(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の駆動回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241122BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241122BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241122BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 C
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2024515811
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2022018277
(87)【国際公開番号】W WO2023203678
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】網本 健志
(72)【発明者】
【氏名】松尾 遥
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273244(JP,A)
【文献】特開2021-193784(JP,A)
【文献】特開2009-183017(JP,A)
【文献】特開2009-131036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧源と出力電圧源との間に接続された電圧変換装置であって、
直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグと、
前記スイッチングレグを駆動する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、
前記第1のスイッチング素子を駆動するためのドライバと、
前記第2のスイッチング素子のリカバリサージ電圧を検出するためのダイオードと、
前記第1のスイッチング素子の制御電極と電気的に接続され、前記リカバリサージ電圧の変動に応じた電流を流す受動素子と、
前記受動素子と接続され、前記受動素子の第1端と、正極電線または負極電線との間に配置された受電抵抗と、を含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチング素子の正極端子は、前記正極電線に接続され、前記第2のスイッチング素子の負極端子は、前記負極電線に接続され、前記第1のスイッチング素子の負極端子と前記第2のスイッチング素子の正極端子とが接続され、
前記ダイオードは、前記第1のスイッチング素子の制御電極に接続されるアノードと、前記受動素子の前記第1端に接続されるカソードとを有し、
前記受動素子の第2端は、前記負極電線に接続され、
前記受電抵抗は、前記正極電線と接続される第1端と、前記受動素子の第1端および前記ダイオードのカソードと接続される第2端とを有する、請求項
1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記受動素子は、コンデンサを含む、請求項
2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記受動素子は、並列接続されたコンデンサおよび抵抗を含む、請求項
2記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、さらに、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードに接続される第1端と、前記出力電圧源の正極と接続される第2端とを有するリアクトルを備え、
前記入力電圧源の正極は、前記正極電線と接続され、前記入力電圧源の負極は、前記負極電線と接続され、
前記出力電圧源の負極は、前記負極電線と接続される、請求項
2~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換装置は、さらに、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードに接続される第1端と、前記入力電圧源の負極と接続される第2端とを有するリアクトルを備え、
前記出力電圧源の正極は、前記正極電線と接続され、前記出力電圧源の負極は、前記負極電線と接続され、
前記入力電圧源の正極は、前記正極電線と接続される、請求項
2~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2のスイッチング素子の正極端子は、前記正極電線に接続され、前記第1のスイッチング素子の負極端子は、前記負極電線に接続され、前記第2のスイッチング素子の負極端子と前記第1のスイッチング素子の正極端子とが接続され、
前記ダイオードは、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードに接続されるカソードと、前記受動素子の前記第1端に接続されるアノードとを有し、
前記受動素子の第2端は、前記第1のスイッチング素子の制御電極に接続され、
前記受電抵抗は、前記負極電線と接続される第1端と、前記受動素子の第1端および前記ダイオードのアノードと接続される第2端とを含む、請求項
1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、さらに、
前記正極電線と前記負極電線との間に配置されるコンデンサを含む、請求項
7記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2のスイッチング素子は、ダイオードである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチング素子の正極端子は、正極電線に接続され、前記第2のスイッチング素子の負極端子は、負極電線に接続され、前記第1のスイッチング素子の負極端子と前記第2のスイッチング素子の正極端子とが接続され、
前記ドライバは、第1のドライバであり、
前記ダイオードは、前記第1のスイッチング素子の制御電極に接続されるアノードを有する第1のダイオードであり、
前記受動素子は、前記第1のダイオードのカソードに接続される第1端と、前記負極電線に接続される第2端とを有する第1の受動素子であり、
前記駆動回路は、
前記第2のスイッチング素子を駆動するための第2のドライバと、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードに接続されるカソードを有する第2のダイオードと、
前記第2のダイオードのアノードに接続される第1端と、前記第2のスイッチング素子の制御電極に接続される第2端とを有する第2の受動素子と、
前記正極電線と接続される第1端と、前記第1の受動素子の第1端および前記第1のダイオードのカソードと接続される第2端とを有する第1の受電抵抗と、
前記負極電線と接続される第1端と、前記第2の受動素子の第1端および前記第2のダイオードのアノードと接続される第2端とを有する第2の受電抵抗と、をさらに備える、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項11】
直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグと、
前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を駆動する駆動回路と、を備え、
前記第1のスイッチング素子の正極端子は、正極電線に接続され、前記第2のスイッチング素子の負極端子は、負極電線に接続され、前記第1のスイッチング素子の負極端子と前記第2のスイッチング素子の正極端子とが接続され、
前記駆動回路は、
前記第1のスイッチング素子を駆動するための第1のドライバと、
前記第2のスイッチング素子を駆動するための第2のドライバと、
前記第1のスイッチング素子の制御電極に接続されるアノードを有する第1のダイオードと、
前記第1のダイオードのカソードに接続される第1端と、前記負極電線に接続される第2端とを有する第1の受動素子と、
前記正極電線と接続される第1端と、前記第1の受動素子の第1端および前記第1のダイオードのカソードと接続される第2端とを有する第1の受電抵抗と、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードに接続されるカソードを有する第2のダイオードと、
前記第2のダイオードのアノードに接続される第1端と、前記第2のスイッチング素子の制御電極に接続される第2端とを有する第2の受動素子と、
前記負極電線と接続される第1端と、前記第2の受動素子の第1端および前記第2のダイオードのアノードと接続される第2端とを有する第2の受電抵抗と、を含む、電力変換装置。
【請求項12】
直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグを含む電力変換装置の駆動回路であって、
前記第1のスイッチング素子を駆動するためのドライバと、
前記第2のスイッチング素子のリカバリサージ電圧を検出するためのダイオードと、
前記第1のスイッチング素子の制御電極と電気的に接続され、前記リカバリサージ電圧の変動に応じた電流を流す受動素子と、
前記受動素子と接続され、前記受動素子の第1端と、正極電線または負極電線との間に配置された受電抵抗と、を備える、電力変換装置の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置および電力変換装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置および電力変換装置の駆動方法に関して、特許文献1に記載されたような方式が知られている。
【0003】
特許文献1では、半導体素子がサージ電圧などの過電圧を伴う場合に、ダイオード等を介して過電圧を検出し、ゲート駆動電圧を上昇させる。これによって、半導体素子を一部ターンオンさせ、過電圧の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される駆動回路は、半導体素子にターンオフサージ電圧が生じた際にターンオフサージ電圧を抑制する。特許文献1の駆動回路は、リカバリサージ電圧が生じた際にも有効であるとの記載がある。しかしながら、特許文献1の駆動回路は、リカバリサージ電圧が生じる素子がIGBT等の自励式である場合にのみ有効である。
【0006】
それゆえに、本開示の目的は、リカバリサージ電圧が生じる素子が自励式か否かに係わりなく、ターンオフサージ電圧を抑制することができる電力変換装置および電力変換装置の駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電力変換装置は、直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグと、スイッチングレグを駆動する駆動回路とを備える。駆動回路は、第1のスイッチング素子を駆動するためのドライバと、第2のスイッチング素子のリカバリサージ電圧を検出するためのダイオードと、第1のスイッチング素子の制御電極と電気的に接続され、リカバリサージ電圧の変動に応じた電流を流す受動素子とを含む。
【0008】
本開示の電力変換装置は、直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグと、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を駆動する駆動回路とを備える。第1のスイッチング素子の正極端子は、正極電線に接続され、第2のスイッチング素子の負極端子は、負極電線に接続され、第1のスイッチング素子の負極端子と第2のスイッチング素子の正極端子とが接続される。
【0009】
駆動回路は、第1のスイッチング素子を駆動するための第1のドライバと、第2のスイッチング素子を駆動するための第2のドライバと、第1のスイッチング素子の制御電極に接続されるアノードを有する第1のダイオードと、第1のダイオードのカソードに接続される第1端と、負極電線に接続される第2端とを有する第1の受動素子と、正極電線と接続される第1端と、受動素子の第1端およびダイオードのカソードと接続される第2端とを有する第1の受電抵抗と、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との間のノードに接続されるカソードを有する第2のダイオードと、第2のダイオードのアノードに接続される第1端と、第2のスイッチング素子の制御電極に接続される第2端とを有する第2の受動素子と、負極電線と接続される第1端と、第2の受動素子の第1端および第2のダイオードのアノードと接続される第2端とを有する第2の受電抵抗とを含む。
【0010】
本開示の直列接続された第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子とを含むスイッチングレグを含む電力変換装置の駆動回路は、第1のスイッチング素子を駆動するためのドライバと、第2のスイッチング素子のリカバリサージ電圧を検出するためのダイオードと、第1のスイッチング素子の制御電極と電気的に接続され、リカバリサージ電圧の変動に応じた電流を流す受動素子とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ダイオードが、第2のスイッチング素子のリカバリサージ電圧を検出し、受動素子が、第1のスイッチング素子の制御電極と電気的に接続され、リカバリサージ電圧の変動に応じた電流を流す。よって、本開示によれば、リカバリサージ電圧が生じる素子が自励式か否かに係わりなく、ターンオフサージ電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置100の概略構成図である。
【
図2】駆動回路150の動作波形を模式的に表した図である。
【
図3】実施の形態1の変形例1に係る電力変換装置100Aの概略構成図である。
【
図4】実施の形態1の変形例2に係る電力変換装置100Bの概略構成図である。
【
図5】実施の形態2に係る電力変換装置100Cの概略構成図である。
【
図6】実施の形態2の変形例1に係る電力変換装置100Dの概略構成図である。
【
図7】実施の形態3の電力変換装置の構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置100の概略構成図である。電力変換装置100は、電源1と負荷2との間で電力伝送を行う。
【0014】
電力変換装置100は、入力電圧源で有る電源1と出力電圧源である負荷2との間に接続される。電力変換装置100は、平滑コンデンサとして機能する直流リンクキャパシタ131、ブリッジ回路120、および電流制御リアクトル140を備える。
【0015】
電源1は、主として直流を出力するが、負荷2の状況に応じて電圧が変化しても良い。
ブリッジ回路120の作用により、電源1と負荷2との間で電力変換が行われる。ブリッジ回路120は、駆動回路150、およびスイッチングレグ152を備える。スイッチングレグ152は、スイッチング素子Q1、D1と、ダイオード21とを備える。
【0016】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子D1とが正極電線111と負極電線112との間に直列接続されている。
【0017】
スイッチング素子Q1の正極端子は、正極電線111と接続され、スイッチング素子Q1の負極端子は、ノードND1と接続される。スイッチング素子D1の正極端子は、ノードND1と接続され、スイッチング素子D1の負極端子は、負極電線112と接続される。
【0018】
スイッチング素子Q1には、自己消弧能力を持つ半導体素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、またはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等が用いられる。スイッチング素子Q1には、ダイオード21(以下、逆並列接続ダイオード21と称す)が逆並列接続されている。ダイオード21としては、独立したダイオードが付与されてもよく、MOSFET等に内蔵されるボディダイオードが用いられても良い。
【0019】
スイッチング素子D1には、
図1に示すように、ダイオードが用いられてもよく、スイッチング素子Q1と同様に自己消弧能力を持つスイッチング素子が用いられても良い。
【0020】
正極電線111は、電源1の正極端子に接続される。負極電線112は、電源1の負極端子および負荷2の負極端子に接続される。ノードND1は、電流制御リアクトル140の第1の端子に接続される。電流制御リアクトル140の第2の端子は、負荷2の正極端子に接続される。
【0021】
直流リンクキャパシタ131は、電源1に並列して、正極電線111と負極電線112との間に接続される。
【0022】
駆動回路150は、ゲートドライバ151と、ゲート抵抗Rgと、ダイオードD2と、受電抵抗R1と、受動素子であるコンデンサC1とを備える。
【0023】
ゲートドライバ151は、ゲート抵抗Rgを介してスイッチング素子Q1のゲート端子に接続される。ゲートドライバ151は、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御する。ゲートドライバ151は、ゲート抵抗Rgの第1端と接続される。ゲート抵抗Rgの第2端は、スイッチング素子Q1のゲート端子と接続される。
【0024】
ダイオードD2は、スイッチング素子D1に発生する電圧を検出する。
ダイオードD2のアノードは、ゲート抵抗Rgの第2端、およびスイッチング素子Q1のゲート端子と接続される。ダイオードD2のカソードは、ノードND2に接続される。
【0025】
コンデンサC1の第1端は、ノードND2に接続される。コンデンサC1の第2端は、負極電線112およびスイッチング素子D1の負極端子と接続される。
【0026】
受電抵抗R1の第1端は、正極電線111と接続される。受電抵抗R1の第2端は、ノードND2に接続される。
【0027】
ダイオードD2は、スイッチング素子D1に生じたリカバリサージ電圧を駆動回路150に伝達し、それ以外の影響を阻止する。コンデンサC1(受動素子)は、スイッチング素子D1のリカバリサージ電圧の大きさに応じた電流を流す。受電抵抗R1は、一定電圧の電線である正極電線111と、コンデンサC1(受動素子)の第1端との間に配置される。受電抵抗R1は、ダイオードD2が電圧を検出する際に、コンデンサC1(受動素子)の電圧を適切な状態に保つ。
【0028】
ゲートドライバ151は、各スイッチング素子のオンオフ駆動制御を行う制御回路160から処理信号を受け取る。
【0029】
制御回路160は、処理回路を備える。制御回路160の処理回路は、A/D変換装置を介してFPGA(Field Programmable Gate Array)などで処理を行うデジタル電子回路により構成されてもよいし、コンパレータ、オペアンプ、または差動増幅回路などのアナログ電子回路から構成されてもよいし、デジタル電子回路及びアナログ電子回路の双方により構成されてもよい。
【0030】
図2は、駆動回路150の動作波形を模式的に表した図である。駆動回路150は、スイッチングレグ152をオン/オフ駆動する機能を備えており、制御回路160等からの信号に従ってスイッチング素子Q1を駆動する。
【0031】
実施の形態1において、駆動回路150は、スイッチング素子D1に発生する過電圧を検出する。駆動回路150は、スイッチング素子Q1がターンオンした際等に発生する、スイッチング素子D1のリカバリ電流を原因とした、スイッチング素子D1のリカバリサージ電圧を検出し、リカバリサージ電圧の大きさに応じた電流をスイッチング素子Q1のゲート端子から引き抜く。
【0032】
スイッチング素子Q1がターンオンした際には、
図2のようにスイッチング素子D1にリカバリサージ電圧を生じる。一般に、ダイオードの導通損失を低下させるとダイオード中のキャリア濃度が増加し、導通状態から逆電圧を印加した瞬間のリカバリ電流が増加することで、リカバリサージ電圧が増加する。リカバリサージ電圧が増加すると、機器の耐電圧設計に悪影響を与える他、EMCの問題が発生するなどの影響があるので、リカバリサージ電圧の抑制は設計のトレードオフを改善する要素となる。
【0033】
本実施の形態では、スイッチング素子D1においてリカバリサージ電圧を発生し、スイッチング素子D1に母線電圧よりも大きな電圧が生じた場合、ダイオードD2およびコンデンサC1を介して、スイッチング素子Q1のゲート端子から電流が引き抜かれ、スイッチング素子Q1のゲート電圧が一時的に低下することにより、サージ電圧発生の瞬間だけ、スイッチング素子Q1のターンオンが抑制される。
【0034】
スイッチング素子Q1のターンオンの速度が抑制されることによって、スイッチング素子Q1と接続されるダイオードD2のリカバリ電流が抑制され、リカバリサージ電圧の発生が抑制される。駆動回路150のリカバリサージ電圧抑制機能により、ダイオードD2の設計トレードオフを改善することができるため、機器の耐電圧設計およびEMC設計などが改善され、電力変換装置の性能が向上する。
【0035】
実施の形態1の変形例1.
図3は、実施の形態1の変形例1に係る電力変換装置100Aの概略構成図である。本変形例の電力変換装置100Aが実施の形態1の電力変換装置100と相違する点について説明する。
【0036】
電力変換装置100Aは、実施の形態1と相違するブリッジ回路120Aを備える。ブリッジ回路120Aは、実施の形態1と相違する駆動回路150Aを備える。
【0037】
駆動回路150Aは、コンデンサC1に代えて、コンデンサCxおよび抵抗Rxの組み合わせからなる受動回路10を備える。
【0038】
受動回路10は、他の種類の2つの受動素子の組み合わせによって構成されるものとしてもよい。受動回路10内の抵抗Rxの代わりに、他の受動素子、たとえばリアクトルが用いられてもよい。
【0039】
本変形例では、コンデンサC1に代えて、複数の受動素子が用いられることとしたが、これに限定するものではなく、コンデンサC1に代えて、1つの他の種類の受動素子が用いられてもよい。
【0040】
実施の形態1の変形例2.
図1の電力変換装置の構成は、一例であり電源1から負荷2への昇圧回路を構成することもできる。
【0041】
図4は、実施の形態1の変形例2に係る電力変換装置100Bの概略構成図である。本変形例の電力変換装置100Bが実施の形態1の電力変換装置100と相違する点について説明する。
【0042】
電流制御リアクトル140の第2の端子は、電源1の負極端子に接続される。正極電線111は、電源1の正極端子および負荷2の正極端子に接続される。負極電線112は、負荷2の負極端子に接続される。
【0043】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る電力変換装置100Cの概略構成図である。本実施の形態の電力変換装置100Cが実施の形態1の電力変換装置100と相違する点について説明する。
【0044】
電力変換装置100Cは、実施の形態1と相違するブリッジ回路120Cを備える。ブリッジ回路120Cは、駆動回路150C、およびスイッチングレグ152Cを備える。スイッチングレグ152Cは、スイッチング素子Q1、D1と、ダイオード21とを備える。
【0045】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子D1とが正極電線111と負極電線112との間に直列接続される。
【0046】
スイッチング素子D1の正極端子は、正極電線111と接続される。スイッチング素子D1の負極端子は、ノードND1と接続される。スイッチング素子Q1の正極端子は、ノードND1と接続される。スイッチング素子Q1の負極端子は、負極電線112と接続される。スイッチング素子Q1には、ダイオード21(以下、逆並列接続ダイオード21と称す)が逆並列接続されている。
【0047】
駆動回路150Cは、ゲートドライバ151と、ゲート抵抗Rgと、ダイオードD3と、受電抵抗R2と、コンデンサC2とを備える。
【0048】
ゲートドライバ151は、ゲート抵抗Rgを介してスイッチング素子Q1のゲート端子に接続される。ゲートドライバ151は、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御する。ゲートドライバ151は、ゲート抵抗Rgの第1端と接続される。ゲート抵抗Rgの第2端は、スイッチング素子Q1のゲート端子と接続される。
【0049】
ダイオードD3のカソードは、ノードND1と接続され、ダイオードD3のアノードは、ノードND3と接続される。
【0050】
コンデンサC2の第1端は、ノードND3と接続される。コンデンサC2の第2端は、ゲート抵抗Rgの第2端、およびスイッチング素子Q1のゲート端子と接続される。
【0051】
受電抵抗R2の第1端は、負極電線112と接続される。受電抵抗R2の第2端は、ノードND3と接続される。
【0052】
ダイオードD3は、スイッチング素子D1にリカバリサージ電圧を生じた際に発生するリカバリサージ電圧を駆動回路150Cに伝達し、それ以外の影響を阻止する。コンデンサC2(受動素子)は、スイッチング素子D1のリカバリサージ電圧の大きさに応じた電流を流す。受電抵抗R2は、ダイオードD3が電圧を検出する際に、コンデンサC2(受動素子)の電圧を適切な状態に保つ。
【0053】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、駆動回路150Cは、スイッチング素子D1に発生する過電圧を検出する。駆動回路150Cは、スイッチング素子Q1がターンオンした際等に発生する、スイッチング素子D1のリカバリ電流を原因とした、スイッチング素子D1のリカバリサージ電圧を検出し、リカバリサージ電圧の大きさに応じた電流をスイッチング素子Q1のゲート端子から引き抜く。
【0054】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、スイッチング素子D1においてリカバリサージ電圧を発生し、スイッチング素子D1に母線電圧よりも大きな電圧が生じた場合、ダイオードD3およびコンデンサC2を介して、スイッチング素子Q1のゲート端子から電流が引き抜かれ、スイッチング素子Q1のゲート電圧が一時的に低下することにより、サージ電圧発生の瞬間だけ、スイッチング素子Q1のターンオンが抑制される。
【0055】
実施の形態2の変形例1.
図6は、実施の形態2の変形例1に係る電力変換装置100Dの概略構成図である。本変形例の電力変換装置100Dが実施の形態2の電力変換装置100Cと相違する点について説明する。
【0056】
電力変換装置100Dは、ブリッジ回路120Dを備える。ブリッジ回路120Dは、駆動回路150Dを備える。駆動回路150Dは、駆動回路150Cの構成要素に加えて、コンデンサC3を備える。
【0057】
コンデンサC3は、正極電線111とノードND3との間に配置される。コンデンサC3を設けることによって、電流経路が増大することによるインダンタンスの問題などを抑制できる。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態1および2では電源1から負荷2への単方向の電力変換装置を説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。2つのスイッチング素子にサージ電圧抑制回路を適用し、双方向の電力変換が可能な非絶縁型のDC/AC変換回路を構成することができる。
【0059】
図7は、実施の形態3の電力変換装置の構成を表わす図である。
電力変換装置は、3相インバータ回路200を備える。
【0060】
3相インバータ回路200は、第1ブリッジ回路BR1、第2ブリッジ回路BR2、および第3ブリッジ回路BR3を備える。
【0061】
第1ブリッジ回路BR1は、駆動回路150Eと、スイッチングレグ152Eとを備える。第2ブリッジ回路BR2および第3ブリッジ回路BR3の構成は、第1ブリッジ回路BR1の構成と同様である。
【0062】
スイッチングレグ152Eは、スイッチング素子Q1a、Q1bと、ダイオード21a,21bとを備える。
【0063】
スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q1bとが正極電線111と負極電線112との間に直列接続されている。スイッチング素子Q1aの正極端子は、正極電線111と接続される。スイッチング素子Q1aの負極端子は、ノードND1と接続される。スイッチング素子Q1bの正極端子は、ノードND1と接続される。スイッチング素子Q1bの負極端子は、負極電線112と接続される。スイッチング素子Q1aには、ダイオード21aが逆並列接続されている。スイッチング素子Q1bには、ダイオード21bが逆並列接続されている。
【0064】
正極電線111は、DC入出力部201の正極端子に接続される。負極電線112は、DC入出力部201の負極端子に接続される。ノードND1は、AC入出力部202の第1の端子に接続される。
【0065】
直流リンクキャパシタ131は、正極電線111と負極電線112との間に接続される。
【0066】
駆動回路150Eは、ゲートドライバ151a,151bと、ゲート抵抗Rga,Rgbと、ダイオードD2,D3と、受電抵抗R1,R2と、コンデンサC1,C2とを備える。
【0067】
ゲートドライバ151aは、ゲート抵抗Rgaを介してスイッチング素子Q1aのゲート端子に接続される。ゲートドライバ151aは、スイッチング素子Q1aのオン/オフを制御する。ゲートドライバ151aは、ゲート抵抗Rgaの第1端と接続される。ゲート抵抗Rgaの第2端は、スイッチング素子Q1aのゲート端子と接続される。
【0068】
ダイオードD2は、スイッチング素子Q1bに発生する電圧を検出する。
ダイオードD2のアノードは、ゲート抵抗Rgaの第2端、およびスイッチング素子Q1aのゲート端子と接続される。ダイオードD2のカソードは、ノードND2に接続される。
【0069】
コンデンサC1の第1端は、ノードND2に接続される。コンデンサC1の第2端は、負極電線112およびスイッチング素子Q1bの負極端子と接続される。
【0070】
受電抵抗R1の第1端は、正極電線111と接続される。受電抵抗R1の第2端は、ノードND2に接続される。
【0071】
ダイオードD2は、スイッチング素子Q1bにリカバリサージ電圧を生じた際に発生するサージ電圧を駆動回路150Eに伝達し、それ以外の影響を阻止する。コンデンサC1(受動素子)は、スイッチング素子Q1bのリカバリサージ電圧の大きさに応じた電流を流す。受電抵抗R1は、ダイオードD2が電圧を検出する際に、コンデンサC1(受動素子)の電圧を適切な状態に保つ。
【0072】
ゲートドライバ151aは、各スイッチング素子のオンオフ駆動制御を行う図示しない制御回路から処理信号を受け取る。
【0073】
ゲートドライバ151bは、ゲート抵抗Rgbを介してスイッチング素子Q1bのゲート端子に接続される。ゲートドライバ151bは、スイッチング素子Q1bのオン/オフを制御する。ゲートドライバ151bは、ゲート抵抗Rgbの第1端と接続される。ゲート抵抗Rgbの第2端は、スイッチング素子Q1bのゲート端子と接続される。
【0074】
ダイオードD3のカソードは、ノードND1と接続され、ダイオードD3のアノードは、ノードND3と接続される。
【0075】
コンデンサC2の第1端は、ノードND3と接続される。コンデンサC2の第2端は、ゲート抵抗Rgbの第2端、およびスイッチング素子Q1bのゲート端子と接続される。
【0076】
受電抵抗R2の第1端は、負極電線112と接続される。受電抵抗R2の第2端は、ノードND3と接続される。
【0077】
ダイオードD3は、スイッチング素子Q1aにリカバリサージ電圧を生じた際に発生するサージ電圧を駆動回路150Eに伝達し、それ以外の影響を阻止する。コンデンサC2(受動素子)は、スイッチング素子Q1aのリカバリサージ電圧の大きさに応じた電流を流す。受電抵抗R2は、ダイオードD3が電圧を検出する際に、コンデンサC2(受動素子)の電圧を適切な状態に保つ。
【0078】
なお、上述のDC/DC変換回路以外にも、DAB(Dual-Active-Bridge)回路またはLLC回路など、高周波変圧器を介した絶縁型のDC/DC変換回路を構成することもできる。
【0079】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 電源、2 負荷、10 受動回路、21,21a,21b,D2,D3 ダイオード、100,100A,100B,100C,100D 電力変換装置、111 正極電線、112 負極電線、120,120A,120C,120D ブリッジ回路、131 直流リンクキャパシタ、140 電流制御リアクトル、150,150A,150C,150D,150E 駆動回路、151,151a,151b ゲートドライバ、152,152C,152E スイッチングレグ、160 制御回路、200 インバータ回路、201 DC入出力部、202 AC入出力部、BR1 第1ブリッジ回路、BR2 第2ブリッジ回路、BR3 第3ブリッジ回路、C1,C2,C3,Cx コンデンサ、D1,Q1a,Q1,Q1b スイッチング素子、ND1,ND2,ND3 ノード、R1,R2 受電抵抗、Rg,Rga,Rgb ゲート抵抗、Rx 抵抗。