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特許7592151車載器、サーバ、車両動作検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車載器、サーバ、車両動作検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G08G1/09 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023510040
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013883
(87)【国際公開番号】W WO2022208748
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】是永 剛志
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146279(JP,A)
【文献】特開2008-116315(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182082(WO,A1)
【文献】特開2017-125768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載器であって、
加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、
を備え、
前記特定部は、前記3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分を、前記偏りとして特定し、
前記姿勢検出部は、前記第1主成分のベクトル及び前記第2主成分のベクトルを前記車両座標系の二つの座標軸に関連付けて、前記車載器座標系とのずれを特定する、
車載器。
【請求項2】
車両に搭載される車載器であって、
加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、
を備え、
前記センサ情報取得部は、角速度センサから角速度の時系列を示す角速度情報を更に取得し、
前記姿勢検出部は、前記偏りと、前記角速度情報との相関に基づいて、前記車載器座標系の左右方向の座標軸と、前記車両座標系の左右方向の座標軸とのずれを特定する、
車載器。
【請求項3】
前記センサ情報取得部は、角速度センサから角速度の時系列を示す角速度情報を更に取得し、
前記姿勢検出部は、前記偏りと、前記角速度情報との相関に基づいて、前記車載器座標系の左右方向の座標軸と、前記車両座標系の左右方向の座標軸とのずれを特定する、
請求項に記載の車載器。
【請求項4】
車両に搭載される車載器であって、
加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、
を備え、
前記変換部は、過去に特定された前記ずれと、新たに特定された前記ずれとの誤差が所定量未満である場合、過去に特定された前記ずれを用いて前記3軸加速度を前記車両座標系に変換して出力する、
車載器。
【請求項5】
前記変換部は、過去に特定された前記ずれと、新たに特定された前記ずれとの誤差が所定量未満である場合、過去に特定された前記ずれを用いて前記3軸加速度を前記車両座標系に変換して出力する、
請求項1から3の何れか一項に記載の車載器。
【請求項6】
車両に搭載される車載器であって、
加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、
を備え、
前記変換部は、前記3軸加速度情報から前記車両の動作限界を超える動きを検出した場合、前記3軸加速度の変換及び出力を停止する、
車載器。
【請求項7】
前記変換部は、前記3軸加速度情報から前記車両の動作限界を超える動きを検出した場合、前記3軸加速度の変換及び出力を停止する、
請求項1からの何れか一項に記載の車載器。
【請求項8】
車両に搭載される車載器が加速度センサを通じて検出した車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、
を備え
前記特定部は、前記3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分を、前記偏りとして特定し、
前記姿勢検出部は、前記第1主成分のベクトル及び前記第2主成分のベクトルを前記車両座標系の二つの座標軸に関連付けて、前記車載器座標系とのずれを特定する、
サーバ。
【請求項9】
車両に搭載される車載器が、加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、
前記車載器が、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、
前記車載器が、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、
前記車載器が、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、
を有し、
前記偏りを特定するステップは、前記3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分を、前記偏りとして特定し、
前記ずれを特定するステップは、前記第1主成分のベクトル及び前記第2主成分のベクトルを前記車両座標系の二つの座標軸に関連付けて、前記車載器座標系とのずれを特定する、
車両動作検出方法。
【請求項10】
加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、
前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、
前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、
前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、
を車両に搭載される車載器のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記偏りを特定するステップは、前記3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分を、前記偏りとして特定し、
前記ずれを特定するステップは、前記第1主成分のベクトル及び前記第2主成分のベクトルを前記車両座標系の二つの座標軸に関連付けて、前記車載器座標系とのずれを特定する、
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器、サーバ、車両動作検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、有料道路の課金処理、安全運転評価等を行うため、車両に車載器を搭載することが増えている。このような車載器には、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサが設けられており、車両の動作に応じた加速度、角速度等を検出可能である(例えば、特許文献1を参照)。車載器は、これらのセンサを用いて、自機が搭載された車両の動作(前後進、右左折等)を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-128985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載器は、車両に対して必ずしも一定の姿勢(位置、角度)で取り付けられるとは限らない。例えば、取り付け後の車載器の前後方向及び左右方向は、車両の前後方向及び左右方向と一致していない場合がある。そうすると、車載器では、車両の実際の前後進、右左折の動作を正確に検出できない可能性がある。このため、車載器がどのような姿勢で車両に取り付けられていたとしても、車両の動作を精度よく検出することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、車両に搭載される車載器は、加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、備える。
【0006】
本開示の一態様によれば、サーバは、車両に搭載される車載器が加速度センサを通じて検出した車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部と、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部と、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部と、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様によれば、車両動作検出方法は、加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、プログラムは、加速度センサから車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、を車両に搭載される車載器のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上述の少なくとも一の態様によれば、車載器がどのような姿勢で車両に取り付けられていたとしても、車両の動作を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1の実施形態に係る車両動作検出システムの全体構成を示す図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る車両動作検出システムの機能構成を示す図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本開示の第1の実施形態に係る3軸加速度の分布の一例を示す第1の図である。
図5】本開示の第1の実施形態に係る3軸加速度の分布の一例を示す第2の図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係る車両動作検出システムの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る車両動作検出システム1について、図1図5を参照しながら説明する。
【0012】
(車両動作検出システムの全体構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る車両動作検出システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、車両動作検出システム1は、車載器2と、サーバ3とを備えている。
【0013】
車載器2は、複数の車両それぞれに搭載される。なお、本実施形態に係る車両は、例えば四輪自動車である。車載器2は、内蔵されたセンサ(詳細は後述)から、車両の動作(走行位置、前後進、右左折等)を検出可能なセンサ値を取得する。なお、車載器2は、車内のどのような位置に取り付けられていてもよく、例えば、車載器2は、図1に示すように車両のダッシュボード上に取り付けられてもよい。このとき、車載器2が検出する前後、左右、上下の方向を示す車載器座標系(図1のXYZで示される座標)は、車両の前後、左右、上下の方向を示す車両座標系(図1のX´Y´Z´で示される座標)と一致していない場合がある。このため、本実施形態に係る車載器2は、自機の取り付け姿勢(車載器座標系が車両座標系に対してどのくらいずれているか)を自動的に検出して、取得したセンサ値を車両座標系に変換する機能を有している。
【0014】
サーバ3は、車載器2と通信可能に接続され、車載器2が搭載された車両の動作を検出可能な情報(車両動作情報)を収集する。また、サーバ3は、収集した車両動作情報に基づいて、車両に対し有料道路の通行料金を課金する処理、車両が安全運転を行っているか否かを判定する処理等を実行する。
【0015】
(車両動作検出システムのハードウェア構成)
図2は、本開示の第1の実施形態に係る車両動作検出システムの機能構成を示す図である。
図2に示すように、車両動作検出システム1の車載器2は、CPU20と、加速度センサ21と、角速度センサ22と、GNSS受信機23と、記憶媒体24とを備えている。
【0016】
CPU20は、車載器2の動作全体を司るプロセッサである。CPU20の機能の詳細については後述する。
【0017】
加速度センサ21は、車載器2を搭載した車両、又は車載器2自身の移動に伴う加速度を検出するセンサである。
【0018】
角速度センサ22は、車載器2を搭載した車両、又は車載器2自身の移動に伴う角速度及び各加速度を検出するセンサ(ジャイロセンサ)である。
【0019】
GNSS受信機23は、GNSS(全地球航行衛星システム:Global Navigation Satellite System)を構成する衛星から受信した信号(衛星信号)に基づいて、車載器2の位置(緯度及び経度)、移動速度等を検出する。
【0020】
記憶媒体24は、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体24には、加速度センサ21、角速度センサ22、及びGNSS受信機23それぞれが検出したセンサ値、CPU20により検出された車載器2の取り付け姿勢に関する情報等が記憶、蓄積されていく。
【0021】
また、図2に示すように、サーバ3は、CPU30と、記憶媒体31とを備えている。
【0022】
CPU30は、サーバ3の動作全体を司るプロセッサである。なお、CPU30の機能の詳細については後述する。
【0023】
記憶媒体31は、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体31には、車載器2から取得した車両の動作を検出可能な情報(車両動作情報)等が記憶、蓄積されていく。
【0024】
(車載器の機能構成)
次に、車載器2の機能について説明する。車載器2のCPU20は、所定のプログラムに従って動作することにより、センサ情報取得部201、特定部202、姿勢検出部203、変換部204、動作検出部205としての機能を発揮する。
【0025】
センサ情報取得部201は、加速度センサ21から車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得する。また、センサ情報取得部201は、角速度センサ22から車載器座標系における角速度の時系列を示す角速度情報を取得する。更に、センサ情報取得部201は、GNSS受信機23から車載器2(車両)の位置情報の時系列を示す移動軌跡情報を取得する。
【0026】
特定部202は、センサ情報取得部201が取得した3軸加速度情報から、車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する。
【0027】
姿勢検出部203は、特定部202が特定した3軸加速度の分布の偏りに応じて、車載器座標系(図1のXYZ座標)と車両座標系(図1のX´Y´Z´座標)とのずれ(車両に対する車載器2の取り付け姿勢のずれ)を特定する。
【0028】
変換部204は、取得した3軸加速度を、姿勢検出部203により特定されたずれを用いて車両座標系に変換して出力する。
【0029】
動作検出部205は、角速度センサ22及びGNSS受信機23から取得したセンサ情報と、変換部204が車両座標系に変換した3軸加速度とに基づいて、車両の動作を検出する。車両の動作とは、停車、前後進、右左折等の車両の挙動、車両の道路上の走行位置、移動速度等である。動作検出部205は、検出した車両の動作に基づく処理を更に実行してもよい。例えば、動作検出部205は、車両の急ブレーキ、急発進等の危険な挙動を検出して、運転者に安全運転を促すメッセージを出力してもよい。
【0030】
また、動作検出部205は、検出した車両の動作を含む車両動作情報をサーバ3へ送信する。なお、動作検出部205は、角速度センサ22及びGNSS受信機23から取得したセンサ情報と、変換部204が車両座標系に変換した3軸加速度とを含む車両動作情報をサーバ3へ送信してもよい。
【0031】
(サーバの機能構成)
次に、サーバ3の機能について説明する。CPU30は、所定のプログラムに従って動作することにより、サーバ側処理部301としての機能を発揮する。
【0032】
サーバ側処理部301は、車載器2から取得した車両動作情報に基づく各種処理を実行する。例えば、サーバ側処理部301は、車両動作情報に基づいて、車両の安全運転評価(急ブレーキ、急発進、急カーブ、適切な加減速等の有無による評価)を行う。また、サーバ側処理部301は、車両動作情報に基づいて車両の走行経路を特定し、車両が有料道路を走行した場合は通行料金を課金する処理を行ってもよい。
【0033】
(車載器の処理フロー)
図3は、本開示の第1の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図3を参照しながら、車載器2の処理について詳細に説明する。
【0034】
まず、図3に示すように、センサ情報取得部201はセンサ情報を取得する(ステップS101)。本実施形態では、センサ情報取得部201は、加速度センサ21、角速度センサ22、及びGNSS受信機23それぞれから、3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報(3軸加速度及び検出日時)、角速度の時系列を示す角速度情報(角速度及び検出日時)、及び位置情報の時系列を示す移動軌跡情報(位置情報、移動速度、及び検出日時)を取得する。センサ情報取得部201は、取得したセンサ情報を記憶媒体24に記憶して蓄積する。なお、センサ情報取得部201は、記憶媒体24に蓄積されたセンサ情報が所定のサンプル数を超えた場合、最も古いセンサ情報を削除して、新たに取得したセンサ情報を記憶する。
【0035】
次に、特定部202は、所定のサンプル数以上のセンサ情報を収集したか判断する(ステップS102)。なお、特定部202は、所定のサンプル数に代えて、初期状態(車載器2の初回起動時、又はセンサ情報の初期化時)からのサンプリング期間を経過したか否かを判断するようにしてもよい。
【0036】
特定部202は、所定のサンプル数以上のセンサ情報を収集していない場合(ステップS102:NO)、ステップS101に戻る。一方、特定部202は、所定のサンプル数以上のセンサ情報を収集済みである場合(ステップS103:YES)、3軸加速度情報から、車載器座標系(図1のXYZ座標)における3軸加速度の分布の偏りを特定する(ステップS103)。
【0037】
図4は、本開示の第1の実施形態に係る3軸加速度の分布の一例を示す第1の図である。
図4には、記憶媒体24に蓄積された3軸加速度情報を車載器座標系(XYZ座標)にプロットした例が示されている。車両は、直進(前後進)しているときは車両座標系のX´軸(前後方向)に沿って3軸加速度が分布し、ヨーイング(右左折等の転回時の車両座標系のZ´軸回りの回転)時は車両座標系のY´軸(左右方向)に沿って3軸加速度が分布する傾向がある。なお、車両は道路平面上を走行するものであるため、ローリング(車両座標系のX´軸回りの回転)及びピッチング(車両座標系のY´軸回りの回転)は、3軸加速度の分布の偏りには大きく影響しない。つまり、車両の走行時における加速度は、車両座標系のX´軸及びY´軸に沿って2方向に分布するように偏りが生じる傾向がある。このため、図4に示すように3軸加速度を車載器座標系にプロットすると、車載器座標系のX軸及びY軸とは異なる方向に3軸加速度の分布の偏りが現れる。このような傾向を踏まえ、特定部202は、車両座標系の各軸を検出するための情報として、車載器座標系の3軸加速度の分布の偏りを特定する。
【0038】
まず、特定部202は、車両座標系のZ´軸を検出する。車載器座標系のZ軸(上下方向)と、車両座標系のZ´軸とのずれは、重力加速度から検出可能である。例えば、特定部202は、車両の静止時(移動軌跡情報に含まれる移動速度がゼロのとき)における3軸加速度(重力加速度)から、車両座標系のZ´軸を検出する。
【0039】
次に、特定部202は、図4の3軸加速度の分布をZ´軸からみた平面(XY平面)上に投影して、車載器座標系のXY平面上における加速度の分布を得る。特定部202は、このXY平面上における加速度の分布の偏りを特定する。
【0040】
図5は、本開示の第1の実施形態に係る3軸加速度の分布の一例を示す第2の図である。
例えば、特定部202は、図5に示すように、3軸加速度情報を主成分分析して得た第1主成分及び第2主成分を、加速度の分布の偏りとして特定してもよい。第1主成分及び第2主成分のベクトルは、加速度のばらつきが大きくなる方向、即ち、車両座標系のX´軸及びY´軸と関連付けることができる。
【0041】
また、このとき、特定部202は、3軸加速度情報のうち、新しいデータほど重み付けを大きくして、主成分分析をしてもよい。これにより、例えば、車両の振動、運転者の操作等による車載器2の取り付け姿勢(XYZ軸)が多少変更されたとしても、加速度の分布の偏りの方向も姿勢の変更に追従するようになる。
【0042】
次に、姿勢検出部203は、特定部202が特定した3軸加速度の分布の偏りに応じて、車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する(ステップS104)。具体的には、姿勢検出部203は、角速度情報と、3軸加速度の分布の偏りとの相関に基づいて車両座標系のY´軸を検出して、車載器座標系のY軸とのずれを特定する。
【0043】
車両が右左折等を行う転回時は、角速度が大きくなるとともに、3軸加速度は車両座標系のY´軸(左右方向)に沿って分布する。姿勢検出部203は、この角速度と3軸加速度の分布の偏りとの相関性から、角速度が所定の基準値よりも大きいときに計測された3軸加速度の分布の偏りの方向が、車両座標系のY´軸であると検出する。
【0044】
例えば、ステップS103において主成分分析により3軸加速度の偏りの方向を示す第1主成分及び第2主成分を特定した場合、第1主成分及び第2主成分のベクトルそれぞれが車両座標系のX´軸及びY´軸のどちらと関連付けられるかは、3軸加速度情報のみから判断することが難しい。このため、姿勢検出部203は、角速度との相関に基づいて、第1主成分及び第2主成分のベクトルのどちらが車両座標系のY´軸であるかを検出する。図5の例では、姿勢検出部203は、第2主成分の方向を車両座標系のY´軸として検出したとする。そうすると、姿勢検出部203は、残りの第1主成分の方向を車両座標系のX´軸として検出する。
【0045】
姿勢検出部203は、車両座標系のX´軸及びY´軸を検出すると、車載器座標系のX軸及びY軸それぞれとのずれを特定する。図5の例では、姿勢検出部203は、車載器座標系における第1主成分のベクトルと、検出した車両座標系のX´軸とのなす角度を、X軸のずれとして特定する。また、姿勢検出部は、車載器座標系における第2主成分のベクトルと、検出した車両座標系のY´軸とのなす角度を、Y軸のずれとして特定する。また、姿勢検出部203は、車載器座標系のZ軸と、特定部202が検出した車両座標系のZ´軸とのずれについても同様に特定する。姿勢検出部203は、このように特定した車載器座標系のずれに基づいて、車載器2の取り付け姿勢を検出することができる。また、姿勢検出部203が検出した各軸のずれは、記憶媒体24に記憶して蓄積される。
【0046】
次に、姿勢検出部203は、車載器2の取り付け姿勢が確定済みであるか否かを判断する(ステップS105)。例えば、記憶媒体24には、取り付け姿勢が確定済みであるか否かを示す姿勢確定情報が記憶されている。初期状態では、姿勢確定情報は「未確定」である。姿勢確定情報が「未確定」である場合(ステップS105:NO)、姿勢検出部203は、姿勢確定情報を「確定」に書き換えて上書きする(ステップS106)。
【0047】
また、姿勢検出部203は、姿勢確定情報が「確定」であった場合(ステップS105:YES)、取り付け姿勢が前回から変化していないか判断する(ステップS107)。
【0048】
例えば、姿勢検出部203は、前回特定した車載器座標系および車両座標系の対応する各軸間のずれと、ステップS104で新たに特定した車載器座標系および車両座標系の対応する各軸間のずれとの誤差が所定量以上である場合、車載器2の取り付け姿勢が変化したと判断する(ステップS107:NO)。なお、姿勢検出部203は、記憶媒体24に記憶されている過去のずれの移動平均と、ステップS104で特定したずれとの誤差に基づいて判断してもよい。更に、姿勢検出部203は、ステップS101で取得した3軸加速度又は角速度が所定の閾値を超えた場合、取り付け姿勢が変化したと判断してもよい(ステップS107:NO)。閾値は、例えば車両が道路上を走行したときに出し得る加速度又は角速度(車両の動作限界)を超えたことを検出できるように、適切な値が設定される。
【0049】
姿勢検出部203は、取り付け姿勢が変化したと判断した場合(ステップS107:NO)、姿勢が変更されたことを示す表示又は音声を車載器2から出力させて、運転者に通知する(ステップS108)。また、姿勢検出部203は、車載器2の取り付け姿勢が変更されたことをサーバ3に通知してもよい。これにより、サーバ3は、車載器2の移動、取り外し等が行われたことを検出することができる。更に、姿勢検出部203は、記憶媒体24に蓄積されたセンサ情報を消去(初期化)するとともに、姿勢確定情報を「未確定」に書き換えて上書きして(ステップS109)、ステップS101に戻る。そうすると、車載器2は、変換部204による車両座標系への変換及び出力の処理(後述のステップS110の処理)を停止するとともに、センサ情報取得部201、特定部202、姿勢検出部203において新たな姿勢におけるセンサ情報を収集し直して、取り付け姿勢の再検出に係る一連の処理(ステップS101~S106の処理)を行う。
【0050】
また、姿勢検出部203が新たな取り付け姿勢を検出して確定した場合(ステップS106)、又は、取り付け姿勢が変化していないと判断した場合(ステップS107:YES)、変換部204は、前回特定した車載器座標系と車両座標系とのずれを用いて、ステップS101で取得した3軸加速度を車両座標系に変換して出力する(ステップS110)。
【0051】
なお、姿勢検出部203は、新たな取り付け姿勢を検出して確定したときに(ステップS106)、ステップS104で特定した車載器座標系と車両座標系とのずれに基づいて、車載器座標系から車両座標系への座標変換式を作成し、これを座標系のずれの情報として変換部204に出力してもよい。そうすると、変換部204は、姿勢検出部203が作成した座標変換式を用いて、ステップS101で取得した3軸加速度を車両座標系に変換して出力する(ステップS110)。
【0052】
一方、取り付け姿勢が変化していない場合(ステップS107:YES)は、姿勢検出部203は座標変換式を更新しない。このため、変換部204は、過去(ステップS106)において姿勢検出部203が作成した座標変換式を用いて、ステップS101で取得した3軸加速度を車両座標系に変換して出力する(ステップS110)。
【0053】
動作検出部205は、車両座標系に変換された3軸加速度に基づく各種処理(センサ情報処理)を実行する(ステップS111)。例えば、動作検出部205は、車両座標系に変換された3軸加速度に基づいて、車両の急ブレーキ、急発進等の挙動を検出し、運転者に警告又は安全運転を促すメッセージを出力する。更に、動作検出部205は、GNSS受信機23から取得した車両の移動軌跡と、車両座標系に変換された3軸加速度及び角速度とが一致するか否かを判断し、一致しない場合はGNSS受信機23に異常(故障、不正な信号の受信等)が発生したことを運転者及びサーバ3へ通知してもよい。車載器2は、一連の処理を実行後、ステップS101に戻り、上述の処理を繰り返し実行する。
【0054】
また、動作検出部205は、角速度センサ22及びGNSS受信機23から取得したセンサ情報(車両の角速度、位置情報、移動速度等)と、変換部204が車両座標系に変換した3軸加速度とを含む車両動作情報をサーバ3へ送信してもよい。そうすると、サーバ3のサーバ側処理部301は、車載器2から取得した車両動作情報に基づいて、車両の安全運転評価、通行料金の課金処理等を行う。
【0055】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る車両動作検出システム1において、車載器2は、車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りから、車載器座標系と車両座標系とのずれを特定し、3軸加速度を車両座標系に変換して出力する。このようにすることで、車載器2は、自身の取り付け姿勢を自動的に検出して、加速度センサ21から取得した3軸加速度を精度よく車両座標系に変換して出力することができる。これにより、車載器2は、自機がどのような姿勢で車両に取り付けられていたとしても、車両の動作を精度よく検出することができる。
【0056】
また、車載器2は、3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分のベクトルを、車両座標系の二つの座標軸(X´軸及びY´軸)に関連付けて、車載器座標系とのずれを特定する。このようにすることで、車載器2は、3軸加速度の分布の偏りを精度よく特定できるので、車載器2の取り付け姿勢(車載器座標系と車両座標系とのずれ)をより正確に検出することができる。
【0057】
また、車載器2は、3軸加速度の分布の偏りと、角速度情報との相関に基づいて、車載器座標系の左右方向の座標軸(Y軸)と、車両座標系の左右方向の座標軸(Y´軸)とのずれを特定する。このようにすることで、車載器2は、車両座標系のY´軸を精度よく検出することができるので、車載器2の取り付け姿勢(車載器座標系と車両座標系とのずれ)をより正確に検出することができる。
【0058】
また、車載器2は、過去に特定された車載器座標系のずれと、新たに特定されたずれとの誤差が所定量未満である場合、過去に特定された車載器座標系のずれを用いて3軸加速度を車両座標系に変換して出力する。また、車載器2は、誤差が所定量以上である場合、車載器2の取り付け姿勢が変化したと判断して、取得したセンサ情報及び姿勢確定情報を初期化する。このようにすることで、車載器2は、取り付け姿勢の変化を自動的に検出して、誤った取り付け姿勢に基づいて3軸加速度を変換、出力してしまうことを抑制できる。
【0059】
また、車載器2は、3軸加速度情報又は角速度情報から車両の動作限界を超える動きを検出した場合、3軸加速度の変換及び出力を停止する。このようにすることで、車載器2は、車両の動作ではありえない加速度又は角速度を検出した場合に、車載器2の移動や取り外し等に伴う取り付け姿勢の変化を自動的に検出して、誤った取り付け姿勢に基づいて3軸加速度を変換、出力してしまうことを抑制できる。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係る車両動作検出システム1について、図6を参照しながら説明する。第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0061】
第1の実施形態では、車載器2が自身の取り付け姿勢(車載器座標系と車両座標系とのずれ)を検出し、加速度センサ21から取得した3軸加速度を車両座標系に変換、出力する態様について説明したが、これに限られることはない。他の態様の例として、第2の実施形態では、サーバ3が車載器2から取得したセンサ情報に基づいて、車載器2の取り付け姿勢を検出し、車載器2から取得した車載器座標系における3軸加速度を、車両座標系における3軸加速度に変換する態様について説明する。
【0062】
(車載器の機能構成)
図6は、本開示の第2の実施形態に係る車両動作検出システムの機能構成を示す図である。
まず、図6を参照しながら本実施形態に係る車載器2の機能構成について説明する。図6に示すように、車載器2のCPU20は、センサ情報送信部206としての機能を発揮する。
【0063】
センサ情報送信部206は、加速度センサ21、角速度センサ22、GNSS受信機23それぞれから、3軸加速度情報(車載器座標系における3軸加速度及び検出日時)、角速度情報(角速度及び検出日時)、及び移動軌跡情報(位置情報、移動速度、及び検出日時)を逐次取得して、サーバ3に送信する。
【0064】
(サーバの機能構成)
次に、本実施形態に係るサーバ3の機能構成について説明する。図6に示すように、サーバ3のCPU30は、サーバ側処理部301に加えて、センサ情報取得部302、特定部303、姿勢検出部304としての機能を発揮する。
【0065】
センサ情報取得部302は、第1の実施形態の車載器2のセンサ情報取得部201の機能と同様の機能を有している。センサ情報取得部302は、複数の車両それぞれに取り付けられた車載器2から、センサ情報(3軸加速度情報、角速度情報、及び移動軌跡情報)を取得する。複数の車載器2それぞれから取得したセンサ情報は、記憶媒体31に車載器別に記憶して蓄積される。具体的には、センサ情報取得部302は、第1の実施形態に係る車載器2のセンサ情報取得部201と同様に、図3のステップS101の処理を実行する。
【0066】
特定部303は、第1の実施形態の車載器2の特定部202と同様の機能を有している。特定部303は、センサ情報取得部302が取得した3軸加速度情報から、複数の車載器2それぞれの車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する。具体的には、特定部303は、第1の実施形態に係る車載器2の特定部202と同様に、図3のステップS102~S103の処理を実行する。
【0067】
姿勢検出部304は、第1の実施形態の車載器2の姿勢検出部203と同様の機能を有している。姿勢検出部304は、複数の車載器2それぞれについて、特定部303が特定した3軸加速度の分布の偏りに応じて、車載器座標系(図1のXYZ座標)と車両座標系(図1のX´Y´Z´座標)とのずれを特定する。姿勢検出部304が特定したずれは、記憶媒体31に車載器別に記憶して蓄積される。具体的には、姿勢検出部304は、第1の実施形態に係る車載器2の姿勢検出部203と同様に、図3のステップS104~S109の処理を実行する。
【0068】
変換部305は、第1の実施形態の車載器2の変換部204と同様の機能を有している。変換部305は、複数の車載器2それぞれから取得した3軸加速度を、姿勢検出部203により特定された車載器別のずれを用いて車両座標系に変換して出力する。具体的には、変換部305は、第1の実施形態に係る車載器2の変換部204と同様に、図3のステップS110の処理を実行する。
【0069】
サーバ側処理部301は、センサ情報取得部302が取得した角速度情報及び移動軌跡情報と、変換部305が車両座標系に変換した3軸加速度とに基づいて、各車載器が搭載された車両の動作を検出する。当該処理は、第1の実施形態に係る車載器2の動作検出部205の処理(図3のステップS111)と同様である。また、サーバ側処理部301は、検出した車両の動作に基づいて、第1の実施形態と同様に、各車両に対する安全運転評価、課金処理等を行う。また、サーバ側処理部301は、移動軌跡情報から特定される車両の移動軌跡と、車両座標系に変換された3軸加速度及び角速度とが一致するか否かを判断し、一致しない場合は車載器2のGNSS受信機23に異常が発生したことを当該車載器2に通知してもよい。
【0070】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る車両動作検出システム1において、サーバ3は、複数の車載器2それぞれについて、車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りから、車載器座標系と車両座標系とのずれを特定し、3軸加速度を車載器2が搭載された車両の車両座標系に変換して出力する。このようにすることで、サーバ3は、複数の車載器2それぞれがどのような姿勢で取り付けられていたとしても、各車載器2が取り付けられた車両の車両座標系における3軸加速度に変換して、車両の動作を精度よく検出することができる。
【0071】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0072】
例えば、上述の第1の実施形態において、車載器2の姿勢検出部203が角速度との相関に基づいて車両座標系のY´軸を検出する態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、姿勢検出部203は、移動軌跡情報との相関に基づいて車両座標系のX´軸及びY´軸を検出してもよい。この場合、姿勢検出部203は、車両が直進している(複数時刻における移動軌跡が直線状となっている)期間において3軸加速度の分布が偏っている方向を、車両座標系のX´軸として検出する。また、姿勢検出部203は、車両が転回している(複数時刻における移動軌跡が円弧状となっている)期間において3軸加速度の分布が偏っている方向を、車両座標系のY´軸として検出する。
【0073】
また、上述の第1の実施形態において、車載器2の特定部202が記憶媒体24に蓄積された全ての3軸加速度情報を用いて、3軸加速度の分布の偏りを特定する態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、特定部202は、角速度情報又は移動軌跡情報に基づいて、車両の直進(前後進)時の3軸加速度情報と、車両の転回(右左折等)時の3軸加速度情報とに分類し、直進時の3軸加速度の分布の偏りと、転回時の3軸加速度の分布の偏りとの二つを特定するようにしてもよい。この場合、姿勢検出部203は、直進時の3軸加速度の分布の偏り(主成分分析を行った際は、第1主成分)を、車両座標系のX´軸と関連付ける。同様に、姿勢検出部203は、転回時の3軸加速度の分布の偏り(主成分分析を行った際は、第1主成分)を、車両座標系のY´軸と関連付ける。
【0074】
<付記>
上述の各実施形態に記載の車載器、サーバ、車両動作検出方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0075】
本開示の第1の態様によれば、車両に搭載される車載器(2)は、加速度センサ(21)から車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部(201)と、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部(202)と、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部(203)と、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部(204)と、備える。
【0076】
このようにすることで、車載器は、自身の取り付け姿勢を自動的に検出して、加速度センサから取得した3軸加速度を精度よく車両座標系に変換して出力することができる。これにより、車載器は、自機が車両に対してどのような姿勢で取り付けられていたとしても、車両の動作を精度よく検出することができる。
【0077】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る車載器(2)において、前記特定部(202)は、前記3軸加速度情報を主成分分析して得られた第1主成分及び第2主成分を、前記偏りとして特定し、前記姿勢検出部(203)は、前記第1主成分のベクトル及び前記第2主成分のベクトルを前記車両座標系の二つの座標軸に関連付けて、前記車載器座標系とのずれを特定する。
【0078】
このようにすることで、車載器は、3軸加速度の分布の偏りを精度よく特定できるので、車載器の取り付け姿勢(車載器座標系と車両座標系とのずれ)をより正確に検出することができる。
【0079】
本開示の第3の態様によれば、第1又は第2の態様に係る車載器(2)において、前記センサ情報取得部(201)は、角速度センサから角速度の時系列を示す角速度情報を更に取得し、前記姿勢検出部(203)は、前記偏りと、前記角速度情報との相関に基づいて、前記車載器座標系の左右方向の座標軸と、前記車両座標系の左右方向の座標軸とのずれを特定する。
【0080】
このようにすることで、車載器は、車両座標系の左右方向の座標軸(Y´軸)を精度よく検出することができるので、車載器の取り付け姿勢(車載器座標系と車両座標系とのずれ)をより正確に検出することができる。
【0081】
本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る車載器(2)において、前記変換部(204)は、過去に特定された前記ずれと、新たに特定された前記ずれとの誤差が所定量未満である場合、過去に特定された前記ずれを用いて前記3軸加速度を前記車両座標系に変換して出力する。
【0082】
このようにすることで、車載器は、取り付け姿勢の変化を自動的に検出して、誤った取り付け姿勢に基づいて3軸加速度を変換、出力してしまうことを抑制できる。
【0083】
本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る車載器(2)において、前記変換部(204)は、前記3軸加速度情報から前記車両の動作限界を超える動きを検出した場合、前記3軸加速度の変換及び出力を停止する。
【0084】
このようにすることで、車載器は、車両の動作ではありえない加速度又は角速度を検出した場合に、車載器の移動や取り外し等に伴う取り付け姿勢の変化を自動的に検出して、誤った取り付け姿勢に基づいて3軸加速度を変換、出力してしまうことを抑制できる。
【0085】
本開示の第6の態様によれば、サーバ(3)は、車両に搭載される車載器(2)が加速度センサ(21)を通じて検出した車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するセンサ情報取得部(302)と、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定する特定部(303)と、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定する姿勢検出部(304)と、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力する変換部(305)と、を備える。
【0086】
このようにすることで、サーバは、複数の車載器2それぞれがどのような姿勢で取り付けられていたとしても、各車載器が取り付けられた車両の車両座標系における3軸加速度に変換して、車両の動作を精度よく検出することができる。
【0087】
本開示の第7の態様によれば、車両動作検出方法は、加速度センサ(21)から車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、を有する。
【0088】
本開示の第8の態様によれば、プログラムは、加速度センサ(21)から車載器座標系における3軸加速度の時系列を示す3軸加速度情報を取得するステップと、前記3軸加速度情報から、前記車載器座標系における3軸加速度の分布の偏りを特定するステップと、前記偏りに応じて、前記車載器座標系と車両座標系とのずれを特定するステップと、前記3軸加速度を、前記ずれを用いて前記車両座標系に変換して出力するステップと、を車両に搭載される車載器(2)のコンピュータに実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
上述の少なくとも一の態様によれば、車載器がどのような姿勢で車両に取り付けられていたとしても、車両の動作を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 車両動作検出システム
2 車載器
20 CPU
201 センサ情報取得部
202 特定部
203 姿勢検出部
204 変換部
205 動作検出部
206 センサ情報送信部
21 加速度センサ
22 角速度センサ
23 GNSS受信機
24 記憶媒体
3 サーバ
30 CPU
301 サーバ側処理部
302 センサ情報取得部
303 特定部
304 姿勢検出部
305 変換部
31 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6