(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241122BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241122BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241122BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241122BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241122BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2023501528
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2021013250
(87)【国際公開番号】W WO2022071722
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0126558
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨンフィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソンヒョ・パク
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078965(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105980(WO,A1)
【文献】特開2013-225496(JP,A)
【文献】特開2019-046759(JP,A)
【文献】特表2007-518229(JP,A)
【文献】特開2018-039685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、グライム系化合物を含む第2溶媒及びリチウム塩を含む電解質;及び
硫黄と炭素材を活物質で含む正極;を含み、
前記リチウム塩、前記第2溶媒及び前記第1溶媒のモル比は、1:0.5~3:
9~15であり、
前記硫黄は、前記正極の総重量に対して60重量%以上、80重量%以下の含量で含まれ、
前記電解質がニトリル系溶媒を含まないことを特徴とするリチウム‐硫黄電池(但し、前記第2溶媒が4以上のエーテル結合を有するポリエーテル化合物を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記フッ素系エーテル化合物は、1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(フルオロメチル)エーテル、2‐フルオロエチルメチルエーテル、ビス(2,2,2‐トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2‐テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2‐テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2‐テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3‐ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H‐デカフルオロジプロピルエーテル及び1H,1H,2’H‐パーフルオロジプロピルエーテルからなる群から選択される1種以上のハイドロフルオロエーテル系化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項3】
前記グライム系化合物は、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項4】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiC
4BO
8、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)
2NLi、(SO
2F)
2NLi、(CF
3SO
2)
3CLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルホン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項5】
前記リチウム塩の濃度は0.1Mないし2Mであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項6】
前記リチウム塩がLiTFSIであり、前記第1溶媒が1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)であり、前記第2溶媒がジメトキシエタンであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項7】
前記硫黄は正極総重量に対して60重量%ないし80重量%で含まれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項8】
前記炭素材の気孔体積は0.7cm
3/gないし3cm
3/gであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項9】
前記正極に含まれる正極活物質は硫黄‐炭素複合体を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項10】
前記リチウム‐硫黄電池のエネルギー密度が400Wh/kg以上または600Wh/L以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年09月29日付韓国特許出願第10‐2020‐0126558号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、硫黄の高い理論放電容量を90%以上活用できる高エネルギー密度のリチウム‐硫黄電池に係り、より詳しくは、既存のカソライト(Catyholyte)電解質システム(放電容量:~1,200mAh/gs)ではないSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システム(放電容量~1,600mAh/gs)によっても、ニトリル系溶媒は使わないため、硫黄の高い理論放電容量(1,675mAh/g)を90%以上活用することができ、また、比表面積が高い正極炭素材を一緒に使うことによって性能をより極大化させることができる、高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高くなるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ラップトップ(laptop)及びカムコーダー、さらに電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡がり、電気化学素子に対する研究及び開発が段々増大している。電気化学素子は、このような側面で最も注目を浴びている分野で、その中でも充放電可能なリチウム‐硫黄電池のような二次電池の開発は関心の的になっていて、最近はこのような電池を開発するにあたり、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に対する研究開発につながっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中でもリチウム‐硫黄電池(Li‐S battery)は高いエネルギー密度(理論容量)を持ち、リチウムイオン電池を代替できる次世代二次電池として脚光を浴びている。このようなリチウム‐硫黄電池内では、放電時に硫黄の還元反応とリチウムメタルの酸化反応が起きるし、このとき、硫黄はリング構造のS8から線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide、LiPS)を形成することになるが、このようなリチウム‐硫黄電池はポリスルフィドが完全にLi2Sに還元されるまで段階的な放電電圧を示すことが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム‐硫黄電池の商業化において最大の障害物は寿命であり、充放電過程中、充電/放電効率(Efficiency)が減って電池の寿命が退化するようになる。このようなリチウム‐硫黄電池の寿命が退化する原因としては、電解質の副反応(電解質の分解による副産物の堆積)、リチウムメタルの不安定性(リチウム負極上にデンドライトが成長してショート発生)及び正極副産物の堆積(正極からのリチウムポリスルフィド湧出)などで多様である。
【0006】
すなわち、硫黄系列の化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属を負極活物質で使用する電池において、充放電時にリチウムポリスルフィドの湧出及びシャトル現象が発生し、リチウムポリスルフィドが負極に伝達されてリチウム‐硫黄電池の容量が減少され、これによってリチウム‐硫黄電池は寿命が減少され、反応性が減少する大きな問題点を有している。すなわち、正極で湧出されたポリスルフィドは有機電解液への溶解度が高いため、電解質を通じて負極側に望まない移動(PS shuttling)が起きることがあるし、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量減少及び副反応によるリチウムメタル表面への硫黄粒子蒸着による電池寿命の減少が発生するようになる。
【0007】
一方、このようなリチウム‐硫黄電池の挙動は電解質によって大きく変わることがあるが、正極の硫黄(sulfur)が電解質にリチウムポリスルフィド(LiPS)の形態で湧出される場合の電解質をカソライトといい、硫黄がリチウムポリスルフィドの形態でほぼ湧出されない場合の電解質をSSE(sparing solvating electrolyte)という。既存のカソライトシステムを活用するリチウム‐硫黄電池は、Li2Sx形態を持つ中間生成物(intermediate polysulfide)の生成を通じた液相反応(catholyte type)に依存するので、硫黄の高い理論放電容量(1,675mAh/g)を充分活用することができず、むしろポリスルフィドの湧出による電池退化で電池寿命が急減する問題点を持っている。
【0008】
一方、最近、ポリスルフィドの湧出を抑制させることができるSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システムが開発されて硫黄の理論放電容量の90%以上を活用できるようになったが、SSE電解質システムの殆どがニトリル(Nitrile)系列の溶媒に依存していて、この場合、リチウム負極との反応によってリチウム負極が退化し、また、リチウム‐硫黄電池の内部にガスが発生するなど電池の寿命に致命的な短所がある。
【0009】
ここで、当業界では正極活物質である硫黄が電解質に湧出されないリチウム‐硫黄電池に対する様々な研究(正極複合体にLiPS吸着物質を添加したり、既存PEなどからなる分離膜を改質させるなどの研究)が行われていて、特に、硫黄が最終放電産物であるLi2SでSolid‐to‐Solid反応を進めることができる電解液に対しても研究が行われているが、未だにこれといった成果は出せない実情である。したがって、硫黄の理論放電容量の90%以上を活用できるSSE電解質システムを利用しながらも、リチウム負極が退化したり電池の内部にガスが発生することなく、高いエネルギー密度を持つ革新電池の開発が要求される(高エネルギー密度は約400Wh/kg以上または600Wh/L以上を意味し、これを構築するためには4.0mAh/cm2以上、60%以下の気孔率でも駆動可能な電解質及び正極活物質システムが必要となる)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、既存カソライト電解質システム(放電容量:~1,200mAh/gs)ではないSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システム(放電容量~1,600mAh/gs)によりながらもニトリル系溶媒は使わず、硫黄の高い理論放電容量(1,675mAh/g)を90%以上活用することができ、また、比表面積が高い正極炭素材を一緒に使うことで性能をより極大化させることができる、高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、グライム系化合物を含む第2溶媒及びリチウム塩を含む電解質;及び硫黄と炭素材を活物質で含む正極;を含み、前記正極に含まれた硫黄利用率が理論放電容量の90%以上であることを特徴とするリチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池によると、既存カソライト電解質システム(放電容量:~1,200mAh/gs)ではないSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システム(放電容量~1,600mAh/gs)によりながらもニトリル系溶媒は使わないため、硫黄の高い理論放電容量(1,675mAh/g)を90%以上活用することができ、また、比表面積が高い正極炭素材を一緒に使用することで電池の放電容量及び寿命性能をより極大化させることができる長所を持つ。また、本発明による高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池は、4.0mAh/cm2以上、60%以下の気孔率でも駆動可能な電解質及び正極活物質システムを備えることによって、エネルギー密度が約400Wh/kg以上または600Wh/L以上と高く維持される長所を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム‐硫黄電池の放電容量及び寿命特性を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム‐硫黄電池の放電容量及び寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明によるリチウム‐硫黄電池は、フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、グライム系化合物を含む第2溶媒及びリチウム塩を含む電解質;及び硫黄と炭素材を活物質で含む正極;を含み、前記正極に含まれた硫黄利用率が理論放電容量の90%以上であることを特徴とする。
【0016】
最近、ポリスルフィドの湧出を抑制させることができるSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システムが開発され、硫黄の理論放電容量の90%以上を活用することができるようになったにもかかわらず、ニトリル(Nitrile)系列の溶媒に依存しているSSE電解質システムの特性上、いまだにリチウム負極との反応によってリチウム負極が退化し、リチウム‐硫黄電池の内部にガスが発生して電池の寿命を縮める問題が解決されていない。
【0017】
ここで、本出願人は、硫黄利用率が理論放電容量の90%以上、好ましくは90ないし100%、より好ましくは94ないし100%を活用することができるSSE電解質システムを利用しながらも、リチウム‐硫黄電池の寿命に致命的なニトリル(Nitrile)系列の電解質溶媒を排除し、安定的なエーテル系列の電解質溶媒を使用してリチウム負極が退化したり電池内部にガスが発生することなく(すなわち、寿命向上)、4.0mAh/cm2以上、60%以下の気孔率でも駆動可能な電解質及び正極活物質システムを備えることで約400Wh/kg以上または600Wh/L以上の高いエネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池を開発した。一方、前記「硫黄利用率」とは、具体的に、硫黄の重量あたり理論容量である1,675mAh/g(硫黄)対比該当電池の正極に含まれる硫黄元素の重さ(gram)あたり放電容量(mAh)の割合であって、例えば、リチウム‐硫黄電池の正極内に存在する硫黄元素の重量あたり放電容量が1,600mAh/g(硫黄)の場合の硫黄利用率は95.5%(1,600/1,675)である。
【0018】
すなわち、本出願人は、SSE電解質システムを利用しながらも電池の性能を極大化させられなかった既存技術の問題点を補完するために方案を模索したあげく、フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、グライム系化合物を含む第2溶媒、及びリチウム塩を含む電解質と、硫黄及び炭素材を活物質で含む正極間のシナジー効果を確認し、これを通じて、硫黄の理論放電容量の90%以上(すなわち、電池の初期放電容量が約1,507mAh/g以上)、好ましくは90ないし100%、より好ましくは94ないし100%活用できるだけでなく、約400Wh/kg以上または600Wh/L以上の高いエネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池を発明した。
【0019】
以下、本発明のリチウム‐硫黄電池に含まれる、A)フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、B)グライム系化合物を含む第2溶媒、C)リチウム塩及びD)正極それぞれに対して具体的に説明する。
【0020】
A)第1溶媒
前記第1溶媒は、フッ素系エーテル化合物を含む電解質溶媒であって、ポリスルフィドの溶解及び溶媒分解抑制効果を持つことによって、電池のクーロン効率(coulombic efficiency;C.E.)などを向上させ、窮極的には電池の寿命を向上させる役目をする。より具体的に、前記フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒は、フッ素置換によってアルカンを含む一般的な有機溶媒に比べて溶媒の構造安定性に優れ、安定性がとても高い。これによって、これをリチウム‐硫黄電池の電解液に使えば電解液の安定性を大きく向上させることができるし、それによって、リチウム‐硫黄電池の寿命性能を向上させることができる。
【0021】
前記フッ素系エーテル化合物の例としては、1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(1,1,2,2‐tetrafluoroethyl2,2,3,3‐tetrafluoropropyl ether、TTE)、ビス(フルオロメチル)エーテル、2‐フルオロメチルエーテル、ビス(2,2,2‐トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2‐テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2‐テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2‐テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3‐ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H‐デカフルオロジプロピルエーテル及び1H,1H,2’H‐パーフルオロジプロピルエーテルからなる群から選択される1種以上のハイドロフルオロエーテル系(HFE type)化合物を挙げることができる。
【0022】
B)第2溶媒
前記第2溶媒は、グライム系化合物を含む(ただし、フッ素は含まない)電解質溶媒であって、リチウム塩を溶解して電解液がリチウムイオン伝導率を持つようにするだけでなく、正極活物質である硫黄を湧出させてリチウムと電気化学的反応を円滑に進行させる役目をする。
【0023】
前記グライム系化合物の具体的な例としては、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、この中でジメトキシエタンの使用が好ましい。
【0024】
C)リチウム塩
前記リチウム塩は、イオン伝導性を増加させるために使われる電解質塩であって、当業界で通常使用するものであれば制限されずに使われることができる。前記リチウム塩の具体的な例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルホン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を例示することができる。
【0025】
前記リチウム塩の濃度はイオン伝導率などを考慮して決まることができるし、例えば0.1ないし2M、好ましくは0.5ないし1M、より好ましくは0.5ないし0.75Mである。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満の場合、電池駆動に適するイオン伝導率の確保が難しいことがあって、前記範囲を超える場合は電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下されたり、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池性能が低下されることがある。
【0026】
以上のような第1溶媒、第2溶媒及びリチウム塩を含む電解質において、前記リチウム塩、第2溶媒及び第1溶媒のモル比は1:0.5~3:4.1~15である。また、本発明の一実施形態として、前記リチウム塩、第2溶媒及び第1溶媒のモル比は、1:2:4~13または1:3:3~10または1:4:5~10であるなど、本発明のリチウム‐硫黄電池に含まれる電解質には、フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒が、グライム系化合物を含む第2溶媒に比べて高い含量比で含まれる。このように、フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒が、グライム系化合物を含む第2溶媒に比べて高い含量比で含まれる場合、ポリスルフィドの生成を抑制して硫黄の理論容量に近い電池容量の具現ができるようにし、電池使用による電池容量の減少を抑制する側面で利点があるので、なるべくフッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒が、グライム系化合物を含む第2溶媒に比べて高い含量比で含まれるように設定することが好ましい。
【0027】
D)正極
本発明によるリチウム‐硫黄電池は、硫黄と炭素材を活物質として含む正極、負極、前記正極と負極の間に介在される分離膜、及び以上で説明したA)フッ素系エーテル化合物を含む第1溶媒、B)グライム系化合物を含む第2溶媒、及びC)リチウム塩を含む電解質を含むものであって、以下、前記正極について具体的に説明する。
【0028】
本発明のリチウム‐硫黄電池に含まれる正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを含む。前記正極活物質としては、通常のリチウム‐硫黄電池に適用されるものであってもよく、例えば、硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系列化合物またはこれらの混合物を含むことができ、前記硫黄系列化合物は、具体的に、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または硫黄‐炭素複合体((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)などである。また、前記正極活物質は硫黄‐炭素複合体を含むことができるし、硫黄物質は単独では電気伝導性がないため導電材と複合して使用することができる。
【0029】
前記硫黄‐炭素複合体は、その粒子の大きさが1ないし100μmである。前記硫黄‐炭素複合体の粒子の大きさが1μm未満の場合、粒子間の抵抗が増加してリチウム‐硫黄電池の電極に過電圧が発生することがあるし、100μmを超える場合は、単位重量当たり表面積が小くなって電極内の電解質とのウェッティング(wetting)面積及びリチウムイオンとの反応サイト(site)が減少するようになり、複合体の大きさ対比電子の伝達量が少なくなって反応が遅くなって、電池の放電容量が減少されることがある。
【0030】
前記硫黄(S)は正極の総重量に対して60ないし80重量%、好ましくは67.5ないし75重量%の含量で含まれることができる。通常的なリチウム‐硫黄電池の正極内硫黄の含量は、正極の総重量対比約40ないし60重量%であって、本発明はこれより著しく高い含量で硫黄を使用するにもかかわらず、本発明の電解質条件下で約1,550mAh/g以上の初期放電容量を示す。もし、前記硫黄が正極の総重量に対して60重量%未満で使用されれば、電池のエネルギー密度が減少する問題が発生することがあるし、80重量%を超える含量で使用される場合は、電極内の導電性が低下して電極の安定性が落ちる問題点が発生することがある。
【0031】
前記硫黄‐炭素複合体を構成する炭素材(または、硫黄担持材)は多孔性を持つものであって、特に、本発明の正極活物質で使用される炭素材は、高比表面積(3,000m2/g以上)及び高気孔率(Pore Volume:0.7~3cm3/g)の特性を持つので、前記電解質で高容量(1,575~1,675mAh/g)の駆動が可能である。
【0032】
前記多孔性炭素材としては、0.7~3cm3/gの気孔体積を満たす炭素材全てを例示することができ、具体的に、0.7~3cm3/gの気孔体積を満たすグラファイト(graphite);グラフェン(graphene);還元グラフェンオキサイド(rGO);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック(Carbon Black);単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素(Activated carbon);からなる群から選択された1種以上を例示することができ、その形態は球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型などである。
【0033】
以上の硫黄と炭素材を含む正極活物質は、正極総重量100重量部に対して80ないし99重量部、好ましくは90ないし95重量部で含まれることができる。前記正極活物質の含量が正極総重量100重量部に対して80重量部未満であれば電池のエネルギー密度が減少する問題が発生することがあるし、99重量部を超える場合は電極内の導電性が低下して電極の安定性の落ちる問題が発生することがある。
【0034】
一方、本発明によるリチウム‐硫黄電池の正極にはバインダー及び導電材がさらに含まれることができる。また、前記正極は電流集電体上に活物質、バインダー及び導電材を含むベース固形分が位置したものである。
【0035】
前記バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン‐ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、アルキル化ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレン、ポリメチル(メト)アクリレート、ポリエチル(メト)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン‐ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0036】
前記バインダーは通常正極総重量100重量部を基準にして1ないし50重量部、好ましくは3ないし15重量部添加される。前記バインダーの含量が1重量部未満であれば正極活物質と集電体との接着力が不十分になることがあるし、50重量部を超えると接着力は向上されるが、その分正極活物質の含量が減少して電池容量が低くなることがある。
【0037】
前記正極に含まれる導電材は、電池の内部環境で副反応を引き起こすことなく、当該電池に化学的変化を引き起こさずに優れる電気伝導性を持つものであれば特に制限されないし、代表的には、黒鉛または導電性炭素を使うことができるし、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素ナノチューブ;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独で、または2種以上混合して使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0038】
前記導電材は通常正極総重量100重量部を基準にして0.5ないし10重量部、好ましくは0.5ないし5重量部で添加されることができるが、本発明の正極には含まれないこともある。導電材の含量が10重量部を超えて多すぎると、相対的に正極活物質の量が少なくなって容量及びエネルギー密度が低下されることがある。正極に導電材を含ませる方法は、あまり制限されないし、正極活物質へのコーティングなど当分野に公知された通常的な方法を使用することができる。また、必要に応じて、正極活物質に導電性の第2被覆層が付加されることによって、前記のような導電材の添加に代わることもできる。
【0039】
また、本発明の正極には、その膨脹を抑制する成分として充填剤が選択的に添加されることができる。このような充填剤は当該電池に化学的変化を引き起こさずに電極の膨脹を抑制できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質;などを使うことができる。
【0040】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作り、これを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されることができる。前記分散媒としては、NMP(N‐methyl‐2‐pyrrolidone)、DMF(Dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0041】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO2)、FTO(F doped SnO2)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。正極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、打ち抜かれたもの、多孔質体、発泡体などの形態である。
【0042】
前記負極はリチウム系金属であり、リチウム系金属の一側に集電体をさらに含むことができる。前記集電体は負極集電体が使われることができる。前記負極集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限せず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができるし、前記合金としては、アルミニウム‐カドミウム合金を使うことができるし、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子または伝導性高分子などを使うこともできる。一般的に、負極集電体としては銅薄板を適用する。
【0043】
また、その形態は表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使われることができる。また、前記負極集電体は3ないし50μmの厚さ範囲のものを適用する。前記負極集電体の厚さが3μm未満であれば集電効果が落ちるし、一方厚さが50μmを超えればセルをフォールディング(folding)して組み立てる場合、加工性が低下する問題点がある。
【0044】
前記リチウム系金属は、リチウムまたはリチウム合金であってもよい。このとき、リチウム合金はリチウムと合金化可能な元素を含み、具体的に、リチウムとSi、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge及びAlからなる群から選択される1種以上との合金であってもよい。
【0045】
前記リチウム系金属はシートまたはホイルの形態であってもよく、場合によって、集電体上にリチウムまたはリチウム合金が乾式工程によって蒸着またはコーティングされた形態であるかか、粒子状の金属及び合金が湿式工程などによって蒸着またはコーティングされた形態でってもよい。
【0046】
前記正極と負極の間は通常的な分離膜が介在されることができる。前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を持つ物理的な分離膜であって、通常の分離膜として使われるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0047】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極の間にリチウムイオンの輸送ができるようにする。このような分離膜は多孔性で非伝導性または絶縁性の物質からなることができる。前記分離膜はフィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコーティング層である。
【0048】
前記分離膜で使用できるポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した膜を挙げることができる。前記分離膜で使用できる不織布の例では、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエステル(polyester)などをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した不織布が可能であり、このような不織布は多孔性ウェブ(web)を形成する繊維形態として、長繊維で構成されたスパンボンド(spunbond)またはメルトブローン(meltblown)形態を含む。
【0049】
前記分離膜の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm範囲が好ましく、より好ましくは5ないし50μm範囲である。前記分離膜の厚さが1μm未満の場合は機械的物性を維持することができず、100μmを超える場合は前記分離膜が抵抗層で作用するようになって電池性能が低下する。前記分離膜の気孔の大きさ及び気孔率は特に制限されないが、気孔の大きさは0.1ないし50μmで、気孔率は10ないし95%であることが好ましい。前記分離膜の気孔の大きさが0.1μm未満であるか気孔率が10%未満であれば、分離膜が抵抗層で作用するようになり、気孔の大きさが50μmを超えたり気孔率が95%を超える場合は機械的物性を維持することができない。
【0050】
以上のような電解液、正極、負極及び分離膜を含む本発明のリチウム‐硫黄電池は、正極を負極と対面させ、その間に分離膜を介在した後、電解液を注入する工程を通じて製造されることができる。
【0051】
一方、本発明によるリチウム‐硫黄電池は、小型デバイスの電源で使われる電池セルに適用されることは勿論、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として特に適合に使われることができる。このような側面で、本発明はまた2個以上のリチウム‐硫黄電池が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム‐硫黄電池の数量は、電池モジュールの用途及び容量などを考慮して多様に調節できることは勿論である。さらに、本発明は当分野の通常的な技術によって前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグインハイブリッド電気車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;または電力貯蔵用システムの中でいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として利用可能であるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0052】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0053】
[実施例1]リチウム‐硫黄電池の製造
電解質製造
先ず、LiTFSI(濃度:0.65M)、ジメトキシエタン(第2溶媒)及び1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(TTE、第1溶媒)を常温下で1:2:9のモル比で混合し、リチウム‐硫黄電池用電解質を製造した。
【0054】
正極製造
正極活物質で硫黄‐炭素複合体(S:C=75:25重量比)90重量部(硫黄単独含量は正極総重量に対して67.5重量%ができるように設定し、炭素材は気孔体積が1.8cm3/gの活性炭素を使用した)、導電材としてデンカブラック5重量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=7:3)5重量部を混合して正極スラリー組成物を製造した後、前記製造されたスラリー組成物を集電体(Al Foil)上にコーティングし、50℃で12時間乾燥してロールプレス(roll press)機器で圧搾して正極を製造した(このとき、ローディング量は3.5mAh/cm2で、電極の気孔率(porosity)は65%にした)。
【0055】
リチウム‐硫黄電池製造
前記製造された正極と150μm厚さのリチウム金属負極を対面するように位置させ、その間にポリエチレン(PE)分離膜を介在した後、前記製造された電解質を注入してコインセルタイプのリチウム‐硫黄電池を製造した。一方、前記電池の製造において、前記正極は14phi円形電極で打ち抜いて使用し、前記ポリエチレン分離膜は19phiで、前記リチウム金属は16phiで打ち抜いて使用した。また、前記電池はSSE(sparing solvating electrolyte)電解質システムを適用して製造した。
【0056】
[比較例1]リチウム‐硫黄電池の製造
電解質溶媒の一つであるジメトキシエタンの代わりにアセトニトリル(Acetonitrile)に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0057】
[比較例2]リチウム‐硫黄電池の製造
LiTFSI、ジメトキシエタン(第2溶媒)及び1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(TTE、第1溶媒)の混合比を1:0.8:4のモル比に変更し、また、正極活物質で硫黄‐炭素複合体を使用し、硫黄‐炭素複合体の中でS:Cの重量比を46:64に変更し、これによって、硫黄単独含量が正極総重量に対して41重量%になったことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0058】
[比較例3]リチウム‐硫黄電池の製造
LiTFSI、ジメトキシエタン(第2溶媒)及び1,1,2,2‐テトラフルオロエチル2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル(TTE、第1溶媒)の混合比を1:1:4のモル比に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0059】
[実験例1]リチウム‐硫黄電池の放電容量及び寿命特性評価
前記実施例1及び比較例1ないし3で製造されたリチウム‐硫黄電池を0.1Cで3サイクル(cycle)の間充電及び放電させて電池の放電容量及び寿命特性を評価した。このとき、使われた電圧(Voltage)の範囲は1.0~3.0Vで(すなわち、放電は1.0Vまで、充電は3.0Vまで)、評価温度はそれぞれ25℃、35℃にした(ただし、比較例1は45℃でも評価を行う)。
【0060】
図1及び2は、本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム‐硫黄電池の放電容量及び寿命特性を示すグラフであって、
図1のa及び
図2のaは前記実施例1に該当し、残りの
図1のb、
図2のb及び
図2のcは前記比較例1に該当する。先ず、評価温度を25℃に設定した
図1を見ると、電解質にニトリル系溶媒を含まずにエーテル系列の溶媒のみを使用した実施例1のリチウム‐硫黄電池は、電解質にニトリル系溶媒を含む比較例1のリチウム‐硫黄電池に比べて初期放電容量及び寿命特性いずれも優れることを確認することができた。特に、実施例1のリチウム‐硫黄電池は、初期放電容量が硫黄の理論容量である1,675mAh/gに近接するほど、SSE電解質システムを適用した通常のリチウム‐硫黄電池が今まで示すことができなかった水準で初期放電容量値を示すことを確認することができた。
【0061】
また、
図2に示すように、評価温度を35℃に設定した場合も類似な結果を示し、評価温度を45℃に設定した比較例1の場合、25℃及び35℃で評価したことに比べては寿命特性がある程度改善される様子を示したが、依然として実施例1の水準に比べては著しく低い寿命特性を示した。
【0062】
一方、実施例1と同一な電解質構成は取っているものの、相対的に第1溶媒(フッ素系エーテル化合物を含む)の使容量が少ないし、また、正極内での硫黄の含量も実施例1と対比して低い比較例2の場合も、実施例1の初期放電容量及び寿命特性に比べて非常によくない結果を示し、第1溶媒(フッ素系エーテル化合物を含む)の使容量のみを減らした比較例3の場合も実施例1の初期放電容量及び寿命特性に大きく及ばない様子を示した。
【0063】
以上に基づいて、SSE電解質システムを適用するリチウム‐硫黄電池は、電解質にニトリル系溶媒を含まずに、電解質内のフッ素系エーテル溶媒の混合比を本発明の水準に高め、正極内での硫黄の含量比も本発明の水準まで高めれば電池の性能を極大化させることができることが分かった。