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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20241122BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241122BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241122BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L23/48 P
H01L23/48 S
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L21/60 321V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023548058
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034308
(87)【国際公開番号】W WO2023042372
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋二
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/075016(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/185974(WO,A1)
【文献】特開2008-235651(JP,A)
【文献】特開2012-059876(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079600(WO,A1)
【文献】特開2003-197861(JP,A)
【文献】特開2014-082275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンを有する絶縁基板と、
前記回路パターン上に第一接合部を介して接合された複数の半導体素子と、
複数の前記半導体素子のそれぞれが第二接合部を介して接合されたリード電極とを備え、
前記リード電極は、少なくとも1つの前記半導体素子を跨る複数のリード電極片で構成され、
複数の前記リード電極片は、それぞれ第三接合部を介して接合され
隣り合う前記リード電極片の一方はフック形状を、他方は前記フック形状を引っ掛ける形状をなし、前記フック形状と前記引っ掛ける形状をかみ合わせ、前記第三接合部を介して接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
回路パターンを有する絶縁基板と、
前記回路パターン上に第一接合部を介して接合された複数の半導体素子と、
複数の前記半導体素子のそれぞれが第二接合部を介して接合されたリード電極とを備え、
前記リード電極は、少なくとも1つの前記半導体素子を跨る複数のリード電極片で構成され、
複数の前記リード電極片は、それぞれ第三接合部を介して接合され、
隣り合う前記リード電極片は、互いに回転するように接続され、前記第三接合部を介して接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記リード電極片の端部は、外部電極と外部電極接合部を介して接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁基板が接合されたベース板をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
絶縁基板に設けられた回路パターン上の半導体素子を搭載する位置に第一接合材を載置する第一接合材載置工程と、
前記第一接合材上に、複数の前記半導体素子を載置する半導体素子載置工程と、
それぞれの前記半導体素子上に、第二接合材を載置する第二接合材載置工程と、
前記第二接合材上に、リード電極を構成する複数のリード電極片を載置するリード電極片載置工程と、
複数の前記リード電極片に、第三接合材を載置する第三接合材載置工程と、
前記第一接合材、前記第二接合材、及び前記第三接合材を加熱する接合材加熱工程と、
を備え
隣り合う前記リード電極片の一方はフック形状を、他方は前記フック形状を引っ掛ける形状をなし、前記フック形状と前記引っ掛ける形状をかみ合わせ、前記第三接合材により
接合された半導体装置の製造方法。
【請求項6】
絶縁基板に設けられた回路パターン上の半導体素子を搭載する位置に第一接合材を載置する第一接合材載置工程と、
前記第一接合材上に、複数の前記半導体素子を載置する半導体素子載置工程と、
それぞれの前記半導体素子上に、第二接合材を載置する第二接合材載置工程と、
前記第二接合材上に、リード電極を構成する複数のリード電極片を載置するリード電極片載置工程と、
複数の前記リード電極片に、第三接合材を載置する第三接合材載置工程と、
前記第一接合材、前記第二接合材、及び前記第三接合材を加熱する接合材加熱工程と、
を備え、
隣り合う前記リード電極片は、互いに回転するように接続され、前記第三接合材により接合された半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記接合材加熱工程における、前記第一接合材、前記第二接合材、及び前記第三接合材の少なくともいずれかの加熱を別の工程とし、順次組立体を作製することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体素子にリード電極を直接はんだで接合し、モジュール内の半導体素子及び内部回路とモジュール外の外部回路を接続する、DLB(Direct Lead Bonding)構造を有する半導体装置が知られている。DLB構造を有する半導体装置は、細線のボンディングワイヤを用いる場合に比べて、電極の断面積を大きくできるため、大電流化、長寿命化、高信頼性を実現できる。
【0003】
DLB構造を有する半導体装置は、複数の半導体素子を跨る長いリード電極を接合するため、半導体素子が搭載された絶縁基板に、加熱冷却等による反りが生じた場合、半導体素子とリード電極との間隔にばらつきが生じ、接合不良を招きやすい。
【0004】
そこで、半導体素子とリード電極との接合の信頼性を向上させる技術が検討されている。例えば、特許文献1では、リード電極に半導体素子の搭載位置に対応させた開口部を設けて、この開口部内に接合部品を配置させ、半導体素子の外周部を開口部の内周と接合することによって、半導体素子を搭載する絶縁基板の反りの影響を受けにくい構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2021/075016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、加熱時に接合部品は可動であるものの、リード電極の開口部付近の段差で、開口部内の接合部品の段差を支えるようにした場合、接合部品の移動が制限されるため、特に絶縁基板の反り変形が大きい場合には、半導体素子とリード電極との接合面積を十分に確保できないという課題があった。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、半導体素子とリード電極との接合面積を十分確保した半導体装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置は、回路パターンを有する絶縁基板と、回路パターン上に第一接合部を介して接合された複数の半導体素子と、複数の半導体素子のそれぞれが第二接合部を介して接合されたリード電極とを備え、リード電極は、少なくとも1つの半導体素子を跨る複数のリード電極片で構成され、複数のリード電極片は、それぞれ第三接合部を介して接合され、隣り合うリード電極片の一方はフック形状を、他方はフック形状を引っ掛ける形状をなし、フック形状と引っ掛ける形状をかみ合わせ、第三接合部を介して接合されているものである。
【0009】
また、本開示に係る半導体装置の製造方法は、絶縁基板に設けられた回路パターン上の半導体素子を搭載する位置に第一接合材を載置する第一接合材載置工程と、第一接合材上に、複数の半導体素子を載置する半導体素子載置工程と、それぞれの半導体素子上に、第二接合材を載置する第二接合材載置工程と、第二接合材上に、リード電極を構成する複数のリード電極片を載置するリード電極片載置工程と、複数のリード電極片に、第三接合材を載置する第三接合材載置工程と、第一接合材、第二接合材、及び第三接合材を加熱する接合材加熱工程を備え、隣り合うリード電極片の一方はフック形状を、他方はフック形状を引っ掛ける形状をなし、フック形状と引っ掛ける形状をかみ合わせ、第三接合材により接合されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、半導体素子の上面に接合されるリード電極を複数のリード電極片で構成し、当該複数のリード電極片同士を接合材で接合することにより、絶縁基板の反りに追従してリード電極片が移動できるため、半導体素子とリード電極との接合面積を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の構成の一部を示す上面図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。
図4比較のための半導体装置を加熱した状態を示す模式図である。
図5実施の形態1に係る半導体装置を加熱した状態を示す模式図である。
図6】実施の形態2に係る半導体装置の概略構成を示す上面図である。
図7】実施の形態2に係るリード電極片の端部を示す上面図である。
図8】実施の形態3に係る半導体装置の概略構成を示す上面図である。
図9】実施の形態4に係る半導体装置の概略構成を示す上面図である。
図10】実施の形態4に係る半導体装置を加熱した状態を示す模式図である。
図11】実施の形態4に係るリード電極片の端部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1図5を用いて実施の形態1における半導体装置1000について説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の概略構成を示す断面図である。図2は、実施の形態1における半導体装置の構成の一部を示す上面図である。また、図1図2におけるA-A´断面を示している。図1及び図2において、半導体装置1000は、その概略構成が示されており、半導体素子4と電気的に接続するための信号線、ワイヤ、信号端子等は省略されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、実施の形態1における半導体装置1000は、ベース板1、絶縁基板2、半導体素子4、リード電極8、ケース7を備える。
【0014】
ベース板1は、例えば、アルミニウム合金、銅等の熱伝導に優れる材料で作られる。表面及び裏面は平坦な板状で、複数の半導体素子4が搭載された絶縁基板2及びケース7を支持する。ベース板1の裏面には、半導体装置1000の冷却性を向上させるため、例えばフィン等が設けられてもよい。
【0015】
絶縁基板2は、ベース板1の表面にベース板接合用接合材1aを用いて接合されている。絶縁基板2は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミック、またはエポキシ樹脂等の樹脂で構成された絶縁層22上に、アルミニウム合金、銅等の金属で構成された回路パターン21、23が形成される。絶縁基板2の裏面は、板はんだ、はんだペースト、軟ろう等によりベース板1の表面に接合され、ベース板接合部1bを形成する。
【0016】
複数の半導体素子4は、絶縁基板2上の回路パターン21に、板はんだ、はんだペースト、軟ろう等の第一接合材2aを介して接合され、絶縁基板2とそれぞれの半導体素子4との間には、第一接合部2bが形成される。
半導体素子4は、例えば、シリコン(Si)素材のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード、逆導通IGBTである。シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等Siに比べてバンドギャップの大きい素材で作製されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ショットキーダイオード等としてもよい。
また、半導体素子4は、絶縁基板2上の搭載個数は限定されず、用途に応じて必要な個数の半導体素子4を搭載してよい。
【0017】
図2に示すように、リード電極8は、上面視で半導体素子4が搭載されていない位置で分離されたリード電極片81、82、83により構成され、それぞれのリード電極片81、82、83は半導体素子4に第二接合部4bを介して接合される。絶縁基板2上の回路パターン21にも電気的に接続されている。リード電極8を構成するリード電極片81、82、83は、例えば、長尺のリード電極8が短手方向に分離されて形成される。その分離面はリード電極8の上面に直交する。
また、リード電極片81、82、83は、分離面で、板はんだ、はんだペースト等の第三接合材8aにより接合され、各分離面との間には第三接合部8bが形成される。第三接合部8bはリード電極8の短手方向にリード電極片81、82、83との接合面を有し、その接合面はリード電極8の上面に直交する。リード電極片81、82、83は、例えば銅、銅合金等で構成され、電気的に半導体素子4と外部電極80との回路接続を行う。
リード電極8は、半導体素子4毎に分離させてリード電極片81、82、83を構成してもよいし、例えば一部のリード電極片81と82が分離されず繋がっており、リード電極片83と分離されていてもよい。つまり、複数の半導体素子4上に1つのリード電極片が存在してもよい。
外部電極80は、リード電極8のリード電極片81に、板はんだ、はんだペースト、軟ろう等の外部電極接合用接合材80aを用いて接合され、外部電極80とリード電極片81との間には、外部電極接合部80bが形成される。
【0018】
ケース7は、半導体素子4が搭載された絶縁基板2を格納し、封止樹脂6aが流し込まれる際の枠組みとなる役割を果たし、例えば、PPS(Polyphenylenesulfide)で形成される。ケース7は、例えば、外部電極80をインサート部品としてインサート成形され、ケース7に、外部電極80が差し込まれた形態をなす。ケース7は、シリコーン系又はエポキシ系の接着剤5aによりベース板上に接着される。
【0019】
図3を用いて、実施の形態1における半導体装置1000の製造方法について説明する。
【0020】
ステップS1にて、ベース板1、絶縁層22の両面に回路パターン21、23が形成された絶縁基板2、及び半導体素子4を用意する。ベース板1の上に、例えば板はんだ等のベース板接合用接合材1aを載置し、ベース板接合用接合材1a上に絶縁基板2を搭載し、絶縁基板2の上の半導体素子4の搭載位置に、例えば、板はんだ等の第一接合材2aを半導体素子4の個数分載置し、それぞれに半導体素子4を搭載する。半導体素子4は絶縁基板2の表面の回路パターン21の電極パッドに載置される。
【0021】
ここで、ベース板接合用接合材1a、第一接合材2aとして、固形の板はんだを用い、板はんだを載置する例について説明したが、ベース板接合用接合材1a、第一接合材2aとして、液状のはんだペーストを用い、スクリーン印刷により必要箇所に塗布するようにしてもよい。液状のはんだペーストを用い、ディスペンサーにより必要箇所に滴下させてもよい。
このようにして、ベース板1、ベース板接合用接合材1a、絶縁基板2、第一接合材2a、半導体素子4を組み立てた第1組立体を形成する。
【0022】
ステップS2にて、ステップS1で組み立てた第1組立体を、リフロー炉に入れ、ベース板接合用接合材1a、第一接合材2aの融点以上の温度に加熱する。リフロー炉の温度は、ベース板接合用接合材1a、第一接合材2aの融点以上の、例えば、270℃程度まで昇温させ、ベース板接合用接合材1a、第一接合材2aを溶融させる。一定時間加熱後、冷却しベース板接合用接合材1a、第一接合材2aを凝固させる。
このようにして、ベース板1、絶縁基板2、及び半導体素子4が接合されてベース板接合部1b、第一接合部2bが形成された第2組立体が作製される。
【0023】
ステップS3にて、ステップS2で作製した第2組立体の絶縁基板2を囲い、外部電極80が所定の位置にくるように、ベース板1上に、外部電極80がインサート成形されたケース7の下部を接着する。接着剤5aは例えばシリコーン系、エポキシ系の材料を用いればよい。ベース板1とケース7との間には接着部5bが形成される。ベース板1とケース7とはねじ等の締結具で締結してもよい。このように、ベース板1及びケース7を組み立てる。
【0024】
ステップS4にて、複数の半導体素子4上に、例えば、はんだペースト等の第二接合材4aを塗布し、ステップS3で取り付けられた外部電極80の位置に合わせて、リード電極片81、82、83を第二接合材4aが塗布された箇所に載置する。続いて、外部電極80とリード電極片81、リード電極片81とリード電極片82、リード電極片82とリード電極片83とが接続されるように、それぞれの端部に例えば、はんだペースト等の第三接合材8a、外部電極接合用接合材80aをディスペンス塗布する。
リード電極片81、82、83は、接続されてリード電極8を構成するもので、予め銅、銅合金等の板をプレスで切断してバラバラに準備してもよいし、隣り合うリード電極片81、82、83が一部繋がるようにして、型押し切断して作製してもよい。
このようにして、半導体素子4とリード電極片81、82、83を組み立てた第3組立体が形成される。
【0025】
続いて、ステップS5にて、ステップS4で形成した第3組立体を加熱し、接着剤5aを硬化させ、第二接合材4a、第三接合材8a、及び外部電極接合用接合材80aを溶融させ、接着部5b、第二接合部4b及び第三接合部8b、外部電極接合部80bを形成する。
【0026】
続いて、ステップS6にて、信号回路接続用のワイヤボンディングを実施した後、ケース7内の絶縁基板2、半導体素子4、リード電極片81、82、83等を封止樹脂6aを用いて封止し、例えば、オーブンにより100℃で2時間、140℃で2~3時間加熱硬化して、封止部6bを形成する。封止樹脂6aは、例えばエポキシ樹脂を用いることができるが、これに限定するものではない。所望の弾性率、耐熱性、接着性、線膨張係数等の物性を充たすものを用いればよい。
【0027】
ステップS1~S6に加えて必要な電気的特性等を検査して半導体装置1000を完成させる。
【0028】
このように、製造された半導体装置1000は、加熱工程で生じた反り変形に追従した状態で、リード電極8が移動できるため、絶縁基板2の反り変形が取り除かれた後も、半導体素子4とリード電極8との間の接合面積を十分に確保して接合できる。
【0029】
詳述すると、ステップS5における加熱工程では、各部材の線膨張係数の違いにより、反り変形が発生し、それぞれの半導体素子4とリード電極8のz軸方向の距離が一定ではなくなる。複数の半導体素子4の上面に一続きの長尺のリード電極800を載置すると、図4に示すように、加熱時の絶縁基板2の反り変形に追従出来ず、第二接合部4bの一部の断面積が小さくなったり、断線したりする場合がある。これに対し、リード電極8を複数のリード電極片81、82、83で構成し、リード電極片81、82、83同士を第三接合材8aで接合すれば、加熱時の絶縁基板2の反り変形に追従してそれぞれのリード電極片81、82、83が個別にz軸方向に移動するため、図5に示すように、それぞれの半導体素子4と複数のリード電極片81、82、83、すなわちリード電極8との接合面積を十分に確保でき、安定的に接合される。
【0030】
なお、ステップS1で組み立てた第1組立体のベース板接合用接合材1a、第一接合材2aをステップS2で溶融させ、ステップS4で組み立てた第3組立体の第二接合材4a、第三接合材8a、及び外部電極接合部80bをステップS5で溶融させる例を説明したが、第1組立体から第3組立体まで先に組み立てて、加熱を同一工程で行ってもよい。
【0031】
また、第1組立体、第3組立体をそれぞれステップS2、ステップS5で接合する例を示したが、予備加熱で仮固定してもよく、はんだペーストのチクソ性を利用して固定してもよい。
【0032】
また、ステップS4で、第三接合材8aをはんだペーストとして、ディスペンサーで塗布する例について、説明したが、板はんだを用いてもよい。
ステップS4で、複数の半導体素子4上の第二接合材4aに、リード電極片81、82、83、第三接合材8aを載置するとともに、外部電極80とリード電極片81とが外部電極接合用接合材80aで接続されるようにした後、ステップS5で、第三接合材8a及び外部電極接合用接合材80aを加熱する工程を示したが、予め、外部電極80、リード電極片81、82、83が外部電極接合部80b、第三接合部8bを介して接合されたリード電極8をケース7にインサートしておいてもよい。
【0033】
半導体素子4と絶縁基板2の電極パッドを接合する第一接合材2a、半導体素子4とリード電極片81、82、83を接合する第二接合材4a、リード電極片81、82、83を接合する第三接合材8aの融点は同じでもよいが、異なっていてもよい。第三接合材8a融点は、第一接合材2a、第二接合材4aより低い方が、第三接合材8aの加熱工程で、半導体素子4の接合状態を損なうことがないため好ましい。
【0034】
また、図1図2において、第三接合部8bは、リード電極片81、82、83の上面と直交する面と水平な面とを有する直方体形状とする例を示したが、リード電極片81、82、83の上面を覆うT字形状にしてもよい。上面を球形状としてもよい。
【0035】
また、ベース板1、ケース7を用いて半導体装置1000を構成する例について説明したが、絶縁基板2、半導体素子4、複数のリード電極片81、82、83をトランスファモールドで封止部6bを形成してもよい。
【0036】
また図1において、リード電極片81の端部と外部電極80との間に外部電極接合部80bを設けた例について説明したが、絶縁基板2の中央部の反り変形をリード電極片81とリード電極片82、リード電極片82とリード電極片83との間に設けた第三接合部8bで追従できれば、外部電極80とリード電極片81は第三接合部8bを介さず連続していてもよい。第三接合部8bの数は1つでも、2つ以上でもよいのは、先に述べたとおりである。
【0037】
また、リード電極8を構成するリード電極片81、82、83は、長尺のリード電極8が短手方向に分離されて形成され、その分離面はリード電極8の上面に直交する例について説明したが、当該分離面はリード電極8の長手方向に直交する方向からやや傾いていてもよい。
【0038】
このように、一部構成を変えた場合であっても、絶縁基板2に設けられた回路パターン21、23上の半導体素子4を搭載する位置に、第一接合材2aを載置する第一接合材載置工程と、第一接合材2a上に、複数の半導体素子4を載置する半導体素子載置工程と、それぞれの半導体素子4上に、第二接合材4aを載置する第二接合材載置工程と、第二接合材4a上に、リード電極8を構成する複数のリード電極片81、82、83を載置するリード電極片載置工程と、複数のリード電極片81、82、83に、第三接合材8aを載置する第三接合材載置工程と、第一接合材2a、第二接合材4a、及び第三接合材8aを加熱する接合材加熱工程とにより半導体装置1000を製造できる。
また、接合材加熱工程における、第一接合材2a、第二接合材4a、及び第三接合材8aの少なくともいずれかの加熱を別の工程とし、順次組立体を作製してもよい。複数のリード電極片81、82、83に、第三接合材8aを載置する第三接合材載置工程を先に行い、リード電極片81、82、83がつながった状態で準備し、第一接合材載置工程、半導体素子載置工程、第二接合材載置工程の後に、つながったリード電極片81、82、83を載置してもよいことは、先に述べたとおりである。
【0039】
実施の形態2.
図6を用いて実施の形態2における半導体装置1000について説明する。
図6は、実施の形態2における半導体装置1000の構成の一部を示す上面図である。
【0040】
実施の形態1において、長尺のリード電極8が短手方向に直線状にリード電極片81、82、83に分離され、リード電極8の上面と直交する分離面で第三接合部8bを有する構成について説明したが、実施の形態2では、リード電極片91、92、93の端部が、凹状又は凸状である点が異なる。それ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0041】
図6に示すように、上面視で、隣り合うリード電極9のリード電極片91、92、93の端部の一方は凹部9aを、他方は凸部9bを有し、凹部9aと凸部9bがかみ合い、リード電極9の上面に直交する分離面で第三接合材8aにより接合されている。さらに詳しくは、図6に示すとおり、リード電極片91の右端部の凹部9aとリード電極片92の左端部の凸部9bとがかみ合い、リード電極片92の右端部の凹部9aとリード電極片93の左端部の凸部9bとがかみ合い、それぞれ、リード電極9の上面に直交する分離面で第三接合材8aにより接合されている。
【0042】
このように、実施の形態2に係る半導体装置1000は、半導体素子4の上面に接合されるリード電極9を複数のリード電極片91、92、93で構成し、当該複数のリード電極片91、92、93同士を第三接合材8aで接合することにより、加熱時の絶縁基板2の反り変形に追従してそれぞれのリード電極片91、92、93が個別にz軸方向に移動する。したがって、十分な半導体素子4とリード電極8の接合面積の確保が可能となる。
【0043】
さらに、リード電極片81、82、83の端部が直線状である場合と比較して、第三接合部8bによる接合面積が大きくなる。したがって、第三接合材8a溶融時の表面張力により、溶融した第三接合材8aが絶縁基板2上に落下することを防止することができる。
【0044】
また図6に示すように、第三接合材8a溶融時にリード電極片91、92、93がy軸方向に移動する場合においても、凹部9aと凸部9bがかみ合っているため、リード電極片91、92、93の移動が制限され、リード電極片91、92、93がy軸方向に位置ずれすることを防止することができる。
【0045】
なお、図6を用いて一対の凹部9aと凸部9bを噛み合わせる例を示したが、図7に示すように複数の凹部9aと凸部9bを噛み合わせる形状としてもよい。
複数の凹部9aと凸部9bを噛み合わせる形状とすると、一対の凹部9aと凸部9bを噛み合わせる場合と比較して、第三接合部8bによる接合面積が大きくなる。したがって、第三接合材8a溶融時の表面張力により、溶融した第三接合材8aが絶縁基板2上に落下することを防止することができる。
【0046】
また、リード電極片91、92の右端部が凹部9a、リード電極片92、93の左端部が凸部9bを有する例を示したが、左右が入れ替わっていてもよい。
【0047】
実施の形態3.
図8を用いて実施の形態3における半導体装置1000について説明する。
図8は、実施の形態3における半導体装置1000の構成の一部を示す上面図である。
【0048】
実施の形態1において、長尺のリード電極8が短手方向に直線状にリード電極片81、82、83に分離され、リード電極8の上面と直交する分離面で第三接合材8aにより接合される構成について説明したが、実施の形態3では、リード電極片101、102、103の端部が、フック形状である点が異なる。それ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0049】
図8に示すように、上面視で、隣り合うリード電極10のリード電極片101、102、103の端部の一方はフック形状10aを、他方はフック形状10aを引っ掛ける引掛け形状10bを有し、フック形状10aとフック形状10aを引っ掛ける引掛け形状10bをかみ合わせ、リード電極10の上面に直交する分離面で第三接合部8bを介して接合されている。さらに詳しくは、図8に示すとおり、リード電極片101の右端部のフック形状10aとリード電極片102の左端部の引掛け形状10bとがかみ合い、リード電極片102の右端部のフック形状10aとリード電極片103の左端部の引掛け形状10bとがかみ合い、それぞれ、リード電極10の上面に直交する分離面で第三接合部8bを介して接合されている。
【0050】
このように、実施の形態3に係る半導体装置1000は、半導体素子4の上面に接合されるリード電極10を複数のリード電極片101、102、103で構成し、当該複数のリード電極片101、102、103同士を第三接合材8aで接合することにより、加熱時の絶縁基板2及びベース板1の反り変形に追従してそれぞれのリード電極片101、102、103が個別にz軸方向に移動する。したがって、十分な半導体素子4とリード電極8の接合面積の確保が可能となる。
【0051】
さらに、リード電極片81、82、83の端部が直線形状である場合と比較して、第三接合部8bによる接合面積が大きくなる。したがって、第三接合材8a溶融時の表面張力により、溶融した第三接合材8aが絶縁基板2上に落下することを防止することができる。
【0052】
また、第三接合材8a溶融時にリード電極片101、102、103がx軸方向に移動する場合等においても、フック形状10aと引掛け形状10bがかみ合っているため、リード電極片101、102、103の移動が制限され、リード電極片101、102、103がx軸方向に位置ずれすることを防止することができる。
【0053】
なお、フック形状10aを引っ掛ける引掛け形状10bの形状をフック形状10aと同様の形状としたが、フック形状10aとかみ合う形状であれば、引掛け形状10bはどのような形状でもよい。
また、リード電極片101、102の右端部がフック形状10a、リード電極片102、103の左端部が引掛け形状10bである例を示したが、左右が入れ替わっていてもよい。
【0054】
実施の形態4.
図9図10を用いて実施の形態4における半導体装置1000について説明する。
図9は、実施の形態4における半導体装置1000の構成の一部を示す上面図である。図10は、実施の形態4に係る半導体装置を加熱した状態を示す模式図である。
【0055】
実施の形態2において、リード電極片の端部が、凹状又は凸状である例、実施の形態3において、リード電極片の端部が、フック形状である例について説明したが、実施の形態4では、リード電極片111、112、113の端部に、回転軸11dが設けられている点が異なる。それ以外の構成は実施の形態2または3と同様である。
【0056】
図9に示すように、上面視で、隣り合うリード電極11のリード電極片111、112、113の端部に回転軸11dが設けられ、リード電極片111、112、113がそれぞれ互いに接続されている。また、リード電極11の上面に直交する分離面で第三接合部8bを介して接合されている。さらに詳しくは、図9及び図10に示すとおり、リード電極片111の右端部には凹部11a、リード電極片112の左端部には凸部11bが形成されており、リード電極片111の凹部11aとリード電極片112の凸部11bとがかみ合い、リード電極片111の凹部11aとリード電極片112の凸部11bを貫通する貫通部11cが設けられ、回転軸11dが挿入されている。また、リード電極片112の右端部には凹部11a、リード電極片113の左端部には凸部11bが形成されており、リード電極片112の凹部11aとリード電極片113の凸部11bとがかみ合い、リード電極片112の凹部11aとリード電極片113の凸部11bを貫通する貫通部11cが設けられ、回転軸11dが挿入されている。
それぞれ、リード電極11の上面に直交する分離面で第三接合材8aにより接合されている。
【0057】
このように実施の形態4に係る半導体装置1000は、半導体素子4の上面に接合されるリード電極11を複数のリード電極片111、112、113で構成し、当該複数のリード電極片111、112、113同士を第三接合材8aで接合することにより、加熱時の絶縁基板2の反り変形に追従してそれぞれのリード電極片111、112、113が個別に回転してZ軸方向に移動する。したがって、十分な半導体素子4とリード電極8の接合面積の確保が可能となる。
【0058】
さらに、リード電極片81、82、83の端部がの直線形状である場合と比較して、第三接合材8aで接合される面積が大きくなる。したがって、第三接合材8a溶融時の表面張力により、溶融した第三接合材8aが絶縁基板2上に落下することを防止することができる。
【0059】
また、図10に示すように、第三接合材8a溶融時にリード電極片111、112、113がx又はy軸方向に移動する場合等においても、凹部11aと凸部11bが、ヒンジ構造により回転軸11dで固定されているため、リード電極片111、112、113の移動が制限され、リード電極片111、112、113がx及びy軸方向に位置ずれすることを防止することができる。
【0060】
なお、図9において、凹部11aと凸部11bが1対である例を示したが、図11に示すように櫛歯状に複数の凹凸が重なり合う形状でもよい。
【0061】
また、リード電極片111、112の右端が凹部11a、リード電極片112、113の左端が凸部11bである例を示したが、凹部11a、凸部11bを設けるリード電極片111、112、113の端部は左右が入れ替わっていてもよい。
【0062】
また、フック形状10aと引掛け形状10bがかみ合う部分に回転軸11dを設けてもよく、他の形状としてもよい。
【0063】
また、リード電極片111、112、113の端部に貫通部11cを設け、回転軸11dが挿入することにより、隣り合うリード電極片111、112、113を接続する例を示したが、隣り合うリード電極片111、112、113が、互いに回転するように接続されればよい。
【0064】
また、上述以外にも、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ベース板、2 絶縁基板、21 回路パターン、22 絶縁層、23 回路パターン、2a 第一接合材、2b 第一接合部、4 半導体素子、4a 第二接合材、4b 第二接合部、5a 接着剤、5b 接着部、6a 封止樹脂、6b 封止部、7 ケース、8 リード電極、81、82、83 リード電極片、8a 第三接合材、8b 第三接合部、80 外部電極、1000 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
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図11