IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーゲンターラー,アンディの特許一覧

<>
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図1a
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図1b
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図2
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図3
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図4a
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図4b
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図5
  • 特許-建物の熱調節用熱交換システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】建物の熱調節用熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20241122BHJP
   F24S 20/40 20180101ALI20241122BHJP
【FI】
F24F5/00 101A
F24S20/40
F24F5/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022550213
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 IB2021051286
(87)【国際公開番号】W WO2021165824
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】00198/20
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】522330625
【氏名又は名称】ジーゲンターラー,アンディ
【氏名又は名称原語表記】SIEGENTHALER,Andy
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲンターラー,アンディ
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0199341(US,A1)
【文献】特開2003-083656(JP,A)
【文献】特開2002-130740(JP,A)
【文献】特開2001-056197(JP,A)
【文献】特開2003-105883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0164447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F5/00
F24F11/00-11/89
F24S20/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物内部の熱調節を可能にする熱交換システムにおいて、建物の上に置かれたまたはこれに隣接するほぼ水平な外部表面上に配置されている交換ボリューム、交換ボリュームに一体化された収集網を含むシステムであって、交換ボリュームが、大気と接触する外側表面および水を保持できる多孔質基体を含むこと、および外側表面が、苔類タイプの植生層であることを特徴とする、熱交換システム。
【請求項2】
体が、不飽和部分および不飽和部分の下にある飽和部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
循環ポンプを含む熱拡散装置を熱拡散装置が、ヒートポンプおよび/または熱交換器に結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
単数または複数の環境パラメータを決定することを可能にする単数または複数のセンサと、収集データを処理し熱交換システムを制御することを可能にする制御ユニットとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
交換ボリュームがさらに、変形可能な構成要素を含む単数または複数の緩衝ゾーンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
交換ボリュームの周囲に配置され、交換ボリュームを格納するように交換ボリュームの高さを上回る高さを有するパラペットをみ、パラペットが、容易に交換または修理できるように建物の外周から建物に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
物の熱調節方法において、熱交換が、建物内部の熱調節を可能にする熱交換システムにおいて、建物の上に置かれたまたはこれに隣接するほぼ水平な外部表面上に配置されている交換ボリューム、交換ボリュームに一体化された収集網を含むシステムであって、交換ボリュームが、大気と接触する外側表面および水を保持できる多孔質基体を含むこと、および外側表面が、苔類タイプの植生層であることを特徴とする、熱交換システムを通して行なわれることを特徴とする方法。
【請求項8】
制御ユニットによる単数または複数のセンサの単数または複数の環境パラメータの読取りおよび制御ユニットによる熱交換システムの制御を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部の温度調節を可能にする熱交換システムに関する。熱交換システムは、詳細には、水の凝縮および蒸発に起因する熱の取込みおよび放散を活用する。他の考えられる実施形態のうち、複数の実施形態が、熱交換回路を内蔵する建物のための植生屋根に関するものである。本発明は、モノバレントモードで、つまり再生可能エネルギーでのみ機能する設備に対してか、またはビバレントモードで従来の熱設備と組合わされた形で応用可能である。本発明は、建物の内部を暖房すること、冷房すること、そして暖房モードと冷房モードを組合わせることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ(HP)式暖房システムは、低温環境から高温環境への熱エネルギーの移送を可能にする。ヒートポンプは、そのエネルギー効率が高いことから、建物の暖房および温水生成のために増々利用されている。その作動のために、ヒートポンプは、とりわけ、地熱ゾンデまたは単に大気であり得る冷熱源に依存している。
【0003】
垂直ゾンデおよび平面収集などの地熱システムは、地下において熱伝達流体を循環させることによって建物の内部温度を調節することを可能にするものとして公知である。垂直ゾンデシステムは、本質的に、外部温度の変動の際に残留エネルギーを汲出すことを可能にする、時として数百メートルの地下の深層の熱慣性を活用するものであり、多くの場合、ヒートポンプ式暖房システム用の冷熱源として使用される。しかしながら、これらのシステムは、特に、供給源における温度を一定に保つには地熱エネルギーの取込みが少なすぎることを理由として、熱交換には経時的に回収可能なエネルギーが減少する傾向があるために、寿命が限定的であるという欠点を有する。また、平面収集式地熱設備では、季節的温度変動、特に凍結を回避するのに十分な深さに熱伝達流体回路を埋設することが必要である。埋設の深さは、概して1メートル以上であり、このために、設置に多大な努力が求められる。さらに、地熱システムの使用には、広大かつ障害物の無いゾーンが必要であり、このことは、都市ゾーンではスペースが欠如し地下には導管または帯水層が多数存在するために困難であり、さらには不可能であることが判明する可能性がある。その結果、時にはその運用コストが高く環境に対して悪影響があるにもかかわらず、従来の暖房システムが維持されることになる。
【0004】
地熱源を利用できない場合には、ヒートポンプは、熱交換器を介して、冷熱源として大気を使用することができる。これらの空気熱力学的解決法は、温暖な気候の地方において比較的普及しているが、そのエネルギー性能は低く、外部温度が低下する場合、一層低下する。その上、空気熱力学的熱交換には、コストが高く騒音の大きな強制換気が必要であり、このためエネルギー性能および都市環境内でのその使用には制限がある。
【0005】
直射日光が十分である場合に太陽集熱器によって収集される熱エネルギーを容積の大きな温水アキュムレータ内に貯蔵し、最も多くの場合冷熱源としてタンクを用いるヒートポンプを介して建物を暖房するか、または温水を生成するために用いられる設備も公知である。しかしながら、これらの解決法は、高価で嵩高い、巨大な断熱貯蔵槽を必要とする。太陽集熱器はまた、外気温と相互依存関係にあり、夏季には直接冷却を可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、環境に優しく都市ゾーンそして他のエネルギー効率の良いシステムの設置が不可能であるあらゆるゾーンに特に適応したものである一方で、再生可能な方法での熱回収を可能にする、単純でエネルギー効率の良い熱交換システムを開発する余地がある。
【0007】
本発明は、上述の欠点を制限する熱交換システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
詳細には、本発明に係る熱交換システムは、例えば建物の屋根の上といった建物上に置かれたまたはこれに隣接するほぼ水平な外部表面上に配置されている交換ボリューム、交換ボリュームに一体化された少なくとも1つの収集網を含む熱拡散装置、例えば、熱交換システムの熱を収集するためにグリコール水または他の適切な流体を内部で循環させる流体回路を含む。重要なことに、交換ボリュームは、水を保持できる多孔性および/またはメソ細孔性および/または微小孔性のテクスチャを有する基体及び大気と接触するその外側表面、ならびに苔類タイプの植生で覆われた植生層を含む。
【0009】
「微小孔」および「微小孔性」ならびに「メソ細孔」または「メソ細孔性」なる用語は、重力または対流運動による水の循環を妨げるのに十分に小さいものの、植物がそこに含まれた水から恩恵を受けることができるために十分なサイズを有するキャビティを意味する。数値的には、微小孔は、5μm~30μmのサイズを有し、一方メソ細孔のサイズは30μm~75μmであるが、これらの数値的限界は精確なものではない。おおよそ75μm超のサイズを有する「マクロ孔」は、有意な毛管力を発生させるには大きすぎ、その保水能力は極めて限定的なものである。
【0010】
苔類タイプの植生の利点は、その総交換表面積が非常に発達し活発であることに由来する。環境との熱交換は、主として水の凝縮/蒸発(そしてより低い程度ではあるが、凝固/液化および昇華/気化)に起因する。これにより、冬季の非常に大きな潜在エネルギーの取込み、ならびに夏季の蒸発散による喪失が可能になる。これらの潜在的取込みは、太陽エネルギー(直接的および間接的放射)の取込みおよびセンシブルな取込み(空気、降雨および建物)、ならびに、湿潤基体内の十分に大きいエネルギー貯蔵と共に、効果的な回収を行なうことを可能にする。
【0011】
庭園におけるより深い平面収集とは異なり、本発明のシステムは、基体の表面にはるかにより近いところにあり、こうして昼夜サイクルでシステムの再充填を可能にする日射およびセンシブルなエネルギー伝導(空気、降雨および建物)などの他の取込みの恩恵を享受することができる。太陽集熱器とは逆に、該システムは曇りの日にも間接日射のより優れた回収を可能にする。夏季には、空気および表面の高い温度により、苔類植物の場合には有利にもその水損失を調節するための気孔をもたない植物であるため、増大した蒸散が随伴する蒸発が可能になる。
【0012】
好ましくは、本発明の収集システムの基体は、少なくとも部分的に水が飽和しており、不飽和部分、ならびに不飽和部分の下にある飽和部分を含む。基体の一部分を絶えず水飽和した状態に保つことによって、対流によって熱を過度に失うことなく、熱貯蔵能力が改善される。実際、基体の多孔性は、水の対流運動によって生み出される熱エネルギーの移送を妨げる。したがって、この基体は、熱需要と切り離された貯蔵を可能にし、かつ水/水タイプのエネルギー回収を可能にし、このことは、土壌/水または空気/水タイプよりも高い効率と結び付けられる。熱伝導率が低く、軽量(好ましくは900kg/m未満の飽和重量を有する)でかつ耐食性のある有機基体(天然または合成)を使用することが好ましい。
【0013】
収集システムは、好ましくは、貯蔵エネルギーの効果的な収集を可能にするヒートポンプおよび/または循環ポンプに連結される。本発明の一変形形態は、ヒートポンプを通過せずに建物を冷却するために(直接または熱交換器を介して)収集システム内に格納された流体が使用される「フリークーリング」モードでも機能することができる。
【0014】
好ましくは、本発明は、温度、湿度などの単数または複数の環境パラメータを決定することを可能にする単数または複数のセンサ、および収集データを処理し熱交換システムの作動を制御することを可能にする制御ユニットを含む。
【0015】
例えば低温または大量の降雨などの不利な気象条件に対処する目的で、本発明のシステムは、凍結の場合に建物の構造に対し不利な作用を及ぼすことがないように構想されている。これは、とりわけ、建物の構造に伝達することなく氷の膨張を吸収することのできる変形可能な構成要素を含む単数または複数の緩衝ゾーンによって行なわれ得る。さらに安全性を高めるため、システムは、余剰の水を排出するためのオーバーフロー装置を備えることができ、交換ボリュームは、交換ボリュームの周囲に配置されたパラペットにより取り囲まれていてよく、該パラペットは容易に交換または修理できるように建物の外周から建物に固定され交換ボリュームを格納するように交換ボリュームの高さを上回る高さを有する。
【0016】
植生層は、有利には苔類タイプのものである。この植生層は、特に、蘚類、地衣類および他の関連種などの植物種を結集している。苔類層には、多くの場合苔類品種と共に存在するものとして知られているかまたは生態系の安定性と永続性を満たすようにこの苔類品種と関係を保って生育している苔類以外の植物品種または種が含まれる。植生層は、特に、使用される植物種の蒸散によって水の蒸発を促進するように選択される。苔類の植生層は、このような種に特徴的な気孔の欠如のため、蒸発に極めて適応している。一方で、このような層は、葉の無限の分枝で構成されており、それが非常に大きな総凝縮面積を占めている。これらの植物種の別の利点は、交換ボリューム内の熱勾配を混乱させ表面と深層の間に望ましくないヒートブリッジを創出し得ると思われる根系が存在しないということである。このように根が存在しないことにより、建物の防水層をより良く保存することも可能になる。苔類植物は、乾燥および凍結に対する優れた耐性、ならびに瀝青または砂利でのコーティングよりも有利な反射能を有する。
【0017】
基体の飽和部分と不飽和部分の相対的高さは、蒸発速度需要、熱調節持続時間または他の要因に左右される。特に、植生層を活性状態に維持するために植生層の十分な湿度を維持しながら基体の上部部分内の湿度勾配を比較的一定に維持できることが重要である。
【0018】
基体は軽量でかつ高さが削減されていることから、収集回路は好ましくは、伝導および熱膨張を管理できるように弾性構造に固定される。この構造は、ねじれ、せん断および穿孔に耐えるフェルト層の上に置かれた平面可撓性フレームによって製作可能である。少なくとも5mmのこの保護用フェルトは、水の保持および下にある防水層を保護するという二重の機能を有する。基体の飽和ゾーン内の条件は、飽和に近い湿度、低い酸素濃度および酸性/塩基性pH、である。フレームは好ましくは、この環境を許容できる材料で製作される。この利用分野のためには、複数のプラスチック材料およびいくつかの種類の木材または竹が使用可能である。しかしながら、建設分野において使用されている大部分の金属は、苔類植生にとって有毒な元素を放出する可能性がある。
【0019】
本発明は、都市での配置に極めて適しており、経済的かつ環境保護用の装置の使用を容易にする。建物の熱調節に加えて、本発明はまた、メンテナンスコストが大してかからない低い植生を可能にし、これは、光起電性パネルまたは集熱器のような再生可能エネルギーの他の回収装置の設置との共用も可能である。本発明はまた、大気中のCO隔離、生態的多様化、水の流れの減少と保持、熱および騒音からの保護、微気候の調節および周囲の美観といった環境保護上の役割を確実に果たすことも可能にする。
【0020】
本発明の実施例が、添付図面によって例示された説明の中で表示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】本発明に係る熱調節システムの概略的平面図である。
図1b】外側網への収集導管の接続の概略的側面断面図である。
図2】本発明に係る熱調節システムの概略的断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排水の詳細断面図である。
図4a】衛生用温水生成および/または暖房のためのヒートポンプを伴う、フリークーリングでの一実施形態に係る本発明の操作ダイヤグラムである。
図4b】衛生用温水生成および/または暖房のためのヒートポンプを伴う、フリークーリングでの一実施形態に係る本発明の操作ダイヤグラムである。
図5】本発明の緩衝ゾーンの概略的断面図である。
図6】本発明に係る水および熱調節システムの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1a、1bおよび2を参照すると、本発明に係る熱交換システムSは、建物Bの上部または隣接部分上に配置された交換ボリューム100を含む。建物上部または隣接部分は、外気と接触したおおよそ水平な全ての表面として延在し、この部分は、屋根、テラス、または建物Bの表面を覆う他のあらゆる部分を含む。建物Bは、2階、3階、4階、5階またはそれ以上の階といった単数または複数の階を含む住宅、商店、作業場、車庫、倉庫そして熱調節を必要とする他のあらゆる建造物を含む。
【0023】
交換ボリューム100は、外気と接触し大気との交換を調整できるようにする外側表面S100を含む。大気との交換には、例えば直接的および間接的な日射の受光、大気中の水の凝縮および蒸発、熱拡散、雨水の収集、交換ボリューム100中に存在する湿気の蒸発そして特に、植生の活性表面による湿気の蒸発散が含まれる。
【0024】
交換ボリューム100は、外側表面S100の下に、エネルギーの貯蔵を可能にする基体103を含む。基体103はこの目的で、一定の排水を可能にする一方で水の大部分を保持し対流による循環を制限することを可能にするマクロ孔(構造)、メソ細孔および/または微小孔(テクスチャ)構成要素を含む。例えば、基体は、リグニン、ポゾラン、膨張粘土、アルミノケイ酸塩(例えばゼオライト、パーライト)または、湿気の保持を可能にするメソ細孔および/または微小孔性テクスチャの他のあらゆる軽い材料を含有することができる。基体103は、建物Bの構造安定性を損なわないように十分軽量であることが重要である。その上、これらの多孔質材料は、それらが含んでいる水に比べて低い熱伝導率を有する構成要素で構成され、その細孔内に水を閉じ込めることで対流による熱交換を制限する。基体103の物理的特性により、外側表面S100と建物Bの表面との間の大きな温度勾配が可能となり、こうして冬季には、基体103の下部部分は温暖な気候で通常は不凍となる。
【0025】
土、粘土または砂利などの無機材料は、この目的では重すぎて、このような構造上で利用可能ではない。また、基体103は、経時的に維持されるように非腐敗性であることが重要である。完全に天然の材料、複合材料または合成材料、ならびにこのような材料の混合物を使用することができる。基体103は、一様であるかまたは、明確に異なる材料の複数の重畳層で構成されていてよい。使用される材料は、下にある防水層を化学的または物理的に改変するものであってはならない。
【0026】
基体103の多孔質中に維持された水は、詳細には、その熱容量が高いことから、エネルギータンクとして役立つ。このタンクは、季節または考慮対象の熱サイクルによって、熱供給源またはヒートシンクとして機能する。基体103の最大水容量に達する時点で、水は、交換ボリューム100の下部部分内に自由な形態でとどまる。このとき基体103の浸漬部分は、水飽和部分103bに対応する。残留水中に浸漬していない基体103の部分は、不飽和部分103aに対応する。不飽和部分は、特に飽和部分103bから外側表面S100に向かう水の移動を可能にするその毛管現象によって、大気との交換の調整に関与する。好ましくは、基体103は、特に外側表面S100からの水分蒸発の際に、外側表面S100と飽和部分103bの間の湿度勾配を一定またはおおよそ一定に維持するように決定される。有利には、湿度勾配は、飽和部分103b内に存在する水の量の如何に関わらず、それが完全に干上がるまで維持される。基体および外側表面S100の高さは、ボリューム100の飽和時において、建物の構造により決定される最大重量負荷を超過しないように寸法決定される。
【0027】
飽和部分103bの高さは、熱交換システムS内に具備される単数または複数の排出装置E1、E2を用いて制限可能である。最大高さは、降水頻度と降雨量、凝縮量または蒸発量、および他のあらゆる関連パラメータなどの、場所に固有の気象パラメータに応じて予め決定され得、その目的は、飽和部分103bにより十分なエネルギー備蓄を維持することにある。水の自然な取込みが不十分であると思われる場合には、飽和部分103bを保存するように活動化可能な取水口を具備することができる。
【0028】
基体103の中に配置された単数または複数の垂直排出装置E1を、付加的にまたは代替的に具備することができる。図3に例示された実施形態によると、垂直排出装置E1は、透水性がありボリューム100の側方圧力に耐えるふるい105である。ふるい105は、例えば円筒形の中空形態を有し、内部に自由空間106を含む。ふるい105は、水しか通さず建物Bの屋根上に交換ボリューム100の残りの構成要素を保つように、細かい格子、または多孔質材料または、ろ過特性を有する他のあらゆる装置の形態をとることができる。空間106は、基体103内に維持された水と静水圧平衡におかれる。レベルがその上縁部の高さ「h」を超える時点で直ちに、導管107が水の排出を可能にする。円筒形ふるい105の上には、保護プレート108が載置されていてよい。必要な場合には、垂直導管の上縁部の高さを、環境パラメータに応じて、手動で、または制御ユニット300を介して自動的に調節することができる。
【0029】
交換ボリューム100の周囲に配置された単数または複数の安全用排出装置E2を使用して、豪雨事象の際にオーバーフロー水を除去することができ、こうして最大重量負荷を超過しないようにすることができる。
【0030】
熱交換システムSはさらに、基体103から建物Bを断熱することのできる分離装置104を含む。分離装置104は、詳細には防水および防湿である。この装置は、単数もしくは複数の単一層または単数もしくは複数の多層を含むことができる。分離装置104は、例示された実施例において、建物の防水用に一般的に用いられているコーティングなどの単数または複数の防水コーティング層104bを含む。防水コーティング104bは、アスファルト材料または不浸透性プラスチック材料または他の等価の材料を単独でまたは組合わせたものをベースとして調製可能である。材料の選択は、基体の飽和ゾーン103b内に存在する酸性条件を考慮して行なわれる。防水コーティング104bは、同一材料のまたは明確に異なる材料の複数の層を含むことができる。防水コーティングの厚みは、およそ1~10ミリメートル、典型的には、2~6mmである。
【0031】
防水コーティング104bは、有利には、保護層104aによって保護される。保護層104aは、防水コーティング104bを、基体103がひき起こす、場合によっては起こりうる衝撃または劣化から保護する。この保護層は、特に基体103内に角ばった構成要素が存在する場合に有用である。保護層104aは、好ましくは非生分解性の保護用フェルトの形態を取り得る。保護層104aは、代替的には、軟質の、半剛性のもしくは剛性の材料、またはこのような材料の組合せを含み得る。このような組合せはまた、軟質層上に設置された水の排水および貯蔵用のプレハブプレートを含むこともできる。保護層104aの厚みは、およそ1mm~10cm、特におよそ3~6mmである。
【0032】
分離装置104には、好ましくは、水平断熱層104cが具備されている。一般に使用されている公知のあらゆる断熱材が水平断熱層104cとなり得る。水平断熱層104cは例えば、発泡ポリスチレン層、またはロックウールパネル、グラスウールパネル、もしくは気泡コンクリートパネルであり得る。水平断熱層104cは、湿気から保護された状態にとどまるように、防水コーティング104bの下に配置される。下方蒸気遮断層104dを、建物Bの屋根の表面上に配置することができる。通常の実行法にしたがって、水平断熱層104cの外側表面上に、表面蒸気遮断層104dを付加的にまたは代替的に配置することができる。各蒸気遮断層は、およそ数ミリメートル、典型的には1~5mmの厚みを有する。水平断熱層104cの厚みは、対象の断熱目標に応じて可変的である。
【0033】
建物Bの内部と熱交換システムSとの間の熱交換は、単数または複数のポンプおよび単数または複数の導管網201ならびに好ましくはフリークーリングによる作動用の熱交換器204を含む熱拡散装置200を用いて実施される。詳細には、熱拡散装置200は、交換ボリューム100を通って熱伝達流体を循環させるように基体103内に配置された単数または複数の収集網201aを含む。収集網201aの導管は、メッシュネットワークにしたがって、円形配置にしたがって、あるいは当業者が適切であると判断した他のあらゆる配設にしたがって、全ての交換表面100上において、螺旋状に、蛇行状に、平行線状に配置可能である。収集網201aは、表示された管状導管の代りに、またはこれらと組合わせて、例えば、内部で熱伝達流体の完全な循環を確立することのできる熱交換プレートにより構成された、平面熱伝達流体循環システムを含むことができる。
【0034】
複数の収集網201aを、熱分配器を介して互いに並列に連結することができる。表面積1平方メートルあたりの導管のメートル単位で表わした交換システムSの最大収集密度は、庭園の平面収集システム内よりも高いものであり得るということに留意されたい。収集用導管の密度および数量および/または熱交換プレート201aは、暖房または冷房の需要およびモード(唯一の供給源を伴うモノバレントモードまたは複数のエネルギー源を伴うビバレントモード)に適応されなければならない。交換ボリューム内に配置された収集用導管および/または熱交換プレート201aは、好ましくは軟質または半剛性である。これらはより詳細には、飽和部分103b内に配置され、保護層104a上に平らに裾付けられた可撓性フレーム166に固定されている。収集網201aは、好ましくは、建物B内部で別の熱伝達流体を循環させることを可能にする、内側網201cに対して熱的に連結された閉回路を形成する。収集網201aと内側網201cの間の熱的連結は、例えば外側網201bを用いて実施され得る。
【0035】
循環用導管201内を循環する流体は、場合によってはエチレングリコールなどの凍結防止剤、防錆成分、または抗真菌剤または殺菌剤またはこのような化合物の混合物が添加された水であり得る。代替的には、流体は別の熱伝達液体すなわち、冷房システムまたは暖房システム内で一般的に使用されている熱伝達液体であり得る。内側導管網201c内を循環する熱伝達流体は、好ましくは水である。
【0036】
本発明の熱拡散装置200は、衛生用温水生成または暖房状態での作動向けのヒートポンプ203および/または「フリークーリング」冷房状態での作動向けの熱交換器204を含むことができる。図4aおよび4bは、これらの作動構成を例示している。これら2つの作動状態間の切替えは、好ましくは、図示されていない三方自動バルブアセンブリによって行なわれる。
【0037】
内側導管201cは、熱サイホン状に配置され、こうして流体の自由循環を促進し得る。流体の循環を活動化することのできる加速装置または循環ポンプ206を含むことが有利であり得る。外側回路201b内の熱伝達流体の循環は、好ましくは、循環ポンプ202によって確実に行なわれる。
【0038】
図4aによって例示されている「フリークーリング」での作動状態は、好ましくは、外部温度Tが例えば25℃などの既定の閾値を上回る場合に活動化される。これらの条件下で、基体103の湿気は蒸発する。その上、苔類植生層101は、気孔を有していないことから、大量に蒸散し、インバーテッド熱交換器として機能する。この生物活性蒸発散プロセスに起因する潜熱損失によって、基体の温度Tsubは空気の温度Tよりも6~9℃低くなり得、これは、プレート式熱交換器204を通して建物を冷却するのに十分なものである。
【0039】
図4bによって例示されている暖房での作動状態においては、植生層101の蘚類は、潜在エネルギーの取込みの回収に有効な凝縮/凍結/昇華の核として機能する。雨、空気ならびに建物の外側構造は、無視できない他のセンシブルな熱源である。冬季は、蒸発散量が低すぎるために取込みが妨げられることはない。
【0040】
水飽和した有機基体103bは、昼夜(昼/夜)サイクルでの熱貯蔵と、外部空気の温度からずれた収集温度を可能にし、その結果として、空気/水の空気熱力学システムよりもはるかに高い性能がもたらされる。対流運動による熱損失は、基体103の多孔性により制限される。表面の下方18~50cmのところに設置された熱回収用管および/または熱交換プレートは、温暖な気象条件下では原則的に凍結しない。しかしながら、山岳性気候または大陸性気候(典型的には最も寒い月については平均空気温度がマイナスになる)における凍結防止安全対策、ならびにヒートポンプ203の圧縮-膨張回路の蒸発器内の圧力条件および温度条件の適応を想定することができる。
【0041】
暖房での作動モードは、冬季だけでなく、衛生用温水生成のために夏季にも間欠的に活動状態にあるということに留意されたい。夏の間、ヒートポンプ203は、基体103bの熱を汲出すことにより、温度Tsubを低下させることに貢献することとなり、図4aのフリークーリング冷房システムの効率を最大化する。夏季における基体の高い温度により、垂直地熱ゾンデを伴う土壌/水システムを上回る効率で衛生用温水を加熱することを可能にする。
【0042】
特定の実施形態によると、循環ポンプ202、206、ヒートポンプ203および冷却と加熱の間の切換えに必要なバルブは、必要な場合には、特に交換ボリューム100の温度および/または建物Bの内部の温度が熱交換に適していると判断される場合に、自動的に活動化されるように、単数または複数の熱ゾンデに連結され得る。ヒートポンプおよび循環ポンプの活動化は、温度が自動的に調節されるように、これらの温度測定値に従属する可能性がある。
【0043】
別の実施形態によると、内側導管201cまたは外側導管201bは、従来の暖房回路または冷房回路に連結または一体化される。これらの導管は、単数または複数のバルブに連結されて、既存の回路と連携されるかまたはこのような回路から隔離され得るようになっていてよい。既存の回路は、例えば、本発明の目的である熱交換システムで補完する必要のある地熱回路、または従来のセントラルヒーティング設備、または太陽集熱器設備であり得る。このとき、ヒートポンプは、単数または複数の三方または四方バルブを用いて、単数または複数の他の熱回路網と、ビバレントモードで連携され得る。
【0044】
ここで図2、5および6を参照すると、交換ボリューム100は、有利には、特に温度のまたは湿度測定の変動または最も寒い月についてのマイナスの平均温度の気候における凍結に起因する、基体103の体積の場合によっては起こりうる変動を吸収することを目的とする単数または複数の緩衝ゾーンZを含んでいる。単数または複数の緩衝ゾーンZは、例えば交換ボリューム100の全周囲上、またはこの周囲の一部分上に延在し得る。代替的にまたは付加的には、例えば互いに既定の距離だけ離隔した横断方向ラインの形態またはアイランドの形態で、交換ボリューム100内に単数または複数の緩衝ゾーンZを配置することができる。
【0045】
単数または複数の緩衝ゾーンZは、互いに並置された弾性変形可能な構成要素Z1を含む。このような弾性変形可能な構成要素Z1は、例えば、ネオプレン、ニトリルブタジエンまたはエチレン酢酸ビニル発泡材などの非生分解性のシンタクチックフォームを含み得る。好ましくは、基体103の酸性度との反応のリスクがあることから、ポリウレタンは使用されない。変形可能な構成要素Z1は、外径の3分の1または2分の1、または3分の2に対応する内径を有する中空円筒を含み得る。好ましくは、空気を含む各円筒の内径は、外径の2分の1に対応する。円筒の壁は、防水性である。中空円筒は単に互いに隣接しているか、または接触および維持手段によって互いに結び付けられていてよい。接触および維持手段として、シンタクチックフォームを使用することができる。
【0046】
単数または複数の緩衝ゾーンZを構成するように、弾性変形可能な構成要素Z1を、これらの緩衝ゾーンZにより覆われた表面全体にわたり垂直方向に並置することができる。
【0047】
変形可能な構成要素Z1は、詳細には外側表面S100が、任意には防根装置102を含む植生層101である場合に、外側表面S100によって覆い尽くすことができるように、基体103の高さを有することができる。代替的には、これらの構成要素は、例えば飽和部分103bの高さに対応する、基体103の高さよりも低い高さを有することができる。こうして、例えば凍結による膨張の影響を無効化する。代替的には、複数の層を含む不均質基体103の場合、変形可能な構成要素Z1の高さは、基体103の単数または複数の層の厚みと一致してよい。変形可能な構成要素Z1は、分離装置104上に直接配置されてよい。単数または複数の緩衝ゾーンZは、その数に応じておよび交換表面により覆われた表面積に応じて、好ましくは5~30cmの幅を有する。より詳細には、緩衝ゾーンZの幅は、15~20cmである。
【0048】
交換ボリューム100は好ましくは、例えば建物Bの壁の高さの延長部分に組込まれ得るパラペットPによって境界画定される。当然のことながら、例えばパラペットを屋根の縁との関係において後退して据え付けるように、他の特別な配置も、本発明を損なうことなく企図され得る。パラペットPは、金属製、コンクリート製、複合材料製または木製のクラッディングを含むことができる。代替的には、パラペットPは、建物Bの壁の単なる垂直方向延長部分である。パラペットPは、交換ボリューム100を超えてこれを格納する。パラペットPは好ましくは、容易に取外したり置換したりできるように、建物Bの外部からフレーム上に固定されたクラッディングである。これは、交換表面全体にわたって不均質な氷の体積膨張の形で現われると考えられる極端な凍結という蓋然性の低い事象を仮定して、(非弾性的な)第2水準の安全対策となり得る。
【0049】
任意には、パラペットPに沿ってその内側部分上に、垂直断熱層104e(図2に見られる)を挿入することができる。垂直断熱層104eは、交換ボリューム100と建物Bの間に水平方向に配置された対応する層とは明確に異なるものであり得る防水コーティング104bと保護層104aで被覆され得る。パラペットPに沿ってまたは場合によっては垂直断熱層104eに沿って垂直方向に配置された防水コーティング層104bおよび保護層104aは、好ましくは、最大限の防水性を保証するように、交換ボリューム100と建物Bの間に水平方向に配置された防水コーティング層104bおよび保護層104aと一体になっている。
【0050】
単数または複数の緩衝ゾーンZは、パラペットPと、場合によっては垂直断熱層104eとの間に配置され得る。代替的には、図2および5に例示されているように、緩衝ゾーンは、基体103と垂直断熱層104eの間に配置されている。
【0051】
パラペットP、垂直断熱層104eおよび防水コーティング層104bおよび保護層104aは、長期にわたりこれらの構成要素を改変させる可能性のある天候不順および紫外線放射からこれらを保護する金属製形材を上に載置させていてよい。収集網201a(または外側網201b)の回路の通過は、貫通連結によってではなくむしろU字形曲管(図1bに見られる)によって製作されるのが好ましい。
【0052】
交換ボリューム100は任意には、排気導管の通過または通気装置、換気扇、ソーラパネル用定着台または一般に屋根の上に固定される他のあらゆる装置といった特定の装置の設置を可能にするための凹部を含むことができる。これらの装置の場所に、緩衝ゾーンZを具備することができる。
【0053】
図6によって例示された本発明によると、外側表面S100は、外部環境と接触する植生層101を含む。植生層101は、植生が配置される表面を覆うための公知の苔類タイプのさまざまな植物種を含み得る。このような種は、例えば蘚類、地衣類および他のあらゆるコーティング性種ならびにそれらの混合物を含み得る。特に選ばれる種は、剪定または刈り込みなどのメンテナンス作業を制限するように、または、場合によっては存在する光起電性パネルまたは太陽集熱器の設備に日陰が生ずるのを制限するように、その高さが限定的であり続ける種である。好ましくは、たとえ任意に散水装置が具備され得るにしてもこのような散水装置から解放されるように、特に、長い乾燥期間に対するその耐性を理由として、丈夫な植物種が選択される。
【0054】
植生層101は、詳細には蘚類および他の関連する種を含む。これらの被覆性で乾燥期間に対する耐性のある品種は、ほとんどメンテナンスを必要としない。これらの品種はさらに、他の大部分の植物種とは異なり気孔を含まないという特徴を有する。したがって、高温期間における蒸発散は限定的であり、このことは、植生層101が配置されている表面を冷却するのに寄与する。植生層101の蒸発散は、外部環境との交換の活発な調整に関与する。
【0055】
交換ボリューム100は、この場合において有利には、防根装置102を含んでいる。このような防根装置102は、望ましくない植物種が根付くのを妨げるように植生層101の下に配置される、穿孔に耐える透水性かつ非生分解性の材料層の形態をとることができる。実際、深い根を有する品種は無制御に成長し、熱調節システムSさらには建物Bまたはその構成要素のいくつかといった付帯構成要素さえも劣化させる可能性がある。防根装置102は、蘚類および、根をもたない苔類植物の発育を制限することなく、維管束植物の発根を選択的に妨げる。使用される材料は、例えば天然または合成ポリマーをベースとして作製されたジオテキスタイルであってよい。防根装置102は代替的に、植物種の発根を妨げるかまたは遅らせることのできる非生分解性で多孔質の他のあらゆる構成要素またはジオマットレスを含むことができる。好ましくは、防根装置102は、外側表面S100から数ミリメートル~1または2センチメートルの距離のところにおいて基体103内に含まれる。代替的には、防根装置102は、基体103の表面に配置される。この配置によると、それでも防根装置102は、植生層101の発育を可能にする。特にその多孔性は、蘚類を受け入れるのに十分大きいものであり得る。
【0056】
苔類タイプの植物種は、それらの生命維持およびそれらの成長に必要な養分を土壌から積極的に抽出するための根系を有していない。それらの仮根は、主として定着機能を有する。一般的に、苔類植生の層の発育には、降雨による養分取込みで十分であり、基体を富化する必要は一切ない。反対に、対象となっている苔類種は、pHが中性ないしは酸性で、養分が少ない基体から恩恵を受ける。さらに、このタイプの基体では、あらゆる排水汚染のリスクが排除される。
【0057】
基体103、防根装置102および植生層101の厚みは、優先的に、およそ10~50cm、より詳細には、およそ15~20cmである。飽和部分103bの高さは、およそ数センチメートル、典型的には3~15cmである。飽和部分103bの体積の高さは、需要に応じて、基体103の高さの3分の1または2分の1または3分の2に対応するように構成され得る。排出の方に向けられたわずかな傾斜を伴う建物の表面上の中央垂直方向排出の場合には、飽和部分のレベルは、凍結後の水量増加に起因する圧力のあらゆる可能性を回避する目的で、分離装置104の表面とパラペットPとの間の継ぎ目の1~2cm下に到達するように想定され得る。この場合、パラペットと接触しているドレインゾーンが膨張運動を吸収できることから、緩衝ゾーンは必ずしも必要ではない。
【0058】
任意には、本発明に係る熱交換システムSは、湿度測定、温度、風、日照、および基体103、詳細には飽和部分103bの状態に影響を及ぼし得る他のあらゆる環境パラメータなどの単数または複数の環境パラメータを決定することを可能にする単数または複数のセンサC1、C2を含む設備300を含むか、またはこのような設備に連結され得る。データは、建物Bの内部と熱交換システムSとの間の熱交換に関する最適な条件の決定およびデータ処理に必要な手段を含む中央制御ユニット310に対して、有線接続または無線接続を介して伝送され得る。代替的には、環境データは、建物Bから遠位の気象観測所または測定センタから伝送され得る。データ処理には、それらの記録および、建物Bの内部と熱交換システムSとの間の熱交換パラメータを決定することを可能にする人工知能プログラムの学習が含まれ得る。
【0059】
本発明は、さらに、上述した通りの基体103を冷却するように水を蒸発させるステップを含む熱調節方法を網羅している。基体103の冷却は特に、入念に選択された植生層101の蒸発散によって行なわれる。植物種は詳細には、その蒸散の調節手段を備えていない、特に気孔を備えていない種の中から選択される。したがって、蘚類または地衣類のような苔類種が極めて適している。
【0060】
本発明に係る方法は、上述の交換ボリューム100によって、活発な熱調節を可能にする。
【0061】
本発明の暖房および冷房システムは、詳細には、暖房のための凝縮潜在エネルギーの取込み、冷房のための蒸発潜在エネルギー損失、ならびに水の熱慣性を活用する。本発明は、再生可能エネルギーのモノバレントモードに基づくものであり、従来の熱設備に対してビバレントモードで組合わせることも可能である。本発明は、建物内部を暖房し、冷房し、相乗的に暖房および冷却モードを交番させることを可能にする。
【符号の説明】
【0062】
100 交換ボリューム
101 植生層
102 防根装置
103 基体
103a 不飽和部分
103b 飽和部分
104 分離装置
104a 保護層
104b 防水コーティング
104c 水平断熱層
104d 蒸気遮断層
104e 垂直断熱層
105 ふるい
106 自由空間
107 垂直導管
108 保護プレート
166 可撓性フレーム
200 熱拡散装置
201 循環用導管
201a 収集網
201b 外側網
201c 内側網
202 循環ポンプ
203 ヒートポンプ
204 フリークーリング熱交換器
206 循環ポンプ
300 制御ユニット
310 中央制御部
B 建物
C1 センサ
C2 センサ
E1 垂直排出装置
E2 安全用排出装置
P パラペット
S 熱交換システム
S100 外側表面
Z 緩衝ゾーン
Z1 変形可能な構成要素

図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6