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特許7592165内視鏡プロセッサ、内視鏡装置、および内視鏡装置の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】内視鏡プロセッサ、内視鏡装置、および内視鏡装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20241122BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61B1/045 622
A61B1/045 618
A61B1/00 513
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023532905
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025365
(87)【国際公開番号】W WO2023281607
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 明広
(72)【発明者】
【氏名】神田 大和
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008834(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/083019(WO,A1)
【文献】特開2012-005512(JP,A)
【文献】特開2011-224038(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104046(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
第1照明光を照射して取得された第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、
前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光を照射して取得された第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、
被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、
前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成する、
内視鏡プロセッサ。
【請求項2】
前記第1照明光は白色光である、
請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項3】
前記プロセッサは、
互いにスペクトルの異なる複数種類の第2照明光を照射して取得された複数の第2画像情報から複数の第2領域を検出し、
前記第1領域および前記複数の第2領域の内から前記表示用領域を選定する、
請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項4】
前記複数種類の第2照明光は、NBI(Narrow Band Imaging)用照明光と、RDI(Red Dichromatic Imaging)用照明光と、の少なくとも一方を含む、
請求項3に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1領域の信頼度スコアと、前記第2領域の信頼度スコアと、の複数の信頼度スコアを算出し、
前記複数の信頼度スコアに基づき、前記表示用領域を選定する、
請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記信頼度スコアが閾値よりも高い前記第1領域および前記第2領域の内から、前記表示用領域を選定する、
請求項5に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第1領域の位置と前記第2領域の位置とが重なる場合、前記第1領域と前記第2領域との内の、前記信頼度スコアが最も高い領域を前記表示用領域に選定する、
請求項6に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記第1領域の位置と前記第2領域の位置とが重なる場合、前記第1領域と前記第2領域とをマージした領域を前記表示用領域に選定する、
請求項6に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記第1領域の信頼度スコアと、前記複数の第2領域それぞれの信頼度スコアと、の複数の信頼度スコアを算出し、
前記複数の信頼度スコアに基づき、前記表示用領域を選定する、
請求項3に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記被検体の前記観察対象部位に応じた複数の重み係数を前記複数の信頼度スコアにそれぞれ乗算し、
前記複数の重み係数をそれぞれ乗算した前記複数の信頼度スコアに基づき、前記表示用領域を選定する、
請求項9に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項11】
前記観察対象部位は、臓器であり、
前記プロセッサは、前記臓器の種類に応じて、前記複数の重み係数を設定する、
請求項10に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記観察対象部位に応じて、前記複数の重み係数を自動で切り替える、
請求項10に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記第1画像情報と前記第2画像情報との動き検出を行い、
動き検出の結果に応じて前記第1領域と前記第2領域とを位置合わせしてから、前記表示用領域を選定し、前記表示用画像情報を生成する、
請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記表示用領域の病変の種類を鑑別し、
鑑別結果を含む前記表示用画像情報を生成する、
請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記鑑別結果として得られた病変の進行度を識別し、
前記進行度を含む前記表示用画像情報を生成する、
請求項14に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項16】
第1照明光と、前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光とを含む複数種類の照明光を照射可能な光源装置と、
前記光源装置から前記第1照明光を照射して第1画像情報を取得し、前記光源装置から前記第2照明光を照射して第2画像情報を取得する撮像装置を備える内視鏡と、
前記第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、
前記第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、
被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、
前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成するプロセッサを備える内視鏡プロセッサと、
前記表示用画像情報を表示するモニタと、
を備える内視鏡装置。
【請求項17】
第1識別器、第2識別器、病変領域選定部、および、表示処理部を含む内視鏡装置の作動方法であって、
前記第1識別器が、第1照明光を照射して取得された第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、
前記第2識別器が、前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光を照射して取得された第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、
前記病変領域選定部が、被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、
前記表示処理部が、前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成する、
内視鏡装置の作動方法
【請求項18】
前記第2識別器が、互いにスペクトルの異なる複数種類の第2照明光を照射して取得された複数の第2画像情報から複数の第2領域を検出し、
前記病変領域選定部が、前記第1領域の信頼度スコアと、前記複数の第2領域それぞれの信頼度スコアと、の複数の信頼度スコアを算出し、
前記病変領域選定部が、前記被検体の前記観察対象部位に応じた複数の重み係数を前記複数の信頼度スコアにそれぞれ乗算し、
前記病変領域選定部が、前記複数の重み係数をそれぞれ乗算した前記複数の信頼度スコアに基づき、前記第1領域および前記複数の第2領域の内から前記表示用領域を選定する、
請求項17に記載の内視鏡装置の作動方法
【請求項19】
前記観察対象部位は、臓器であり、
前記病変領域選定部が、前記臓器の種類に応じて、前記複数の重み係数を設定する、
請求項18に記載の内視鏡装置の作動方法
【請求項20】
前記内視鏡装置は、制御部を更に含み、
前記制御部が、前記観察対象部位に応じて、前記複数の重み係数を自動で切り替える、
請求項18に記載の内視鏡装置の作動方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像情報から病変領域を検出する内視鏡プロセッサ、内視鏡装置、および内視鏡装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野や工業用分野で内視鏡が広く利用されている。例えば、医療分野で内視鏡を用いると、術者は、表示装置に表示された被検体内の内視鏡画像を見て病変部を発見および鑑別し、病変部に対する処置具を用いた処置を行える。
【0003】
近年、術者による病変部の見落としを抑制し、診断し易くするために、内視鏡画像をコンピュータで定量的に解析して、内視鏡画像に病変候補の位置、鑑別情報などを表示するコンピュータ支援画像診断(CAD:Computer Aided Detection/Diagnosis)が開発されている。CADにより病変部が発見された場合、内視鏡画像上に強調表示(例えば枠などのマーカ表示)を行うことで、病変部が存在すること、および存在する位置を術者に報知する内視鏡装置が提案されている。
【0004】
例えば、WO2019/087971号公報には、第1の照明光で病変領域を検出し、第2の照明光で病変の種類を鑑別し、第3の照明光で進行度を特定する医療画像処理装置および内視鏡装置が記載されている。
【0005】
しかし、WO2019/087971号公報において、病変領域を検出する第1の照明光は、具体的に、該公報の図5に記載されたようなパターン1の鑑別用照明光である。この鑑別用照明光は、肉眼で観察する色に近い白色光(=通常光)であり、病変部を比較的認識し易い特殊光ではないため、病変を見落とす可能性があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、白色光では見落とす可能性がある病変も検出する機能を実現できる、内視鏡プロセッサ、内視鏡装置、および内視鏡装置の作動方法を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による内視鏡プロセッサは、プロセッサを備え、前記プロセッサは、第1照明光を照射して取得された第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光を照射して取得された第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成する。
【0008】
本発明の一態様による内視鏡装置は、第1照明光と、前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光とを含む複数種類の照明光を照射可能な光源装置と、前記光源装置から前記第1照明光を照射して第1画像情報を取得し、前記光源装置から前記第2照明光を照射して第2画像情報を取得する撮像装置を備える内視鏡と、前記第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、前記第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成するプロセッサを備える内視鏡プロセッサと、前記表示用画像情報を表示するモニタと、を備える。
【0009】
本発明の一態様による内視鏡装置の作動方法は、第1識別器、第2識別器、病変領域選定部、および、表示処理部を含む内視鏡装置の作動方法であって、前記第1識別器が、第1照明光を照射して取得された第1画像情報から病変候補の第1領域を検出し、前記第2識別器が、前記第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光を照射して取得された第2画像情報から病変候補の第2領域を検出し、前記病変領域選定部が、被検体の観察対象部位に応じて、前記第1領域および前記第2領域の内から病変候補の表示用領域を選定し、前記表示処理部が、前記表示用領域を前記第1画像情報に重畳した表示用画像情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係わる内視鏡装置の外観の一例を示す斜視図。
図2】上記第1の実施形態に係わる内視鏡装置の構成の一例を示すブロック図。
図3】上記第1の実施形態に係わる内視鏡プロセッサの電気的な構成例を示すブロック図。
図4】上記第1の実施形態に係わる識別器の構成例を示すブロック図。
図5】上記第1の実施形態において、各識別器とモニタとにおける画像情報の例を示す図表。
図6】上記第1の実施形態に係わる内視鏡プロセッサの処理を示すフローチャート。
図7】本発明の第2の実施形態に係わる識別器の構成例を示すブロック図。
図8】上記第2の実施形態に係わる内視鏡プロセッサの処理を示すフローチャート。
図9】本発明の第3の実施形態に係わる識別器の構成例を示すブロック図。
図10】上記第3の実施形態に係わる内視鏡プロセッサの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。なお、図面の記載において、同一または対応する要素には、適宜、同一の符号を付している。
[第1の実施形態]
【0012】
図1から図6は本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1は内視鏡装置1の構成の一例を示す斜視図である。本実施形態の内視鏡装置1は、内視鏡2と、光源装置3と、内視鏡プロセッサ4と、モニタ5と、を備えている。
【0013】
内視鏡2は、被検体へ挿入される細長の挿入部9と、内視鏡2に係る各種の操作を行うための操作部10と、内視鏡2を光源装置3および内視鏡プロセッサ4へ接続するためのユニバーサルケーブル17と、を備えている。
【0014】
挿入部9は、先端から基端側へ向かって順に、先端部6と、湾曲部7と、可撓管部8と、を備えている。先端部6は、図示を省略するが、照明光を被検体へ出射する照明窓と、被検体からの戻り光が入射される観察窓と、を備えている。本実施形態の内視鏡2は電子内視鏡として構成されており、先端部6に撮像装置21(図2参照)が設けられている。撮像装置21は、撮像光学系と、撮像素子とを備えている。撮像光学系は、観察窓から入射した光を、被写体の光学像(被写体像)として撮像素子上に結像する。撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサである。撮像素子は、被写体像を光電変換して撮像信号を生成し、出力する。撮像信号は、信号線を経由して、内視鏡プロセッサ4へ伝送される。
【0015】
湾曲部7は、先端部6の基端側に連設された湾曲可能な部位であり、湾曲することで先端部6が向く方向を変更する。先端部6の方向を変更することで、被検体の観察部位を変更し、または内視鏡2の挿入性を向上する。
【0016】
可撓管部8は、湾曲部7の基端側に連設された、可性を有する部位である。
【0017】
挿入部9および操作部10内には、湾曲部7を湾曲するための湾曲ワイヤと、処置具を挿通するための処置具チャンネルと、が配設されている。また、内視鏡2の、挿入部9、操作部10、およびユニバーサルケーブル17内には、撮像素子と接続される上述した信号線と、照明光を伝送するためのライトガイドとが配設されている。
【0018】
操作部10には、湾曲ワイヤを経由して湾曲部7を湾曲操作するための湾曲操作部14、フォーカススイッチ15を含む各種のスイッチ類などが設けられている。撮像光学系が変倍光学系を備える場合、フォーカススイッチ15を操作することでフォーカス位置が近点または遠点に変更され、被検体像の変倍が行われる。湾曲操作部14は、湾曲部7を上下方向に湾曲操作するためのUD湾曲操作ノブ12と、湾曲部7を左右方向に湾曲操作するためのRL湾曲操作ノブ13とを備える。湾曲部7は、上下方向の湾曲と左右方向の湾曲とを組み合わせることで、斜め方向の湾曲も行える。
【0019】
操作部10の先端側には、術者が手で内視鏡2を把持するための把持部11と、上述した処置具チャネルの基端側の開口となる処置具チャネル挿入口16とが設けられている。
【0020】
ユニバーサルケーブル17は、操作部10の例えば基端側の側面から延出されている。ユニバーサルケーブル17の基端には、スコープコネクタ17aが設けられている。スコープコネクタ17aは、内視鏡2を光源装置3に着脱自在に接続する。スコープコネクタ17aが光源装置3に接続されることで、ライトガイドによる照明光の伝送が可能となる。
【0021】
スコープコネクタ17aは、側面からコイル状の電気ケーブル18が延出されている。電気ケーブル18の延出端に設けられた電気コネクタ18aは、内視鏡プロセッサ4と着脱自在に接続される。電気コネクタ18aが内視鏡プロセッサ4と接続されることで、撮像素子が内視鏡プロセッサ4と電気的に接続される。
【0022】
内視鏡プロセッサ4は、表示装置であるモニタ5と電気的に接続されている。内視鏡プロセッサ4は、内視鏡2の撮像素子から出力された撮像信号を処理して、表示用画像情報を生成する。表示用画像情報は、内視鏡プロセッサ4からモニタ5へ出力され、モニタ5に内視鏡画像を含む表示画像として表示される。また、モニタ5は、音声を出力するスピーカ5aを備えている。
【0023】
図2は、内視鏡装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
内視鏡2は、上述したように、撮像装置21を備えている。撮像装置21は、光源装置3から第1照明光が照射された被検体を撮像することにより第1画像情報(後述する白色光画像情報)を取得し、光源装置3から第2照明光が照射された被検体を撮像することにより第2画像情報(後述する第1特殊光画像情報と第2特殊光画像情報)を取得する
【0025】
光源装置3は、第1照明光と、第1照明光とはスペクトルの異なる第2照明光とを含む複数種類の照明光を照射可能である。本実施形態の光源装置3は、白色光源31と、第1特殊光源32と、第2特殊光源33と、を備えている。白色光源31は、観察用の白色光を発光する。第1特殊光源32は、白色光とはスペクトルの異なる第1特殊光を発光する。第2特殊光源33は、白色光および第1特殊光とはスペクトルの異なる第2特殊光を発光する。白色光は第1照明光であり、第1特殊光および第2特殊光は第2照明光である。
【0026】
具体的に、光源装置3は、R(赤)、G(緑)、B(青)、V(バイオレット)、A(アンバー)等の各色光を発光する複数の光源を備え、各色光源を組み合わせることで、上述した白色光源31、第1特殊光源32、および第2特殊光源33が構成される。
【0027】
光源装置3は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、またはLD(Laser Diode)等の発光デバイスを備える。一例として、光源装置3は、中心波長が約405nmの紫色(V)光を発光するV-LEDと、中心波長が約445nmの青色(B)光を発光するB-LEDと、中心波長が約540nmの緑色(G)光を発光するG-LEDと、中心波長が約630nmの赤色(R)光を発光するR-LEDと、を備える。また、光源装置3は、プリズム、ミラー、光ファイバ、または、波長帯域もしくは光量等を調節する光学フィルタ等、を必要に応じて備える。
【0028】
本実施形態の光源装置3は、例えば、白色光、第1特殊光、第2特殊光を、フレーム毎に順次発光するようになっている。これにより、撮像装置21は、白色光画像情報(以下、白色光画像という)、第1特殊光画像情報(以下、第1特殊光画像という)、第2特殊光画像情報(以下、第2特殊光画像という)を順に取得し、第2特殊光画像の次はまた白色光画像を取得することを繰り返して行う。ただし、各画像を1フレームで取得することに限定されず、複数フレームで何れかの画像を取得するようにしても構わない。例えば、白色光画像および第1特殊光画像は各1フレームで取得するが、第2特殊光画像は2フレームで取得する、等である。
【0029】
内視鏡プロセッサ4は、画像処理部41と、白色光識別器42と、第1特殊光識別器43と、第2特殊光識別器44と、病変領域選定部45と、表示処理部46と、バス47と、制御部48と、を備えている。
【0030】
なお、図2には、白色光識別器42、第1特殊光識別器43、および第2特殊光識別器44の3つを設けたが、2つ、もしくは4つ以上であっても構わない。また、複数の識別機能を有する識別器を1つ設けて、識別機能を切り替えることで、白色光識別器42、第1特殊光識別器43、および第2特殊光識別器44の何れとしても機能するように構成しても構わない。
【0031】
図3は内視鏡プロセッサ4の電気的な構成例を示すブロック図である。図2には、内視鏡プロセッサ4の機能的な構成を示したが、内視鏡プロセッサ4は、電気的な構成として、例えば、プロセッサ4aと、メモリ4bとを備えている。
【0032】
プロセッサ4aは、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を備えている。メモリ4bは、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ディスク記憶媒体などの記憶媒体である。メモリ4bは、処理プログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記憶媒体を含む。
【0033】
プロセッサ4aは、メモリ4bに記憶された処理プログラムを読み込んで実行することにより、図2に示す各部の機能を果たす。ただし、この構成に限定されるものではなく、プロセッサ4aは、各部の機能を果たす専用の電子回路として構成されていても構わない。
【0034】
また、図4は、識別器42,43,44の構成例を示すブロック図である。白色光識別器42、第1特殊光識別器43、および第2特殊光識別器44は、何れも、照明光を照射して取得された画像情報から病変候補の領域を検出する病変識別器4cを備えている。病変識別器4cは、例えば、病変画像を学習した人工知能(AI:Artificial Intelligence)を含む。
【0035】
画像処理部41は、撮像装置21から出力された画像情報に、デモザイキング、ノイズ補正、色補正、コントラスト補正、ガンマ補正などの各種処理を行い、モニタ5へ出力可能なフォーマットの画像信号(表示用画像情報)に変換する。
【0036】
白色光識別器42は第1識別器であり、第1特殊光識別器43および第2特殊光識別器44は第2識別器である。
【0037】
白色光識別器42は、白色光画像として撮像された病変画像を、機械学習、ディープラーニング等により学習したAIを含む。白色光識別器42は、白色光源31から発光された白色光を被検体に照射して撮像装置21により取得された内視鏡画像(白色光画像)から、病変候補領域(病変候補の第1領域)を検出する。また、白色光識別器42は、検出した病変候補領域の信頼度スコアを算出する。信頼度スコアは、病変候補領域が実際に病変である確度(確信度)を示す。
【0038】
第1特殊光識別器43は、第1特殊光画像として撮像された病変画像を、機械学習、ディープラーニング等により学習したAIを含む。第1特殊光識別器43は、第1特殊光源32から発光された第1特殊光を被検体に照射して撮像装置21により取得された内視鏡画像(第1特殊光画像)から、病変候補領域(病変候補の第2領域)を検出する。また、第1特殊光識別器43は、検出した病変候補領域の信頼度スコアを算出する。
【0039】
第2特殊光識別器44は、第2特殊光画像として撮像された病変画像を、機械学習、ディープラーニング等により学習したAIを含む。第2特殊光識別器44は、第2特殊光源33から発光された第2特殊光を被検体に照射して撮像装置21により取得された内視鏡画像(第2特殊光画像)から、病変候補領域(病変候補の第2領域)を検出する。また、第2特殊光識別器44は、検出した病変候補領域の信頼度スコアを算出する。
【0040】
第1特殊光識別器43と第2特殊光識別器44は、例えば、粘膜表面からの深さが異なる位置(表層、中層、深層)にある病変候補領域を検出する識別器として構成できる。病変候補領域の検出は、例えば、狙いの深さにある血管情報を強調した画像に基づき行う。血管情報を強調する特殊光として、狙いの深さに十分に深達し、酸化、還元ヘモグロビンの吸光係数μaに差がある狭帯域光の波長と、差がない等吸収点の狭帯域光の波長と、のセット(表層、中層、深層の各深さの血管の酸素飽和度を算出するときに最適な狭帯域光の波長セット)が例えば選ばれる。こうした波長セットの照明光は、NBI(Narrow Band Imaging)用照明光として知られている。
【0041】
表層型病変の識別器は、粘膜表面、または粘膜表面からの深さが比較的浅い(粘膜表面から数十μm程度の深さの)表層型病変を識別する。表層型の血管情報を強調する特殊光は、例えば、参照光としての紫色光(405nm)、および測定光としての青色光(445nm)を含み、かつ、紫色光の光量が青色光の光量よりも大きい光である。表層型病変の識別器は、表層型の血管情報を強調する特殊光で撮像された病変画像により学習した識別器である。
【0042】
中層型病変の識別器は、粘膜表面からの深さが中程度(数十~数百μmの深さ)の中層型病変を識別する。中層型の血管情報を強調する特殊光は、例えば、測定光としての青色光(473nm)、参照光としての緑色光、および参照光としての赤色光を含み、青色光の光量は緑色光の光量よりも大きく、かつ、緑色光の光量は赤色光の光量よりも大きい光である。中層型病変の識別器は、中層型の血管情報を強調する特殊光で撮像された病変画像により学習した識別器である。
【0043】
深層型病変の識別器は、粘膜表面からの深さが深い(粘膜筋板から粘膜下組織層の深さの)深層型病変を識別する。深層型の血管情報を強調する特殊光は、例えば、参照光としての青色光、参照光としての緑色光、および測定光としての赤色光(630nm)を含み、緑色光の光量は青色光の光量よりも大きく、かつ、青色光の光量は赤色光の光量よりも大きい特殊光で撮像された病変画像で学習された識別器などである。
【0044】
なお、粘膜表面からの深さが異なる病変の識別器を第2識別器(第1特殊光識別器43、第2特殊光識別器44)の例として挙げたが、これに限定されない。第2識別器は、例えば、粘膜上の残渣もしくは胆汁、または出血による粘膜上の血液などの、白色光では病変候補領域を検出する障害物となるものを透過する特殊光(RDI(Red Dichromatic Imaging)用照明光)で撮像された病変画像で学習された識別器であっても構わない。RDI用照明光は、例えば、緑、アンバー、および赤の3色の特定の波長の光を用いる。従って、複数種類の第2照明光は、NBI用照明光と、RDI用照明光と、の少なくとも一方を含むとよい。
【0045】
なお、本実施形態では、一例として、第1特殊光識別器43が表層型病変の識別器であり、第2特殊光識別器44が中層型病変の識別器であるとして説明する。
【0046】
病変領域選定部45は、白色光識別器42により検出された病変候補領域と、第1特殊光識別器43により検出された病変候補領域と、第2特殊光識別器44により検出された病変候補領域と、に基づいて、病変候補の表示用領域を選定する。
【0047】
病変領域選定部45による表示用領域の選定方法は、例えば、以下のような(1)~(3)の方法を用いることができる。以下に示す(1)~(3)の方法は、何れも、白色光画像の病変候補領域(第1領域)の信頼度スコアと、第1特殊光画像の病変候補領域(第2領域)の信頼度スコアと、第2特殊光画像の病変候補領域(第2領域)の信頼度スコアと、の複数の信頼度スコアを算出し、複数の信頼度スコアに基づき、表示用領域を選定する方法である。
【0048】
以下では適宜、白色光識別器42により検出された病変候補領域を領域1、第1特殊光識別器43により検出された病変候補領域を領域2、第2特殊光識別器44により検出された病変候補領域を領域3という。なお、領域1に関して、病変候補が検出されず領域1が存在しない場合があるし、1つの画像内に1つまたは複数の病変候補が検出されて領域1が1つまたは複数存在する場合がある。領域2,3についても領域1と同様に、0、1、または複数存在する場合がある。
(1)領域1~3の内の、信頼度スコアが所定の閾値(規定値)以上である領域をまず抽出し、抽出した領域の中で位置が重なる複数の領域については、全ての領域をマージして、表示用領域として選定する。また、抽出した領域の中で位置が重ならない領域については、そのまま表示用領域として選定する。
(2)領域1~3の内の、信頼度スコアが所定の閾値(規定値)以上である領域をまず抽出し、抽出した領域の中で位置が重なる複数の領域については、最も信頼度スコアが高い領域を表示用領域として選定する。また、抽出した領域の中で位置が重ならない領域については、そのまま表示用領域として選定する。
(3)被検体の観察対象部位(内視鏡検査の対象となる臓器)に応じて、信頼度スコアに重み付けを行い、重み付けした信頼度スコアに基づき(2)の方法を適用して、表示用領域を選定する。
【0049】
(3)の方法について、さらに説明する。以下では適宜、領域1の信頼度スコアをスコア1、領域2の信頼度スコアをスコア2、領域3の信頼度スコアをスコア3という。また、スコア1に乗算する重み係数を重み係数1、スコア2に乗算する重み係数を重み係数2、スコア3に乗算する重み係数を重み係数3という。
【0050】
食道や大腸などの臓器は、表層型の血管情報を強調する特殊光で撮像された画像による診断方法が確立されつつある。そこで、臓器が食道または大腸である場合には、重み係数2を重み係数1および重み係数3よりも大きくして(2)の方法を適用し、表示用領域を選定する。このとき、重み係数1および重み係数3を0に設定すれば、表層型病変の識別器である第1特殊光識別器43により検出された領域2のみを選定対象とすることになり、識別器として第1特殊光識別器43を選択するのと同じである。
【0051】
また、臓器が胃であって病変がスキルス胃癌である場合、中層型の血管情報を強調する特殊光で撮像された画像による診断方法が確立されつつある。そこで、臓器が胃である場合には、重み係数3を重み係数1および重み係数2よりも大きくして(2)の方法を適用し、表示用領域を選定する。このとき、重み係数1および重み係数2を0に設定すれば、中層型病変の識別器である第2特殊光識別器44により検出された領域3のみを選定対象とすることになり、識別器として第2特殊光識別器44を選択するのと同じである。
【0052】
従って、臓器に応じて、白色光画像の病変候補領域(第1領域)と、第1特殊光画像の病変候補領域(第2領域)と、第2特殊光画像の病変候補領域(第2領域)との内の、何れが表示用領域に選定されるかが異なる。
【0053】
臓器に応じた重み付けの切替は、ユーザ指示に応じて(つまり手動で)行ってもよいし、内視鏡画像の特徴に基づき制御部48が判定して自動で行ってもよいし、内視鏡2の挿入部9の挿入長を検出して、検出結果に基づき制御部48が判定して自動で行ってもよいし、内視鏡2の先端部6に位置検出センサを組み込んで、位置検出センサの検出結果に基づき制御部48が判定して自動で行ってもよい。
【0054】
表示処理部46には、白色光識別器42および病変領域選定部45を経由して、画像処理部41から白色光画像が送信される。さらに、表示処理部46には、病変領域選定部45により選定された表示用領域が送信される。
【0055】
バス47は、内視鏡プロセッサ4内の各部が命令や情報の送受信を行う伝送路である。
【0056】
制御部48は、バス47を経由して、画像処理部41、白色光識別器42、第1特殊光識別器43、第2特殊光識別器44、病変領域選定部45、および表示処理部46と接続されており、これらを制御する。
【0057】
制御部48は、動き検出部48aを備えている。動き検出部48aは、白色光画像と、第1特殊光画像と、第2特殊光画像との動きを検出する。制御部48による動き検出は、例えば画像解析により行ってもよいし、内視鏡2の先端部6に加速度センサまたは上述した位置検出センサを組み込んで、センサの検出結果に基づき行っても構わない。
【0058】
画像の動きは、内視鏡2の先端部6に設けられた撮像装置21の、被検体に相対する移動により生じる。画像の動きの種類としては、例えば、画面上における上下方向、左右方向の動き、被検体に相対する撮像装置21の回転の動きの他、被検体に対して先端部6が近接/離隔することによる(または撮像装置21が変倍光学系を備える場合には、変倍による)画像の拡大/縮小の動きがある。制御部48は、動き検出部48aにより検出した画像の動き情報を、病変領域選定部45および表示処理部46へ送信する。
【0059】
病変領域選定部45は、制御部48から送信された画像の動き情報に基づき、画像同士を位置合わせ(位置ズレ補正)してから(従って、画像中の病変候補領域同士を位置合わせしてから)、領域1~3から表示用領域を選定する。
【0060】
表示処理部46は、制御部48から送信された画像の動き情報に基づき表示用領域を白色光画像に位置合わせする。ただし、白色光画像に対する表示用領域の位置合わせは、病変領域選定部45により行っても構わない。そして、表示処理部46は、白色光画像に表示用領域を重畳して表示用画像情報を生成し、モニタ5へ出力する。なお、白色光画像に重畳される表示用領域は、例えばマージされた領域の輪郭線でもよいが、マージされた領域の範囲を示すマーカ(例えば、四角枠)であっても構わない。
【0061】
モニタ5は、表示処理部46から入力した表示用画像情報により、表示画像をモニタ画面上に表示する。
【0062】
図5は、各識別器42,43,44とモニタ5とにおける画像情報の例を示す図表である。
【0063】
白色光識別器42は、白色光画像51から病変候補領域51aを検出する。
【0064】
第1特殊光識別器43は、第1特殊光画像52から病変候補領域52aを検出する。
【0065】
第2特殊光識別器44は、第2特殊光画像53から病変候補領域53aを検出する。
【0066】
モニタ5は、表示用領域50aが重畳された表示画像50を、モニタ画面上に表示する。ここで、表示用領域50aは、例えば、病変候補領域51a、病変候補領域52a、および病変候補領域53aを例えばマージして得られた領域である。なお、図5に記載された鑑別結果50bおよび進行度50cの表示については、後の実施形態で説明する。
【0067】
図6は、内視鏡プロセッサ4の処理を示すフローチャートである。図6は、3フレーム毎に白色光画像、第1特殊光画像、第2特殊光画像を順に取得する例を示している。
【0068】
例えばn(nは整数)フレーム目に、光源装置3から白色光を発光して、撮像装置21により白色光画像を取得する。取得された白色光画像は、内視鏡プロセッサ4に入力される(ステップS1)。入力された白色光画像は、画像処理部41により処理された後に、白色光識別器42と、表示処理部46とへ送られる。
【0069】
白色光識別器42は、白色光識別器42内の病変識別器4cにより、白色光画像から病変候補領域を検出すると共に、信頼度スコアを、検出された病変候補領域毎に算出する(ステップS2)。
【0070】
制御部48は、病変候補領域が検出された場合には、白色光識別器42により算出された信頼度スコアが規定値(閾値)以上であるか否かを、病変候補領域毎にそれぞれ判定する(ステップS3)。なお、制御部48は、病変候補領域が検出されない場合には、ステップS3の処理をスキップして、ステップS4へ進む。
【0071】
制御部48は、病変候補領域が検出されないか、または全ての病変候補領域の信頼度スコアが規定値未満であると判定された場合は、病変なしと判定して(ステップS4)、病変候補領域があっても白色光識別器42から病変領域選定部45へ送信させない。
【0072】
一方、制御部48は、信頼度スコアが規定値以上である病変候補領域があると判定された場合は、その病変候補領域を白色光識別器42から病変領域選定部45へ送信させる。
【0073】
続く(n+1)フレーム目に、光源装置3から表層血管が強調される第1特殊光を発光して、撮像装置21により第1特殊光画像を取得する。取得された第1特殊光画像は、内視鏡プロセッサ4に入力される(ステップS5)。入力された第1特殊光画像は、画像処理部41により処理された後に、第1特殊光識別器43へ送られる。
【0074】
第1特殊光識別器43は、第1特殊光識別器43内の病変識別器4cにより、第1特殊光画像から病変候補領域を検出すると共に、信頼度スコアを、検出された病変候補領域毎に算出する(ステップS6)。
【0075】
制御部48は、病変候補領域が検出された場合には、第1特殊光識別器43により算出された信頼度スコアが規定値(閾値)以上であるか否かを、病変候補領域毎にそれぞれ判定する(ステップS7)。なお、制御部48は、病変候補領域が検出されない場合には、ステップS7の処理をスキップして、ステップS8へ進む。
【0076】
制御部48は、病変候補領域が検出されないか、または全ての病変候補領域の信頼度スコアが規定値未満であると判定された場合は、病変なしと判定して(ステップS8)、病変候補領域があっても第1特殊光識別器43から病変領域選定部45へ送信させない。
【0077】
一方、制御部48は、信頼度スコアが規定値以上である病変候補領域があると判定された場合は、その病変候補領域を第1特殊光識別器43から病変領域選定部45へ送信させる。
【0078】
その後の(n+2)フレーム目に、光源装置3から中層血管が強調される第2特殊光を発光して、撮像装置21により第2特殊光画像を取得する。取得された第2特殊光画像は、内視鏡プロセッサ4に入力される(ステップS9)。入力された第2特殊光画像は、画像処理部41により処理された後に、第2特殊光識別器44へ送られる。
【0079】
第2特殊光識別器44は、第2特殊光識別器44内の病変識別器4cにより、第2特殊光画像から病変候補領域を検出すると共に、信頼度スコアを、検出された病変候補領域毎に算出する(ステップS10)。
【0080】
制御部48は、病変候補領域が検出された場合には、第2特殊光識別器44により算出された信頼度スコアが規定値(閾値)以上であるか否かを、病変候補領域毎にそれぞれ判定する(ステップS11)。なお、制御部48は、病変候補領域が検出されない場合には、ステップS11の処理をスキップして、ステップS12へ進む。
【0081】
制御部48は、病変候補領域が検出されないか、または全ての病変候補領域の信頼度スコアが規定値未満であると判定された場合は、病変なしと判定して(ステップS12)、病変候補領域があっても第2特殊光識別器44から病変領域選定部45へ送信させない。
【0082】
一方、制御部48は、信頼度スコアが規定値以上である病変候補領域があると判定された場合は、その病変候補領域を第2特殊光識別器44から病変領域選定部45へ送信させる。
【0083】
ステップS3において信頼度スコアが規定値以上であると判定された場合、ステップS7において信頼度スコアが規定値以上であると判定された場合、ステップS11において信頼度スコアが規定値以上であると判定された場合に、病変領域選定部45は、n~(n+2)フレームの画像に基づき得られた病変候補領域から、表示用領域を選定する(ステップS13)。ここでは、病変領域選定部45が、例えば、入力された全ての病変候補領域を上述したように位置合わせした上でマージして、表示用領域とする。すなわち、病変領域選定部45により処理される病変候補領域は、何れも、信頼度スコアが規定値以上の領域である。
【0084】
続いて、表示処理部46が、表示用領域を位置合わせして白色光画像(第1画像情報)に重畳する画像合成を行って表示用画像情報を生成する(ステップS14)。生成された表示用画像情報は、内視鏡プロセッサ4からモニタ5へ出力され、表示画像がモニタ5のモニタ画面上に表示される。
【0085】
(n+2)フレーム目の処理を行ったら、その後の(n+3),(n+4),(n+5)フレーム目の処理は上述したn,(n+1),(n+2)フレーム目と同様の処理を行い、さらにその後も同様である。
【0086】
なお、3フレーム毎に表示用画像情報を1回生成して表示画像を表示すると、フレームレートが低下する。そこで、n~(n+2)フレームの画像に基づき表示画像を表示したら、次は(n+1)~(n+3)フレームの画像に基づき表示画像を表示し、さらに(n+2)~(n+4)フレームの画像に基づき表示画像を表示する、等を順次行うことで、フレームレートが低下しないようにしても構わない。
【0087】
このような第1の実施形態によれば、白色光を含むスペクトルの異なる複数の照明光を照射して取得された複数の画像情報から複数の病変候補領域を検出し、複数の病変候補領域から表示用領域を選定して、選定した表示用領域を白色光画像に重畳した表示用画像情報を生成するようにしたために、白色光では見落とす可能性がある病変を検出する機能を実現できる。また、特殊光画像では暗くて見難い被検体の細部を、白色光画像により視認できる。
【0088】
さらに、複数種類の第2照明光、つまり、第1特殊光および第2特殊光を用いることで、例えば粘膜表面からの深さが異なる病変を、それぞれの画像から検出可能となる。
【0089】
このとき、第2照明光としてNBI(Narrow Band Imaging)用照明光を用いると、血管を強調することができる。また、第2照明光としてRDI(Red Dichromatic Imaging)用照明光を用いると、残渣、胆汁、血液などの障害物を透過して病変を検出できる。
【0090】
そして、信頼度スコアに基づき病変候補の表示用領域を選定することで、病変の検出精度を高められる。このとき、信頼度スコアが閾値よりも高い領域から表示用領域を選定することで、術者は、病変である可能性が高い領域の観察に集中できる。
【0091】
また、被検体の観察対象部位である臓器に応じて、どの照明光に係る画像情報から検出された病変候補領域を表示用領域に選定するかを異ならせることで、診断方法が確立された病変に対応した、適確なコンピュータ支援画像診断(CAD:Computer Aided Detection/Diagnosis)を行える。
【0092】
そして、動き検出の結果に応じて複数の画像情報から検出された病変候補領域を位置合わせしてから、表示用領域を選定し表示用画像情報を生成するようにしたために、複数の画像間に動きがあった場合でも、白色光画像上の適確な位置にマーカ表示等を行える。
【0093】
こうして、白色光画像および特殊光画像を含む複数種類の画像から総合的に判断して病変候補の表示用領域を選定し、白色光画像上に表示用領域をマーカ等で表示するコンピュータ支援画像診断を行うことで、病変の見落としが減って病変を発見し易くなり、かつ病変の規模を正確に把握し易くなる。これにより、術者が表示画像を見て、診断を下し易くなる。
[第2の実施形態]
【0094】
図7および図8は本発明の第2の実施形態を示したものであり、図7は識別器42,43,44の構成例を示すブロック図である。この第2の実施形態において、上述の第1の実施形態と同様である部分については同一の符号を付すなどして説明を適宜省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0095】
本実施形態は、上述した第1の実施形態の病変候補領域の表示に加えて、病変候補領域に対する鑑別結果を表示するようにしたものとなっている。
【0096】
図7に示すように、本実施形態の白色光識別器42、第1特殊光識別器43、および第2特殊光識別器44は、何れも、病変識別器4cに加えて、鑑別識別器4dを備えている。
【0097】
鑑別識別器4dは、例えば、病変画像を学習したAIを含む。鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより検出された1つ以上の病変候補領域に対して、それぞれの病変の種類を鑑別し、鑑別した病変の種類の信頼度スコアを算出する。
【0098】
鑑別識別器4dは、例えば、病変候補領域が「ポリープ」であると鑑別し、「ポリープ」である信頼度スコアが例えば「60%」であると算出する。
【0099】
ただし、鑑別識別器4dは、1つの鑑別結果を出力するとは限らず、例えば、「ポリープである信頼度スコアが60%」、「潰瘍性大腸炎である信頼度スコアが10%」、「クローン病である信頼度スコアが1%未満」などのような複数種類の病変に対する鑑別結果を出力しても構わない。
【0100】
なお、図7においては、病変識別器4cと鑑別識別器4dを別のブロックとして記載したが、1つのAIが両方のブロックとして機能するように構成しても構わない。
【0101】
図8は、内視鏡プロセッサ4の処理を示すフローチャートである。図8において、図6と異なる部分を以下に説明する。
【0102】
nフレーム目で取得された白色光画像に関して、白色光識別器42は、ステップS2の処理を行うと共に、白色光識別器42内の病変識別器4cにより検出された病変候補領域に対して、白色光識別器42内の鑑別識別器4dにより鑑別を行う。鑑別識別器4dは、病変候補領域の鑑別結果と、鑑別結果に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS21)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS21の処理をスキップする。
【0103】
(n+1)フレーム目で取得された第1特殊光画像に関して、第1特殊光識別器43は、ステップS6の処理を行うと共に、第1特殊光識別器43内の病変識別器4cにより検出された病変候補領域に対して、第1特殊光識別器43内の鑑別識別器4dにより鑑別を行う。鑑別識別器4dは、病変候補領域の鑑別結果と、鑑別結果に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS22)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS22の処理をスキップする。
【0104】
(n+2)フレーム目で取得された第2特殊光画像に関して、第2特殊光識別器44は、ステップS10の処理を行うと共に、第2特殊光識別器44内の病変識別器4cにより検出された病変候補領域に対して、第2特殊光識別器44内の鑑別識別器4dにより鑑別を行う。鑑別識別器4dは、病変候補領域の鑑別結果と、鑑別結果に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS23)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS23の処理をスキップする。
【0105】
病変領域選定部45は、ステップS13の処理を行うと共に、ステップS21で得られた鑑別結果に対する信頼度スコアと、ステップS22で得られた鑑別結果に対する信頼度スコアと、ステップS23で得られた鑑別結果に対する信頼度スコアとを比較して、どの鑑別結果を表示するかを決定し、決定した鑑別結果を表示処理部46へ出力する(ステップS24)。
【0106】
ここで、病変領域選定部45は、例えば、信頼度スコアが最も高い鑑別結果を、表示する鑑別結果として決定してもよい。また、病変領域選定部45は、信頼度スコアが高い方から順に幾つかの(つまり複数の)鑑別結果を、表示する鑑別結果として決定し、表示する鑑別結果に信頼度スコアを並べて表示しても構わない。
【0107】
表示処理部46は、表示用領域を位置合わせして白色光画像(第1画像情報)に重畳する画像合成を行い、さらに白色光画像の近傍に鑑別結果を含める画像合成を行って表示用画像情報を生成する(ステップS14A)。生成された表示用画像情報は、内視鏡プロセッサ4からモニタ5へ出力され、表示画像がモニタ5のモニタ画面上に表示される。これにより、図5に示すような鑑別結果50bが表示される。
【0108】
このような第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、病変の種類を鑑別して、鑑別結果を含む表示用画像情報を生成するようにしたために、病変の種類に対する、術者の主観による診断のバラツキを減らすことが可能となる。
[第3の実施形態]
【0109】
図9および図10は本発明の第3の実施形態を示したものであり、図9は識別器42,43,44の構成例を示すブロック図である。この第3の実施形態において、上述の第1,2の実施形態と同様である部分については同一の符号を付すなどして説明を適宜省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0110】
本実施形態は、上述した第2の実施形態の病変候補領域および鑑別結果の表示に加えて、病変の進行度を表示するようにしたものとなっている。
【0111】
図9に示すように、本実施形態の白色光識別器42、第1特殊光識別器43、および第2特殊光識別器44は、何れも、病変識別器4cおよび鑑別識別器4dに加えて、進行度識別器4eを備えている。
【0112】
進行度識別器4eは、例えば、病変画像を学習したAIを含む。進行度識別器4eは、病変候補領域に対して鑑別識別器4dにより鑑別された病変の進行度を識別し、進行度の信頼度スコアを算出する。
【0113】
なお、図9においては、病変識別器4cと鑑別識別器4dと進行度識別器4eを別のブロックとして記載したが、1つのAIが3つのブロックとして機能するように構成しても構わない。
【0114】
例えば、ポリープ(癌を含む)の内視鏡所見分類には、NICE(The Narrow-band imaging International Colorectal Endoscopic)分類、およびJNET(The Japan NBI(Narrow Band Imaging) Expert Team)分類などがある。
【0115】
例えばNICE分類に従ってポリープの進行度を識別する場合、「NICE Type1」、「NICE Type2」、および「NICE Type3」の何れかに識別する。「NICE Type1」は過形成病変を表し、「NICE Type2」は腺腫(アデノーマ)から粘膜内癌(いわゆるM癌)を表し、かつ、「NICE Type3」は粘膜下層浸潤癌(いわゆるSM癌)を表す。
【0116】
また、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)の内視鏡所見分類には、Mayo分類、Matts分類、およびUCEIS(Ulcerative Colitis Endoscopic. Index of Severity)分類などがある。
【0117】
例えばMayo分類に従って潰瘍性大腸炎の進行度を識別する場合、Mayo0(グレード0)、Mayo1(グレード1)、Mayo2(グレード2)、およびMayo3(グレード3)の4段階のグレードの何れかに識別する。Mayo0は、正常または非活動性(寛解期を含む)を表すグレードである。Mayo1は、軽症を表すグレードであり、一般に、発赤、血管像不明瞭、または、軽度の易出血性が認められる状態である。Mayo2は、中等症を表すグレードであり、一般に、顕著な発赤、血管像の消失、易出血性、膿性分泌物の付着、粘膜粗造、糜爛、または、部分的な潰瘍等が認められる状態である。Mayo3は、重症(活動期)を表すグレードであり、一般に、明らかな自然出血、浮腫、潰瘍(広範な潰瘍を含む)等が認められる状態である。また、潰瘍性大腸炎にともなう異形成(dysplasia)を識別してもよい。
【0118】
クローン病の内視鏡所見分類には、SESCD(Simple Endoscopic Score for Crohn's Disease)などがある。SESCDに従ってクローン病の進行度を識別する場合、「SESCD 0」、「SESCD 1」、「SESCD 2」、および「SESCD 3」の何れかに識別する。
【0119】
なお、病変領域選定部45が、信頼度スコアが高い方から順に、複数の鑑別結果を表示する鑑別結果として決定した場合、進行度も複数の鑑別結果のそれぞれに対して識別する。
【0120】
図10は、内視鏡プロセッサ4の処理を示すフローチャートである。図10において、図8と異なる部分を以下に説明する。
【0121】
nフレーム目で取得された白色光画像に関して、白色光識別器42は、ステップS2およびステップS21の処理を行うと共に、白色光識別器42内の鑑別識別器4dにより鑑別された病変に対して、白色光識別器42内の進行度識別器4eにより進行度の識別を行う。進行度識別器4eは、進行度の識別結果と、識別された進行度に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS31)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS31の処理をスキップする。
【0122】
(n+1)フレーム目で取得された第1特殊光画像に関して、第1特殊光識別器43は、ステップS6およびステップS22の処理を行うと共に、第1特殊光識別器43内の鑑別識別器4dにより鑑別された病変に対して、第1特殊光識別器43内の進行度識別器4eにより進行度の識別を行う。進行度識別器4eは、進行度の識別結果と、識別された進行度に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS32)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS32の処理をスキップする。
【0123】
(n+2)フレーム目で取得された第2特殊光画像に関して、第2特殊光識別器44は、ステップS10およびステップS23の処理を行うと共に、第2特殊光識別器44内の鑑別識別器4dにより鑑別された病変に対して、第2特殊光識別器44内の進行度識別器4eにより進行度の識別を行う。進行度識別器4eは、進行度の識別結果と、識別された進行度に対する信頼度スコアとを算出する(ステップS33)。なお、鑑別識別器4dは、病変識別器4cにより病変候補領域が検出されない場合には、ステップS33の処理をスキップする。
【0124】
病変領域選定部45は、ステップS13およびステップS24の処理を行うと共に、ステップS24で表示すると決定された鑑別結果に対応する進行度を、信頼度スコアに基づき決定して、決定した進行度を表示処理部46へ出力する(ステップS34)。
【0125】
例えば、表示する鑑別結果が潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)である場合、進行度がMayo0(グレード0)である信頼度スコアが30%、Mayo1(グレード1)である信頼度スコアが60%、Mayo2(グレード2)である信頼度スコアが10%、およびMayo3(グレード3)である信頼度スコアが1%未満であるとする。このとき、病変領域選定部45は、例えば信頼度スコアが最も高い「Mayo1」を進行度として決定して、表示処理部46へ出力する。
【0126】
表示処理部46は、表示用領域を位置合わせして白色光画像(第1画像情報)に重畳する画像合成を行い、さらに白色光画像の近傍に鑑別結果と進行度とを含める画像合成を行って表示用画像情報を生成する(ステップS14B)。生成された表示用画像情報は、内視鏡プロセッサ4からモニタ5へ出力され、表示画像がモニタ5のモニタ画面上に表示される。これにより、図5に示すような鑑別結果50bおよび進行度50cが表示される。
【0127】
このような第3の実施形態によれば、上述した第1,2の実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、病変の進行度を識別し、進行度を含む表示用画像情報を生成するようにしたために、病変の進行度に対する、術者の主観による診断のバラツキを減らすことが可能となる。
【0128】
なお、上述では本発明が内視鏡プロセッサ、および内視鏡プロセッサを有する内視鏡装置である場合を主として説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、内視鏡プロセッサと同様の処理を行う診断用画像生成方法であっても構わない。また、本発明は、内視鏡プロセッサと同様の処理をコンピュータに行わせるためのコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記録媒体、等であっても構わない。
【0129】
さらに、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10