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特許7592094多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント不織マット、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント不織マット、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/002 20120101AFI20241122BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20241122BHJP
   D04H 3/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
D04H3/002
D01F9/08 A
D01F9/08 C
D04H3/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022540321
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2020062210
(87)【国際公開番号】W WO2021137088
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】62/955,252
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ディヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ウィリアム ブイ.
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/035646(WO,A1)
【文献】特開2011-208344(JP,A)
【文献】特開昭61-239100(JP,A)
【文献】特許第4174474(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/093624(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/217658(WO,A1)
【文献】特表2021-518493(JP,A)
【文献】特開2003-020938(JP,A)
【文献】特表2023-508111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 9/08 - 9/32
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交絡して凝集不織マットを形成する複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む不織物品であって、前記マット内の前記アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、約2ミクロン(μm)未満の平均直径を有し、前記アルミノシリケートセラミックフィラメントは、平均して約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む、不織物品。
【請求項2】
前記アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約50重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む、請求項1に記載の不織物品。
【請求項3】
前記不織マットが、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ-五酸化リン繊維、アルミナ-ボリア-シリカ繊維、ジルコニア繊維、ジルコニア-アルミナ繊維、ジルコニア-シリカ繊維からなる群から選択される繊維、エアロゲル及びグラスバブルズからなる群から選択される非繊維性材料、並びにこれらの混合物又は組み合わせを更に含む、請求項1又は2に記載の不織物品。
【請求項4】
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で60:40~90:10の範囲のアルミナ対シリカ比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の不織物品。
【請求項5】
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約73%~約80%のアルミナを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の不織物品。
【請求項6】
前記不織マットが、前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを一緒に結合するためのバインダーを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の不織物品。
【請求項7】
前記物品が、濾過物品、断熱物品、遮音物品、防火物品、ビークル構成要素のための取り付け用マット、ガスケット、触媒支持体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の不織物品。
【請求項8】
不織ウェブの製造方法であって、
少なくとも1つのオリフィスを通して、シリカ粒子、水、及び加水分解性アルミニウム含有化合物を含む、水性セラミック前駆体ゾルを流し、少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを生成することと、
前記フィラメントを高速空気流で細径化して、前記フィラメントを10マイクロメートル(μm)以上の平均直径に延伸することと、
前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントから前記水の少なくとも一部分を除去して、前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを少なくとも部分的に乾燥させることと、
捕集部表面上に未加工不織ウェブとして前記少なくとも部分的に乾燥させたフィラメントを捕集することと、
前記未加工不織ウェブを約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む凝集マットに変換するのに十分な温度及び時間で前記未加工不織ウェブを加熱することであって、前記凝集マット中の前記アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、2ミクロン(μm)未満の平均直径を有する、加熱することと、を含む、製造方法。
【請求項9】
ガスの流れを前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントに近接して方向付け、前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを少なくとも部分的に乾燥させることを更に含み、任意選択で、前記ガスの流れは加熱される、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記水性セラミック前駆体ゾルが、アルミニウムクロロハイドレート、シリカ、及びポリビニルアルコール(PVA)を含む、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項11】
前記水性セラミック前駆体ゾルが、消泡剤を更に含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で60:40~90:10の範囲のアルミナ対シリカ比を有する、請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約73%~約80%のアルミナを含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記水性セラミック前駆体ゾルが、アルミナの重量に対し約10重量%のPVAを含む、請求項13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、少なくとも50重量%の結晶性ムライトを含む、請求項14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ゾル-ゲルプロセスを使用して不織ウェブを製造するためのプロセスでは、化学前駆体をスピニングし、熱処理して、セラミックフィラメントを製造する。
【0002】
繊維製造プロセスでは、典型的にはマルチフィラメントロービングの形態の連続フィラメント、又は不織ウェブのいずれかを製造し得る。連続フィラメントは、開いて個々の繊維とすることができるより短い繊維ストランドに裁断し、その後、それを積層して(例えば、湿式積層又はエアレイによって)均一なマットとすることによって不織マットに変換することができる。不織セラミック繊維マット又はウェブはまた、ブローマイクロフィラメント(BMF)プロセスとも呼ばれるファイバーブロープロセスを使用して直接製造され得る。ファイバーブロープロセスでは、初期低粘度セラミック前駆体分散体又はゾルを、ノズルを通してポンプ送液した後、高速空気流を使用して延伸及びフィブリル化し、別個の繊維又はフィラメントを形成し、その後捕集して、不織未加工(未焼成)繊維マット又はウェブを形成する。続いて、未焼成繊維マットを高温で焼成して、不織セラミックフィラメントマットを形成する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、交絡して凝集不織マットを形成する複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む、不織物品を対象とする。マット中のアルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、約2ミクロン(μm)未満の平均直径を有し、アルミノシリケートセラミックフィラメントは、平均して約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む。
【0004】
別の態様では、本開示は、不織ウェブの製造方法を対象とする。この方法は、少なくとも1つのオリフィスを通して水性セラミック前駆体ゾルを流し、少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを生成することを含む。水性セラミック前駆体ゾルは、シリカ粒子、水、及び加水分解性アルミニウム含有化合物を含む。フィラメントを高速空気流で細径化して、フィラメントを10マイクロメートル(μm)以上の平均直径に延伸し、水の少なくとも一部分を少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントから除去して、少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを少なくとも部分的に乾燥させる。少なくとも部分的に乾燥したフィラメントは、捕集部表面上に未加工不織ウェブとして捕集され、未加工不織ウェブは、未加工不織ウェブを凝集マットに変換するのに十分な温度及び時間で加熱される。凝集マットは、約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む、少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含み、凝集マット中のアルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、2ミクロン(μm)未満の平均直径を有する。
【0005】
これらの発明並びに他の予想外の結果及び利点は、以下の例示的な詳細な記述及び実施例の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な記述を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【0007】
図1】本開示の一実施形態により強化された取り付け用マットの断面図である。
【0008】
図2】本開示の実施形態による、強化取り付け用マットを備えた開かれた状態の汚染制御デバイスの斜視図であり、マットの一部分は、アルミノシリケートセラミックフィラメントがより明確に見えるよう、除かれている。
【0009】
図3】本出願の実施例で使用されるメルトブローン繊維(BMF)装置の概略図である。
【0010】
図4】実施例1の試料2のフィラメントの、5000倍での走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0011】
図5】15cfmから30cfmまでダイ空気流量を増加させた場合の15psiのゾル圧力における、実施例3Aのフィラメント試料3~6の未加工直径のプロットである。
【0012】
図6】実施例3Bの試料7のフィラメントから製造された不織マットの、平坦(左)及び折り畳まれた(右)状態の写真である。
【0013】
図7】実施例3Bの試料7での、熱処理温度の関数としての結晶性ムライトの発生を示すプロットである。
【0014】
図面では、同様の参照符号は同様の要素を示す。上記に特定した図面は、一定の縮尺で描かれないことがあり、本開示の様々な実施形態を説明しているが、「発明を実施するための形態」で指摘するように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を表現することによって記載する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の改変及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の定義された用語の用語解説に関して、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が提供されていない限り、本出願全体について適用されるものとする。
【0016】
用語解説
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。以下を理解されたい:
【0017】
特定の層に関する「隣り合っている」という用語は、2つの層が互いに隣り同士(すなわち、隣接し)かつ直接接触しているか、又は互いと近接してはいるが直接接触はしていない(すなわち、これらの層同士の間に1つ以上の追加の層が介在している)位置において、別の層と接合している、又は別の層に取り付けられていることを意味する。
【0018】
開示されるコーティングされた物品における様々な要素の場所について、配向の用語、例えば「~の上に(atop)」、「~上に(on)」、「~の上方に(over)」、「~を覆う(covering)」、「最上部の(uppermost)」、「~の下にある(underlying)」などを使用することによって、水平に配置され、上を向いた基材に対する、要素の相対位置について言及する。しかしながら、別途指示のない限り、基材又は物品は、製造中又は製造後において何らかの特定の空間的向きを有するべきであるということが意図されるわけではない。
【0019】
用語「(コ)ポリマー」(単数又は複数)は、ホモポリマー及びコポリマー、並びに、例えば、共押出しにより、又は例えば、エステル交換反応を含む反応により、混和性配合物において形成され得るホモポリマー又はコポリマーを含む。用語「コポリマー」は、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及び星形(例えば、樹枝状)コポリマーを含む。
【0020】
他の層に対する、ある層の位置を記載するために、「~によって分離された」という用語を使用することによって、その層が、他の2つの層の間に位置するが、必ずしもどちらかの層と近接したり、又は隣接したりしてはいないことについて言及する。
【0021】
数値又は形状への言及に関する用語「約」又は「おおよそ」は、数値又は特性若しくは特徴の±5パーセントを意味するが、明示的に、ちょうどの数値を含む。例えば、「約」1Pa-秒の粘度とは、0.95~1.05Pa-秒の粘度を指すが、1Pa-秒ちょうどの粘度も明示的に含む。同様に、「実質的に正方形」の外辺部とは、各横方向縁部が、他のいずれかの横方向縁部の長さの95%~105%の長さを有する4つの横方向縁部を有する幾何形状を記載することを意図するが、これはまた、各横方向縁部が正確に同じ長さを有する幾何形状を含むものとする。
【0022】
用語「ウェブ坪量」は、10cm×10cmのウェブ試料の重量から計算される。
【0023】
用語「ウェブ厚さ」は、Testing Machines,Inc.(Amityville,NY)から商品名Model49-70で入手可能な、1/2インチ(12.7mm)の直径のテスタフット(tester foot)を有する、厚さ試験ゲージを使用して測定される。
【0024】
用語「嵩密度」は、ウェブを構成するバルクセラミック材料の単位体積当たりの質量であり、文献から引用される。
【0025】
特性又は特徴に関する用語「実質的に」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴の反対のものが呈される程度よりも高い程度で呈されることを意味する。例えば、「実質的に」透明な基材は、それが透過しない(例えば、吸収する及び反射する)放射線よりも多くの放射線(例えば、可視光)を透過する基材を指す。この場合、その表面上に入射する可視光のうちの50%より多くを透過する基材は、実質的に透明であるが、その表面上に入射する可視光のうちの50%以下を透過する基材は、実質的に透明ではない。
【0026】
本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に内容により明確な指示がない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する微細フィラメントへの言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の実施形態で使用する場合、用語「又は」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で用いる。
【0027】
本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1~5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0028】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0029】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な改変及び変更を行ってもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることは理解されたい。
【0030】
以下に、本開示の様々な例示的実施形態を、図面を具体的に参照しながら記載する。本開示の例示的実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることは理解されたい。
【0031】
ゾル-ゲルBMFプロセスでは、直径の範囲が限定されたフィラメントを生成する。直径が小さすぎるフィラメントを製造する試みでは、フィラメントを破断する不安定なプロセスにつながり、短い繊維、ショットと呼ばれる概略球状体が生じ、広いフィラメント直径の変動が生じる。直径が大きすぎるフィラメントを製造する試みでも、フィラメント形成が不安定化し、それによって、フィラメントから製造された不織マットの強度、柔軟性、及び取り扱い性が低下し得る。
【0032】
アルミナ-シリカフィラメントは、典型的には、低い結晶性ムライト(3Al-2SiO)含有量で製造される。フィラメントが、ムライトが結晶化する1200℃を超える温度で熱処理されると、不織布の強度及び柔軟性が大幅に低下し得る。この強度及び柔軟性の欠如は、フィラメントを高温で使用することを阻害し得るものであり、また、熱安定性、耐クリープ性、化学的安定性を含むムライトの好都合な特性の実現も阻害するものである。
【0033】
結晶性ムライト含有量が増加した多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント、並びにフィラメントを組み込んだ不織ウェブ及びマットは、最大1300℃までの優れた耐熱性、優れた耐酸性、濾過用途で使用される場合の低い圧力降下、及び良好な柔軟性を有する。より小径のフィラメントは、更により大きな柔らかさ及び柔軟性、マット形態でのより低い熱伝導率、及び繊維強化複合材中の構造要素として使用される場合に、改善される可能性のある機械的特性を有し得る。不織マットに組み込まれると、小径及びより高いムライト含有量を有する多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントは、例えば、濾過、支持媒体、裏打ち媒体、断熱材、例えば電動ビークル(electrical vehicle)電池絶縁など、及び高温遮音を含む多種多様な潜在的な用途を有し得る。
【0034】
概して、本開示は、約2ミクロン(μm)未満の平均直径及び約15重量%~約80重量%の平均結晶性ムライト(3Al-2SiO)組成を有し、捕集されて凝集不織ウェブを形成する、柔軟性多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを対象とする。これらのフィラメントは、従来のエレクトロスピニングプロセスを使用して製造されたフィラメントと比較して、メルトブロー繊維(BMF)プロセスを使用してより経済的に製造され得る。約2μm未満の小径と高いムライト含有量との組み合わせは、セラミックフィラメントに、優れた耐熱性、並びに柔らかさ、柔軟性、耐久性、及び耐破断性をもたらし、いくつかの実施形態では、それは、改善された熱機械的特性(例えば、高温での耐熱クリープ性)も有し得る。
【0035】
複数の小径の高ムライト含有量フィラメントを捕集し、未加工不織ウェブに組み込むことができ、これを続いて焼成して、凝集セラミックマットを製造することができる。いくつかの例では、限定することを意図するものではないが、セラミックマットは、濾過、断熱、遮音、防火に、取り付け用マットとして、ガスケットとして、又は触媒支持体として使用することができ、繊維強化複合材に構造要素として組み込むことができ、又はビークル用触媒コンバータなどの汚染制御デバイスに組み込むことができる。
【0036】
更なる態様では、本開示は、小径の高ムライト含有量フィラメントの不織ウェブの製造方法について記載する。この方法は、少なくとも1つのオリフィスを通して水性セラミック前駆体ゾルを流し、少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを生成するステップを含む。水性セラミック前駆体ゾルは、水に分散されたシリカ粒子、及び加水分解性アルミニウム含有化合物を含む。フィラメントは、少なくとも部分的に乾燥され、捕集部表面上に捕集されて、捕集部表面上で未加工不織ウェブを形成する。次いで、未加工不織ウェブを焼成して、凝集セラミックマットを形成することができる。
多結晶性アルミノシリケートセラミック不織物品
【0037】
一態様では、本開示は、捕集及び交絡して凝集不織マットを形成し得る複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む、不織物品を対象とする。不織物品に組み込まれたアルミノシリケートセラミックフィラメントは、約2ミクロン(μm)未満の電子顕微鏡を用いて決定される平均直径、及び少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも72重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%の平均結晶性ムライト(3Al-2SiO)含有量を有する。
【0038】
いくつかの例示的な実施形態では、限定することを意図するものではないが、セラミックフィラメントは、約70重量%~約90重量%のアルミナ、又は約73重量%~約80重量%のアルミナを含む。
【0039】
ここで図1を参照すると、本開示の実施形態による強化不織ウェブ又はマット10は、第1の主面12、第2の主面14、及び厚さ(すなわち、面12と14との間の距離)を有する。不織ウェブ又はマット10は、少なくとも第1の層16及び任意選択で第2の層18を有し、1つ以上の追加の層(図1には示されていない)を含み得る。マット層16及び任意選択のマット層18のうちの少なくとも一方は、約2μm未満の平均直径及び約15重量%~約80重量%の平均ムライト含有量を有する、実質的に連続的な多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント20の少なくとも一部分を含み得る。
【0040】
いくつかの例示的な実施形態では、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント20は、他のフィラメント又は繊維と共に不織マット10に組み込まれ得る。したがって、特定の例示的な実施形態では、強化マット10は、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ-五酸化リン繊維、アルミナ-ボリア-シリカ繊維、ジルコニア繊維、ジルコニア-アルミナ繊維、ジルコニア-シリカ繊維、及びそれらの混合物又は組み合わせから選択される他のフィラメント又は繊維を含み得る。いくつかの実施形態では、不織マット10は、任意選択で、エアロゲル又はグラス/セラミックバブルズなどの非繊維充填剤などを含み得る。
【0041】
更なる例示的な実施形態では、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント20は、他の任意選択の性能向上材料(例えば、膨張性材料又はインサート、非膨張性インサート、支持メッシュ、バインダーなど)と共に使用され得る。図2に示すビークル触媒コンバータハウジング(vehicular catalytic converter housing)の例示的な実施形態に示されるように、第1の主面12及び第2の主面14と概ね同一平面状になるように、層16と任意選択の層18との間に配置された任意選択の強化メッシュ22が示されている。
【0042】
好適な任意選択の性能向上材料は、例えば、米国特許第3,001,571号及び同第3,916,057号(Hatchら)、同第4,305,992号、同第4,385,135号、同第5,254,416号(Langerら)、同第5,242,871号(Hashimotoら)、同第5,380,580号(Rogersら)、同第7,261,864(B2)号(Watanabe)、同第5,385,873号及び同第5,207,989号(MacNeil)、並びに国際公開第97/48889号(Sanockiら)に記載されている。
【0043】
特定の例示的な実施形態では、不織ウェブ又はマット10は、複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを一緒に結合するための任意選択のバインダーを更に含む。無機バインダー、有機バインダー、及びそれらの組み合わせを含む、多種多様な好適なバインダーが使用され得る。例えば、好適な有機バインダーは、(メタ)アクリル(コ)ポリマー、ポリ(ビニル)アルコール、ポリ(ビニル)ピロリドン、ポリ(エチレンオキシド、ポリ(ビニル)アセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、及びそれらの組み合わせから選択される。他の実施形態では、無機バインダーは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、カオリン粘土、ベントナイト粘土、シリケート、雲母粒子、及びそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、任意選択のバインダーは、シリコーン材料を実質的に含まない。
【0044】
本明細書に記載される約2μm未満の直径及び約15重量%~約80重量%のムライト含有量を有する多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントは、不織マットに優れた柔軟性をもたらす。以下の実施例で詳細に論じられる一実施形態では、限定することを意図するものではないが、フィラメントから製造され、約1.5インチ~2インチ(3.8cm~5cm)の直径を有する円形不織マットを、直径に沿ってそれ自体で折り畳んで、2つの重なった層を有する半円を形成した。次いで、この半円を、半円の半径に沿ってそれ自体で再び折り畳み、4つの重なった層を含む半半円(四分円と呼ばれることもある)を形成した。複数の折り畳みステップ後、マットを形成する個々のフィラメントは未破断のままであり、半半円は、長期間後であっても折り畳まれたままであった。
【0045】
繰り返しの曲げに持ちこたえるマットの能力はまた、ASTM D2176に記載されるような曲げ耐久性試験機を使用して決定され得る。以下の実施例に詳細に示されるように、約60重量%を超える結晶性ムライトを有する小径フィラメントで製造されたマットは、100gの荷重下で18~140ダブルサイクルの曲げ耐久性を有し、破断することなくゼロ引張荷重で2000サイクル超の耐久性であった。
【0046】
多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメント
前述の不織物品のいくつかの例示的な実施形態では、複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、約1μm~約10μm、又は約2μm~約5μmの未加工直径を示し、焼成時のフィラメントは、約1μm~約5μm、又は約1μm~約2μmの、以下に更に記載されるように電子顕微鏡によるフィラメント直径測定手順を使用して決定される平均直径を有する。
【0047】
更なる例示的な実施形態では、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントは、少なくとも3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、若しくは更には10mm、又はそれ以上の長さを有する。いくつかのそのような例示的な実施形態では、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は実質的に連続的であり、これは、本出願において、フィラメントが、両端部又は終端点を有するが、それらの加工特性及び取り扱い性に関して連続フィラメントとして挙動することを意味する。実質的に連続したフィラメントは、典型的には、25mm超、50mm超、75mm超、100mm超、250mm超、500mm超、750mm超、又は更により長い長さを有し、無限の長さ、又は10,000mm未満、7,500mm未満、5,000mm未満、2,500mm未満、1,000mm未満、又は更に900mm未満の長さを有する。したがって、特定の例示的な実施形態では、複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントは、25mm~無限、又は約50mm~約10,000mm、又は約100mm~約7500mm、又は約250mm~約5000mm、又は更には500mm~約2500mmの長さを有し得る。
【0048】
更なる例示的な実施形態では、凝集マットのバルク密度は、0.05~0.3g/cm、0.06~0.25g/cm、又は更には0.07~0.2g/cmの範囲であり得る。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、不織ウェブ及び/又は凝集マットの厚さは、少なくとも0.5mm、1mm、2mm、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、20mm、30mm、40mm、若しくは更には50mm、又はそれ以上である。いくつかのそのような例示的な実施形態では、不織ウェブ及び/又は凝集マットの厚さは、最大100mm、90mm、80mm、70mm、若しくは更には60mm、又はそれ以下である。
【0050】
追加の例示的な実施形態では、不織ウェブ及び/又は凝集マットの坪量は、少なくとも50g/m(gsm)、60gsm、70gsm、80gsm、90gsm、100gsm、又は更にはより高い。いくつかのそのような例示的な実施形態では、坪量は、4,000gsm以下、3,000gsm以下、2,000gsm以下、1,000gsm以下、750gsm以下、500gsm以下、250gsm以下、又は更にはより低い。
いくつかの例示的な実施形態では、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントは、重量基準で60:40~90:10、重量基準で70:30~80:20、重量基準で73:27~78:22、又は更には重量基準で75:25~77:23の範囲のアルミナ対シリカ比を有する。
【0051】
多結晶性アルミノシリケートセラミック不織マットを含む物品
別の態様では、本開示は、約2μm未満の平均直径及び約15重量%~約80重量%の平均ムライト含有量を有する複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを有する、前述の不織アルミノシリケートセラミックウェブを含む物品について記載する。いくつかのそのような実施形態では、物品は、濾過物品、断熱物品、遮音物品、防火物品、取り付け用マット物品、ガスケット物品、触媒支持体物品、セラミック物品の構成要素、電池の熱バリア、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0052】
再び図2を参照すると、本開示による、汚染制御デバイス60(例えば、触媒コンバータ及び/又は排気フィルタ)は、ハウジング50、ハウジング50の内部に取り付けられた汚染制御要素40(例えば、触媒要素及び/又はフィルタ)、及びハウジング50内に要素40を取り付けるようにその間に挟まれた本明細書に記載されるもののような取り付け用マット10を含み得る。ハウジング50は、典型的には、例えばステンレス鋼などの金属で作製されており、内燃機関(internal combustion engine)からの排気ガスをデバイス60に通すため、入口52及び出口54を備える。要素40は、典型的には、比較的脆弱な薄肉のモノリシック構造である。マット10は、熱的及び機械的(例えば、振動)の両方に関連する損傷から要素40を保護する。
【0053】
任意選択のメッシュ22は、マット10の表面12の近くに位置付けられる(すなわち、層16が層18よりも相対的に薄い)ことが望ましい場合がある。例えば、約1600g/mの総重量を有するマット10、及び約80~約160g/mの範囲の重量を有するネット品22の場合、層16が約40~約800g/mの範囲の重量を有することが望ましい場合がある。言い換えれば、層16がマット10の総重量の約3重量%~10重量%を構成することが望ましい場合がある。
【0054】
したがって、いくつかの例示的な実施形態では、汚染制御デバイスは、膨張層、強化メッシュ、非膨張性インサート、又はそれらの組み合わせを更に備える。好適な膨張層、強化メッシュ、及び非膨張性インサートは、例えば、米国特許第3,001,571号及び同第3,916,057号(Hatchら)、同第4,305,992号、同第4,385,135号、同第5,254,416号(Langerら)、同第5,242,871号(Hashimotoら)、同第5,380,580号(Rogersら)、同第7,261,864(B2)号(Watanabe)、同第5,385,873号及び同第5,207,989号(MacNeil)、並びに国際公開第97/48889号(Sanockiら)に記載されており、その各々は、その全体が参照により先に本明細書に組み込まれたものである。
【0055】
いくつかのそのような例示的な実施形態では、汚染制御デバイスは、自動車、オートバイ、トラック、ボート、潜水艇、又は航空機から選択される原動機付きビークル(motor vehicle)の原動機付きビークル排気システム(motor vehicle exhaust system)に設置され得る。
【0056】
多結晶性セラミックフィラメント及び不織マットの製造方法
別の態様では、本開示は、焼成して約2μm未満の平均直径及び約50重量%超の平均結晶性ムライト含有量を有する少なくともいくつかのフィラメントを有する凝集マットを形成することができる、多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む不織ウェブの製造方法について記載する。
【0057】
概して、図3のブローマイクロファイバー(blown melt fiber、BMF)装置100の図に概略的に示されるように、フィラメントは、ダイ106内の少なくとも1つのオリフィス108を介してゾルレザーバ104に貯蔵された水性セラミック前駆体ゾル102を流すことによって、取り囲む高圧細径化空気109の補助により製造される。この装置はまた、メルトブロー又はブロースピニングダイとも呼ばれる場合がある。装置は、例えば米国特許第3825380号の場合のように、空気がゾル押出方向に対してある角度で注入されるV字形ダイ内の丸い穴の直線配列からなっていてよく、又は、例えば米国特許第5476616号及び米国特許第5286182号の場合のように、細径化空気が取り囲むノズルの配列からなっていてもよい。
【0058】
水性セラミック前駆体ゾル102は、水中に分散されたシリカ粒子を含む。好適なアルミナ及びシリカゾルは、例えば、国際公開第2018/93624(A1)号(DeRovere)に記載されている。水性セラミック前駆体ゾルは、加水分解性アルミニウム含有化合物を更に含み、それは、Alに対し化学量論量の3モル未満のアニオンを有し得、見掛けの式AlX(OH)3-n[式中、Xは、Cl-、NO-、又はCHCOOH-などのリガンドである]を有し、透明な水溶液を形成することができる。これらの溶液は、塩溶液中のアルミニウム金属の溶解、酸中の水酸化アルミニウムの溶解、アルコキシドの加水分解、及び酸性塩溶液の中和を含む、多数の方法を使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、フィラメントを製造するために使用される可溶性アルミニウム化合物は、アルミニウム1モル当たり約0.5~約2モルのアニオンリガンドを含有する。特定の実施形態では、水性セラミック前駆体ゾルは、アルミニウムクロロハイドレート及び分散シリカ粒子を含む。
【0059】
任意選択で、水性セラミック前駆体ゾルは、水溶性(コ)ポリマー及び消泡剤のうちの少なくとも1つを更に含む。任意の好適な水溶性(コ)ポリマーが使用され得る。しかし、ポリ(ビニル)アルコール(PVA)、ポリ(ビニル)アルコール-co-ポリ(ビニル)アセテートコポリマー、ポリ(ビニル)ピロリドン、ポリ(エチレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)-co-(プロピレンオキシド)コポリマーが特に好適であることが見出された。任意の好適な消泡剤が使用され得る。いくつかの実施形態では、中程度の加水分解(例えば、50~90%のポリ(ビニル)アセテート)ポリ(ビニル)アルコール-co-ポリ(ビニル)アセテートコポリマーが使用される場合、消泡剤は、1-オクタノールのような長鎖アルコール、及びEnterprise Specialty Products Inc.(Laurens,SC)から入手可能なFOAM-A-TACシリーズの発泡防止剤などのポリオールエステル、例えば、FOAM-A-TAC402、407、及び425に基づく。
【0060】
いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、水性セラミック前駆体ゾル102は、約2000センチポアズ(cP)~約10,000cP、(2Pa-秒~10Pa-秒)、又は約3000cP~約5000cP(3Pa-秒~5Pa-秒)の粘度を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、水性セラミック前駆体ゾル102は、約2psi~約20psi、又は約3psi~約15psi(14Pa~103Pa)、又は約5psi~約10psi(34Pa~69Pa)の圧力で供給される。圧力が高くなると、オリフィス当たりのゾル流量が増加し、いくつかの実施形態では、圧力が高くなると、フィラメント直径も大きくなり得る。
【0062】
いくつかのそのような例示的な方法では、少なくとも1つのオリフィス108は、水性セラミック前駆体ゾル102の供給源と流れが連通するマルチオリフィスダイ106内に位置付けられた、複数の円形オリフィスを備える。任意選択で、複数のオリフィスの各々は、50~500μm、100~400μm、125~200μm、又は約150μmの内径を有する。
【0063】
この方法は、高速ガスの流れをフィラメントに近接して方向付けて、フィラメントを少なくとも部分的に乾燥させ、細径化することを更に含む。多くの場合、乾燥を防止し、押出フィラメントの延伸及び伸びの増加を可能にするために、細径化空気を加湿することが望まれる。いくつかの実施形態では、ガスは、室温である。いくつかの実施形態では、ガスは、少なくとも50℃、75℃、100℃、125℃、150℃の温度、又は更に高温に加熱される。様々な実施形態では、限定することを意図するものではないが、フィラメントを延伸するために、細径化空気の速度は、非常に速い、10,000フィート/分(fpm)(51m/秒)、又は更に速い、例えば、15,000(76m/秒)、20,000(102m/秒)、又は更に30,000fpm(152m/秒)であり得る。空気流速が速くなると、より低い空気速度の場合よりも多くの延伸力が生じ、フィラメント直径を小さくすることができる。しかし、延伸力が高すぎる場合、フィラメントは破断し、小径フィラメントを形成しない。いくつかの状況では、ゾル-ゲル液体は、表面張力によって球状になり、フィラメントではなく短い繊維、「ショット」、又はおよそ等軸の粒子を形成する。高い空気流速はまた、乱流を引き起こす可能性もあり、これは、理論に束縛されるものではないが、可変空気速度を生じさせ得、ひいては押出フィラメント上で可変延伸力を生じさせ得、そしてそれは、望ましくない場合がある大きな直径変動性を引き起こす。乱流はまた、フィラメントを破断する可能性もあり、これは、ショット粒子だけでなく、高い直径変動性につながり得る。
【0064】
オリフィス108から出現するフィラメント110は、クエンチボックス116内の暖気でクエンチされて、フィラメントを少なくとも部分的に固化させる。暖気は、少なくとも50℃、75℃、100℃、125℃、150℃の温度、又は更に高温に加熱され、フィラメントを乾燥させ固化させる。次いで、少なくとも部分的に固化したフィラメントは、捕集部112の表面113上に堆積し、交絡して、真空114の補助により未加工不織ウェブ120を形成する。いくつかの実施形態では、捕集部に引き込まれる空気の体積は、ブローする空気の体積よりもはるかに大きい。これにより、全ての押出されたフィラメントの捕捉が確保され、また、室内空気が同伴し、不織ウェブ120を更に乾燥させ得る。
【0065】
未加工フィラメントの焼成は、2つの別個のステップを含むと考えられ得る。第一のステップは、有機物が除去され、無機相が形成され始める、より低温の予備焼成(バーンアウト)セグメントである。第2のステップは、フィラメントが高密度になり、高温の結晶性相が形成される、高温結晶化及び焼結セグメントである。2つのセグメントは、別々に実施(例えば、予備焼成に続いて室温まで冷却した後焼結)してもよく、又は連続プロセスで逐次的に実施(例えば、予備焼成に続いて、材料を放冷することなく直ちに焼結)してもよい。
【0066】
ムライト(3Al-2SiO)は、アルミナ-シリカ相図における唯一の熱力学的に安定な結晶である。したがって、ムライトは、何らかの高温及び時間での熱処理の過程で、ゾル-ゲルアルミナ-シリカフィラメント中で結晶化する。いくつかの場合では、単相ゲルと呼ばれることが多い、アルミナ及びシリカがほぼ原子レベルで混合されているムライトは、比較的低温、900℃~1100℃、例えば980℃で結晶化する。他の場合では、典型的には10nm~1000nmのアルミナ又はシリカの別個の粒子又は領域からなる二相ゲルとしばしば呼ばれ、結晶化温度がより高く、例えば、1200℃~1400℃又は更に高い。二相ゲルの熱処理中、遷移アルミナ(例えば、ガンマ、イータ、シータ、デルタアルミナ)などの他の相は、中間温度、一般に600℃~1000℃、最も一般的には800℃~900℃で形成し得る。
【0067】
ゾルゲルセラミックフィラメントのムライトへの結晶化は、多くの場合、広範囲の温度、例えば1200℃~1400℃で起こる。言い換えれば、ムライト結晶の核形成速度及び成長速度は、速度論的に遅い。更に、ムライトの体積核形成速度は比較的遅く、フィラメント中のムライトの大きな、例えば0.2μm~0.5μm又は更に大きな結晶粒をもたらす。10μm未満、特に2μm未満の直径を有するフィラメントでは、小結晶粒径、好ましくは0.25μm未満、より好ましくは0.2μm未満、又は更には0.1μm未満の直径を維持することが重要である。より大きな結晶粒を有するフィラメントは、より低い強度及び柔軟性を有し、様々な実施形態では、本開示のフィラメントは、0.5μm未満、又は0.3μm未満、又は更には0.1μm未満の結晶粒径を有し得る。
【0068】
フィラメントのムライトへの変換の程度を定量化するために、XRD粉末回折を使用し得、いくつかの場合では、変換の程度を決定することは、簡単なことではない。ムライトは、X線を回折させない、非晶質又は部分的に非晶質のアルミナ相とシリカ相との混合物から結晶化する。このため、フィラメント中に存在するムライト対他の相の比を比較することは、フィラメント中のムライトの体積分率の良好な尺度ではない。したがって、フィラメント中のムライト量の決定は、試験試料の例えば15°又は26°2θでのムライトXRDピークのサイズを1又は複数の参照試料と比較することによって行うことが最も良い。例として、1500℃で1時間燃焼したフィラメントは、ムライトに100%変換されると考えられ得、未知の試料中のピークのサイズは、1500℃の試料中の同じXRDピークのサイズと比較され得る。
【0069】
一実施形態(図3には示されていない)では、未加工不織ウェブ120は、不織ウェブをその中に約15重量%~約80重量%の平均ムライトパーセントを有する多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが組み込まれた凝集マットに変換するのに十分な温度及び時間で加熱(例えば、焼成)される。概して、未加工不織ウェブ120は、少なくとも1,000℃、1,250℃、1,500℃、又は更に高温の焼成温度に加熱される必要がある。より高い焼成温度は、より短い焼成時間をもたらし得、逆に、より長い焼成時間は、より低い焼成温度の使用を可能にし得る。概して、焼成時間は、少なくとも30分、1時間、2時間、4時間、5時間、7.5時間、10時間、又は更にはより長い必要がある。概して、焼成時間は、24時間未満、20時間未満、15時間未満、12時間未満、又は更には10時間未満である必要がある。好適な焼成炉(すなわち、キルン)は、当業者に周知であり、例えば、HED International,Inc.(Ringoes,NJ)によって製造された連続式キルンである。
【0070】
任意選択の加工ステップ
特定の任意選択の加工ステップが、本開示の様々な例示的な実施形態を実施する際に有利であると見出される場合がある。例えば、凝集セラミックマットは、ニードルパンチング、ステッチボンディング、水流交絡、バインダー含浸、及び別個の繊維への凝集マットの裁断のうちの少なくとも1つに供され得る。
【0071】
したがって、本発明で企図されている1つの例示的な実施形態では、凝集マットは、各々が約2ミクロン未満の平均直径及び少なくとも15重量%~最大80重量%のムライト含有量を有する複数の個別の多結晶性アルミノシリケートセラミック繊維を生成するように裁断され得る。次いで、得られた裁断繊維は、例えば、湿式積層又はエアレイのうちの少なくとも1つを使用して更に加工処理されて、個別のアルミノシリケートセラミック繊維を含む繊維セラミックマットを形成し得る。
【0072】
本明細書に記載の繊維状不織取り付け用マットの実施形態は、例えば、裁断された個々の繊維(例えば約2.5cm~約5cmの長さ)を、Laroche(Cours la ville,France)から入手可能なものなどのピンを備えたリッカーインロール、及び/又は例えばRando Machine Corp.(Macedon,N.Y)から商品名「RANDO WEBBER」で市販されている従来のウェブ形成機、繊維がワイヤスクリーン又はメッシュベルト(例えば、金属又はナイロンベルト)上に延伸される、ScanWeb Co.(Denmark)製の「DAN WEB」、に供給することによって製造され得る。「DAN WEB」型のウェブ形成機が使用される場合、繊維は、好ましくはハンマーミル、次いでブローアを使用して個別化される。マットの取り扱い容易性を促進するために、マットをスクリム上に形成又は配置し得る。
【0073】
本明細書に記載の繊維状不織取り付け用マットの実施形態はまた、例えば、従来の湿式形成又はテキスタイルカーディングを使用して製造され得る。湿式形成プロセスの場合、繊維の長さは、多くの場合、約0.5cm~約6cmである。
【0074】
いくつかの例示的な実施形態では、特に湿式形成プロセスの場合、バインダーが、マットの形成を促進するために有利に使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の不織マットは、マットの総重量に基づいて、10重量%以下(いくつかの実施形態では、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25重量%以下、又は更には0.1重量%以下)のバインダーを含み、バインダーを含有しない場合もある。
【0075】
任意選択で、本明細書に記載の繊維不織取り付け用マットのいくつかの実施形態は、ニードルパンチされる(すなわち、例えば、とげ付きニードルによるマットの複数の完全又は部分的な(いくつかの実施形態では、完全な)貫入によってもたらされる繊維の物理的交絡がある)。不織マットは、従来のニードルパンチ装置(例えばDilo Gmbh(Germany)から商品名「DILO」で市販されているニードルパンチャ)を、例えばFoster Needle Company,Inc.(Manitowoc,WI)又はGroz-Beckert Group(Germany)から市販されているとげ付きニードルと共に使用することによってニードルパンチされて、ニードルパンチされた不織マットが得られ得る。
【0076】
繊維の交絡をもたらすニードルパンチは、典型的には、マットを圧縮することと、次いで、マットを通してとげ付き針のパンチングと引き抜きを行うことと、を伴う。前述のポリマー及び/又は二成分有機繊維がマット構造体に含まれる場合、ニードルパンチ中の繊維の物理的交絡絡の有効性は、概して改善される。改善された交絡は、引張強度を更に向上させ、不織マットの取り扱いを改善し得る。マットの面積当たりのニードルパンチの最適数は、特定の用途に応じて変動する。
【0077】
典型的には、不織マットは、約5~約60ニードルパンチ/cm(いくつかの実施形態では、約10~約20ニードルパンチ/cm)が得られるようにニードルパンチされる。任意選択で、本明細書に記載の取り付け用マットのいくつかの実施形態は、従来の技術を使用してステッチボンディングされる(例えば、不織マットのステッチボンディングの教示についての開示内容が参照により本明細書に援用される米国特許第4,181,514号(Lefkowitzら)を参照されたい)。典型的には、マットは、有機糸でステッチボンディングされる。有機又は無機シート材料の薄層が、ステッチボンディング中にマットの片側又は両側に配置されて、糸のマットを通じたカットを防止又は最小化し得る。ステッチング糸が使用中に分解しないことが望ましい場合、無機糸(例えば、セラミック又は金属(ステンレス鋼など))が使用され得る。ステッチの間隔は、通常、約3mm~約30mmであり、その結果、繊維は、マットの全領域の全体にわたって均一に圧縮される。
【0078】
本開示の作用を、以下の詳細な実施例に関して、更に記載する。これらの実施例は、様々な具体的な好ましい実施形態及び技術を更に示すために提供される。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変更及び改変を加えることができるということが理解されるべきである。
【実施例
【0079】
これらの実施例は、単に例証を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を過度に限定することを意図するものではない。本開示の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値にも、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差が本質的に含まれる。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0080】
材料の概要
別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。使用した溶媒及び他の試薬は、特に断りのない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(Milwaukee、WI)から入手することができる。加えて、表1は、以下の実施例で使用された全ての材料に関する、略称及び供給元を提示するものである。
【表1】
【0081】
試験方法
本開示の実施例のうちの一部の評価において、以下の試験方法を使用した。
【0082】
ムライト含有量測定手順:
粉末X線回折を使用して、ムライト含有量を測定した。粉末を、CuKα線を使用してRigaku MiniFlex600回折計(東京,日本)で分析した。実施例の材料のムライト含有量は、26°2θムライトの相対ピーク高さを測定し、フィラメントを1500℃に1時間焼成した後の同じピークと比較することによって決定した。フィラメントは、後者の条件でムライトに100%変換されると見なした。
【0083】
フィラメント又は繊維の直径測定手順:
セラミックフィラメントの直径は、分析ソフトウェアを含む光学顕微鏡(Kayence VHXデジタル顕微鏡システム)を使用して決定した。試料は、スライドグラスに取り付けられたダブルスティックテープ上のセラミックフィラメントの代表的なサンプリング物を広げることによって調製し、1000倍の倍率で少なくとも40のセラミックフィラメントの直径を測定した。
【0084】
繊維マットの画像も、Scanning Electron(Zeiss EVO MA,Carl Zeiss Microscopy USA,Thornwood,NY)を使用して撮像した。
【0085】
ゾル-ゲル前駆体
アルミニウムクロロハイドレート(ACH)、コロイダルシリカ、DI水、及びポリビニルアルコール(PVA)を一緒に混合し、真空下で蒸発させることによって濃縮した。上記の表1に記載されているように、ACH(DelPAC XG)は、USALCO,LLCから供給され、コロイダルシリカの供給源はNalco1034Aであり、PVAはSekisui Selvol523から供給された。セラミックの組成は、76重量%のアルミナ及び24重量%のシリカであり、10%のPVA(アルミナの重量に対して)を伴っていた。
【0086】
未加工フィラメント焼成方法:
未加工フィラメントの焼成は、2つの主なセグメントを含むと考え得る。第一のステップは、有機物が除去され、無機相が形成され始める、より低温の予備焼成(バーンアウト)セグメントである。第2のステップは、フィラメントが高密度になり、高温の結晶性相が形成される、高温結晶化及び焼結セグメントである。2つのセグメントは、別々に実施(例えば、予備焼成に続いて室温まで冷却した後焼結)してもよく、又は連続プロセスで逐次的に実施(例えば、予備焼成に続いて、材料を放冷することなく直ちに焼結)してもよい。
【0087】
フィラメントウェブを連続ローラーキルンで焼成した。マットは、セラミックローラの平坦なアレイによってキルンを通って搬送された。ウェブは、織りNextelセラミック繊維ベルトのセクションに置かれ、キルンを通って搬送された。
【0088】
ローラーキルンは、温度を、徐々にかつ着実に、室温から、部分的又は完全にフィラメントをムライトに結晶化するのに十分な、概して約1200℃~約1350℃の温度まで上昇させる一連の加熱ゾーンを有する。
【0089】
このプロセス中、ほとんどの有機成分及び塩素(Cl)は、250℃~600℃でフィラメントから揮発する。温度上昇速度は、例えば、揮発性物質が除去され、及びフィラメントがセラミックに変換され、収縮し、結晶化する際に、フィラメントが分解されるのを回避するように制御される。空気、蒸気、窒素、又は他のガスを200℃~700℃のキルンに導入することによって、揮発プロセスを制御することが望ましい場合がある。生成した揮発性物質を排出することも望ましい。いくつかの実施形態では、キルンはまた、CO及びHClなどの揮発性物質を除去するための排気ポートも備えている。排気ポートはまた、キルン内部に負圧を作り出して、有害な又は腐食性の揮発性物質がキルンから逃げるのを防止する。
【0090】
実施例1.
280gの濃ACH-シリカ-PVAゾルを、28gのDI HOで希釈し、混合し溶解した。ACH-シリカゾルは、76%Al-24%SiOの組成を有し、アルミニウムクロロハイドレート(Locron,Inc.)、Nalco1034シリカゾル、及びポリビニルアルコール(Poval22-88の9重量%溶液、高分子量、中間加水分解レベル(88~89%)のポリビニルアルコール)から作製した。PVAの量は、Alに対して10重量%であった。希釈後、76:24ゾルの粘度は、5,000cP(5Pa-秒)であった。
【0091】
各々が直径6ミル(0.15mm)の50個の穴を有する、2インチ(5cm)のBMFダイを使用して、フィラメントをブローした。シリコーン及びフルオロケミカル剥離剤を使用して、水性ゾルによる湿潤を回避した。加熱空気によるチャンバへの水噴霧の噴射を用いて、ダイへのブロー空気を90%RHに加湿した。空気を水浴中で冷却して室温まで戻した。フィラメントを、15立方フィート/分(cfm)(0.007m/秒)のダイ空気により、高さ12インチ(30cm)×幅6インチ(15cm)の2つのクエンチボックスの間の、クエンチボックス当たり11cfmの加熱された85℃の空気流を伴う空間にブローした。フィラメントを、ブローダイの下30インチ(76cm)の真空捕集部スクリーン上で捕集した。
【0092】
空気流設定ごとの、スピニング時点の未加工フィラメントの直径を以下の表2に示す。直径の相対標準偏差は、試料1及び2についてそれぞれ18%及び22%であった。
【表2】
【0093】
フィラメントを連続式キルン内で、蒸気及び空気を流しながら54分かけて1285℃に加熱して焼成した。フィラメントは柔軟性を維持し、触れると柔らかく感じられた。上記の表2に示すように、SEM顕微鏡検査により、フィラメントは試料1及び2についてそれぞれ直径1.4μm及び直径1.9μmであることを見出した。予想されたように、収縮が揮発性物質の蒸発及び多孔性の消滅から生じるため、焼成フィラメント直径は、未加工フィラメント直径の約70%に収縮した。フィラメントは、何センチもの長さ、恐らく数十又は数百センチメートルの長さであり、いくつかのフィラメントは本質的に連続的であった。フィラメント直径は、それらの長さより小さく均一であり、フィラメント間の直径の相対標準偏差は20%であった。ショットはなく、フィラメント表面は比較的平滑であった。
【0094】
1285℃の焼成後の、試料1のフィラメントの粉末XRDにより測定したムライト含有量は、2%であった。この試験では、ムライトXRDピーク高さ(26°2θ)を、1500℃に1時間加熱された参照試料と比較する。1330℃に加熱した後、ムライト含有量は14%に増加した。
【0095】
試料2のフィラメントを使用して製造したマットの、5000倍でのSEM写真を図4に示す。
【0096】
実施例2.
【0097】
76%のAl-24%のSiO、及びAlに対して10重量%のPVAの組成であるACH-シリカゾルを調製した。希釈後、76:24ゾルの粘度は、9,800cP(9.8Pa-秒)であった。
【0098】
穴が15ミル(0.38mm)の直径を有することを除いて、実施例1のように50個の穴を有するBMFダイを使用して、ゾルをブローした。ダイギャップは30ミル(0.76mm)であり、スタンドオフは+20ミル(0.50mm)であった。ゾルを0.4psi(3Pa)に加圧した。
【0099】
真空スクリーン上に捕集されたフィラメントは、均一で乾燥していた。6.5cfm(0.003m/秒)のダイ空気で、未加工フィラメント直径は5.3μmであった。空気が9cfm(0.004m/秒)に増加すると、直径は3.7μmに小さくなった。直径の相対標準偏差は、2つの試料についてそれぞれ7%及び14%であった。焼成直径は、未加工直径の70%で、2.6μmであると予想される。この実施例は、大きい15ミルの穴を使用して、BMFフィラメントを製造することができるが、より大きな直径は好ましくないことを示している。
【0100】
実施例2の不織マットの引張強度を、引張試験機(Instron,Inc)を使用して測定した。坪量270g/mのウェブを、幅7/8インチ(22.2mm)及び長さ3インチ(76.2mm)に切断し、ゴム面のグリップを使用して、1インチ(25.4mm)のゲージ長さ、20psi(146Pa)グリップ圧で把持して、荷重をかけたところ、0.5インチ(12.7mm)/分で破損した。マットの厚さをTMI試験機で測定することにより、強度を計算することができた。1285℃で焼成されたマットは、200psi(1460Pa)を超える引張強度を有していた。1330℃まで焼成されたムライト65%のウェブは、最大60psi(410Pa)の引張強度を有していた。
【0101】
詳細な結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0102】
繰り返しの曲げに持ちこたえる実施例2のマットの能力を、曲げ耐久性試験機(Tinnius Olsen Testing Machine Co,Inc.)を使用して決定した。試験はASTM D2176に準拠し、マットを30~60サイクル/分で270度の弧にわたって折り畳むことからなる。1つのサイクルは二重折り畳みであり、マットを一方向に135度曲げ、次いで反対方向に135度曲げる。この機械ではまた、プーリー及びデッド荷重装置(pulley and dead load arrangement)を使用して、試料に100グラムの荷重をかける。試験機内のマットのゲージ長は、1.5インチであった。マットを、45度のテーパの鋭い縁部を有する、70ミルの幅のギャップを有する鋼製固定具で把持した。鋭い縁部にわたるこの屈曲により、セラミック材料に対して過酷な試験を提供する。
【0103】
60%超のムライトを有するマットは、100gの荷重下で18~140のダブルサイクルの曲げ耐久性を有し、破断することなくゼロ引張荷重で2000サイクル超の耐久性であった。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0104】
実施例3A.
フィラメントを、実施例1と同様に6ミル(0.15mm)ダイでスピニングし、ダイ空気流は15cfm(7リットル/分)~30cfm(14リットル/分)であった。空気流が増加するにつれて、直径は、ダイ空気からの延伸力の増加と一致して、4.1μmから3.1μmまで小さくなった。
【0105】
ゾル圧力が7psi(48Pa)に低下すると、フィラメント直径は2.1μm(焼成後の1.4μmに相当)に小さくなった。捕集された重量に基づいて、捕集されたフィラメントの流量は、0.19g/穴/分から0.05g/穴/分まで減少した。これは、ゾル圧力及び穴当たりの流れを低減することにより、フィラメント直径を小さくすることができることを実証している。全ての条件について、相対標準偏差は30%未満であった。
【0106】
結果を以下の表5に示し、その結果を、15psi(103Pa)のゾル圧力でダイ空気流量を15cfmから30cfm(7リットル/分から14リットル/分)まで増加させたサンプル3~6について図5にプロットする。
【表5】
【0107】
実施例3B.
試料3及び7のフィラメントから製造された約200g/mのウェブ坪量を有するフィラメントマットを、実施例1と同様に1300℃に焼成した。焼成後のフィラメント直径は、2つのフィラメントについてそれぞれ未加工(未焼成)直径の63%及び71%であった。結果を以下の表6に示す。空気流量及び速度を上げると、フィラメント直径が小さくなる。
【表6】
【0108】
1300℃に焼成後の試料7のムライト含有量は3%であり、1330℃に焼成後は72%であった。1330℃焼成マットの写真を図6に示す。図6の右側のマット又はウェブは、2回折り畳まれたものである。マットは、目に見える損傷を伴わずに折り畳み、広げることができ、これは、この小径マットの柔軟性及び柔らかい感触を示している。
【0109】
図7のグラフは、試料7での、熱処理温度の関数としての結晶性ムライトの発生を示す。ムライト含有量は、1315℃超で約2%から約50%超にまで増加する。同時に、γ-Alの含有量は、1285℃での2θ=67°のピークの高さに対して25%まで減少する。第3の相、θ-Alは、1360℃以上で現れる。遷移アルミナγ-Al及びθ-Alの存在は、3Al-2SiOムライトのうちの72%のAlよりも高い、76%の組成により、α-Alがみられると予想する非常に高温で、準安定アルミナ相が生じることを示す。
【0110】
実施例4.
76%のAl-24%のSiO、及びAlに対して10重量%のPVAの組成のACH-シリカゾルを、2,000cP(2Pa-秒)で調製した。実施例1と同様に、80個の6ミル(0.15mm)の穴のBMFダイを使用してゾルをブローした。ダイ先端のセットバックは-0.02インチ(0.50mm)であり、ダイギャップは0.03インチ(0.76mm)であった。ゾルを6psi(41Pa)に加圧した。10cfm(5リットル/分)未満のダイ空気では、繊維化は不良であり、ゾルはダイ内の穴の多くから滴り落ちた。ダイが13cfm(6リットル/分)である場合、フィラメントは、均一で乾燥していた。
【0111】
6psi(41Pa)のゾル圧力で、未加工フィラメント直径は3.1μmであり、捕集速度は1.3g/分であった。ゾル圧力が3psi(21Pa)に減少すると、未加工フィラメント直径は2.9μm(焼成後の2.0μmに相当)に小さくなった。RSDは、それぞれ19%及び32%であった。
【0112】
実施例5.
76%のAl-24%のSiO、及びAlに対して10重量%のPVAの組成のACH-シリカゾルを、4,000cP(4Pa-秒)で調製した。実施例1と同様に、80個の6ミル(0.15mm)の穴のBMFダイを使用してゾルをブローした。ダイ先端のセットバックは-0.02インチ(0.50mm)であり、ダイギャップは0.03インチ(0.76mm)であった。ゾルを12.5psi(86Pa)に加圧した。フィラメントを、25cfm(12リットル/分)のダイ空気でブローした。
【0113】
得られたフィラメントは、均一で乾燥していた。未加工フィラメント直径は3.8μmであり、RSDは17%であり、焼成後、直径は3.3μmであり、測定されたRSDは28%であった。フィラメントを、2.35g/分又は0.29g/穴/分で捕集した。ウェブ坪量が250g/mの、柔軟で柔らかい不織マットを製造した。
【0114】
1285℃及び1330℃に焼成した後、ムライト含有量はそれぞれ2重量%及び58重量%であった。マットは、両方の焼成条件の後に柔軟であった。
【0115】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同一の実施形態に言及するものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0116】
本明細書ではいくつかの例示的な実施形態について詳細に記載してきたが、当業者には上述の内容を理解した上で、これらの実施形態の変更形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、理解されよう。したがって、本開示は、ここまで述べてきた例示的実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解されたい。特に、本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるあらゆる数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)ことが意図される。加えて、本明細書で使用される全ての数値は、用語「約」によって修飾されるものと想定される。
【0117】
更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度に、それらの全容が参照により援用される。様々な例示的な実施形態について記載してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。下記に、例示的実施形態を示す。
[項目1]
交絡して凝集不織マットを形成する複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む不織物品であって、前記マット内の前記アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、約2ミクロン(μm)未満の平均直径を有し、前記アルミノシリケートセラミックフィラメントは、平均して約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む、不織物品。
[項目2]
前記アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約50重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む、項目1に記載の不織物品。
[項目3]
前記不織マットが、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ-五酸化リン繊維、アルミナ-ボリア-シリカ繊維、ジルコニア繊維、ジルコニア-アルミナ繊維、ジルコニア-シリカ繊維からなる群から選択される繊維、エアロゲル及びグラスバブルズからなる群から選択される非繊維性材料、並びにこれらの混合物又は組み合わせを更に含む、項目1又は2に記載の不織物品。
[項目4]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で60:40~90:10の範囲のアルミナ対シリカ比を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の不織物品。
[項目5]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で約76:24のアルミナ対シリカ比を有する、項目1~4のいずれか一項に記載の不織物品。
[項目6]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約73%~約80%のアルミナを含む、項目1~5のいずれか一項に記載の不織物品。
[項目7]
前記不織マットが、前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを一緒に結合するためのバインダーを更に含む、項目1~6のいずれか一項に記載の不織物品。
[項目8]
前記バインダーが、(メタ)アクリル(コ)ポリマー、ポリ(ビニル)アルコール、ポリ(ビニル)ピロリドン、ポリ(エチレンオキシド、ポリ(ビニル)アセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、及びそれらの組み合わせから選択される、項目7に記載の不織物品。
[項目9]
前記バインダーが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、カオリン粘土、ベントナイト粘土、シリケート、雲母粒子、及びそれらの組み合わせから選択される、項目7に記載の不織物品。
[項目10]
前記物品が、濾過物品、断熱物品、遮音物品、防火物品、ビークル構成要素のための取り付け用マット、ガスケット、触媒支持体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~9のいずれか一項に記載の不織物品。
[項目11]
不織ウェブの製造方法であって、
少なくとも1つのオリフィスを通して、シリカ粒子、水、及び加水分解性アルミニウム含有化合物を含む、水性セラミック前駆体ゾルを流し、少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを生成することと、
前記フィラメントを高速空気流で細径化して、前記フィラメントを10マイクロメートル(μm)以上の平均直径に延伸することと、
前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントから前記水の少なくとも一部分を除去して、前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを少なくとも部分的に乾燥させることと、
捕集部表面上に未加工不織ウェブとして前記少なくとも部分的に乾燥させたフィラメントを捕集することと、
前記未加工不織ウェブを約15重量%~約80重量%の結晶性ムライトを含む少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントを含む凝集マットに変換するのに十分な温度及び時間で前記未加工不織ウェブを加熱することであって、前記凝集マット中の前記アルミノシリケートセラミックフィラメントの各々は、2ミクロン(μm)未満の平均直径を有する、加熱することと、を含む、製造方法。
[項目12]
ガスの流れを前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントに近接して方向付け、前記少なくとも1つの実質的に連続したフィラメントを少なくとも部分的に乾燥させることを更に含み、任意選択で、前記ガスの流れは加熱される、項目11に記載の製造方法。
[項目13]
前記水性セラミック前駆体ゾルが、アルミニウムクロロハイドレート、シリカ、及びポリビニルアルコール(PVA)を含む、項目11又は12に記載の製造方法。
[項目14]
前記水性セラミック前駆体ゾルが、消泡剤を更に含む、項目13に記載の製造方法。
[項目15]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で60:40~90:10の範囲のアルミナ対シリカ比を有する、項目11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
[項目16]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、重量基準で約76:24のアルミナ対シリカ比を有する、項目15に記載の製造方法。
[項目17]
前記複数の多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、約73%~約80%のアルミナを含む、項目15に記載の製造方法。
[項目18]
前記水性セラミック前駆体ゾルが、アルミナの重量に対し約10重量%のPVAを含む、項目11~17のいずれか一項に記載の製造方法。
[項目19]
前記少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、少なくとも50重量%の結晶性ムライトを含む、項目11~18のいずれか一項に記載の製造方法。
[項目20]
前記少なくとも1つの多結晶性アルミノシリケートセラミックフィラメントが、少なくとも70重量%の結晶性ムライトを含む、項目19に記載の製造方法。
[項目21]
前記凝集マットの、ニードルパンチング、ステッチボンディング、水流交絡、バインダー含浸、及び裁断のうちの少なくとも1つを更に含む、項目11~20のいずれか一項に記載の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7