(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】DNAコード化化合物ライブラリー及び化合物のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/04 20060101AFI20241122BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241122BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20241122BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20241122BHJP
【FI】
C07H21/04 B
C12Q1/6876 Z
C40B40/06
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2023532256
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2021132846
(87)【国際公開番号】W WO2022111536
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202011353377.7
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519448016
【氏名又は名称】成都先導薬物開発股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HITGEN LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 6, No.8, Huigu 1st East Road, Tianfu International Bio-Town, Shuangliu District Chengdu, Sichuan 610200 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100232862
【氏名又は名称】王 雪
(72)【発明者】
【氏名】李進
(72)【発明者】
【氏名】劉観賽
(72)【発明者】
【氏名】羅華東
(72)【発明者】
【氏名】陳柳
(72)【発明者】
【氏名】朱俊揚
(72)【発明者】
【氏名】馬慧勇
(72)【発明者】
【氏名】宋超
(72)【発明者】
【氏名】万金橋
【審査官】齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524662(JP,A)
【文献】CLARK, M. A. et al,Design, synthesis and selection of DNA-encoded small-molecule libraries,NATURE CHEMICAL BIOLOGY,2009年,Vol.5, Num.9,pp.647-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C40B 50/00-50/18
C12Q 1/00- 1/70
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式IIで表される構造を有することを特徴とする、DNAコード化化合物。
【化1】
式II
(式中、Z
1は、その3’末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その5’末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであるか、又はZ
1は、その5’末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その3’末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであり、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して
【化2】
から選択され、ここで、nは1~10の整数であり、
Xは
、窒素原子、
【化3】
から選択され、ここで、qは1~10の整数であり、
Lは、-S
1-S
2-S
3-の構造を有し、
S
1及びS
3は、それぞれ独立して
【化4】
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在せず、ここで、mは1~20の整数であり、
S
2は、
【化5】
の構造を有し、
Mは、生物学的標的と共にスクリーニングを行うために使用される、DNAコード化化合物ライブラリーにおける小分子部分である。)
【請求項2】
Z
1とZ
2は、相補又は部分的に相補して二本鎖を形成し、Z
1及びZ
2の長さは、それぞれ10個以上の塩基であり、かつ10個以上の塩基対相補領域を有することを特徴とする、請求項1に記載のDNAコード化化合物。
【請求項3】
Z
1及びZ
2は、いずれもPCRプライマー配列を含むことを特徴とする、請求項2に記載のDNAコード化化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のDNAコード化化合物からなることを特徴とする、DNAコード化化合物ライブラリー。
【請求項5】
前記DNAコード化化合物ライブラリーは、少なくとも10
2種の異なるDNAコード化化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載のDNAコード化化合物ライブラリー。
【請求項6】
下記の式IIIで表される構造を有することを特徴とする、DNAコード化化合物ライブラリーを合成するための開始断片化合物。
【化6】
式III
(式中、
Z
1は、その3’末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その5’末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであるか、又はZ
1は、その5’末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その3’末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであり、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して
【化7】
から選択され、ここで、nは1~10の整数であり、
Xは
、窒素原子、
【化8】
から選択され、ここで、qは1~10の整数であり、
Lは、-S
1-S
2-S
3-の構造を有し、
S
1及びS
3は、それぞれ独立して
【化9】
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在せず、ここで、mは1~20の整数であり、
S
2は、
【化10】
の構造を有し、
Rは、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基から選択される。)
【請求項7】
Z
1とZ
2は、相補又は部分的に相補して二本鎖を形成し、Z
1及びZ
2の長さは、それぞれ5~15個の塩基であることを特徴とする、請求項6に記載の開始断片化合物。
【請求項8】
前記開始断片化合物は、
【化11】
の構造を有し、ここで、Yは
【化12】
であることを特徴とする、請求項7に記載の開始断片化合物。
【請求項9】
化合物ライブラリーとタンパク質標的とをインキュベートした後、操作して共有結合架橋を行うステップaと、
タンパク質-DNAコード化化合物共有結合架橋複合体と未架橋のDNAコード化化合物とを分離するステップbと、
回収したタンパク質-DNAコード化化合物共有結合架橋複合体に対してPCR増幅及びDNA配列決定を行い、DNA配列情報を読み取り、化合物構造情報を得るステップcと、
を含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載のDNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニング方法。
【請求項10】
前記ステップaにおいて、共有結合架橋は、光照射、加熱、通電又は直接インキュベーションにより行われることを特徴とする、請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記ステップbにおける分離方法は、タンパク質を固定化し、溶出液で洗浄して未固定物質を除去することであることを特徴とする、請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
磁気ビーズを用いてタンパク質を固定することを特徴とする、請求項11に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAコード化化合物、並びにその化合物ライブラリーの合成及びスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品開発、特に新薬開発において、生物学的標的に対するハイスループットスクリーニングは、リード化合物を迅速に得るための主な手段の一つである。しかし、単一分子に基づく従来のハイスループットスクリーニングでは、所要時間が長く、設備投資が巨額で、ライブラリー化合物の数が限られており(数百万)、かつ化合物ライブラリーの構築に数十年も必要であることから、リード化合物の発見効率と可能性が制限されている。近年登場しているDNAコード化化合物ライブラリー技術(WO2005058479、WO2018166532、CN103882532)には、コンビナトリアルケミストリー及び分子生物学技術が組み込まれ、分子レベルでそれぞれの化合物に1つのDNAタグを付け、極めて短い時間内で数十億の化合物ライブラリーを合成することができ、次世代の化合物ライブラリースクリーニング技術の傾向となっており、製薬業界で幅広く応用され始め、多くの積極的な効果を生み出している(Accounts of Chemical Research,2014,47,1247-1255)。
【0003】
従来のDNAコード化化合物ライブラリーを用いて薬物をスクリーニングする際に、まず、化合物ライブラリーを標的と共にインキュベートし、そして、溶出により標的に結合した化合物を他の化合物から分離し、さらに、タンパク質変性の条件下で標的に結合した化合物を遊離させ、QPCR増幅、DNA配列決定、データ分析を行い、標的タンパク質に結合した化合物の化学構造を得る(
図1)。しかし、DNAコード化化合物スクリーニングは親和スクリーニングであり、薬物分子と標的との間の相互作用力の大きさに依存し、標的に対して親和性を有する分子を見つけることができるが、応用には制限が存在する。主に、スクリーニング過程において溶出する必要があり、低親和性(μmol-mmol)の分子は溶出過程中で標的から分離しやすいことで、信号がエンリッチメントすることができなく無視される場合がある。その結果、DNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニング効果、特に、小分子断片の混合スクリーニング過程におけるスクリーニング結果が制限される。
【0004】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、DNAコード化化合物、化合物ライブラリー及びスクリーニング方法を提供する。本発明のDNAコード化化合物ライブラリーを用いて標的とインキュベートし、さらに共有結合架橋により化合物と標的との結合を強化することができ、従来のDNAコード化化合物ライブラリー親和スクリーニングと比較して、化合物、特に低親和性化合物のスクリーニング信号での区別度を向上させることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、式Iで表される一般式を有するDNAコード化化合物が提供される。
式中、Xは、原子又は分子骨格であり、
A
1は、リンカー及びオリゴヌクレオチドを含む部分であり、
A
2は、リンカー及びオリゴヌクレオチドを含む部分であり、A
1及びA
2におけるオリゴヌクレオチド部分は、相補又は部分的に相補して二本鎖を形成し、
Lは、エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基を1つ又は複数含む結合部分であり、
Mは、1つ又は複数の構造単位を含む機能部分である。
さらに、Xは、炭素原子、窒素原子、環状又は非環状骨格構造である。
【0006】
さらに、前記式Iで表される一般式は、式IIで表される構造を有する。
式中、Z
1は、その3'末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その5'末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであるか、又はZ
1は、その5'末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その3'末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであり、
L
1は、Z
1の3'末端又は5'末端と結合を形成可能な官能基を含むリンカーであり、
L
2は、Z
2の5'末端又は3'末端と結合を形成可能な官能基を含むリンカーである。
さらに具体的には、Z
1とZ
2は、相補又は部分的に相補して二本鎖を形成し、Z
1及びZ
2の長さは、それぞれ10個以上の塩基であり、かつ10個以上の塩基対相補領域を有する。
さらに具体的には、Z
1及びZ
2は、いずれもPCRプライマー配列を含む。
さらに具体的には、L
1及びL
2は、それぞれ独立して二官能性アルキレン鎖又は二官能性オリゴマーグリコール鎖から選択され、前記官能基は、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択される。
【0007】
さらに具体的には、L
1及びL
2は、それぞれ独立して
から選択される。ここで、nは1~10の整数である。好ましくは、nは2~6である。より好ましくは、nは3である。
【0008】
さらに具体的には、Lは、感光性基、感電性基又はタンパク質と共有結合架橋可能な他の基を含む。
【0009】
さらに具体的には、Lは、アクリジニル基、アリールアジド基、ベンゾフェノン基、スルホニルフルオリド基、α,β-不飽和酸基、α,β-不飽和ケトン基、α,β-不飽和エステル基、α,β-不飽和スルホニル基、α-アシルハライド基、エポキシ基、アルデヒド基、シアノ基、ボロン酸基を含む。
【0010】
さらに具体的には、Lは、-S1-S2-S3-の構造を有する。
ここで、S1及びS3は、1つ又は複数の官能基を有する環状若しくは非環状の炭素原子又はヘテロ原子からなるリンカーであり、前記官能基は、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アジド基、アルキニル基、ハロゲン化物から選択される。
S2は、エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基を1つ又は複数含むリンカーである。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、S1はXに結合し、S3はMに結合する。本発明の別の実施形態において、S3はXに結合し、S1はMに結合する。
【0012】
さらに具体的には、S
1、S
3は、それぞれ独立して
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在しない。ここで、mは1~20の整数である。前記S
1又はS
3が存在しないとは、それと結合した2つの部分が共有結合で直接結合することを指す。好ましくは、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。
【0013】
さらに具体的には、S
2におけるエンジニアリングにより共有結合架橋可能な基は、リンカーに直接結合し、
の構造を有する。ここで、R
1は、炭素原子又は窒素原子であり、R
2は、水素、炭素原子若しくはヘテロ原子を含むアルカン又は芳香族炭化水素である。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、S
2は、
から選択され、R
1は、炭素原子又は窒素原子であり、R
2は、水素、炭素原子若しくはヘテロ原子を含むアルカン又は芳香族炭化水素である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、S
2は、
から選択される。
【0016】
さらに具体的には、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、30個の原子以下である。好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、20個の原子以下である。より好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、15個の原子以下である。
【0017】
さらに具体的には、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、3個の原子を超える。好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、4個の原子を超える。より好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基と機能部分Mとの間の距離は、5個の原子を超える。
【0018】
さらに具体的には、前記Xは、
から選択される。ここで、qは1~10の整数である。前記構造式における酸素原子は、それぞれL
1又はL
2に結合する。
【0019】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、式Iで表されるDNAコード化化合物は、
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在しない。ここで、mは1~20の整数である。前記S
1又はS
3が存在しないとは、それと結合した2つの部分は、共有結合で直接結合することを指す。好ましくは、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。
Mは、1つ又は複数の構造単位を含む機能部分である。
【0020】
本発明によれば、前記DNAコード化化合物からなるDNAコード化化合物ライブラリーがさらに提供される。
【0021】
さらに、前記DNAコード化化合物ライブラリーは、少なくとも10種の異なるDNAコード化化合物を含む。更さらに、前記DNAコード化化合物ライブラリーは、少なくとも102種の異なるDNAコード化化合物を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記異なるDNAコード化化合物とは、オリゴヌクレオチド部分及び機能部分のみが異なるDNAコード化化合物を指す。
【0022】
本発明によれば、式IIIで表される構造を有する、DNAコード化化合物ライブラリーを合成するための開始断片化合物がさらに提供される。
式中、Xは、原子又は分子骨格であり、
Z
1は、その3'末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その5'末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドであるか、又はZ
1は、その5'末端でL
1に結合したオリゴヌクレオチドであり、Z
2は、その3'末端でL
2に結合したオリゴヌクレオチドである。
L
1は、Z
1の3'末端又は5'末端と結合を形成可能な官能基を含むリンカーであり、
L
2は、Z
2の5'末端又は3'末端と結合を形成可能な官能基を含むリンカーであり、
Lは、エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基を1つ又は複数含む結合部分であり、
Rは、機能部分に結合した反応基である。
【0023】
さらに、Xは、炭素原子、窒素原子、環状又は非環状骨格構造である。
【0024】
さらに、Z1とZ2は、相補又は部分的に相補して二本鎖を形成し、Z1及びZ2の長さは、それぞれ5~15個の塩基である。
【0025】
さらに、L
1及びL
2は、それぞれ独立して二官能性アルキレン鎖又は二官能性オリゴマーグリコール鎖から選択され、前記官能基は、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択される。
さらに、Lは、感光性基、感電性基、又はタンパク質と共有結合架橋可能な他の基を含み、Rは、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基から選択される。
さらに、Xは、
から選択される。ここで、qは1~10の整数であり、前記構造式における酸素原子は、それぞれL
1又はL
2に結合する。
【0026】
さらに、L
1及びL
2は、それぞれ独立して
から選択される。ここで、nは1~10の整数であり、好ましくは、nは2~6である。より好ましくは、nは3である。
【0027】
さらに、Lは、-S1-S2-S3-の構造を有し、S1及びS3は、1つ又は複数の官能基を有する環状若しくは非環状炭素原子又はヘテロ原子からなるリンカーであり、前記官能基は、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アジド基、アルキニル基、ハロゲン化物から選択される。S2は、エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基を1つ又は複数含むリンカーである。
【0028】
さらに具体的には、S
1及びS
3は、それぞれ独立して
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在しない。ここで、mは1~20の整数である。前記S
1又はS
3が存在しないとは、それと結合した2つの部分は共有結合で直接結合することを指す。好ましくは、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。
【0029】
さらに具体的には、S
2におけるエンジニアリングにより共有結合架橋可能な基は、リンカーに直接結合し、
の構造を有する。ここで、R
1は、炭素原子又は窒素原子であり、R
2は、水素、炭素原子若しくはヘテロ原子を含むアルカン又は芳香族炭化水素である。
【0030】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、S
2は、
から選択される。ここで、R1は、炭素原子又は窒素原子であり、R2は、水素、炭素原子若しくはヘテロ原子を含むアルカン又は芳香族炭化水素である。
【0031】
【0032】
さらに具体的には、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、30個の原子以下である。好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、20個の原子以下である。より好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、15個の原子以下である。
【0033】
さらに具体的には、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、3個の原子を超える。好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、4個の原子を超える。より好ましくは、前記エンジニアリングにより共有結合架橋可能な基とRとの間の距離は、5個の原子を超える。
【0034】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、式IIIで表されるDNAコード化化合物ライブラリーの開始断片化合物は、
から選択される1種若しくは複数種の組み合わせであるか、又は存在しない。ここで、mは1~20の整数である。前記S
1又はS
3が存在しないとは、それと結合した2つの部分は共有結合で直接結合することを指す。好ましくは、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。
Rは、機能部分に結合した反応基である。好ましくは、Rは、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基から選択される。
【0035】
さらに具体的には、前記開始断片化合物は、以下の構造を有する。
から選択される。ここで、R
1は、炭素原子又は窒素原子であり、R
2は、水素、炭素原子若しくはヘテロ原子を含むアルカン又は芳香族炭化水素である。
【0036】
本発明によれば、
化合物ライブラリーとタンパク質標とをインキュベートした後、操作して共有結合架橋を行うステップaと、
タンパク質-DNAコード化化合物共有結合架橋複合体と未架橋のDNAコード化化合物とを分離するステップbと、
回収したタンパク質-DNAコード化化合物共有結合架橋複合体に対してPCR増幅及びDNA配列決定を行い、DNA配列情報を読み取り、化合物構造情報を得るステップcと、
を含む前記DNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニング方法がさらに提供される。
【0037】
さらに、前記ステップaにおいて、共有結合架橋は、光照射、加熱、通電又は直接インキュベーションにより行われる。
【0038】
さらに、前記ステップbにおける分離方法方は、タンパク質を固定化し、溶出液で洗浄して未固定物質を除去することである。
【0039】
さらに、磁気ビーズを用いてタンパク質を固定する。
【0040】
本発明のDNAコード化化合物ライブラリーを用いてスクリーニングし、共有結合架橋により化合物と標的との結合を増強し、化合物(特に、低親和性化合物及び断片化合物)のスクリーニング信号の区別度を向上させることができる。
【0041】
本発明における「機能部分」とは、DNAコード化化合物ライブラリーにおける小分子部分を指し、コンビナトリアルケミストリー又は非コンビナトリアルケミストリー手段により多様な分子構造を構築し、生物学的標的と共にスクリーニングを行うために使用される。本発明に記載の炭素原子は、当業者の理解に応じて自由に選択することができ、例えば、二価置換の場合では「CH2」であり、三価置換の場合では「CH」である。
【0042】
本発明に記載の「分子骨格」、「骨格構造」は、当業者の理解に応じて自由に対応する置換数を選択することができ、例えば、二価置換では2つの置換部位があり、三価置換の場合では3つの置換部位がある。
【0043】
本発明に記載の「オリゴヌクレオチド」は、DNA、RNA、PNAなど及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されず、当業者が当該技術分野の技術常識と常套手段に基づいて配列情報を読み取れればよい。
【0044】
本発明のDNAコード化化合物ライブラリーは、様々な生物学的標的のスクリーニングに適用される。当業者が必要に応じて本発明の異なるDNAコード化化合物ライブラリーを選択することができる。
【0045】
本発明のDNAコード化化合物/ライブラリーにおけるエンジニアリングにより共有結合架橋可能な基は、リンカーに直接結合することによって、共有結合架橋基の非特異的な共有結合が大幅に減少する。
【0046】
本発明の内容に基づいて、当該技術分野の技術常識と常套手段により、当業者がDNAコード化化合物及びコード化化合物ライブラリーの開始断片化合物におけるペアリングして結合するのに適した官能基を選択することができる。
【0047】
本発明の上記内容に基づいて、当該技術分野の技術常識と常套手段により、本発明の技術的思想から逸脱しない限り、様々な修正、置換又は変更をすることができる。
【0048】
以下、実施例及び具体的な実施形態により本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】従来のDNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニングプロセスである。
【
図2】実施例1で合成して得られた4種類のDNAコード化化合物の例である。
【
図3】実施例1でKd値が測定された4種類の化合物の例であり、CAIX標的に対するKd値は順次大きくなり、つまり、親和性は順に減少し、ここで、R
1部分は蛍光基であり、Kd値の測定に使用される。
【
図4】DNAコード化化合物のスクリーニングプロセスである。
【
図5】実施例1におけるDNAコード化化合物のスクリーニング回収率の結果である。
【
図6】実施例2におけるDNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニング信号の結果である。
【
図7】実施例3で構築されたDNAコード化化合物ライブラリーの構造模式図である。
【
図8】実施例3におけるDNAコード化化合物ライブラリーのスクリーニング信号の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、具体的な実施例により本発明の技術的手段を完全で明確に説明する。以下の実施例は、本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明で使用される原料及び設備は、いずれも既知の製品であり、市販品購入により入手される。
【0051】
本発明におけるDNA-NH
2又は
式中、Aはアデニン、Tはチミン、Cはシトシン、Gはグアニンである。
Fmoc:フルオレニルメトキシカルボニル;DMT-MM:2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン;DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DMA:N,N-ジメチルアセトアミド;HATU:2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N',N'-テトラメチル尿素ヘキサフルオロホスフェート。
【0052】
実施例1:DNAコード化化合物の合成及びスクリーニング
ステップ1:DNAコード化化合物の合成
【0053】
(1)DNA-NH2を250mMのpH=9.4ホウ酸緩衝液に溶解して1mMの溶液に調製し、それぞれ予め-20℃冷蔵庫で5分間冷却した化合物1(50当量、200mMのDMA溶液)、HATU(50当量、400mMのDMA溶液)及びDIPEA(100当量、400mMのDMA溶液)を混合した後、4℃冷蔵庫中で5分間保存した。前記混合物に調製したDNA-NH2溶液を入れ、さらに反応液を渦巻き振盪により十分に均一に混合し、反応液を室温条件で12時間静置した。
反応終了後、エタノール沈殿を行い、溶液中に総体積の10%の5M塩化ナトリウム溶液を加えた後、引き続き総体積の3倍の無水エタノールを加え、均一に振盪した後、反応液をドライアイス中で2時間凍結し、その後、12000rpmの回転速度下で0.5時間遠心分離し、上清を捨て、残りの沈殿を脱イオン水で溶解し、化合物2の粗製品を取得し、粗製品を精製せずにそのまま次の反応に使用した。
【0054】
(2)得られた上記の化合物2の粗製品を純水で溶解して1mMの溶液に調製し、この溶液に総体積の10%のピペリジンを加え、渦巻き振盪により十分に均一に混合した後、反応液を室温で1-3時間反応させた。
反応終了後に、エタノール沈殿を行い、溶液に総体積の10%の5M塩化ナトリウム溶液を加えた後、引く続き総体積の3倍の無水エタノールを加え、均一に振盪した後、反応液をドライアイス中で2時間凍結し、その後、12000rpmの回転速度で0.5時間時間遠心分離し、上清を捨て、残りの沈殿を脱イオン水で溶解し、化合物3の粗製品を取得し、粗製品を精製せずにそのまま次の反応に使用した。
【0055】
(3)得られた上記の化合物3を250mMのpH=9.4ホウ酸緩衝液に溶解して1mMの溶液に調製し、順にカルボン酸化合物4(100当量、100mMのDMA溶液)及びDMT-MM溶液(100当量、100mMの脱イオン水溶液)を加え、渦巻き振盪により十分に均一に混合した後、反応液を室温条件下で12-16時間静置した。
反応終了後に、エタノール沈殿を行い、溶液中に総体積の10%の5M塩化ナトリウム溶液を加えた後、引き続き総体積の3倍の無水エタノールを加え、均一に振盪した後、反応液をドライアイス中で2時間凍結し、その後、12000rpmの回転速度で0.5時間遠心分離し、上清を捨て、残りの沈殿を脱イオン水溶解し、化合物5の粗製品を取得し、粗製品を分取クロマトグラフィーにより精製して純粋な化合物5を得た。
【0056】
(4)得られた上記の100nmolの化合物5を純水に溶解して1mMの溶液(100uL)に調製し、プライマー1(166.6nmol、1.67当量、2mMの水溶液、83.3uL)、10×ligation緩衝液(66.6uL)、T4 DNAリガーゼ(9.6uL、13.97ug/uL)及び脱イオン水(407uL)を加え、渦巻き振盪した後、20℃で16時間反応させた。
【0057】
反応終了後に、エタノール沈殿を行い、溶液中に総体積の10%の5M塩化ナトリウム溶液を加えた後、引き続き総体積の3倍の無水エタノールを加え、均一に振盪した後、反応液をドライアイス中で2時間凍結させ、その後、12000rpmの回転速度で0.5時間遠心分離し、上清を捨て、残りの沈殿を脱イオン水で溶解し、粗製品を得た。
【0058】
上記の粗製品を純水に溶解して1mMの溶液(100uL)に調製し、結合したDNA断片1-DNA断片2-DNA断片3-プライマー2-プライマーID(100nmol、1当量、2mMの水溶液、50uL)、10×ligation緩衝液(80uL)、T4 DNAリガーゼ(4.31uL,13.97ug/uL)及び脱イオン水(165uL)を加え、反応混合物を渦巻き振盪した後、20℃で16時間反応させた。
【0059】
反応終了後に、エタノール沈殿を行い、溶液中に総体積の10%の5M塩化ナトリウム溶液を加えた後、引き続き総体積の3倍の無水エタノールを加え、均一に振盪した後、反応液をドライアイス中で2時間凍結し、その後、12000rpmの回転速度で0.5時間遠心分離し、上清を捨て、残りの沈殿を脱イオン水で溶解し、化合物6を得た。
【0060】
上記の合成方法により4種類の化合物6(化合物6-1、化合物6-2、化合物6-3、化合物6-4)を合成した。具体的な構造を
図2に示す。
【0061】
ステップ2:DNAコード化化合物スクリーニング
1.5mL遠沈管中で最終濃度が0.2nMのDNAコード化化合物及び100pmolの標的タンパク質を総体積が100μLスクリーニング緩衝液(スクリーニング緩衝液の成分:12.5mMのTris、150mMのNaCl、0.3mg/mLのssDNA、0.05%Tween20、pH7.5)に加えた。また、ブランク対照群(標的タンパク質を添加しない)を用意した。標的タンパク質群及びブランク対照群は、それぞれ2群であった。反応物が入った遠沈管を回転ミキサーに置き、20rpm、25℃で60minインキュベートした。インキュベートしたサンプル(標的群及びブランク対照群のそれぞれ1群)を365nmのUV条件下で氷上で10min光照射して光架橋反応を行った。もう1群のサンプル(標的群及びブランク対照群のそれぞれ1群)を365nmでのUV光照射せずに、氷上に10min静置した。
【0062】
250μLスクリーニング緩衝液で3回平衡した後の25μLのNiチャージ磁気ビーズ(beads)を、UV光照射した又は光照射しなかったサンプルに加え、遠沈管を回転ミキサーに置き、20rpm、25℃で30minインキュベートし、標的タンパク質タグと特異的磁気ビーズとの親和作用により、マグネットスタンドにより標的タンパク質及び標的タンパク質にDNAコード化化合物が結合した複合体を溶液から分離し、上清を収集して保存した。
【0063】
500μLスクリーニング緩衝液で分離後の磁気ビーズを再懸濁させ、回転ミキサーを用いて20rpm、25℃で1min洗浄し、非特異的に結合したDNAコード化化合物を除去し、マグネットスタンドで磁気ビーズと上清を分離し、5回繰り返した。
100μL溶出緩衝液(12.5mMのTris、150mMのNaCl、pH7.5)で洗浄後の磁気ビーズを再懸濁させ、金属浴中で95℃に加熱して10min溶出し、マグネットスタンドで磁気ビーズと溶出したDNAコード化化合物を分離した。ビーズ上に結合したのは、光架橋により得られたDNAコード化化合物サンプルであった。溶出上清は、親和作用により得られたDNAコード化化合物サンプルであった。
【0064】
希釈緩衝液(10mMのTris、pH8.0、0.05%Tween20)を用いて溶出上清及びビーズを20倍希釈し、DNAコード化化合物を100倍希釈し、上記のサンプル、プライマー、脱イオン水及びqPCR mix(ABI、A25778)を20uLの反応液に調製し、95℃、10min予備変性、35サイクル(95℃、10s変性;55℃、10sアニーリング;72℃、10s延伸)の条件でqPCR検出を行った。延伸ステップに信号収集を設置した。qPCR反応終了後に分析し、アボガドロ定数によりサンプル分子コピー数の計算及びサンプル間の分子コピー数の違いの分析を行った。
【0065】
上記のスクリーニング試験結果を
図5に示す。試験結果から分かるように、従来のDNAコード化化合物ライブラリースクリーニング条件下(非光照射条件)で、DNA回収率比の範囲は0.51-1.67であり、スクリーニング信号には明らかな区別度がない。本発明のDNAコード化化合物及びスクリーニング方法では、DNA回収率比の範囲は2.27-151.92であり、スクリーニング信号の区別度は顕著に向上し、回収率比は化合物の活性(
図3)と正の相関がある。
【0066】
実施例2:DNAコード化化合物ライブラリーの合成及びホスファターゼ標的によるスクリーニング
【0067】
実施例1で製造された出発DNA(化合物3)を原料とし、WO2005058479に記載のDNAコード化化合物ライブラリー構築方法により、962個の化合物を含む以下の構造を有するDNAコード化化合物ライブラリーを構築した。
上記の化合物ライブラリーをステップでスクリーニングした。
【0068】
(1)1.5mL遠沈管中で最終濃度が5.65nMのDNAコード化化合物ライブラリー及び250pmolの標的タンパク質を総体積が100μLのスクリーニング緩衝液(スクリーニング緩衝液の成分:50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.01%Tween-20、0.3mg/mLのssDNA、10mMのイミダゾール、pH7.4)に加え、また、ブランク対照群(標的タンパク質を添加しない)を用意した。標的タンパク質群及びブランク対照群をそれぞれ2群を用意した。反応物が入った遠沈管を回転ミキサーに置き、20rpm、25℃で60minインキュベートした。インキュベートした後のサンプル(標的群及びブランク対照群のそれぞれ1群)を365nmのUV条件下で氷上で10min光照射して光架橋反応を行った。もう1群のサンプル(標的群及びブランク対照群のそれぞれ1群)に対して365nmのUV光照射を行わず、氷上に10min静置した。
【0069】
(2)200μLスクリーニング緩衝液で3回平衡した後の20μLのNiチャージ磁気ビーズを、UV光照射した又は光照射しなかったサンプルに加え、遠沈管を回転ミキサーに置き、20rpm、25℃で30minインキュベートし、標的タンパク質タグと特異的磁気ビーズとの親和作用により、マグネットスタンドにより標的タンパク質及び標的タンパク質にDNAコード化化合物が結合した複合体を溶液から分離し、上清を収集して保存した。
【0070】
(3)500μLスクリーニング緩衝液で分離後の磁気ビーズを再懸濁させ、回転ミキサーを用いて20rpm、25℃で1min洗浄し、非特異的に結合したDNAコード化化合物を除去し、マグネットスタンドで磁気ビーズと上清を分離し、5回繰り返した。
【0071】
(4)55μL溶出緩衝液(50mMのHEPES、300mMのNaCl、pH7.4)で洗浄後の磁気ビーズを再懸濁させ、金属浴中で95℃に加熱して10min溶出し、マグネットスタンドで磁気ビーズと溶出したDNAコード化化合物を分離した。ビーズ上に結合したのは、光架橋により得られたDNAコード化化合物サンプルであった。溶出上清は、親和作用により得られたDNAコード化化合物サンプルであった。
【0072】
(5)希釈緩衝液(10mMのTris、pH8.0、0.05%Tween20)を用いて溶出上清及びビーズを20倍希釈し、DNAコード化化合物を100倍希釈し、上記のサンプル、プライマー、脱イオン水及びqPCR mix(ABI、A25778)を20uLの反応液に調製し、95℃、10min予備変性、35サイクル(95℃、10s変性;55℃、10sアニーリング;72℃、10s延伸)の条件でqPCR検出を行った。延伸ステップに信号収集を設置した。qPCR反応終了後に分析し、アボガドロ定数によりサンプル分子コピー数の計算及びサンプル間の分子コピー数の違いの分析を行った。
【0073】
上記の化合物ライブラリー及びスクリーニング方法により得られた試験結果を
図6に示す。
図6において、縦座標S3/S4溶出は従来のDNAコード化化合物ライブラリースクリーニング信号の結果であり、縦座標の数値はDNA回収率比である。結果から分かるように、全ての化合物のDNA回収率比は0-2であり、明らかな信号区別度がない。
図6において、横座標S1/S3ビーズは本発明のDNAコード化化合物ライブラリースクリーニング信号の結果であり、縦座標の数値はDNA回収率比である。結果から分かるように、化合物のDNA回収率比は0-60であり、明らかな信号区別度がある。
【0074】
実施例3:DNAコード化化合物ライブラリーの合成及びキナーゼ標的のスクリーニング
実施例1及びWO2005058479に記載のDNAコード化化合物ライブラリーの構築方法により、
図7に示される7417個の化合物を含むDNAコード化化合物ライブラリーを構築した。ここで、Lは、異なる長さのリンカーである。
実施例2のスクリーニング方法により、上記の化合物ライブラリーを用いてキナーゼ標的PAK4をスクリーニングした。スクリーニングの各群を表1に示す。表1において、「+」は対応する条件があることを意味し、「-」は対応する条件がないことを意味する。
【0075】
【0076】
スクリーニング信号の結果を
図8に示す。
図8において、横縦座標は、それぞれ異なるスクリーニング群のスクリーニング信号エンリッチメント(signal enrichment)状況(分子エンリッチメント状況)を示し、数値は、エンリッチメント程度を示す。
図1から
図4は、本発明の化合物ライブラリー及びスクリーニング方法によりより良好な信号エンリッチメント状況を得ることができることを示す。また、
図1は、分子がタンパク質以外の材料(例えば、磁気ビーズなど)にエンリッチメントすることがないことを示す。
図2は、光照射による共有結合架橋では分子のエンリッチメント程度が非光照射条件下でのエンリッチメント程度よりも遥かに高いことを示す。
図3は、競合分子によって分子の信号強度が低下することを示し、正しい標的ポケットに作用することを示している。
図4は、分子がひどい非特異的結合を発生しないことを示す。
【0077】
試験結果から分かるように、本発明のDNAコード化化合物/ライブラリー及びスクリーニング方法により、化合物と標的との結合を増強させ、化合物、特に低親和性化合物のスクリーニング信号での区別度を向上させ、積極的な効果を奏することができる。
【0078】
以上より、本発明によれば、DNAコード化化合物、化合物ライブラリーの合成及びスクリーニング方法が提供される。本発明のDNAコード化化合物ライブラリーを標的と共にインキュベートしたうえ、共有結合架橋により化合物と標的との結合を増強でき、従来のDNAコード化化合物ライブラリー親和スクリーニングと比較して、化合物、特に低親和性化合物のスクリーニング信号での区別度を向上させることができる。