(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241122BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2023516465
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 KR2021012186
(87)【国際公開番号】W WO2022071675
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127506
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142496
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、フンシク
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジヨン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-528514(JP,A)
【文献】国際公開第2020/159085(WO,A1)
【文献】特表2021-524817(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085869(WO,A1)
【文献】特表2021-503023(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194542(WO,A1)
【文献】特表2020-505486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08G 69/00-69/50
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B29C 41/00-41/52
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来する2種以上のアミド系繰り返し単位を含み、
前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物に由来の第1アミド系繰り返し単位と、第2ジカルボニル化合物に由来の第2アミド系繰り返し単位とを含み、
前記第1ジカルボニル化合物内の2つのカルボニル基間の角度は160°~180°であり、
前記第2ジカルボニル化合物内の2つのカルボニル基間の角度は80°~140°であり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl)を含み、
XRD(X-ray diffraction)グラフ上の2θ値が、10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、
前記第1XRDピークの半値幅は6°以下である、ポリアミド系フィルム。
【請求項2】
XRDグラフ上の2θ値が、20°~25°の区間で最大値を有する第2XRDピークをさらに含み、
前記第2XRDピークの半値幅と、前記第1XRDピークの半値幅との和に対する前記第1XRDピークの半値幅の百分率は40%以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
フィルムの厚さ50μmを基準に、
モジュラスが5GPa以上で、
透過度が80%以上で、
ヘイズが1%以下で、
黄色度が3.5以下である、
請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載のポリアミド系フィルムと機能層とを含む、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項5】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウは、
請求項1に記載のポリアミド系フィルムと機能層とを含む、ディスプレイ装置。
【請求項6】
有機溶媒
中でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合してポリアミド系重合体を含む重合体溶液を
-10℃~25℃の温度条件にて調製する段階と、
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む、
請求項1に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物と、前記第1ジカルボニル化合物よりも2つのカルボニル基間の角度が小さい第2ジカルボニル化合物とを含み、
前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、
有機溶媒中にジアミン化合物を投入して溶解する段階と、
第1ジカルボニル化合物を投入して撹拌した後、第2ジカルボニル化合物を投入し撹拌して、第1重合体溶液を調製する段階と、
第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物を投入し撹拌して、第2重合体溶液を調製する段階と、
第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物を投入し撹拌して、第3重合体溶液を調製する段階と、をそれぞれ順次行う、
請求項6に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第2重合体溶液を調製する段階において、前記第1ジカルボニル化合物が投入され、前記第3重合体溶液を調製する段階において、前記第2ジカルボニル化合物が投入される、
請求項7に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第2重合体溶液を調製する段階で投入される第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物の含有量は、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に0.5モル%~15モル%であり、
前記第3重合体溶液を調製する段階で投入される第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物の含有量は、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に0.5モル%~15モル%である、
請求項7に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系重合体は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムをフォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどに適用する際には、透明性、無色性などの光学特性、および柔軟性、硬度などの機械的物性が求められる。しかし、一般的に光学特性と機械的物性とはトレードオフの関係にあり、機械的物性を向上させると、光学特性が低下され得る。
【0006】
したがって、機械的物性と光学特性とがともに向上されたポリアミド系フィルムに対する研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、XRD(X-ray diffraction)グラフ上の2θ値が、10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。
【0009】
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、XRDグラフ上の2θ値が10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。
【0010】
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、XRDグラフ上の2θ値が10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。
【0011】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0012】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間で最大値を有する第1IRピークと、波数2875cm-1~2825cm-1区間で最大値を有する第2IRピークを含み、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。
【0013】
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間で最大値を有する第1IRピークと、波数2875cm-1~2825cm-1区間で最大値を有する第2IRピークとを含み、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。
【0014】
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウはポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間で最大値を有する第1IRピークと、波数2875cm-1cm-1~2825cm-1区間で最大値を有する第2IRピークとを含み、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。
【0015】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【発明の効果】
【0016】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、XRDグラフのXRDピークを分離する際、2θ値が10°以上~20°未満の区間に位置する第1XRDピークの半値幅が6°以下であって、前記第1XRDピークに対応する結晶性成分の結晶面間の間隔が相対的に均一であるため、優れた光学特性(低い黄色度とヘイズおよび高い光透過率)を有しながらも、機械的特性(モジュラス、耐スクラッチ性など)が向上され得る。
【0017】
例えば、前記第1XRDピークの半値幅と前記第2XRDピークの半値幅との和に対して、前記第1XRDピークの半値幅の百分率が40%以下であって、広間隔結晶形の結晶面間の間隔が相対的に均一であり、これにより、ポリアミド系フィルムのモジュラス、透過度および耐スクラッチ性が向上し、ヘイズおよび黄色度が減少し得る。
【0018】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間に位置する第1IRピークの面積が、波数2875cm-1~2825cm-1区間に位置する第2IRピークに対して1.4倍以下であって、優れたモジュラス、透過度、並びに低いヘイズおよび黄色度を有し得る。
【0019】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、第2IRピークの面積に対する第1IRピークの面積が0.6以上であって、前記第1IRピークの面積と前記第2IRピークの面積との差が小さいことにより、前記第1IRピークに対応する化学的結合と、前記第2IRピークに対応する化学的結合とが、大きい差の出ない比で存在して、モジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度などの特性がともに改善され得る。
【0020】
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、優れた機械的物性および光学特性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびフォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の断面図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的なフローチャートを示すものである。
【
図3】
図3は、一部の実現例によるポリアミド系重合体溶液の製造段階を説明する概略的なフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例1のポリアミド系フィルムに対するXRD分析グラフ(diffractogram)である。
【
図5】
図5は、実施例および比較例のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
【
図6】
図6は、実施例7のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
【
図7】
図7は、比較例5のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
【
図8】
図8は、比較例6のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書において説明する実現例に限定されない。
【0023】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0024】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0025】
本明細書において単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0026】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0027】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0028】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0029】
[ポリアミド系フィルム]
一実現例は、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、耐スクラッチ性および/またはモジュラスに優れたポリアミド系フィルムを提供する。
【0030】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
【0031】
前記ポリアミド系フィルムは、XRDグラフ上の結晶相成分に対応するXRDピークを含み得る。前記XRDピークは、単一XRDピークまたは複数の単一XRDピークを含む合算XRDピークであり、前記合算XRDピークに含まれている前記複数のXRDピークは、XRD分析方法およびプログラムにより、各々の単一XRDピークに分離され得る。一部の実現例において、前記単一XRDピークおよび合算XRDピークは、2θ値が10°以上~20°未満の区間に最大値を有する第1XRDピークを含み得る。
【0032】
例えば、前記第1XRDピークの最大値または最高点は、2θ値が10°以上~20°未満の区間に位置し得る。
【0033】
一部の実現例において、前記合算XRDピークは、第2XRDピークをさらに含み得る。一部の実現例において、前記合算XRDピークは、前記第1XRDピークと前記第2XRDピークとの和からなり得る。
【0034】
例えば、前記第2XRDピークは、2θ値が20°~25°の区間で最大値を有し得る。前記第2XRDピークの最大値または最高点は、2θ値が20°~25°の区間に位置し得る。
【0035】
そして、前記第1XRDピークと前記第2XRDピークとが合算され、合算XRDピークを形成し得る。一部の実現例において、前記合算XRDピークは、2θ値が2°~40°の区間、好ましくは5°~35°の区間に位置し得る。
【0036】
本明細書で使用される「XRDピーク」とは、XRDグラフ上の前記XRDピークが位置する区間外のXRDパターンが、例えば、関数で表現可能な特定の回帰(regression)を有するとき、その回帰から外れたXRDパターンまたはその形状を意味し得る。
【0037】
前記関数は、例えば、y=aex+bで表される指数関数であり得る。ここで、aおよびbは定数であり得る。
【0038】
前記特定回帰は、XRDグラフ上のベースラインと定義され得る。
例えば、前記ベースラインは、前記ポリアミド系重合体またはフィルム中の非結晶性成分のXRDパターンに対応され、前記XRDピークは結晶性成分のXRDパターンに対応し得る。
【0039】
この場合、前記XRDピークは、強度値が前記ベースラインよりも大きい部分(前記ベースラインの上側に存在する部分)と定義され得る。前記ベースラインは、前記XRDピークの底辺として提供され得る。
【0040】
一部の実現例において、前記XRDピークの半値幅が測定され得る。例えば、前記半値幅は、前記ベースライン上の任意の点に対する接線から、前記接線に垂直な方向に前記XRDピークのXRDパターンとの最大距離(最大高さ)が導出されるとき、前記最大高さの1/2の点から前記接線に平行な方向に対する幅と定義され得る。
【0041】
XRDパターンに現れる様々な結晶面間間隔を有する結晶形のうち、相対的に広い結晶面間間隔を有する結晶形は、広間隔結晶形と定義され、相対的に狭い結晶面間間隔を有する結晶形は、狭間隔結晶形と定義され得る。
【0042】
一部の実現例において、前記第1XRDピークに対応する結晶性成分は、相対的に広い結晶面間間隔を有する広間隔結晶形を高い割合で含み、前記第2XRDピークに対応する結晶性成分は、相対的に狭い結晶面間間隔を有する狭間隔結晶形を高い割合で含み得る。
【0043】
前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。この場合、前記第1XRDピークに対応する結晶性成分の結晶面間間隔のばらつきが小さくあり得る。例えば、広間隔結晶形の結晶面間間隔の均一度が増加して、ポリアミド系フィルムの耐スクラッチ性、モジュラス等の機械的特性および透過度、ヘイズ、黄色度等の光学特性がともに改善され得る。好ましくは、前記第1XRDピークの半値幅は、5.8°以下または5.6°以下であり得る。また、前記第1XRDピークの半値幅は、5.0°以上、5.2°以上、5.4°以上、または5.5°以上であり得る。
【0044】
一部の実現例において、前記第2XRDピークの半値幅と前記第1XRDピークの半値幅との和に対する前記第1XRDピークの半値幅の百分率は40%以下であり得る。この場合、例えば、前記広間隔結晶形の結晶面間の均一度が、前記狭間隔結晶形の結晶面間の均一度よりも高くあり得る。この場合、広間隔結晶形が、相対的に均一な結晶面間間隔を有し得る。したがって、ポリアミド系フィルムの耐スクラッチ性、モジュラス等の機械的特性および透過度、ヘイズ、黄色度等の光学特性がともに改善され得る。好ましくは、前記第1XRDピークの半値幅の百分率は、38%以下または36%以下であり得る。
【0045】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、IRスペクトル上の波数3000cm-1~2800cm-1区間内に第1IRピークおよび第2IRピークを含み得る。
【0046】
一部の実現例において、前記第1IRピークは、波数2950cm-1~2900cm-1区間における最大値を含み得る。例えば、前記第1IRピークの最高点は、波数2950cm-1~2900cm-1区間に位置し得る。
【0047】
前記第2IRピークは、波数2875cm-1~2825cm-1区間における最大値を含み得る。例えば、前記第2IRピークの最高点は、波数2875cm-1~2825cm-1区間に位置し得る。
【0048】
一部の実現例において、前記第1IRピークは、波数約2960cm-1~2895cm-1区間に現れ、前記第2IRピークは、波数約2890cm-1~2820cm-1区間に現れ得る。
【0049】
前記ポリアミド系重合体に含まれるアミド基(-C(=O)NH-)は、前記重合体が十分な長さを有する場合、前記重合体が屈曲して近くなった隣接アミド基(分子内の他のアミド基)と水素結合を形成し得る。前記水素結合は、前記アミド基の酸素と水素との間に形成され、窒素と水素との間にも形成され得る。
【0050】
または、互いに異なるポリアミド系重合体に含まれているアミド基が互いに水素結合(分子間水素結合)を形成し得る。したがって、分子内の酸素-水素結合、分子内の窒素-水素結合、分子間の酸素-水素結合、および分子間の窒素-水素結合を含む、少なくとも4種の水素結合が形成され得る。
【0051】
実現例において、前記第1IRピークおよび前記第2IRピークは、前記水素結合に起因し得る。例えば、前記4種の水素結合のうち、一部(以下、第1水素結合グループ)は前記第1IRピークに対応し、残り(以下、第2水素結合グループ)は前記第2IRピークに対応し得る。
【0052】
例えば、前記分子内の水素結合および分子間の水素結合中の一方は第1IRピークに対応し、残りの一方は第2IRピークに対応し得る。または、酸素-水素結合および窒素-水素結合中の一方は前記第1IRピークに対応し、残りの一方は前記第2IRピークに対応し得る。
【0053】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体はCsp3-H結合を含まない。したがって、前記IRスペクトルは、波数3000cm-1~2800cm-1区間に、Csp3-Hに起因するIRピークを含まないことがあり、波数3000cm-1~2800cm-1区間には、前記水素結合に起因するIRピークが現れ得る。
【0054】
前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。この場合、前記第1水素結合グループと前記第2水素結合グループとが存在する割合の差が大きくないため、ポリアミド系フィルムの透光率、ヘイズ、黄色度等の光学特性およびモジュラス等の機械的特性が向上され得る。好ましくは、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.3倍以下、1.2倍以下、または1.1倍以下であり得る。
【0055】
一部の実現例において、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上、または0.9倍以上であり得る。
【0056】
一部の実現例において、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して0.8倍以上および1.2倍以下であり得る。この場合、前記第1水素結合グループと前記第2水素結合グループとが実質的に等しい量で存在して、ポリアミド系フィルムの光学特性および機械的特性が向上し得る。好ましくは、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して0.9倍以上および1.1倍以下であり得る。
【0057】
IRピークの面積は、IRスペクトル上のIRピークが現れた区間の総面積に対して、ノイズの面積を除いて収得され得る。例えば、前記IRピークの始点と終点とを結んだ直線がベースラインと定義され、前記ベースラインの下部領域(吸光度の低い領域)がノイズに該当し得る。
【0058】
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(nx)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
【0059】
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(ny)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
【0060】
さらに、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(nz)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
【0061】
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
【0062】
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
【0063】
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700、または4200nm~4650nmであり得る。
【0064】
ここで、前記面内位相差(in-plane retardation、Ro)は、フィルムの平面内の直交する2つ軸の屈折率の異方性(△nxy=|nx-ny|)と、フィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0065】
なお、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルム厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折であるΔnxz(=|nx-nz|)および△nyz(=|ny-nz|)に、それぞれフィルム厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均で定義されるパラメータである。
【0066】
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学的歪みおよび色歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも最小化し得る。
【0067】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体の外に、フィラーをさらに含み得る。
【0068】
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり得る。具体的に、前記フィラーの平均粒径は、80nm~180nm、100nm~180nm、110nm~160nm、120nm~160nm、または130nm~150nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記フィラーの平均粒径が前記範囲であると、他の無機系フィラーと比較したとき、相対的に多い量を投入しても光学特性の低下が生じない。
【0070】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0071】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、nx、ny、nzに関連する複屈折値が適切に調整され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0072】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が肉眼で視認されるか、またはフィラーによってヘイズが上昇するという問題が発生し得る。
【0073】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~2500ppm、100ppm~2200ppm、200ppm~2500ppm、200ppm~2200ppm、250ppm~2100ppm、または、300ppm~2000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して、異物感が目視で確認されたり、製造工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。
【0075】
前記フィラーは、例えばシリカおよび硫酸バリウムを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記フィラーは、粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体にわたって均一に分散し得る。
【0077】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは光学特性の低下なく、広い視野角を確保し得る。
【0078】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、または500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記残留溶媒とは、フィルム製造の際、揮発されず最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
【0080】
前記ポリアミド系フィルム中の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を及ぼし得る。
【0081】
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmになるようにフォルディングするとき、破断する前までのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0082】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmになるように曲げて広げることを1回とする。
【0083】
前記ポリアミド系フィルムが、前術の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0084】
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μm、または0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合でも、高い輝度を実現するのに有利である。
【0086】
一実現例によるポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体はアミド繰り返し単位を含み、イミド繰り返し単位を選択的に含み得る。
【0087】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記イミド繰り返し単位を含まず、前記アミド繰り返し単位のみを含み得る。この場合、ポリアミド系フィルムのモジュラスが増加して、フォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用されることができ、透過率が向上し、黄色度およびヘイズが低下し得る。
【0088】
前記ポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成され得る。
【0089】
または、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され得る。この際、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
【0090】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記ジアンヒドリド化合物を含まずに重合されたものであり得る。この場合、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含まなくてよい。
【0091】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合してアミド結合を形成したポリアミド系重合体を含み得る。前記ポリアミド系重合体は、選択的にジアンヒドリド化合物がさらに重合してイミド結合を形成したポリアミド-イミド系重合体を含んでも良い。
【0092】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記ポリアミド-イミド系重合体を含まなくてもよい。この場合、ポリアミド系フィルムのモジュラスが増加して、フォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用されることができ、透過率が向上し、黄色度およびヘイズが低下し得る。
【0093】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0094】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0095】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0096】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0097】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0098】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0099】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0100】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0101】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0102】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0103】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl、TFMB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0104】
前記ジカルボニル化合物は特に限定されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0105】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0106】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0107】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0108】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0109】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0110】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0111】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0112】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0113】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、2種以上のアミド系繰り返し単位を含み得る。
【0114】
例えば、前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1アミド系繰り返し単位および第2アミド系繰り返し単位を含み得る。前記第1アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され、前記第2アミド系繰り返し単位は、第2ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され得る。
【0115】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0116】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ2つのカルボニル基を含み得る。前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度よりも大きくあり得る。
【0117】
例示的な実施例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに構造異性体の関係であり得る。構造異性体関係にある2種のジカルボニル化合物を用いることにより、前述の結晶面間隔を満足するポリアミド系重合体を形成することができ、これによりポリアミド系重合体の光学特性および機械的特性を向上させ得る。
【0118】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0119】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0120】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物の場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
【0121】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は160°~180°であり、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は80°~140°であり得る。
【0122】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または前記第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0123】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はTPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はIPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0124】
前記第1ジカルボニル化合物としてTPC、前記第2ジカルボニル化合物としてIPCを適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性、生産性、透光率、透明度、モジュラスなどを有することができ、ヘイズが低くあり得る。
【0125】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0126】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0127】
[化B-1]
前記化学式B-1のyは1~400の整数である。
【0128】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0129】
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、10:90~90:10であり得る。前記第1および第2アミド系繰り返し単位のモル比を前述の範囲に設定することにより、ポリアミド系重合体の結晶面間隔を前述の範囲に調整し得る。したがって、ポリアミド系フィルムのヘイズ、透光度、黄色度、モジュラスなどの物性を改善し得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、25:75~80:20、40:60~80:20、または50:50~75:25であり得る。
【0130】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意(random)の位置の10か所を測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有するため、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に現れ得る。
【0131】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズは1%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは0.5%以下または0.4%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0132】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0133】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は3.5以下であり得る。例えば、前記黄色度が3以下、2.5以下または2以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0134】
前記ポリアミド系フィルムのモジュラスが5GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、または6.0GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0135】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0136】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/分の速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔の最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0137】
前記ポリアミド系フィルムは、表面鉛筆硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記表面鉛筆硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0138】
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0139】
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0140】
実現例によるポリアミド系フィルムは、低いヘイズ、低い黄色度、高い透過度などの優れた光学的物性とともに、優れた耐スクラッチ性および/またはモジュラスを有するので、例えばフレキシブル/フォルダブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
【0141】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0142】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0143】
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3.5以下または3以下であり得る。
【0144】
また、前記ポリアミド系フィルムの前述のXRDパターン、並びにIRスペクトル上の特徴および物性は、前記ポリアミド系フィルムを構成する成分の化学的および物理的物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の工程条件が総合され現れる結果であり得る。
【0145】
例えば、ポリアミド系フィルムを構成する成分の組成と含有量、フィルム製造工程において重合条件および熱処理条件など、全てのものが総合され目的とするXRDおよびIRパターン上の特徴を実現し得る。
【0146】
一部の実現例において、前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物との使用量および重合条件などにより、前記ポリアミド系重合体の分子構造が変化し得る。この場合、前記第1水素結合グループと第2水素結合グループとの比が変化することがあり、これにより、前記第1IRピークの面積と前記第2IRピークの面積との比が調整され得る。
【0147】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0148】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、XRDグラフ上の2θ値が、10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。
【0149】
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は前述の通りである。
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0150】
前記ポリアミド系フィルムは、、XRD分析パターン上ピークの位置および半値幅が前述の特徴を有することにより、優れた光学特性および機械的特性を有し得る。
【0151】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間で最大値を有する第1IRピークと、波数2875cm-1cm-1~2825cm-1区間で最大値を有する第2IRピークとを含み、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。
【0152】
前記ポリアミド系フィルムは、IRスペクトルの波数3000cm-1~2800cm-1区間に位置するピークの面積比が前述の特徴を有することにより、優れた光学特性および機械的特性を有し得る。
【0153】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウが、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0154】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、XRDグラフ上の2θ値が10°以上~20°未満の区間で最大値を有する第1XRDピークを含み、前記第1XRDピークの半値幅は6°以下であり得る。
【0155】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、IRスペクトル上の波数2950cm-1~2900cm-1区間で最大値を有する第1IRピークと、波数2875cm-1cm-1~2825cm-1区間で最大値を有する第2IRピークとを含み、前記第1IRピークの面積は、前記第2IRピークの面積に対して1.4倍以下であり得る。
【0156】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0157】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の断面図を示すものである。
【0158】
具体的に、
図1には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0159】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0160】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0161】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0162】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0163】
また、前記表示部400と前記カバーウィンドウ300との間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0164】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実現例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0165】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0166】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、優れた耐スクラッチ性、透光率、透明性および/または低いヘイズを有するディスプレイ装置を提供し得るところ、過度の工程変更やコスト増加が不要であるため、生産コストを節減できるという利点もある。
【0167】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、優れた耐スクラッチ性および/またはモジュラスを有し得る。
【0168】
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、特定レベル以下の面内位相差および厚さ方向位相差を有することにより、光学的歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも減少させ得る。
【0169】
特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなるか、またはフレキシブル/フォルダブルディスプレイ用として柔軟性を有するカバーウィンドウの場合、優れた表面強度等の機械的物性が求められ、実現例によるポリアミド系フィルムは、優れた耐スクラッチ性、モジュラスおよび/または光学特性を有することにより、大面積またはフォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
【0170】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0171】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、有機溶媒上でポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングして、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0172】
図2を参照すると、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む。
【0173】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含む樹脂である。選択的に、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含んでも良い。
【0174】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0175】
一実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0176】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを混合および反応させて、ポリアミド(PA)溶液を調製する段階を含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体溶液である。
【0177】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記ジカルボニル化合物として、互いに異なる2種のジカルボニル化合物を用いて行われ得る。この場合、前記2種のジカルボニル化合物は、同時または順次混合および反応され得る。好ましくは、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応してプレポリマーが形成され、前記プレポリマーと第2ジカルボニル化合物とが反応して、前記ポリアミド系重合体が形成され得る。この場合、XRDパターンのピークが前述の位置および半値幅を有するか、またはIRパターンのうち特定区間のピークが前述の面積比を有する、ポリアミド系重合体およびポリアミド系フィルムを効果的に製造し得る。
【0178】
図3は、一部の実現例によるポリアミド系重合体溶液の調製段階を説明する概略的なフローチャートである。
図3を参照すると、前記ジカルボニル化合物は、少なくとも4段階(例えば、S120~S150)にわたって投入され得る。
【0179】
前記重合体溶液を調製する段階(S100)は、有機溶媒中にジアミン化合物を投入して溶解する段階(S110)、第1ジカルボニル化合物を投入し撹拌して反応させる段階(S120)、S120段階後、第2ジカルボニル化合物を投入し撹拌して、第1重合体溶液を調製する段階(S130)、第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物をさらに投入し撹拌して、第2重合体溶液を調製する段階(S140)、および第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物を2次でさらに投入し撹拌して、第3重合体溶液を調製する段階(S150)を含み得る。
【0180】
例えば、段階S110~S130にわたってポリアミド系重合体の概略的な分子構造および/または分子量等が実現され、段階S140およびS150により、ポリアミド系重合体溶液の粘度が調整され、XRDパターン上ピークの位置および半値幅および/またはIRスペクトルの波数3000cm-1~2800cm-1区間に位置するピークの面積比を細密に調整され得る。これにより、所望の光学特性および機械的特性を有するポリアミド系フィルムを形成し得る。
【0181】
一実現例において、前記重合体溶液の粘度は、常温基準で200000cps~350000cpsに調整され得る。この場合、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度および/または耐スクラッチ性を向上させ得る。
【0182】
一部の実現例において、第2重合体溶液を調製する段階(S140)と第3重合体溶液を調製する段階(S150)とにおいて、互いに異なるジカルボニル化合物が使用され得る。例えば、第2重合体溶液を調製する段階(S140)で第1ジカルボニル化合物が使用される場合、第3重合体溶液を調製する段階(S150)では第2ジカルボニル化合物が使用され得る。第2重合体溶液を調製する段階(S140)で第2ジカルボニル化合物が使用される場合、第3重合体溶液を調製する段階(S150)では第1ジカルボニル化合物が使用され得る。好ましくは、段階S120の反応物と第2ジカルボニル化合物とが反応した後、段階S130で第1ジカルボニル化合物が使用され、ポリアミド系重合体のXRDおよび/またはIRパターン特性を前述の範囲に調整し得る。
【0183】
前記第1重合体溶液を調製する段階、第2重合体溶液を調製する段階、および第3重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度は異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度が高くあり、前記第2重合体溶液よりも前記第3重合体溶液の粘度が高くあり得る。
【0184】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度、および前記第3重合体溶液を調製する際の撹拌速度は互いに異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液および/または前記第3重合体溶液を調製する際の撹拌速度よりも速くあり得る。
【0185】
前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位を含む。
【0186】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位とを含んでも良い。
【0187】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、-10℃~25℃の温度条件にて行われ得る。例えば、前記溶媒、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-10℃~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、XRDパターン上の前記ピークの位置および半値幅が前述の範囲から外れ得る。
【0188】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。例えば、前記溶媒、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、IRスペクトルの波数3000cm-1~2800cm-1区間に位置するピークの面積比が、前述の範囲から外れ得る。したがって、ポリアミド系フィルムのモジュラス、黄色度などの特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が、所定の範囲に未達となるため、製膜されたフィルムの厚さのばらつきが増加し得る。好ましくは、前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、-20℃~20℃、-20℃~15℃、-20℃~10℃、-15℃~20℃、-15℃~15℃、-15℃~10℃、-10℃~20℃、-10℃~15℃、-10℃~10℃、-8℃~20℃、-8℃~15℃、-8℃~10℃、-5℃~20℃、-5℃~15℃、または-5℃~10℃の温度条件にて行われ得る。
【0189】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0190】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド系フィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学的物性を有し得る。
【0191】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0192】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0193】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で所望の光学的物性および機械的物性を実現し得る。
【0194】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0195】
一部の実現例において、前記重合体溶液を調製するために使用される前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は、10:90~90:10であり得る。好ましくは、25:75~80:20、40:60~80:20、または50:50~75:25であり得る。前記モル比は、例えば、第1ジカルボニル化合物と第2ジカルボニル化合物とが4段階以上で分割投入される場合、各段階で投入される第1および第2ジカルボニル化合物の総モル数を基準に決定され得る。
【0196】
一部の実現例において、前記重合体溶液を調製するために使用される前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は、10:90~79:21であり得る。好ましくは、30:70~79:21、40:60~79:21、または50:50~75:25であり得る。前記モル比は、例えば、第1ジカルボニル化合物と第2ジカルボニル化合物とが4段階以上で分割投入される場合、各段階で投入される第1および第2ジカルボニル化合物の総モル数を基準に決定され得る。
【0197】
一部の実現例において、第2重合体溶液を調製する段階(S140)で投入される第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物の含有量は、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に0.5モル%~15モル%であり得る。この場合、ポリアミド系重合体のXRDパターン上ピークの位置および半値幅および/またはIRパターン上ピークの面積比を所望の範囲に細密に調整し得る。好ましくは、第2重合体溶液を調製する段階(S140)におけるジカルボニル化合物の投入量は、0.5モル%~10モル%、0.5モル%~5モル%、1モル%~3モル%、または0.5モル%~3モル%であり得る。
【0198】
一部の実現例において、第3重合体溶液を調製する段階(S150)で投入される第1ジカルボニル化合物または第2ジカルボニル化合物の含有量は、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に0.5モル%~15モル%であり得る。この場合、ポリアミド系重合体のXRDパターン上ピークの位置および半値幅および/またはIRパターン上ピークの面積比を所望の範囲に細密に調整し得る。好ましくは、第3重合体溶液を調製する段階(S150)におけるジカルボニル化合物の投入量は、0.5モル%~10モル%、0.5モル%~5モル%、1モル%~3モル%、または0.5モル%~3モル%であり得る。
【0199】
前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とが、このような割合で使用されることにより、XRDパターンおよび/またははIRスペクトルが前述の特徴を有するポリアミド系重合体およびフィルムを製造することができ、ポリアミド系フィルムの耐スクラッチ性、モジュラス、ヘイズ、透光度、黄色度などを改善し得る。
【0200】
前記範囲から外れると、輝度やヘイズのような光学的物性および耐スクラッチ性、モジュラスなどの機械的特性が低下し得る。
【0201】
前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0202】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0203】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0204】
前記温度で保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0205】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気し得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの表面外観や機械的物性などに優れたものを実現し得る。
【0206】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容されている反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学的物性を実現し得る。
【0207】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件で前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの光学的物性および機械的物性などに優れたものを実現し得る。
【0208】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0209】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の段階で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されることではない。
【0210】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0211】
前述のように、有機溶媒上でポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製した後、前記溶液にフィラーを投入しても良い。
【0212】
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり、屈折率は1.55~1.75であり、含有量はポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に100ppm~3000ppmである。また、フィラーは、シリカまたは硫酸バリウムであり得る。
前記フィラーに関するより具体的な説明は前述の通りである。
【0213】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上に圧出、塗布および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
【0214】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0215】
前記重合体溶液の粘度は、前述のように、常温にて200000cps~350000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液が欠陥なく均一な厚さにキャスティングされることができ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミドフィルムを形成し得る。
【0216】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度で、5分~60分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を70℃~90℃の温度で、15分~40分間乾燥して、ゲルシートを製造し得る。
【0217】
前記乾燥中に、前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0218】
乾燥されたゲルシートは、熱処理されてポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
【0219】
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
前記熱硬化装置は、熱風により前記ゲルシートを熱処理し得る。
【0220】
熱風による熱処理を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できず、そうすると、表面張力が上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0221】
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
【0222】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。
【0223】
また、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
【0224】
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含み得る。
【0225】
このような条件で熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスを有するように硬化され、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正レベルの光沢度を同時に確保し得る。
【0226】
一実現例によると、前記熱処理は、IRヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
【0227】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法により製造されることによって、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。このような前記ポリアミド系フィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの輝度が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0228】
特に、前記ポリアミド系フィルムは、優れたモジュラス、耐スクラッチ性および/または光学特性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れるためフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0229】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0230】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0231】
(実施例1)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)567gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)64.0g(0.200mol)を徐々に投入しながら溶解した。
【0232】
次いで、第1ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を、重合に使用されるジカルボニル化合物の総モル数を基準に48.5モル%の分ゆっくり投入しながら1時間撹拌した。その後、第2ジカルボニル化合物としてイソフタロイルクロリド(IPC)を、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に48.5モル%の分ゆっくり投入しながら1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
【0233】
DMAc有機溶媒に10重量%のTPC溶液およびIPC溶液をそれぞれ調製した。
【0234】
前記第1重合体溶液に前記TPC溶液を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に1.5モル%の分TPCを反応させて第2重合体溶液を調製した。
【0235】
前記第2重合体溶液に前記IPC溶液を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に1.5モル%の分IPCを反応させて第3重合体溶液を調製した。このとき、第1、第2および第3重合体溶液の反応温度(重合時の温度)は約10℃に調整され、第3重合体溶液の粘度が約200000cpsに達した時点で反応を終了した。
【0236】
粘度は、重合体溶液(Varnish)の温度を10℃に維持しながら、東機産業社のBH-IIモデルの粘度計を用いて測定した。RPMは4に設定し、7番スピンドルを使用してターゲット粘度が実現するかを確認した。
【0237】
前記第3重合体溶液をガラス板に塗布し、乾燥した。乾燥したポリアミド重合体をガラス板から剥離した後、熱処理して、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得た。
【0238】
ジアミン化合物(TFMB)およびジカルボニル化合物(IPC、TPC)の含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジカルボニル化合物のモル数および投入順序を下記表1に記載した。
【0239】
ジカルボニル化合物の場合、下記表1に記載の順で(上から下方の順に)投入して撹拌する段階を行った。例えば、実施例1の場合、ジアミン化合物を有機溶媒中に投入して溶解する段階を行った後、TPC48.5モル%を投入して撹拌する段階、IPC48.5モル%を投入して撹拌させる段階、TPC1.5モル%を投入して撹拌する段階、IPC1.5モル%を投入して撹拌する段階を順次行ったことを意味する。
【0240】
(実施例2、3および比較例1~3)
下記表1に記載のように、各反応物の含有量、ジカルボニル化合物の投入順と投入量を変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
【0241】
【0242】
<評価例>
前記実施例および比較例で製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表2に示した。
【0243】
(評価例1:フィルムの厚さ測定)
日本のミツトヨ社のデジタルマイクロメータ547-401を用いて、ランダムな位置10箇所の厚さを測定し、平均値をもって厚さを測定した。
【0244】
(評価例2:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmで切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。モジュラスは、常温(約20℃~25℃)条件にて測定された。
【0245】
(評価例3:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7105、JIS K 7136およびJIS K 7161規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0246】
(評価例4:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65および10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0247】
(評価例5:XRD(X-ray diffraction crystallography)分析)
実施例および比較例のポリアミド系フィルムについて、XRD分析を行った。この際、リガク社のUltima IVを使用しており、分析条件は以下のように設定した。
-スキャンソース:Cu(40kV,30mA)
-スキャン範囲(2θ):5°~45°
-スキャンサイズ:0.02°
-スキャン速度:0.24°/秒
【0248】
図4は、実施例2のポリアミド系フィルムに対するXRD分析グラフ(diffractogram)である。
図4を参照すると、2θ値が約5°~35°の区間で2つのXRDピークが合算された合算XRDピーク10が観察された。
【0249】
合算XRDピーク10を第1XRDピーク11および第2XRDピーク12に分離しており、第1XRDピーク11は、最大値が2θ値10°以上~20°未満の区間(第1区間)に位置し、第2XRDピーク12は、最大値が2θ値20°~25°の区間(第2区間)に位置した。合算XRDピーク10は、ベースライン18を基準に第1XRDピーク11および第2XRDピーク12が正規分布(Gaussian distribution)の形態を有するように分離された。
【0250】
合算XRDピーク10の始点(14;2θ値が約5°の点)と終点(15;2θ値が約35°の点)を、指数関数(例えば、y=aex+b;aおよびbは、定数)の形態を有する任意の線で結び、前記合算XRDピークを除いた区間のXRDパターンと連結してベースライン18を設定した。
【0251】
第1XRDピーク11および第2XRDピーク12において、ベースライン18よりも強度値が大きい部分の半値幅(FWHM:Full With at Half Maximum)を、分析プログラムにより分析した。
【0252】
また、第1XRDピーク11の半値幅と第2XRDピークの半値幅12との和に対する第1XRDピーク11の半値幅の百分率を下記表2に示す。
【0253】
(評価例6:耐スクラッチ性評価)
KIPAE E&T社のPencil Hardness Testerと日本の三菱社のPressure-Proofed Hi-Density Lead Pencilを使用した。硬度Hの鉛筆をフィルムと接触角の約45°を成すように設置し、750gの荷重を加えながら、毎分300mmの速度で測定領域40mmに対して5回擦ってフィルム表面を評価した。フィルム表面にスクラッチが生じていない場合を「良好」とし、フィルム表面にスクラッチが生じた場合を「不良」と評価した。
【0254】
【0255】
前記表2から確認できるように、XRDグラフ上で前記第1XRDピークの半値幅が6°以下である実施例の場合、比較例に比べて優れたモジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度などの特性を有することを確認した。
【0256】
一方、XRDグラフ上で前記第1XRDピークの半値幅が6°超である比較例の場合、黄色度、モジュラス、透過度、ヘイズなどの特性が低下したことが確認された。
【0257】
具体的に、IPCがTPCより先にジアミン化合物と反応して形成された比較例1の場合、前記第1XRDピークの半値幅が6.2°と、ヘイズと黄色度が相対的に増加した。
【0258】
ジカルボニル化合物の総モル数中、TPCが95モル%と、相対的に過量で使用された比較例2の場合、前記第1XRDピークの半値幅が6.2°と示され、黄色度およびヘイズが著しく増加しており、透過度が減少した。
【0259】
また、ジカルボニル化合物の総モル数中、TPCが5モル%と、相対的に少量で使用された比較例3の場合、前記第1XRDピークの半値幅が6.1°と示され、モジュラスが減少し、黄色度が増加しており、特に耐スクラッチ性評価でスクラッチが発生した。
【0260】
(実施例4)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)567gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)64.0g(0.200mol)を徐々に投入しながら溶解した。
【0261】
次いで、第1ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を、重合に使用されるジカルボニル化合物の総モル数を基準に38.8モル%の分ゆっくり投入しながら1時間撹拌した。その後、第2ジカルボニル化合物としてイソフタロイルクロリド(IPC)を、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に58.2モル%の分ゆっくり投入しながら1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
【0262】
DMAc有機溶媒に10重量%のTPC溶液およびIPC溶液をそれぞれ調製した。
【0263】
前記第1重合体溶液に前記TPC溶液を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に1.2モル%の分TPCを反応させて、第2重合体溶液を調製した。
【0264】
前記第2重合体溶液に前記IPC溶液を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、ジカルボニル化合物の総モル数を基準に1.8モル%の分IPCを反応させて、第3重合体溶液を調製した。この際、第1、第2および第3重合体溶液の反応温度(重合時の温度)は約10℃に調整され、第3重合体溶液の粘度が約250000cpsに達した時点で反応を終了した。
【0265】
粘度は、重合体溶液の温度を10℃に維持しながら、東機産業社のBH-IIモデルの粘度計を用いて測定した。RPMは4に設定し、7番スピンドルを使用してターゲット粘度が実現するかを確認した。
【0266】
前記第3重合体溶液をガラス板に塗布し、100℃の熱風により30分間乾燥した。乾燥したポリアミド重合体をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定し、80℃~300℃の温度範囲で2℃/分の速度で昇温させ、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得た。
【0267】
ジアミン化合物(TFMB)およびジカルボニル化合物(IPC、TPC)の含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジカルボニル化合物のモル数および投入順序を表3に記載した。
【0268】
ジカルボニル化合物の場合、表3に記載の順で(上から下方の順に)投入して撹拌する段階を行った。例えば、実施例4の場合、ジアミン化合物を有機溶媒中に投入して溶解する段階を行った後、TPC38.8モル%を投入して撹拌する段階、IPC58.2モル%を投入して撹拌させる段階、TPC1.2モル%を投入して撹拌する段階、IPC1.8モル%を投入して撹拌する段階を順次行ったことを意味する。
【0269】
(実施例5~8および比較例4~6)
下記表3に記載のように、各反応物の含有量を変更したことを除いては、実施例4と同様の方法によりフィルムを製造した。
【0270】
(比較例7)
実施例4において、前記第1重合体溶液の調製の際に、TPCを総ジカルボニル化合物基準に70モル%投入し、IPCを30モル%投入して、第1重合体溶液を調製した。前記第2重合体溶液および前記第3重合体溶液を調製する段階を省略し、前記第1重合体溶液をガラス板に塗布、乾燥および熱処理して、ポリアミド系フィルムを製造した。
【0271】
(比較例8)
TPCを総ジカルボニル化合物基準に75モル%投入し、IPCを25モル%投入して、第1重合体溶液を調製したことを除いては、比較例7と同様の方法によりポリアミド系フィルムを製造した。
【0272】
前記実施例4~8および比較例4~6で製造されたフィルムについて、前述の物性を測定および評価し、さらに下記のFT-IR分析を行った。
【0273】
(評価例7:FT-IR(Fourier-Transform Infrared spectroscopy)分析)
実施例および比較例のポリアミド系フィルムについて、FT-IR分析を行った。この際、Thermo Fisher社のFT-IR分光計(Spectrometer)を使用しており、分析条件は以下のように設定した。
-検出器(detector):MIR TGA
-スキャン領域(scan range):4000cm-1~650cm-1
-解像度(resolution):4
-スキャン回数:16
【0274】
図5は、実施例および比較例のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
図6~
図8は、それぞれ実施例7、並びに比較例5および6のポリアミド系フィルムに対するFT-IR分析スペクトルである。
【0275】
図5~
図8のスペクトルは、4000cm
-1~650cm
-1波数に対するスペクトルにおいて、波数約3800cm
-1~2500cm
-1区間が拡大されたものである。
【0276】
図6~
図8のスペクトルが、波数約3800cm
-1~2500cm
-1区間で最も大きいIRピークである波数1415cm
-1IRピークの高さを基準に平準化され、
図5のスペクトルが得られた。
【0277】
図5~
図7を参照すると、波数約2960cm
-1~2895cm
-1区間で第1IRピークが観察され、波数2890cm
-11~2820cm
-1区間で第2IRピークが観察されており、第1IRピークの最高点は、波数約2924.43cm
-1に位置し、第2IRピークの最高点は、波数約2853.72cm
-1に位置した。
【0278】
第1IRピークおよび第2IRピークについて、ピークの始点(それぞれ2960cm-1および2890cm-1)と終点(それぞれ2895cm-1および2820cm-1)とを直線で結び、前記IRピークのベースラインを設定した。前記IRピークについて、前記ベースラインよりも強度値が大きい部分を積分して各IRピークの面積を計算した。
【0279】
そして、第2IRピークの面積に対する第1IRピークの面積の比(面積比)を算出して、下記表3に記載した。
【0280】
【0281】
前記表3を参照すると、前記面積比が1.4以下である実施例は、比較例に比べてモジュラス、光透過率、ヘイズ、および黄色度がともに改善したことが確認された。
【0282】
例えば、比較例は、重合に使用されたTPCとIPCとの比が5:95、80:20または95:5と、IRスペクトル上の第1IRピークの面積が、第2IRピークの面積に対して1.5倍以上であり、これにより、モジュラス、光透過率、ヘイズおよび/または黄色度が悪化した。
【0283】
また、比較例7および比較例8の場合、前記第1重合体溶液の粘度が25万cpsに著しく未達となっており、実質的に光学フィルムとして使用可能な等級のポリアミド系フィルムを製膜することが困難であった。これにより製造されたポリアミド系フィルムは、厚さが著しく不均一であり、前記ポリアミド系フィルム上の各領域においてモジュラス、光透過率、ヘイズ、黄色度などの特性ばらつきが増加したため、ディスプレイ装置のカバーウィンドウとしての適合性が著しく低下した。
【符号の説明】
【0284】
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層