(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス及び電動車
(51)【国際特許分類】
F16H 37/06 20060101AFI20241122BHJP
F16H 37/08 20060101ALI20241122BHJP
F16H 1/20 20060101ALI20241122BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241122BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241122BHJP
B60L 50/62 20190101ALI20241122BHJP
B60L 53/80 20190101ALI20241122BHJP
【FI】
F16H37/06 D
F16H37/08
F16H37/06 G
F16H1/20
H02K7/116
B60L15/20 K
B60L15/20 S
B60L50/62
B60L53/80
(21)【出願番号】P 2023550338
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2020138038
(87)【国際公開番号】W WO2022099865
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202011246947.2
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(73)【特許権者】
【識別番号】523172590
【氏名又は名称】浙江吉利遠程新能源商用車集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY FARIZON NEW ENERGYCOMMERCIAL VEHICLE GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 612, Building 1, 1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李 書福
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0332301(US,A1)
【文献】特開2017-206074(JP,A)
【文献】中国実用新案第206336116(CN,U)
【文献】中国実用新案第207173300(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/06
F16H 37/08
F16H 1/20
H02K 7/116
B60L 15/20
B60L 50/62
B60L 53/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスであって、
それぞれ駆動力を出力する駆動モータを含む少なくとも二つの動力源と、
前記少なくとも二つの動力源に1対1に対応して接続されて前記駆動力を伝達するように構成された少なくとも二つの減速ギア組立体と
を含み、
デファレンシャルをさらに含み、前記デファレンシャルは、入力側が各前記減速ギア組立体の出力側に接続され、出力側が左右の駆動軸にそれぞれ接続され、車輪側に前記駆動力を伝達することで車両の車輪を駆動するように構成され、
前記デファレンシャルの入力側と各前記減速ギア組立体の出力端との間に接続された変速装置をさらに含み、
各前記動力源は、前記駆動モータと、前記駆動モータに接続されたモータ軸とを含み、
各前記減速ギア組立体は、前記モータ軸に接続された第1伝動ギアと、前記第1伝動ギアと噛み合う第2伝動ギアとを含み、前記第2伝動ギアは前記減速ギア組立体の出力側であり、
前記変速装置は、入力軸組立体と、中間軸組立体と、出力軸組立体と、シフトチェンジ装置とを含み、
前記入力軸組立体は、前記第2伝動ギアに接続された入力軸と、前記入力軸に接続された第3伝動ギアとを含み、
前記中間軸組立体は、中間軸と、前記中間軸の両端にそれぞれ接続された第4伝動ギア及び第5伝動ギアとを含み、前記第4伝動ギアは前記第3伝動ギアと噛み合い、
前記出力軸組立体は、前記デファレンシャルの入力側に接続された出力軸と、前記出力軸に回転可能に取り付けられた第6伝動ギアとを含み、前記第6伝動ギアは前記第5伝動ギアと噛み合い、
前記シフトチェンジ装置は前記出力軸に設けられ、前記第6伝動ギア又は前記入力軸に接続されるように前記出力軸を制御するように構成されており、
二つの前記動力源のうちの一方は、
各前記二つの減速ギア組立体
の前記第1伝動ギアおよび前記第2伝動ギアを
全て結ぶ
一つの直線の一方側に配置され、
二つの前記動力源のうちの他方は、前記直線の他方側に配置されている
マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス。
【請求項2】
前記少なくとも二つの減速ギア組立体は、一つの前記第2伝動ギアを共用する
請求項
1に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス。
【請求項3】
前記少なくとも二つの動力源は、前記第2伝動ギアの周方向に配置されている
請求項
2に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス。
【請求項4】
前記変速装置が第1シフトポジションで動作しているとき、前記シフトチェンジ装置は、前記減速ギア組立体により伝達される前記駆動力が、前記入力軸、前記第3伝動ギア、前記第4伝動ギア、前記中間軸、前記第5伝動ギア、前記第6伝動ギア、および前記出力軸を順に介して、前記デファレンシャルに伝達されるように、前記第6伝動ギアに接続されるように前記出力軸を制御し、前記変速装置が第2シフトポジションで動作しているとき、前記シフトチェンジ装置は、前記減速ギア組立体により伝達される駆動力が前記入力軸及び前記出力軸を介して直接前記デファレンシャルに伝達されるように、前記入力軸に接続されるように前記出力軸を制御して、車両の2段駆動を可能にする
請求項
1に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス。
【請求項5】
前記少なくとも二つの動力源は、制御されて協働して動作するか、または個別に動作することができる
請求項1に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか一項に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスを含む
電動車。
【請求項7】
前記電動車は電池交換用電池ボックスを含み、
前記電池交換用電池ボックスは電池交換スタンドにおいて迅速に交換される
請求項
6に記載の電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の技術分野に関し、特に、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス及び電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー危機と環境汚染問題の深刻化に伴い、世界各国、特に自動車大国である中国は、電動車の開発を強く提唱し、注目しており、電動車の電気駆動システムは各社の研究開発の重点領域となっている。しかしながら、トン数の大きな車両の応用分野において、車両に比較的大きな出力トルクが必要とされるとともに、比較的高い最高車速を保証しなければならないため、多くの企業は単一の大トルク、低回転の駆動モータを採用して、固定速度比の減速装置を合わせて使用する。これは電気駆動システムの大重量、高制造コスト、中高速時の動力性能不足などの問題につながる。一部の企業は、減速装置の代わりに多段AMT(Automated Mechanical transmission:自動机械式トランスミッション)を採用している。ただし、車両の中高速域の動力性能がある程度向上しているが、依然として頻繁なシフトチェンジによる動力の中断が起きるため、快適性が低下するとともに、システムのコストがさらに増加する。また、このモータに故障が発生すると、車両は正常に駆動できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記課題に鑑みて、上記課題を克服する、又は少なくとも部分的に解決するマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックス及び電動車が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的の一つは、小トルク、高回転の駆動モータを複数セット配置することにより、低速動作状況における大トルク要求に対応しつつ中高速域の動力性能を確保し、製造コストを低減し、電気駆動システムの信頼性を向上できるマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスを提供することである。
【0005】
本発明の一つのさらなる目的は、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスに2段変速装置を採用することにより、動力の中断やシフトチェンジのショックをできるだけ減少して快適性を向上させることである。
【0006】
特に、本発明の実施例の一態様によれば、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスが提供され、このマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、
それぞれ駆動力を出力する駆動モータを含む少なくとも二つの動力源と、
前記少なくとも二つの動力源に1対1に対応して接続されて前記駆動力を伝達するように構成された少なくとも二つの減速ギア組立体とを含む。
【0007】
さらに、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスはデファレンシャルをさらに含み、前記デファレンシャルは、入力側が各前記減速ギア組立体の出力側に接続され、出力側が左右の駆動軸にそれぞれ接続され、車輪側に前記駆動力を伝達することで車両の車輪を駆動するように構成された。
【0008】
さらに、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、
前記デファレンシャルの入力側と各前記減速ギア組立体の出力側との間に接続された変速装置をさらに含む。
【0009】
さらに、各前記動力源は、前記駆動モータと、前記駆動モータに接続されたモータ軸とを含む。
【0010】
各前記減速ギア組立体は、前記モータ軸に接続された第1伝動ギアと、前記第1伝動ギアと噛み合う第2伝動ギアとを含み、前記第2伝動ギアは前記減速ギア組立体の出力側である。
【0011】
さらに、前記少なくとも二つの減速ギア組立体は、一つの前記第2伝動ギアを共用する。
【0012】
さらに、前記少なくとも二つの動力源は、前記第2伝動ギアの周方向に配置されている。
【0013】
さらに、前記変速装置は、入力軸組立体と、中間軸組立体と、出力軸組立体と、シフトチェンジ装置とを含む。
【0014】
前記入力軸組立体は、前記第2伝動ギアに接続された入力軸と、前記入力軸に接続された第3伝動ギアとを含む。
【0015】
前記中間軸組立体は、中間軸と、前記中間軸の両端にそれぞれ接続された第4伝動ギア及び第5伝動ギアとを含み、前記第4伝動ギアは前記第3伝動ギアと噛み合う。
【0016】
前記出力軸組立体は、前記デファレンシャルの入力側に接続された出力軸と、前記出力軸に回転可能に取り付けられた第6伝動ギアとを含み、前記第6伝動ギアは前記第5伝動ギアと噛み合う。
【0017】
前記シフトチェンジ装置は前記出力軸に設けられ、前記第6伝動ギア又は前記入力軸に接続されるように前記出力軸を制御するように構成されている。
【0018】
さらに、前記変速装置が第1シフトポジションで動作しているとき、前記シフトチェンジ装置は、前記減速ギア組立体により伝達される前記駆動力が、前記入力軸、前記第3伝動ギア、前記第4伝動ギア、前記中間軸、前記第5伝動ギア、前記第6伝動ギア、および前記出力軸を順に介して、前記デファレンシャルに伝達されるように、前記第6伝動ギアに接続されるように前記出力軸を制御する。前記変速装置が第2シフトポジションで動作しているとき、前記シフトチェンジ装置は、前記減速ギア組立体により伝達される駆動力が前記入力軸及び前記出力軸を介して直接前記デファレンシャルに伝達されるように、前記入力軸に接続されるように前記出力軸を制御して、車両の2段駆動を可能にする。
【0019】
さらに、前記少なくとも二つの動力源は、制御されて協働して動作するか、または個別に動作することができる。
【0020】
さらに、前記少なくとも二つの動力源は、前方配置、後方配置、対向配置のうちのいずれか一つの方法で配置される。
【0021】
さらに、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、少なくとも一つのデュアルモータコントローラ、または少なくとも一つのデュアルモータコントローラとシングルモータコントローラとをさらに含み、前記デュアルモータコントローラと前記シングルモータコントローラの数は、前記駆動モータの数に応じて決定される。
【0022】
本発明の実施例の別の態様によれば、前記のいずれか一項に記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスを含む電動車がさらに提供される。
【0023】
さらに、前記電動車は、ピュア電動重トラックと、レンジエクステンダー重トラックと、電池交換式重トラックとを含む。
【0024】
さらに、前記電池交換式重トラックは電池交換用電池ボックスを含み、前記電池交換用電池ボックスは電池交換スタンドにおいて迅速に交換される。
【0025】
本発明の実施例で提案されるマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、それぞれが駆動モータを含む少なくとも二つの動力源を使用する。また、動力源に1対1に対応する減速ギア組立体を介して、動力源から出力される駆動力をデファレンシャルに伝達し、さらにデファレンシャルを介して駆動力を車両のアクスルに伝達することで、車輪の回転を駆動する。本発明の案によれば、従来の単一の大トルク、低回転の駆動モータの配置に代えて、小トルク、高回転の駆動モータを複数セット配置することにより、低速動作状況における大トルク要求に対応しつつ中高速域の動力性能を確保し、製造コストや調達コストを低減することができる。また、ある駆動モータが故障した場合でも、他の駆動モータを用いて車両を正常に駆動することができるため、電気駆動システムの信頼性を向上させた。
【0026】
さらに、本発明のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスに2段変速装置を採用することにより、動力の中断やシフトチェンジのショックをできるだけ減少して乗り心地を向上させるとともに、従来の多段AMT変速機に比べて、コストを下げることができる。
【0027】
さらに、車両の動作状況の要求に応じて、複数の動力源は協働して動作するか、または個別に動作することができる。車両の動力性能を満足しながら、駆動モータが高効率域で動作することを保証し、駆動モータのパワー損失を低減し、電気駆動システムの効率を向上させることができる。また、各駆動モータの動作を時分割で合理的に調整することにより、各駆動モータに蓄積される損傷を均一に分散させる効果が得られ、駆動モータの故障率を低減することができる。
【0028】
さらに、駆動モータの数に応じて適切な数のデュアルモータコントローラとシングルモータコントローラとを組み合わせて使用することにより、モータコントローラの製造コストを低減する。
【0029】
以上の説明は本発明の技術案の概要に過ぎず、本発明の技術的手段をより明確に把握して、明細書の内容に則って実施できるように、かつ本発明の上記とその他の目的、特徴及び利点をより分かりやすくするために、以下では、特にここに本発明の具体的な実施形態を列挙する。
【0030】
添付の図面に関連した本発明の具体的な実施例の以下の詳細な説明から、当業者は、本発明の上記および他の目的、利点、および特徴をより明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下では、本発明のいくつかの具体的な実施例を、添付の図面を参照して、限定的ではなく例示的な方法で詳細に説明する。図面における同じ参照符号は同じ或いは類似の部品または部分を表す。当業者であれば、これらの図面が必ずしも一定の比例で描かれているとは限らないことを理解するであろう。図面において、
【
図1】本発明の第1実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの模式構造ブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造模式図である。
【
図3】本発明の第1実施例の駆動モータの配置模式図である。
【
図4】本発明の第2実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの模式構造ブロック図である。
【
図5】本発明の第2実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造模式図である。
【
図6】本発明の第3実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造模式図である。
【
図7】本発明の第4実施例にかかる、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付図面を参照して本開示の例示的な実施例についてより詳細に説明する。図面では本開示の例示的実施例を示しているが、ここで述べた実施例に限定されることなく、各種の形式により本開示を実現できることは、理解しておく必要がある。逆に、これらの実施例を提案するのは、本開示をよりはっきり理解できるようにするためで、かつ本開示の範囲を完全に当業者に伝えられるようにするためである。
【0033】
現在、市場ではトン数の大きい電動車のモデルの多くが大出力、大トルク、低回転モータを多段AMTトランスミッションに合わせて使用するため、電気駆動システムのコストが高い。車全体の多くの動作状況において、モータの回転速度が高く、常にまたは多くの状况において高効率域に維持することができず、電気駆動システムの効率が低い。多段(例えば、6段、8段、9段)AMTトランスミッションの制御ロジックが複雑であり、シフトチェンジ時の動力中断は明らかである。モータとトランスミッションをそれぞれ異なる制御により制御され、部品の集積度が低い。また、単一のモータで駆動するため、モータが故障すると車両の走行が継続できず、電気駆動システムの信頼性が低い。
【0034】
上記の技術的問題を解決する、または少なくとも部分的に解決するために、本願の実施例は、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスを提案する。以下、本願の第1実施例から第4実施例の添付図面を参照し、本願の実施例における技術案について明確かつ完全に説明する。
【0035】
<第1実施例>
図1から
図3に示されるように、本実施例のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、少なくとも動力源1と減速ギア組立体2とを含むことができる。さらに、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、デファレンシャル4をさらに含むことができる。
【0036】
動力源1の数は少なくとも二つであり、各動力源1は駆動力を出力する駆動モータ1Aを含む。駆動モータ1Aに対する制御を簡略化するために、各駆動モータ1Aの性能と幾何学的寸法とを同一とする。なお、
図1から
図3に示される動力源1の数は例示的なものにすぎず、実際の応用においては、車両への応用の要件に応じて選択することができ、例えば、2つ、3つ、ひいてはそれ以上であってもよい。一つの具体的な実施形態において、動力源1の数は4であってもよい。減速ギア組立体2は、動力源1と同数であり、駆動力を伝達するために、動力源1と1対1に対応して接続されている。すなわち、各動力源1は一つの減速ギア組立体2に対応して接続されている。デファレンシャル4の入力側は、各減速ギア組立体2の出力側に接続され、デファレンシャル4の出力側は、車両のアクスル5に駆動力を伝達して車両の車輪を駆動するために、車両のアクスル5に接続されている。車両のアクスル5は、左右二つのハーフシャフトをそれぞれ駆動軸として含むことができ、各ハーフシャフトは一つの車輪に接続されている。従来の単一の大トルク、低回転の駆動モータ1Aの配置に代えて、小トルク、高回転の駆動モータを複数セット配置することにより、低速動作状況における大トルク要求に対応しつつ中高速域の動力性能を確保し、製造コストや調達コストを低減することができる。また、ある駆動モータ1Aが故障した場合でも、他の駆動モータ1Aを用いて車両を正常に駆動することができるため、電気駆動システムの信頼性を向上させた。また、本実施例において、変速装置を設ける必要がなく、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの制御を簡略化することができるので、特に低速使用が要求される車両に適しており、車両の要求を満たすことを前提として、可能な限り高い経済性を実現することができる。
【0037】
図2に示すように、各動力源1は、駆動モータ1Aと、駆動モータ1Aに接続されたモータ軸1Bとを含む。各減速ギア組立体2は、モータ軸1Bに接続された第1伝動ギア2Aと、第1伝動ギア2Aと噛み合う第2伝動ギア2Bとを含み、第2伝動ギア2Bは減速ギア組立体2の出力側である。駆動モータ1Aは、モータ軸1Bを介して第1伝動ギア2Aに接続され、さらに第2伝動ギア2Bを介してデファレンシャル4に接続され、第1伝動ギア2Aと第2伝動ギア2Bとの噛み合いにより、駆動モータ1Aから出力される駆動力をデファレンシャル4に伝達する。
【0038】
具体的には、この少なくとも二つの減速ギア組立体2は、一つの第2伝動ギア2Bを共用することができる。すなわち、各減速ギア組立体2は、それぞれの第1伝動ギア2Aと、一つの共用の第2伝動ギア2Bとを含む。このような設計により、部品点数を削減して、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの体積を減少させることで、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの配置空間を節約することができる。
【0039】
さらに、減速ギア組立体2が第2伝動ギア2bを共用する場合、これら少なくとも二つの動力源1を第2伝動ギア2bの周方向に配置してもよい。例えば、
図3に示すように、複数の動力源1は、第2伝動ギア2Bを軸心として周方向に分布している。このような配置により、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造をよりコンパクトにすることで、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの配置スペースをよさらに節約することができる。
【0040】
具体的には、車両の動作状況の要求に応じて、これら少なくとも二つの動力源1は協働して動作するか、または個別に動作することができる。車両の動力性能を満足しながら、駆動モータ1Aが高効率域で動作することを保証し、駆動モータ1Aのパワー損失を低減し、電気駆動システムの効率を向上させることができる。また、各駆動モータ1Aの動作を時分割で合理的に調整することにより、各駆動モータ1Aに蓄積される損傷を均一に分散させる効果が得られ、駆動モータ1Aの故障率を低減することができる。
【0041】
具体的には、これら少なくとも二つの動力源1は、前方配置の方式を採用している。前方配置とは、全ての駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の前方に配置することである。前方配置方式により、動力源1と減速ギア組立体2との構造を簡略化し、両者の組立作業を簡略化することができる。もちろん、動力源1は、後方配置、対向配置等の他の配置方式を採用してもよい。
【0042】
さらに、
図1に示すように、本実施例のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、少なくとも一つのデュアルモータコントローラ(
図1でDMCUとして表される)6、または少なくとも一つのデュアルモータコントローラ6とシングルモータコントローラ(
図1でMCUとして表される)7をさらに含むことができる。デュアルモータコントローラ6とシングルモータコントローラ7の数は、駆動モータ1Aの数に応じて決定される。二つのモータコントローラ6は、ストラテジにより二つのモータをそれぞれ制御することが可能である。実際の応用において、デュアルモータコントローラ6をできるだけ多く使用すべきである。例えば、駆動モータ1Aの数が偶数である場合、デュアルモータコントローラ6のみを使用し、デュアルモータコントローラ6の数は駆動モータ1Aの数の半分である。駆動モータ1Aの数が奇数である場合、デュアルモータコントローラ6に加えて一つのシングルモータコントローラ7を合わせて使用することができる。駆動モータ1Aの数に応じて適切な数のデュアルモータコントローラ6とシングルモータコントローラ7とを組み合わせて使用することにより、モータコントローラの製造コストを低減する。
【0043】
<第2実施例>
図4と
図5に示されるように、第2実施例と第1実施例との違いは、本実施例のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスが、デファレンシャル4の入力側と各減速ギア組立体2の出力側との間に接続された変速装置3をさらに含む点である。このとき、各減速ギア組立体2の出力側(すなわち第2伝動ギア2B)は変速装置3に接続され、さらに変速装置3を介してデファレンシャル4の入力側に接続される。
【0044】
具体的には、本実施例の駆動モータ1A、減速ギア組立体2、変速装置3は、いずれも変速装置3の内ケースをサポータとして構築されるので、部品の集積度が向上し、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの構造をよりコンパクトになる。
【0045】
変速装置3は、入力軸組立体と、中間軸組立体と、出力軸組立体と、シフトチェンジ装置3Hとを含む。入力軸組立体は、第2伝動ギア2Bに接続された入力軸3Aと、入力軸3Aに接続された第3伝動ギア3Bとを含む。入力軸3Aと第3伝動ギア3Bとは、一体的に加工成形されていてもよく、スプラインにより接続されていてもよい。中間軸組立体は、中間軸3Cと、中間軸3Cの両端にそれぞれ接続された第4伝動ギア3D及び第5伝動ギア3Eとを含み、第4伝動ギア3Dは第3伝動ギア3Bと噛み合う。第4伝動ギア3Dと第5伝動ギア3Eとは、それぞれスプライン又は締り嵌めと圧入の方式により、中間軸3Cと接続されている。出力軸組立体は、デファレンシャル4の入力側に接続された出力軸3Gと、出力軸3Gに回転可能に取り付けられた第6伝動ギア3Fとを含み、第6伝動ギア3Fは第5伝動ギア3Eと噛み合う。第6伝動ギア3Fは、ニードルベアリングを介して出力軸3Gに取り付けられ、出力軸3G上で周方向に回転可能である。シフトチェンジ装置3Hは出力軸3Gに設けられ、第6伝動ギア3Fまたは入力軸3Aに接続されるように出力軸3Gを制御するように構成されている。具体的には、シフトチェンジ装置3Hを、スプラインによる締り嵌めにより出力軸3Gに取り付けることができる。シフトチェンジ装置3Hとしては、通常、シフトカラーやドッグクラッチ等を使用することができる。
【0046】
以上の構造に基づいて、変速装置3は、第1シフトポジションと第2シフトポジションとの二つシフトポジションを実現することができる。変速装置3が第1シフトポジションで動作しているとき、シフトチェンジ装置3Hは、減速ギア組立体2により伝達される前記駆動力が、入力軸3A、第3伝動ギア3B、第4伝動ギア3D、中間軸3C、第5伝動ギア3E、第6伝動ギア3F、および出力軸3Gを順に介して、デファレンシャルに伝達されるように、第6伝動ギア3Fに接続されるように出力軸3Gを制御する。変速装置3が第2シフトポジションで動作しているとき、シフトチェンジ装置3Hは、減速ギア組立体2により伝達される駆動力が入力軸3A及び出力軸3Gを介して直接デファレンシャル4に伝達されるように、入力軸3Aに接続されるように出力軸3Gを制御して、車両の2段駆動を可能にする。
【0047】
本実施例のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスに2段変速装置を採用することにより、動力の中断やシフトチェンジのショックをできるだけ減少して乗り心地を向上させるとともに、従来の多段AMT変速機に比べて、コストを下げることができる。
【0048】
以下では、四つの動力源1を採用し、変速装置3を2段変速とする設定に基づいて、マルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスの動作モードについて具体的に説明する。
【0049】
車両が実際に走行している間に、四つの動力源1と2段変速装置3とを組み合わせて使用することで、8種類の電気のみで駆動する動作モードを作りだし、それぞれの動作モードと、変速装置3のシフトポジションと動力源1とを組み合わせた使用との制御関係を、以下の表に示されている。
【0050】
【0051】
一つの駆動モータ1Aのみが動作しており、かつ変速装置3が第1シフトポジション状態にある場合、第1シフトポジションピュア電動駆動モードEV1として定義する。Ev1動作モードは、無負荷動作状況において、平坦路や緩い下り坂道などの場合、低速巡航時の使用に適しており、電力消費を節約できる。また、単一の駆動モータで駆動し、他の駆動モータは動作しないので、駆動モータの機械的疲労による損傷を低減することができる。
【0052】
一つの駆動モータ1Aのみが動作しており、かつ変速装置3が第2シフトポジション状態にある場合、第2シフトポジションピュア電動駆動モードEV2として定義する。EV2動作モードは、無負荷動作状況において、平坦路での走行、または高速巡航時の使用に適している。
【0053】
二つの駆動モータ1Aが動作しており、かつ変速装置3が第1シフトポジション状態にある場合、第3シフトポジションピュア電動駆動モードEV3として定義する。EV3動作モードは、無負荷動作状況において、平坦路での発進、軽負荷での低速走行などのシナリオでの使用に適している。
【0054】
二つの駆動モータ1Aが動作しており、かつ変速装置3が第2シフトポジション状態にある場合、第4シフトポジションピュア電動駆動モードEV4として定義する。EV4動作モードは、無負荷または軽負荷動作状況において、平坦路での走行、高速巡航などのシナリオでの使用に適している。
【0055】
三つの駆動モータ1Aが動作しており、かつ変速装置3が第1シフトポジション状態にある場合、第5シフトポジションピュア電動駆動モードEV5として定義する。EV5動作モードは、中負荷または標準負荷動作状況において、発進時や平坦路、低速走行時の使用に適している。
【0056】
三つの駆動モータ1Aが作動しており、かつ変速装置3が第2シフトポジション状態にある場合、第6シフトポジションピュア電動駆動モードEV6として定義する。EV6動作モードは、中負荷または標準負荷動作状況において、平坦路、高速巡航時の使用に適している。
【0057】
四つの駆動モータ1Aが同時に動作しており、かつ変速装置3が第1シフトポジション状態にある場合、第7シフトポジションピュア電動駆動モードEV7として定義する。EV7動作モードは全負荷または過負荷動作状況において、発進、急な上り坂などの低速、大トルクが需要なシナリオでの使用に適しており、全負荷または過負荷の場合に、大トルクの発進、登坂の需要を満足できる。
【0058】
四つの駆動モータ1Aが同時に動作しており、かつ変速装置3が第1シフトポジション状態にある場合、第8シフトポジションピュア電動駆動モードEV8として定義する。EV8動作モードは、全負荷または過負荷動作状況において、平坦路での発進、緩い上り坂、高速巡航などのシナリオでの使用に適している。
【0059】
本実施例において、車両の動作状況の要求に応じて、複数セットの駆動モータは協働して動作するか、または個別に動作することができ、また、変速装置の異なるシフトポジションと組み合わせることができる。車両の動力性能を満足しながら、駆動モータが高効率域で動作することを保証し、駆動モータのパワー損失を低減し、電気駆動システムの効率を向上させることができる。
【0060】
<第3実施例>
図6に示すように、第3実施例と第2実施例との違いは、複数の動力源1が対向配置方式を採用している点である。対向配置とは、一部の駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の前方に配置し、他の一部の駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の後方に配置することである。例えば、二つの動力源1について、そのうちの一方の駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の前方に配置し、他方の駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の後方に配置することにより、車両全体のシステムの配置に合わせて、減速ギア組立体2前方の空いた側方位置に車両の他の部品やシステムを配置するのに有利である。
【0061】
第4実施例
図7に示すように、第4実施例と第2実施例との違いは、複数の動力源1が後方配置方式を採用している点である。後方配置とは、全ての駆動モータ1Aを減速ギア組立体2の後方に配置することである。このような配置により、軸方向の長さ空間を節約することができ、車両全体のシステムの配置に合わせて、車両全体の軸方向に他の部品やシステムを取り付けるためのスペースを確保するのに有利である。
【0062】
同じ技術的発想に基づいて、本発明の実施例は、前述の任意の実施例または実施例の組み合わせに記載のマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスを含む電動車をさらに提供する。前記電動車は、ピュア電動重トラックと、レンジエクステンダー重トラックと、電池交換式重トラックとなどを含むが、これらに限定されない。
【0063】
さらに、本発明の実施例は電池交換式重トラックをさらに提供し、この電池交換式重トラックは電池交換用電池ボックスを含み、電池交換用電池ボックスは電池交換スタンドにおいて迅速に交換できる。
【0064】
上記の任意の一つの可能な実施例または複数の可能な実施例の組み合わせによれば、本発明の実施例は、以下のような有益な効果を達成することができる。
【0065】
本発明の実施例により提供されるマルチモータフレキシブルトルク集中駆動合成ボックスは、低速作動状況における大トルク要求を満たせるだけでなく、同時に中高速時の動力性能を保証することもできる。小トルク、高回転の小モータを複数セット配置することにより、制造コストを下げることができる。2段変速装置を採用することで、動力の中断をできるだけ減少し、運転の快適性を向上させることができる。デュアルモータコントローラとシングルモータコントローラとを組み合わせて使用することにより、モータコントローラの製造コストを低減する。各駆動モータの動作を時分割で合理的に調整することにより、各駆動モータに蓄積される損傷を均一に分散させる効果が得られる。一つの駆動モータが故障した場合でも、残りの複数セットの駆動モータを用いて車両を正常に駆動することができるため、電気駆動システムの信頼性を向上させた。
【0066】
ここで提供した明細書では大量の具体的な詳細を説明した。しかしながら、本発明の実施例はこれらの具体的な詳細がない状況で実現できることを理解できるであろう。いくつかの実例では、本明細書の理解を不明瞭にしないように、周知の方法、構造及び技術を詳細に示していない。
【0067】
最後に、上記の各実施例は、本発明の技術案を限定するものではなく、説明するためにのみ使用されるものである。前述の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の要旨及び原則内で、前述の各実施例に記載された技術案を修正し、又はその一部または全部の技術的特徴を均等物により置換することができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案を本発明の保護範囲から逸脱させるものではないことを、理解すべきである。