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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ピッキングシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023518645
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016572
(87)【国際公開番号】W WO2022234752
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021078318
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 雅也
(72)【発明者】
【氏名】前田 健浩
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-34526(JP,A)
【文献】特開2015-150673(JP,A)
【文献】特開2015-44274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばら積みされたワークを撮像する撮像部を有し、前記撮像部から取得した撮像データからそれぞれのワークの姿勢を算出し、ピッキング対象のワークを選定して前記ワークに対して設定された第一領域と第二領域と第三領域のうち、前記第一領域における把持位置と角度の決定を行うワーク姿勢算出部、
記選定したワークの前記第二領域を把持して取り出すロボット、
チャックと、前記チャックを回転させる回転部を有し、前記チャックが掴んだ部材の姿勢を変更する姿勢変更装置、および
前記ロボットが把持したワークの前記第三領域を前記チャックに掴ませることで前記ロボットが把持したワークを前記姿勢変更装置に持ち替えさせ、前記チャックが掴んだワークを回転させてから前記決定された把持位置と角度に一致するように前記ロボットに前記第一領域を把持させる制御部
を備えたことを特徴とするピッキングシステム。
【請求項2】
前記ワーク姿勢算出部には、前記ワークの形状に関する3次元モデル情報があらかじめ入力されていることを特徴とする請求項1に記載のピッキングシステム。
【請求項3】
前記回転部の回転軸が、水平であることを特徴とする請求項1または2に記載のピッキングシステム。
【請求項4】
前記回転部の回転軸の傾きが、可変であることを特徴とする請求項1または2に記載のピッキングシステム。
【請求項5】
前記チャックに掴まれたワークを撮像する第二撮像部を有し、
前記ワーク姿勢算出部は、前記第二撮像部から取得した撮像データに基づき、前記回転させたワークの姿勢を再算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキングシステム。
【請求項6】
前記姿勢変更装置は、前記チャックとして、ロボットアームに接続されて位置と角度の制御が自在のロボットハンドを有し、前記ロボットが取り出したワークを受け取り、受け取ったワークの姿勢を変更させる姿勢変更用ロボットであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のピッキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ピッキングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多様化する市場のニーズに合わせ、変種変量生産に対応できる部品供給システムが求められている。そのひとつとしてパレット内、あるいはコンベア上にばら積みされたワークをビジョンセンサで位置を計測して、ロボットでワークを精度よくピッキングするピッキングシステムの開発が進められている。
【0003】
例えば、ワークのばら積み部上部と、ロボットの先端に取り付けられたビジョンセンサを用いて、ばら積みされたワークの姿勢と向きを検出し、取り出し可能なワークを認識して、ワークを取り出すピックアップ装置(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。あるいは、シートで形成した変形可能な載置面を有し、ワークの向きを均一化させる仮置き装置(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―124450号公報(段落0016~0043、図1図6
【文献】特開2017―80846号公報(段落0016~0057、図1図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークの姿勢と向きを検出するだけでは、把持できるワークを選択することはできても、把持できない姿勢のワークを取り出すことは困難である。また、載置面の形状を変形させる場合、所望な方向に向きが変わるとは限らず、ワークの姿勢を適正な状態に変更できないときに、何度も変形を繰り返す必要があり、予測できない処理時間がかかる上に確実性に問題があった。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、確実にワークを適正な姿勢で把持できるピッキングシステムを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示されるピッキングシステムは、ばら積みされたワークを撮像する撮像部を有し、前記撮像部から取得した撮像データからそれぞれのワークの姿勢を算出し、ピッキング対象のワークを選定して前記ワークに対して設定された第一領域と第二領域と第三領域のうち、前記第一領域における把持位置と角度の決定を行うワーク姿勢算出部、記選定したワークの前記第二領域を把持して取り出すロボット、チャックと、前記チャックを回転させる回転部を有し、前記チャックが掴んだ部材の姿勢を変更する姿勢変更装置、および前記ロボットが把持したワークの前記第三領域を前記チャックに掴ませることで前記ロボットが把持したワークを前記姿勢変更装置に持ち替えさせ、前記チャックが掴んだワークを回転させてから前記決定された把持位置と角度に一致するように前記ロボットに前記第一領域を把持させる制御部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示されるピッキングシステムによれば、姿勢が不均一な状態で供給されたワークを所望の角度に変更して持ち替えるように構成したので、確実にワークを適正な姿勢で把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図2図2A図2Bは、実施の形態1にかかるピッキングシステムのロボットアーム先端に装着するそれぞれ形状の異なる把持爪の構成を説明するための側面図である。
図3図3A図3Cは、実施の形態1にかかるピッキングシステムのピッキング対象である、それぞれ形状の異なるワークの構成を説明するための側面図である。
図4図4A、および図4B図4Cは、実施の形態1にかかるピッキングシステムにおいて棒状のワークに対して想定した把持姿勢、および想定外の姿勢で積まれたワークの状態と想定外の姿勢でワークを把持した状態をそれぞれ説明するための側面図である。
図5図5A図5B図5C、および図5Dは、実施の形態1にかかるピッキングシステムにおいて段付き形状のワークに対して想定した把持姿勢、第一の想定外の姿勢で積まれたワークの状態と第一の想定外の姿勢でワークを把持した状態、および第二の想定外の姿勢で積まれたワークに対するロボットハンドの状態をそれぞれ説明するための側面図である。
図6図6A図6B、および図6Cは、実施の形態1にかかるピッキングシステムにおいてL字状のワークに対して想定した把持姿勢、想定した姿勢で積まれたワークの状態、および想定外の姿勢で積まれたワークの状態をそれぞれ示す側面図である。
図7図7A図7Bは、それぞれ実施の形態1にかかるピッキングシステムでのピッキング対象のワークのうち、2種類のワークについて、それぞれワーク載置装置にバラ積みされた状態を説明するための模式的な側面図である。
図8図8A図8Fは、それぞれワーク載置装置に想定姿勢ではないワークが載置された場合の一般的な対処方法を説明するための模式的な図である。
図9】実施の形態1にかかるピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
図10図10A図10Dは、それぞれ実施の形態1にかかるピッキングシステムにおいて、想定外の姿勢で把持したワークの想定した姿勢への変更動作における段階ごとのロボットアームと姿勢変更装置の動きを示す斜視図である。
図11図11A図11Bは、それぞれ実施の形態1にかかるピッキングシステム、および第三変形例にかかるピッキングシステムにおいて、ワークの姿勢を変更するためのロボットアームと姿勢変更装置の動きを説明するための模式的な側面図である。
図12図12A図12Cは、実施の形態1にかかるピッキングシステムのピッキング対象である、それぞれ形状の異なるワークに対する把持位置を決定するために設定した領域を説明するための側面図である。
図13】実施の形態1の第一変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図14】実施の形態1の第二変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図15】実施の形態1の第三変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図16】実施の形態1にかかるピッキングシステムの演算処理を実行する部分の構成例を示すブロック図である。
図17】実施の形態2にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図18】実施の形態2にかかるピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
図19】実施の形態3にかかるピッキングシステムの構成を説明するための模式図である。
図20】実施の形態3にかかるピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1図12は、実施の形態1にかかるピッキングシステムの構成、および動作について説明するためのものであり、図1はピッキングシステムの全体構成を説明するための模式図、図2A図2Bは、ワークの形状に合わせて取り換え、ロボットアーム先端に装着する、それぞれ形状の異なる把持爪の構成を説明するための側面図、図3A図3B図3Cは、それぞれ棒状、段付き形状、L字形状と形状の異なるピッキング対象であるワークの構成を説明するための側面図である。
【0011】
図4A、および図4B図4Cは、図3Aに対応する棒状のワークに対して想定した縦向きに把持する把持姿勢、および想定外の横倒しの姿勢で積まれたワークの状態と横倒しの姿勢のままでワークを把持した状態をそれぞれ説明するための側面図である。そして、図5A図5B図5C、および図5Dは、図3Bに対応する段付き形状のワークに対して想定した頭部を把持する把持姿勢、頭部が下側にある第一の想定外の姿勢で積まれたワークの状態と頭部が下側にある姿勢でワークを把持した状態、および横倒しになっている第二の想定外の姿勢で積まれたワークを把持するためのロボットハンドの状態をそれぞれ説明するための側面図である。
【0012】
また、図6A図6B、および図6Cは、図3Cに対応するL字形状のワークに対して想定した短手側を把持する把持姿勢、短手が上方を向いた想定された姿勢で積まれたワークの状態、および短手が下方を向いた想定外の姿勢で積まれたワークの状態をそれぞれロボットハンドとともに示す模式的な側面図である。
【0013】
そして、図7A図7Bは、ピッキング対象のワークのうち、図3Bに対応する段付き形状のワークと図3Cに対応するL字形状のワーク、それぞれがワーク載置装置にばら積みされた状態を説明するためのロボットハンドとともに示す模式的な側面図である。さらに、図8A図8Fは、それぞれ図3Cに示す形状のワークが想定姿勢ではない姿勢で載置された際の一般的な対応を説明するための模式的な図であり、図8A図8Bはある姿勢のワークの状態を示す側面図と斜視図である。図8C図8Dはある姿勢のワークをその姿勢の状態で取り出すときの状態を示す側面図と斜視図、図8E図8Fそれぞれは、その姿勢を変更した状態を示す斜視図である。
【0014】
そして、図9は、ピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートであり、図10A図10Dは、想定外の姿勢で把持したワークを想定した姿勢へ変更する姿勢変更動作における4つの段階それぞれのロボットアームと姿勢変更装置の動きとして位置と姿勢の動きを示す斜視図である。また、図11Aは、図10A図10Dで説明するロボットアームと姿勢変更装置の位置と姿勢の動きを説明するための模式的な側面図であり、図11Bは、第三変形例にかかるピッキングシステムにおいて図11Aに対応するロボットアームと姿勢変更装置の位置と姿勢の動きを説明するための模式的な側面図である。
【0015】
そして、図12A図12Cは、それぞれ図3A図3Cに対応する形状の異なるワークに対して、把持位置を決定するために設定した領域を説明するための側面図である。以下、実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の図中で同一、または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
本願のピッキングシステムは、ばら積みされたワークを製品への組み込みのために、ロボットによりピッキングするものである。そのため、図1に示すように、ピッキングシステム1は、複数のワーク90が配置されたパレットなどのワーク載置装置6からひとつのワーク90を選択して取り出すロボット2と、把持したワーク90の姿勢を変える姿勢変更装置3を備えている。さらに、任意の領域のワーク90の3次元画像を取得できる撮像部41を有し、ワーク90の撮像データに基づいてワーク90を個々に識別し、識別したワーク90の姿勢を算出するワーク姿勢算出部4を備えている。
【0017】
ロボット2は、ひとつのロボットアーム21のみを描画しているが、5自由度の水平多関節ロボット、6自由度の垂直多関節ロボット、あるいは協働ロボットであり、複数のロボットアーム21、複数の関節部、ベース等が設けられている。各ロボットアーム21の先端には、ワーク90を把持するためのロボットハンド22を取り付けるためのフランジ21fが設けられている。そして、ワーク姿勢算出部4からのワーク90の姿勢を示す情報に基づいて、各部位の動作を制御するロボット制御部23が設けられている。
【0018】
ロボットハンド22は、ロボットアーム21のフランジ21fに接続され、ワーク90のピッキングなどの作業を行うためのツールとして用いられる。ロボットハンド22の位置、および動作はロボット制御部23により制御される。ロボットハンド22はロボット制御部23の制御指令に基づき、ワーク90を把持する。ロボットハンド22の先端には、図2A図2Bに示すように、ワーク90の形状に応じた把持爪22cが着脱可能に装着される。
【0019】
把持爪22cの形状は、ばら積み状態から取り出すワーク90の形状に合わせた専用の形状、あるいは複数種類のワーク90に対応できるものなど、自由に設計を実施することが可能である。なお、図1では直方体のワーク90を想定して描画しているが、図2Aは把持面が円形となっているワーク90を把持するのに用いる把持爪22cを、図2Bはワーク90の平面部を把持するのに用いる把持爪22cをそれぞれ示している。
【0020】
撮像部41は、ワーク載置装置6内に配置された複数のワーク90を3次元的に計測し、ワーク載置装置6内のワーク90の位置と姿勢に関するデータ(撮像データ)を取得する。撮像部41は、例えば3次元ビジョンセンサであり、任意の領域のワーク90に対して3次元画像を取得できる機器で構成する。ワーク姿勢算出部4は、撮像部41で取得された3次元画像のデータに対して画像処理を施し、ワーク位置計測データとしてロボット制御部23へ情報を送信する。ワーク姿勢算出部4は、撮像部41の近傍および内部に配置されていてもよく、また、ロボット制御部23の筐体内、あるいは内部に配置されていてもよい。
【0021】
撮像部41およびワーク姿勢算出部4は、ワーク90の3次元モデル情報を用いて、把持位置を特定する機能を有するものである必要がある。すなわち、ピッキングを行いたいワーク90の形状を3次元モデルとしてワーク姿勢算出部4に事前に入力しておき、撮像部41で撮影した画像からばら積み状態から取り出すことができるワークを精度よく識別し把持位置を特定できる機能を有するものであればよい。
【0022】
ワーク載置装置6は、複数のワーク90が積載されるものである。ワーク90の積載状態は、ワーク載置装置6の内部で整列された状態とばら積みされた状態に大きく分類される。なお、本明細書では「ばら積み」を、複数のワーク90が位置決めされることなく、あるいはワーク90が他の少なくとも1つのワーク90、またはワーク載置装置6の内壁6wと接触している状態のことを示す。ワーク載置装置6は、例えばワーク投入用のパレット、あるいは通い箱である。
【0023】
本願のピッキングシステム1の特徴は、姿勢変更装置3を用いたワーク90の姿勢を正しく矯正することになるが、特徴的な説明の前に、ばら積みを対象としたピッキングシステムにおける課題について説明する。
【0024】
ピッキングシステム1において、ピッキング対象のワーク90としては様々な形状のものが想定される。例えば、平型ブラケット、プレート材等であれば、図3Aに示すような直方体、棒状等のワーク90として分類される。また、ねじ、六角穴付のボルト等であれば、図3Bに示すような段付き部90sを有するワーク90として分類される。さらに、曲げ部を有する板金部品、曲げ加工を施した線材、L字ブラケット等であれば、図3Cに示すような曲げ部90bを有するL字形状のワーク90として分類される。
【0025】
このようなワーク90がばら積みされた状態である場合、ピッキング対象となるワーク90の姿勢、あるいは他のワーク90との重なり具合は多種多様である。そして、ワーク90の姿勢と位置によっては、ロボットハンド22とワーク載置装置6の内壁6w、床面6f、あるいは他のワーク90との干渉によりピッキング対象のワーク90を所望の位置と向きで取り出すことができない場合がある。
【0026】
例えば、図3Aで説明した直方体形状、棒状のワーク90を図4Aのような姿勢(想定姿勢)で取り出したい場合を想定する。ワーク90が図4Bに示すように、長手方向が水平でワーク載置装置6の床面6fに接しているような想定外の姿勢の場合、ロボットハンド22がワーク載置装置6と接触することになる。その結果、想定姿勢で取り出すことができず、図4Cのような想定外の姿勢でしかワーク90を取り出すことができない。
【0027】
また、図3Bで説明した段付き部90sを有するワーク90を図5Aのような頭部90tを上方に向けた姿勢(想定姿勢)で頭部90tを把持して取り出したい場合を想定する。ワーク90の姿勢が図5Bに示すように頭部90tを下方に向けた第一の想定外の場合、図5Cに示すような想定外の姿勢でしか取り出すことができない。あるいは、図5Dに示すように、ワーク90が床面6fに対して横たわった姿勢で置かれている場合、ロボットハンド22がワーク90を取り出す際に床面6f、あるいは内壁6wと接触する可能性があり、図5Aのような想定姿勢でワーク90を取り出すことはできない。
【0028】
また、図3Cで説明した曲げ部90bを有するL字形状のワーク90を図6Aのような短手90gの先端を上方に向けた姿勢(想定姿勢)で短手90gの先端部を把持して取り出したい場合を想定する。ワーク90の姿勢が図6Bに示すように短手90gの先端を上方に向けた想定姿勢の場合は、ワーク90を所望の位置で把持し取り出すことが可能である。しかし、図6Cのように短手90gを床面6fに向けた姿勢で置かれている場合、ロボットハンド22がワーク90を取り出す際に床面6f、あるいは内壁6wと接触する可能性があり、図6Aのような想定姿勢でワーク90を取り出すことはできない。
【0029】
また、ピッキング対象のワーク90が上述した想定姿勢をとっていた場合でも、図1、および図7A図7Bのようにばら積みされた場合には、さらに取り出しが困難になる。取り出し可能な想定姿勢のワーク90であっても、周囲のワーク90、床面6f、内壁6wとの位置関係によっては、ロボットハンド22が周囲の別のワーク90、床面6f、内壁6w等と干渉することがあり、その場合、所望の把持位置・姿勢にて取り出しができなくなる。
【0030】
このように、ピッキング対象のワーク90が所望の姿勢(想定姿勢)で整列している場合は、特段の調整なしでロボットによってワーク90を所望の姿勢で取り出すことができるため、取り出したワーク90を姿勢変更することなく、製品に投入することができる。一方、ばら積み状態のワーク90、あるいは所望の姿勢ではないワーク90に対しては、所望の姿勢でワーク90を取り出すことが困難になり、ワーク90を取り出した後、そのままの姿勢で製品へ投入することは困難になることが多い。そのため、ワーク90をロボット2の作業領域に投入する前に、作業者が手作業でワーク90をパレットに整列させる作業が発生し、製品製造のサイクルタイムが増加してしまう。
【0031】
このような課題の解決方法の一つとして、例えば図8A図8Bに示すような想定姿勢ではない状態で取り出したワーク90の1つを仮置き台60に載置し、姿勢が安定した後、再度ロボットの姿勢を変更した後でワーク90を取り出すという方法がある。図8A図8Fを用い、図3Cで示すL字形状のワークを、上記の方法で姿勢変更する様子について例示する。
【0032】
図3Cの形状のワーク90を、図6Aに示すような姿勢で取り出したい場合、図6Cのような姿勢でワーク90が載置されている場合は、ロボットハンド22または把持爪22cが仮置き台60と干渉してしまう。そのため、図8C図8Dのような姿勢でしかワーク90を取り出すことができない。
【0033】
そこで、図8C図8Dのような姿勢で取り出したワーク90をひとまず図8A図8Bのような状態で仮置き台60に載置する。その状態で、ワーク90の自重による倒れ、または仮置き台60が振動する機能を有する場合は、振動による倒れ、またはロボットハンド22をワーク90に接触させる等のロボットの動作による倒しにより、姿勢を図8Eのように変更させる。
【0034】
このようにして姿勢を変更させたワーク90を再度ロボットで取り出し、仮置き台60に仮置きして姿勢を変更するという動作を繰り返すことで、図8Fのような状態にワーク90の姿勢を変更することができる。図8Fで示す姿勢のワーク90は、図6Aのような姿勢で取り出すことが可能であり、ワーク90の姿勢変更を実施できたといえる。
【0035】
しかし、上述した方法は、ロボットでのワーク90のピッキングとプレイス作業を複数回繰り返し行うというものであり、ワークの姿勢変更に要するサイクルタイムが長くなってしまうというのが課題である。また、作業者が手作業でワーク90をパレットに整列させる場合は、ワークの持ち替えなく1度の動作で姿勢変更が完了するため、手作業に比べても非効率な作業であるといえる。
【0036】
さらに、仮置き台60に載置したワーク90を、ワーク90の自重または仮置き台60の振動で倒す場合、倒れる方向が一意に定まるわけではない。そのため、ロボットで再把持を実施する前にワーク90の状態を撮像部で撮影し、取り出す位置を算出してからロボットで取り出し作業を実施する必要がある。つまり、ワーク90の姿勢算出にかかる時間を要すること、ワーク取り出しとは別の撮像部が必要になるということからコストの高い姿勢変更方法であるといえる。上記の理由から、仮置き台60にワーク90を仮置きして姿勢を変更する方法は、時間的、金銭的な観点から見て最適な手段とは言えないと考えられる。
【0037】
このような課題を解決するため、本願のピッキングシステム1では、想定外の姿勢で取り出したワーク90をロボット2から姿勢変更装置3に持ち替えさせ、所望の姿勢で把持できるように、ワーク90を回転させてから再度ロボット2に把持させるようにした。姿勢変更装置3は、図1に示すように、持ち替えチャック31とその先端に取り付けられる把持爪31c、および持ち替えチャック31を回転させる回転部32とを備え、ワーク姿勢算出部4の指令に応じて動作するように構成している。さらに、ワーク姿勢算出部4の情報に基づいてワーク90の姿勢変更前の姿勢と角度、および所望の姿勢を演算する図示しない演算部が備えられている。
【0038】
持ち替えチャック31は、ロボットハンド22が想定外の姿勢で把持したワーク90を受け取るとともに、受け取ったワーク90の姿勢を所望の姿勢に変更して、ロボットハンド22に受け渡すものである。回転部32は、その先端に取り付けた持ち替えチャック31がロボット2からワーク90を受け取ったときにワーク姿勢算出部4の情報を元に回転し、把持したワーク90の向きを所望の姿勢へ変更する機能を有している。
【0039】
回転部32は、例えばサーボモータであり、演算部の演算結果に基づき、モータの回転量を制御し、ワーク90の向き(角度)を変更する。ロボットハンド22は、ばら積みされた状態のワーク90をピッキングするため、所望の姿勢以外の姿勢でワーク90を取り出すことが多い。それに対し、本願のピッキングシステム1では、ロボットハンド22からワーク90を受け取った持ち替えチャック31の角度を変更することで、ワーク90の向きを変更し、ロボット2に受け渡すことで、所望の姿勢でワーク90をピッキングすることが可能になる。
【0040】
回転部32はロボット制御部23あるいはワーク姿勢算出部4からの指令を受け、ワーク90の回転量を制御でき、且つ回転を精度よくガイドできる機器を有する構造であればよく、ダイレクトドライブモータ等でもよい。さらには、回転部32による回転量を計測できるエンコーダを含む機器であればよい。
【0041】
上述したピッキングシステム1での動作について、図9のフローチャートと図11Aを参考に説明する。なお、以下の動作において、ロボット2と姿勢変更装置3を連携制御させる制御部としての機能をワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23が担うようにしてもよいが、別途システムとしての図示しない制御部を設けてもよい。はじめに、撮像部41においてワーク載置装置6にばら積みされたワーク90の撮像を行う(ステップS100)。そして、ワーク姿勢算出部4は、撮影された画像からワーク位置姿勢データを生成し、ピッキングの対象となるワーク90を選定して、把持位置を決定する(ステップS110)。
【0042】
つぎに、ロボット制御部23は、ロボットハンド22をワーク姿勢算出部4が決定したワーク90に接近させ、ロボットハンド22で対象ワーク90の指定された部分を把持して、ワーク載置装置6から取り出す(ステップS120)。ロボット2は図10Aに示すように、取り出したワーク90を姿勢変更装置3に向けて(向きDf)移動させる(ステップS130)。そして、持ち替えチャック31が把持爪31cを閉じてワーク90を把持すると、ロボット2はロボットハンド22の把持爪22cを開き、図10Bに示すように、把持したワーク90が姿勢変更装置3の持ち替えチャック31に持ち替えられる(ステップS200)。
【0043】
ここで、持ち替えられたワーク90の角度変更が必要か否かの判定を実施する(ステップS300)。角度変更要否の判定には、ワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23から出力された情報を使用する。角度変更が必要な場合(ステップS300で「Yes」)、図10Cに示すように、回転部32を回転方向Dr3に回転させて角度を変更(ステップS310)し、再び角度変更が必要か否かの判定(ステップS300)を実施する。
【0044】
角度変更が必要ない場合、あるいは角度変更の必要がなくなる角度になった場合(ステップS300で「No」)、把持位置変更が必要か否かの判定を実施する(ステップS400)。把持位置変更要否の判定にも、ワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23から出力された情報を使用する。把持位置変更が必要な場合(ステップS400で「Yes」)、ロボット2は軸の傾きDa2、および軸周りの回転方向Dr22に回転させて、把持爪22cを所望のワーク90の把持位置まで移動させて把持位置を変更する(ステップS410)。そして、再び把持位置変更が必要か否かの判定(ステップS400)を実施する。
【0045】
把持位置変更が必要ない場合、あるいは把持位置変更の必要がなくなる状態になった場合(ステップS400で「No」)、ロボットハンド22にてワーク90の把持を行う。ワーク90の把持位置の変更が不要の場合は、回転部32による回転量を加味し、もともとワーク90を把持していた位置を把持できるよう把持爪22cを移動させ、ワーク90を所望の位置と角度で把持する。
【0046】
この状態で、持ち替えチャック31が把持爪31cを開いて、ロボット2にワーク90が受け渡されると、図10Dに示すように、ロボットハンド22を姿勢変更装置3から遠ざかる向きDbに移動させ、把持したワーク90を姿勢変更装置3から取り出す。そして、ロボットハンド22が所望の位置で把持したワーク90を製品に投入する(ステップS510)ことで、対象のワーク90に対するピッキングが終了し、次の対象に向けてステップS100からの動作を繰り返す。
【0047】
なお、図9のフローチャートでは、所望の位置で把持できたワーク90に対しても、姿勢変更装置3への持ち替えを行う例を示したがこれに限ることはない。例えば、ワーク90の角度、把持位置の判定をステップS130の前に実施し、角度、把持位置ともに変更不要の場合は、持ち替えせずに、ステップS120から直接ステップS510へ移行するようにしてもよい。
【0048】
つぎに、姿勢変更装置3によるワーク90の把持位置変更方法について図12A図12Cを用いて説明する。把持位置変更にあたり、ワーク90を領域R1、領域R2、領域R3と3つの領域に分割し、ピッキングシステム1にてワーク90を把持する領域を決定する。ワーク90において、所望の把持位置はそれぞれ、領域R1であるとする。
【0049】
本願のピッキングシステム1にて、領域R1の位置でワーク90を把持して取り出したとき、図3A図3Bのように軸対のワーク90に対しては、姿勢変更装置3でワーク90の把持位置を変更する必要はない。そのため、残りの2領域のいずれかを持ち替えチャック31に把持させて、部品の角度を変更した後、再び元の位置を把持することで、ワーク90の角度を変更することができる。
【0050】
一方、ロボット2にて、領域R2と領域R3のいずれかの位置を把持してワーク90を取り出した場合、持ち替えチャック31で、領域R1以外の残りの1領域を把持させる。そして、ワーク90の角度を変更した後、ロボットで領域R1を把持することによりワーク90の把持位置を変更することができる。例えば、ワーク90の領域R2部分を把持してワーク載置装置6から取り出した場合、持ち替えチャック31にて領域R3部分を把持し、その後ロボットで領域R1部分を把持することで、所望の位置と角度でワーク90をピッキングすることが可能になる。
【0051】
また、領域R1の位置でワーク90を把持して取り出した場合でも、図3CのL字形状のように、方向性のあるワーク90に対して、図6Cの態勢で把持した場合は、姿勢変更装置3を用いて、把持する方向を変更する必要がある。この場合も、床面6fのような面に接したままではどうすることもできないが、持ち替えチャック31によってワーク90が面から浮いた状態で把持されているので、どの角度からでもロボットハンド22を近づけることができる。そのため、例えば、ロボットハンド22の軸が水平になるように、傾きDa2を調整して姿勢変更装置3にワーク90を受け渡し、回転部32を180°回転させた状態で受け取れば、所望の姿勢でワーク90をピッキングすることが可能になる。
【0052】
つまり、ワーク載置装置6内のワーク90のうち、これまでは所望の姿勢で、かつ、周囲の物体に対して干渉しない状態のワーク90のみがピッキング対象であった。それに対して、本願のピッキングシステム1では、姿勢変更装置3によって、姿勢がばらばらの状態で把持したワーク90を把持して回転させることで、方向と角度を制御して確実に姿勢を矯正できるので、対象範囲が広がることになる。つまり、回転という方向と量が明確な矯正をしてから持ち替えるようにしたので、ピッキング対象のワーク90を拡げて迅速に選定でき、かつ、確実に矯正するので作業効率も上昇する。
【0053】
<第一変形例>
第一変形例と後述する第二変形例では、撮像部の取り付けについて図1を用いて説明した例とは異なる例について説明する。図13は第一変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための図1に対応する模式図、図14は第二変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための図1に対応する模式図である。なお、撮像部以外の構成および撮像部に関する動作以外の動作については、図2図12Cを用いた説明と同様であり、同様部分の説明は省略する。
【0054】
実施の形態1の第一変形例にかかるピッキングシステム1は、図13に示すように、撮像部41をロボット2のロボットアーム21、あるいはロボットハンド22に装着したものである。この場合は、ロボット制御部23で、あらかじめワーク載置装置6上空にワーク載置装置6内のワーク90の撮像位置を教示しておき、ロボット2を移動させワーク90の3次元画像をロボット先端に取り付けた撮像部41により取得する。ワーク姿勢算出部4で撮像した3次元画像を処理し、ワーク位置計測データを生成してロボット制御部23へ送信する。
【0055】
撮像部41がロボット2の動きに応じて移動するため、ワーク90の位置を示す座標等の変換のための演算は必要になる。しかし、ロボットハンド22のワーク90への接近に応じて、最も近い位置でワーク90を撮像できるので、ロボットハンド22との位置関係をより正確に把握することが可能になる。
【0056】
<第二変形例>
実施の形態1の第二変形例にかかるピッキングシステム1は、図14に示すように、撮像部41A、撮像部41Bと複数の撮像部41を設け、ワーク載置装置6を多方向から撮像できるように構成したものである。撮像部41Aは第一変形例と同様にロボットハンド22に装着し、撮像部41Bは図1で説明したように、ワーク載置装置6の上方の空間内に固定して設置したものである。
【0057】
ワーク姿勢算出部4は、撮像部41A、撮像部41Bで撮影された画像それぞれに対して画像処理を施し、3次元のワーク位置計測データを算出する。算出したワーク位置計測データをロボット制御部23へ送信し、ロボット2を動作させる。これら撮像部41は、ともに、ワーク載置装置6の上方へ設置する、一方をワーク載置装置6の上方、もう一方をロボットアーム21の先端、等ワーク検出条件に合わせて設置することが可能である。
【0058】
なお、2次元ビジョンセンサを2台設置し、任意の領域のワーク90の2次元画像を2方向から取得できる構成でもよい。ただし、ピッキングを行いたいワーク90の形状モデルデータをワーク姿勢算出部4に事前に入力しておき、ワーク90の形状を算出できる機能を有している2次元ビジョンセンサである必要がある。また、算出したワーク90の形状モデルを利用し、撮像部41で撮影した画像から、ばら積み状態から取り出すことができるワーク90を精度よく識別し、把持位置を特定できる機能を有するものであればよい。
【0059】
<第三変形例>
第三変形例では、姿勢変更装置について図1を用いて説明した例とは回転軸の方向が異なる例について説明する。図15は第三変形例にかかるピッキングシステムの構成を説明するための図1に対応する模式図である。なお、姿勢変更装置の回転軸の方向以外についての構成および動作については、図2図12C、または図13図14を用いた説明と同様であり、同様部分の説明は省略する。
【0060】
実施の形態1の第三変形例にかかるピッキングシステム1は、図15に示すように、姿勢変更装置3の回転部32はブラケット33に取り付けられ、回転軸が床面と平行になるように設置したものである。この場合の姿勢変更装置3とロボットアーム21、ロボットハンド22の動きは図11Bのようになる。
【0061】
なお、回転部32の回転軸は図1に示す鉛直、または図15に示す水平のいずれかに固定する必要はなく、例えば、ワーク90の種類、姿勢に応じて傾きを適宜変更できるようにしてもよい。その場合も、ワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23から出力された情報を使用し、回転方向Dr3の制御と連携して制御されることになる。さらには、姿勢変更装置3をロボット2の他のアームで構成するようにしてもよい。
【0062】
なお、本願のピッキングシステム1において、マイコンを用いたソフトウェアで演算処理の実行部分、あるいは制御部を構成する場合、図16に示すようにプロセッサ801と記憶装置802を備えたひとつのマイコン800によってハードウエアを構成することも考えられる。記憶装置802は、図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ801は、記憶装置802から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ801にプログラムが入力される。また、プロセッサ801は、演算結果等のデータを記憶装置802の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0063】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、ワーク載置装置上でのワークの姿勢を示すデータに基づいて動作を制御する例について説明した。本実施の形態2においては、実施の形態1に対して、姿勢変更装置上でのワークの姿勢を示すデータも加えて動作を制御する例について説明する。
【0064】
図17図18は、実施の形態2にかかるピッキングシステムの構成、および動作について説明するためのものであり、図17はピッキングシステムの全体構成を説明するための模式図、図18はピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートである。なお、姿勢変更装置上でのワークの姿勢を示すデータに関する構成と動作以外については実施の形態1で説明したのと同様であり、同様部分の説明を省略するとともに、実施の形態1で用いた図1図9以外の図を援用する。
【0065】
実施の形態2におけるピッキングシステム1は、図17に示すように、持ち替えチャック31の上方あるいは側面に配置した第二撮像部42を設け、持ち替えチャックで把持したワーク90の姿勢と向きを示すデータを取得できるようにした。第二撮像部42は撮像部41と同様に、3次元ビジョンセンサなどのワーク90の3次元画像を取得できる機器にて構成する必要があり、複数台の撮像部を有する構造でもよい。
【0066】
第二撮像部42の撮像により、姿勢を変更した後のワーク90の3次元画像を取得し、ワーク姿勢算出部4にて画像処理し、ワーク位置計測データを生成する。そのデータを元にロボット2の位置を補正し、持ち替えチャック31からロボットハンド22で部品を取り出す。これにより、実施の形態1の場合よりも、精度よく部品をピッキングすることが可能になる。
【0067】
実施の形態2にかかるピッキングシステム1の動作について、図18のフローチャートを参考に説明する。なお、ワーク載置装置6にばら積みされたワーク90の撮像を行うステップ(ステップS100)から把持したワーク90を持ち替えチャック31に受け渡すステップ(ステップS200)までは、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
ロボット2から持ち替えチャック31にワーク90が受け渡されると、持ち替えチャック31に把持されたワーク90の3次元画像を第二撮像部42で撮影し、ワーク姿勢算出部4で画像に対し画像処理を施す。ワーク姿勢算出部4の画像処理結果からワーク90の姿勢を示す位置計測データを算出する(ステップS210)。
【0069】
ワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23から出力された情報に加え、ステップS210で得られた姿勢を示すデータを用いて、受け渡されたワーク90の角度変更、把持位置変更の必要性の判断、および変更動作実施する(ステップS300~S410)。それ以降のステップ(ステップS500~)は実施の形態1と同様である。
【0070】
これにより、回転部32の回転量に関する情報に基づいてワーク90の姿勢を変更した場合に比べ、第二撮像部42より得たデータでワーク90の位置を検出するため、実施の形態1の場合よりも精度よくワーク90ピッキングを行うことが可能になる。ワーク90の把持位置変更方法は、実施の形態1の場合と同様である。
【0071】
第二撮像部42は持ち替えチャック31の上方のみならず、持ち替えチャック31を側面から撮影しワーク位置計測データを生成できるよう設置されていてもよい。また、実施の形態1における第三変形例のように、姿勢変更装置3にブラケット33が設置されていてもよい。
【0072】
実施の形態3.
上記実施の形態1および実施の形態2においては、ばら積み状態から取り出したワークを、持ち替えチャックと回転部を有する姿勢変更装置を用いて、想定とは異なる姿勢のワークの姿勢を変更するシステムおよび手法に関して説明した。実施の形態3においては、実施の形態1および実施の形態2で示した姿勢変更装置を姿勢変更用ロボットにて構成し、ワークの姿勢変更動作を制御する例について説明する。
【0073】
図19図20は、実施の形態3にかかるピッキングシステムの構成、および動作について説明するためのものであり、図19はピッキングシステムの全体構成を説明するための模式図、図20はピッキングシステムの動作を説明するためのフローチャートである。なお、ワークの姿勢変更に関する機器の構成と動作以外については、実施の形態1および実施の形態2で説明したものと同様であり、同様部分の説明を省略するとともに、実施の形態1で用いた図1図9以外の図、実施の形態2で用いた図17図18以外の図を援用する。
【0074】
実施の形態3にかかるピッキングシステム1では、実施の形態1、2で説明した姿勢変更装置3に代えて、図19に示すように、姿勢変更用ロボット7を備えるようにした。姿勢変更用ロボット7は、一つのロボットアーム71のみを描画しているが、ロボット2と同様の5自由度の水平多関節ロボット、6自由度の垂直多関節ロボット、あるいは協働ロボットであり、複数のロボットアーム71、複数の関節部、ベース等が設けられている。
【0075】
ロボットアーム71の最先端には、ワーク90を把持するロボットハンド72を取り付けるためのフランジ71fが設けられている。姿勢変更用ロボット7はロボット2のロボット制御部23に接続される。そして、ワーク姿勢算出部4からのワーク90の姿勢を示す情報に基づいて、ロボット制御部23の指令により姿勢変更用ロボット7のロボットハンド72は、位置と姿勢を制御される。
【0076】
なお、姿勢変更用ロボット7のロボット制御部としては、独立したロボット制御部を有し、ロボット2とは別に制御されるような構成であってもよい。ただし、独立したロボット制御部はワーク姿勢算出部4に接続されている構成である必要がある。
【0077】
ロボットハンド72は、ロボットアーム71のフランジ71fに接続され、ロボット2のロボットハンド22がピッキングしたワーク90を受け取り、受け取ったワーク90の姿勢を変更した後に再度ロボットハンド22に受け渡すためのツールとして用いられる。ロボットハンド72は、ロボット制御部23の指令に基づき、ロボット2から渡されたワーク90を把持する。ロボットハンド72の先端には、図2A図2Bに示す把持爪22cのように、ワーク90の形状に応じた把持爪が着脱可能に装着される。
【0078】
また、姿勢変更用ロボット7の上部に、持ち替え動作実施後のワーク90の姿勢を算出するための撮像データを取得する第二撮像部42を有しており、姿勢変更用ロボット7で把持したワーク90の姿勢と角度を示すデータを取得できるように構成している。これにより、持ち替え動作実施後に、再度ワーク90をロボット2へ返送し、持ち替え動作を実施する必要があるかの判断が可能になる他、持ち替え動作によるワーク90の姿勢変更の精度を向上させることが可能になる。第二撮像部42は3次元ビジョンセンサ等のワーク90の3次元画像を取得できる機器にて構成する必要があり、複数台の撮像部を有する構造でもよい。
【0079】
上述した構成を前提として、実施の形態3にかかるピッキングシステム1の動作について、図20のフローチャートを参考に説明する。なお、ワーク載置装置6にばら積みされたワーク90の撮像を行うステップ(ステップS100)から対象ワークを把持するステップ(ステップS120)までは、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
ロボット2は、把持して取り出した(ステップS120)ワーク90を、姿勢変更用ロボット7に受け渡す位置(持ち替え位置)まで移動させる(ステップS140)。持ち替え位置は、一意に定まらず、ステップS120において取り出したワーク90の形状と姿勢に応じ、ワーク90が周囲の物体と干渉せず、かつ持ち替え動作が適切に実施される位置となる。
【0081】
そして、ロボットハンド72の把持爪を開き、図10Bで説明したのと同様に、把持したワーク90が姿勢変更用ロボット7のロボットハンド72に持ち替えられる(ステップS250)
【0082】
ロボット2から姿勢変更用ロボット7へワーク90が受け渡されると、姿勢変更用ロボット7に付属のロボットハンド72で把持されたワーク90の3次元画像を第二撮像部42で撮影し、ワーク姿勢算出部4で画像に対し画像処理を施す。ワーク姿勢算出部4の画像処理結果から姿勢変更用ロボット7に持ち替えられたワーク90の姿勢を示す位置計測データを算出する(ステップS260)。
【0083】
ワーク姿勢算出部4、あるいはロボット制御部23から出力された情報に加え、ステップS260で得られた姿勢を示すデータを用い、姿勢変更用ロボット7による受け渡されたワーク90の姿勢変更が必要か否かを判定する(ステップS600)。姿勢変更用ロボット7による姿勢変更が必要な場合(ステップS600で「Yes」)、ロボットアーム71をロボット制御部23の制御指令により動作させて、ロボットハンド72とともにワーク90の姿勢変更を実施する(ステップS610)。そして、再びワーク90の姿勢変更が必要か否かの判定(ステップS600)を実施する。
【0084】
姿勢変更が必要ない、あるいは上述した姿勢変更用ロボット7による姿勢変更によって、姿勢変更が必要ない状態になった場合(ステップS600で「No」)、次の判定ステップ(ステップS700)へ移行する。ステップS700では。製品へ投入可能な姿勢(想定姿勢)にワーク姿勢を変更できたか否かについて、第二撮像部42の撮像結果およびロボット制御部23による制御指令から判定を実施する。
【0085】
製品へ投入可能な姿勢(想定姿勢)になっていないと判定された場合(ステップS700でNo)、別のロボット(現在説明中のフローにおいては、ロボット2)へのワーク90の持ち替えを行う(ステップS710)。そして、ステップS600にて姿勢変更の要否を判定した上で、必要ならば再度ワーク90の姿勢変更動作を実施する。
【0086】
このようにステップS600からステップS710を繰り返し、ロボット2と姿勢変更用ロボット7間でワーク90の受け渡しを実施し、ワーク90を所望の姿勢へ変更する。ワーク90の姿勢変更が完了(ステップS700で「Yes」)となった後の動作(ステップS510)に関しては、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0087】
上記の通り、実施の形態3にかかるピッキングシステム1では、ロボット2と姿勢変更用ロボット7との間でワーク90を複数回受け渡すことにより、より精度よくワークの持ち替え動作を実施することが可能である。また、持ち替え動作を姿勢変更用ロボット7にて実施することにより、ワーク90の持ち替え位置を動作範囲内で任意に設定することが可能である。
【0088】
実施の形態1、実施の形態2にかかる姿勢変更装置3においては、持ち替えチャック31が固定されている。そのため、ワーク90の形状、あるいはサイズが大幅に変更された場合に周囲の物体とワーク90が干渉してしまう可能性があり、ワーク90が多品種となる生産現場への導入が難しくなる場合がある。一方で、実施の形態3にかかるピッキングシステム1はワーク90の形状、あるいはサイズが変わった場合の上記の課題を解決することが可能である。
【0089】
また、実施の形態3にかかるピッキングシステム1では、ロボット2と姿勢変更用ロボット7のいずれでも製品へワーク投入(ステップS510)することが可能である。すなわち、図20のフローチャートにおいて、開始からステップS600で「Yes」、ステップS700で「No」と一度も判定されなかった場合であり、この場合は姿勢変更用ロボット7にて製品へのワーク投入(ステップS510)を実施することができる。
【0090】
一方、実施の形態1、実施の形態2にかかるピッキングシステム1では、姿勢変更装置3はピッキングシステム1内の1点に固定されており、ステップS510の製品へのワーク投入作業を実施することができない。この点で、実施の形態3ではワーク90の持ち替え回数を削減することができる可能性があり、ピッキングに要するサイクルタイムを削減する効果があるといえる。
【0091】
また、図20のフローチャートでは、所望の位置で把持できたワーク90に対しても、姿勢変更用ロボット7への持ち替えを行う例を示したがこれに限ることはない。例えば、ワーク90の角度、姿勢の判定をステップS140の前に実施し、角度・姿勢ともに変更不要の場合は、ステップS120から直接ステップS510へ移行するようにしてもよい。
【0092】
なお、本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または省略する場合が含まれるものとする。
【0093】
例えば、上述した制御においては、機能および作用が変更されない範囲において、適宜ステップの順序を変更することができる。また、上記の制御メカニズムは適宜組み合わせることができる。
【0094】
以上のように、本願のピッキングシステム1によれば、ばら積みされたワーク90を撮像する撮像部41を有し、撮像部41から取得した撮像データからそれぞれのワーク90の姿勢を算出し、ピッキング対象のワーク90を選定して、把持位置と角度の決定を行うワーク姿勢算出部4、ワーク姿勢算出部4の決定に基づいて、選定したワーク90を把持して取り出すロボット2、チャック(持ち替えチャック31、またはロボットハンド72)と、チャック(持ち替えチャック31、またはロボットハンド72)を回転させる回転部32(またはロボットアーム71)を有し、チャック(持ち替えチャック31、またはロボットハンド72)が掴んだ部材の姿勢を変更する姿勢変更装置3(または姿勢変更用ロボット7)、および決定された把持位置と角度が、(ピッキングとして)設定された把持位置と角度から外れている場合、ロボット2が把持したワーク90を姿勢変更装置3(または姿勢変更用ロボット7)に持ち替えさせ、ワーク90を回転させてから設定された把持位置と角度に一致するようにロボット2に再度把持させる制御部(例えば、ロボット制御部23、ワーク姿勢算出部4、回転部32、あるいはマイコン800)を備えるように構成した。そのため、姿勢が不均一な状態で供給されたワーク90を所望の角度に変更して持ち替えるので、確実にワーク90を適正な姿勢で把持し製品に投入することができる。
【0095】
とくに、回転部32の回転軸が、水平である場合、ワーク90の天地方向を容易に矯正できる。
【0096】
あるいは、回転部32の回転軸の傾きが、可変であるならば、どのような姿勢に対しても容易に矯正できる。また、取り出しの対象とするワーク90が長尺物で、回転軸が水平となるため、床面6f等との干渉で、持ち替え動作が実施できない場合でも、回転軸の傾きが可変であるならば姿勢を変更・強制することが可能になる。
【0097】
姿勢変更装置3に把持されたワークを撮像する第二撮像部42を有し、ワーク姿勢算出部4は、第二撮像部42から取得した撮像データに基づき、回転させたワーク90の姿勢を再算出するように構成すれば、ワーク90の姿勢をより正確に矯正することができる。
【0098】
上述した姿勢変更装置は、チャックとして、ロボットアーム71に接続されて位置と角度の制御が自在のロボットハンド72を有し、ロボット2が取り出したワーク90を受け取り、受け取ったワークの姿勢を変更させる姿勢変更用ロボット7であるように構成すれば、ワーク90の姿勢をより正確に矯正することができ、また、ワーク90の持ち替え回数を削減し、持ち替え動作に要する作業時間を削減することができる場合がある。
【符号の説明】
【0099】
1:ピッキングシステム、 2:ロボット、 21:ロボットアーム、 22:ロボットハンド、 22c:把持爪、 23:ロボット制御部(制御部)、 3:姿勢変更装置、 31:持ち替えチャック、 31c:把持爪、 32:回転部(制御部)、 33:ブラケット、 4:ワーク姿勢算出部(制御部)、 41:撮像部、 42:第二撮像部、 6:ワーク載置装置、 7:姿勢変更用ロボット(姿勢変更装置)、 71:ロボットアーム(回転部)、 72:ロボットハンド(チャック)、 90:ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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