(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】監視システム、赤道上空衛星群、極軌道衛星群及び傾斜軌道衛星群
(51)【国際特許分類】
B64G 1/10 20060101AFI20241122BHJP
B64G 1/24 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B64G1/10 300
B64G1/10 600
B64G1/24 200
(21)【出願番号】P 2024016988
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2023087918の分割
【原出願日】2020-09-28
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0372548(US,A1)
【文献】特開平02-128996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0038490(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0240497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284482(US,A1)
【文献】国際公開第2020/158000(WO,A1)
【文献】米国特許第05678175(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/10
B64G 1/24
B64G 1/66
B64G 3/00
F41G 7/20
F41H 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球表面を指向する第一の監視装置と、地球周縁を指向する第二の監視装置とを有する複数の監視衛星を備え、
6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角80度以上の軌道を飛翔する極軌道衛星群と、
12機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度以上80度以下の軌道を飛翔する傾斜軌道衛星群と、
6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度未満で赤道上空の軌道を飛翔する赤道上空衛星群と、
により
、静止軌道よりも近距離の低軌道(LEO)衛星コンステレーションを形成
し、
前記極軌道衛星群と、前記傾斜軌道衛星群と、前記赤道上空衛星群とが、
連携して極力少ない監視衛星数で全球常時監視を実現することにより、発射後に間欠的にブーストして飛翔方向を変更する飛翔体に対して、発射探知とブースト後の飛行経路追跡を行う監視システム。
【請求項2】
前記第一の監視装置は、
直下視監視装置であるとともに赤道近傍域を網羅的に監視し、
前記第二の監視装置は、
地球周縁監視装置であるとともに中緯度帯を網羅的に監視する請求項
1の監視システムに記載の赤道上空衛星群。
【請求項3】
前記第一の監視装置は、
直下視監視装置であるとともに極域近傍を網羅的に監視し、
前記第二の監視装置は、
地球周縁監視装置であるとともに中緯度帯から高緯度帯にかけて監視する請求項1の監視システムに記載の極軌道衛星群。
【請求項4】
前記第一の監視装置は、
直下視監視装置であるとともに中緯度帯を常時監視し、
前記第二の監視装置は、
地球周縁監視装置であるとともに赤道上空と、極域と、高緯度帯上空とを監視をする請求項1の監視システムに記載の傾斜軌道衛星群。
【請求項5】
前記極軌道衛星群と、前記傾斜軌道衛星群と、前記赤道上空衛星群とは、
相互補完することにより、前記第一の監視装置による全球網羅性を確保する請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
前記極軌道衛星群と、前記傾斜軌道衛星群と、前記赤道上空衛星群とは、
前記第二の監視装置による視野範囲を合わせることにより全球網羅性を確保する請求項1に記載の監視システム。
【請求項7】
前記赤道上空衛星群が飛翔する前記軌道は、楕円軌道であり、
前記赤道上空衛星群の前記監視衛星の前記第二の監視装置の監視範囲は、前記楕円軌道の遠地点付近で高緯度側に拡大し、近地点付近で低緯度側に拡大する請求項1に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地球を監視する監視システム、衛星情報を伝送する衛星情報伝送システム、飛翔体に対応する飛翔体対応システム及びデータ中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では衛星コンステレーションを用いた監視システムがある(例えば特許文献1)。傾斜軌道コンステレーションでは、少ない衛星数で中緯度帯を常時監視できるシステムを構築できるというメリットがある。地球周縁を指向して、飛翔体が発射された後の温度を検知して追跡する監視衛星では、地球周縁を地心方向に対して全周に渡りリング状に監視する監視装置があれば、少ない衛星数で全球監視することも可能となる。
【0003】
HGV(Hypersonic Guided Vehicle)と呼ばれる新しい飛翔体では、発射における噴射終了後の追跡のために、温度上昇した機体を赤外線で検知することが有効な手段となる。この場合、背景信号が雑音とならないためには、宇宙を背景とする地球周縁監視が有効である。原理的には魚眼カメラにより全周をリング状に監視できるが、魚眼カメラでは、空間分解能及び監視性能などの制約があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/175696号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、少ない衛星数で全球常時監視が可能であり、空間分解能及び監視性能の高い監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る監視システムは、
地球表面を指向する第一の監視装置と、地球周縁を指向する第二の監視装置とを有する複数の監視衛星を備え、
6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角80度以上の軌道を飛翔する極軌道衛星群と、
12機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度以上80度以下の軌道を飛翔する傾斜軌道衛星群と、
6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度未満で赤道上空の軌道を飛翔する赤道上空衛星群と、
により衛星コンステレーションを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、少ない衛星数で全球常時監視が可能であり、空間分解能及び監視性能の高い監視システムの提供を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の図で、監視システム501の備える監視衛星101の3面図。
【
図2】実施の形態1の図で、監視衛星101をYZ平面でみた図。
【
図3】実施の形態1の図で、監視衛星101が、赤道上空を北方へ飛翔する際の監視視野を示す図。
【
図4】実施の形態1の図で、監視衛星101が、赤道上空を南方へ飛翔する際の監視視野を示す図。
【
図5】実施の形態1の図で、監視衛星101が赤道上空、及び軌道面の最北端に位置する状態を示す図。
【
図6】実施の形態1の図で、二つの傾斜軌道のそれぞれを複数の監視衛星101が飛翔する状態を示す図。
【
図7】実施の形態1の図で、地球周縁を指向する監視視野の軌道高度と緯度の関係を示す図。
【
図8】実施の形態1の図で、監視システム502の備える監視衛星102の4面図。
【
図9】実施の形態1の図で、監視システム503の備える監視衛星103の4面図。
【
図10】実施の形態1の図で、通信装置41Cを備える監視衛星101を示す図。
【
図11】実施の形態1の図で、通信装置41Cを備える監視衛星102を示す図。
【
図12】実施の形態1の図で、通信装置41Cを備える監視衛星103を示す図。
【
図13】実施の形態1の図で、衛星情報伝送システム600の備える通信衛星201の4面図。
【
図14】実施の形態1の図で、衛星情報伝送システム600の備える通信衛星202の4面図。
【
図15】実施の形態1の図で、衛星情報伝送システム600が監視システム501の衛星情報を伝送することを示す図。
【
図16】実施の形態1の図で、衛星情報伝送システム600が監視システム502の衛星情報を伝送することを示す図。
【
図17】実施の形態1の図で、衛星情報伝送システム600が監視システム503の衛星情報を伝送することを示す図。
【
図18】実施の形態2の図で、飛翔体対応システム700を示す図。
【
図19】実施の形態2の図で、電波通信72の様子を示す図。
【
図20】実施の形態2の図で、光通信71、電波通信72及び通信回線330を用いた伝送を示す図。
【
図21】実施の形態2の図で、データ中継衛星211、212が備える光通信装置220CのAzimuth及びElevationの通信視野の変更範囲を示す図。
【
図22】実施の形態2の図で、第一のデータ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212との、光通信装置220Cの通信視野の変更可能の効果を示す図。
【
図23】実施の形態2の図で、第一のデータ中継衛星211から第二のデータ中継衛星212への、光通信装置220Cの通信視野の変更を示す図。
【
図24】実施の形態2の図で、Azimuthに360度、及び、0度から70度のElevationの通信視野方向の変更ができることを示す図。
【
図25】実施の形態2の図で、Azimuthに360度、及び、0度から60度のElevationの通信視野方向の変更ができることを示す図。
【
図26】実施の形態2の図で、第一のデータ中継衛星211、第二のデータ中継衛星212の備える通信装置230Cに関する図。
【
図27】実施の形態2の図で、+Z軸に対して+X軸のまわりに±20度、及び+Z軸に対して+Y軸のまわりに±20度の通信視野の変更可能を示す図。
【
図28】実施の形態2の図で、+Z軸に対して+X軸のまわりに±30度、及び+Z軸に対して+Y軸のまわりに±30度の通信視野の変更可能を示す図。
【
図29】実施の形態2の図で、6機のデータ中継衛星を配備した場合、極域が六角形で示される通信不能領域となることを示す図。
【
図30】実施の形態2の図で、太陽同期条件を維持する軌道高度と軌道傾斜とを示す図。
【
図31】実施の形態3の図で、第二の監視装置による監視を概念的に示す図。
【
図32】実施の形態3の図で、第一の監視装置の網羅性を示す図。
【
図33】実施の形態3の図で、第一の監視装置の網羅性を示す別の図。
【
図34】実施の形態3の図で、極軌道衛星の監視範囲の模式図。
【
図35】実施の形態3の図で、極軌道衛星の監視範囲の模式図。
【
図36】実施の形態3の図で、第一の監視装置の網羅性を示す図。
【
図37】実施の形態3の図で、第二の監視装置の網羅性を説明する図。
【
図38】実施の形態3の図で、第二の監視装置の網羅性を説明する別の図。
【
図39】実施の形態3の図で、極軌道衛星を示す図。
【
図40】実施の形態3の図で、極軌道衛星を示す別の図。
【
図41】実施の形態3の図で、傾斜軌道衛星における第二の監視装置の視野を示す図。
【
図42】実施の形態3の図で、傾斜軌道衛星における第二の監視装置の視野を示す別の図。
【
図43】実施の形態3の図で、第二の監視装置による全球網羅性を示す図。
【
図44】実施の形態3の図で、軌道緯度と地球接線との関係を示す図。
【
図45】実施の形態3の図で、軌道緯度と地球接線との関係を示す別の図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
【0011】
以下の実施の形態では、衛星の進行方向及び地心方向を以下のように定める。
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向を衛星の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を衛星の地心方向+Zとする。
【0012】
以下の実施の形態でセンサというときは赤外線センサを意味する。
【0013】
<監視システム501:傾斜軌道>
図1から
図7を参照して監視システム501を説明する。
監視システム501では、監視衛星101は傾斜軌道を飛翔する。
図1は、監視システム501の備える監視衛星101の3面図である。
図2は、監視衛星101をYZ平面でみた図である。
図3は、監視衛星101が、赤道上空を北方へ飛翔する際の監視視野を示す。
図4は、監視衛星101が、赤道上空を南方へ飛翔する際の監視視野を示す。
図5は、監視衛星101が赤道上空、及び軌道面の最北端に位置する状態を示す。
図6は、二つの傾斜軌道のそれぞれを複数の監視衛星101が飛翔する状態を示す。
図7は、地球周縁を指向する監視視野の軌道高度と緯度の関係を示す。
【0014】
図6に示すように、監視システム501は、複数の監視衛星101と、地上設備300と、を備えている。以下に述べる地上設備300は、監視衛星の取得した監視情報を監視衛星から中継衛星を介して受信する。
図1に示すように、監視衛星101は、地球表面を指向する第一の監視装置110と、地球周縁を指向する第二の監視装置120とを有する。監視システム501では、12機以上の監視衛星101が、軌道傾斜角10度以上80度以下の傾斜軌道を飛翔する傾斜軌道衛星群により、衛星コンステレーションを形成する。
図1に示すように、
監視システム501では、第二の監視装置120が、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向を監視衛星101の衛星進行方向+X、右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を監視衛星101の地心方向+Zとした場合に、
+X軸に対して+Z軸のまわりに、
+45度を指向する+X+Yセンサ11Sと、
-45度を指向する+X-Yセンサ12Sと、
+135度を指向する-X+Yセンサ13Sと、
-135度を指向する-X-Yセンサ14Sと、
を有する。
第二の監視装置120は、
北東向きに飛翔する際に、
+X-Yセンサ12Sで北半球高緯度上空を監視し、
-X+Yセンサ13Sで南半球高緯度上空を監視し、
南東向きに飛翔する際に、
-X-Yセンサ14Sで北半球高緯度上空を監視し、
+X+Yセンサ11Sで南半球高緯度上空を監視する。
【0015】
以下に具体的に説明する。
傾斜軌道コンステレーションは、少ない衛星数で中緯度帯を常時監視できるシステムを構築できるメリットがある。地球周縁を指向して、飛翔体が発射された後の温度を検知して追跡する監視衛星では、地球周縁を地心方向に対して全周に渡りリング状に監視する監視装置があれば、少ない衛星で全球監視することも可能となる。
HGV(Hypersonic Guided Vehicle)と呼ばれる新しい飛翔体では、発射における噴射終了後の追跡のために、温度上昇した機体を赤外線で検知することが有効な手段となる。HGVの監視において背景信号が雑音とならないためには、宇宙を背景とする地球周縁監視が有効であり、第二の監視装置120が合理的な監視手段である。原理的には魚眼カメラにより地球の全周をリング状に監視できる。但し魚眼カメラでは空間分解能や監視性能などの制約があるという課題がある。
そこで、複数の広視野を使って地心方向に対して全周に渡り監視視野を確保すると、空間分解能や監視性能の実現性が高くなる。
但し、一方傾斜軌道では赤道上空飛翔時と軌道面最北端ないし最南端で監視装置の視野方向が大きく変動するという特徴がある。また衛星発生電力の効率的活用の観点では、衛星コンステレーションを形成する衛星群の視野範囲の重複領域を適切に管理することが合理的である。
【0016】
そこで実施の形態1の監視システム501では、地球周縁を監視する第二の監視装置120が、
衛星進行方向+Xに対して地心方向の+Z軸のまわりに
+45度を指向する+X+Yセンサ11Sと、
-45度を指向する+X-Yセンサ12Sと、
+135度を指向する-X+Yセンサ13Sと、
-135度を指向する-X-Yセンサ14Sと、
の合計4式を備える。
第二の監視装置120は、
北東向きに飛翔する際に
+X-Yセンサ12Sで北半球高緯度上空を監視し、
-X+Yセンサ13Sで南半球高緯度上空を監視し、
南東向きに飛翔する際に
-X-Yセンサ14Sで北半球高緯度上空を監視し、
+X+Yセンサ11Sで南半球高緯度上空を監視する。
【0017】
図1において、破線で、
+X+Yセンサ11Sの監視視野11、+X-Yセンサ12Sの監視視野12、
-X+Yセンサ13Sの監視視野13、-X-Yセンサ14Sの監視視野14を示している。
【0018】
第一の監視装置110は、地心方向+Zの直下監視視野15を有する直下監視センサ15Sを有する。破線で、直下監視センサ15Sの監視視野15を示している。
【0019】
高緯度域の上空または、赤道上空を宇宙背景で監視するためには、極軌道衛星群や赤道上空衛星群では監視範囲の制約があるため、傾斜軌道衛星群による衛星コンステレーションが有利である。また、同一軌道面を隊列飛行する衛星では、前方視野と後方視野とは視野範囲の重複も多くなる。
そこで監視システム501では、
図1のXY座標に示すように、4式の第二の監視装置120の監視視野を、衛星進行方向+Xから約45度傾斜する。これにより極域のような高緯度上空監視と、赤道上空監視とを合理的に実現し、かつ重複の多い緯度帯において、衛星リソースを節約できる。
なお傾斜軌道では、赤道上空を北東向きに飛翔した衛星は、軌道面の最北端で東向き飛翔した後に南東向きに飛翔方向が変わる。同様に赤道上空を南東向きに飛翔した衛星は、軌道面の最南端で東向き飛翔した後に北東向きに飛翔方向が変わる。このため4式の第二の監視装置120の視野方向が東西南北の方向に対して大きく変動する。
図3に示すように、監視衛星101が赤道上空を北東方向に通過する際は、-45度を指向する+X-Yセンサ12Sが北半球中緯度から高緯度の上空を監視し、
図4に示すように、監視衛星101が赤道上空を南東方向に通過する際は、-135度を指向する-X-Yセンサ14Sが北半球中緯度から高緯度の上空を監視する。同様に
図3に示すように、監視衛星101が赤道上空を北東方向に通過する際は+135度を指向する-X+Yセンサ13Sが南半球中緯度から高緯度の上空を監視し、
図4に示すように、監視衛星101が赤道上空を南東方向に通過する際は、+45度を指向する+X+Yセンサ11Sが南半球中緯度から高緯度の上空を監視する。
【0020】
北半球のみが監視目的である場合は、-45度を指向する+X-Yセンサ12Sと-135度を指向する-X-Yセンサ14Sだけを搭載してもよいことは、
図3及び
図4から言うまでもない。また飛翔体を複数の監視衛星から同時に監視することにより、空間三角測量の原理により軌道位置の計測が可能となり、同時に監視する監視衛星数が多いほど、計測精度が向上するという効果がある。このため、4式の第二の監視装置120を各監視衛星101で同時に動作させることにより、広域の監視領域において計測精度の高い監視が可能となるという効果がある。また監視領域が限定される場合には、監視効果の高いセンサのみを動作させることにより、電力等の衛星リソースを省電力化できる効果がある。
【0021】
<周縁監視>
図7を参照して説明する。軌道高度1000kmから地球周縁監視をする場合、南北軸北方向に対してElevation方向に30度視線ベクトルが傾斜すると、北緯30度近傍を接線方向に指向することになる。軌道高度2000kmから地球周縁監視をする場合、南北軸北方向に対してElevation方向に40度視線ベクトルが傾斜すると、北緯40度近傍を接線方向に指向することになる。従って、第二の監視装置120の視線ベクトルは、XY平面に対してElevation20度から40度の視野範囲を持てば、軌道高度1000kmから2000kmの監視衛星から地球周縁監視ができる。
図1のXZ平面の図に示す20deg,40degは、この視野範囲を示す。
【0022】
<監視システム502:赤道上空軌道>
図8は監視システム502の備える監視衛星102の4面図である。
図8を参照して監視システム502を説明する。
【0023】
監視システム502は、地球表面を指向する第一の監視装置110と、地球周縁を指向する第二の監視装置120とを有する複数の監視衛星102と、地上設備300と、を備える。6機以上の監視衛星102が、軌道傾斜角10度以下の赤道上空軌道を飛翔する赤道軌道衛星群により、衛星コンステレーションを形成する。監視システム502は
図6と同様に、地上設備300を備える。
図8に示すように、監視システム502では、
第二の監視装置120が、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向を監視衛星102の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を監視衛星102の地心方向+Zとした場合に、
+X軸に対して+Z軸のまわりに、
+90度を指向する+Yセンサ21Sと、
-90度を指向する-Yセンサ22Sと、
を有する。
第二の監視装置は、
+Yセンサ21Sで南半球中緯度上空を監視し、
-Yセンサ22Sで北半球中緯度上空を監視する。
【0024】
図8において、破線で、+Yセンサ21Sの監視視野21、-Yセンサ22Sの監視視野22を示している。
【0025】
第一の監視装置110は地心方向+Zの直下監視視野23を有する直下監視センサ23Sを有する。破線で、直下監視センサ23Sの監視視野23を示している。
【0026】
なお南北半球のみ、または北半球のみを監視目的とする場合は、+90度を指向する+Yセンサ21Sと、-90度を指向する-Yセンサ22Sとのどちらか1方のみ搭載してもよいことは言うまでもない。
【0027】
<監視システム503:極軌道>
図9は、監視システム503の備える監視衛星103の4面図である。
図9を参照して監視システム503を説明する。
【0028】
監視システム503は、地球表面を指向する第一の監視装置110及び地球周縁を指向する第二の監視装置120とを有する複数の監視衛星103と、地上設備300と、
を備える。6機以上の監視衛星103が、軌道傾斜角80度以上の極軌道を飛翔する極軌道衛星群により、衛星コンステレーションを形成する。監視システム503は、
図6と同様に地上設備300を備える。監視衛星103が、太陽同期軌道のドーンダスク軌道を飛翔する。
第二の監視装置120が、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向を監視衛星103の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を監視衛星の地心方向+Zとした場合に、+X軸の方向を指向する+Xセンサ31Sと、
+X軸に対して+Z軸のまわりに、
+90度を指向する+Yセンサ32Sと、
-90度を指向する-Yセンサ33Sと、
を有する。
第二の監視装置120は、
+Xセンサ31Sで+X軸方向を監視し、
+Yセンサ32Sで東側地球上空を監視し、
-Yセンサ33Sで西側地球上空を監視する。
【0029】
図9において、破線で、+Xセンサ31Sの監視視野31、+Yセンサ32Sの監視視野32、-Yセンサ33Sの監視視野33を示している。
【0030】
第一の監視装置110は地心方向+Zの直下監視視野34を有する直下監視センサ34Sを有する。破線で、直下監視センサ34Sの監視視野34を示している。なお
図9に示す監視衛星103は通信装置41Cを備えている。通信装置41Cは後述する。
【0031】
極軌道では監視衛星103は毎周回極域を通過するので、監視システム503では軌道面一面でも高緯度領域の監視網羅性を確保することができる。太陽電池により発電する監視衛星は、ドーンダスクと呼ばれる極軌道を飛翔することにより、監視システム503では、固定型太陽電池パドルが常時太陽指向して飛翔することが可能となる。
【0032】
<通信装置41C>
監視衛星101、監視衛星102及び監視衛星103は、通信装置41Cを備えている。
図10は、通信装置41Cを備える監視衛星101を示す。
図11は、通信装置41Cを備える監視衛星102を示す。
図12は、通信装置41Cを備える監視衛星103を示す。
図10から
図12には通信装置41Cの通信視野41を示している。以下では、監視衛星101、102、103を区別しない場合は、監視衛星100と表記する。
【0033】
図10から
図12に示すように、監視衛星100は、通信装置41Cを有する。
通信装置41Cは、+Z軸に対して+X軸のまわりに±60度以上、
かつ、
+Z軸に対して+Y軸のまわりに±60度以上の通信視野41を持つ。
通信装置41Cは、監視衛星100が取得した監視情報を、地上設備300へ直接伝送し、または、衛星情報を中継する通信衛星を経由して地上設備300に伝送する。
通信衛星は後述する。
【0034】
監視システム501、監視システム502あるいは監視システム503の備える複数の監視衛星100によって形成される衛星コンステレーションは、軌道高度1000km以上に形成される。
衛星コンステレーションを形成する監視衛星100は、軌道高度800Km以下に形成される伝送システムであって、監視衛星100と地上設備300との間の衛星情報を中継して伝送する伝送システムである衛星情報伝送システムを経由して、取得した監視情報を地上設備300に伝送する。衛星情報伝送システムは後述する。
衛星コンステレーションは低高度ほど伝送遅延が少ないというメリットがある。
軌道高度300kmら700kmに衛星情報伝送システムを形成する構想が知られている。監視衛星の地球指向面側に通信視野を持つ監視システムの軌道高度が1000km程度であっても、軌道高度800km以下の衛星情報伝送システムを経由して監視情報を伝送できる。
【0035】
または、以下のようでもよい。
監視システム501、監視システム502あるいは監視システム503の備える複数の監視衛星100によって形成される衛星コンステレーションは、軌道高度1200km以上に形成される。
衛星コンステレーションを形成する監視衛星100は、軌道高度1000km以下に形成される伝送システムであって、監視衛星100と地上設備300との間の衛星情報を中継して伝送する伝送システムである衛星情報伝送システムを経由して、取得した監視情報を地上設備300に伝送する。
衛星コンステレーションは高高度ほど少ない衛星機数で広い視野範囲を確保できるというメリットがある。一方、軌道高度1000km付近に衛星情報伝送システムを形成する構想が知られており、監視衛星の地球指向面側に通信視野を持つ監視システムの軌道高度が1200km以上であれば、軌道高度1000km付近の衛星情報伝送システムを経由して監視情報を伝送できる。
【0036】
<衛星情報伝送システム600>
図13から
図17を参照して、衛星情報伝送システム600を説明する。
図13は、衛星情報伝送システム600の備える通信衛星201の4面図である。
通信衛星201は反地球方向の監視衛星と通信する通信装置55Cを備えている。
図13の2つのXY座標の図では、裏側にあって実際には見えない通信装置を白丸で示しており、実際に存在する通信装置を黒丸で示している。
図13では地球側の面には二つの通信装置が配置され、反地球側の面には三つの通信装置が配置されている。
図14は、衛星情報伝送システム600の備える通信衛星202の4面図である。
図14における黒丸、白丸の意味も
図13と同じである。
図14は、地上設備300と通信する通信装置56Cが、地球側に面する面に配置されている。
図15は、衛星情報伝送システム600が監視システム501の衛星情報を伝送することを示している。
図16は、衛星情報伝送システム600が監視システム502の衛星情報を伝送することを示している。
図17は、衛星情報伝送システム600が監視システム503の衛星情報を伝送することを示している。
【0037】
図13を参照して通信衛星201を説明する。衛星情報伝送システム600では、衛星間で通信する衛星間通信装置と、地上設備300と通信する地上間通信装置とを有する通信衛星が、同一の軌道面に8機以上配置されて飛翔する。より具体的には、衛星間通信装置と、地上間通信装置とを有する通信衛星が、同一の軌道面に8機以上の略均等配置で飛翔する。そして、8面以上の軌道面が、経度方向に配置されることで、複数の通信衛星が衛星コンステレーションを形成する。より具体的には8面以上の軌道面が、経度方向に略均配置される。経度方向に略均配置とは、北極と南極とを結ぶ仮想のNS軸に相当する回転軸として、一つの軌道面を回転して得られる複数の軌道面が8面以上あり、これらの軌道面が略等間隔で配置されることを意味する。8面以上の軌道面は傾斜軌道である。
通信衛星201である1機以上の通信衛星が、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向を通信衛星201の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を通信衛星201の地心方向+Zとした場合に、
赤道上空を北方に通過する際に、
同一軌道面で飛翔方向前方の衛星と光通信する第一の光通信装置51Cと、
同一軌道面で飛翔方向後方の衛星と光通信する第二の光通信装置52Cと、
右手直交座標でプラス方向を向く+Y軸に対して、東側(+Y方向)の隣接軌道の北東(+X+Y)を飛翔する衛星と光通信する第三の光通信装置53Cと、
西側(-Y)の隣接軌道の南西(-X-Y)を飛翔する衛星と光通信する第四の光通信装置54Cと、
+Z軸の向きの反対方向(-Z)に指向して監視衛星100と通信する監視間通信装置である通信装置55Cと、
を有する。
第三の光通信装置53CのAzimuth通信視野は、+X軸の方向に対して±90度以上である。
第四の光通信装置54CのAzimuth通信視野は、+X軸の反対方向に対して±90度以上である。通信装置55Cの監視衛星100との通信視野が、+Z軸の反対方向に対して+X軸のまわりに±60度以上、+Y軸のまわりに±60度以上である。
図13には、各通信装置の通信視野を記載している。通信視野の符号は通信装置の符号からアルファベットのCを除いた数字である。
【0038】
<通信衛星202>
また、衛星情報伝送システム600は、
図14に示す通信衛星202を備える。
通信衛星202は、通信衛星201に対して、通信装置56Cが地球側の面に配置されている点が異なる。
図14の通信装置56Cは、+X軸の方向に指向して、地上設備300と通信する。
図14には、各通信装置の通信視野を記載している。通信視野の符号は通信装置の符号からアルファベットのCを除いた数字である。通信装置56Cは、地上設備300との通信視野56が、+Z軸に対して+X軸のまわりに±60度以上、+Z軸に対して+Y軸のまわりに±60度以上である。
【0039】
上記の説明では通信衛星201が通信装置55Cを備え、通信衛星202が通信装置56Cを備える説明をしたが、通信衛星201、通信衛星202ともに、通信装置55C及び通信装置56Cを備えても構わない。
【0040】
<監視システム501における監視情報の伝送>
図15を説明する。衛星情報伝送システム600には通信衛星201、通信衛星202,通信衛星203を示している。通信衛星203は通信衛星201に対して通信装置55Cを持たない。監視衛星101の取得した監視情報が、通信衛星201、通信衛星203、通信衛星202、地球400の地上設備300の順に伝送される状況を示している。
【0041】
<監視システム502における監視情報の伝送>
図16を説明する。衛星情報伝送システム600には通信衛星201、通信衛星202,通信衛星203を示している。監視衛星102の取得した監視情報が、通信衛星201、通信衛星203、通信衛星202、地上設備300の順に伝送される状況を示している。
【0042】
<監視システム503における監視情報の伝送>
図17を説明する。衛星情報伝送システム600には通信衛星201、通信衛星202,通信衛星203を示している。北極上空の監視衛星103の取得した監視情報は、北極位置の通信衛星201、地上設備300へと伝送される。北極上空の監視衛星103の右側に位置する監視衛星103の取得した監視情報は、通信衛星201、通信衛星202、地上設備300へと伝送される。
【0043】
***実施の形態1の効果***
実施の形態1の監視システムによれば、少ない衛星数で全球常時監視が可能であり、空間分解能及び監視性能の高い監視システムの提供を提供できる。
また、実施の形態1の衛星情報伝送システムによれば、監視衛星100の取得した監視情報を、効率的に地上設備300まで伝送できる。
【0044】
実施の形態2.
図18から
図40を参照して実施の形態2を説明する。実施の形態2は、飛翔体対応システム700に関する。飛翔体対応システム700は、実施の形態1の監視システムと、衛星情報伝送システムとを融合した形態である。
図18は、飛翔体対応システム700を示す。
【0045】
図18に示すように、飛翔体対応システム700は、軌道高度2000km以上の赤道上空を飛翔する第一のデータ中継衛星211と、軌道高度2000km以上の極軌道を飛翔する第二のデータ中継衛星212と、軌道高度2000km以下を飛翔する複数の監視衛星100と、大気圏の空域ないし陸上ないし海上を移動する対処装置310と、地上に固定された対処装置320と、を備える。
複数の監視衛星100である監視衛星群が、地上から発射されて飛翔する飛翔体333の監視情報を取得し、データ中継衛星211,212を経由して対処装置310,320に監視情報を伝送する。対処装置310,320は、伝送された監視情報を用いて、飛翔体333に対する対処行動を実施する。
【0046】
飛翔体対応システム700は、3機以上の第一のデータ中継衛星211と、3機以上の第二のデータ中継衛星212とを備える。第一のデータ中継衛星211及び第二のデータ中継衛星212は通信衛星である。
【0047】
飛翔体対応システム700では、光通信71と電波通信72とが行われる。
図18に示す光通信71と電波通信72は一例である。光通信71と電波通信72との組み合わせは、例えば以下の(1)から(4)のようなバリエーションである。
(1)第一のデータ中継衛星211同士の組と、第二のデータ中継衛星212同士の組と、第一のデータ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212との組のうちの少なくともいずれかの組が、光通信71する。
【0048】
(2)データ中継衛星211,212と監視衛星100とが、電波通信72し、データ中継衛星211、212と対処装置310,320とが電波通信72する。
図19は、電波通信72の様子を示す。図の左側から、データ中継衛星212と監視衛星100とが電波通信72し、データ中継衛星212と別の監視衛星100とが電波通信72し、データ中継衛星211と監視衛星100とが電波通信72し、第一のデータ中継衛星211と対処装置310とが電波通信72している。
【0049】
(3)データ中継衛星211,212と監視衛星100とが、電波通信し、データ中継衛星211,212と対処装置310,320とが、光通信し、対処装置同士310,320が監視情報を通信回線330経由で伝送する。通信回線330は
図20で後述する。
図20は、光通信71、電波通信72及び通信回線330を用いた伝送を示す。図の左側から、データ中継衛星212と監視衛星100とが電波通信72し、データ中継衛星212と別の監視衛星100とが電波通信72し、データ中継衛星211と監視衛星100とが電波通信72している。第一のデータ中継衛星211は、対処装置320及び第二のデータ中継衛星212と光通信71している。
図20は複数の対処装置320が通信回線330で接続されている。対処装置320どうしは通信回線330でデータをやり取り可能である。
【0050】
(4)データ中継衛星211,212と監視衛星100とが、光通信し、データ中継衛星211,212と対処装置310,320とが、光通信し、対処装置同士310,320が、監視情報を通信回線330経由で伝送する。
【0051】
<Azimuth及びElevationの変更>
図21は、データ中継衛星211、212が備える光通信装置220CのAzimuth及びElevationの通信視野の変更範囲を示す。第一のデータ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212との少なくとも一方が、
光通信装置220Cを備える。
図21に示すように、
光通信装置220Cは、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向をデータ中継衛星の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向をデータ中継衛星の地心方向+Zとした場合に、+Z軸の方向に対してAzimuth(XY平面)に360度、及び、+X軸に対して+Z軸の方向に0度から80度のElevationの通信視野方向の変更ができる。
図21ではこの変更範囲221を示している。左側の三角形の領域222は、変更範囲221を+Z軸のまわりに回転した状態である。つまり領域222は、変更範囲221のAzimuth(XY平面)の変更状態を示している。
図21に示すように、Azimuth及びElevationの変更可能なことにより、地球400に対してデータ中継衛星211,212は遠方衛星と光通信が可能となる。
【0052】
図22は、データ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212との、光通信装置220Cの通信視野の変更可能の効果を示す。領域223は、
図21で示したElevation変化範囲を、Azimuth方向に回転させた領域を示す。第一のデータ中継衛星211は、通信視野方向の変更により、遠方の第二のデータ中継衛星212Aと光通信が可能となる。第二のデータ中継衛星212は、通信視野方向の変更により、遠方の第二のデータ中継衛星212Bと光通信が可能となる。
図23は、赤道上空衛星である第一のデータ中継衛星211から、極軌道衛星である第二のデータ中継衛星212への、光通信装置220Cの通信視野の変更を示している。
通信視野を示す領域225は、Elevationを変化させたのちにAzimuth方向、つまり地心方向である+Z軸のまわりに回転してよい。
図23は、その通信視野変更による通信視野の効果を示している。
【0053】
図24は、
図22に対して、+Z軸の方向に対してAzimuth(XY平面)に360度、及び、+X軸に対して+Z軸の方向に0度から70度のElevationの通信視野方向の変更ができることを示す。
図25は、
図22に対して、+Z軸の方向に対してAzimuth(XY平面)に360度、及び、+X軸に対して+Z軸の方向に0度から60度のElevationの通信視野方向の変更ができることを示す。
図24、
図25は
図22と同様であるので説明は省略する。
【0054】
図26は、第一のデータ中継衛星211、第二のデータ中継衛星212の備える通信装置230Cに関する。第一のデータ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212の少なくとも一方が、通信装置230Cを備えている。
図26の通信装置230Cは、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向をデータ中継衛星の衛星進行方向+X、
右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向をデータ中継衛星の地心方向+Zとした場合に、
+Z軸に対して+X軸のまわりに±10度、
及び、
+Z軸に対して、右手直交座標でプラス方向を向く+Y軸のまわりに±10度の視野方向変更できる。飛翔体対応システム700は、通信装置230Cを用いて、大気圏の空域ないし陸上ないし海上を移動する対処装置310、または地上に固定された対処装置320と通信する。+Z軸に対して+X軸のまわりに±10度、及び+Z軸に対して+Y軸のまわりに±10度とは、
図26の第一のデータ中継衛星211の場合、+Z軸に対して+X軸のまわりに±10度は、地球400の縦方向に±10度の通信視野が変化し、+Z軸に対して+Y軸のまわりに±10度は、地球400の水平方向に±10度の通信視野が変化する。
図26には±10度の範囲で変化する通信視野231,232を示している。
【0055】
図27は、
図26に対して、通信装置230Cが+Z軸に対して+X軸のまわりに±20度、及び+Z軸に対して+Y軸のまわりに±20度の通信視野の変更ができることを示している。
図28は、
図26に対して、通信装置230Cが+Z軸に対して+X軸のまわりに±30度、及び+Z軸に対して+Y軸のまわりに±30度の通信視野の変更ができることを示している。
図27、
図28は
図26と同様であるので説明は省略する。
【0056】
図18で述べた飛翔体対応システム700は以下の構成でもよい。飛翔体対応システム700は、軌道高度2000km以上の赤道上空を飛翔する第一のデータ中継衛星211と、太陽同期軌道を飛翔する太陽同期軌道衛星である第二のデータ中継衛星213と、軌道高度2000km以下を飛翔する複数の監視衛星100と、大気圏の空域ないし陸上ないし海上を移動する対処装置310と、地上に固定された対処装置320と、を備える。複数の監視衛星100である監視衛星群が、地上から発射されて飛翔する飛翔体333の監視情報を取得し、データ中継衛星211,213経由で対処装置310,320に監視情報を伝送する。対処装置310,320が、伝送された監視情報を用いて、飛翔体333に対する対処行動を実施する。
【0057】
図18で述べた飛翔体対応システム700は以下の構成でもよい。飛翔体対応システム700では、監視衛星100が、地球表面を指向する第一の監視装置110と、地球周縁を指向する第二の監視装置120とを備える。6機以上の監視衛星100が、軌道傾斜角80度以上を飛翔する極軌道衛星群を形成する。12機以上の監視衛星100が、軌道傾斜角10度以上80度以下の傾斜軌道を飛翔する傾斜軌道衛星群を形成する。6機以上の監視衛星100が、軌動傾斜角10度未満で赤道上空を飛翔する赤道上空衛星群を形成する。
【0058】
図18で述べた飛翔体対応システム700は以下のデータ中継衛星を備えてもよい。飛翔体対応システム700は、地球指向面に、Elevation回転角60度以上、かつ、Azimuth回転角180度以上の指向方向変更が可能な光通信装置を2式備えるデ
ータ中継衛星を備えてもよい。
このデータ中継衛星は、さらに、
右手直交座標でプラス方向を向く+X軸の方向をデータ中継衛星の衛星進行方向+X、右手直交座標でプラス方向を向く+Z軸の方向を衛星の地心方向+Zとした場合に、+Z軸に対して+X軸のまわりに±40度、及び+Z軸に対して、右手直交座標でプラス方向を向く+Y軸のまわりに±40度の指向方向変更する光通信装置を備えてもよい。
【0059】
***実施の形態2の効果****
実施の形態2によれば、第一のデータ中継衛星211と第二のデータ中継衛星212とを連携させて監視情報を対処装置310,320に伝送するので、少ない通信衛星数で、通信遮断のない情報伝送が可能になる。飛翔体対応システム700の通信衛星は、通信視野を変更可能なため、少ない通信衛星数で、通信遮断のない情報伝送が可能になる。飛翔体対応システム700は光通信71と電波通信72とを組み合わせて監視情報を伝送するので、容量の大きいデータを円滑に伝送できる。
実施の形態2によれば、発射後に間欠的にブーストして飛翔方向を変更する飛翔体に対する対処行動が可能になるという効果がある。また地上設備を介さずに監視衛星から宇宙空間のデータ伝送のみで対処装置にデータ送信できるので、リアルタイムの対処行動ができるという効果がある。発射地点から長距離移動して着弾地点が離れている場合に、遠距離大容量光通信によりデータ伝送するので、遠隔地点の対処行動ができるという効果がある。更に光通信をデータ中継衛星間に限定利用することで、通信途絶のリスクがないという効果がある。
【0060】
<実施の形態2の補足>
背景技術でも述べたように、HGV対応システムが待望されている。HGVでは打上げ後に上空大気と宇宙の境界付近を間欠的にブーストして飛翔するために、飛行経路と着弾位置の推定が困難であり、着弾直前まで飛行経路を監視し、ほぼリアルタイムで対処装置に伝送する必要がある。従来の飛翔体では、ブースト時にプルームと呼ばれる高温気体が拡散するので、静止軌道からの遠距離でも赤外線で飛翔体を温度検知することが可能であった。
しかしHGVでは、ブースト終了後の飛行経路を追跡する必要がある。この追跡の場合、温度上昇した機体を赤外線で温度検知する。温度上昇した機体はプルーム程温度が高温ではなく、かつ高温化する面積も狭域であるため、静止軌道のような遠距離からではHGVの探知が困難という課題がある。
【0061】
HGVの飛行追跡をする手段として、低軌道(LEO)衛星コンステレーションにより近距離から監視する手段が有効であり、地球周縁監視により、宇宙を背景として飛翔体を監視することにより、背景信号に埋もれずに飛翔体の追跡が可能となる。静止軌道、モルニヤ軌道のような高い軌道に配備され、地上の広範囲な観測、監視等を行う衛星による飛翔体監視システムでは、例えば静止衛星の場合、静止衛星が地球と同期して周回する特徴を利用して、地上の特定地域を常時監視していた。しかしながら低軌道衛星コンステレーションで常時監視するためには、個別衛星の監視視野範囲が限定され、特定地域上空を短時間で通過してしまうため、多数機で連携して常時監視を実現する必要がある。低軌道衛星コンステレーションでは、衛星機数を十分多数機にすれば地球上全域(以下全球と称する)の常時監視が可能となり、直下視して発射探知する赤外線監視装置と、地球周縁を指向してブースト後の飛翔体を宇宙背景で監視する赤外線監視装置を具備することにより、HGVの発射探知とブースト後の飛行経路追跡が可能となる。
【0062】
しかしながら、膨大な数の低軌道衛星群による常時全球監視をするには、衛星整備費用や打上費用などの総コストが増大し、衛星運用やデータ処理量も膨大になるという課題がある。
【0063】
極力少ない衛星で全球常時監視を実現する手段として、赤道上空軌道衛星群と、極軌道衛星群と、傾斜軌道衛星群の連携が効果的である。赤道上空を飛翔する赤道上空衛星群では、軌道高度に依存するものの、最小では6機以上の衛星を均等配置することにより、直下視監視装置で赤道近傍域を網羅的に監視することができ、地球周縁監視装置で中緯度帯を網羅的に監視することができる。極軌道衛星は全周回極域を通過するので、極軌道衛星群では、1軌道面に最小で6機以上の衛星を均等配置することにより、直下視監視装置で極域近傍を網羅的に監視することができ、地球周縁監視装置で中緯度帯から高緯度帯にかけて監視することができる。傾斜軌道衛星群では、軌道高度と軌道傾斜角と衛星配置を最適化することにより、12機以上の衛星により直下視監視装置で中緯度帯を常時監視でき、地球周縁監視装置で赤道上空と極域や高緯度帯上空の監視が可能となる。
【0064】
24機以上の監視衛星群により全球の常時監視情報を取得した後に、リアルタイムで対処装置に対してデータ伝送する手段が必要となる。そこで本願では、軌道高度2000km以上の赤道上空軌道と極軌道とを飛翔するデータ中継衛星を経由して、対処装置にデータ伝送する。軌道高度2000km以上、36000km以下を飛翔する衛星は一般に中軌道(MEO)衛星と呼ばれ、赤道上空軌道高度36000kmを飛翔する衛星が静止(GEO)衛星である。静止衛星では経度方向に均等に配置した3機以上の衛星により、赤道から中緯度帯にかけて通信範囲を網羅することが可能となる。但し極域の通信視野確保が課題となる。
【0065】
そこで極軌道衛星と連携することにより、全球の常時通信回線確保が可能となる。
中緯度衛星では、バンアレン帯の悪影響を受けない軌道選定が必要となるが、少なくとも軌道高度20000km付近でGPS衛星群などの運用実績があり、軌道高度8000km付近で赤道上空通信衛星群の運用実績がある。
軌道高度は高いほど大気圏の通信視野が広がるので、少ない衛星数で全球を網羅できるというメリットがあるが、距離が遠いため通信に要する待ち時間に当たるレイテンシが大きいという課題がある。また打ち上げて所定高度に到達するまでに必要となる推薬量が多くなるため、衛星重量が重くなり、推薬タンクを装備した衛星が大型となり、同時打上げできる衛星数が少ないという課題がある。
【0066】
軌道高度が低いとレイテンシが小さいので、飛翔体の発射を探知してから対処装置にデータ伝送するまでの時間が短時間になるというメリットがある。このメリットにより、打ち上げて所定高度に到達するまでの推薬量が少なくてよいので、衛星を小型軽量化しやすく、同時打上げできる衛星数が増えるので、機数が多くてもトータルコストが低減できる効果がある。但し全球を網羅するための衛星数が増えるという課題がある。
【0067】
軌道高度2000km以下の低軌道衛星、及び大気圏の空域、陸域、海域の対処装置との常時通信視野を確保するには、軌道高度8000kmのデータ中継衛星であれば、
図28に示すように、地心方向に対して直交2軸に±30degの通信視野を持つ4機以上が同一軌道面で連携すればよい。軌道高度36000kmでは、
図26に示すように、地心方向(+Z軸方向)に対して直交2軸(+X軸、+Y軸)のまわりに±10degの通信視野を持つ3機以上が同一軌道面で連携すればよい。なお複数の監視衛星が空間三角測量の原理により飛翔体の位置計測を実施するために、データ中継衛星が同時にリアルタイムデータ伝送可能な監視衛星数は2以上である。更に複数の飛翔体がほぼ同時に発射される場合も想定すると、6機程度の中緯度データ中継衛星が同一軌道面に配備され、監視衛星群や対処装置との通信視野がオーバーラップしていることが合理的である。
図29は、軌道高度20000kmの赤道上空に6機のデータ中継衛星を配備した場合、極域が六角形で示される通信不能領域となることを示している。そこで、
図27に示すように、極軌道の1軌道面に同様に6機のデータ中継衛星を配備すれば、常に全球の常時通信回線が確保可能となる。
【0068】
飛翔体が長距離を飛行する場合に、監視衛星が発射探知した場所から、着弾が予想される領域近傍の対処装置に対してデータ伝送するために、複数のデータ中継衛星を経由するのが合理的な場合が発生する。データ中継衛星同士の遠距離通信においては、光通信により大容量通信するが合理的となる。第一のデータ中継衛星の任意の2機間、あるいは第二のデータ中継衛星の任意の2機間の光通信では、それぞれ同一軌道面内の同一高度を同期して飛翔しているので、衛星間の相対位置関係は時間変動しない。このため同一軌道面内の指向方向を変更して光通信が確立すれば、その後は指向方向を安定化させれば通信途絶なく大容量通信が可能となる。
【0069】
これに対して、第一のデータ中継衛星と第二のデータ中継衛星間の光通信においては、赤道上空衛星が経度方向に周回移動し、極衛星は緯度方向に周回移動するので、任意の2衛星の相対位置が多様なバリエーションが発生する。
【0070】
そこで、本願においては、
図21から
図25に示したように、同一軌道面内の衛星間光通信が可能な同一面内のElevation視野変更範囲を設定し、地心軸のまわりにAzimuth回転することにより多様な視線方向の変更を可能とする。Elevation角度としては、静止衛星の場合は、同一軌道面内で地球の陰となる範囲を除き、衛星進行方向から地球方向に向けて80deg程度の視野方向変更できることが最大範囲となる。静止軌道上の近傍衛星とはElevation角約0degで通信でき、地球の陰になる際の遠方衛星とは約80degで通信できる。この視野変更範囲を具備する第一のデータ中継衛星と第二のデータ中継衛星が、たまたま同一軌道面内に並んだ場合、任意の2機の衛星間通信が、同様の位置関係で実施可能となる。
【0071】
Elevation角度としては、軌道高度が20000kmでは衛星進行方向から地球方向に向けて72deg程度の視野方向変更できることが最大範囲となり、軌道高度が8000kmでは衛星進行方向から地球方向に向けて63deg程度の視野方向変更できることが最大範囲となる。
【0072】
次に同一軌道面内にない2機の衛星間通信については、地球方向(+Z軸)のまわりにAzimuth回転させて適切なElevation角を設定することにより、多様な相対位置関係において光通信が可能となる。また相対的な衛星が移動する間であっても、適切な2軸指向方向制御をすることにより通信途絶することなく光通信を継続可能となる。衛星間光通信では、双方の衛星の光通信の光軸を厳密に合わせる必要があるため、高い指向精度と安定度が必要となる。現状技術で1体1の光通信は実績があるが、1機の衛星が同時に多数衛星と光通信を継続した実施例がないため、複数機同時光通信を前提とする飛翔体対応システムでは、通信途絶が発生するリスクが残る。しかるに安全保障目的の飛翔体対応システムでは通信途絶した場合の影響が甚大となるため、確実なシステム形成のためには、光通信を同時に実施するクロスリンクは基本的に1対に限定するのが安全である。
【0073】
データ中継衛星間の通信は遠距離大容量通信になるので、光通信を採用するのが合理的であるが、多数の監視装置から1機のデータ中継衛星が同時に通信するには、電波通信を採用するのが合理的である。電波通信ではビーム広がり角を広めに設定することにより衛星移動に伴う通信途絶の耐性を向上することができ、データ中継衛星が複数の電波通信装置を同時に稼働することも可能である。またGPSなどの測位衛星で実績があるように、同じアンテナから送受した複数監視衛星からの信号を識別して利用することも可能である。1機のデータ中継衛星から多数の対処装置にデータ伝送する場合も同様であり、1機の衛星が同時に多数の監視衛星、及び多数の対処装置と通信しても、電波通信により通信途
絶せずリアルタイム通信が可能となる。これは
図19に示した通りである。
【0074】
なお対処装置に関しては、対処装置群が専用通信リンクで連接され、司令塔となる対処装置から指揮統制するのが合理的となる場合もある。例えば米国の事例では、Link16と呼ばれる通信回線が形成されており、例えばイージス艦に対して一括して監視衛星のデータを伝送して、Link16経由で複数アセットの対処行動を指揮統制するというアイデアもある。この場合はデータ中継衛星から対処装置への通信に光通信を採用するのが合理的となる。監視情報を他のデータ中継衛星から受信完了した後に、対処装置に光通信するのであれば、仮にデータ中継衛星間の光クロスリンクが途切れても、対処行動を実施可能である。これは
図20に示した通りである。
【0075】
また同時に複数対象との光通信のクロスリンクを維持する指向精度と安定度の衛星姿勢制御技術が確立した暁には、複数の光通信装置を監視衛星との通信ないし、対処装置との通信に利用することも可能となる。赤道上空衛星は地球を経度方向に1周回する間に太陽入射方向が南北軸のまわりに1周回するので、南北軸(Y軸)のまわりに回動機能を持つ太陽電池パドルを設定するのが合理的である。これに対して極軌道衛星は地球を緯度方向に1周回する間に太陽入射方向がElevation方向に1周回するのに加えて、軌道面の法線ベクトルがAzimuth方向に回転するため、赤道上空衛星と比較して太陽電池稼働効率が低下するという課題がある。固定型ないし1軸回動型の太陽電池パドルの場合は太陽電池パドルが大型化し、太陽電池稼働効率を向上するためには、2軸の回動機能を具備する必要がある。この課題を解決する手段として、太陽同期軌道を採用し、ドーンダスク軌道と呼ばれる常に軌道面の法線ベクトルが地球方向を指向する軌道を採用することにより、固定型太陽電池パドルを常に太陽方向に向けることが可能となる。太陽同期条件は軌道高度と軌道傾斜角の相関性を持ち、低軌道であるほど軌道傾斜角が90度に近づくので低軌道(LEO)衛星では極軌道となる。軌道高度5000km程度までは自然法則のみで太陽同期軌道とすることができるが、軌道傾斜角が90からはなれるほど極域常時監視の制約が大きくなる。人為的に推進装置を動作させることにより、太陽同期条件を維持する軌道高度と軌道傾斜角の多様性を増やすことも可能であるが、推薬を要することになるので、最適条件の見極めはシステム設計方針に依存して決めることになる。
図30は、太陽同期条件を維持する軌道高度と軌道傾斜とを示している。
図30には太陽810を示した。
図30には以下の(1)から(5)の5組を示している。
(1)軌道高度 約5000km、軌道傾斜角 約139度、緯度 約41度、
(2)軌道高度 約4000km、軌道傾斜角 約123度、緯度 約57度
(3)軌道高度 約3000km、軌道傾斜角 約112度、緯度 約68度
(4)軌道高度 約2000km、軌道傾斜角 約105度、緯度 約75度
(5)軌道高度 約1000km、軌道傾斜角 約100度、緯度 約80度。
【0076】
実施の形態3.
実施の形態3は、極軌道6機以上、赤道上空軌道6機以上、傾斜軌道12機以上の合計24機以上のシステムに関する。
【0077】
実施の形態3では、地球表面を指向する第一の監視装置と、地球周縁を指向する第二の監視装置を具備する複数の監視衛星と地上設備により構成される監視システム3000に関する。監視システム3000は、6機以上の監視衛星が軌道傾斜角80度以上を飛翔する極軌道衛星群と、12機以上の監視衛星が軌道傾斜角10度以上80度以下の傾斜軌道を飛翔する傾斜軌道衛星群と、6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度未満で赤道上空を飛翔する赤道上空衛星群と、により衛星コンステレーションを形成する。
【0078】
監視システム3000について説明する。地心方向を指向する第一の監視装置による全球網羅性について説明する。極軌道衛星群は毎周回極域を通過するので、1軌道面で6機以上の衛星が交互に飛来することで、第一の監視装置による極域の常時監視が可能となる。但し中緯度から低緯度にかけて網羅性は確保できない。赤道上空衛星群では1軌道面で6機以上の衛星が交互に飛来することで、第一の監視装置による赤道近傍の常時監視が可能となる。但し中緯度から高緯度にかけて監視ができない。傾斜軌道衛星群では軌道高度と軌道傾斜角と第一の監視装置の視野設定と衛星機数の組合せにより膨大な多様性があるが、2機以上の衛星群により第一の監視装置による中緯度帯の観測網羅性が確保できることが判っている。但し極域は監視できず、赤道上空では常時監視できず網羅性が欠如する場合がある。監視システム3000により、極軌道衛星群と赤道上空衛星群と傾斜軌道衛星群が相互補完することにより、第一の監視装置による全球網羅性を少ない衛星数で確保できるという効果がある。
【0079】
次に地球周縁を指向する第二の監視装置による全球上空網羅性について説明する。なおHGVは打上げ後に地表高度100km以下程度を低空飛行することが知られているので、全球上空の高度範囲は打上げ後高度を下げるまでの最高高度に限定してよい。極軌道衛星群による第二の監視装置の視野範囲は極域付近通過時において北緯60度以上と南緯60度以上の高緯度帯を網羅できる。赤道上空衛星群による第二の監視装置の視野範囲は北半球と南半球の中緯度帯に広がり、軌道高度と軌道傾斜角を選ぶことにより監視する緯度範囲を設定することができる。傾斜軌道衛星群では極域上空と赤道上空を含めて広域に監視領域を確保できる。監視システム3000により、極軌道衛星群と赤道上空衛星群と傾斜軌道衛星群が相互補完することにより、第二の監視装置による全球網羅性を少ない衛星数で確保できるという効果がある。ミニマム24機の衛星により飛翔体の発射探知と飛翔途中の追跡が可能になるという効果がある。複数衛星による同時監視をして空間三角測量をすることにより飛翔体の位置座標を算出できると言う効果がある。
【0080】
第一の監視装置と第二の監視装置として、赤外センサを採用する場合、第一の監視装置は地心方向を指向し、地球の接線に至るまでの視野範囲を確保することにより、飛翔体発射時に噴射する高温プルームを検知可能である。第二の監視装置は地球周縁を指向し、魚眼カメラのように地心方向に対してAzimuth軸のまわりに360度の視野範囲を持てば、瞬時視野範囲がリング状となり、衛星移動に伴い広域を網羅することが可能となる。地球周縁監視によれば、飛翔体が地球上空を飛翔時に、宇宙背景で監視ができるので、高温プルームほど高温ではない、噴射終了後の飛翔体の温度を検知可能となる。このため噴射終了後の飛翔経路の追跡が可能となる。HGVでは飛翔途中に再度推進装置を動作させて飛翔方向を変更することが知られており、第二の監視装置により飛翔途中の噴射検知と変更後の追跡が可能となる。
図31は、第二の監視装置による監視を概念的に示す。
【0081】
<第一の監視装置の網羅性の説明>
図32,
図33は、第一の監視装置の網羅性を示す。地表の赤道付近を網羅的に監視する目的で、赤道上空軌道に6機の衛星を均等配備する場合、地心方向を指向する第一の監視装置により、1機当たり経度60度の監視範囲を網羅すれば地表赤道付近を常時監視することが可能となる。軌道高度が1000kmであれば、地心方向に対して経度方向に±60度の視野範囲を持つ第一の監視装置を具備すればよい。経度60度の中で、特定監視地点を限定できる場合には、視線方向の変更範囲が±60度となる視野方向変更機能を具備してもよい。また経度60度の全域を常時監視する必要がある場合には、複数の監視装置を1機の衛星に搭載してもよいし、衛星数を6機に限定せずに、監視装置の視野範囲に応じて同一軌道面の衛星機数を増やしてもよい。地表面の赤道付近を面的に網羅して常時監視を実現するためには同一軌道の前後を飛翔する衛星との監視領域のオーバーラップも必要になることから、8機以上の衛星を配備すればシステム構築が容易になる。また軌道高度を高高度にすれば、監視装置の視野範囲を狭めた成立解も見出すことができる。
【0082】
図34は、極軌道衛星の監視範囲の模式図を示す。同様の考え方により、軌道傾斜角80度以上の極軌道において、同一軌道面に6機以上の衛星を均等配分で飛翔させ、軌道高度1000kmから、第一の監視装置により地心方向から進行方向に対して±60度の視野範囲を確保すれば、地表で当該軌道面上にある円周状に常時監視が可能となる。極軌道衛星は全ての周回において極域を通過するため、6機を均等配備した軌道面が一面あれば、地球自転に伴う軌道面の対地移動により、極域の常時監視が実現できる。
【0083】
図35は、極軌道衛星の監視範囲の模式図を示す。軌道傾斜角45度程度に設定した傾斜軌道を高度2000km程度で飛翔する12機以上の衛星により、中緯度帯を網羅的に監視可能な衛星コンステレーションが知られている。機数が増加すれば、軌道高度1000kmでも中緯度帯の網羅的な監視が可能である。
【0084】
図36は、第一の監視装置の網羅性を示す。赤道上空衛星群と、極軌道衛星群と、傾斜軌道衛星群とは、いずれも単独で全球を網羅することはできないが、3つの衛星群を組み合わせることにより第一の監視装置による全球の網羅的常時監視が可能になるという効果がある。また最小衛星数24機で全球を網羅できるので、システム整備コストを低減できるという効果がある。この結果として第一の赤外センサにより飛翔体の発射探知が可能となる。また第二の赤外センサにより飛翔体の噴射終了後飛翔段階の温度検知をすることにより、飛行追跡が可能となる。また複数衛星が同時に監視可能な領域においては、空間三角測量の原理により飛翔体の位置座標を導出することが可能となる。
【0085】
<第二の監視装置の網羅性の説明>
図37,
図38は、第二の監視装置の網羅性を説明する図である。次に地球周縁を指向する第二の監視装置の視野範囲の網羅性を示す。赤道上空衛星では、北半球の中緯度帯と南半球の中緯度帯が視野範囲となり、赤道を周回することにより中緯度帯がリング状に監視領域として網羅される。
【0086】
図39,
図40は極軌道衛星を示す。極軌道衛星において、北極付近通過時において北緯60度付近、南極通過時において南緯60度付近を視野範囲とし、南北方向に飛翔することにより赤道から見てリング状に視野領域が形成される。なお軌道面が一面であっても、地球自転の効果により監視領域が時間経過とともに移動する。第二の監視装置が魚眼カメラのように地心方向に対してAzimuth軸のまわりに360度の視野範囲を持てば、一機の衛星が北極から北緯60度付近をリング状に網羅することなる。極軌道衛星では毎周回極域を通過するので、軌道面が単一であっても、6機以上の衛星が交互に飛来することにより、北緯60度付近と南緯60度付近は常時網羅されることになる。また極域通過前後の前方視と後方視により60度以上の高緯度帯は常時網羅されることになる。
【0087】
図41,
図42は傾斜軌道衛星における第二の監視装置の視野を示す。傾斜軌道衛星における第二の監視装置の視野は、たすき掛け状にリングを描き、極域上空、赤道付近上空を含めて形成される。更に傾斜軌道衛星群は経度方向に均等に形成されるため、傾斜軌道衛星群により形成される視野範囲はほぼ全球を網羅する状態となる。
【0088】
図43は、第二の監視装置による全球網羅性を示す。
図43では第二の監視装置に角度を付した衛星のみ監視視野を示している。実際には
図37に示すように、監視視野が地球表面を監視可能な領域が地球表面に帯状にできる。赤道上空衛星群と極軌道衛星群と傾斜軌道衛星群の第二の監視装置による視野範囲を合わせることにより全球網羅性が確保され、更に同時に複数の衛星の視野が重なるので空間三角測量による立体視が可能となり、飛翔位置座標を算出することが可能となる。
【0089】
実施の形態3の監視システム3000では、以下のようである。
監視システム3000は、地球表面を指向する第一の監視装置と、地球周縁を指向する第二の監視装置を具備する複数の監視衛星と地上設備とを備える。6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度未満で赤道上空を飛翔する赤道上空衛星群として衛星コンステレーションを形成する。この監視システム3000では、軌道が楕円軌道であって、第二の監視装置の監視範囲を遠地点付近で高緯度側に拡大し、近地点付近で低緯度側に拡大する。
図44、
図45は、軌道緯度と地球接線との関係を示す。
この監視システム3000によれば、
軌道高度約400kmで北緯20度の接線方向を、
軌道高度約1000kmで北緯30度の接線方向を、
軌道高度約2000kmで北緯40度の接線方向を、
軌道高度約3600kmで北緯50度の接線方向を、
軌道高度約12800kmで北緯60度の接線方向を、
それぞれ宇宙背景で監視することができる。
そこで赤道上空で楕円軌道を採用して、高緯度上限を遠地点で、低緯度下限を近地点で監視するよう設定すれば、所望の監視範囲を網羅できることになる。赤道上空衛星群を順番に番号を付与した場合に、奇数号機を遠地点、偶数号機を近地点となるよう軌道面を交互に設定すれば、合理的に観測範囲を拡大できる。なお楕円軌道の長径は軌道面内で回転するので、特定監視領域を特定の地方時(LST:Local Sun Time)で監視するためには、当該LSTにおいて適切な位置に長径を配置し、凍結軌道化することにより監視範囲を維持できる。なお凍結軌道化を自然現象のみで実現するのは軌道パラメータの制約が大きいが、推進系を動作させることで、自由度の高いパラメータ設定が可能となる。
【0090】
また実施の形態3の監視システム3000では、軌道が凍結軌道であってもよい。
【0091】
また実施の形態3の監視システム3000は以下の構成でもよい。監視システム3000は、地球表面を指向する第一の監視装置と、地球周縁を指向する第二の監視装置を具備する複数の監視衛星と、地上設備とを備える。監視システム3000では、6機以上の監視衛星が、軌道傾斜角10度未満で赤道上空を飛翔する赤道上空衛星群として衛星コンステレーションを形成する。監視システム3000では、軌道が楕円軌道であって、第二の監視装置の監視範囲を軌道最北端において北半球高緯度側、及び南半球低緯度側に、軌道最南端において南半球高緯度側、及び北半球低緯度側に拡大する。
【0092】
また監視システム3000では、軌道面の法線ベクトルが地球の自転と同期してもよい。
【0093】
実施の形態1から実施の形態3に登場した衛星は、すべて、地球に位置する制御装置、あるいは、管制装置によって制御される。
【0094】
以上、実施の形態1から実施の形態3について説明した。これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0095】
100,101,102,103 監視衛星、110 第一の監視装置、120 第二の監視装置、11S +X+Yセンサ、12S +X-Yセンサ、13S -X+Yセンサ、14S-X-Yセンサ、15S 直下監視センサ、21S +Yセンサ、22S -Yセンサ、31S +Xセンサ、32S +Yセンサ、33S -Yセンサ、34S 直下監視センサ、41C 通信装置、51C,52C,53C,54C,55C,56C 通信装置、71 光通信、72 電波通信、201,202 通信衛星、211 第一のデータ中継衛星、212 第二のデータ中継衛星、213 第二のデータ中継衛星、220C 光通信装置、230C 通信装置、300 地上設備、310,320 対処装置、330 通信回線、333 飛翔体、400 地球、501,502,503 監視システム、600 衛星情報伝送システム、700 飛翔体対応システム、3000 監視システム。