(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】脱イオン水製造システムの運転方法及び脱イオン水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20241122BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20241122BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/44
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2023119342
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2024-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】成田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161761(JP,A)
【文献】特開2013-244482(JP,A)
【文献】特開2018-051453(JP,A)
【文献】特開2007-283228(JP,A)
【文献】特許第7339473(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/78
B01D 61/00-71/82
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水流路が並列または直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置を用いて被処理水から脱イオン水を製造する脱イオン水製造システムの運転方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、
前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転し、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する、脱イオン水製造システムの運転方法。
【請求項2】
通水流路が並列または直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置を用いて被処理水から脱イオン水を製造する脱イオン水製造システムの運転方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、
前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転し、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する、脱イオン水製造システムの運転方法。
【請求項3】
被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する、脱イオン水製造システム。
【請求項4】
被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する、脱イオン水製造システム。
【請求項5】
被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が並列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置からの前記処理水を合流させる合流部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する、脱イオン水製造システム。
【請求項6】
被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が並列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置からの前記処理水を合流させる合流部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する、脱イオン水製造システム。
【請求項7】
前記電源装置が複数の前記電気式脱イオン水製造装置で共有される、請求項3または5に記載の脱イオン水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置を備える脱イオン水製造システムの運転方法及び脱イオン水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂などのイオン交換体に被処理水を通水させてイオン交換反応により脱イオンを行う脱イオン水製造システムが知られている。このようなシステムは、一般に、イオン交換体を有する装置を備え、イオン交換体によるイオン交換反応を利用して脱イオン水(例えば、純水)を製造する。しかしながら、イオン交換体を備える装置では、被処理水の通水に伴ってイオン交換体のイオン交換基が飽和して脱イオン性能が低下する。そのため、イオン交換体の脱イオン性能を回復させる(以下、「再生する」と称す)処理を行う必要がある。
【0003】
イオン交換体を再生する処理としては、イオン交換体を定期的に新しいものに交換する方法、酸やアルカリなどの薬剤を用いて定期的にイオン交換体を再生する方法、電気式脱イオン水製造装置(EDI(ElectroDeIonization)装置とも呼ばれる)を用いて連続的にイオン交換体を再生する方法が知られている。
【0004】
イオン交換体を定期的に交換する方法は、交換作業中に脱イオン水を製造できない。そのため、連続して脱イオン水を製造できない課題がある。また、大流量の被処理水を通水させて脱イオン水を製造する場合、脱イオン性能の低下の速度が速くなり、イオン交換体を比較的頻繁に交換しなければならない。そのため、大流量の被処理水から脱イオン水を製造する用途には不向きである。さらに、使用していたイオン交換体を、交換後に廃棄するため、廃棄物が増えてしまう。
【0005】
薬剤を用いてイオン交換体を再生する方法は、酸やアルカリなどの薬剤を調達するための手間がかかってしまう。また、イオン交換体の再生中は脱イオン水を製造できないため、連続して脱イオン水を製造できない課題がある。
【0006】
イオン交換体を定期的に交換する方法または薬剤を用いてイオン交換体を再生するシステムにおいて、当該システムが連続して脱イオン水を製造するには、例えば現用と予備用のイオン交換体を用意し、それらを交互に切り替えて使用する方法が考えられる。しかしながら、そのような方法は、イオン交換体を充填するための設備や再生に必要な薬剤を注入するための設備を準備しなければならない。
【0007】
EDI装置は、電極(陽極及び陰極)の間に複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を配列して電極室、濃縮室及び脱塩室が形成され、脱塩室等にイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が充填された構成である。脱塩室には被処理水が供給され、電極室及び濃縮室には水(例えば、被処理水、脱イオン水等)が供給される。EDI装置は、電極間に電圧を印加して電流を流すことで水の解離反応を起こし、水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)とを生成させて脱塩室内のイオン交換体に付着したイオンと交換させることで、脱イオン性能を維持する。そのため、EDI装置を用いると、脱イオン水の製造とイオン交換体の再生とを連続的に行うことができる。EDI装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
EDI装置は、イオン交換体の脱イオン性能の低下による脱イオン水(処理水)の水質悪化を抑制するために、通常、運転中は常に通電されている。そのため、EDI装置を備える脱イオン水製造システムでは、消費電力が大きくなる課題がある。また、運転中は、脱塩室に被処理水が供給され、濃縮室及び電極室にも水が供給されることで、脱塩室で脱イオン水が製造されると共に、脱塩室から移動したイオンを含む濃縮水が濃縮室から排出され、電極室から電極水が排出される。そのため、EDI装置では排水量が多くなるという課題もある。
【0010】
本発明は上述したような背景技術が有する課題を解決するためになされたものであり、処理水の水質の悪化を抑制しつつ、電気式脱イオン水製造装置の消費電力及び排水量を低減できる脱イオン水製造システムの運転方法及び脱イオン水製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の脱イオン水製造システムの運転方法は、通水流路が並列または直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置を用いて被処理水から脱イオン水を製造する脱イオン水製造システムの運転方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、
前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転し、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する方法である。
【0012】
または、本発明の脱イオン水製造システムの運転方法は、通水流路が並列または直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置を用いて被処理水から脱イオン水を製造する脱イオン水製造システムの運転方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、
前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転し、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する方法である。
【0013】
一方、本発明の脱イオン水製造システムは、被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する構成である。
【0014】
または、本発明の脱イオン水製造システムは、被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する構成である。
【0015】
または、本発明の脱イオン水製造システムは、被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が並列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の前記電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置からの前記処理水を合流させる合流部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する前記複数の電気式脱イオン水製造装置における前記採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する構成である。
【0016】
または、本発明の脱イオン水製造システムは、被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が並列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に所要の直流電圧を印加する電源装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、前記被処理水を前記脱塩室に通水して前記処理水を得るとともに、前記電気式脱イオン水製造装置の濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、前記電気式脱イオン水製造装置に前記第1の電流よりも少ない第2の電流で通電する通電状態において、または前記電気式脱イオン水製造装置に通電しない無通電状態において、前記被処理水を前記電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、前記複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも1台の第1の電気式脱イオン水製造装置を前記採水モードと前記採水兼再生モードとで交互に運転する制御装置と、
前記複数の電気式脱イオン水製造装置からの前記処理水を合流させる合流部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記第1の電気式脱イオン水製造装置とは異なる第2の電気式脱イオン水製造装置を前記採水兼再生モードで運転する構成である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、処理水の水質の悪化を抑制しつつ、電気式脱イオン水製造装置の消費電力及び排水量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態の脱イオン水製造システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1で示したEDI装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図1で示したEDI装置の他の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図1で示したEDI装置の他の概略構成例を示す模式図である。
【
図5】
図1で示した合流部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態の脱イオン水製造システムの一変形例を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施の形態の脱イオン水製造システムの他の変形例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施の形態の脱イオン水製造システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施の形態の脱イオン水製造システムの一変形例を示すブロック図である。
【
図10】イオン交換体の再生時間に対するEDI装置の電流効率及び処理水の導電率の推移を示すグラフである。
【
図11】第1実施例のEDI装置の運転モードの推移例を示すグラフである。
【
図12】第1実施例の被処理水の導電率及び処理水の導電率の変化の推移例を示すグラフである。
【
図13】第1実施例の処理水の脱塩率及びEDI装置の消費電力の変化の推移例を示すグラフである。
【
図14】比較例のEDI装置の運転モードの推移例を示すグラフである。
【
図15】比較例の被処理水の導電率及び処理水の導電率の変化の推移例を示すグラフである。
【
図16】比較例の処理水の脱塩率及びEDI装置の消費電力の変化の推移例を示すグラフである。
【
図17】第2実施例の被処理水の導電率及び各EDI装置の処理水の比抵抗の変化の推移例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の脱イオン水製造システムの一構成例を示すブロック図である。
図2は、
図1で示したEDI装置の概略構成例を示す模式図である。
図3及び4は、
図1で示したEDI装置の他の概略構成例を示す模式図である。
【0020】
図1で示すように、第1の実施の形態の脱イオン水製造システムは、被処理水から脱イオン水を製造する、通水流路が並列に接続されたEDI装置11及び12と、EDI装置11及び12に脱イオン性能の維持に必要な所要の直流電圧を印加する電源装置21及び22と、脱イオン水製造システム全体の動作を制御する制御装置3と、EDI装置11及び12からの処理水を合流させる合流部4とを有する。被処理水は、例えば不図示のポンプを用いてEDI装置11及び12の脱塩室(D)にそれぞれ送水され、該脱塩室(D)によって処理水(脱イオン水)がそれぞれ製造される。
【0021】
図1では、通水経路が並列に接続された2台のEDI装置11及び12を有する脱イオン水製造システムの構成例を示している。第1の実施形態の脱イオン水製造システムは、通水経路が並列に接続された3台以上のEDI装置1を有する構成であってもよい。以下では、複数のEDI装置を総称する場合はEDI装置1と称し、複数の電源装置を総称する場合は電源装置2と称す。
【0022】
被処理水及び処理水は、周知の水質測定器5(51及び52)を用いてそれぞれの水質が測定される。被処理水の水質は測定しなくてもよい。水質測定器5には、例えば、被処理水及び処理水の導電率を測定する導電率計、被処理水及び処理水の比抵抗を測定する比抵抗計、または被処理水及び処理水におけるイオン濃度などを測定する濃度計等を用いればよい。脱イオン水製造システムは、EDI装置11及び12の脱塩室(D)からの処理水の排出量(製造量)を測定する周知の流量計(積算流量計)6を備えていてもよい。
【0023】
制御装置3は、水質測定器5及び流量計6と周知の通信手段を介して接続され、被処理水及び処理水の水質の測定データ、並びに処理水の製造量のデータが送信される。制御装置3は、電源装置21及び22の出力電圧(直流電圧)の値を電源装置21及び22からそれぞれ受信してもよい。また、制御装置3は、ポンプ(不図示)及びバルブ7を用いてEDI装置11及び12の濃縮室(C)及び電極室(E)に対する被処理水の送水及び停止が制御される。濃縮室(C)から排出された濃縮水及び電極室(E)から排出された電極水はそれぞれ排水槽8に排水される。
【0024】
図1は、EDI装置11及び12の濃縮室(C)及び電極室(E)にそれぞれ被処理水を供給する例を示している。濃縮室(C)及び電極室(E)には、処理水を供給してもよく、
図1で示す脱イオン水製造システムとは別のシステムから水を供給してもよい。EDI装置1には、電極室(E)と濃縮室(C)とが兼用される構成もある。その場合、電極室(E)と濃縮室(C)とは同じ流路となるため、いずれか一方のみに通水する運転方法となる。濃縮室(C)及び電極室(E)に対して
図1で示す脱イオン水製造システムとは別のシステムから水を供給する構成では、脱塩室(D)に供給する被処理水の流量を変動させることなくEDI装置1を運転できる。
【0025】
制御装置3は、電源装置2、ポンプ及びバルブ7と周知の通信手段を介して接続され、電源装置2、ポンプ及びバルブ7の動作の制御が可能である。制御装置3は、電源装置2のオン/オフを制御すると共に、ポンプ及びバルブ7を用いてEDI装置1の脱塩室(D)に対する被処理水の送水及び停止、EDI装置1の濃縮室(C)及び電極室(E)に対する被処理水の送水及び停止を制御する。また、制御装置3は、EDI装置1を後述する2つの運転モード(採水モード及び採水兼再生モード)で運転する。制御装置3と、電源装置2、ポンプ、バルブ7、水質測定器5、並びに流量計6との通信手段は、周知の有線通信手段または無線通信手段のどちらを用いてもよく、その通信規格も周知のどのような規格を用いてもよい。
【0026】
制御装置3は、例えば、周知のPLC(Programmable Logic Controller)で実現できる。制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、I/Oインタフェース、通信装置等を備えた周知の情報処理装置(コンピュータ)で実現してもよい。制御装置3は、予め記憶装置に保存されたプログラムにしたがって、PLCまたは情報処理装置が備えるプロセッサが処理を実行することで、本発明の脱イオン水製造システムの運転方法を実現する。
【0027】
図1では示していないが、不純物濃度を十分に低減した脱イオン水を得るために、本発明の脱イオン水製造システムは、EDI装置1の前段に周知の逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜装置を有する構成であってもよい。脱イオン水製造システムは、通水流路が直列に接続された複数段(例えば2段)の逆浸透膜装置を有する構成であってもよい。2段の逆浸透膜装置を有する場合、第1段の逆浸透膜装置に貯留槽等に貯留された原水を通水し、その透過水を第2段の逆浸透膜装置に通水し、第2段の逆浸透膜装置の透過水を被処理水としてEDI装置1の脱塩室に供給すればよい。逆浸透膜装置は、例えば純水の製造に用いられる一般的な逆浸透膜を備える構成であればよい。
【0028】
図2で示すように、EDI装置1は、2つの電極(陽極31と陰極32)の間に複数組のカチオン交換膜及びアニオン交換膜(
図2では2組)が配列されて電極室41及び45、濃縮室42及び44、並びに脱塩室43が形成された構成である。電極室(陽極室)41は陽極31とカチオン交換膜61とによって形成され、電極室(陰極室)45は陰極32とアニオン交換膜64とによって形成される。脱塩室43はアニオン交換膜62とカチオン交換膜63とによって形成され、脱塩室43を間に挟んで2つの濃縮室42及び44が形成される。陽極31側の濃縮室42はカチオン交換膜61とアニオン交換膜62とによって形成され、陰極32側の濃縮室44はカチオン交換膜63とアニオン交換膜64とによって形成される。脱塩室43には、カチオン交換体とアニオン交換体とが混合されたイオン交換体が充填される。なお、電極室41及び45、並びに濃縮室42及び44には、適宜イオン交換体を充填してもよい。
【0029】
EDI装置1には、
図3で示すように、
図2で示した濃縮室42、脱塩室43及び濃縮室44から成る基本構成(セルセット)が陽極31と陰極32との間に複数個並置された構成もある。このとき、隣接するセルセット間で隣り合う濃縮室を共有できる。
図3は、陽極31と陰極32との間にN(Nは1以上の整数)個のセルセットが配列された構成例を示している。
図3で示すEDI装置1では、電極室(陽極室)41にカチオン交換体(CER)が充填され、濃縮室42及び44、並びに電極室(陰極室)45にアニオン交換体(AER)が充填され、脱塩室43にカチオン交換体とアニオン交換体とが混合されたイオン交換体(MB)が充填されている。また、
図3で示すEDI装置1は、電極室(陽極室)41に外部から水を供給するのではなく、電極室(陰極室)45の出口水が、電極室(陽極室)41に供給される構成である。
【0030】
EDI装置1には、
図4で示すように2つの濃縮室42及び44の間に中間イオン交換膜66を配置することで2つの脱塩室46及び47を形成した構成もある。
図4で示すEDI装置1では、脱塩室46にアニオン交換体(AER)が充填され、脱塩室47にカチオン交換体(CER)が充填され、被処理水は脱塩室47に通水された後、脱塩室46に通水される。2つの脱塩室46及び47に充填するイオン交換体の量は、同じである必要はなく、例えば、一方の脱塩室にカチオン交換体とアニオン交換体とを充填し、他方の充填室にカチオン交換体のみを充填する構成としてもよい。あるいは、一方の脱塩室にカチオン交換体とアニオン交換体とを充填し、他方の充填室にアニオン交換体のみを充填する構成としてもよい。
【0031】
上述したように、EDI装置1には、電極室と濃縮室を区画するイオン交換体(アニオン交換膜64またはカチオン交換膜61)を無くして、電極室と濃縮室とが兼用される構成もある。その場合、電極室と濃縮室とは同じ流路となるため、いずれか一方のみに通水する運転方法となる。
【0032】
合流部4は、
図5の(a)で示すようにEDI装置11及び12からの処理水の通水流路を合流させた構成、
図5の(b)で示すようにEDI装置11及び12からの処理水を共通のタンク9に貯留し、処理水として出力する構成、あるいは
図5の(c)で示すようにこれらを組み合わせた構成が考えられる。
図5の(a)~(c)は、図面が複雑になるのを防止するため、制御装置3、水質測定器5、流量計6、並びに制御装置3と、電源装置2、バルブ7、水質測定器5及び流量計6との通信経路を省略して示している。また、
図5の(b)及び(c)では、さらに排水槽8も省略して示している。なお、
図5の(a)~(c)は、後述する、
図6で示す1台の電源装置2を2台のEDI装置11及び12で共有する構成例を示している。
【0033】
このような構成において、本発明者らは、EDI装置1のイオン交換体の再生時に、該イオン交換体の塩形割合が多い状態の方が再生のための電力の利用効率が良くなることを見出した。また、本発明者らは、無通電時はEDI装置1の濃縮室及び電極室に通水せず、脱塩室のみに被処理水を通水させて脱イオン水を製造することで、EDI装置1を通電しつつ連続して運転した時と同程度の水質の脱イオン水が得られ、かつ消費電力及び排水量が低減できることを見出した。
【0034】
本実施形態では、EDI装置1の運転モードとして、EDI装置1に通電せずに、被処理水を脱塩室(D)に通水して処理水を得る採水モードと、EDI装置1に通電しつつ被処理水を脱塩室(D)に通水して処理水を得ると共に、濃縮室(C)及び電極室(E)の少なくとも一方に水を通水してイオン交換体を再生する採水兼再生モードとを設ける。そして、EDI装置1による消費電力を抑制しつつ、EDI装置1からの排水量を低減するために、EDI装置1を採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転する。採水モードでは、基本的に、濃縮室(C)及び電極室(E)に水を通水しない(無通水)。
【0035】
なお、無通電時にEDI装置1の濃縮室(C)及び電極室(E)に通水してはならない理由は無く、採水モード時に該濃縮室(C)及び電極室(E)に通水することも可能である。採水モードにおける濃縮室(C)及び電極室(E)に対する通水量は、採水モードにおけるEDI装置1からの排水量が、採水兼再生モードにおけるEDI装置1からの排水量よりも少なくなる量であればよい。採水モードにおける濃縮室(C)及び電極室(E)に対する通水量は、EDI装置1の排水量を低減する本発明の目的を達成するため、採水兼再生モードにおける通水量の1/2以下であることが好ましい。より好ましくは、採水モードにおける濃縮室(C)及び電極室(E)に対する通水量は、採水兼再生モードにおける通水量の1/5以下である。
【0036】
採水モードにおいて濃縮室(C)及び電極室(E)に水を通水する場合、濃縮室(C)及び電極室(E)の少なくとも一方に水を通水してもよい。濃縮室(C)及び電極室(E)に水を通水しない「無通水」とは、濃縮室(C)及び電極室(E)に水が全く供給されない状態に限定されるものではなく、わずかに供給されている状態も含む。
【0037】
また、ここで言う「無通電」とは、EDI装置1内で水の解離反応が進行しない状態を意味し、濃縮室(C)から脱塩室(D)に対するイオン拡散を防止するなどの目的で電極間に微弱な電圧を印加しておくことも含まれる。例えば、水の解離に必要な理論上の電圧は0.83Vであるため、脱塩室(D)1室あたり0.83V以下の電圧を印加することを含む。
【0038】
また、EDI装置1には、採水モードにおいて通電することも可能である。但し、採水モードにおいてEDI装置1に通電する電流は、EDI装置1の通常運転時(採水兼再生モード)に通電する電流(第1の電流)よりも少ない電流(第2の電流)とする。採水モードにおいてEDI装置1に通電する場合、第2の電流は、EDI装置1の消費電力を低減する本発明の目的を達成するため、第1の電流の1/2以下であることが好ましい。より好ましくは、第2の電流は、第1の電流の1/5以下である。
【0039】
上述した採水モードでは、EDI装置1の濃縮室(C)及び電極室(E)からの排水が無い、または排水が少ない利点を有するが、時間の経過と共にEDI装置1の脱イオン性能が低下するため、処理水の水質が徐々に悪化する。一方、採水兼再生モードでは、時間の経過と共にEDI装置1の脱イオン性能が再生されるため、処理水の水質が徐々に改善する利点を有するが、EDI装置1の濃縮室(C)及び電極室(E)からの排水量が多い。したがって、EDI装置1を採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると、処理水の水質が比較的大きく変動してしまう。
【0040】
ところで、脱イオン水製造システムでは、例えば大流量の被処理水を通水させて脱イオン水を製造するために、
図1で示したように、通水流路が並列に接続された複数(
図1では2台)のEDI装置1を有する構成がある。
【0041】
そこで、第1の実施の形態の脱イオン水製造システムでは、2台のEDI装置1をそれぞれ採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると共に、一方のEDI装置1を採水モードで運転しているとき、他方のEDI装置1を採水兼再生モードで運転する。このとき、脱イオン水製造システムでは、複数のEDI装置1が同時に採水兼再生モードで運転している期間を含んでいてもよい。
【0042】
3台以上のEDI装置1を有する脱イオン水製造システムの場合、第1の実施の形態では、複数のEDI装置1の採水兼再生モードによる運転を、それぞれ異なる開始及び終了タイミングに設定する。例えば、複数のEDI装置1の採水兼再生モードによる運転を順次実施することが考えられる。または、第1の実施の形態では、複数のEDI装置1の採水兼再生モードによる運転を、2つ以上に組分けされたユニット毎にそれぞれ異なる開始及び終了タイミングに設定する。例えば、通水流路が並列に接続された4台のEDI装置1を有する脱イオン水製造システムの場合、2台のEDI装置1から成るユニットを2組設け、一方のユニットを採水モードで運転しているとき、他方のユニットを採水兼再生モードで運転することが考えられる。
【0043】
なお、3台以上のEDI装置1を有する脱イオン水製造システムは、運転モードを切替えない、例えば常に採水兼再生モードで運転するEDI装置1を含んでいてもよい。すなわち、第1の実施の形態では、複数のEDI装置1のうち、少なくとも2台のEDI装置1をそれぞれ採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると共に、採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転する複数のEDI装置1における採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する。
【0044】
複数のEDI装置1の運転モードは、制御装置3によって、タイマーを用いて切替てもよく、水質測定器5で測定された処理水の水質に基づいて切替えてもよい。タイマーを用いて運転モードを切替える場合、制御装置3は、例えば、予め設定された採水兼再生モード及び採水モードの運転時間に基づいて、採水兼再生モードと採水モードとを交互に切替えればよい。また、水質測定器5で測定された処理水の水質に基づいて運転モードを切替える場合、制御装置3は、例えば、採水モードで運転中に処理水の水質が予め設定した第1のしきい値よりも悪化したら採水兼再生モードに切替え、採水兼再生モードで運転中に処理水の水質が予め設定した第2のしきい値を越えたら(水質が良好になったら)採水モードに切替えることが考えられる。
【0045】
制御装置3によってこのように各EDI装置1の運転モードを制御すれば、合流後の処理水には採水兼再生モードで運転しているEDI装置1からの処理水が含まれる。したがって、第1の実施の形態の脱イオン水製造システムでは、合流部4を有することで、複数のEDI装置1からの処理水の水質が平均化されるため、合流後の処理水の水質の変動が抑制される。また、EDI装置1の運転モードに採水モードを含むことで、脱イオン水製造システム全体の消費電力を低減しつつ、EDI装置1からの排水量を低減できる。
【0046】
また、
図1に示した脱イオン水製造システムは、2台のEDI装置11及び12に対応して2台の電源装置21及び22を有する構成例を示している。このような構成では、例えば、一方のEDI装置1を常に採水兼再生モードで運転することも可能である。その場合でも、他方のEDI装置1、すなわち少なくとも1台のEDI装置1の運転モードに採水モードを含むことで、脱イオン水製造システム全体の消費電力を低減しつつ、EDI装置1からの排水量を低減できる。
【0047】
さらに、第1の実施の形態の脱イオン水製造システムでは、少なくとも1台のEDI装置1を採水兼再生モードで運転しているとき、他のEDI装置1を採水モードで運転すれば、1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有することも可能である。例えば、
図6は、1台の電源装置2を2台のEDI装置11及び12で共有する構成例を示している。
図7は、電源装置21を2台のEDI装置11及び12で共有し、電源装置22を2台のEDI装置13及び14で共有する脱イオン水製造システムの構成例を示している。
【0048】
1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有する構成では、電源装置2とEDI装置1との接続の切替えに要する時間を確保するために、全てのEDI装置1に直流電圧が供給されない期間、すなわち全てのEDI装置1を採水モードで運転する期間を含んでいてもよい。この場合、バルブ7には、EDI装置11及び12に対する被処理水の通水流路を切り替えるための切替弁を用いればよい。
図1、
図5及び
図6は、バルブ7に切替弁を用いる構成例をそれぞれ示している。複数のEDI装置1に対する電源装置2の接続の切替えは、制御装置3と通信可能であり、制御装置3で操作可能な周知のスイッチ(不図示)を用いればよい。
【0049】
なお、
図6は、図面が複雑になるのを防止するため、制御装置3、水質測定器5、流量計6、並びに制御装置3と、電源装置2、バルブ(切替弁)7、水質測定器5及び流量計6との通信経路を省略して示している。
図7は、
図6で省略した構成要素に加えて、バルブ(切替弁)7を含む濃縮室(C)及び電極室(D)に対する通水流路及び排水槽8を含む濃縮室(C)及び電極室(D)からの通水流路もさらに省略して示している。
【0050】
このように1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有すれば、脱イオン水製造システムが備える電源装置2の数を低減できるため、電源装置2の設置スペースが低減される。また、電源装置2の数が低減することで、複数のEDI装置1を備える脱イオン水製造システムのコストも低減される。
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態の脱イオン水製造システムの一構成例を示すブロック図である。
【0051】
図8で示すように、第2の実施の形態の脱イオン水製造システムは、通水流路が直列に接続された複数のEDI装置1を有する構成である。このような構成では、例えば、第1段のEDI装置1の脱塩室(D)、濃縮室(C)及び電極室(E)に貯留槽等に貯留された原水を通水し、その処理水を第2段のEDI装置1の脱塩室(D)、濃縮室(C)及び電極室(E)に通水し、第2段のEDI装置1の処理水を脱イオン水製造システムの処理水として取り出せばよい。第2の実施の形態の脱イオン水製造システムでは、複数のEDI装置1の通水流路が直列に接続されているため、第1の実施の形態で示した合流部4が不要である。また、EDI装置1の濃縮室(C)及び電極室(E)に対する水の供給及び停止を制御するためのバルブ7には開閉弁を用いればよい。バルブ7(開閉弁)は、例えばEDI装置11及び12の濃縮室(C)及び電極室(E)に対する通水流路毎にそれぞれ設ければよい。第1の実施の形態の脱イオン水製造システムにおいても、複数のEDI装置1が同時に採水兼再生モードで運転する期間を含む場合、EDI装置11及び12の濃縮室(C)及び電極室(E)に対する被処理水の通水流路毎にそれぞれ開閉弁を設ければよい。その他の構成及び運転方法は、第1の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0052】
第2の実施の形態の脱イオン水製造システムは、複数のEDI装置1の通水流路が直列に接続されているため、各段のEDI装置1の処理水がそれぞれの後段のEDI装置1の脱塩室(D)に供給される。そのため、脱イオン水製造システム全体の脱イオン性能が向上して、通水流路が並列に接続された複数のEDI装置1を備える第1の実施の形態の脱イオン水製造システムよりも良好な水質の処理水が得られる。
【0053】
第2の実施の形態の脱イオン水製造システムにおいても、2台のEDI装置11及び12を採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると共に、一方のEDI装置1を採水モードで運転しているとき、他方のEDI装置1を採水兼再生モードで運転する。すなわち、複数のEDI装置1のうち、少なくとも2台のEDI装置1をそれぞれ採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると共に、採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転する複数のEDI装置1における採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する。このように制御装置3を用いて各EDI装置1の運転モードを制御すれば、第1の実施の形態と同様に、後段のEDI装置1の処理水の水質の変動を抑制できる。また、各EDI装置1の運転モードに採水モードを含むことで、脱イオン水製造システム全体の消費電力を低減しつつ、EDI装置1からの排水量を低減できる。
【0054】
また、第2の実施の形態の脱イオン水製造システムにおいても、各EDI装置1に対応する複数の電源装置2を有する構成であれば、一方のEDI装置1(例えば、第2段のEDI装置1)を常に採水兼再生モードで運転することも可能である。その場合でも、他方のEDI装置1、すなわち少なくとも1台のEDI装置1の運転モードに採水モードを含むことで、脱イオン水製造システム全体の消費電力を低減しつつ、EDI装置1からの排水量を低減できる。後段のEDI装置1を常に採水兼再生モードで運転する構成では、前段のEDI装置1を常に採水兼再生モードで運転する構成よりも、脱イオン水製造システムからより良好な水質の処理水が得られる。
【0055】
さらに、第2の実施の形態の脱イオン水製造システムにおいても、少なくとも1台のEDI装置1を採水兼再生モードで運転しているとき、他のEDI装置1を採水モードで運転すれば、1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有することも可能である。例えば、
図9は、1台の電源装置2を2台のEDI装置11及び12で共有する構成例を示している。なお、
図9は、図面が複雑になるのを防止するため、制御装置3、水質測定器5、流量計6、並びに制御装置3と、電源装置2、バルブ(開閉弁)7、水質測定器5及び流量計6との通信経路を省略して示している。
【0056】
1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有する構成では、複数のEDI装置1に対する直流電圧の供給先を切替えるために、全てのEDI装置1に直流電圧が供給されない期間、すなわち全てのEDI装置1を採水モードで運転する期間を含んでいてもよい。
【0057】
このように1台の電源装置2を複数のEDI装置1で共有すれば、脱イオン水製造システムが備える電源装置2の数を低減できるため、電源装置2の設置スペースが低減される。また、電源装置2の数が低減することで、複数のEDI装置1を備える脱イオン水製造システムのコストも低減される。
【実施例】
【0058】
次に本発明の実施例について説明する。
(基本原理)
本基本原理では、EDI装置1のイオン交換体の再生時において、該イオン交換体の塩形割合が多い状態の方が再生のための電力の利用効率が良くなることを示す。ここでは、アニオン交換体として、塩形(塩化物イオン形)のイオン交換樹脂を用意し、再生型のカチオン交換樹脂とともにEDI装置1の脱塩室に充填した。そして、脱塩室、濃縮室及び電極室にそれぞれ純水を通水してイオン交換体を再生する際に、EDI装置1に通電した電気量に対して濃縮水として排出される塩化物イオンの濃度から塩化物イオンの排出(イオン交換樹脂の再生)に利用された電流の割合、すなわち電流効率を算出してグラフ化した。また、該グラフには、導電率の測定結果に基づいて処理水の水質の推移も示している。なお、EDI装置1は、1台のみ運転する構成である。
【0059】
図10は、イオン交換体の再生時間に対する電流効率及び処理水の導電率の推移を示すグラフである。導電率は、含まれるイオンの量が少ないほど低い値となるため、低い値であるほど良好な水質と言える。
【0060】
図10で示すように、電流効率は、EDI装置1に対する通電開始後2時間程度は90%以上の高い効率で運転できるが、それ以降は徐々に低下して10時間後には50%以下になることが分かる。また、EDI装置1に対して通電を開始すると、例えば、日本工業規格(JIS K 0557)で規定された、より良好な水質を示す導電率(1μS/cm(0.1mS/m))以下の処理水が通電開始後約1時間程度で達成できることも確認できる。
【0061】
したがって、イオン交換体の塩形割合が多い状態で運転した方がEDI装置1の電流効率が高いことが分かる。そのため、EDI装置1に通電する採水兼再生モードによる運転を、脱イオン水製造システムに要求される水質の値を下回る前に開始し、ある程度水質が回復したところで通電を停止して採水モードで運転すれば、処理水の水質の悪化を抑制しつつ、EDI装置1を常に電流効率の高い状態で運転できる。
(第1実施例)
第1実施例は、第1の実施の形態と同様に、脱イオン水製造システムが、通水流路が並列に接続された2台のEDI装置11及び12と、該2台のEDI装置11及び12で共有する1台の電源装置2とを有する。また、
図6で示したように、一方のEDI装置1を採水モードで運転しているとき、他方のEDI装置1を採水兼再生モードで運転することで、1台の電源装置2を2台のEDI装置11及び12で共有する例である。
【0062】
EDI装置1には、オルガノ株式会社製のEDI装置(EDI-HF2-0500スタック)を用い、脱塩室(D)には、採水兼再生モード及び採水モードを通じて常時750L/hで被処理水を通水した。また、採水兼再生モードの運転時において、EDI装置1は、直流電流2.5Aの定電流運転に設定した。EDI装置1の脱塩室(D)には、直列に接続された2段の逆浸透膜装置を透過した4±0.2μS/cmの透過水を供給した。EDI装置1の濃縮室には、採水兼再生モードの時のみ50L/hの被処理水を通水し、電極室には、採水兼再生モードの時のみ20L/hの被処理水を通水した。これらの条件は、後述する比較例も同様である。
【0063】
各EDI装置1の運転モードはタイマーを用いて切替え、第1のEDI装置11を採水モードで運転している期間において、第2のEDI装置11を採水兼再生モードで運転し、第2のEDI装置12を採水モードで運転している期間において、第1のEDI装置11を採水兼再生モードで運転した。採水モードの運転時間は5時間とし、採水兼再生モードの運転時間は3時間とし、採水モードと採水兼再生モードとを交互に繰り返し運転した。この場合、第1のEDI装置11または第2のEDI装置12のいずれか一方を採水兼再生モードで運転している期間の前後には、第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の両方を採水モードで運転している期間(=1時間)が存在する。第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の24時間(=1日)における運転モードの推移例は
図11で示す通りである。
【0064】
このときの被処理水の導電率及び処理水の導電率の変化の推移例を
図12に示し、処理水の脱塩率及び第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の消費電力の変化の推移例を
図13に示す。導電率は、数値が小さいほど水質がきれいであることを意味する。脱塩率は下記式にて算出した。
脱塩率[%]={1-(処理水導電率÷被処理水導電率)}×100
また、消費電力[W]は、EDI装置1の通電運転時における電源装置2の出力電流[A]×電圧[V]にて算出した。
(比較例)
比較例の脱イオン水製造システムは、
図1で示したように、通水流路が並列に接続された2台のEDI装置11及び12と、該2台のEDI装置11及び12に対応する2台の電源装置21及び22とを有する構成である。本比較例では、第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の運転モードを、タイマーを用いて切替え、第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12を同時に採水モードで5時間運転し、同時に採水兼再生モードで3時間運転し、採水モードと採水兼再生モードとによる運転を交互に繰り返した。第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の24時間(=1日)における運転モードの推移は
図14で示す通りである。
【0065】
このときの被処理水の導電率及び処理水の導電率の変化の推移例を
図15に示し、処理水の脱塩率及び第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12の消費電力の変化の推移例を
図16に示す。脱塩率及び消費電力[W]の計算式は第1実施例と同様である。
(第2実施例)
第2実施例は、第2の実施の形態と同様に、脱イオン水製造システムが、通水流路が直列に接続された2台のEDI装置1と、該2台のEDI装置1に対応する2台の電源装置2とを有し、第1(前段)のEDI装置11を採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転すると共に、第2(後段)のEDI装置12を常時採水兼再生モードで運転する例である。
【0066】
第1のEDI装置11には、オルガノ株式会社製のEDI-HF2-0500スタックを第1実施例と同じ条件にて運転し、処理水の水質(比抵抗)が3MΩ・cmを下回ったら、採水兼再生モードを実施し、処理水の水質が5MΩ・cmを上回ったら、採水モードに移行する工程を繰り返した。
【0067】
第2のEDI装置12には、オルガノ株式会社製のEDI-XP2-0500スタックを用い、脱塩室には、常時680L/hの被処理水を通水し、濃縮室には50L/h、電極室には20L/hの被処理水をそれぞれ通水した。また、電源装置22は2.5Aの定電流にて運転を行った。
【0068】
図17に、被処理水の水質(導電率)、並びに前段の第1のEDI装置11及び後段の第2のEDI12の処理水の水質(比抵抗)の推移例を示す。比抵抗は、導電率の逆数であり、数値が大きいほど水質がきれいであることを意味する。
(比較結果)
比較例で示したように、第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12をそれぞれ同時に採水モード及び採水兼再生モードで運転すると、
図15で示すように処理水の水質が比較的大きく変動する。それに対して、第1実施例のように、一方のEDI装置1を採水モードで運転している期間において、他方のEDI装置1を採水兼再生モードで運転すれば、
図12で示すように処理水の水質の変動が抑制される。
【0069】
同様に、比較例のように第1のEDI装置11及び第2のEDI装置12をそれぞれ同時に採水モード及び採水兼再生モードで運転すると、
図16で示すように脱塩率も比較的大きく変動する。一方、第1実施例のように、一方のEDI装置1を採水モードで運転している期間において、他方のEDI装置1を採水兼再生モードで運転すれば、
図13で示すように脱塩率の変動も抑制される。
【0070】
したがって、本発明の脱イオン水製造システムによれば、処理水の水質の変動を抑制しつつ、複数のEDI装置1を常に電流効率の高い状態で運転できる。
【0071】
また、脱イオン水製造システムの運転に上記採水モードを含むことで、従来の脱イオン水製造システムよりもEDI装置1の消費電力及びEDI装置1からの排水量を低減できる。したがって、本実施例の脱イオン水製造システムでは、処理水の水質の悪化を抑制しつつ、脱イオン水製造システムの消費電力及び排水量を低減できる。
【符号の説明】
【0072】
1、11、12、13、14 EDI装置
2、21、22 電源装置
3 制御装置
4 合流部
5、51、52 水質測定器
6 流量計
7 バルブ
8 排水槽
9 タンク
31 陽極
32 陰極
41、45 電極室
42、44 濃縮室
43、46、47 脱塩室
61、63 カチオン交換膜
62、64 アニオン交換膜
66 中間イオン交換膜
【要約】
【課題】処理水の水質の悪化を抑制しつつ、電気式脱イオン水製造装置の消費電力及び排水量を低減できる脱イオン水製造システムの運転方法及び脱イオン水製造システムを提供する。
【解決手段】電気式脱イオン水製造装置に第1の電流で通電しつつ、被処理水を脱塩室に通水して処理水を得ると共に、濃縮室及び電極室の少なくとも一方に水を通水する採水兼再生モードと、電気式脱イオン水製造装置に第1の電流よりも少ない第2の電流を通電する通電状態で、または無通電状態で、被処理水を脱塩室に通水して処理水を得る採水モードとを設け、通水流路が並列または直列に接続された複数の電気式脱イオン水製造装置のうち、少なくとも2台の電気式脱イオン水製造装置をそれぞれ採水モードと採水兼再生モードとで交互に運転し、複数の電気式脱イオン水製造装置における採水兼再生モードによる運転を、少なくとも2つの異なる開始及び終了タイミングで実施する。
【選択図】
図1