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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】マイクロ波デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023539677
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2022023051
(87)【国際公開番号】W WO2023013239
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021128221
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595081770
【氏名又は名称】田伏 克惇
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】田伏 克惇
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049283(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を照射可能なマイクロ波デバイスであって、
前記マイクロ波を伝送する中心導体と、
前記中心導体を覆う絶縁体と、
前記絶縁体を覆う外部導体と、を含み、
前記中心導体は、前記マイクロ波デバイスの最先より外部に初めて露呈し、その露呈した中心導体の外部露呈部分は、前記マイクロ波デバイスの基端部側に向かって、前記外部導体に沿うように折り曲げられ、
前記外部導体に限って、該外部導体の軸方向に沿って、凹状のスリットが形成され、
前記凹状のスリットには、前記外部導体の軸方向に沿うように左右側壁面が形成されており、さらに、
前記凹状のスリットには、折り曲げられた前記中心導体の外部露呈部分が、前記左右側壁面に囲まれるように配置されてなるマイクロ波デバイス。
【請求項2】
前記中心導体の外部露呈部分は、前記外部導体に接触しないように折り曲げられてなる請求項1に記載のマイクロ波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、手術器具に使用されるマイクロ波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波は、消化器、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、前立腺、子宮、卵巣、骨、血管、腸管等の生体組織を低温(例えば、100℃以下)で凝固(固定化)できることが知られている。それゆえ、この特性を利用し、例えば、特許文献1に記載のように、手術器具にマイクロ波を照射できる機能を備えることによって、生体組織の凝固、止血を行う無血的切除が知られている。さらに、無指向性深部凝固用モノポールアンテナによって腫瘍の凝固治療が低侵襲治療として普及している。
【0003】
この特許文献1に記載のマイクロ波手術器具は、中心導体の断面積と外部導体の断面積の比を一定にして、中心導体の断面積と外部導体の断面積を漸次もしくは段階的に小さくすることにより、先細りする同軸体の先端までマイクロ波を伝送可能であること、及び、長軸方向に露出した中心導体全体からマイクロ波が照射されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-11994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなマイクロ波手術器具は、中心導体が長軸方向に露出していることから、中心導体の基端部の熱発生量が大きく、最先端部の熱発生量が小さいという問題があった。すなわち、マイクロ波は、中心導体が外部に露出している箇所から放射されることとなるため、中心導体の基端部から先端部に向かうにつれ、放射されるマイクロ波のエネルギーは、減衰することとなる。それゆえ、中心導体の基端部の熱発生量が大きく、最先端部の熱発生量が小さいという問題があった。そのため、上記のようなマイクロ波手術器具を用いて生体組織の凝固、止血を行う際、使用する頻度の高い最先端部の熱発生量が小さいことから、生体組織の凝固、止血が上手くいかなくなる可能性があるという問題があった。
【0006】
この点、マイクロ波手術器具の形状を大きくすると、上記問題がより顕著となるという問題があった。すなわち、マイクロ波手術器具の形状を大きくすると、それに伴い中心導体も大きくなることから、放射されるマイクロ波のエネルギーの減衰が顕著に表れ、もって、最先端部の熱発生量がより小さくなり、生体組織の凝固、止血がより上手くいかなくなる可能性があるという問題があった。それゆえ、マイクロ波手術器具の形状に設計上の限界があるという問題があった。このことは、無指向性深部凝固用モノポールアンテナを用いた腫瘍の凝固治療についても同様の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、先端部分の熱発生量を増大させることができるマイクロ波デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1に係るマイクロ波デバイスは、マイクロ波を照射可能なマイクロ波デバイス(1)であって、
前記マイクロ波を伝送する中心導体(21)と、
前記中心導体(21)を覆う絶縁体(22)と、
前記絶縁体(22)を覆う外部導体(23)と、を含み、
前記中心導体(21)は、前記マイクロ波デバイス(1)の最先(マイクロ波照射部20の先端)より外部に初めて露呈し、その露呈した中心導体(21)の外部露呈部分(21a)は、前記マイクロ波デバイス(1)の基端部(マイクロ波照射部20の基端部20b)側に向かって、前記外部導体(23)に沿うように折り曲げられ、
前記外部導体(23)に限って、該外部導体(23)の軸方向に沿って、凹状のスリット(23a)が形成され、
前記凹状のスリット(23a)には、前記外部導体(23)の軸方向に沿うように左右側壁面(左壁面23a1,右壁面23a2)が形成されており、さらに、 前記凹状のスリット(23a)には、折り曲げられた前記中心導体(21)の外部露呈部分(21a)が、前記左右側壁面(左壁面23a1,右壁面23a2)に囲まれるように配置されてなることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項に係るマイクロ波デバイスは、上記請求項に記載のマイクロ波デバイス(1)において、前記中心導体(21)の外部露呈部分(21a)は、前記外部導体(23)に接触しないように折り曲げられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1に係る発明によれば、中心導体(21)は、マイクロ波デバイス(1)の最先端部(マイクロ波照射部20の先端部20a)より外部に初めて露呈し、その露呈した中心導体(21)の外部露呈部分(21a)は、マイクロ波デバイス(1)の基端部(マイクロ波照射部20の基端部20b)側に向かって、前記外部導体(23)に沿うように折り曲げられている。これにより、マイクロ波デバイス(1)の最先端部(マイクロ波照射部20の先端部20a)のマイクロ波の熱発生量を従来に比べ増大させることができる。
【0014】
さらに、請求項1に係る発明によれば、外部導体(23)に限って、該外部導体(23)の軸方向に沿って、凹状のスリット(23a)が形成され、その凹状のスリット(23a)には、外部導体(23)の軸方向に沿うように左右側壁面(左壁面23a1,右壁面23a2)が形成されており、さらに、そのスリット(23a)には、折り曲げられた中心導体(21)の外部露呈部分(21a)が、左右側壁面(左壁面23a1,右壁面23a2)に囲まれるように配置されているから、マイクロ波の指向性を制御することができる。これにより、マイクロ波デバイス(1)の先端部にて生体組織を挟んだ際、生体組織の特定箇所にマイクロ波が照射されることとなるから、生体組織の凝固、止血を鋭利にできることとなる。
【0015】
そして、請求項に係る発明によれば、外部露呈部分(21a)は、外部導体(23)に接触しないように折り曲げられているから、ループアンテナのような状態となる事態を防止することができ、もって、生体組織にマイクロ波が照射されなくなる事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ波デバイスを鑷子型器具からなる手術器具に適用した場合の斜視図である。
図2】(a)は同実施形態に係るマイクロ波照射部の先端側の平面図、(b)は同実施形態に係るマイクロ波照射部の先端側の縦断面図、(c)は(b)に示すA-A線断面図、(d-1)は(b)に示すB-B線断面図、(d-2)は(d-1)に示す破線X部分の拡大図である。
図3】(a)は同実施形態に係るマイクロ波デバイスを鉗子型器具からなる手術器具に適用した場合の斜視図、(b)は同実施形態に係る手術器具本体の一部拡大図である。
図4】同実施形態に係るマイクロ波デバイスを鉗子型器具からなる手術器具に適用した場合を示し、図3とは異なる手術器具本体の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るマイクロ波デバイスを、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
本実施形態に係るマイクロ波デバイスの適用例として、例えば、図1に示すような鑷子型器具からなる手術器具に適用するものが例示される。具体的に説明すると、図1に示すように、鑷子型器具からなる手術器具Sは、先端部分が先細り形状となっている長尺細長楕円状の一対の手術器具本体Saにて構成されている。この一対の手術器具本体Saの基端部Sa1同士は固定されており、先端部Sa2は開放されている。これにより、一対の手術器具本体Sa同士が接近・離間できることとなり、もって、一対の手術器具本体Saを用いて、生体組織を挟んだり放したりすることができることとなる。
【0019】
かくして、このように構成される手術器具Sに、図1に示すようにマイクロ波デバイス1が設けられている。このマイクロ波デバイス1は、図1に示すように、マイクロ波導入部10と、マイクロ波照射部20と、で構成されている。
【0020】
マイクロ波導入部10は、図1に示すように、一対の手術器具本体Saの基端部Sa1側にそれぞれ設けられ、内部導体、絶縁体、及び外部導体が同軸状に備わっている従来周知の構造からなる同軸ケーブルにて構成されている。しかして、このようなマイクロ波導入部10は、図示しないマイクロ波発生装置、又は、マイクロ波発生装置に設けられている分波器と接続されている。これにより、マイクロ波発生装置によって発生したマイクロ波が、マイクロ波導入部10に導入されることとなる。
【0021】
一方、マイクロ波照射部20は、図1に示すように、一対の手術器具本体Saに対向する位置で、且つ、一対の手術器具本体Saの先端部Sa2側から突出するように、一対の手術器具本体Saにそれぞれ設けられている。このマイクロ波照射部20は、図2(c)に示すように、中心導体21と、絶縁体22と、外部導体23とが同軸状に備わっている同軸ケーブルにて構成されている。この中心導体21は、銅、青銅、アルミ等で形成され、図2(c)に示すように断面視円形状に形成され、図2(b)に示すように、長尺棒状に形成されている。しかして、このような中心導体21は、上記マイクロ波導入部10の内部導体に接続、又は、一体成形されている。これにより、マイクロ波導入部10に導入されたマイクロ波が中心導体21に伝送されることとなる。
【0022】
一方、上記のような中心導体21の外周面には、図2(c)に示すように、断面視円形状に形成されている絶縁体22が、中心導体21と同軸となるように被覆されている。そしてさらには、この絶縁体22は、図2(b)に示すように、中心導体21が外部に露呈しないように、中心導体21の外周面をマイクロ波照射部20の先端部20aまで覆っている。なお、この絶縁体22は、テフロン(登録商標)、セラミック等で形成されている。
【0023】
一方、上記のような絶縁体22の外周面には、図2(c)に示すように、断面視円形状に形成されている外部導体23が、中心導体21及び絶縁体22と同軸となるように被覆されている。そしてさらには、この外部導体23は、図2(b)に示すように、絶縁体22が外部に露呈しないように、絶縁体22の外周面をマイクロ波照射部20の先端部20aまで覆っている。なお、外部導体23は、金属メッシュ等の導電体で形成されている。
【0024】
ところで、上記のように構成されるマイクロ波照射部20の中心導体21は、図2(b)に示すように、マイクロ波照射部20の先端部20aより、外部に初めて露呈される。そして、その外部に露呈された中心導体21の外部露呈部分21aは、図2(b)に示すように、マイクロ波照射部20の基端部20b(図1参照)側に向かって、外部導体23に沿うように折り曲げられることとなる。これにより、マイクロ波照射部20の先端部20aから外部に初めて露呈された外部露呈部分21aより、中心導体21に伝送されたマイクロ波が、初めて外部に照射されることとなる。そのため、マイクロ波照射部20の基端部20b(図1参照)側に向かって、外部導体23に沿うように折り曲げられた外部露呈部分21aよりマイクロ波が照射されることとなる。これにより、一対の手術器具本体Saに対向する位置にそれぞれ設けられているマイクロ波照射部20よりマイクロ波が照射されることとなり、もって、一対の手術器具本体Saを用いて、一対のマイクロ波照射部20により生体組織を挟むことにより、生体組織の止血、凝固はもちろん、離れている生体組織を圧迫しながら同時に凝固できるため、生体組織のシーリングが達成されることとなる。
【0025】
ところで、この際、中心導体21は、マイクロ波照射部20の先端部20aから外部に初めて露呈されているから、先端部20aのマイクロ波の熱発生量を従来に比べ増大させることができる。それゆえ、マイクロ波照射部20にて生体組織を挟む際、使用する頻度の高い先端部20aのマイクロ波の熱発生量が従来に比べ高いことから、生体組織の凝固、止血が上手くいかなくなる可能性を低減させることができる。
【0026】
しかして、本実施形態のように、マイクロ波照射部20の先端部20aから中心導体21を外部に初めて露呈し、マイクロ波照射部20の基端部20b(図1参照)側に向かって、外部導体23に沿うように折り曲げるだけで、先端部20aのマイクロ波の熱発生量を従来に比べ増大させることができる。そのため、所望するマイクロ波の波長に合わせて中心導体21の長さ及び太さを自由に設計することができる。勿論、絶縁体22に被覆されている中心導体21と、外部露呈部分21aの太さを異なるようにすることも可能である。
【0027】
それゆえ、本実施形態のような構成にすれば、従来の問題であった設計上の限界があるという問題も解決することができる。
【0028】
ところで、本実施形態においては、図2(a),(b),(d-1),(d-2)に示すように、外部露呈部分21aを、外部導体23に形成されたスリット23aに配置するようにしている。これは、以下の理由によるものである。
【0029】
すなわち、外部露呈部分21aを、外部導体23に沿うように折り曲げた際、外部露呈部分21aより照射されたマイクロ波は、マイクロ波の指向性が制御されることなく、周囲に拡散されることとなる。そのため、マイクロ波照射部20にて生体組織を挟んで、生体組織の凝固、止血を鋭利に行おうとしても、マイクロ波が周囲に拡散していることから、生体組織の凝固、止血を鋭利にできない可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態においては、外部導体23にスリット23aを形成し、そのスリット23aに外部露呈部分21aを配置することで、マイクロ波の指向性を制御するようにしている。より詳しく説明すると、図2(d-1),(d-2)に示すように、スリット23aは、外部導体23の一部が切り欠かれた状態で、断面視ほぼ凹状に形成されており、図2(a),(b)に示すように、外部導体23の軸方向(マイクロ波照射部20の先端部20aから基端部20b(図1参照)側)に向かって、外部導体23の一側面(図示では、上部側)に長尺状に設けられている。さらに、図2(d-2)に示すように、このスリット23aの外周面は、テフロン(登録商標)、セラミック等で形成された絶縁体24にて覆われている。かくして、このように形成されるスリット23a上に外部露呈部分21aが載置されている。これにより、外部露呈部分21aが、図2(d-2)に示すスリット23aの左壁面23a1側にマイクロ波を照射した際、その左壁面23a1側を覆っている絶縁体24にてマイクロ波が遮断されると共にマイクロ波による放電が防止される。さらに、外部露呈部分21aが、図2(d-2)に示すスリット23aの右壁面23a2側にマイクロ波を照射した際、その右壁面23a2側を覆っている絶縁体24にてマイクロ波が遮断されると共にマイクロ波による放電が防止される。そしてさらに、外部露呈部分21aが、図2(d-2)に示すスリット23aの下壁面23a3側にマイクロ波を照射した際、その右壁面23a2側を覆っている絶縁体24及び絶縁体22にてマイクロ波が遮断されると共にマイクロ波による放電が防止される。それゆえ、結局のところ、図2(d-2)に示す矢印Y1方向(図示上側方向)にマイクロ波が照射されることとなり、もって、マイクロ波の指向性を制御できることとなる。これにより、マイクロ波照射部20にて生体組織を挟んだ際、生体組織の特定箇所にマイクロ波が照射されることとなるから、生体組織の凝固、止血を鋭利にできることとなる。
【0031】
ところで、上記のようにスリット23aの外周面を絶縁体24にて覆っているのは、外部露呈部分21aと外部導体23とを接触させないようにするためである。すなわち、外部露呈部分21aと外部導体23とを接触させてしまうと、外部露呈部分21aより照射されたマイクロ波が外部導体23に流れ込むだけのループアンテナのような状態となり、もって、生体組織にマイクロ波が照射されなくなる可能性があるためである。それゆえ、本実施形態においては、外部露呈部分21aを、外部導体23に沿うように折り曲げた際、図2(d-2)に示すように、外部露呈部分21aが外部導体23と接触しないように、スリット23aの外周面を絶縁体24にて覆っている。これにより、ループアンテナのような状態となる事態を防止し、生体組織にマイクロ波が照射されなくなる事態を防止するようにしている。
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、先端部分の熱発生量を増大させることができる。
【0033】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態において示したマイクロ波デバイス1の形状はあくまで一例であり、どのような形状でも良い。例えば、本実施形態において例示したマイクロ波デバイス1のうち、外部露呈部分21aの形状を、断面視円形状以外に、扇形状、矩形状、三角形状など様々な形状に変更することができる。
【0034】
また、本実施形態においては、外部導体23にスリット23aを形成した際、外周面を絶縁体24にて覆う例を示したが、絶縁体24にて覆わず、外部露呈部分21aと外部導体23との間に隙間を設けるだけでも良い。すなわち、外部露呈部分21aと外部導体23とを接触させなければ良いため、接触させない方法はどのような方法を用いても良い。ただし、外部露呈部分21aと外部導体23との間に隙間を設けた際、スリット23aと外部露呈部分21aとの間の隙間に存在する空気を媒介して、マイクロ波が放電する可能性がある。それゆえ、スリット23aの外周面を絶縁体24にて覆うようにするのが好ましい。なお、スリット23aの形状は、凹状に限らずどのような形状でも良い。
【0035】
また、本実施形態においては、手術器具Sとして鑷子型器具を例示したが、それに限らず、鉗子型器具、剪刃型器具等、様々な手術器具に適用可能である。さらに、深部凝固用アンテナに適用すれば指向性のある腫瘍凝固治療に適応可能である。すなわち、近傍にある神経、胆管、胆嚢、血管、気管、尿管、尿道等に熱損傷を最小限にして使用可能である。
【0036】
また、本実施形態においては、一対の手術器具本体Saにマイクロ波照射部20をそれぞれ設ける例を示したが、それに限らず、1つの手術器具本体Saに複数のマイクロ波照射部20を設けるようにしても良い。この点、図3を用いて説明することとする。なお、上記説明した内容と同一の構成については、同一の符号を付し説明は省略することとする。
【0037】
図3(a)に示す手術器具SAとして、鉗子型器具からなる手術器具を例示している。この手術器具SAは、長尺細長楕円状の一対の手術器具本体SAaにて構成されている。この一対の手術器具本体SAaの基端部SAa1同士は固定されており、先端部SAa2は開放されている。これにより、一対の手術器具本体SAa同士が接近・離間できることとなり、もって、一対の手術器具本体SAaを用いて、生体組織を挟んだり放したりすることができることとなる。
【0038】
かくして、このように構成される一対の手術器具本体Saのうち、一方の手術器具本体Sa(図3(a)では、下側)に、2つのマイクロ波照射部20が並列配置されている。しかして、このようにすれば、一対の手術器具本体SAaを用いて、生体組織を挟んだ際、2つのマイクロ波照射部20にてマイクロ波が照射されることとなるから、生体組織の凝固、止血をより良く行うができる。
【0039】
なお、図3では、一対の手術器具本体Saのうち、一方の手術器具本体Sa(図3(a)では、下側)に、2つのマイクロ波照射部20が並列配置されている例を示したが、それに限らず、他方の手術器具本体Sa(図3(a)では、上側)にも、2つのマイクロ波照射部20を並列配置させるようにしても良い。
【0040】
また、図3においては、鉗子型器具からなる手術器具SAとして、2つのマイクロ波照射部20が並列配置されている例を示したが、勿論、図4に示すように、1つのマイクロ波照射部20が配置されているだけでも良い。
【0041】
なお、図示はしていないが、一対の手術器具本体SAa側には、マイクロ波導入部10が設けられている。
【符号の説明】
【0042】
1 マイクロ波デバイス
20 マイクロ波照射部
20a 先端部(マイクロ波デバイスの最先端部)
20b 基端部(マイクロ波デバイスの基端部)
21 中心導体
21a 外部露呈部
22 絶縁体
23 外部導体
23a スリット
24 絶縁体
図1
図2
図3
図4