(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】浄水処理システムおよび浄水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20241125BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20241125BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241125BHJP
E03B 3/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C02F1/72 101
C02F1/78
C02F1/72 Z
C02F1/32
E03B3/04
(21)【出願番号】P 2024032249
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 用水と廃水第65巻第11号(令和5年)第6ページに発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512025252
【氏名又は名称】海賀 信好
(74)【代理人】
【識別番号】100181940
【氏名又は名称】緒方 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】海賀信好
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-202466(JP,A)
【文献】特開平07-047374(JP,A)
【文献】特開平06-285480(JP,A)
【文献】特開平08-168783(JP,A)
【文献】特開平10-034171(JP,A)
【文献】特開2001-225066(JP,A)
【文献】特開平08-192175(JP,A)
【文献】特開2000-288559(JP,A)
【文献】特開2006-281000(JP,A)
【文献】特開平11-090462(JP,A)
【文献】特開2003-236566(JP,A)
【文献】特開平09-225482(JP,A)
【文献】特開昭62-234591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0411287(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0053841(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0290045(US,A1)
【文献】米国特許第4792407(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/72
C02F 1/78
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水処理システムであって、
フルボ酸を含む被処理水に過酸化水素を添加する過酸化水素添加部と、
前記過酸化水素添加部からの前記被処理水に320nmの波長の光を照射する光照射部と、
前記光照射部
によって前記フルボ酸が所定以上分解された後の被処理水をオゾン処理するオゾン処理部と、
を有する浄水処理システム。
【請求項2】
浄水処理方法であって、
フルボ酸を含む被処理水に過酸化水素を添加する第1の工程と、
前記第1の工程を経た前記被処理水に320nmの波長の光を照射する第2の工程と、
前記第2の工程を経
て前記フルボ酸が所定以上分解された後の被処理水をオゾン処理する第3の工程と、
を有する浄水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルボ酸などの腐植物質を含む水を分解処理し、浄化する浄水処理システムおよび浄水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の浄水処理において、オゾンやOHラジカルなどの強力な酸化作用によって被処理水中の対象物を一括して酸化分解する方式が主流となっている。これらの浄水処理技術として、以下の先行技術が挙げられる。
【0003】
まず、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記紫外線照射量制御手段は過酸化水素濃度が高くなると前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御することを特徴とする水処理装置が挙げられる(特許文献1)。
【0004】
次に、被処理水が被処理水入り口流路から流入する水処理槽と、オゾン化ガスを供給するオゾン化ガス発生装置と、タンク内を加圧した状態で前記被処理水の一部と、前記オゾン化ガスとを接触させることにより前記オゾン化ガスを前記被処理水の一部中に溶解させ、これによりオゾン溶解水を生成するオゾン溶解水タンクと、前記水処理槽内に設置され、前記被処理水の流れに沿って長手方向に延びる紫外線放射面を有する紫外線発生装置と、前記オゾン溶解水タンクからのオゾン溶解水を前記紫外線発生装置の紫外線放射面へ向ってかつ被処理水に対して直角方向または傾斜して噴射するオゾン溶解水注入装置とを備えたことを特徴とする紫外線併用オゾン促進酸化水処理装置が挙げられる(特許文献2)。
【0005】
これらの特許文献に記載の先行技術は、水処理において、オゾンによる分解や、紫外線、過酸化水素による促進酸化技術(Advanced Oxidation Process(AOP))によるものである。
【0006】
これらの技術は、オゾンやOHラジカルの強い酸化力を利用する技術であり、今日、浄水処理技術として広く用いられている技術である。
【0007】
しかしながら、当該技術では、フルボ酸などの腐植物質を含む水を効果的に分解処理できない。オゾンやOHラジカルは、多くの物質に対して強い酸化分解能を有するが、腐植物質が被処理水に含まれる場合、酸化分解反応は部分的な進行にとどまり、多量の副生成物を発生させてしまい、処理効率が悪い。
【0008】
すなわち、浄水処理において、上記の問題を解決できる効果的な浄水処理システムが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-326284号公報
【文献】特開2004-97992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、腐植物質を含む水を効果的に処理する浄水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、浄水処理システムであって、フルボ酸を含む被処理水に過酸化水素を添加する過酸化水素添加部と、前記過酸化水素添加部からの前記被処理水に320nmの波長の光を照射する光照射部と、前記光照射部によって前記フルボ酸が所定以上分解された後の被処理水をオゾン処理するオゾン処理部と、を有する浄水処理システムである。また、第2の発明は、浄水処理方法であって、フルボ酸を含む被処理水に過酸化水素を添加する第1の工程と、前記第1の工程を経た前記被処理水に320nmの波長の光を照射する第2の工程と、前記第2の工程を経て前記フルボ酸が所定以上分解された後の被処理水をオゾン処理する第3の工程と、を有する浄水処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、過酸化水素添加と320nm付近の波長の光の照射により、フルボ酸などの腐植物質を効果的に分解することが期待できる。また、まず当該方法による腐植物質が処理され、その後のオゾン処理による有害物質の処理と併せ、被処理水の効果的な分解が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の浄水処理システムにおける分解処理部の例である。
【
図3】320nmによる繰り返し光照射におけるフルボ酸の蛍光スペクトル強度の測定結果である。
【
図4】過酸化水素水添加と所定の波長の光照射におけるフルボ酸の蛍光スペクトル強度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明において、処理対象とされる水(被処理水)は、河川からの取水であり、浄水場における浄水処理前の水である。
【0016】
本発明の技術要素を含む浄水処理システム1の全体構成の一例について説明する。
図1は、浄水処理システム1の構成の大まかなイメージ図である。実際の浄水処理システムの技術構成は様々であり、以下に示される構成に限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る光照射およびオゾン処理は、特許文献に示される技術やその他の既存技術に基づくものでもよい。例えば、光照射に関しては、TrojanUVシリーズ(Trojan Technologies Inc)の紫外線照射装が所望の波長の紫外線照射のために用いられてもよく、オゾン処理に関しては、TGOGSシリーズ(東芝インフラシステムズ株式会社)のオゾン発生装置が所望のオゾン濃度によるオゾン処理のために用いられてもよい。システムに係るポンプや電源、その他の一般的な技術については説明を省略する。
【0018】
まず、被処理水は、沈殿部10に取り入れられる。沈殿部10において、被処理水中の泥などの濁質が沈められ、取り除かれる。沈殿部10は、被処理水中の濁質が自然に沈殿するものでもよいし、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤によって、微粒子を大きな粒子(フロック)にするものでもよく、限定されるものではない。
【0019】
次に、被処理水は、ろ過部20に送られる。ろ過部20において、被処理水中の微粒子など、沈殿部10で取り除かれなかったものが、砂利や砂などによるろ過層によって取り除かれる。
【0020】
次に、被処理水は、分解処理部30に送られる。ここで、
図2は、浄水処理システム1における分解処理部30の例である。
図2が示すように、分解処理部30は、過酸化水素添加部31、光照射部32、オゾン処理部33を有する。ここで、
図2では、過酸化水素添加部31、光照射部32、オゾン処理部33の順序で示されているが、これは便宜的に表示されたものであって、本発明において、過酸化水素添加と光照射の処理順序は同時または逆転していてもよい。
【0021】
被処理水中の対象物は、分解処理部30において次のように分解処理される。まず、被処理水は、過酸化水素添加部31において過酸化水素が添加される。また、過酸化水素添加部31は、厳密には浄水処理システム1の独立的な構成要素である必要はなく、単に、過酸化水素が添加される箇所であってもよいし、光照射部32などがこれを兼ねるものでもよい。添加方法についても限定されるものではなく、所定の容器中の過酸化水素が自動注入されるものであってもよいし、手動で注入されてもよい。
【0022】
次に、被処理水は、光照射部32において約320nmの波長の光が照射される。ここで照射される光は、主にフルボ酸などの有機物の複合体を分解するためのものであり、水処理において一般的に用いられる光の波長よりも長波長である。光を照射する装置は、上述の通り限定されるものではなく、所望の波長の光を実現できるものであればどのような方式、形態のものが用いられても良い。
【0023】
本発明において、光照射部32において照射される光の波長は、厳密に320nmの波長である必要はなく、320nm前後付近の波長も含み得るものである。ここで、本発明における光の波長は、従来的な処理における波長(例えば、波長範囲235~250nm)の光が用いられた場合のようにOHラジカルなどによる腐植物質の急激な部分的分解を起こさない波長であるべきである。このように、照射される光の波長は、添加された過酸化水素とともに、OHラジカルの発生を伴わない範囲の波長であるべきであり、言い換えると、過酸化水素に吸収されず(OHラジカルを発生させず)、光照射単独では腐植物質の分解に寄与しない波長、と定義できる。
【0024】
次に、被処理水は、オゾン処理部33においてオゾン分解処理される。オゾン濃度としては、10~20mg/Lが一般的である。ただし、オゾン濃度は、これに限定されるものではない。また、オゾン発生のための装置は、上述の通り限定されるものではなく、所望の濃度を実現できるものであればどのような方式、形態のものが用いられても良い。
【0025】
オゾン処理部33は、光照射部32における分解処理後の残存物を処理するパートである。そのため、光照射部32における分解処理とは異なり、OHラジカルの発生を伴った強力な分解処理が行われるものでよい。例えば、過酸化水素添加部31において添加された過酸化水素に吸収される波長の光の照射を伴う処理がなされてもよい。
【0026】
次に、被処理水は、活性炭処理部40に送られる。活性炭処理部40において、被処理水中の分解物や未分解物は、活性炭の吸着作用や活性炭中の微生物の分解作用によって処理される。活性炭処理部40として、例えば、微生物が担持された活性炭が充填された池が挙げられる。
【0027】
次に、被処理水は、ろ過部50に送られる。ろ過部50において、被処理水はろ過される。ろ過部50のろ過層は、限定されるものではなく、ろ過部20のように砂のろ過層であってもよい。ろ過後、被処理水は、必要に応じて塩素が注入されるなどの処理が行われ各所に供給される。
【0028】
次に、過酸化水素添加部31と光照射部32に関する効果検証試験について説明する。効果検証試験は、被処理水の浄化機能(被処理水中の対象物の分解機能)の効果を検証すべく、主に実験室レベルで実施された。
【0029】
被処理水、処理対象物、過酸化水素添加部31から添加される過酸化水素、光照射部32から照射される光の波長は、以下のものが用いられた。
・被処理水(試料):某地区の河川水を水源とする浄水場の水(浄水処理前の水を0.45μmフィルターでろ過後の水)
・機器分析における測定対象:フルボ酸
・添加物:過酸化水素水(濃度30%)
・光照射:波長320nm(UV強度3mW/cm2)
【0030】
本試験では、蛍光分光分析装置(島津RF-5300)により、光照射され、フルボ酸の蛍光スペクトルが測定された。蛍光分光分析装置は、光照射部32における光照射による分解処理と同時に当該分解処理後の被処理水の測定を兼ねるものである。すなわち、以下に示される条件は、320nmの波長による、被処理水の分解用であると同時にフルボ酸の測定用となるものである。
【0031】
機器分析における測定は、励起状態のフルボ酸が基底状態に戻る際に放出される蛍光波長380~550nmの蛍光スペクトルで行われた(UV強度は3mW/cm2、照射時間は88秒/回、20℃)。厚さ1cmの4面石英セル(入光部分の面積は2.4×8mm)にて、試料3.6mLに過酸化水素水がスポイトで3適(1滴当たり0.004mL)添加された後、蛍光分光分析装置で走査された。試料は、都度、調整され、試験に供された。フルボ酸の蛍光スペクトルは、ピーク波長430nmにおいて確認された。
【0032】
<結果1>
図3は、被処理水に波長320nmの光が繰り返し照射された場合のフルボ酸の蛍光スペクトルの強度の測定結果である。
図3は、光照射の度にフルボ酸の蛍光スペクトルの強度が低下することを示している。低下幅は、1回の光照射につき、約3%であった。
【0033】
<結果2>
図4は、被処理水に過酸化水素水が加えられ、所定の波長の光照射が照射された場合のフルボ酸の蛍光スペクトル強度の測定結果である。図中、一番上の蛍光スペクトルは320nmの光照射がなされたものである(測定1)。その一つ下の蛍光スペクトルは、測定1の後に過酸化水素水が添加され、被処理水に320nmの光照射がなされたものである(測定2)。さらにその一つ下の蛍光スペクトルは、測定2の後に320nmの光照射が再度なされたものである(測定3)。さらにその一つ下の蛍光スペクトルは、測定3の後に254nmの光照射が数回なされたものである(測定4)(ただし、当該蛍光スペクトルは、254nmの光照射後に320nmの波長で測定された結果である)。
【0034】
結果2からは、フルボ酸の蛍光スペクトルの強度の低下幅は、結果1に比べて大きいことが確認された。すなわち、過酸化水素の存在下における320nmの光照射がフルボ酸の蛍光スペクトルの強度を大きく低下させることが確認された。また、254nmの光照射によるフルボ酸の蛍光スペクトルの強度の低下は、320nmの光照射に比べて大きくないことが確認された。図は省略するが、このことは追加試験によっても確認されている。
【0035】
実施例1の結果から導かれる発明について実施例2とする。
【実施例2】
【0036】
フルボ酸の蛍光スペクトルの強度は、320nmの波長の光照射のみでは大きく低下せず(結果1)、過酸化水素水共存下において大きく低下した(結果2の測定2)。すなわち、過酸化水素の存在下において320nm付近の波長の光の照射によって、腐植物質を分解する効果が大きくなることが示唆された。
【0037】
このように、これまで分解能が小さいと考えられていた320nmの波長の光は、過酸化水の存在下において腐植物質の分解に効果が大きいことが示唆された。ここで、被処理水に過酸化水素水が添加されただけでは、フルボ酸の蛍光スペクトルの強度の低下は認められていない(図省略)。すなわち、腐植物質の分解のためには、過酸化水素の存在に加えて320nmの光照射がなされる必要があり、これにより相乗的な分解効果が得られることが示唆された。
【0038】
また、過酸化水素は、光の吸収が大きくなるのは波長290nm以下であり、波長320nmは主な吸収帯でないことから、波長320nmの光照射によっては、OHラジカルはほとんど生成されないことが示唆される。すなわち、本発明における腐植物質の分解処理が、OHラジカルの酸化分解力に頼った促進酸化処理とは異なり、フルボ酸が選択的に分解されるメカニズムで起こっていることが示唆される。
【0039】
この点について、発明者は、次のように考察している。すなわち、従来的な手法である254nmなどの短波長の光やオゾンが腐植物質の分解に用いられると、光照射部分やその付近で発生したOHラジカルなどによって、部分的に強力な分解反応が起こる。この強力な分解反応は、腐植物質から多量の副生成物を生じさせ、腐植物質の内部まで反応が進行しない。
【0040】
これに対し、320nmの長波長の光が有するエネルギーは、単独では腐植物質の分解効果はほとんどないが、腐植物質に吸収され、腐植物質を不安定な状態(反応し易い状態)にする。そして、この状態において過酸化水素が共存することが、腐植物質の効果的な分解につながる。
【0041】
従来のオゾン処理の場合、腐植物質を含む水の処理には多量のオゾンを要し、効率が悪いものであった。これは、腐植物質との反応に多量のオゾン分子が消費されるからである。これに対し、過酸化水素共存下における320nmの波長の光照射による処理が前もって行われることで、多量のオゾン分子に依存する必要のない処理が可能になる。
【0042】
また、被処理水中の腐植物質の処理が十分に行われたかどうかの指標として、フルボ酸の存在量を指標とすることが有効である。フルボ酸の存在量が所定値まで減少したことを根拠に、オゾン分解処理へと移行させる運用により、被処理水について所定の処理品質を保つことができる。
【0043】
以上を踏まえ、以下のシステムが浄水処理に有効である。すなわち、被処理水に過酸化水素を添加する過酸化水素添加部31と、前記被処理水に320nm付近の波長の光を照射する光照射部32と、光照射部32からの被処理水をオゾン処理するオゾン処理部33と、を有する浄水処理システム1である。
【0044】
浄水処理システム1では、まず、被処理水に含まれる腐植物質が、過酸化水素と320nmの波長の光の照射によって分解処理される。次に、被処理水に含まれる残存物質が、オゾンによって分解処理される。この2段構成により、被処理水中の腐植物質を優先的に処理し、被処理水中に含まれる物質を効果的に分解することが可能になる。
【0045】
また、前段の光照射後の残存物は、後段のオゾン処理で分解される。前段の光照射に係る320nmの波長は、過酸化水素からOHラジカルなどの強力な酸化力による分解反応を引き起こすものではない。そのため、前段で分解されなかった物質に対してはオゾンなどの強力な酸化による分解が行われることで、腐植物質以外の様々な物質に対する分解が実現可能になる。
【0046】
オゾン処理部33では、254nmなどの短波長の光照射が行われてもよい。これにより、OHラジカルの発生が促され、被処理水中に含まれる有害成分の分解がより効率化する。また、過酸化水素の添加が再度行わる構成になっていてもよい。本発明は、オゾン処理に、短波長の光照射などが併用されることを否定するものではない。
【0047】
ただし、後段における処理は、前段における腐植物質の分解が所定以上行われた後であることが望ましい。腐植物質に対して、後段で強力な酸化分解が行われると、副生成物が多量に発生することになるからである。
【0048】
フルボ酸の蛍光スペクトルの測定による繰り返し試験の検証に基づくと、フルボ酸が90%以上分解されていることが、後段における処理に移行される指標の一つとなる。例えば、前段の処理において、フルボ酸の測定が行われ、蛍光スペクトル強度が所定値以下になることを基準にして、後段の処理が行われてもよい。すなわち、前段の処理が所定時間行われた後に、フルボ酸の測定が行われ、後段の処理に移行するか判断される構成、方法が採用されてもよい。
【0049】
具体的には、被処理水に過酸化水素を添加する過酸化水素添加部31と、前記被処理水に320nmの波長の光を照射する光照射部32と、蛍光スペクトルの強度などフルボ酸の存在量を指標とする測定部と、光照射部32からの被処理水をオゾン処理するオゾン処理部33と、を有する浄水処理システム1が挙げられる。
【0050】
また、被処理水に過酸化水素を添加する第1の工程と、前記被処理水に320nmの波長の光を照射する第2の工程と、前記第1の工程および前記第2の工程による被処理水の分解処理効果について、フルボ酸を指標として蛍光スペクトル強度などを測定し、前記測定値が所定値以下になった場合に、前記被処理水を次工程に移す第3の工程と、前記第3の工程を経た被処理水をオゾン処理する第4の工程と、を有する浄水処理方法が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、浄水場の浄水処理に利用可能である。また、生活排水や工場排水を含む環境負荷の大きい汚染水の浄水処理にも利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 浄水処理システム
31 過酸化水素添加部
32 光照射部
33 オゾン処理部
【要約】
【課題】 効果的な浄水処理システムを提供すること。
【解決手段】 被処理水に過酸化水素を添加する過酸化水素添加部31と、320nmの波長を有する光を照射する光照射部32と、オゾン処理するオゾン処理部33と、を有する浄水処理システム1によって、被処理水中の腐植物質を光照射部32における光照射によって分解し、残存物質をオゾン処理部33のオゾン処理によって分解する。
【選択図】
図2