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特許7592218集約装置、通信方法、通信システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】集約装置、通信方法、通信システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/24 20220101AFI20241122BHJP
【FI】
H04L45/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024513902
(86)(22)【出願日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2023037486
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 晃
(72)【発明者】
【氏名】城倉 義彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂正
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第7072731(JP,B1)
【文献】特開2009-027286(JP,A)
【文献】特開2019-213028(JP,A)
【文献】特開2017-098593(JP,A)
【文献】特開2013-051647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 45/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置であって、
前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記第1の下り経路上の端末装置各々が関節点となっているか否かを判定し、前記関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築し、
前記関節点である端末装置は、無線マルチホップネットワークから、当該端末装置を除いたときに、該無線マルチホップネットワークが非連結になる端末装置である、
集約装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の下り経路の構築に失敗した場合、除外した前記第1の下り経路上の端末装置のうちの少なくとも1つを選択対象に戻して、再度、前記第2の下り経路を構築する、請求項1に記載の集約装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の下り経路を構築するか否かを判定し、複数の下り経路を構築すると判定した場合、前記第2の下り経路を構築し、複数の下り経路を構築しないと判定した場合、前記第2の下り経路を構築しない、請求項1に記載の集約装置。
【請求項4】
複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置の通信方法であって、
前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて記憶した前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する第2のステップと
を有し、
前第2のステップにおいて、前記第1の下り経路上の端末装置各々が関節点となっているか否かを判定し、前記関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築し、
前記関節点である端末装置は、無線マルチホップネットワークから、当該端末装置を除いたときに、該無線マルチホップネットワークが非連結になる端末装置である、
通信方法。
【請求項5】
センター装置と、前記センター装置と通信する1つ以上の集約装置とを備える通信システムであって、
前記集約装置は、
複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信し、
前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記第1の下り経路上の端末装置各々が関節点となっているか否かを判定し、前記関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築し、
前記関節点である端末装置は、無線マルチホップネットワークから、当該端末装置を除いたときに、該無線マルチホップネットワークが非連結になる端末装置である、
通信システム。
【請求項6】
前記複数の端末装置を、さらに備える、請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
コンピュータを、
複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置
として機能させるためのプログラムであって、
前記集約装置は、
前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記第1の下り経路上の端末装置各々が関節点となっているか否かを判定し、前記関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築し、
前記関節点である端末装置は、無線マルチホップネットワークから、当該端末装置を除いたときに、該無線マルチホップネットワークが非連結になる端末装置である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集約装置、通信方法、通信システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー型社会への関心が高まり、電力量の自動検針による消費電力の可視化、および電力の需給制御などを可能とするスマートメータと呼ばれる自動検針装置の導入が推進されている。
【0003】
スマートメータは、集約装置(DCU, Data Communication Unit)をルートとする無線マルチホップネットワークを構成し、集約装置に検針情報を送信する。この無線マルチホップネットワークで用いられるルーティングプロトコルとして、RFC6550のRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)がある。RPLでは、集約装置からスマートメータへ向かう通信経路である下り経路については、親局である集約装置が経路を指定するソースルーティングが行われる。
【0004】
特許文献1は、集約装置からスマートメータへの下り経路を複数決定し、同一の下りデータを、その複数の下り経路それぞれで送信することで、信頼性が高く低遅延の下り通信を実現する通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第7072731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の通信システムにおいては、同一の下りデータをそれぞれで送信する複数の下り経路の間で重複部分が多くなり、充分に信頼性が高く低遅延な下り通信とならないことがあるという問題がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたもので、信頼性が高く低遅延の下り通信を実現する集約装置、通信方法、通信システム、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この開示は上述した課題を解決するためになされたもので、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置であって、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える集約装置である。
【0009】
また、本開示の他の一態様は、上述した集約装置であって、前記制御部は、前記第2の下り経路の構築に失敗した場合、除外した前記第1の下り経路上の端末装置のうちの少なくとも1つを選択対象に戻して、再度、前記第2の下り経路を構築する。
【0010】
また、本開示の他の一態様は、上述した集約装置であって、前記制御部は、前記第1の下り経路上の端末装置のうち関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築する。
【0011】
また、本開示の他の一態様は、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置の通信方法であって、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する第1のステップと、前記第1のステップにおいて記憶した前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する第2のステップとを有する通信方法である。
【0012】
また、本開示の他の一態様は、上述した集約装置であって、センター装置と、前記センター装置と通信する1つ以上の集約装置とを備える通信システムであって、前記集約装置は、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信し、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える、通信システムである。
【0013】
また、本開示の他の一態様は、上述した通信システムであって、前記複数の端末装置を、さらに備える。
【0014】
また、本開示の他の一態様は、コンピュータを、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置として機能させるためのプログラムであって、前記集約装置は、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示の集約装置、通信方法、通信システム、およびプログラムは、信頼性が高く低遅延の下り通信を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この開示の第1の実施形態による通信システム100の構成を示す概略ブロック図である。
図2】同実施形態における集約装置40の構成を示す概略ブロック図である。
図3】同実施形態における下りのIPパケットの構成例を説明する模式図である。
図4】同実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。
図5】同実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。
図6】この開示の第2の実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。
図7】同実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。
図8】この開示の第3の実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。
図9】同実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。
図10】各実施形態に係る各装置のハードウェア構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本開示の第1の実施形態について説明する。図1は、この開示の第1の実施形態による通信システム100の構成を示す概略ブロック図である。通信システム100は、電力用MDMS(Meter Data Management System)11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20(HES、Head End System)、集約装置40、端末装置50を備える。通信システム100は、電力、ガス、水道などのスマートメータである端末装置50各々から、電力、ガス、水道など検針情報を収集する。また、通信システム100は、需給制御などのためのデータを、各端末装置50に送信する。
【0018】
電力用MDMS11は、電力の検針情報をセンター装置20から取得し、管理する。ガス用MDMS12は、ガスの検針情報をセンター装置20から取得し、管理する。水道用MDMS13は、水道の検針情報をセンター装置20から取得し、管理する。
【0019】
センター装置20は、WAN(Wide Area Network)30を介して複数の集約装置40と通信可能に接続されている。センター装置20は、集約装置40を介して収集した電力、ガス、水道の検針情報を、それぞれ、電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13に送信する。また、センター装置20は、需給制御などのためのデータを、各端末装置50に集約装置40を介して送信する。
【0020】
集約装置40は、電信柱などに設置され、端末装置50とともに構成する無線マルチホップネットワークのルートとなる。この無線マルチホップネットワークでは、上り方向(端末装置50から集約装置40)は、ホップバイホップでパケットを転送する。一方、下り方向(集約装置40から端末装置50)は、ソースルーティングが用いられる。すなわち、下り方向は、送信元が宛先までの経路情報を転送するパケットに付与し、該パケットは該経路情報に従い転送される。なお、この無線マルチホップネットワークにおいて、プロトコルとしてRFC6550のRPLが用いられてもよい。
【0021】
端末装置50は、各需要家に設置される電力、ガス、水道などのスマートメータであり、電力、ガス、水道などの検針情報を、所属する無線マルチホップネットワークのルートである集約装置40に送信する。また、端末装置50は、需給制御などのデータを、該集約装置40から受信する。なお、端末装置50の各々は、検針情報を計測する電力量計、水道メータ、あるいはガスメータと、無線マルチホップネットワークを介した通信を行う通信ユニットとから構成されていてもよい。
【0022】
図2は、本実施形態における集約装置40の構成を示す概略ブロック図である。集約装置40は、無線部41と、制御部42を備える。制御部42は、経路情報記憶部43を備える。なお、経路情報記憶部43は、制御部42からアクセス可能なように集約装置40が備えていればよく、制御部42の外に備えられてもよい。また、無線部41と制御部42とは、同一の基板上に配置されていてもよい。
【0023】
無線部41は、センター装置20および端末装置50と無線通信する。なお、
無線部41は、センター装置20との通信と、端末装置50との通信とで異なる無線通信方式を用いてもよいし、いずれかで有線通信方式を用いてもよい。
【0024】
経路情報記憶部43は、複数の端末装置50の少なくとも一部の各々から集約装置40へ送信された上り信号に格納された上り信号が経由した端末装置50を示す経路情報を記憶する。この経路情報は、経由順に端末装置50の識別情報(例えば、IP(Internet Protocol)アドレス)が並べられたものであってもよい。なお、上り信号が経由する端末装置50は、同じ端末装置50から送信された上り信号であっても、通信環境の変化などのため、上り信号によって異なることがある。経路情報記憶部43は、同じ端末装置50から送信された複数の上り信号各々の経路情報を記憶していてもよい。
【0025】
制御部42は、経路情報記憶部43が記憶する経路情報を用いて、1つの端末装置50への第1の下り経路を構築する。さらに、制御部42は、第1の下り経路上の端末装置50を選択対象から除外して該1つの端末装置50への第2の下り経路を構築する。ここで、下り経路上の端末装置50とは、該下り経路において、経由される端末装置50であって、送信元の集約装置40と、宛先の端末装置50とを除いた端末装置50である。そして、制御部42は、該1つの端末装置50を宛先とする同一の下りデータを、第1の下り経路と第2の下り経路各々を用いて送信する。この送信は、無線部41を介して行われる。なお、制御部42は、3つ以上の下り経路を構築し、それらの下り経路各々を用いて同一の下りデータを送信してもよい。その場合、制御部42は、n番目の下り経路を構築する際には、1番目からn-1番目までの下り経路上の端末装置50を選択対象から除外する。また、制御部42は、予め決められた数の下り経路を構築するようにしてもよいし、下りデータの誤り率あるいは重要度に応じて構築する数を変更するようにしてもよい。また、制御部42は、経路情報を経路情報記憶部43に記憶させる。
【0026】
図3は、本実施形態における下りのIPパケットの構成例を説明する模式図である。集約装置40が端末装置50へ送信する下りデータは、図3に示すようなIPパケットにより送信される。このIPパケットは、ヘッダHと、ペイロードPLとを備える。ヘッダHには、制御部42が決定した経路を示す経路情報Rが含まれる。経路情報Rは、経路上の端末装置50の識別情報が経路順に並べられた情報であってもよい。ペイロードPLには、下りデータが格納される。
【0027】
図4は、本実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。図4に示す動作例は、制御部42が、同一の下りデータを送信するための複数の下り経路を構築する処理の動作例である。
【0028】
まず、制御部42は、下り経路を1つ構築する(ステップSa1)。この下り経路の構築方法は、どのような方法であってもよい。例えば、制御部42は、ダイクストラ法を用いてもよいし、該下り経路の宛先となる端末装置50からの上り信号に格納された上り信号の経路情報を、経路情報記憶部43から読み出して、該経路情報が示す経路を逆に辿る経路を下り経路としてもよい。
【0029】
次に、制御部42は、複数の経路を構築するか否かを判定する(ステップSa2)。複数の経路を構築しないと判定した場合(ステップSa2-No)、制御部42は下り経路構築の処理を終了する。一方、複数の経路を構築すると判定した場合(ステップSa2-Yes)、制御部42は、構築済みの下り経路上の端末装置50を、下り経路構築の際の選択対象から除外する(ステップSa3)。
【0030】
次に、制御部42は、下り経路を1つ構築する(ステップSa4)。この下り経路の構築方法は、どのような方法であってもよく、ステップSa1と同様であってもよい。ただし、ステップSa4で構築される下り経路は、ステップSa3で選択対象から除外した端末装置50を経由しない経路である。
【0031】
次に、制御部42は、所望数の下り経路が構築されたか否かを判定する(ステップSa5)。所望数の下り経路が構築されたと判定した場合(ステップSa5-Yes)、制御部42は、経路の構築処理を終了する。一方、所望数の下り経路が構築されていないと判定した場合(ステップSa5-No)、制御部42は、ステップSa3に戻る。
【0032】
図5は、本実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。図5において、集約装置40と、各々が端末装置50である端末装置SM1~SM8とで無線マルチホップネットワークを構成している。集約装置40の制御部42は、ある下りデータを端末装置SM8に送信するための第1の下り経路として、端末装置SM1、SM3、SM6を経由する経路を構築する。次に、制御部42は、これらの端末装置SM1、SM3、SM6を第2の下り経路を構築する際の選択対象から除外して、上記の下りデータを送信するための第2の下り経路として、端末装置SM2、SM6、SM7の順に経由する経路を構築する。
【0033】
このように、本実施形態の制御部42は、経路情報記憶部43が記憶する経路情報を用いて、1つの端末装置50への第1の下り経路を構築し、第1の下り経路上の端末装置50を選択対象から除外して該1つの端末装置50への第2の下り経路を構築し、該1つの端末装置50を宛先とする同一の下りデータを、第1の下り経路と第2の下り経路各々を用いて送信する。
これにより、第2の下り経路は、第1の下り経路とは異なる端末装置50を経由したものとなるため、これらの下り経路を用いた下りデータの送信は、信頼性が高く低遅延の下り通信となる。
【0034】
<第2の実施形態>
第2の実施形態における通信システム100は、第1の実施形態における通信システム100と同様であるが、集約装置40の制御部42の動作が一部異なる。本実施形態における制御部42は、第2の下り経路の構築に失敗した場合、除外した第1の下り経路上の端末装置50のうちの少なくとも1つを選択対象に戻して、再度、第2の下り経路を構築する点が、第1の実施形態とは異なる。
【0035】
図6は、この開示の第2の実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。図6に示す動作例は、制御部42が、同一の下りデータを送信するための複数の下り経路を構築する処理の動作例である。同図において、図4の各部に対応する部分には同一の符号(Sa1、Sa2、Sa3、Sa4、Sa5)を付し、説明を省略する。
【0036】
図6では、ステップSa4の次に、制御部42は、ステップSa4における下り経路の構築が成功したか否かを判定する(ステップSb1)。成功したと判定した場合(ステップSb1-Yes)、制御部42は、処理をステップSa5に進める。一方、成功していない(失敗している)と判定した場合(ステップSb1-No)、制御部42は、ステップSa3で選択対象から除外している端末装置50を1つ選択対象に戻し(ステップSb2)、処理をステップSa4に戻す。なお、選択対象に戻す端末装置50の決め方はどのような方法であってもよい。例えば、選択対象に戻す端末装置50は、ランダムに決められてもよいし、構築済みの下り経路における順であってもよい。
【0037】
図7は、本実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。図7において、集約装置40と、端末装置SM1~SM9とで無線マルチホップネットワークを構成している。集約装置40の制御部42は、ある下りデータを端末装置SM9に送信するための第1の下り経路として、端末装置SM1、SM3、SM6、SM8を経由する経路を構築する。次に、制御部42は、これらの端末装置SM1、SM3、SM6、SM8を第2の下り経路を構築する際の選択対象から除外して、上記の下りデータを送信するための第2の下り経路を構築しようとする。しかし、端末装置SM9までの経路を、選択対象の端末装置SM2、SM4、SM5、SM7のみでは構成できないため、構築は失敗となる。
【0038】
そこで、制御部42は、端末装置SM8を選択対象に戻して、第2の下り経路として、端末装置SM2、SM5、SM7、SM8を経由する経路を構築する。
【0039】
このように、本実施形態の制御部42は、第2の下り経路の構築に失敗した場合、除外した第1の下り経路上の端末装置50のうちの少なくとも1つを選択対象に戻して、再度、第2の下り経路を構築する。
これにより、第1の下り経路上の端末装置50を除外すると、第2の下り経路の構築に失敗する場合でも、第2の下り経路を構築することが出来る。
【0040】
<第3の実施形態>
第3の実施形態における通信システム100は、第1の実施形態における通信システム100と同様であるが、集約装置40の制御部42の動作が一部異なる。本実施形態における制御部42は、第2の下り経路を構築する際に、第1の下り経路上の端末装置50であって関節点でない端末装置50のみを選択対象から除外する点が、第1の実施形態とは異なる。
【0041】
図8は、この開示の第3の実施形態における制御部42の動作例を示すフローチャートである。図8に示す動作例は、制御部42が、同一の下りデータを送信するための複数の下り経路を構築する処理の動作例である。同図において、図4の各部に対応する部分には同一の符号(Sa1、Sa2、Sa4、Sa5)を付し、説明を省略する。
【0042】
図8では、ステップSa2において複数の下り経路を構築すると判定した場合(ステップSa2-Yes)、制御部42は、構築済みの下り経路上の端末装置50を抽出する(ステップSc1)。次に、制御部42は、ステップSc1にて抽出した端末装置50各々について(ステップSc2、Sc5)、ステップSc3にて、その端末装置50が関節点となっているか否かを判定する。ここで、端末装置50が関節点であるとは、無線マルチホップネットワークから、その端末装置50を除いたときに、該無線マルチホップネットワークが非連結になってしまうことを示す。
【0043】
ステップSc3にて関節点であると判定した場合(ステップSc3-Yes)、制御部42は、その端末装置50について何も処理しない。一方、関節点でないと判定した場合(ステップSc-No)、制御部42は、その端末装置50を選択対象から除外する(ステップSc4)。制御部42は、ステップSc1にて抽出した全ての端末装置50について、上述の処理を行った後、ステップSa4の処理を行う。
【0044】
図9は、本実施形態における下りデータの送信例を説明する模式図である。図9において、集約装置40と、端末装置SM1~SM9とで無線マルチホップネットワークを構成している。集約装置40の制御部42は、ある下りデータを端末装置SM9に送信するための第1の下り経路として、端末装置SM1、SM3、SM6、SM8を経由する経路を構築する。次に、制御部42は、これらの端末装置SM1、SM3、SM6、SM8のうち、関節点でない端末装置SM1、SM3、SM6を第2の下り経路を構築する際の選択対象から除外して、上記の下りデータを送信するための第2の下り経路として、端末装置SM2、SM6、SM7、SM8の順に経由する経路を構築する。
【0045】
このように、本実施形態の制御部42は、経路情報記憶部43が記憶する経路情報を用いて、1つの端末装置50への第1の下り経路を構築し、第1の下り経路上の端末装置50のうち関節点でないものを選択対象から除外して該1つの端末装置50への第2の下り経路を構築し、該1つの端末装置50を宛先とする同一の下りデータを、第1の下り経路と第2の下り経路各々を用いて送信する。
【0046】
これにより、第2の下り経路は、第1の下り経路とは異なる経路となるため、これら2つの下り経路を用いた下りデータの送信は、信頼性が高く低遅延の下り通信となる。
【0047】
図10は、各実施形態に係る各装置のハードウェア構成を説明する説明図である。
各装置とは、電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20である。各装置は、入出力モジュールI、記憶モジュールM、及び制御モジュールPを含んで構成される。入出力モジュールIは、通信モジュールH11、接続モジュールH12、ポインティングデバイスH21、キーボードH22、ディスプレイH23、ボタンH3、マイクH41、スピーカH42、カメラH51、又はセンサH52の一部或いは全部を含んで実現される。記憶モジュールMは、ドライブH7を含んで実現される。記憶モジュールMは、さらに、メモリH8の一部或いは全部を含んで構成されてもよい。制御モジュールPは、メモリH8及びプロセッサH9を含んで実現される。これらのハードウェア構成要素は、バス(Bus)を介して、相互に通信可能に接続されるとともに、電源H6から電力を供給されている。
【0048】
接続モジュールH12は、USB(Universal Seriul Bus)等のデジタル入出力ポートである。ポインティングデバイスH21、キーボードH22、及びディスプレイH23は、タッチパネルであってもよい。センサH52は、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS受信モジュール、近接センサ等である。電源H6は、各装置を動かすために必要な電気を供給する電源ユニットである。電源H6は、バッテリーであってもよい。ドライブH7は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の補助記憶媒体である。ドライブH7は、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、又は、光磁気ディスクドライブやフレキシブルディスクドライブであってもよい。また、ドライブH7は、例えば、各装置に内蔵されるものに限らず、接続モジュールH12のコネクタに接続された外付け型の記憶装置でもよい。メモリH8は、ランダムアクセスメモリ等の主記憶媒体である。なお、メモリH8は、キャッシュメモリであってもよい。メモリH8は、一又は複数のプロセッサH9によって命令が実行されるときに、これらの命令を格納する。プロセッサH9は、CPU(中央演算装置)である。プロセッサH9は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)又はGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)であってもよい。プロセッサH9は、メモリH8を介してドライブH7から、プログラム及び各種データを読み出して演算を行うことで、一又は複数のメモリH8に格納した命令を実行する。
【0049】
入出力モジュールIは、電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20などに用いられる。制御モジュールPは、電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20の各部の実装に用いられる。なお、本明細書等において、電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20との記載は、制御モジュールPとの記載に置き換えられてもよい。
【0050】
本開示は、以下のような実施形態であってもよい。
(1)本開示の一実施形態は、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置であって、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える集約装置である。
【0051】
(2)また、本開示の他の一実施形態は、(1)に記載の集約装置であって、前記制御部は、前記第2の下り経路の構築に失敗した場合、除外した前記第1の下り経路上の端末装置のうちの少なくとも1つを選択対象に戻して、再度、前記第2の下り経路を構築する。
【0052】
(3)また、本開示の他の一実施形態は、(1)に記載の集約装置であって、前記制御部は、前記第1の下り経路上の端末装置のうち関節点でないものを選択対象から除外して、前記第2の下り経路を構築する、請求項1に記載の集約装置。
【0053】
(4)また、本開示の他の一実施形態は、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置の通信方法であって、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する第1のステップと、前記第1のステップにおいて記憶した前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する第2のステップとを有する通信方法である。
【0054】
(5)また、本開示の他の一実施形態は、センター装置と、前記センター装置と通信する1つ以上の集約装置とを備える通信システムであって、前記集約装置は、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信し、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える、通信システムである。
【0055】
(6)また、本開示の他の一実施形態は、(5)に記載の通信システムであって、前記複数の端末装置を、さらに備える。
【0056】
(7)また、本開示の他の一実施形態は、コンピュータを、複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、前記複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置として機能させるためのプログラムであって、前記集約装置は、前記複数の端末装置の少なくとも一部の各々から前記集約装置へ送信された上り信号に格納された前記上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記経路情報記憶部が記憶する前記経路情報を用いて、前記複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、前記第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して前記1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、前記1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、前記第1の下り経路と前記第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える、プログラムである。
【0057】
また、図1における電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20、集約装置40の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより電力用MDMS11、ガス用MDMS12、水道用MDMS13、センター装置20、集約装置40を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0058】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0059】
以上、この開示の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
11 電力用MDMS
12 ガス用MDMS
13 水道用MDMS
20 センター装置
30 WAN
40 集約装置
41 無線部
42 制御部
43 経路情報記憶部
50 端末装置
【要約】
複数の端末装置とともに無線マルチホップネットワークを構成可能であり、複数の端末装置が送信する上りデータを受信する集約装置であって、複数の端末装置の少なくとも一部の各々から集約装置へ送信された上り信号に格納された上り信号が経由した端末装置を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、経路情報記憶部が記憶する経路情報を用いて、複数の端末装置のうちの1つの端末装置への第1の下り経路を構築し、第1の下り経路上の端末装置を選択対象から除外して1つの端末装置への第2の下り経路を構築し、1つの端末装置を宛先とする同一の下りデータを、第1の下り経路と第2の下り経路各々を用いて送信する制御部とを備える集約装置である。これにより、集約装置は、信頼性が高く低遅延の下り通信を実現する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10