵液を遠心分離により収集して酵素活性を測定し、酵素活性が最も高い菌株を選別して菌株の同定を行った。
(2)菌株の同定方法
PCRにより16S rRNAの遺伝子配列を増幅し、菌株の同定を行った。菌株16S rRNAのPCR増幅プライマーは、27F(5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’、配列番号3で示される);1492R(5-AAGTCGTAACAAGGTAACC-3’、配列番号3で示される)である。
【0024】
PCRを行う前に、活性化された菌液を8000×gで3分間遠心分離して濃集させ、上清を廃棄し、蒸留水を1mL加えて懸濁させた。再び遠心分離して濃集し、上清を廃棄し、蒸留水をさらに500μL加えて懸濁させておいた。PCR反応系(25μL):2×Taq Plus MasterMix (Dye) 12.5μL、ddHO 10.5μL、プライマー27F(100μM) 0.5μL、プライマー1492R(100μM) 0.5μL、テンプレート(菌液) 1μL。PCR反応におけるパラメータは、以下の通りである:95℃下で10分間予変性させ、95℃下で30秒間変性させ、55℃下で30秒間アニールし、72℃下で30秒間伸長(extension)し、34回サイクル行い、72℃下で10分間伸長させる。PCR産物をサンプリングしてその配列を測定した結果、PCR増幅断片は約1500bpであった。なお、配列決定はBGIにより行われた。
【0025】
(結果及び解析)
Blast(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、測定された菌株の16S rRNA配列をデータベース中の既知菌株の16S rRNAと比較して解析した。配列決定の結果によると、当該菌株の16S rRNA配列は、合計で1413bpであった。なお、Bacillus xiaoxiensis STB08の16S rRNA配列は、配列番号5で示されるとおりである。また、最も相同性の高い5つの菌種を表1に列挙している。表1からわかるように、Blastを用いて比較・同定を行った結果、これは、Bacillus xiaoxiensisの16S rRNA配列と最も相同性が高く、6個の塩基という差しかないと、確認された。同時に、何らかの基準株又は非基準株との配列相同性が99%以上であることを満たし、且つ他の菌種よりも0.8%高かった。そのため、同定の結果に基づき、当該菌株は、Bacillus xiaoxiensisに由来するものと断定し、Bacillus xiaoxiensis STB08と命名した。
【0026】
【0027】
3.(Bacillus xiaoxiensis STB08の培養に最適なpH)
Bacillus xiaoxiensis STB08は、以下の方法で培養した。
【0028】
(1)プレートスクライビング
Bacillus xiaoxiensis STB08の菌液を接種用ループで着けて取り、用意しておいたプレート培地(酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/L、寒天 15g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整した)上でスクライビングし、30℃のインキュベーターに入れて12時間培養した。
【0029】
(2)種子培養
プレート上からシングルコロニーをピックアップして種子培地に接種し、30℃、200rpmで培養した。
【0030】
種子培地の配合は、以下の通りである。酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lを配合し、NaOHでpH7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0にそれぞれ調整した。
【0031】
それぞれのpHの種子培地を用いて種子培養を行った。菌液の増殖状況は表2に示した。表2によれば、pH10.0~11.0がBacillus xiaoxiensis STB08の増殖に適すると、分かった。そしてpH10.0の種子培地においては、12時間後、菌液が濁るまで増殖していた。これは、菌液の増殖に最適なpHは10.0であることを意味する。
【0032】
【0033】
(実施例2 Bacillus xiaoxiensisが分泌するβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ)
Bacillus xiaoxiensis STB08は、以下の方法で培養する。
【0034】
(1)プレートスクライビング
Bacillus xiaoxiensis STB08の菌液を接種用ループで着けて取り、用意しておいたプレート培地(酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/L、寒天 15g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整した)上でスクライビングし、30℃のインキュベーターに入れて12時間培養した。
【0035】
(2)種子培養
プレート上からシングルコロニーをピックアップして種子培地(酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整した)に接種し、30℃下、200rpmで12時間培養した。
【0036】
(3)発酵培養
種子培養液を4%(v/v)の接種量で、50mLの発酵培地を入れた250mLの三角フラスコに接種し、25℃下、200rpmで72時間培養した。
【0037】
発酵培地の配合は、以下の通りである。コーンシロップパウダー26.6g/L、NaCO 4.14g/L、MgSO・7HO 0.21g/L、KHPO 1.63g/L、タピオカでん粉 12g/Lを配合し、NaOHで初期のpH7.0、8.0、9.0、10.0及び11.0にそれぞれ調整した。
【0038】
それぞれのpHの発酵培地を用いて発酵を行い、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを生成させた。その結果は表3に示す。Bacillus xiaoxiensis STB08は、25℃、pH9.0という条件下では、その酵素活性が10.7U/mLに達した。当該分泌レベルは、野生の菌によるシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの生成においては、相対的に高いレベルに位置付けられる。
【0039】
【0040】
(4)酵素液の収集
(3)で得られた培養済の菌液を4℃、10000×gで15分間遠心分離し、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼである上清を得た。前記発酵培地の配合のとしては、コーンシロップパウダー26.6g/L、NaCO 4.14g/L、MgSO・7HO 0.21g/L、KHPO 1.63g/L、タピオカでん粉 12g/Lであり、pHは9であった。
【0041】
(5)酵素活性の測定
遠心分離して得られたシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼについて、純度測定及び性質の解析を行った。その結果は図1、2に示した。図1から分かるように、Bacillus xiaoxiensis STB08から調製したβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼは、SDS-PAGEにより解析した結果、単一バンドを示し、純度が高いと分かった。また、当該酵素の熱安定性は比較的に良い。50℃以下で2時間保温したとき、図2に示されているように、酵素活性は80%以上に維持され、60℃及び65℃下での半減期は、それぞれ42分間及び9分間であった。本発明のシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼでは、1つのバンドにつき、1つの酵素タンパク質がそれと対応している。バンドが単一であることは、この酵素だけが存在し、純度が高いことを意味する。
【0042】
(実施例3 Bacillus xiaoxiensisに由来するβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの同定)
実施例1で選別したBacillus xiaoxiensisについて、全ゲノム配列決定を行って解析することで、β-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼをコードする配列番号2で示される遺伝子の配列を得た。解析した結果、当該遺伝子により転写、翻訳されたβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、配列番号1で示されているとおりであった。
【0043】
(実施例4 Bacillus xiaoxiensisが分泌するβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの、マルトデキストリンの分解への使用)
5%(ドライベース、w/vで、5g/100mL)のマルトデキストリン(DE=4)を基質とし、実施例2で得られたβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを2U/g(マルトデキストリンドライベース)の量で添加し、45℃下で静置して反応させた。それぞれの時点(0、1、2、3、6、9、12、24時間目)でサンプルをそれぞれ取り、10分間煮沸して酵素を消滅させた後、2U/g(マルトデキストリンドライベース)のグルコアミラーゼを加えて30℃下で1時間糖化させた。続いて10分間煮沸して酵素を消滅させ、10000r/minで20分間遠心分離した後、上清を取ってそれを0.45μmの限外ろ過膜でろ過し、生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。
【0044】
HPLCの測定条件:Waters600高速液体クロマトグラフィー(示差屈折検出器付き)、カラムはLichrosorb NH(4.6mm×150mm)であり、移動相はアセトニトリル-水(68%-32%)であり、カラム温度は30℃であり、流速は1mL/minである。
【0045】
結果:実施例2で得られたβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼをマルトデキストリン(DE=4)に24時間作用させた後、図3に示すように、主な生成物であるβ-シクロデキストリンは11.6g/Lに達し、総シクロデキストリンの74.3%を占め、β-シクロデキストリン生成物の比較的に高い特異性を有する。
【0046】
(実施例5 Bacillus xiaoxiensisの発酵によるβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの生成)
Bacillus xiaoxiensis STB08を、以下の方法で培養した。
【0047】
(1)プレートスクライビング
Bacillus xiaoxiensis STB08の菌液を接種用ループで着けて取り、用意しておいたプレート培地(酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/L、寒天 15g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整した)上でスクライビングし、30℃のインキュベーターに入れて12時間培養した。
【0048】
(2)種子培養
プレート上からシングルコロニーをピックアップして種子培地に接種し、30℃下、200rpmで12時間培養した。
【0049】
種子培地の配合は、以下の通りである。
【0050】
種子培地A:酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0051】
種子培地B:酵母粉末 6g/L、大豆ペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0052】
種子培地C:酵母粉末 6g/L、トリプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0053】
種子培地D:酵母粉末 6g/L、カゼインペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0054】
種子培地E:酵母粉末 6g/L、牛骨のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0055】
それぞれの種子培地において種子培養を行った。菌液の増殖状況は表4に示した。その結果、魚のペプトンがBacillus xiaoxiensis STB08の正常な増殖に非常に重要であると、分かった。
【0056】
【0057】
(実施例6 β-Bacillus xiaoxiensisの発酵によるβ-シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの生成)
Bacillus xiaoxiensis STB08を、以下の方法で培養した。
【0058】
(1)プレートスクライビング
Bacillus xiaoxiensis STB08の菌液を接種用ループで着けて取り、用意しておいたプレート培地(酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/L、寒天 15g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整した)上でスクライビングし、30℃のインキュベーターに入れて12時間培養した。
【0059】
(2)種子培養
プレート上からシングルコロニーをピックアップして種子培地に接種し、30℃下、200rpmで12時間培養する。
【0060】
種子培地の配合は、以下の通りである。
【0061】
A:酵母粉末 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0062】
B:酵母エキス 6g/L、魚のペプトン 6g/L、KHPO・3HO 1g/L、タピオカでん粉 12g/L、MgSO・7HO 0.2g/Lからなり、NaOHでpH10.0に調整したものである。
【0063】
この2つの種子培地において種子培養を行った結果、酵母粉末を含んだ種子培地は、12時間培養した時点で、すでに濁った状態となっていたが、酵母エキスを含んだ種子培地は、濁る状態となるまで、24時間の培養が必要であったことが分かった。したがって、酵母粉末は菌株の迅速な増殖に重要な役割を果たし、産業上における、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの効率的な生成に有利である。
図1
図2
図3
【配列表】
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