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特許7592096リチウム二次電池用セパレータ、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用セパレータ、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20241122BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/414
H01M50/446
H01M50/489
H01M50/403 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022550012
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2021004014
(87)【国際公開番号】W WO2021201606
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0041002
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダ-キュン・ハン
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0133654(US,A1)
【文献】特表2019-536242(JP,A)
【文献】特開2013-235810(JP,A)
【文献】特開2005-038793(JP,A)
【文献】特開平10-031991(JP,A)
【文献】PENG, Longqing et al.,Three-Dimensional Coating Layer Modified Polyolefin Ceramic-Coated Separators to Enhance the Safety Performance of Lithium-Ion Batteries,J. Electrochem. Soc.,166,A2111-A2120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、アノード、及び前記カソードと前記アノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータは、
多数の気孔を有する多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成されており、多数の無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記バインダー高分子は、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を含み、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、下記化学式1で表されるノボラック型フェノール樹脂、及び下記化学式2で表されるレゾール型フェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含み、
前記熱硬化性フェノール系樹脂の含量が、前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~20重量%であることを特徴とする、リチウム二次電池。
【化1】
(化学式1において、nは1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【化2】
(化学式2において、n、mはそれぞれ1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【請求項2】
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、120℃~200℃で熱硬化する、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記バインダー高分子が、非フェノール系樹脂を前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~50重量%でさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記多孔性高分子基材の厚さが、1μm~20μmであり、
前記多孔性コーティング層の厚さが、一面コーティングを基準にして0.5~20μmである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
カソード、アノード、及び前記カソードと前記アノードとの間に介在されたセパレータを含むリチウム二次電池の製造方法であって、
(S1)第1溶媒に無機物粒子を分散させ、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を溶解させた無機物粒子分散液を用意する段階と、
(S2)前記無機物粒子分散液を含む多孔性コーティング層形成用スラリーを、多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングし乾燥して多孔性コーティング層を形成する段階と、を含む、リチウム二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記(S1)の無機物粒子分散液に、非フェノール系樹脂を第2溶媒に溶解させた高分子溶液を混合する段階をさらに含む、請求項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1溶媒及び第2溶媒が、それぞれ独立して、水、炭素数2~5のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンから選択された1種の化合物または2種以上の混合物を含む、請求項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記無機物粒子分散液が、分散剤をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、下記化学式1で表されるノボラック型フェノール樹脂、及び下記化学式2で表されるレゾール型フェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【化3】
(化学式1において、nは1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【化4】
(化学式2において、n、mはそれぞれ1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【請求項11】
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、120℃~200℃で熱硬化する、請求項から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性フェノール系樹脂の含量が、前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~20重量%である、請求項から11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用セパレータ、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2020年4月3日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0041002に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が寄せられている。近年はこのような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初頭に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くてエネルギー密度が格段に高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池などの電気化学素子は多くのメーカーで生産されているが、それらの安全特性はそれぞれ異なる様相を呈する。このような電気化学素子の安全性を評価及び確保することは非常に重要である。最も重要であるとして考慮すべき事項は、電気化学素子が誤作動してもユーザに傷害を負わせてはならないということであり、そのため安全規格では電気化学素子内の発火及び発煙などを厳しく規制している。電気化学素子の安全特性において、電気化学素子が過熱されて熱暴走が起きるか又は分離膜が貫通される場合は、爆発につながる恐れがある。
【0006】
セパレータは、カソードとアノードとの間の短絡を防止すると同時に、リチウムイオンの移動通路を提供する。したがって、セパレータは、電池の安全性及び出力特性に影響を及ぼす重要な因子である。しかし、電気化学素子のセパレータとして通常使われるポリオレフィン系多孔性高分子基材は、材料的特性、及び延伸を含む製造工程上の特性のため、130℃以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せることで、カソードとアノードとの間の短絡を起こした。
【0007】
そこで、耐熱性を高めようとして、無機物粒子及び熱可塑性バインダー高分子を含む多孔性コーティング層を前記多孔性高分子基材にコーティングする試みがあった。このように多孔性コーティング層を形成する場合は、多孔性高分子基材の単独使用に比べて耐熱特性を向上させることができる。しかし、前記バインダー高分子の融点よりも高い高温環境に晒される場合は熱的安全性の改善に限界がある。
【0008】
一方、多孔性コーティング層と電極との間には優れた接着力が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱特性が改善され、電極との接着力が良好なリチウム二次電池用セパレータを提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、上述した特性を有するリチウム二次電池用セパレータの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、上述した特性を有するセパレータを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、下記具現例によるリチウム二次電池用セパレータを提供する。
【0013】
第1具現例は、
多数の気孔を有する多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成されており、多数の無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記バインダー高分子は、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0014】
第2具現例は、第1具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、下記化学式1で表されるノボラック(novolac)型フェノール樹脂、及び下記化学式2で表されるレゾール(resole)型フェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0015】
【化1】
(化学式1において、nは1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【0016】
【化2】
(化学式2において、n、mはそれぞれ1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【0017】
第3具現例は、第1または第2具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、120℃~200℃で熱硬化することを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0018】
第4具現例は、第1~第3具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、フェノール-ホルムアルデヒド(phenol-formaldehyde)樹脂であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0019】
第5具現例は、第1~第4具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂の含量が、前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~20重量%であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0020】
第6具現例は、第1~第5具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記バインダー高分子が、非フェノール系樹脂を前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~50重量%でさらに含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0021】
第7具現例は、第1~第6具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記多孔性高分子基材の厚さが、1μm~20μmであり、
前記多孔性コーティング層の厚さが、一面コーティングを基準にして0.5~20μmであることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0022】
本発明の他の一態様は、下記具現例によるセパレータの製造方法を提供する。
【0023】
第8具現例は、
(S1)第1溶媒に無機物粒子を分散させ、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を溶解させた無機物粒子分散液を用意する段階と、
(S2)前記無機物粒子分散液を含む多孔性コーティング層形成用スラリーを、多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングし乾燥して多孔性コーティング層を形成する段階と、を含むリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0024】
第9具現例は、第8具現例において、
前記(S1)の無機物粒子分散液に、非フェノール系樹脂を第2溶媒に溶解させた高分子溶液を混合する段階をさらに含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0025】
第10具現例は、第9具現例において、
前記第1溶媒及び第2溶媒が、それぞれ独立して、水、炭素数2~5のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンから選択された1種の化合物または2種以上の混合物を含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0026】
第11具現例は、第8~第10具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記無機物粒子分散液が、分散剤をさらに含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0027】
第12具現例は、第8~第11具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、下記化学式1で表されるノボラック型フェノール樹脂、及び下記化学式2で表されるレゾール型フェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0028】
【化3】
(化学式1において、nは1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【0029】
【化4】
(化学式2において、n、mはそれぞれ1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つである。)
【0030】
第13具現例は、第8~第12具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂が、120℃~200℃で熱硬化することを特徴とするリチウム二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0031】
第14具現例は、第8~第13具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記熱硬化性フェノール系樹脂の含量が、前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~20重量%であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータ製造方法に関する。
【0032】
本発明のさらに他の一態様は、カソード、アノード、及び前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータは、上述した具現例のうちのいずれか一具現例によるセパレータであることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、多数の無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層に使われるバインダー高分子が、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を含む。このような構造の熱硬化性フェノール系樹脂は、無機物粒子を固定させるバインダー高分子としての機能の他に、多孔性コーティング層形成用スラリー内で分散剤としても機能する。これにより、スラリー内の無機物粒子とバインダー高分子とがよく混和されるため、分散剤を使用しないか又は分散剤の含量を減らしても、電極と多孔性コーティング層との間の接着力が良好に維持される。また、分散剤の含量を減らしてバインダー高分子の含量を高めることができ、電極との接着力を改善させることができる。
【0034】
一方、セパレータを含む電気化学素子が発火などによって高温に晒される場合、熱硬化性を有するフェノール系樹脂が熱硬化して網構造を形成するようになる。これにより、セパレータの耐熱特性が強化されて熱的安全性が向上したセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。これに先だち、本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0036】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0037】
リチウム二次電池において、通常、セパレータとしては多孔性の高分子基材を使用する。多孔性高分子基材としては、高分子繊維からなる不織布基材、及び高分子を溶融押出したフィルムからなるフィルム基材が挙げられるが、これら高分子基材、特にフィルム基材は熱収縮挙動を示すという問題がある。これにより、セパレータの耐熱特性を改善するため、多孔性高分子基材の少なくとも一面に多数の無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層が導入された。このように多孔性コーティング層を形成する場合は、多孔性高分子基材を単独で使用する場合に比べて、セパレータの耐熱特性を向上させることができる。
【0038】
バインダー高分子としては、主に、熱可塑性を有するフッ素系バインダー高分子が使われたが、前記バインダー高分子の融点よりも高い高温環境に晒されると、熱的安全性の改善に限界がある。また、リチウム二次電池の性能が十分に発現されるように、多孔性コーティング層と電極との間には良好な接着力が必要である。
【0039】
本発明者らは、このような問題に着目して、セパレータを含む電気化学素子が発火などによって高温に晒される場合、多孔性コーティング層の耐熱性が改善され、電極との接着力も良好なセパレータを提供しようとする。
【0040】
上記のような問題を解決するため、
本発明の一態様によるリチウム二次電池用セパレータは、
多数の気孔を有する多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成されており、多数の無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記バインダー高分子は、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を含む。
【0041】
本発明の一態様によるセパレータは、セパレータが異常な環境である高温に晒される場合、多孔性コーティング層内に存在する熱硬化性フェノール系樹脂が熱硬化して網構造を形成する。このとき、網構造とは、前記熱硬化性フェノール系樹脂が熱硬化反応して形成された構造を意味し、網構造は3次元網構造であり得る。
【0042】
このように、異常な環境である高温で多孔性コーティング層内の熱硬化性フェノール系樹脂が熱硬化反応を起こして網構造を形成すれば、熱可塑性高分子を使用した場合よりも耐熱性が改善されて数値安全性も改善できる。すなわち、熱硬化反応によって網構造が形成されれば、かなりの高温まで無機物粒子を網構造内に堅固に維持させることができる。
【0043】
[熱硬化性フェノール系樹脂]
熱硬化性フェノール系樹脂は、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する。
【0044】
前記熱硬化性フェノール系樹脂は、高温で熱によって硬化反応して網構造を形成する。具体的には、例えば120℃以上の高温で熱硬化反応によって熱硬化し、より具体的には、120~200℃の高温で熱硬化し得る。
【0045】
一方、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂は、多孔性コーティング層を形成するためのスラリー内で分散剤として機能できる。これにより、多孔性コーティング層形成用スラリー内でより容易に無機物粒子を分散できるため、他の分散剤を使用しないか又はその使用量を減らすことができる。
【0046】
前記熱硬化性フェノール系樹脂は、下記化学式1で表されるノボラック(novolac)型フェノール樹脂、及び下記化学式2で表されるレゾール(resole)型フェノール樹脂のうちの少なくとも一つを含み、この他に、変性(modified)フェノール樹脂を含み得る。具体的には、フェノール及びその誘導体がアルデヒド縮合反応で得られる熱硬化性フェノール系樹脂であれば、使用可能である。
【0047】
このとき、化学式1は、下記のように表され得る。
【化5】
【0048】
化学式1において、nは1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つであり得る。このとき、炭素数は1~100以下、1~50以下、1~30以下、または1~10以下であり得る。
【0049】
本発明において、「ノボラック型フェノール樹脂」は、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを酸性触媒下で反応させて得られる。前記ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール性ヒドロキシ基を有するため、アルカリに対する溶解性があるものの、分子量が高ければ溶解性が低下する。
【0050】
前記ノボラック型樹脂は、硬化反応に作用するメチロール基が殆どないため、ヘキサメチレンテトラミン((CH)のような硬化剤を加えて加熱すれば、3次元構造の硬化物を形成し得る。
【0051】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、オルト(ortho-)またはパラ(para-)結合で存在し得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記ノボラック型フェノール樹脂は、0.2未満、より詳細には0.1未満のオルト-結合/パラ-結合比を有し得る。
【0052】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ノボラック型フェノール樹脂は、相異なるオルト-結合/パラ-結合比を有する2種以上のノボラック型フェノール樹脂を含み得る。このとき、オルト結合に比べてパラ結合が多く存在するハイパラ(high-para)ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合、高温でより迅速に硬化が起きてセパレータの安全性をさらに改善できる。
【0053】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1,000~4,000であり、分散度(Mw/Mn、Mnは数平均分子量である)が2.0以下であることが望ましい。ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量が上記の数値範囲を有すれば、耐熱性及びスラリー製造時の流動性確保により有利であり、薄膜の多孔性コーティング層の形成にも有利である。一方、前記分散度が2.0以下である場合、無機物粒子の分散性改善にさらに有利である。前記ノボラック型フェノール樹脂は、水酸基当量が100~200g/eqであり得る。
【0054】
上述した化学式2は、以下のような構造であり得る。
【0055】
【化6】
【0056】
化学式2において、n、mはそれぞれ1以上の整数であり、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~100のアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基のうちのいずれか一つであり得る。
【0057】
本発明において、「レゾール型フェノール樹脂」は、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを金属触媒下で反応させて得られる。前記レゾール型フェノール樹脂は、ヒドロキシ基を有し、前記ノボラック型フェノール樹脂と反応して架橋構造を形成できる。
【0058】
このとき、前記金属触媒は、マンガン、マグネシウム、亜鉛などを含み得る。具体的には、前記金属触媒は、酢酸金属であり得る。例えば、前記金属触媒は、マンガンアセテート、マグネシウムアセテート、亜鉛アセテートなどを含み得る。これらはそれぞれ単独でまたは混合して使用され得る。
【0059】
前記レゾール型フェノール樹脂は、重量平均分子量(Mw)が420~1,500であり、分散度(Mw/Mn、Mnは数平均分子量である)が2.0以下であることが望ましい。レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が上記の数値範囲を有すれば、耐熱性及びスラリー製造時の流動性確保により有利であり、薄膜の多孔性コーティング層の形成にも有利である。一方、前記分散度が2.0以下である場合、無機物粒子の分散性改善にさらに有利である。前記レゾール型フェノール樹脂は、水酸基当量が100~200g/eqであり得る。
【0060】
このとき、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PLGPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定可能である。
【0061】
具体的には、下記の分析条件で測定可能である。
-カラム:PL MiniMixed Bx2
-溶媒:THFまたはDMF
-流速:0.3ml/分
-試料濃度:2.0mg/ml
-注入量:10μl
-カラム温度:40℃
-検出器:アジレント製のRI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
-データ処理:ChemStation
【0062】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱硬化性フェノール系樹脂は、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’-テトラヒドロキシ4’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシ3’-メトキシベンゾフェノン、2,3,4,2’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,4’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,4’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、またはビス(2,5-ジメチル4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタンなどの樹脂であり得、これら化合物を単独でまたは2種以上混合して樹脂として製造し得る。例えば、前記熱硬化性フェノール系樹脂は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂であり得る。
【0063】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱硬化性フェノール系樹脂は、異常な高温環境で熱硬化すると、下記のような構造の網構造を形成し得る。
【0064】
例えば、前記網構造は、下記化学式3で表され得る。
【0065】
【化7】
【0066】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱硬化性フェノール系樹脂が熱硬化して網構造を形成するようになれば、多孔性コーティング層の無機物粒子は網構造内に位置した形態を有し得る。
【0067】
このとき、前記熱硬化性フェノール系樹脂の含量は、具体的には、前記無機物粒子の含量100重量%に対して0.1重量%~20重量%であり得、より具体的には0.5~15重量%であり得る。このような含量範囲であれば、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の界面抵抗を大きく増加させないとともに、耐熱性改善の効果を十分に発現することができる。
【0068】
[無機物粒子]
本発明において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用すると、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0069】
上述した理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、またはこれらの混合物であり得る。
【0070】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子は、Al、SiO、ZrO、AlO(OH)、TiO、BaTiO、Pb(ZrTi1-x)O(PZT、ここで0<x<1)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1)、(1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O-xPbTiO(PMN-PT、ここで0<x<1)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、及びSiCからなる群より選択された1種または2種以上の混合物であり得る。
【0071】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)及びP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群より選択された1種または2種以上の混合物であり得る。
【0072】
前記無機物粒子の平均粒径は、特に制限されないが、均一な厚さの多孔性コーティング層の形成及び適切な孔隙率のため、0.001~10μmの範囲であることが望ましく、具体的には、100nm以上、150nm以上、200nm以上であり得、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、または700nm以下であり得る。
【0073】
[非フェノール系樹脂]
本発明の具体的な一実施形態において、前記多孔性コーティング層は、バインダー高分子として上述した熱硬化性フェノール系樹脂の他に、非フェノール系樹脂をさらに含み得る。
【0074】
非フェノール系樹脂としては、当業界で多孔性コーティング層の形成に通常使われるバインダー高分子を使用し得る。特に、ガラス転移温度(glass transition temperature、T)が-200~200℃である高分子を使用し得るが、これは最終的に形成される多孔性コーティング層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性を向上できるためである。このような非フェノール系樹脂は、無機物粒子同士の間を連結及び安定的に固定するバインダーの役割を充実に果たすことで、多孔性コーティング層が導入されたセパレータの機械的物性の低下防止に寄与する。
【0075】
また、前記非フェノール系樹脂は、イオン伝導能力を必ずしも有する必要はないが、イオン伝導能力を有する高分子を使用する場合、電気化学素子の性能をさらに向上させることができる。したがって、前記非フェノール系樹脂はできるだけ高い誘電率定数を有するものを使用し得る。実際、電解液における塩の解離度は電解液溶媒の誘電率定数に依存するため、前記非フェノール系樹脂の誘電率定数が高いほど電解質における塩解離度を向上させることができる。このような非フェノール系樹脂の誘電率定数は1.0~100(測定周波数=1kHz)の範囲が使用可能であり、特に10以上であり得る
【0076】
上述した機能の他に、前記非フェノール系樹脂は、液体電解液の含浸時にゲル化することで高い電解液膨潤度(degree of swelling)を示す特徴を有し得る。そのため、前記非フェノール系樹脂の溶解度指数、すなわちヒルデブラント溶解度指数(Hildebrand solubility parameter)は15~45MPa1/2、15~25MPa1/2または30~45MPa1/2の範囲である。したがって、ポリオレフィン類のような疎水性高分子よりは極性基を多く有する親水性高分子をより望ましく使用し得る。前記溶解度指数が15MPa1/2未満または45MPa1/2超過の場合、通常の電池用液体電解液によって膨潤(swelling)され難いおそれがあるためである。
【0077】
このような非フェノール系樹脂の非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン及びカルボキシメチルセルロースなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0078】
本発明の一態様によるセパレータは、多孔性コーティング層の成分として上述した無機物粒子及びバインダー高分子の他に、分散剤などのその他の添加剤をさらに含み得る。
【0079】
前記多孔性コーティング層の厚さは特に制限されないが、詳しくは、一面コーティングを基準にして0.5~20μm、より詳しくは、1.5~10μmであり得、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~85%であることが望ましい。
【0080】
[多孔性高分子基材]
本発明の一態様によるセパレータにおいて、前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材または多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0081】
前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば80~150℃の温度でシャットダウン機能を発現する。
【0082】
このとき、ポリオレフィン多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらの2種以上を混合した高分子から形成し得る。
【0083】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、それぞれのフィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子を単独でまたはこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0084】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、上述したポリオレフィン系の他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0085】
前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、詳しくは1~20μm、より詳しくは5~15μmであり、多孔性高分子基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01~50μm及び20~75%であることが望ましい。
【0086】
本発明の一態様によるセパレータの製造方法は、以下のようである。ただし、これによって制限されることはない。
【0087】
具体的には、第1溶媒に無機物粒子を分散させ、少なくとも一つのヒドロキシ基及び芳香族環を有する熱硬化性フェノール系樹脂を溶解させた無機物粒子分散液を用意する(S1)。
【0088】
このとき、前記(S1)の無機物粒子分散液に、非フェノール系樹脂を第2溶媒に溶解させた高分子溶液を混合する段階をさらに含み得る。また、前記無機物粒子分散液は、分散剤をさらに含み得る。
【0089】
このとき、前記第1溶媒と第2溶媒とは、同じものであってもよく、相異なるものであってもよい。
【0090】
このとき、前記第1溶媒及び第2溶媒は、それぞれ独立して、バインダー高分子である熱硬化性フェノール系樹脂及び非フェノール系樹脂とそれぞれ溶解度指数が類似し、沸点(boiling point)が低いものが望ましい。これは均一な混合及び以降の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、水、炭素数2~5のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンから選択された1種の化合物または2種以上の混合物が挙げられる。
【0091】
次いで、前記無機物粒子分散液を含む多孔性コーティング層形成用スラリーを、多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングし乾燥して多孔性コーティング層を形成する(S2)。
【0092】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを前記多孔性高分子基材にコーティングする方法は特に限定されないが、スロットコーティングまたはディップコーティング方法を使用することが望ましい。スロットコーティングは、スロットダイを通じて供給された組成物が基材の全面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さを調節可能である。また、ディップコーティングは、組成物で満たされたタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を引き上げる速度によってコーティング層の厚さを調節可能である。より正確にコーティング厚さを制御するため、浸漬した後、マイヤーバー(Mayer bar)などを用いて後計量してもよい。
【0093】
このように前記多孔性コーティング層形成用スラリーがコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥器を用いて乾燥することで、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を形成する。
【0094】
前記多孔性コーティング層において、無機物粒子は前記バインダー高分子のマトリクスに分散された形態であってもよい。前記バインダー高分子は、熱硬化性フェノール系樹脂及び/または非フェノール系樹脂であり得る。
【0095】
また、無機物粒子は、充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成し得る。すなわち、バインダー高分子は、無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着、例えば、バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定し得る。また、前記多孔性コーティング層の気孔は無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームが空き空間になって形成された気孔であり、これは無機物粒子による充填構造(closely packed or densely packed)で実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間であり得る。
【0096】
無機物粒子、熱硬化性フェノール系樹脂、非フェノール系樹脂及び多孔性高分子基材については上述したため、これ以上の説明は省略する。
【0097】
本発明の一態様によるリチウム二次電池は、カソード、アノード、及び前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータが上述した本発明の一態様によるセパレータである。
【0098】
リチウム二次電池としては、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウムイオンポリマー二次電池などが挙げられる。
【0099】
本発明のセパレータとともに適用されるカソードとアノードの両電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法によって、リチウム二次電池に用いられる電極活物質を電極集電体に結着した形態で製造し得る。前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池のカソードに使用される通常のカソード活物質を使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが望ましい。アノード活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池のアノードに使用される通常のアノード活物質を使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイト、またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。カソード集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0100】
本発明のリチウム二次電池で使用される電解液は、Aのような構造の塩であり、AはLi、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、BはPF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0101】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前または電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0102】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0103】
実施例1
まず、第1溶媒であるアセトンに、無機物粒子として水酸化アルミニウム(Al(OH))(粒子の大きさ:800nm)を投入して固形分の割合が30%になるようにした。このとき、固形分の割合とは、溶媒及び原料組成物の含量全体に対する、溶媒を乾燥させた後の粉末の含量を意味する。そこに、分散剤としてイソプロピルトリオレイルチタネート(isopropyl trioleyl titanate)、及び熱硬化性フェノール系樹脂としてKangnam Chemical製のレゾール系フェノール樹脂(熱硬化温度:約150℃、アセトン溶解型、固形分50%、粘度25℃で250mPas)を表1のように投入した後、2時間撹拌した。これにより、第1溶媒に無機物粒子が分散し、熱硬化性フェノール系樹脂が溶解された無機物粒子分散液を製造した。
【0104】
次いで、第2溶媒であるアセトンに、非フェノール系樹脂としてポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を表1のように投入した後、50℃で約4時間溶解させて高分子溶液を製造した。
【0105】
上記のように製造した無機物粒子分散液と高分子溶液とを、無機物粒子とバインダー高分子との重量比が75:25になるように混合した後、3時間ボールミル法を用いて無機物粒子を破砕及び分散して、固形分の割合が18%である多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。
【0106】
その後、前記多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティング方式で23℃、相対湿度45%の条件で、総スラリーローディング量が9.5g/mになるように、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:43%、通気時間:110sec/100ml、抵抗:0.45ohm)の両面にコーティング及び乾燥して、多孔性コーティング層が形成されたセパレータを製造した。
【0107】
実施例2~実施例7
スラリーに含まれる物質の種類及び含量を表1のように制御したことを除き、実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0108】
比較例1~比較例4
スラリーに含まれる物質の種類及び含量を表1のように制御したことを除き、実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0109】
【表1】
【0110】
[評価方法]
1)厚さの測定
セパレータの厚さは、厚さ測定器(ミツトヨ社製、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0111】
2)熱硬化性フェノール系樹脂の熱硬化温度の測定
熱硬化性フェノール系樹脂に対し、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した発熱ピーク温度を熱硬化温度として測定した。
【0112】
3)通気度の測定
JIS P-8117に従って、ガーリー式空気透過度計を用いて測定した。このとき、直径28.6mm、面積645mmを空気100mlが通過する時間を測定した。
【0113】
4)電極とセパレータとの間の接着力(Lami Strength)の測定
実施例及び比較例で製造されたセパレータを25mm×100mmの大きさで裁断して用意した。用意したセパレータとアノードとを重ねた後、100μmのPETフィルムの間に挟んで平板プレスを用いて接着した。このとき、平板プレスは、70℃、600kgfの圧力で1秒間加熱及び加圧して行った。接着されたセパレータとアノード(人造黒鉛:カーボンブラック:カルボキシメチルセルロース(CMC):スチレンブタジエンゴム(SBR)=96:1:2:2(重量比))とを両面テープを用いてスライドガラスに貼り付けた。セパレータ接着面の終端部(接着面の終端から10mm以下)を引き離して、25mm×100mmのPETフィルムと断面接着テープを用いて長手方向が連結されるように貼り付けた。その後、UTM装置(LLOYD Instrument社製のLFPlus)の下側ホルダーにスライドガラスを取り付け、UTM装置の上側ホルダーにはセパレータと貼り付いているPETフィルムを取り付けて、測定速度300mm/分、180゜で力を加え、アノードとアノードに対向した多孔性コーティング層との剥離に必要な力を測定した。
【0114】
5)熱収縮率の測定
前記熱収縮率は、(最初長さ-150℃/30分間の熱収縮処理後の長さ)/(最初長さ)×100で計算した。