(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/20 20090101AFI20241122BHJP
H04W 8/00 20090101ALI20241122BHJP
H04W 40/34 20090101ALI20241122BHJP
H04W 76/18 20180101ALI20241122BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20241122BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20241122BHJP
【FI】
H04W40/20
H04W8/00 110
H04W40/34
H04W76/18
H04W88/04
H04W92/18
(21)【出願番号】P 2023565694
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044759
(87)【国際公開番号】W WO2023105587
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】岩山 直文
(72)【発明者】
【氏名】望月 満
(72)【発明者】
【氏名】下田 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 史樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 真也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】徳田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 益夫
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0097945(US,A1)
【文献】国際公開第2014/068665(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/105683(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0086663(US,A1)
【文献】Fujitsu,Scope, Requirements and Scenarios in NR Sidelink Relaying,3GPP TSG RAN WG2 #111-e R2-2006866,2020年08月07日,<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_111-e/Docs/R2-2006866.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、第1の移動端末装置と、第2の移動端末装置と、第3の移動端末装置とを備え、第5世代移動通信システムの規格に対応した通信システムであって、
前記第1の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲に存在する場合に、前記基地局を識別するための基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第1のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、
前記第2の移動端末装置は、前記第1の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局とは通信不可能な範囲に存在する場合に、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第1の移動端末装置を識別するための移動端末装置識別情報及び前記基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第2のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、
前記第3の移動端末装置は、前記第2の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局及び前記第1の移動端末装置とは通信不可能な範囲に存在する場合には、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第2の移動端末装置及び前記第1の移動端末装置を経由して前記基地局と通信を行う通信経路であるマルチホップリレー通信経路の確立を実行
し、
前記第3の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲から、前記基地局及び前記第1の移動端末装置とは通信不可能な範囲に移動した場合に、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えを実行し、
前記第3の移動端末装置は、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えを開始してから、予め定められた期間が経過しても、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えが完了しない場合には、通信経路の切替に失敗した切替エラーを検知し、前記基地局に直接接続する通信経路である直接通信経路の確立を実行すること
を特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第3の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲に移動した場合には、前記基地局との通信品質を示す通信品質レポートを前記基地局に送ることで、前記基地局に直接接続する通信経路である直接通信経路への切り替えを実行すること
を特徴とする請求項
1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1の移動端末装置は、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージに、前記第1の移動端末装置に接続されている移動端末装置の数を示すことのできるデータである第1のデータを含め、
前記第2の移動端末装置は、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージに、前記第2の移動端末装置に接続されている移動端末装置の数を示すことのできる第2のデータ及び前記第1のデータを含め、
前記第3の移動端末装置は、前記第1のデータ及び前記第2のデータを前記基地局に送ること
を特徴とする請求項1
又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
基地局と、第1の移動端末装置と、第2の移動端末装置と、第3の移動端末装置とを備え、第5世代移動通信システムの規格に対応した通信システムであって、
前記第1の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲に存在する場合に、前記基地局を識別するための基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第1のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、
前記第2の移動端末装置は、前記第1の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局とは通信不可能な範囲に存在する場合に、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第1の移動端末装置を識別するための移動端末装置識別情報及び前記基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第2のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、
前記第3の移動端末装置は、前記第2の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局及び前記第1の移動端末装置とは通信不可能な範囲に存在する場合には、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第2の移動端末装置及び前記第1の移動端末装置を経由して前記基地局と通信を行う通信経路であるマルチホップリレー通信経路の確立を実行
し、
前記第1の移動端末装置は、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージに、前記第1の移動端末装置に接続されている移動端末装置の数を示すことのできるデータである第1のデータを含め、
前記第2の移動端末装置は、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージに、前記第2の移動端末装置に接続されている移動端末装置の数を示すことのできる第2のデータ及び前記第1のデータを含め、
前記第3の移動端末装置は、前記第1のデータ及び前記第2のデータを前記基地局に送ること
を特徴とする通信システム。
【請求項5】
前記第1の移動端末装置は、前記第3の移動端末装置が前記第1の移動端末装置と通信可能な範囲に移動した場合には、前記マルチホップリレー通信経路から、前記第2の移動端末装置を経由せずに前記第1の移動端末装置を経由する通信経路であるシングルホップリレー通信経路への切り替えを実行すること
を特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムの規格化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、SL(Side Link)通信(PC5通信とも称する)を用いたサービス又はアプリケーションを、EPS(Evolved Packet System)においても、第5世代(以下、「5G」ともいう)無線アクセスシステムの5Gコアシステムにおいてもサポートすることが検討されている。SL通信では、端末間で通信が行われる。SL通信を用いたサービスとして、たとえば、V2X(Vehicle-to-everything)サービス及びプロキシミティサービス等がある。SL通信においては、端末間の直接通信だけでなく、リレーを介した移動端末装置(以下、UE:User Equipment)と、NW(NetWork)との間の通信が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
なお、以下では、UEとNWとの間のリレーを、UE-to-NWリレー、又は、UE-NW間リレーと称する場合がある。さらに、UEとNWとの間のリレーを実施するUEを、U2Nリレーと称する場合がある。
【0004】
また、UEと別のUEとの間のリレーを、UE-to-UEリレー、又は、UE-UE間リレーと称する場合がある。さらに、UEと別のUEとの間のリレーを実施するUEを、U2Uリレーと称する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】3GPPTR 38.836 V17.0.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
5G方式のU2Nリレーは、リレー1台のみとするシングルホップ方式だけが提案されていて、複数台のリレーを介するマルチホップ方式は開示されていない。
【0007】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、1台のU2Nリレーと、1台以上のU2Uリレーとを組合わせたマルチホップリレー方式を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る通信システムは、基地局と、第1の移動端末装置と、第2の移動端末装置と、第3の移動端末装置とを備え、第5世代移動通信システムの規格に対応した通信システムであって、前記第1の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲に存在する場合に、前記基地局を識別するための基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第1のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、前記第2の移動端末装置は、前記第1の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局とは通信不可能な範囲に存在する場合に、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第1のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第1の移動端末装置を識別するための移動端末装置識別情報及び前記基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第2のサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、前記第3の移動端末装置は、前記第2の移動端末装置と通信可能な範囲に存在し、かつ、前記基地局及び前記第1の移動端末装置とは通信不可能な範囲に存在する場合には、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、前記第2のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、前記第2の移動端末装置及び前記第1の移動端末装置を経由して前記基地局と通信を行う通信経路であるマルチホップリレー通信経路の確立を実行し、前記第3の移動端末装置は、前記基地局と通信可能な範囲から、前記基地局及び前記第1の移動端末装置とは通信不可能な範囲に移動した場合に、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えを実行し、前記第3の移動端末装置は、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えを開始してから、予め定められた期間が経過しても、前記マルチホップリレー通信経路への切り替えが完了しない場合には、通信経路の切替に失敗した切替エラーを検知し、前記基地局に直接接続する通信経路である直接通信経路の確立を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一又は複数の態様によれば、1台のU2Nリレーと、1台以上のU2Uリレーとを組合わせたマルチホップリレー方式が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1~3に係る通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1~3におけるUEの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】(A)及び(B)は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1~3における基地局130の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】5GC部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図6】UEが行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。
【
図7】NRにおけるセルの構成の一例を示す概略図である。
【
図8】基地局と直接通信をしているリモートUEが、U2Nリレーと、U2Uリレーとを介したマルチホップリレー通信にパススイッチする例を示す概略図である。
【
図9】実施の形態1におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【
図10】基地局と、U2Nリレー及びU2Uリレーを介したマルチホップリレー通信をしているリモートUEが、Uuインタフェースを用いた直接通信にパススイッチする例を示す概略図である。
【
図11】実施の形態2におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【
図12】一つのU2Uリレー及び一つのU2Nリレーを介して基地局と通信しているリモートUEがU2Nリレーに接近したため、リモートUEと、U2Nリレーとが直接通信できる状態となり、パススイッチを実施してリレー段数を削減する例を示す概略図である。
【
図13】実施の形態3におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る通信システム100の構成を概略的に示すブロック図である。
通信システム100は、3GPPにおいて議論されている5G方式の通信システムである。
通信システム100は、UE110と、基地局130と、5GC(5G Core)部160とを備える。コアネットワークは、5GCと称される。
無線アクセスネットワークは、NG-RAN(Next Generation Radio Access Network)と称される。
【0014】
UE110は、基地局130と無線通信可能であり、無線通信で信号の送受信を行う。
UE110に対する制御プロトコル、例えば、RRC(Radio Resource Control)と、ユーザプレイン(以下、U-Planeと称する場合もある)とが基地局130で終端するならば、NG-RANは、一又は複数の基地局130によって構成される。ここで、ユーザプレインは、例えば、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)又はPHY(Physical layer)である。
【0015】
UE110と、基地局130との間の制御プロトコルであるRRC(Radio Resource Control)は、報知、ページング又はRRC接続マネージメント等を行う。RRCにおける基地局130とUE110との間の状態として、RRC_IDLEと、RRC_CONNECTEDと、RRC_INACTIVEとがある。
【0016】
RRC_IDLEでは、PLMN(Public Land Mobile Network)選択、SI(System Information)の報知、ページング、セル再選択及びモビリティ等が行われる。
【0017】
RRC_CONNECTEDでは、UE110は、RRC接続を有し、ネットワークとのデータの送受信を行うことができる。また、RRC_CONNECTEDでは、HO(HandOver)又は隣接セルの測定等が行われる。
【0018】
RRC_INACTIVEでは、5GC部160と、基地局130との間の接続が維持されつつ、SIの報知、ページング、セル再選択又はモビリティ等が行われる。
【0019】
基地局130は、一又は複数のgNB(NG-RAN NodeB)150により構成される。
【0020】
gNB150は、CU(Central Unit)151と、DU(Distributed Unit)152に分割されていてもよい。
gNB150には、一つのCU151が含まれ、一又は複数のDU152が含まれる。
CU218は、DU219と、F1インタフェースにより接続され、CU151とDU152との間で制御情報又はユーザデータが通信される。
【0021】
gNB150は、5GC部160とNGインタフェースにより接続され、gNB150と、5GC部160との間で制御情報又はユーザデータが通信される。
5GC部160は、AMF(Access and Mobility Management Function)、SMF(Session Management Function)若しくはUPF(User Plane Function)、又は、AMF、SMF及びUPFを含む。
【0022】
NGインタフェースは、gNB150と、AMFとの間のN2インタフェース、gNB150と、UPFとの間のN3インタフェース、AMFと、SMFとの間のN11インタフェース、及び、UPFと、SMFとの間のN4インタフェースの総称である。
【0023】
一つのgNB150に対して、複数の5GC部160が接続されてもよい。gNB150間は、Xnインタフェースにより接続され、gNB150間で制御情報又はユーザデータが通信される。
【0024】
5GC部160は、上位装置、具体的には上位ノードであり、一又は複数の基地局130に対して、ページング信号の分配を行う。
また、5GC部160は、待受け状態のモビリティ制御を行う。
5GC部160は、UE110が待ち受け状態、インアクティブ状態及びアクティブ状態のときに、トラッキングエリアリストの管理を行う。
5GC部160は、UE110が登録されているトラッキングエリアに属するセルへ、ページングメッセージを送信することで、ページングプロトコルに着手する。
【0025】
なお、基地局130は、一又は複数のセルを構成してもよい。一つの基地局130が複数のセルを構成する場合、一つ一つのセルが、UE110と通信可能に構成される。
【0026】
また、5G方式の通信システム100に、UDM(Unified Data Management)機能又はPCF(Policy Control Function)が含まれてもよい。UDM及びPCFの少なくとも何れか一方は、5GC部160に含まれてもよい。
【0027】
5G方式の通信システム100に、LMF(Location Management Function)が設けられてもよい。LMFは、AMFを経由して基地局130に接続されていてもよい。
【0028】
5G方式の通信システム100に、N3IWF(Non-3GPP Interworking Function)が含まれてもよい。N3IWFは、UE110との間における非3GPPアクセスにおいて、AN(Access Network)をUEとの間で終端してもよい。
【0029】
図2は、UE110の構成を概略的に示すブロック図である。
UE110は、端末側通信部111と、アプリケーション部(以下、AP部という)120と、プロトコル処理部121と、制御部122とを備える。
端末側通信部111は、送信データバッファ部112と、エンコーダ部113と、変調部114と、周波数変換部115と、アンテナ116A~116Dと、復調部117と、デコーダ部118とを備える通信部である。
【0030】
まず、UE110の送信処理を説明する。
プロトコル処理部121からの制御データ又はAP部120からのユーザデータは、送信データバッファ部112に保存される。
送信データバッファ部112に保存されたデータは、エンコーダ部113へ送られる。
【0031】
エンコーダ部113は、そのデータに対して、誤り訂正等のエンコード処理を施す。なお、エンコーダ部113は、データに応じて、エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部112からのデータを、変調部114へ直接出力してもよい。
【0032】
変調部114は、エンコーダ部113からのデータに対して、変調処理を行う。変調部114にて、MIMO(Multi-Input Multi-Output)におけるプリコーディングが行われてもよい。また、変調部114は、変調されたデータをベースバンド信号に変換した後に、そのベースバンド信号を周波数変換部115に与える。
【0033】
周波数変換部115は、変調部114からのベースバンド信号を、無線送信周波数の送信信号に変換する。
その後、アンテナ116A~116Dは、その送信信号を宛先へ送信する。
【0034】
なお、
図2においては、四つのアンテナ116A~116Dが設けられているが、アンテナ数については、四つに限定されない。
【0035】
次に、UE110の受信処理を説明する。
アンテナ116A~116Dは、送信元からの無線信号を受信信号として受信する。
周波数変換部115は、その受信信号を、無線受信周波数からベースバンド信号に変換する。そして、周波数変換部115は、そのベースバンド信号を復調部117へ送る。
【0036】
復調部117は、周波数変換部115からのベースバンド信号に対して復調処理を行う。なお、復調部117にて、ウェイト計算及び乗算処理が行われてもよい。復調後のデータは、デコーダ部118へ送られる。
【0037】
デコーダ部118は、復調部117からのデータに対して、誤り訂正等のデコード処理を行う。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部121へ送られ、ユーザデータはAP部120へ送られる。
【0038】
以上のような、UE110での一連の処理は、制御部122によって制御される。図示されていないが、制御部122は、端末側通信部111、AP部120及びプロトコル処理部121に接続されている。
なお、UE110が送信に用いるアンテナ数と受信に用いるアンテナ数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
以上に記載されたAP部120、プロトコル処理部121及び制御部122の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0040】
また、AP部120、プロトコル処理部121及び制御部122の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、AP部120、プロトコル処理部121及び制御部122は、処理回路網により実現することができる。
【0041】
なお、端末側通信部111は、無線通信用のインタフェースである無線通信インタフェースにより実現することができる。
【0042】
図4は、基地局130の構成を概略的に示すブロック図である。
基地局130は、局側通信部131と、通信処理部140と、プロトコル処理部144と、制御部145とを備える。
局側通信部131は、送信データバッファ部132と、エンコーダ部133と、変調部134と、周波数変換部135と、アンテナ136A~136Dと、復調部137と、デコーダ部138とを備える。
通信処理部140は、5GC部160等の5GCとの間のデータの送受信を行う5GC通信部141と、MME(Mobility Management Entity)等のEPC(Evolved Packet Core)との間のデータの送受信を行うEPC通信部142と、他の基地局との間のデータの送受信を行う他基地局通信部143とを備える。なお、5GC通信部141、EPC通信部142及び他基地局通信部143は、それぞれプロトコル処理部144と情報の受け渡しを行う。
【0043】
まず、基地局130の送信処理を説明する。
プロトコル処理部144からの制御データ、又は、5GC通信部141、EPC通信部142若しくは他基地局通信部143からのユーザデータ若しくは制御データは、送信データバッファ部132へ保存される。
送信データバッファ部132に保存されたデータは、エンコーダ部133へ送られる。
【0044】
エンコーダ部133は、受け取ったデータに対して、誤り訂正等のエンコード処理を施す。なお、エンコーダ部133は、データに応じて、エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部132からのデータを、変調部134へ直接出力してもよい。
【0045】
変調部134は、エンコーダ部133からのデータに対して、変調処理を行う。なお、変調部134にて、MIMOにおけるプリコーディングが行われてもよい。また、変調部134は、変調されたデータをベースバンド信号に変換した後に、そのベースバンド信号を周波数変換部135に与える。
【0046】
周波数変換部135は、変調部134からのベースバンド信号を、無線送信周波数の送信信号に変換する。
その後、アンテナ136A~136Dは、その送信信号を宛先へ送信する。
【0047】
なお、
図4においては、四つのアンテナ136A~136Dが設けられているが、アンテナ数については、四つに限定されない。
【0048】
次に、基地局130の受信処理を説明する。
アンテナ136A~136Dは、送信元からの無線信号を受信信号として受信する。
周波数変換部135は、その受信信号を、無線受信周波数からベースバンド信号に変換する。そして、周波数変換部135は、そのベースバンド信号を復調部137へ送る。
【0049】
復調部137は、周波数変換部135からのベースバンド信号に対して復調処理を行う。復調後のデータは、デコーダ部138へ送られる。
【0050】
デコーダ部138は、復調部137からのデータに対して、誤り訂正等のデコード処理を行う。デコードされたデータのうち、制御データは、プロトコル処理部144、5GC通信部141、EPC通信部142又は他基地局通信部143へ送られ、ユーザデータは5GC通信部141、EPC通信部142又は他基地局通信部143へ送られる。
【0051】
以上のような、基地局130での一連の処理は、制御部145によって制御される。図示されていないが、制御部145は、局側通信部131、通信処理部140及びプロトコル処理部144に接続されている。
なお、基地局130が送信に用いるアンテナ数と受信に用いるアンテナ数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、UE110のアンテナ数と、基地局130のアンテナ数は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0052】
以上に記載された通信処理部140、プロトコル処理部144及び制御部145の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0053】
また、通信処理部140、プロトコル処理部144及び制御部145の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC又はFPGA等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、通信処理部140、プロトコル処理部144及び制御部145は、処理回路網により実現することができる。
【0054】
なお、局側通信部131は、無線通信用のインタフェースである無線通信インタフェースにより実現することができる。
【0055】
図5は、5GC部160の構成を概略的に示すブロック図である。
図5は、
図1に示されている5GC部160に、AMFの構成、SMFの構成及びUPFの構成が含まれた場合について示している。
5GC部160は、Data Network通信部161と、基地局通信部162と、ユーザプレイン通信部163と、セッション管理部164と、制御プレイン制御部165と、制御部169とを備える。
【0056】
Data Network通信部161は、5GC部160と、Data Networkとの間のデータの送受信を行う。
基地局通信部162は、5GC部160と、基地局130との間のNGインタフェースによるデータの送受信を行う。
Data Networkから受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、Data Network通信部161から、ユーザプレイン通信部163経由で基地局通信部162に送られ、基地局通信部162から基地局130に送られる。
受信された基地局130からのデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、基地局通信部162から、ユーザプレイン通信部163経由で、Data Network通信部161に送られ、Data Network通信部161からData Networkへ送信される。
【0057】
Data Networkから受信したデータが制御データであった場合、制御データは、Data Network通信部161からユーザプレイン通信部163経由でセッション管理部164へ送られる。
セッション管理部164は、制御データを制御プレイン制御部165へ送る。
受信された基地局130からのデータが制御データであった場合、制御データは、基地局通信部162から制御プレイン制御部165に送られる。制御プレイン制御部165は、その制御データをセッション管理部164へ送る。
【0058】
制御プレイン制御部165は、制御プレイン(以下、C-Planeと称する場合もある)に対する処理全般を行う。
制御プレイン制御部165は、NAS(Non-Access Stratum)セキュリティ部166と、PDUセッションコントロール部167と、アイドルステートモビリティ管理部168とを含む。
【0059】
NASセキュリティ部166は、NASメッセージのセキュリティ等を行う。
PDUセッションコントロール部167は、UE110と、5GC部160との間のPDUセッションの管理等を行う。
アイドルステートモビリティ管理部168は、待受け状態のモビリティ管理、待受け状態時のページング信号の生成及び制御、傘下の一又は複数のUE110のトラッキングエリアの追加、削除、更新及び検索、並びに、トラッキングエリアリスト管理等を行う。なお、待ち受け状態は、アイドルステート、RRC_IDLE状態、又は、単にアイドルとも称される。
【0060】
5GC部160の一連の処理は、制御部169によって制御される。図示されていないが、制御部169は、Data Network通信部161、基地局通信部162、ユーザプレイン通信部163、セッション管理部164及び制御プレイン制御部165と接続されている。
【0061】
Data Network通信部161、基地局通信部162、ユーザプレイン通信部163、セッション管理部164、制御プレイン制御部165及び制御部169の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0062】
また、Data Network通信部161、基地局通信部162、ユーザプレイン通信部163、セッション管理部164、制御プレイン制御部165及び制御部169の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC又はFPGA等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、Data Network通信部161、基地局通信部162、ユーザプレイン通信部163、セッション管理部164、制御プレイン制御部165及び制御部169は、処理回路網により実現することができる。
【0063】
次に、通信システム100におけるセルサーチ方法の一例を示す。
図6は、UE110が行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。
UE110は、セルサーチを開始すると、周辺の基地局130から送信される第一同期信号(P-SS)及び第二同期信号(S-SS)を用いて、スロットタイミング、フレームタイミングの同期をとる(S10)。ここで、P-SSと、S-SSとを合わせて、同期信号という。同期信号には、セル毎に割り当てられたPCIに1対1に対応するシンクロナイゼーションコードが割り当てられている。PCIの数は504通りが検討されている。UE110は、この504通りのPCIを用いて同期をとるとともに、同期がとれたセルのPCIを特定する。
【0064】
次に、UE110は、同期がとれたセルに対して、基地局130からセル毎に送信されるRS(Reference Signal)であるセル固有参照信号を検出し、RSの受信電力であるRSRP(Reference Signal Received Power)の測定を行う(S11)。RSには、PCIと1対1に対応したコードが用いられている。そのコードで相関をとることによって他セルと分離することができる。ステップS10で特定されたPCIから、そのセルのRS用のコードを導出することによって、RSを検出し、RSのRSRPを測定することが可能となる。
【0065】
次に、UE110は、ステップS11までで検出された一つ以上のセルの中から、RSの受信品質が最もよいセル、例えば、RSのRSRPが最も高いセル、つまりベストセルを選択する(S12)。なお、UE110は、ベストセルに加えて、最もRSRPが高いビームであるベストビームを選択してもよい。
【0066】
次に、UE110は、ベストセルのPBCH(Physical Broadcast CHannel)を受信して、BCCH(Broadcast Control CHannel)を介して報知情報を得る。PBCH上のBCCHには、セル構成情報が含まれるMIB(Master Information Block)がマッピングされる。従って、PBCHを受信してBCCHを得ることで、MIBが得られる(S13)。MIBの情報としては、例えば、DL(ダウンリンク)システム帯域幅、送信アンテナ数、及び、SFN(System Frame Number)等がある。システム帯域幅は、送信帯域幅設定(dl-bandwidth)とも呼ばれる。
また、UE110は、ステップS13において、ビームの情報、例えば、ビームの識別子を取得してもよい。さらに、UE110は、ステップS13において、RMSI(Remaining Minimum SI)のスケジューリング情報を取得してもよい。
【0067】
次に、UE110は、MIBのセル構成情報をもとに、そのセルの下り共有チャネルであるDL-SCH(Downlink Shared Channel)を受信して、BCCHの中のSIB(System Information Block)1を得る(S14)。SIB1には、そのセルへのアクセスに関する情報、セルセレクションに関する情報、他のSIBであるSIBk(kは、k≧2の整数)のスケジューリング情報が含まれる。また、SIB1には、TAC(Tracking Area Code)が含まれる。TACはトラッキングエリアのコード番号である。
なお、UE110は、ステップS14において、RMSIを受信してもよい。
【0068】
次に、UE110は、ステップS14で受信したSIB1のTACと、UE110が既に保有しているトラッキングエリアリスト内のトラッキングエリア識別子であるTAI(Tracking Area Identity)のTAC部分とを比較する。トラッキングエリアリストは、TAIリストとも称される。TAIは、トラッキングエリアを識別するための識別情報であり、MCC(Mobile Country Code)と、MNC(Mobile Network Code)と、TACとによって構成される。MCCは国コードである。MNCはネットワークコードである。
【0069】
UE110は、TACを比較した結果、ステップS14で受信されたTACがトラッキングエリアリスト内に含まれるTACと同じならば(S15でYes)、そのセルで待ち受け動作に入る。
TACを比較して、ステップS14で受信されたTACがトラッキングエリアリスト内に含まれなければ(S15でNo)、UE110は、そのセルを通して、MME等が含まれるコアネットワークへ、TAU(Tracking Area Update)を行うためにトラッキングエリアの変更を要求する。
【0070】
コアネットワークを構成する装置であるコアネットワーク側装置は、TAU要求信号とともに通信端末から送られてくるUE110の識別番号(例えば、UE-ID等)をもとに、トラッキングエリアリストの更新を行う。コアネットワーク側装置は、UE110に更新後のトラッキングエリアリストを送信する。UE110は、受信されたトラッキングエリアリストに基づいて、UE110が保有するTACリストを書き換えることで、更新する。その後、UE110は、そのセルで待ち受け動作に入る。
【0071】
スマートフォンおよびタブレット型端末装置の普及によって、セルラー系無線通信によるトラフィックが爆発的に増大しており、世界中で無線リソースの不足が懸念されている。これに対応して周波数利用効率を高めるために、小セル化し、空間分離を進めることが検討されている。
【0072】
図7は、NRにおけるセルの構成の一例を示す概略図である。
NRのセルでは、基地局130は、狭いビームを形成し、方向を変えて送信する。
図7に示す例において、基地局130は、ある時間において、ビーム102-1を用いてUE110との送受信を行う。他の時間において、基地局130は、ビーム102-2を用いてUE110との送受信を行う。以下同様にして、基地局130は、ビーム102-3~102-8のうち、一又は複数のビームを用いてUE110との送受信を行う。このようにすることで、基地局130は広範囲のセルを構成する。
【0073】
図7では、基地局130が用いるビームの数を8とする例について示したが、ビームの数は8とは異なっていてもよい。また、
図7に示す例において、基地局130が同時に用いるビームの数を一つとしたが、複数であってもよい。
【0074】
3GPPが定めるTS 36.300 V16.5.0及びTS 38.300 V.16.5.0では、D2D(Device to Device)通信又はV2V(Vehicle to Vehicle)通信のため、SL(Side Link)がサポートされている。SLはPC5インタフェースによって規定される。
【0075】
SLに用いられる物理チャネルについて説明する。
物理サイドリンク報知チャネルであるPSBCH(Physical Sidelink Broadcast CHannel)は、システムと同期に関連する情報を運び、UE110から送信される。
【0076】
物理サイドリンクディスカバリチャネルであるPSDCH(Physical Sidelink Discovery CHannel)は、UE110からサイドリンクディスカバリメッセージを運ぶ。
【0077】
物理サイドリンク制御チャネルであるPSCCH(Physical Sidelink Control CHannel)は、サイドリンク通信及びV2Xサイドリンク通信のために、UE110からの制御情報を運ぶ。
【0078】
物理サイドリンク共有チャネルであるPSSCH(Physical Sidelink Shared CHannel)は、サイドリンク通信及びV2Xサイドリンク通信のために、UE110からのデータを運ぶ。
【0079】
物理サイドリンクフィードバックチャネルであるPSFCH(Physical Sidelink Feedback CHannel)は、PSSCH送信を受信したUE110から、PSSCHを送信したUE110に、サイドリンク上でのHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)フィードバックを運ぶ。
【0080】
次に、SLに用いられるトランスポートチャネルについて説明する。
サイドリンク報知チャネルであるSL-BCH(Sidelink Broadcast CHannel)は、予め決められたトランスポートフォーマットを有し、物理チャネルであるPSBCHにマッピングされる。
【0081】
サイドリンクディスカバリチャネルであるSL-DCH(Sidelink Discovery CHannel)は、固定サイズの予め決められたフォーマットの周期的報知送信を有する。また、SL-DCHは、UE自動リソース選択と、gNB150によってスケジュールされたリソースアロケーションの両方をサポートする。UE自動リソース選択では、衝突リスクが有り、UE110がgNB150によって個別リソースをアロケーションされたときは、衝突は起こらない。また、SL-DCHは、HARQコンバイニングをサポートするが、HARQフィードバックはサポートしない。SL-DCHは、物理チャネルであるPSDCHにマッピングされる。
【0082】
サイドリンク共有チャネルであるSL-SCH(SideLink Shared CHannel)は、報知送信をサポートする。SL-SCHは、UE自動リソース選択と、gNB150によってスケジュールされたリソースアロケーションの両方をサポートする。UE自動リソース選択では、衝突リスクが有り、UE110がgNB150によって個別リソースをアロケーションされたときは、衝突は起こらない。また、SL-SCHは、HARQコンバイニングをサポートするが、HARQフィードバックはサポートしない。また、SL-SCHは、送信電力、変調又はコーディングを変えることによって、動的リンクアダプテーションをサポートする。SL-SCHは、物理チャネルであるPSSCHにマッピングされる。
【0083】
次に、SLに用いられる論理チャネルについて説明する。
サイドリンク報知制御チャネルであるSBCCH(Sidelink Broadcast Control CHannel)は、一つのUE110から他のUE110にサイドリンクシステム情報を報知するためのサイドリンク用チャネルである。SBCCHは、トランスポートチャネルであるSL-BCHにマッピングされる。
【0084】
サイドリンクトラフィックチャネルであるSTCH(Sidelink Traffic CHannel)は、一つのUE110から他のUE110にユーザ情報を送信するための、1対多のサイドリンク用トラフィックチャネルである。STCHは、サイドリンク通信能力を有するUE110と、V2Xサイドリンク通信能力を有するUE110によってのみ用いられる。2つのサイドリンク通信能力を有するUE110間の1対1通信もまたSTCHで実現される。STCHは、トランスポートチャネルであるSL-SCHにマッピングされる。
【0085】
サイドリンク制御チャネルであるSCCH(Sidelink Control CHannel)は、一つのUE110から他のUE110に制御情報を送信するためのサイドリンク用制御チャネルである。SCCHは、トランスポートチャネルであるSL-SCHにマッピングされる。
【0086】
3GPPでは、NRにおいてもV2X通信をサポートすることが検討されている。NRにおけるV2X通信の検討が、LTEシステム及びLTE-Aシステムを基にして進められているが、以下の点でLTEシステム及びLTE-Aシステムからの変更および追加が行われている。
【0087】
LTEでは、SL通信は、ブロードキャストのみであった。NRでは、SL通信として、ブロードキャストに加え、ユニキャストとグループキャストのサポートが検討されている。
【0088】
ユニキャスト通信又はグループキャスト通信では、HARQのフィードバックであるAck(ACKnowledgement)若しくはNack(Negative ACKnowledgement)、又は、CSI(Channel State Information)報告等のサポートが検討されている。
【0089】
SL通信で、ブロードキャストに加え、ユニキャストとグループキャストをサポートするため、PC5-Sシグナリングのサポートが検討されている。例えば、SL、言い換えると、PC5通信を実施するためのリンクを確立するため、PC5-Sシグナリングが実施される。そのリンクは、V2Xレイヤで実施され、レイヤ2リンクとも称される。
【0090】
また、SL通信において、RRCシグナリングのサポートが検討されている。SL通信におけるRRCシグナリングを、PC5 RRCシグナリングとも称する。例えば、PC5通信を行うUE110間で、UE110のケーパビリティを通知すること、及び、PC5通信を用いてV2X通信を行うためのASレイヤの設定等を通知することが提案されている。
【0091】
U2Uリレーは、サイドリンクディスカバリメッセージによって近接するサイドリンク通信が可能なUE110のリスト情報を保持する。そのU2Uリレーは、UE110が送信するサイドリンクディスカバリメッセージに、通信可能なUE110の情報を付加してもよい。
【0092】
U2Nリレーは、接続する基地局130の識別子(例えば、セルID)を把握する。そのU2Nリレーは、UE110が送信するサイドリンクディスカバリメッセージに、セルID情報が付加されてもよい。また、U2Uリレーは、通信可能な範囲にU2Nリレーが存在し、そのU2NリレーがセルID情報を付加してサイドリンクディスカバリメッセージを送信している場合は、そのU2Uリレーは、通信可能なUE情報に、そのU2NリレーからのセルID情報を付加したサイドリンクディスカバリメッセージを送信してもよい。
【0093】
例えば、
図8に示されているU2Nリレー110#2(仮に、UE_Aと称する)は、通信可能な他のUE110又は基地局情報として{ CELL(‘gNB’) }というサイドリンクディスカバリメッセージを送信し、メッセージを受信したU2Uリレー110#3(仮にUE_Bと称する)は、通信可能なUE110の情報として { UE_A(CELL(‘gNB’))} というサイドリンクディスカバリメッセージを送信する。そのUE_Bのメッセージを受信したリモートUE110#1は、UE_BからUE_A経由のリレー2段によるマルチホップリレー方式で基地局130のgNB150に接続できることを認識可能である。
【0094】
リモートUE110#1が、RRC_IDLE状態、言い換えると、何れの基地局130とも接続していない場合、そのリモートUE110#1は、BCHを受信してシステム情報を取得した後、ランダムアクセスを実施して基地局130への直接接続を試みる。基地局130への直接通信が不可能な場合、予めリモートUE110#1に設定された、又は、以前に基地局130との接続を行った際に基地局130からの指示で設定されたサイドリンク通信のパラメータに従って、サイドリンク通信が許可されていればサイドリンクディスカバリメッセージを送信して周囲のリレーUE110を介して基地局130との接続を試みる。リモートUE110#1は、基地局130への複数のパス候補を発見した場合は、直接サイドリンク通信するリレーUE110との電波強度を考慮してパスを選択してもよく、又は、基地局130までのリレー段数が最も少ないパスを選択してもよい。
【0095】
なお、以下では、U2Nリレーを、第1の移動端末装置ともいい、U2Uリレーを、第2の移動端末装置ともいい、リモートUEを第3の移動端末装置ともいう。
また、複数のリレーを経由する通信経路をマルチホップリレー通信経路ともいい、一つのリレーを経由する通信経路をシングルホップリレー通信経路ともいう。
【0096】
図8は、基地局130#1と直接通信をしているリモートUE110#1が、U2Nリレー110#2と、U2Uリレー110#3とを介したマルチホップリレー通信にパススイッチする例を示す概略図である。
また、
図9は、
図8に示されている例におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【0097】
まず、リモートUE110#1のAP部120は、端末側通信部111を介して、基地局130とUuインタフェースにて直接接続をして通信可能な状態となっている(S10)。ここでは、基地局130の5GC通信部141が、局側通信部131を介して、リモートUE110#1と通信している。
【0098】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、周期的に、又は、リモートUE110#1との通信状態、例えば、受信電力の低下をトリガとして、リモートUE110#1に対してサイドリンクディスカバリを実施する指示を行う(S11)。
【0099】
次に、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、サイドリングディスカバリを実施して、近接するリレーUE110を探す(S12)。ここで、近接するU2Uリレー110#3の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、事前にサイドリンクディスカバリを実施し(S13)、U2Nリレー110#2を見つけていると仮定する。このような場合、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、リモートUE110#1からはU2Nリレー110#2は直接通信可能な範囲の外にいるが、U2Uリレー110#3からのサイドリンクディスカバリメッセージでU2Uリレー110#3を介し、U2Nリレー110#2と、更にU2Nリレー110#2が接続している基地局130と通信可能であることを検知する。
【0100】
そして、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、上記のサイドリンクディスカバリで得たパス情報を基地局130に報告する(S14)。これにより、基地局130の制御部145は、代替パスとして、上記の通信経路が存在することを把握する。
【0101】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、リモートUE110#1に対して、基地局130との通信品質、例えば、RSRPと、U2Uリレーからの電波受信状態、例えばSL-RSRPとを測定するよう指示し、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、その測定結果である通信品質レポートを基地局130に報告する(S15)。
【0102】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、通信品質レポートを受け取り、その通信品質レポートをチェックし、通信品質が悪化した場合に、上記の通信経路におけるリレー110#3、110#2を介したパスにパススイッチすることを決定する(S16)。なお、通信品質レポートで示される値が、予め定められた閾値を超えた場合、又は、下回る場合に、通信品質が悪化したと判断すればよい。
【0103】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、リモートUE110#1に対してRRC Reconfiguration messageを送信して、リレー110#3、110#2を介したパスにパススイッチするよう指示する(S17)。
【0104】
パススイッチ中のデータロスを回避するため、基地局130側では、制御部145がパススイッチの実施を決定した後にデータ送信を中断し、リモートUE110#1側では、そのRRC Reconfiguration messageを受信した後、制御部122がデータ送信を中断する(S18)。この際、送信中のデータ及び新たに上位レイヤから要求された送信データは、バッファされて、その送信は保留される。
【0105】
そして、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、U2Uリレー110#3に対して、サイドリンク通信の要求であるDirect Communication Requestを送信し、U2Uリレー110#3及びU2Nリレー110#2を通じて基地局130と通信したいことを通知、サイドリンク通信を確立する(S19)。
【0106】
この時、U2Uリレー110#3と、U2Nリレー110#2との間でサイドリンク通信が行われていない場合には、U2Uリレー110#3の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、U2Nリレー110#2に、Direct Communication Requestを送信し、サイドリンク通信を確立する(S20)。なお、新しいパスを確立する前に、古いパス(この例では、Uuインタフェース接続)がリリースされてもよい。
【0107】
以上により、リレー110#3、110#2を介した新しい通信経路が確立し、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、新しいパスを経由して基地局130にRRC Reconfiguration Completeメッセージを送信する(S21)。この時、リモートUE#1の制御部122は、基地局130とのUuインタフェースをまだ保持している場合、不要であれば、これをリリースしてもよい。RRC Reconfiguration Completeメッセージの送信後に、ステップS18で基地局130及びリモートUE110#1で中断されたデータ送信が新しい通信経路を用いて再開される。
【0108】
図8及び
図9によれば、第5世代移動通信システムの規格に対応した通信システム100において、U2Nリレー110#2は、基地局130と通信可能な範囲に存在する場合に、基地局130を識別するための基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第1のサイドリンクディスカバリメッセージを送信する。U2Uリレー110#3は、U2Nリレー110#2と通信可能な範囲に存在し、かつ、基地局130とは通信不可能な範囲に存在する場合に、第1のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、その第1のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、U2Nリレー110#2を識別するための移動端末装置識別情報及び基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第2のサイドリンクディスカバリメッセージを送信する。リモートUE110#1は、U2Uリレー110#3と通信可能な範囲に存在し、かつ、基地局130及びU2Nリレー110#2とは通信不可能な範囲に存在する場合には、第2のサイドリンクディスカバリメッセージを受信して、その第2のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、U2Uリレー110#3及びU2Nリレー110#2を経由して基地局130と通信を行う通信経路であるマルチホップリレー通信経路の確立を実行する。具体的には、リモートUE110#1は、基地局130と通信可能な範囲から、基地局130及びU2Nリレー110#2とは通信不可能な範囲に移動した場合に、マルチホップリレー通信経路への切り替えを実行する。
【0109】
特に、U2Uリレー110#3は、第5世代移動通信システムの規格に対応し、基地局130と通信可能な範囲に存在する別の移動端末装置であるU2Nリレー110#2が送信した、基地局130を識別するための基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第1のサイドリンクディスカバリメッセージを受信する通信部である端末側通信部111と、U2Nリレー110#2と通信可能な範囲に存在し、かつ、基地局130とは通信不可能な範囲に存在する場合に、第1のサイドリンクディスカバリメッセージに基づいて、U2Nリレー110#2を識別するための移動端末装置識別情報及び基地局識別情報を含むサイドリンクディスカバリメッセージである第2のサイドリンクディスカバリメッセージを端末側通信部111に送信させる制御部122とを備える。
【0110】
なお、何らかの原因で、U2Uリレー110#3及びU2Nリレー110#2を介した通信が確立できない場合がある。通常のUuインタフェースの基地局間ハンドオーバでは、RACH(Random Access CHannel)送信をするので、規定のRACH送信回数を超えたことでハンドオーバの失敗を検知できるが、以上のパススイッチでは、RACH送信は行わないので、復帰する為の手順が存在しない。
【0111】
このような課題を解決する方法として、例えばUE110は、パススイッチ用のタイマーを備える。
【0112】
そのようなタイマーは、RRC Reconfigurationメッセージを受信した場合に、時間設定及び計時をスタートする。新しい通信経路が確立されて、RRC Reconfiguration Completeメッセージを送信する際に、リモートUE110#1は、タイマーをストップする。設定された時間が経過した場合は、リモートUE110#1は、通信不可(例えば、パススイッチの失敗)と判断することができ、必要に応じてUuインタフェースによる再接続を試みる。また、リモートUE110#1は、元のUuインタフェースを通じて基地局130に対してHOF(HandOver Failure)を送信してもよい。リモートUE110#1は、パススイッチを試みた通信経路に何らかの問題が存在する可能性があることを報告することになり、基地局130側で以降のパススイッチではそのパスを避けパススイッチの成功率を高めることができる。
【0113】
以上のようなタイマーにより、リモートUE#1は、マルチホップリレー通信経路への切り替えを開始してから、予め定められた期間が経過しても、マルチホップリレー通信経路への切り替えが完了しない場合には、通信経路の切替に失敗した切替エラーを検知することができる。そして、リモートUE#1は、切替エラーを検知した場合には、基地局130に直接接続する通信経路である直接通信経路の確立を実行すればよい。
【0114】
変形例.
上記の実施の形態1の逆のケース、言い換えると、U2Nリレー及びU2Uリレーを介したマルチホップリレー通信からUuインタフェースによる直接通信へのパススイッチが考えられる。実施の形態1の変形例として、このようなパススイッチの手順について説明する。
なお、この変形例でも、通信システム100は、実施の形態1と同様に、UE110と、基地局130と、5GC部160とを備えているものとする。そして、UE110、基地局130及び5GC部160も、それぞれ、実施の形態1と同様に構成されているものとする。
【0115】
図10は、基地局130と、U2Nリレー110#2及びU2Uリレー110#3を介したマルチホップリレー通信をしているリモートUE110#1が、Uuインタフェースを用いた直接通信にパススイッチする例を示す概略図である。
また、
図11は、
図10に示されている例におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【0116】
まず、リモートUE110#1のAP部120は、端末側通信部111を介して、U2Nリレー110#2及びU2Uリレー110#3を経由して、基地局130と通信を行っている状態となっている(S30)。ここでは、基地局130の5GC通信部141が、局側通信部131を介して、リモートUE110#1と通信している。
【0117】
次に、基地局130の制御部145は、
図9のステップS15と同様に、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、リモートUE110#1に対して、基地局130との通信品質、例えば、RSRPと、U2Uリレー110#3からの電波受信状態、例えばSL-RSRPとを測定するよう指示し、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、その測定結果である通信品質レポートを基地局130に報告する(S31)。
【0118】
ここでは、リモートUE110#1が基地局130に近づき通信範囲内に入ったものとする。そして、リモートUE110#1の制御部122は、例えば、基地局130からの電波のRSRPが一定値以上となった場合に、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、在圏となったことを基地局130に報告する(S32)。
【0119】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、通信品質レポートを受け取り、その通信品質レポートをチェックし、Uuインタフェースを用いた直接通信にパススイッチすることを決定する(S33)。
【0120】
次に、基地局130の制御部145は、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、リモートUE110#1に対してRRC Reconfiguration messageを送信して、Uuインタフェースを用いた直接通信にパススイッチするよう指示する(S34)。
【0121】
パススイッチ中のデータロスを回避するため、基地局130側では、制御部145がパススイッチの実施を決定した後にデータ送信を中断し、リモートUE110#1側では、そのRRC Reconfiguration messageを受信した後、制御部122がデータ送信を中断する。この際、送信中のデータ及び新たに上位レイヤから要求された送信データは、バッファされて、その送信は保留される。
【0122】
次に、リモートUE110#1の制御部122は、基地局130との通常の通信開始と同様に、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、RACHを基地局に送信し、ランダムアクセス処理を実施してUuインタフェースを用いた直接通信を確立する(S35)。
【0123】
この時、サイドリンク通信がまだ保持されており、そのようなサイドリンク通信が不要となった場合は、リモートUE110#1と、U2Uリレー110#3との間のPC5接続、及び、U2Uリレー110#3と、U2Nリレー110#2との間のPC5接続がリリースされてもよい(S36、S37)。
【0124】
以上により、リモートUE110#1と、基地局130との間に、Uuインタフェースを用いた新しい通信経路が確立し、リモートUE110#1の制御部122は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、新しいパスを経由して基地局130にRRC Reconfiguration Completeメッセージを送信する(S38)。
【0125】
言い換えると、変形例では、リモートUE110#1は、基地局130と通信可能な範囲に移動した場合には、基地局130との通信品質を示す通信品質レポートを基地局130に送ることで、基地局130に直接接続する通信経路である直接通信経路への切り替えを実行する。
【0126】
何らかの原因で、リモートUE110#1と、基地局130との間に、Uuインタフェースを用いた通信を確立できない場合がある。通常の基地局130間のハンドオーバで使用されるT304タイマーを利用して、基地局130の制御部145がパススイッチの失敗を検知してもよい。また、基地局130間ハンドオーバ・フェイラー処理と分離する為に、実施の形態1で説明したパススイッチ監視用のタイマーをリモートUE110#1に設けて、そのタイマーが利用されてもよい。その場合、タイマーの停止条件をランダムアクセス処理の成功した時点としてもよい。
【0127】
実施の形態2.
実施の形態1において複数のリモートUEが存在した場合、同じ電波条件下のもとでは同一のU2Uリレー又はU2Nリレーに通信経路が集中してしまい、U2Uリレー又はU2Nリレーのハードウェア及び無線リソースを逼迫し伝送速度の低下等の性能低下を招く可能性がある。
実施の形態2では、そのような問題について解決する。
【0128】
図1に示されているように、実施の形態2に係る通信システム200は、UE210と、基地局230と、5GC部160とを備える。
実施の形態2に係る通信システム200の5GC部160は、実施の形態1に係る通信システム100の5GC部160と同様である。
【0129】
図2に示されているように、実施の形態2におけるUE210は、端末側通信部111と、AP部120と、プロトコル処理部121と、制御部222とを備える。
実施の形態2におけるUE210の端末側通信部111、AP部120及びプロトコル処理部121は、実施の形態1におけるUE110の端末側通信部111、AP部120及びプロトコル処理部121と同様である。
【0130】
実施の形態2における制御部222は、実施の形態1における制御部122と同様の処理を行う他、実施の形態2では、以下の処理を行う。
制御部222は、UE210がU2Uリレー又はU2Nリレーとして機能する場合に、サイドリンク通信にて接続し、リレー機能を提供しているリモートUE又は自身以外のリレーUEを常に把握し、その数をカウントする。
【0131】
そして、制御部222は、UE210がU2Uリレー又はU2Nリレーとして機能する場合に、上記のようにカウントした数を示す台数データ、上記のようにカウントした数を指標化した台数データ、又は、上記のようにした数に、リレーUEのL2処理リソースの余剰状態情報を併せて指標化した台数データを、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、サイドリンクディスカバリメッセージに付加して送信する。なお、以降においては、上記のような台数データをコンジェスチョン情報と称する。
【0132】
また、制御部222は、UE210がU2Uリレーとして機能する場合に、他のU2Uリレー又はU2Nリレーからサイドリンクディスカバリメッセージを受信すると、そのメッセージに含まれる到達可能なUEの情報と、リレーUEに紐づけられているコンジェスチョン情報とを読み取り、基地局230へ送信するサイドリンクディスカバリメッセージに追加する。
【0133】
さらに、制御部222は、UE210がリモートUEとして機能する場合に、
図9のステップS14において到達可能なリレーUE及び基地局230までのパス情報と、各リレーUEに紐づけられたコンジェスチョン情報とを受信し、
図9のステップS14において、パス情報を基地局230に報告する際に、通信経路上のリレーUEのコンジェスチョン情報を併せて報告する。
【0134】
図4に示されているように実施の形態2における基地局230は、局側通信部131と、通信処理部140と、プロトコル処理部144と、制御部245とを備える。
実施の形態2における基地局230の局側通信部131、通信処理部140及びプロトコル処理部144は、実施の形態1における基地局130の局側通信部131、通信処理部140及びプロトコル処理部144と同様である。
【0135】
実施の形態2における制御部245は、局側通信部131及びプロトコル処理部144を介して、UE210から送られてくるコンジェスチョン情報を取得することで、候補となる代替パスの通信経路上にあるリレーUE210の負荷状態を知ることができる。これにより、制御部245は、リレーUE210の負荷が高い場合、例えば、コンジェスチョン情報がある一定以上の数値を示す場合は、そのリレーUE210の通信経路を選択しない。これにより、実施の形態2では、リソース負荷の集中を回避して効率的な通信経路の確立が可能となる。
【0136】
また、基地局230の制御部245は、在圏又はリレーによって接続されているUE210に対して定期的にコンジェスチョン情報を報告するよう要求し、得られたコンジェスチョン情報を蓄積することによって、パススイッチのみならず新規リモートUE210が接続を要求した際にリソース負荷が少ない最適なパスを決定することが可能である。
【0137】
なお、リレーUE210として機能するUE210の制御部245は、基地局230とのPDUセッションを有する場合は、コンジェスチョン情報を直接基地局230に報告してもよい。
【0138】
また、リモートUE210として機能するUE210が、パススイッチではなく、基地局230とは接続していない状態で通常のサイドリンク通信を開始する為にサイドリンクディスカバリメッセージの送受信を実施した際にも、基地局230の制御部245は、コンジェスチョン情報を得ることができる。基地局230の制御部245は、得られたコンジェスチョン情報を基に接続先のUE210又はパスを決定してもよい。
【0139】
以上のように、実施の形態2では、U2Nリレー210#2は、第1のサイドリンクディスカバリメッセージに、U2Nリレー210#2に接続されているUE210の数を示すことのできるデータである第1のデータを含める。U2Uリレー210#3は、第2のサイドリンクディスカバリメッセージに、U2Uリレー210#3に接続されているUE210の数を示すことのできる第2のデータ及びU2Nリレー210#2からの第1のデータを含める。そして、リモートUE210#1は、第1のデータ及び第2のデータを基地局230に送る。これにより、基地局230は、リソース負荷の少ない通信経路を決定することができる。
【0140】
実施の形態3.
マルチホップリレー方式において通信経路上のリレーの段数が多いと通信遅延を増大させるため、リレーの段数は少ないほどよい。このため、より少ないリレー段数に動的にパススイッチすることが望ましい。しかし、リレーを含む多数の端末装置が移動している状態では頻繁にパススイッチが発生してしまい基地局での処理量の増大が問題となる。
実施の形態3は、以上のような問題を解決する。
【0141】
図1に示されているように、実施の形態3に係る通信システム300は、UE210と、基地局230と、5GC部160とを備える。
実施の形態3に係る通信システム300の5GC部160は、実施の形態1に係る通信システム100の5GC部160と同様である。
【0142】
図2に示されているように、実施の形態3におけるUE310は、端末側通信部111と、AP部120と、プロトコル処理部121と、制御部322とを備える。
実施の形態3におけるUE310の端末側通信部111、AP部120及びプロトコル処理部121は、実施の形態1におけるUE110の端末側通信部111、AP部120及びプロトコル処理部121と同様である。
【0143】
実施の形態3における制御部322は、実施の形態1の制御部122とほぼ同様の処理を行うが、後述する
図13で説明するような処理を行う。
【0144】
図4に示されているように実施の形態3における基地局330は、局側通信部131と、通信処理部140と、プロトコル処理部144と、制御部345とを備える。
実施の形態3における基地局330の局側通信部131、通信処理部140及びプロトコル処理部144は、実施の形態1における基地局130の局側通信部131、通信処理部140及びプロトコル処理部144と同様である。
【0145】
実施の形態3における制御部345は、実施の形態1の制御部145とほぼ同様の処理を行うが、後述する
図13で説明するような処理を行う。
【0146】
図12は、一つのU2Uリレー310#3及び一つのU2Nリレー310#2を介して基地局330と通信しているリモートUE310#1がU2Nリレー310#2に接近したため、リモートUE310#1と、U2Nリレー310#2とが直接通信できる状態となり、パススイッチを実施してリレー段数を削減する例を示す概略図である。
また、
図13は、
図12に示されている例におけるパススイッチ手順を示すシーケンス図である。
【0147】
まず、リモートUE310#1のAP部120は、端末側通信部111を介して、U2Nリレー310#2及びU2Uリレー310#3を経由して、基地局330と通信可能な状態となっている(S40)。ここでは、基地局330の5GC通信部141が、局側通信部131を介して、リモートUE310#1と通信している。
【0148】
基地局330の制御部345は、U2Nリレー310#2に周期的にサイドリンクディスカバリを実施するよう指示する(S41)。
【0149】
U2Nリレー310#2の制御部322は、サイドリンクディスカバリを実施して、リモートUE310#1が通信可能範囲内に入ったことを検知する(S42)。U2Nリレー310#2の制御部322は、前回サイドリンクディスカバリを実施した時の結果を保持することで、新たに通信可能範囲に入ったUE310を認識することができる。
【0150】
U2Nリレー310#2の制御部322は、例えば、無線ベアラ情報によって自身が中継する通信の終端となるリモートUE310#1を把握している。ステップS42において、新しく通信可能範囲に入ったUE310が通信を中継しているリモートUE310#1のリストにある場合は、U2Nリレー310#2の制御部322は、U2Uリレー310#3を介さない直接通信にパススイッチすること決定する(S43)。なお、制御部322は、パススイッチの決定にはリモートUE310#1との通信状態、例えば、SL-RSRPを考慮してもよい。
【0151】
次に、U2Nリレー310#2の制御部322は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、リモートUE310#1にDirect Communication Requestメッセージを送信して(S44)、サイドリンク通信を確立する(S45)。
【0152】
次に、U2Nリレー310#2の制御部322は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、基地局330に「パススイッチリクエスト」メッセージを送信して、U2Nリレー310#2と、リモートUE310#1との直接通信に切り替えることを要求する(S46)。
【0153】
次に、基地局330の制御部345は、パススイッチを了知し、必要に応じて、プロトコル処理部144及び局側通信部131を介して、元の通信経路でRRC Reconfiguration Messageを送信する(S47)。
【0154】
ここで、U2Nリレー310#2の制御部322及びU2Uリレー310#3の制御部322、並びに、U2Uリレー310#3の制御部322及びリモートUE310#1の制御部322は、不要になったPC5通信をリリースしてもよい(S48、S49)。
【0155】
そして、リモートUE310#1の制御部322は、プロトコル処理部121及び端末側通信部111を介して、基地局330にRRC Reconfiguration Complete Messageを送信してパススイッチを完了する(S50)。
【0156】
実施の形態3では、U2Nリレー310#2は、リモートUE310#1がU2Nリレー310#2と通信可能な範囲に移動した場合には、マルチホップリレー通信経路から、U2Uリレー310#3を経由せずにU2Nリレー310#2を経由する通信経路であるシングルホップリレー通信経路への切り替えを実行する。
【0157】
以上の手順により、U2Nリレー310#2が自律的にパススイッチを行うことを判断することで、基地局330の処理負荷を増大させずに、より効率的な通信経路選択を行うことが可能となる。
【0158】
なお、実施の形態3は、実施の形態1に基づいて説明したが、実施の形態3において、実施の形態2で行われている動作が行われてもよい。
【符号の説明】
【0159】
100,200,300 通信システム、 110,210,310 UE、 111 端末側通信部、 112 送信データバッファ部、 113 エンコーダ部、 114 変調部、 115 周波数変換部、 116 アンテナ、 117 復調部、 118 デコーダ部、 120 AP部、 121 プロトコル処理部、 122,222,322 制御部、 130,230,330 基地局、 131 局側通信部、 132 送信データバッファ部、 133 エンコーダ部、 134 変調部、 135 周波数変換部、 136 アンテナ、 137 復調部、 138 デコーダ部、 140 通信処理部、 144 プロトコル処理部、 145,245,345 制御部、 160 5GC部。