(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】医療用固定材
(51)【国際特許分類】
A61F 5/058 20060101AFI20241125BHJP
A61L 15/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61F5/058
A61L15/08
(21)【出願番号】P 2022096286
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2017087152の分割
【原出願日】2017-04-26
【審査請求日】2022-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】畑野 裕一
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-129902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0042715(US,A1)
【文献】特表2005-523769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00 -5/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を含み且つ水硬化性の芯材と、
該芯材の側端部を取り囲み且つ該側端部から飛び出た該ガラス繊維が皮膚に触れないようにする保護材と、
該芯材および該保護材を覆う被覆材と、
を備えた医療用固定材。
【請求項2】
前記保護材の厚みは、前記芯材の厚み以下である請求項1に記載の医療用固定材。
【請求項3】
前記被覆材は、前記芯材および前記保護材の上下面を覆う請求項1または2に記載の医療用固定材。
【請求項4】
前記芯材に対する前記被覆材の厚みの比率が1/20以上1/4以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用固定材。
【請求項5】
前記被覆材が、撥樹脂加工されている請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用固定材。
【請求項6】
前記被覆材が、フッ素樹脂により撥樹脂加工されている請求項5に記載の医療用固定材。
【請求項7】
前記被覆材は、外表面層に1または複数の切り込みを有する請求項1から6のいずれか一項に記載の医療用固定材。
【請求項8】
前記切り込みは、前記芯材の側端部と前記被覆材の側端部との間の領域に形成されている請求項7に記載の医療用固定材。
【請求項9】
前記被覆材が、撥水
(撥樹脂)加工されている請求項1から8のいずれか一項に記載の医療用固定材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用固定材に関し、特に、水硬化性の芯材とその芯材を覆う被覆材とを備えた医療用固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野においては、骨折や捻挫等の治療等を目的として様々な医療用固定材が用いられている。医療用固定材としては、例えば、ガラス繊維、ポリエステル不織布またはポリエステル編織物に水硬化性樹脂を塗布して基材を構成する水硬化型の医療用固定材が用いられてきている。このような、水硬化型の医療用固定材は、水に対する耐性が強く、機械的強度も高いため、有用であることが知られている。
【0003】
しかしながら、水硬化性合成樹脂を用いる医療用固定材の場合、その合成樹脂が、患者の皮膚に好ましくない圧迫を加え、痛みや傷害をもたらす可能性が考えられる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、基布と、基布上に直接に設けたアルミケーシングと、一般的な整形用副子のように基布上に直接設けずにアルミケーシング上に形成した外表面層及び皮膚保護層と、からなる医療用固定材が開示されている。
【0005】
このような、医療用固定材は、医療用固定材の基布にガラス繊維を採用しているため、厚みが薄く患部の形にしやすいので、ステーの固定力を向上させることができる。また、医療用固定材は、薄型化が達成できると装具の設計自由度を向上させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガラス繊維等で基布を形成すると、基布の端面からガラス繊維が飛び出てチクチクしたり、患者の皮膚に刺さったりしてしまうことがある。そこで、ガラス繊維から患者の皮膚を保護するため、端面をクッションで覆う必要があるが、これでは医療用固定材全体が分厚くなり、中央部と端部では厚みが異なるため、でこぼこして患者の固定箇所に不快感が発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、快適性を向上させた医療用固定材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態である医療用固定材は、水硬化性の芯材と、芯材の側端部を取り囲む保護材と、芯材および保護材を覆う被覆材と、を備える。保護材の厚みは、芯材の厚み以下であってよい。
また、本発明の一実施形態である医療用固定材は、ガラス繊維を含み且つ水硬化性の芯材と、芯材の側端部を取り囲み且つ側端部から飛び出たガラス繊維が皮膚に触れないようにする保護材と、芯材および保護材を覆う被覆材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、快適性を向上させた医療用固定材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用固定材を示す模式図である。
【
図2】
図1の医療用固定材のA-A線における拡大断面図である。
【
図4】
図1の医療用固定材に注水し、硬化させる手順を示す模式図である。
【
図5】人体に
図1の医療用固定材を装着する手順を示す模式図である。
【
図6】人体に
図1の医療用固定材を装着した状態を示す模式図である。
【
図7】
図1の医療用固定材の各部の厚みを示す拡大図である。
【
図8】
図1の医療用固定材の各部の厚みを示す表である。
【
図9】本発明の実施例と比較例との対比を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、本発明は、下記の各実施例及びその変形例のいずれかを互いに組み合わせることもできる。
【0013】
(1.医療用固定材の構成例)
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用固定材(水硬化性ステー)10を示す模式図である。
図2は、医療用固定材10の
図1のA-A線における拡大断面図である。
図3は、医療用固定材10の分解模式図である。
図1から
図3を用いて、医療用固定材10の構成について説明する。
【0014】
本実施形態に係る医療用固定材10は、上下2つの被覆部11と、水硬化性の芯材12と、芯材12の周囲の端部を保護する保護材である端部保護部13と、を備えている。被覆部11は、芯材12および端部保護部13を上下から挟み込んでいる。芯材12は、一例として略矩形に形成され、その端部周辺が端部保護部13で保護されている。端部保護部13は、芯材12の各辺端部に接合部14で接合され、一例として略矩形に形成されている。接合部14は、上側および下側の被覆部11と、芯材12および端部保護部13と、を接着している。さらに、下側の被覆部11の外表面層には、水分を医療用固定材10の内部に注水し、または、医療用固定材10の内部から排水するための1または複数の切り込み15が形成されている。以下に、各部について詳細に説明する。
【0015】
(2.被覆部)
被覆部11は、芯材12の上下面を覆う部材である。被覆部11の素材は、例えば、フッ素樹脂による撥水(撥樹脂)加工されたポリエステル、ポリオレフィンの不織布やフィルム等を用いることができる。これにより、被覆部11は、ウレタン樹脂等の水硬化性樹脂が外部に染み出すのを防止するなど、撥樹脂が可能となる。さらに、被覆部11は、医療用固定材10を人体に装着する際にクッションの役割を果たすこともできる。
【0016】
ここで、フッ素系の樹脂は、例えば、パーフルオロアルキル基および水酸基を有する化合物とアクリル酸、メタクリル酸等をエステル化反応させて作ったアクリル酸誘導体(パーフルオロモノマー)を主成分とする共重合体で、共重合体成分としてはアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルなどのモノマー、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、N―メチルアクリルアミドなどの架橋性モノマーを使用したフッ素系処理剤で撥油処理を行うことができる。
【0017】
ここで、不織布について、芯材12の樹脂硬化後にチクチクが発生する基布と、チクチクが発生しない基布との端面の繊維束を測定したところ、チクチクが発生する基布の繊維束の太さは350μm以上であった。一方、チクチクが発生しない基布の繊維束の太さは150μm以下であった。この結果から、繊維束の太さが250μm付近以上で芯材12の樹脂硬化後にチクチクが発生することが考えられる。
【0018】
なお、医療用固定材10は、被覆部11と芯材12との間に緩衝材を設けていない。これにより、医療用固定材10は、従来品に比べて薄型化を実現可能にしている。
【0019】
(3.芯材)
芯材12は、一例として、シート状であり、医療用固定材(ステー)10の強度を出す部分である。特に、芯材12の厚みおよび材質によって医療用固定材10の強度を出している。芯材12の素材は、例えば、プラスチック線維、ガラス繊維等の基布(基材)およびウレタン樹脂を用いることができる。これにより、ガラス繊維等の基布およびウレタン樹脂は共に安価であるため、医療用固定材10を低コストで製造することが可能となる。なお、基布は、強度を出すための部材であり、ウレタン樹脂は水硬化させるための部材である。
【0020】
医療用固定材10は、芯材12の基布にガラス繊維を採用しているため、被覆材11および芯材12の厚みを薄くして患部の形にしやすくすることができるので、ステーの固定力を向上させることができる。また、医療用固定材は、薄型化が達成できると装具の設計自由度を向上させることもできる。
【0021】
しかしながら、
図2に示すように、芯材12の基布に、例えば、ガラス繊維21を用いると、芯材12の端部からガラス繊維21が飛び出て装着時に皮膚がチクチクしたり、皮膚に刺さったりしてしまうおそれがある。そこで、芯材12の端面を保護する必要があるが、被覆材11の端部を伸ばして芯材12の端面を保護しようとすると、医療用固定材10全体が分厚くなり、さらに、厚さが不均一となりでこぼこしてしまう。
【0022】
また、芯材12の材料は、織布、編布、不織布等を使用することができ、これらを単独又は任意に選択組合せて形成してもよい。さらに、芯材12には、天然繊維、化学繊維等の繊維を使用することができ、この繊維には、例えば、綿、毛、レーヨン、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、その他の繊維がある。
【0023】
(4.端部保護部)
端部保護部13は、芯材12内のガラス繊維の基布端面を保護する部材である。端部保護部13の素材は、目の荒い網目構造であり、例えば、ポリエステル不織布を用いることができる。医療用固定材10は、端部保護部13を備えることにより、芯材12の端面から飛び出るガラス繊維21が皮膚に触れないようにすることができる。
【0024】
端部保護部13は、ガラス繊維の基布と同等以下の厚みに形成することで、医療用固定材10の厚み方向の凹凸を低減することができ、これにより、患部へ適合させやすくして、フィット性および固定力を向上させることができる。
【0025】
(5.接合部)
接合部14は、被覆部11、芯材12および端部保護部13をそれぞれ接着するための部材である。接合部14の素材は、例えば、両面テープまたは粘着剤を用いることができる。
【0026】
(6.被覆部の切り込み)
下側の被覆部11の切り込み15は、芯材12を硬化させる水の注水および排水の役割を担う部分である。切り込み15は、芯材12の側端部と被覆材11の側端部との間の領域である、被覆部11の外表面層の被覆材11同士が接している部分に形成されている。被覆部11と芯材12とが接触する部分に切り込みがあると樹脂が漏れてしまうからである。また、切り込み15を上記の部分に設けることで、樹脂漏れが無く、かつ硬化反応を起こした後の水分を抜けやすくすることができる。
【0027】
医療用固定材10は、被覆部11が撥水(撥樹脂)加工されているため、内部の水分が外部に排出されにくい。また、医療用固定材10の内部に水分が残っていると患部が浸軟してしまう(ふやけてしまう)。そこで、被覆部11の外表面層の被覆材11同士が接している部分に切り込み15を形成することにより、医療用固定材10の内部に入った水分を切り込み15から外部へ排水することができる。なお、端部保護部13のポリエステル不織布は撥水性でないため、端部保護部13から排水することもできる。また、芯材12を硬化させるための注水および排水の役割を担う部分は、切り込み15に限らず、穴の形状等であってもよい。
【0028】
(7.水硬化の手順の一例)
図4は、医療用固定材10に注水し、硬化させる手順を示す模式図である。
図4を用いて、医療用固定材10を硬化させる手順について説明する。
【0029】
図4Aは、上側の被覆部11を取り除き、切り込みを入れた下側の被覆部11を示す図である。下側の被覆部11には、一例として、長手方向側端部付近の芯材12および端部保護部13と接着されていない位置に、切り込み15および切り込み45が形成されている。
図4Bは、注水の一例として、切り込み15から芯材12に注水し、注水した水を切り込み45から排水する様子を示す図である。
図4Cは、注水後に余分な水分を排水して芯材12を硬化させる様子を示す図である。
【0030】
まず、医療用固定材10の被覆部11に切り込み15および切り込み45が形成されていることを確認する。次に、
図4Bに示すように、例えば、切り込み15から水分を被覆部11の内部に注水する。必要な分量以上に注水された余分な水分は、例えば、切り込み45から被覆部11の外部に排水される。そして、芯材12が水分に十分浸されたら、医療用固定材10をしぼって、切り込み15および切り込み45や被覆部11の端部から内部の水分を排水し、固定したい形状を維持してしばらく放置する。芯材12は、一例として、約10分程度で硬化してくるが、完全に硬化するまでには約24時間程度必要となる。
【0031】
(8.医療用固定材の装着例)
図5は、人体に医療用固定材10を装着する手順を示す模式図である。
図6は、人体に医療用固定材10を装着した状態を示す模式図である。
図5および
図6を用いて、人体に医療用固定材10を装着する手順について説明する。本実施形態では、一例として、医療用固定材10を人体の手首周辺に装着する手順について説明する。
【0032】
まず、上述のように、医療用固定材10に水分を含浸させる。次に、
図5に示すように、水分を含浸させた医療用固定材10を、例えば、人体の右手手のひら側から右手首51に装着する。このとき、医療用固定材10が右手首51付近の患部を的確に固定するように、医療用固定材10の形状を整えておく。なお、医療用固定材10の親指に接触する部分は、掌の形状に合わせて略半円状に切り取っておくと、より右手首51にフィットさせることができる。そして、
図6に示すように、例えば、弾性を有する包帯61またはサポーター等の関節用装具等で医療用固定材10を右手首51に固定する。このように、医療用固定材10は、柔軟な素材である被覆材11を患部にあて、患部にフィットした状態でステー等の芯材12を硬化させて成型している。
【0033】
上記構成および動作により、本実施形態の医療用固定材10は、芯材12の周囲の端部を端部保護部13で保護することにより、強度を保ちつつ薄型化し、かつ、快適性も向上させることができる。
【0034】
(9.実施例と実験方法)
次に、
図7および
図8を用いて、本実施形態の医療用固定材10の一実施例および実験方法について説明する。
図7は、医療用固定材10の各部の厚みを示す拡大図である。
図8は、医療用固定材10の各部の厚みを示す表である。
【0035】
図7および
図8に示すように、キャスト芯材12の厚み(1)は、2.0mm~10.0mmが好ましく、4.0mm~6.0mmがより好ましい。
【0036】
また、被覆材の厚みは、従来2.5mm~3.0mmほどであったが、医療用固定材10の薄型化のため、被覆材11の厚み(2)は、0.1mm~2.5mmが好ましく、0.3mm~1.5mmがより好ましい。なお、これらの厚みは、Peacock J-Bφ30mmにて計測した結果、ソンタラ0.45mm、ASP032902.5mmより設定している。
【0037】
また、外縁部の端部保護部13の幅(3)は、2.0mm~8.0mmが好ましく、4.0mm~6.0mmがより好ましい。なお、保護材である端部保護部13の厚みは、芯材12の厚み以下であるのが好ましい。
【0038】
次に、本実施例および比較例の実験方法について説明する。
【0039】
強度測定については、オートグラフにて3点曲げ試験(押し込み試験)を行い、破断するまでの最大圧力が30N/inchの圧力以上であること(島津製作所製“オートグラフ(登録商標)”AG-20KNI、1kNロードセルを使用)を確認し、30N/inchで折れないことで関節を押さえるのに足る強度を持っていることを確認している。
【0040】
固定力については、実施例および比較例の各ステーを手関節に固定し、制動角度(手関節を曲げたとき、ステーにより手が抵抗を感じるまでの角度)を測定した結果、5度以上下がらないことを確認している。比較例では制動角度が5度以上下がっており、フィット感が悪く感じられるという結果が出ている。
【0041】
樹脂漏れについては、ステーに熱をかけて被覆材11の表面に樹脂漏れが起きないことを確認している。
【0042】
さらに、本発明者らは、本実施形態に係る医療用固定材10を用いた手部被覆装具を製作し、着用評価を行った。被験者数名に、本実施形態に係る手部被覆装具を着用してもらい、評価を求めた。その結果、「指が動かしやすい」、「ジャマにならない」、「手にフィットする」という回答が得られた。これにより、本実施形態に係る手部被覆装具は、簡便に装着でき、装着を継続できる快適性を有することが確認できた。
【0043】
(10.実施例と比較例との比較)
図9は、本発明の実施例と比較例との対比を示す表である。
図9を用いて、本発明の実施例と比較例との対比について説明する。
【0044】
図9に示すように、医療用固定材の「芯材の層数(厚み)」、「外縁部の端部保護部の幅」および「被覆材の厚み」を変化させて、実施例(1)から(4)と比較例(1)から(4)との装着時の快適性を比較した。なお、
図9中のすべての実施例および比較例(1)から(3)において、被覆材に撥水(撥樹脂)処理が施されている。比較例(4)は被覆材に撥水(撥樹脂)処理が施されていない。
図9中の快適性の欄は、「○」が快適であることを示し、「×」が快適ではないことを示している。
【0045】
ここで、
図9の右端の欄の「比」とは、芯材の厚みに対する被覆材の厚みの比率、すなわち、(被覆材の厚み)/(芯材の厚み)の値を表している。
【0046】
図9に示す結果より、比較例(1)のように、芯材の厚みが薄い場合(1mm)は、医療用固定材を装着した時に固定力が不足するため快適さを得ることができない。また、比較例(2)のように、端部保護部の幅が長い場合(10mm)は、医療用固定材を装着した時に患部にフィットした状態で固定に関係ない不織布が多くなるため快適さを得ることができない。また、比較例(3)のように、被覆材の厚みが厚い場合(6mm)は、医療用固定材が患部の形にフィットしにくくなるため装着した時に快適さを得ることができない。また、比較例(4)のように、被覆材に撥水(撥樹脂)処理が施されていない場合は、医療用固定材を装着した時に被覆材より芯材の樹脂が漏れるため快適さを得ることができない。
【0047】
これに対し、
図9に示す結果より、実施例(1)から(4)のように、芯材の厚みが2mm~6mmで、端部保護部の幅が2mm~5mmで、被覆材の厚みが0.45mm~1.5mmの範囲の場合は、医療用固定材を快適に装着できることがわかった。
【0048】
また、
図9に示す結果より、芯材の厚みに対する被覆材の厚みの比率については、1/20以上1/4以下の場合に、医療用固定材を快適に装着できることがわかった。芯材の厚みに対する被覆材の厚みの比率が1/4より大きい場合、ステーの強度不足が発生するため医療用固定材を装着した時に固定力が不足して固定が困難となるためである。また、全体の厚みが厚くなって医療用固定材が患部の形にフィットしにくくなるので、快適に装着する事が困難になるためである。芯材の厚みに対する被覆材の厚みの比率が1/20より小さい場合、芯材が厚くなるため医療用固定材を装着した時に患部の形にしにくくなり医療用固定材を装着した時に快適さを得ることができなくなるためである。また、被覆材が薄くなって被覆材が破れ易くなり、破れることで樹脂が漏れやすくなるため、快適さを得ること困難になるためである。
【0049】
本発明に係る医療用固定材は、硬化性樹脂を基布(基材)に含浸させ、クッション等の被覆材で挟んだステー等の芯材を備えるものであればよく、骨折箇所等を固定するために用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 医療用固定材(水硬化性ステー)
11 被覆部
12 芯材
13 端部保護部
14 接合部
15、45 切り込み
21 ガラス繊維
51 手首
61 包帯(キャスト材)