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特許7592238洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20241125BHJP
   E03D 1/24 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
E03D1/34
E03D1/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020144896
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039734
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大知
(72)【発明者】
【氏名】高野 仁嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】末永 光宏
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102508(JP,A)
【文献】特開2015-151758(JP,A)
【文献】特開2019-027584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00,
11/00-13/00
F16L 21/00-24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を水洗大便器の便器本体に供給する洗浄水タンク装置であって、
上記便器本体を洗浄する洗浄水を貯水可能にする貯水タンク本体と、
上記貯水タンク本体から上記便器本体に供給する洗浄水量を大又は小のいずれかに設定可能にする大小洗浄切替装置と、
便器洗浄を開始する際に、上記大小洗浄切替装置を操作し、便器の洗浄モードを大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードに切替操作可能にする操作部と、を有し、
上記貯水タンク本体は、その底部に設けられて上記貯水タンク本体内の洗浄水を上記便器本体側に排出可能にする排出口と、この排口を含む第1貯水部と、上記排口を含まない第2貯水部と、上記第1貯水部と上記第2貯水部とを区画する区画壁と、を備えており、
上記大小洗浄切替装置は、上記区画壁を貫くように形成され且つ上記貯水タンク本体の上記第1貯水部と上記第2貯水部とを連通可能にする切替開口部と、この切替開口部に対して開閉可能に設けられた大小洗浄切替弁と、を備えており、
上記区画壁は、上記切替開口部又はその近傍に上記大小洗浄切替弁を回動可能に支持する切替弁支持部を備えており、
上記大小洗浄切替弁は、上記切替弁支持部により回動可能に支持される回動軸部と、この回動軸部に設けられて上記切替開口部を開閉可能にする弁体本体部と、上記回動軸部を中心に上記弁体本体部に対して対向する側又は並行する側に設けられた弁体補助部と、を備えており、
上記弁体本体部及び上記弁体補助部の少なくとも一方には、上記操作部が大洗浄モードに切替操作された場合に上記弁体本体部を開弁状態に維持するように調整する弁体調整部が設けられており、
上記弁体本体部及び上記弁体補助部は、上記操作部が小洗浄モードに切替操作された場合には、上記貯水タンク本体の上記第1貯水部及び上記第2貯水部のそれぞれに貯水されている洗浄水の水量差又は水圧差により閉弁状態が維持されるように構成されており、
上記切替弁支持部は、上記切替開口部の上部近傍に設けられており、上記弁体本体部は、開弁時において、その下端部が上記切替開口部の底面付近から上記回動軸部を中心に上方位置に向かって回動可能に設けられていることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記大小洗浄切替弁の弁体調整部は、上記回動軸部を中心に上記弁体本体部に対して対向する側に設けられており、上記弁体補助部に設けられた錘部材を備えている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記錘部材は板状であり、上記弁体補助部は、上記錘部材が着脱可能に取り付けられる錘取付部を備えており、
上記錘取付部は、上記弁体補助部の先端側に設けられた錘取付面と、この錘取付面に設けられて上記錘部材を上記弁体補助部の長手方向に摺動可能に側方から保持する保持部と、を備えており、
上記保持部は、上記錘取付面の先端側に設けられ且つ上記錘部材が着脱される際に上記錘取付面に対して面外方向に弾性変形可能なフック部を備えており、
上記フック部における上記錘取付面とは反対側の面には、上記フック部の基端部と先端部との間の厚みを部分的に低減させるように凹状の曲がり面が形成されている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
上記フック部の基端部は、平面視において、上記フック部の基端部に隣接する上記錘取付面に対して少なくとも2つの曲率半径の曲がり面で接続されており、上記曲がり面は、上記フック部の基端部側に形成される第1曲率半径の第1曲がり面と、この第1曲がり面より上記フック部の基端部に隣接する上記錘取付面側に形成される第2曲率半径の第2曲がり面と、を備えており、上記第1曲率半径は、上記第2曲率半径よりも大きく設定されている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記大小洗浄切替弁の回動軸部は、上記貯水タンク本体の第2貯水部内において水平方向に延びるように設けられていると共に、上記切替開口部の中心軸線方向から見て上記切替開口部よりも上記貯水タンク本体の第1貯水部側に設けられており、
上記弁体本体部は、上記回動軸部の軸方向に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部と、この突出部の突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部と、を備えており、上記弁体本体部は、開弁状態において上記突出部から上記先端部に向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心が位置決めされている請求項1乃至の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
上記大小洗浄切替装置は、さらに、上記大小洗浄切替弁の弁体補助部に対して揺動可能に連結される揺動部材と、この揺動部材と上記操作部とを連結し且つ上記操作部により引き上げ操作可能な鎖状又は線状の連結部材と、を備えており、
上記揺動部材は、便器の小洗浄モードが開始される際に、上記連結部材が上記操作部により引き上げ操作されると、上記弁体本体部が開弁状態である初期位置から上記連結部材と共に引き上げられ、上記弁体本体部が閉弁する方向に上記弁体補助部と連結した状態で揺動可能であり、
その後、上記揺動部材は、上記連結部材が引き上げられた状態から解放されると、上記弁体補助部との連結を解除し、上記弁体本体部の閉弁状態が維持された状態で上記初期位置まで揺動可能に構成されている請求項1乃至の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項7】
洗浄水を水洗大便器の便器本体に供給する洗浄水タンク装置であって、
上記便器本体を洗浄する洗浄水を貯水可能にする貯水タンク本体と、
上記貯水タンク本体から上記便器本体に供給する洗浄水量を大又は小のいずれかに設定可能にする大小洗浄切替装置と、
便器洗浄を開始する際に、上記大小洗浄切替装置を操作し、便器の洗浄モードを大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードに切替操作可能にする操作部と、を有し、
上記貯水タンク本体は、その底部に設けられて上記貯水タンク本体内の洗浄水を上記便器本体側に排出可能にする排出口と、この排口を含む第1貯水部と、上記排口を含まない第2貯水部と、上記第1貯水部と上記第2貯水部とを区画する区画壁と、を備えており、
上記大小洗浄切替装置は、上記区画壁を貫くように形成され且つ上記貯水タンク本体の上記第1貯水部と上記第2貯水部とを連通可能にする切替開口部と、この切替開口部に対して開閉可能に設けられた大小洗浄切替弁と、を備えており、
上記区画壁は、上記切替開口部又はその近傍に上記大小洗浄切替弁を回動可能に支持する切替弁支持部を備えており、
上記大小洗浄切替弁は、上記切替弁支持部により回動可能に支持される回動軸部と、この回動軸部に設けられて上記切替開口部を開閉可能にする弁体本体部と、上記回動軸部を中心に上記弁体本体部に対して対向する側又は並行する側に設けられた弁体補助部と、を備えており、
上記弁体本体部及び上記弁体補助部の少なくとも一方には、上記操作部が大洗浄モードに切替操作された場合に上記弁体本体部を開弁状態に維持するように調整する弁体調整部が設けられており、
上記弁体本体部及び上記弁体補助部は、上記操作部が小洗浄モードに切替操作された場合には、上記貯水タンク本体の上記第1貯水部及び上記第2貯水部のそれぞれに貯水されている洗浄水の水量差又は水圧差により閉弁状態が維持されるように構成されており、
上記大小洗浄切替弁の回動軸部は、上記貯水タンク本体の第2貯水部内において水平方向に延びるように設けられていると共に、上記切替開口部の中心軸線方向から見て上記切替開口部よりも上記貯水タンク本体の第1貯水部側に設けられており、
上記弁体本体部は、上記回動軸部の軸方向に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部と、この突出部の突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部と、を備えており、上記弁体本体部は、開弁状態において上記突出部から上記先端部に向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心が位置決めされていることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項8】
上記請求項1乃至7の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器に係り、特に、洗浄水を水洗大便器の便器本体に供給する洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水を水洗大便器の便器本体に供給する洗浄水タンク装置として、例えば、特許文献1-3に記載されているものが知られている。
まず、特許文献1、2に記載されている従来の洗浄水タンク装置においては、貯水タンク本体内に小タンクが設けられていることにより、貯水タンク本体内に洗浄水が貯水される貯水領域について、小タンクの内外の2つの貯水領域に分割している。
また、小タンクの側壁には、大小洗浄切替用の開口部が設けられ、この開口部には、大小洗浄切替用の切替弁が開閉可能に設けられている。
これにより、便器の大洗浄を実行する際には、大小洗浄切替用の切替弁が開弁し、小タンクの内外の2つの貯水領域に貯水されている洗浄水が便器の大洗浄に使用されるようになっている。一方、便器の小洗浄を実行する際には、大小洗浄切替用の切替弁が閉弁し、2つの貯水領域のうちの一方の貯水領域(小タンクの外部)に貯水されている洗浄水のみが便器の小洗浄に使用されるようになっている。
また、特許文献1、2に記載されている従来の洗浄水タンク装置においては、大小洗浄切替用の切替弁の閉弁状態については、小タンクの内外の洗浄水の互いの水量差により、切替弁に対して閉弁する方向に水圧が作用し、切替弁の閉弁状態が維持されるようになっている。そして、小タンクの内外の洗浄水の互いの水量差がなくなると、切替弁が開弁状態になるようになっている。
つぎに、特許文献3に記載されている従来の洗浄水タンク装置においては、貯水タンクの底部の排水口に対して大洗浄用の排水弁と小洗浄用の排水弁のそれぞれが開閉可能に設けられている。これらの排水弁は、回動軸回りに上下方向に回動することにより、排水口を開閉すると共に、大洗浄と小洗浄が切替可能にする大小洗浄切替用の切替弁としても機能するようになっている。
また、このような排水弁(大小洗浄切替用の切替弁)の弁体に対して回動軸を中心に反対側には、制動板が設けられている。これにより、排水弁の弁体が重力より下降して閉弁する際に、制動板の上面に水圧が抵抗として作用するため、弁体の下降が抑制され、弁体の閉弁動作が遅延されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-151758号公報(特許第6361856号公報)
【文献】特開2015-31000号公報
【文献】特開平8-232319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載されている従来の洗浄水タンク装置における大小洗浄切替用の切替弁は開口部に対して水圧に逆らう方向に開弁し、上述した特許文献3に記載されている従来の洗浄水タンク装置における排水弁についても、排水口に対して水圧に逆らう方向に開弁するものである。このため、便器の大洗浄モードを実行している際に、弁体に作用する水圧によっては、弁体が十分に開弁しきれずに、閉弁状態となるおそれがあり、大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持することができないという問題がある。
したがって、便器の大洗浄モードを実行中において、貯水タンク本体における本来の大洗浄に使用されるべき洗浄水を十分に便器本体側に供給しきれずに、便器の洗浄不良を招くおそれがあるという問題がある。
よって、便器の大洗浄モードの場合に大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持し、便器の小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の閉弁状態を確実に維持することにより、便器の大小洗浄モードのそれぞれについていかに正確に実行するかが近年要請されている課題ともなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、便器の大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持することができると共に、便器の小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の閉弁状態を確実に維持することができ、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水を水洗大便器の便器本体に供給する洗浄水タンク装置であって、上記便器本体を洗浄する洗浄水を貯水可能にする貯水タンク本体と、上記貯水タンク本体から上記便器本体に供給する洗浄水量を大又は小のいずれかに設定可能にする大小洗浄切替装置と、便器洗浄を開始する際に、上記大小洗浄切替装置を操作し、便器の洗浄モードを大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードに切替操作可能にする操作部と、を有し、上記貯水タンク本体は、その底部に設けられて上記貯水タンク本体内の洗浄水を上記便器本体側に排出可能にする排出口と、この排水口を含む第1貯水部と、上記排水口を含まない第2貯水部と、上記第1貯水部と上記第2貯水部とを区画する区画壁と、を備えており、上記大小洗浄切替装置は、上記区画壁を貫くように形成され且つ上記貯水タンク本体の上記第1貯水部と上記第2貯水部とを連通可能にする切替開口部と、この切替開口部に対して開閉可能に設けられた大小洗浄切替弁と、を備えており、上記区画壁は、上記切替開口部又はその近傍に上記大小洗浄切替弁を回動可能に支持する切替弁支持部を備えており、上記大小洗浄切替弁は、上記切替弁支持部により回動可能に支持される回動軸部と、この回動軸部に設けられて上記切替開口部を開閉可能にする弁体本体部と、上記回動軸部を中心に上記弁体本体部に対して対向する側又は並行する側に設けられた弁体補助部と、を備えており、上記弁体本体部及び上記弁体補助部の少なくとも一方には、上記操作部が大洗浄モードに切替操作された場合に上記弁体本体部を開弁状態に維持するように調整する弁体調整部が設けられており、上記弁体本体部及び上記非弁体本体部は、上記操作部が小洗浄モードに切替操作された場合には、上記貯水タンク本体の上記第1貯水部及び上記第2貯水部のそれぞれに貯水されている洗浄水の水量差又は水圧差により閉弁状態が維持されるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、便器の洗浄を開始する際に、例えば、操作部が大洗浄モードに切替操作されると、大小洗浄切替装置における大小洗浄切替弁の弁体本体部が開弁し、貯水タンク本体の第1貯水部と第2貯水部とを区画する区画壁の切替開口部が開放される。
このとき、大小洗浄切替弁の弁体本体部及び弁体補助部の少なくとも一方に設けられた弁体調整部により、大小洗浄切替弁全体の重心位置について、大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整することができる。
これにより、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、貯水タンク本体から便器本体に供給される洗浄水量が不足し、大洗浄時の便器洗浄性能が低下してしまうことを抑制することができる。
一方、便器の洗浄を開始する際に、例えば、操作部が小洗浄モードに切替操作されると、大小洗浄切替弁の弁体本体部及び弁体補助部が、貯水タンク本体の第1貯水部及び第2貯水部のそれぞれに貯水されている洗浄水の水量差又は水圧差により閉弁状態が維持される。
したがって、便器の小洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って開弁した状態となり、貯水タンク本体の第2貯水部に貯水されている洗浄水が切替開口部から第1貯水部に排出され、便器の小洗浄モードを正確に実行することができないリスクを回避することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持することができると共に、便器の小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の閉弁状態を確実に維持することができるため、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記切替弁支持部は、上記切替開口部の上部近傍に設けられており、上記弁体本体部は、開弁時において、その下端部が上記切替開口部の底面付近から上記回動軸部を中心に上方位置に向かって回動可能に設けられている。
このように構成された本発明においては、近年の洗浄水タンク装置や水洗大便器のデザイン性の多様化等の観点から貯水タンク本体全体の小型化が要請されていると共に、貯水タンク本体における排出口が設けられていない第2貯水部においては、貯水されている洗浄水について可能な限り残水を減らすように使用することが望ましい。
また、仮に、切替弁支持部が切替開口部の下部等に設けられている場合には、弁体本体部が開弁した状態で貯水タンク本体の第2貯水部内の洗浄水が切替開口部から排出される際に、切替開口部の底面付近には、大小洗浄切替弁の回動軸部や弁体本体部の一部が残存する等、洗浄水の排出を妨げるものが存在するリスクが高まる。
これにより、貯水タンク本体の第2貯水部内の残水の発生要因となり、切替開口部の排出効率が低下するという問題がある。
これに対し、本発明においては、大小洗浄切替弁の回動軸部を回動可能に支持する切替弁支持部が切替開口部の上部近傍に設けられていると共に、大小洗浄切替弁の弁体本体部については、開弁時において、その下端部が切替開口部の底面付近から回動軸部を中心に上方位置に向かって回動可能に設けられているため、切替開口部の底面付近には、大小洗浄切替弁の回動軸部を設けるスペースが不要となる。
したがって、弁体本体部が開弁した状態において、貯水タンク本体の第2貯水部内の洗浄水が切替開口部から排出される際には、切替開口部の底面付近に洗浄水の排出を妨げるものが存在しなくなるため、貯水タンク本体の第2貯水部内の残水を低減させることができる。
さらに、開弁時の大小洗浄切替弁の弁体本体部において、その下端部が切替開口部の底面付近から回動軸部を中心に上方位置に向かって回動する際に、弁体本体部に対して閉弁方向に回動させるような重力や水圧が作用したとしても、弁体調整部が弁体本体部を開弁状態に維持するように調整することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、貯水タンク本体から便器本体に供給される洗浄水量が不足し、大洗浄時の便器洗浄性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記大小洗浄切替弁の弁体調整部は、上記回動軸部を中心に上記弁体本体部に対して対向する側に設けられており、上記弁体補助部に設けられた錘部材を備えている。
このように構成された本発明においては、錘部材が弁体調整部として大小洗浄切替弁の弁体補助部に設けられていることにより、大小洗浄切替弁全体の重心位置について、大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整することができる。
したがって、操作部が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材の重量により、大小洗浄切替弁の弁体本体部及び弁体補助部の双方が回動軸部を中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部を開弁状態に維持するように調整することができる。
よって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記錘部材は板状であり、上記弁体補助部は、上記錘部材が着脱可能に取り付けられる錘取付部を備えており、上記錘取付部は、上記弁体補助部の先端側に設けられた錘取付面と、この錘取付面に設けられて上記錘部材を上記弁体補助部の長手方向に摺動可能に側方から保持する保持部と、を備えており、上記保持部は、上記錘取付面の先端側に設けられ且つ上記錘部材が着脱される際に上記錘取付面に対して面外方向に弾性変形可能なフック部を備えており、上記フック部における上記錘取付面とは反対側の面には、上記フック部の基端部と先端部との間の厚みを部分的に低減させるように凹状の曲がり面が形成されている。
このように構成された本発明においては、弁体補助部の錘取付部において、板状の錘部材を弁体補助部の長手方向に摺動可能に側方から保持する保持部が、錘取付面の先端側に設けられ且つ錘部材が着脱される際に錘取付面に対して面外方向に弾性変形可能なフック部を備えており、フック部における錘取付面とは反対側の面には、フック部の基端部と先端部との間の厚みを部分的に低減させるように凹状の曲がり面が形成されているため、錘部材が着脱される際に、フック部の基端部に発生する応力を分散させることができる。
これにより、フック部の基端部における応力集中を回避することができるため、応力集中によるフック部の破損を防ぐことができ、錘部材を弁体補助部の錘取付部に対して確実に取り付けて保持することができる。
したがって、錘部材を弁体調整部として大小洗浄切替弁の弁体補助部に確実に設けることができるため、大小洗浄切替弁全体の重心位置について、大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整することができる。
よって、操作部が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材の重量により、大小洗浄切替弁の弁体本体部及び弁体補助部の双方が回動軸部を中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部を開弁状態に維持するように調整することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記フック部の基端部は、平面視において、上記フック部の基端部に隣接する上記錘取付面に対して少なくとも2つの曲率半径の曲がり面で接続されており、上記曲がり面は、上記フック部の基端部側に形成される第1曲率半径の第1曲がり面と、この第1曲がり面より上記フック部の基端部に隣接する上記錘取付面側に形成される第2曲率半径の第2曲がり面と、を備えており、上記第1曲率半径は、上記第2曲率半径よりも大きく設定されている。
このように構成された本発明においては、フック部の基端部が、平面視において、上記フック部の基端部に隣接する上記錘取付面に対して少なくとも2つの第1曲率半径の第1曲がり面及び第2曲率半径の第2曲がり面で接続されており、上記曲がり面は、上記フック部の基端部側に形成される第1曲がり面の第1曲率半径が、フック部の基端部に隣接する錘取付面側に形成される第2曲がり面の第2曲率半径よりも大きく設定されているため、錘部材が着脱される際に、或いは、錘部材が弁体補助部の錘取付部に取り付けられた状態において、フック部の基端部に発生する応力を分散させることができる。
これにより、フック部の基端部における応力集中を回避することができるため、応力集中によりフック部の破損を防ぐことができ、錘部材を弁体補助部の錘取付部に対して確実に取り付けて保持することができる。
したがって、錘部材を弁体調整部として大小洗浄切替弁の弁体補助部に確実に設けることができるため、大小洗浄切替弁全体の重心位置について、大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整することができる。
よって、操作部が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材の重量により、大小洗浄切替弁の弁体本体部及び弁体補助部の双方が回動軸部を中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部を開弁状態に維持するように調整することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記大小洗浄切替弁の回動軸部は、上記貯水タンク本体の第2貯水部内において水平方向に延びるように設けられていると共に、上記切替開口部の中心軸線方向から見て上記切替開口部よりも上記貯水タンク本体の第1貯水部側に設けられており、上記弁体本体部は、上記回動軸部の軸方向に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部と、この突出部の突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部と、を備えており、上記弁体本体部は、開弁状態において上記突出部から上記先端部に向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心が位置決めされている。
このように構成された本発明においては、大小洗浄切替弁の回動軸部について、貯水タンク本体の第2貯水部内において水平方向に延びるように設けることができると共に、切替開口部の中心軸線方向から見て切替開口部よりも貯水タンク本体の第1貯水部側に設けることができた。
また、弁体本体部おいては、回動軸部の軸方向に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部と、この突出部の突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部とにより、開弁状態の弁体本体部について、突出部から先端部に向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心を位置決めすることができた。
これらにより、大小洗浄切替弁全体の重心位置について、大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁の弁体本体部が誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記大小洗浄切替装置は、さらに、上記大小洗浄切替弁の弁体補助部に対して揺動可能に連結される揺動部材と、この揺動部材と上記操作部とを連結し且つ上記操作部により引き上げ操作可能な鎖状又は線状の連結部材と、を備えており、上記揺動部材は、便器の小洗浄モードが開始される際に、上記連結部材が上記操作部により引き上げ操作されると、上記弁体本体部が開弁状態である初期位置から上記連結部材と共に引き上げられ、上記弁体本体部が閉弁する方向に上記弁体補助部と連結した状態で揺動可能であり、その後、上記揺動部材は、上記連結部材が引き上げられた状態から解放されると、上記弁体補助部との連結を解除し、上記弁体本体部の閉弁状態が維持された状態で上記初期位置まで揺動可能に構成されている。
このように構成された本発明においては、便器の小洗浄モードが開始される際に、鎖状又は線状の連結部材が操作部により引き上げ操作されると、揺動部材は、弁体本体部が開弁状態である初期位置から連結部材と共に引き上げられ、弁体本体部が閉弁する方向に弁体補助部と連結した状態で揺動し、弁体本体部が閉弁状態となる。その後、連結部材が引き上げられた状態から解放されると、揺動部材は、弁体補助部との連結を解除し、弁体本体部の閉弁状態が維持された状態で初期位置まで揺動することができる。
すなわち、鎖状又は線状の連結部材が引き上げられた状態から解放され、引き下げられると、弁体補助部との連結が解除された状態の揺動部材のみが、弁体本体部や弁体補助部とは独立に初期位置まで揺動することができる。
また、貯水タンク本体に対して小型化や節水化をするために、大小洗浄切替弁全体の重心位置について大洗浄モードの弁体本体部が開弁状態に維持されるように調整すると、例えば、便器の小洗浄モードの実行中において、貯水タンク本体の第1貯水部と第2貯水部の水位差が小さくなった場合に、鎖状又は線状の連結部材の引き下がる動きによって閉弁状態の弁体本体部が開弁してしまうリスクがある。
そこで、本発明では、弁体本体部や弁体補助部とは独立に揺動可能な揺動部材のみに対して鎖状又は線状の連結部材を連結させることにより、便器の小洗浄モード実行中に貯水タンク本体の第1貯水部と第2貯水部の水位差が小さい状態でも、鎖状又は線状の連結部材が引き下げられる動きが、閉弁状態が維持された弁体本体部や弁体補助部に干渉することを抑制することができる。
これにより、便器の小洗浄モードの実行中において、鎖状又は線状の連結部材の引き下がる動きが、閉弁状態の弁体本体部を開弁させてしまうリスクを回避することができ、弁体本体部の閉弁状態を維持することができる。
したがって、便器の小洗浄モードの実行中において、閉弁状態が維持された弁体本体部や弁体補助部が誤って開弁する方向に回動し、閉弁状態の弁体本体部が開弁状態に切り替わってしまう誤動作を抑制することができるため、便器の小洗浄モードを正確に実行することができる。
【0013】
つぎに、本発明は、上記洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器である。
このように構成された本発明においては、便器の大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持することができる共に、便器の小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の閉弁状態を確実に維持することができる。
したがって、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器によれば、便器の大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の開弁状態を確実に維持することができると共に、便器の小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁の閉弁状態を確実に維持することができ、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の側面図であり、図1に示す水洗大便器のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示す貯水タンク本体及び小タンクの概略正面断面図。
図5】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体の内部構造を示す平面図である。
図6A】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体におけるジェットノズル収容部の部分を拡大した部分拡大正面断面図であり、流路切替弁がスロート管の吸引口側の流路に設定されている状態を示す。
図6B】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体におけるジェットノズル収容部の部分を拡大した部分拡大正面断面図であり、流路切替弁がスロート管の吸引口側以外の貯水タンク本体側の流路に設定されている状態を示す。
図7】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体及び小タンクの部分を拡大した部分正面断面図である。
図8】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の小タンクについて前方右斜め上方から見た斜視図である。
図9図4のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図8に示す本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図11A】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大図であり、便器洗浄操作を開始する前の待機状態及び便器の大洗浄操作を開始した状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体の開弁状態を示す。
図11B】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大図であり、便器の小洗浄操作を開始した状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体の閉弁状態を示す。
図11C】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大図であり、便器の小洗浄中における大小洗浄切替弁装置の切替弁体の閉弁状態を示す。
図11D】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大図であり、便器の小洗浄が終了し、給水弁装置から貯水タンク本体内への給水中に閉弁状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体が開弁した状態を示す。
図12】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置において切替弁体の弁体補助部の錘取付部を拡大した拡大平面図である。
図13A図12のXIIIA-XIIIA線に沿った断面図である。
図13B】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置において切替弁体の弁体補助部の錘取付部を示す図13Aと同様な断面図であり、錘部材が錘取付部に対して着脱されるときの状態を示す。
図14】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器について説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器の基本構造について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を示す平面図であり、図2は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の側面図であり、図1に示す水洗大便器のII-II線に沿った断面図である。
【0017】
まず、図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1を備えた水洗大便器2は、便器本体4を備えている。この便器本体4の後方側の上面には、詳細は後述する本実施形態の洗浄水タンク装置1が配置されている。
つぎに、図1及び図2に示すように、便器本体4は、その前方側に設けられたボウル部6と、ボウル部6の上縁に形成されたリム部8と、このリム部8の内周に形成された棚部10と、を備えている。
また、便器本体4のボウル部6の底部には、トラップ排水路12の入口12aが開口し、このトラップ排水路12は、上方に延びる上昇管12bと、下方に延びる下降管12cを備えている。このトラップ排水路12の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器2は、高さ方向の落差により汚物を排出する洗い落とし式便器である。
なお、本実施形態においては、洗い落とし式便器に適用した形態について説明するが、このような形態に限定されず、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式便器の形態等、他の水洗大便器の形態についても適用可能である。
【0018】
つぎに、便器本体4は、洗浄水タンク装置1の排水口14から排出される洗浄水が流入する導水路16と、棚部10の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口18と、前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口20とを備えている。
また、導水路16は、下流に向かって第1導水路16aと第2導水路16bに分岐し、導水路16の洗浄水が第1導水路16aを経て第1リム吐水口18に到達する一方、第2導水路16bを経て第2リム吐水口20に到達し、洗浄水が、それぞれ、第1リム吐水口18及び第2リム吐水口20から吐水され、ボウル部6を洗浄し、汚物をトラップ排水路12から排出するようになっている。
【0019】
つぎに、図1図11Dにより、本実施形態の洗浄水タンク装置1の詳細について説明する。
まず、図3は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示すブロック図である。また、図4は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示す貯水タンク本体及び小タンクの概略正面断面図。さらに、図5は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体の内部構造を示す平面図である。
なお、図3に示す洗浄水タンク装置1においては、便宜上、貯水タンク本体22の内部構造全体に亘って模式的に簡略化しているため、図4及び図5に示す洗浄水タンク装置1の構造の配置とは異なっている。
また、図4に示す洗浄水タンク装置1においても、一部の構造について簡略化している。
さらに、図1図11Dに示す洗浄水タンク装置1の左右方向については、水洗大便器2の便器本体4の前方側(使用者側)から見て左右方向の左側を「左側」、便器本体4の前方側から見て左右方向の右側を「右側」とそれぞれ定義する。
【0020】
まず、図3図5に示すように、洗浄水タンク装置1は、陶器製の外装タンクTと、この外装タンクT内に収容される内装タンクである貯水タンク本体22と、水道等の給水源(図示せず)に接続された給水管24と、を備えている。
貯水タンク本体22においては、給水管24を経て供給された洗浄水の一部が貯留され、便器本体4の導水路16に供給可能になっている。
また、図4に示すように、貯水タンク本体22は、便器本体4の後方側の比較的低い位置に配置されて、貯水タンク本体22の上端高さ位置が低い、いわゆる、ローシルエットタイプのタンクであり、図5に示すように、平面視において左右方向に長い扁平形状に形成されている。
【0021】
つぎに、図3図5に示すように、貯水タンク本体22の内部には、給水管24から定流量弁26を介して供給された洗浄水を給止水する給水弁装置28が設けられている。
この給水弁装置28は、定流量弁26よりも下流側の給水路を開閉させる給水弁である主弁30等を備えている。
また、洗浄水タンク装置1は、便器洗浄を開始する際に、給水弁装置28の作動を操作するための操作部である操作装置32(操作レバー32a、駆動回転軸32b)を備えている。
【0022】
つぎに、図3図5を参照して、給水弁装置28の内部構造と作動機構の詳細について説明する。
まず、給水弁装置28は、さらに、ポペット弁34と、フロート36と、フロート側パイロット弁38とを備えている。
ポペット弁34は、操作装置32の操作レバー32a及び駆動回転軸32bの回転操作により主弁30を開閉させる操作側パイロット弁である。また、フロート36は、貯水タンク本体22内の水位に応じて浮力により上下動するものである。さらに、フロート側パイロット弁38は、フロート36の上下動により主弁30を開閉させるものである。
【0023】
つぎに、給水弁装置28の主弁30部分の主要な構造として、パイロット式のダイアフラム弁である主弁体30aと、この主弁体30aが着座する主弁座30bと、内部の圧力により主弁体30aを主弁座30bに対して移動させる圧力室30cとを備えている。
これらにより、給水弁装置28は、主弁体30aが主弁座30bに着座して止水する止水状態、又は、主弁体30aが主弁座30bから離間して給水する給水状態のいずれかの状態に切り替え可能になっている。
また、圧力室30cには、この圧力室30cの圧力を開放するポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aがそれぞれ設けられている。
さらに、圧力室30cのポペット穴34aには、ポペット弁34が開閉可能に設けられている。このポペット弁34は、操作レバー32aと給水弁装置28とを接続する駆動回転軸32bに連結されている。この駆動回転軸32bは、使用者による操作レバー32aの手動操作と連動して軸回りに回転可能になっており、給水弁装置28の作動を操作するための操作部の一部となっている。
さらに、圧力室30cのフロート側パイロット穴38aには、フロート側パイロット弁38が設けられている。このフロート側パイロット弁38は、貯水タンク本体22内の洗浄水の水位に応じてフロート36が上下動することにより開閉可能になっている。
なお、ポペット弁34の代わりに電磁弁を設け、操作装置32をスイッチ等に変更することもできる。
【0024】
また、主弁体30aには、ブリード穴(図示せず)が設けられており、止水状態のとき、ブリード穴(図示せず)により給水管24の一次側流路Aと圧力室30cの内部とが連通するようになっている。
ここで、ポペット穴34aは、その開口面積がフロート側パイロット穴38aの開口面積よりも大きく形成されている。また、ポペット穴34aは、フロート側パイロット穴38aよりも、図4に示すように、上方位置に形成されている。
【0025】
さらに、図4に示すように、給水弁装置28は、通常は止水状態であり、止水状態では、ポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aは共に閉鎖されており、かつ、給水管24の一次側流路Aは、圧力室30cとブリード穴(図示せず)を通じて連通している。
このため、給水管24の一次側流路Aと圧力室30cの水圧は、同じ水圧(一次側流路圧力α)、また、給水管24の二次側流路Bは大気開放となり、主弁体30aに水圧が作用する面積の方が一次側流路Aの面積よりも大であるため、主弁体30aは、主弁座30bに押し付けられ、閉弁した状態となっている。
【0026】
つぎに、給水弁装置28において、ポペット穴34aがポペット弁34により開放されるか、且つ/又は、フロート側パイロット穴38aがフロート側パイロット弁38により開放されると、圧力室30cから洗浄水が流出し、圧力室30c内の圧力が低下するようになっている。
これにより、主弁体30aが主弁座30bから離間するように移動して開弁し、吐水状態となるようになっている。
【0027】
また、給水弁装置28において、ポペット穴34aがポペット弁34により閉鎖されると共に、フロート側パイロット穴38aがフロート側パイロット弁38により閉鎖されると、圧力室30cの圧力が再び一次側流路圧力αとなり、主弁体30aが主弁座30bに向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となるようになっている。
このとき、一次側流路Aの洗浄水は、圧力室30c内へブリード穴から少しずつ注入されるため、ポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aが閉鎖されてから、所定時間遅れて、主弁体30aが閉弁状態(止水状態)となるようになっている。
なお、給水弁装置28の下流側の給水路には、真空破壊弁40を介して接続されたジェットポンプユニット42(詳細は後述する)が設けられている。
【0028】
つぎに、図3図6Bを参照して、ジェットポンプユニット42の詳細について説明する。
まず、図3図5に示すように、ジェットポンプユニット42は、真空破壊弁40から延びる給水管44の下流側に設けられており、上流側から下流側に向かって、ジェットノズル46、流路切替弁48、及び、スロート管50をそれぞれ備えている。
また、これらのジェットノズル46、流路切替弁48、及び、スロート管50の吸引口50aのそれぞれは、貯水タンク本体22における左右一方側(図3に貯水タンク本体22を正面側から見て右側)から下方に突出するジェットノズル収容部H内に配置されている。
【0029】
図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体におけるジェットノズル収容部の部分を拡大した部分拡大正面断面図を示している。
なお、図6Aは、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48がスロート管50の吸引口50a側の流路に設定されている状態を示している。
一方、図6Bは、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48がスロート管50の吸引口50a側以外の貯水タンク本体22側の流路に設定されている状態を示している。
図4図6Bに示すように、ジェットポンプユニット42のジェットノズル46は、貯水タンク本体22の内部において少なくとも一部が水没した状態で配置されており、真空破壊弁40から延びる給水管44から供給された洗浄水を噴射するものである。
なお、真空破壊弁40は、外部から空気を吸入し、真空破壊弁40からジェットノズル46までの給水管44内が負圧にならないようにするためのものである。
【0030】
つぎに、図3図6Bに示すように、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、ジェットノズル46の下流側近傍に設けられ、ジェットノズル46から噴射された洗浄水の流路を貯水タンク本体22内の水位に応じて切り替え可能になっている。
また、図3図6Bに示すように、ジェットポンプユニット42のスロート管50は、流路切替弁48の下流側近傍に設けられている。このスロート管50の一端(上流端)には、吸引口50aが形成されている一方、スロート管50の他端(下流端)には、洗浄水を排出させる排出口50bが形成されている。
さらに、スロート管50は、図4に示すように、その吸引口50aから排出口50bまで延びた管形状が、例えば、逆U字形状(或いは、他の言い方をすれば、逆J字形状、又はグースネック型形状)に形成されている。
ここで、ジェットノズル46は、スロート管50の吸引口50aと対向するように配置されている。これらのスロート管50の吸引口50aとジェットノズル46は、常時、貯水タンク本体22内で水没した状態となっている。
【0031】
また、図3図4図6A及び6Bに示すように、流路切替弁48は、ジェット噴射した洗浄水の流路について、貯水タンク本体22内の水位に応じて、便器本体4側に連通する便器洗浄用流路52、又は、貯水タンク本体22側に連通するタンク貯水用流路54のいずれか一方に切り替え可能になっている。
具体的には、便器洗浄用流路52は、便器本体4のボウル部6の洗浄時において、流路切替弁48によりスロート管50の吸引口50aが開放され、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水について、スロート管50の吸引口50aに流入させる流路である。この流路により、スロート管50内に流入した洗浄水は、スロート管50の排出口50bを流出し、洗浄水タンク装置1の排水口14から便器本体4の導水路16側に排出されるようになっている。
一方、タンク貯水用流路54は、貯水タンク本体22の貯水時において、流路切替弁48によりスロート管50の吸引口50aが閉鎖され、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水について、スロート管50内に流入させずに、スロート管50の外部の貯水タンク本体22内に差し向ける流路である。
【0032】
ちなみに、流路切替弁48が便器洗浄用流路52に設定された場合には、ジェットノズル46がスロート管50の吸引口50aから内部に向けて洗浄水をジェット噴射することにより、スロート管50内を流れる洗浄水の流量について、ジェットノズル46から噴射された洗浄水の流量よりも増大させる、いわゆる、「ジェットポンプ作用」が誘発されるようになっている。これにより、増大した流量の洗浄水がスロート管50の排出口50bから排水口14を経て便器本体4の導水路16に向けて供給されるようになっている。
なお、本明細書中に記載されている「ジェットポンプ作用」という用語については、ジェットノズル46からスロート管50の吸引口50aに向けて噴射される勢いのある洗浄水の流れ自体が、ポンプ等の他の機械要素に依存することなく、直接的にスロート管50の吸引口50aの近傍等の周囲の洗浄水を引き込むような負圧を形成し、この負圧を利用してスロート管50内に吸い込んだ貯水タンク本体22内の洗浄水を便器本体4側へ搬送する作用を意味する。
【0033】
また、図4及び図5に示すように、貯水タンク本体22内には、上下方向に延びるオーバーフロー管56が設けられている。このオーバーフロー管56は、ジェットポンプユニット42のスロート管50の上下方向に延びる下降管部38bに隣接して設けられており、その下端が排水口14に連通している。
これにより、貯水タンク本体22内の水位が止水水位よりも上昇してオーバーフロー管56のオーバーフロー口56aの位置を上回った洗浄水は、オーバーフロー管56内に流入し、排水口14から便器本体4の導水路16に補給水として供給されるようになっている。
さらに、図3図6Bに示すように、貯水タンク本体22内には、タンク貯水用流路54の一部とオーバーフロー口56aとを接続する補給水路(補給水管58)が設けられている。これにより、図6Bに示すタンク貯水用流路54の洗浄水の一部は、補給水管58を介してオーバーフロー管56内へ流入し、排水口14から便器本体4の導水路16に供給され、最終的には、便器本体4で封水を形成する補給水として利用されるようになっている。
【0034】
つぎに、図4及び図5に示すように、洗浄水タンク装置1は、貯水タンク本体22内に設けられた大小洗浄切替装置60を備えており、この大小洗浄切替装置60により大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれか一方の洗浄モードに切り替え可能になっている。
また、大小洗浄切替装置60は、貯水タンク本体22内に設けられた大小洗浄切替用の小タンク62と、この小タンク62に設けられた大小洗浄切替弁装置64とを備えている。
【0035】
つぎに、図7は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体及び小タンクの部分を拡大した部分正面断面図である。また、図8は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の小タンクについて前方右斜め上方から見た斜視図である。
なお、図8では、小タンク62の内部の大小洗浄切替弁装置64が見えるように、小タンク62の前側壁面(前側区画壁66a)の一部が切り欠かれた状態となっている。
図4図8に示すように、小タンク62は、上下方向に延びて貯水タンク本体22側の外部領域S1と、小タンク62内の内部領域S2とに区画する側壁(区画壁66)を備えている。この区画壁66は、上下方向に延びる壁面を形成し、小タンク62全体が、その上方が開放されて前後方向及び左右方向の四方から取り囲んだカップ形状を形成しており、小タンク62の左右方向の全長が前後方向の全長に比べて長い形状となっている。
ちなみに、貯水タンク本体22の内部における小タンク62の外部領域S1内には、ジェットノズル46及びスロート管50の吸引口50a等が配置されている。
ここで、図4及び図5に示すように、貯水タンク本体22内における小タンク62の外部領域S1は、貯水タンク本体22内の第1貯水部となっており、この第1貯水部の底部には、洗浄水タンク装置1の排水口14に接続されるスロート管50の排出口50bが設けられている貯水領域となっている。
また、貯水タンク本体22内における小タンク62内の内部領域S2は、貯水タンク本体22内の第2貯水部となっており、洗浄水タンク装置1の排水口14に接続されるスロート管50の排出口50bが設けられていない貯水領域となっている。
【0036】
つぎに、図4図8に示すように、小タンク62は、より具体的には、貯水タンク本体22内において左右一方側(図4図7及び図8の右側)から長手方向の他方側(図4図7及び図8の左側)に延びるように設けられた小タンク本体部68と、この小タンク本体部68の他方側(図4図7及び図8の左側)の下端から貯水タンク本体22の基底面22aまで下方に突出する突出部70とを備えている。
さらに、図4及び図8に示すように、小タンクの全体形状については、正面視において、小タンク本体部68の左右の一方側(小タンク本体部68を正面側から見て右側)から長手方向の他方側(小タンク本体部68を正面側から見て左側)に延びた後に突出部70により下方に突出し、小タンク本体部68の左右方向の他方側の側壁(小タンク本体部68を正面側から見て左側の側壁)と突出部70の左右方向の他方側の左側区画壁70bが上下方向に一体的な壁面を形成するような概ねL字形形状である。すなわち、突出部70の左右方向の全長は、小タンク本体部68の左右方向の全長よりも短い形状になっている。
なお、小タンク62の全体形状については、必ずしも小タンク本体部68の左側の側壁と突出部70の左右方向の左側区画壁70bとが上下方向に一体的な壁面を形成している形態に限られず、小タンク本体部68の左右の一方側から長手方向の他方側に延びた後に突出部70により下方に突出した後、小タンク本体部68の左右の一方側から長手方向の他方側に延びるような概ねL字形形状であればよい。
また、突出部70の左右一方側(図4及び図8の右側)の区画壁(右側区画壁70a)には、切替開口部72が設けられている。
【0037】
さらに、図6A図6B及び図7に示すように、貯水タンク本体22内は、小タンク62の突出部70の最低底面70cが設置される基底面22aと、この基底面22aの左右一方側の領域(貯水タンク本体22を正面側から見て右側の領域)に下方に突出するジェットノズル収容部H内の最低底面22bと、を備えている。
これにより、小タンク62の突出部70は、小タンク本体部68の下端から貯水タンク本体22内の基底面22aまで下方に突出するように形成されている。
【0038】
つぎに、図9は、図4のXI-XI線に沿った断面図である。
図4及び図7図9に示すように、小タンク62の突出部70の切替開口部72は、ジェットポンプユニット42のジェットノズル46及びスロート管50の吸引口50aの方向に差し向けられるように配置されている。
また、小タンク62の切替開口部72と、ジェットノズル46及びスロート管50の吸引口50aとの間の貯水タンク本体22内の領域S1には、小タンク62の切替開口部72から排出された後の洗浄水を整流化させる整流領域(貯水タンク本体側整流領域R1)が設けられている。
【0039】
つぎに、図4図9に示すように、小タンク62の突出部70は、その左右の長手方向の一方側(右側)に設けられて切替開口部72が形成された右側区画壁70aと、この右側区画壁70aに対して左右の長手方向の他方側(左側)に対向するように設けられた左側区画壁70bと、を備えている。
また、これらの小タンク62の突出部70の右側区画壁70aの壁面である第1側壁面と、突出部70の左側区画壁70bの壁面である第2側壁面との間に形成される小タンク62の内部領域S2内には、小タンク62内における切替開口部72から排出される前の洗浄水を整流化させる整流領域(小タンク内整流領域R2)が設けられている。
さらに、この小タンク内整流領域R2は、その左右方向の最大幅寸法L1[mm]が前後方向の最大幅寸法W1[mm]よりも大きく設定されている(L1>W1)。
【0040】
また、図5及び図9に示すように、小タンク62の突出部70の前後短手方向の最大幅寸法W1は、貯水タンク本体22の内部領域の最大幅寸法を短手方向に二等分したときのそれぞれの最大幅寸法W2よりも小さくなるように設定されている(W1<W2)。
【0041】
つぎに、図4及び図7に示すように、小タンク62の切替開口部72は、スロート管50の吸引口50aよりも上方に配置されている。
また、図9に示すように、貯水タンク本体22は、その内部領域S2の最大前後幅寸法を前後の前側領域F0と後側領域B0のそれぞれに二等分する長手方向中心軸線C1と、内部領域S2の最大左右幅寸法を左右の一方側領域(右側領域R0)と他方側領域(左側領域L0)のそれぞれに二等分する短手方向中心軸線C2と、を備えている。
さらに、図9に示すように、小タンク62の突出部70は、貯水タンク本体22内において、スロート管50の吸引口50aが配置されている貯水タンク本体22の短手方向中心軸線C2よりも左右一方側の領域(右側領域R0)に対して、短手方向中心軸線C2よりも左右他方側(左側)の吸引口50aが配置されていない領域(左側領域L0)に配置されている。
また、小タンク62の突出部70は、貯水タンク本体22の排水口14の中心O1(スロート管50の排出口50bの中心O1)が配置されている貯水タンク本体22の長手方向中心軸線C1の前後一方側の領域(後側領域B0)に対して、排水口14の中心O1(スロート管50の排出口50bの中心O1)が配置されていない貯水タンク本体22の長手方向中心軸線C1よりも前後他方側の領域(前側領域F0)に配置されている。これにより、小タンク62の突出部70は、スロート管50の吸引口50aに対して離間するように配置されている。
【0042】
つぎに、図9に示すように、切替開口部72は、貯水タンク本体22内において、スロート管50の吸引口50aが設けられている短手方向中心軸線C2よりも左右一方側の領域(右側領域R0)に対して、吸引口50aが設けられていない短手方向中心軸線C2よりも左右他方側の領域(左側領域L0)に配置され、かつ、長手方向中心軸線C1よりも前側の領域(前側領域F0)に配置されている。
また、図9に示すように、切替開口部72は、その開口断面の中心O2を通り且つ貯水タンク本体22の左右長手方向に延びる中心軸線C3を備えている。この切替開口部72の中心軸線C3は、図9の平面視において、スロート管50の長手方向の中心軸線C4に対して貯水タンク本体22の前後方向の一方側(前側)に離間するように配置されている。
【0043】
つぎに、図4図5図7図8図10及び図11A図11Dを参照して、大小洗浄切替弁装置64の詳細について説明する。
まず、図10は、図8に示す本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大斜視図である。また、図11A図11Dは、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において大小洗浄切替弁装置の部分を拡大した部分拡大図である。
特に、図11Aは、便器洗浄操作を開始する前の待機状態及び便器の大洗浄操作を開始した状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体の開弁状態を示している。また、図11Bは、便器の小洗浄操作を開始した状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体の閉弁状態を示している。さらに、図11Cは、便器の小洗浄中における大小洗浄切替弁装置の切替弁体の閉弁状態を示している。また、図11Dは、便器の小洗浄が終了し、給水弁装置から貯水タンク本体内への給水中に閉弁状態の大小洗浄切替弁装置の切替弁体が開弁した状態を示している。
【0044】
図4図5図7図8図10及び図11A図11Dに示すように、大小洗浄切替弁装置64は、切替弁体74と、揺動部材76と、玉鎖78と、引き上げレバー80と、を備えている。
まず、図10図11Dに示すように、小タンク本体部68の底面68aには、前後方向に対をなして配置されて上方に突出する一対の切替弁支持部68b,68bが設けられている。
また、図10に示すように、これらの切替弁支持部68b,68bのそれぞれは、切替開口部72の上方近傍に設けられており、小タンク62の前側区画壁66a及び後側区画壁66bのそれぞれの一部に組み込まれている。
さらに、各切替弁支持部68b,68bは、互いに前後方向に平行に配置されており、その互いに前後方向に対向する側の面には、前後方向に突出するヒンジ突起68cがそれぞれ設けられている。
【0045】
つぎに、図10に示すように、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74は、回動軸部74a、弁体本体部74b、及び、弁体補助部74cをそれぞれ備えている。
まず、図10に示すように、切替弁体74の回動軸部74aは、切替弁支持部68b,68bにより回動可能に支持されている。この回動軸部74aは、より具体的には、各ヒンジ突起68cに対して回動可能に連結されるヒンジ穴74dを形成するヒンジ部となっており、そのヒンジ軸線C5が小タンク62内において前後方向に水平方向に延びるように設けられている。
つぎに、図10に示すように、切替弁体74の弁体本体部74bは、回動軸部74aに一体的に設けられ、切替開口部72を開閉可能にする。
また、図10に示すように、切替弁体74の弁体補助部74cは、弁体本体部74bの基端部74eに対して一体的に設けられている。この弁体補助部74cは、より具体的には、弁体本体部74bの基端部74eから、弁体本体部74bの先端部74fとは反対側に設けられており、回動軸部74aを中心に弁体本体部74bに対して対向する側に設けられている。
【0046】
また、図10に示すように、切替弁支持部68bは、切替開口部72の上部近傍に設けられている。そして、切替弁体74の弁体本体部74bは、開弁時において、その下端部が切替開口部72の底面付近から回動軸部74aのヒンジ穴74dの中心軸線(ヒンジ軸線C5)を中心に上方位置に向かって回動可能に設けられている。
これにより、切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cは、各ヒンジ突起68cの前後方向の中心軸線及び各ヒンジ穴74dの中心軸線(ヒンジ軸線C5)を中心に一体的に回動可能になっており、弁体本体部74bが切替開口部72に対して開閉可能になっている。
そして、切替弁体74の弁体本体部74bが切替開口部72を開閉することにより、ジェットポンプユニット42を通じて便器本体4へ供給する洗浄水量を変更することができ、大洗浄と小洗浄とを切り替えることができるようになっている。
【0047】
つぎに、図10に示すように、切替弁体74の回動軸部74aの各ヒンジ穴74dは、貯水タンク本体22の第2貯水部(小タンク62の内部領域S2)内において水平前後方向に延びるように設けられている。
また、図11Aに示すように、切替弁体74の回動軸部74aは、切替開口部72の中心軸線C3方向から見て切替開口部72よりも貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)側に設けられている。
さらに、図10及び図11Aに示すように、切替弁体74の弁体本体部74bは、回動軸部74aの軸方向(ヒンジ軸線C5の軸線方向)に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部74gと、この突出部74gの突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部74fと、を備えている。
これにより、弁体本体部74bは、開弁状態において突出部74gから先端部74fに向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心G(図11A参照)が位置決めされている。
【0048】
つぎに、図10図11Dに示すように、弁体補助部74cには、板状の錘部材74hが設けられている。
この錘部材74hは、詳細は後述する弁体補助部74cの錘取付部Qに着脱可能に取り付けられており、大小洗浄切替弁装置64が大洗浄モードに切替操作された場合において、弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整する弁体調整部として機能するようになっている。
【0049】
つぎに、図10図11Dに示すように、大小洗浄切替弁装置64の揺動部材76は、切替弁体74の基端部74eにおける前後に突出する揺動軸74iに対して揺動可能に設けられている。
また、揺動部材76の一部には、鎖状又は線状(紐状)の連結部材である玉鎖78の一端が連結されている。この玉鎖78の他端は、操作装置32の駆動回転軸32bに連結されている引き上げレバー80の一部に連結されている。
便器の大洗浄モードを開始する際には、操作装置32の引き上げレバー80が引き上げ操作されることにより、玉鎖78が引き上げられ、揺動部材76が引き上げられるようになっている。
なお、本実施形態では、鎖状又は線状(紐状)の連結部材として玉鎖78を採用した形態について説明するが、玉鎖78以外の形態である鎖状の連結部材やワイヤ状の連結部材を採用してもよい。
【0050】
さらに、この揺動部材76は、切替弁体74の弁体補助部74cに対しても連結解除可能に連結されている。
図10及び図11に示すように、揺動部材76は、例えば、切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cがほぼ水平な姿勢で開弁した状態であるときには、切替弁体74の弁体補助部74cを下側から支持するように小タンク本体部68の底面68a上に配置されている。
【0051】
これらにより、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74は、揺動部材76、玉鎖78、及び、引き上げレバー80を介して、給水弁装置28の駆動回転軸32bに対して接続されている。
例えば、図11Aに示すように、便器洗浄操作を開始する前の待機状態では、玉鎖78が弛んだ状態となり、切替弁体74の弁体本体部74bは、水平な姿勢で切替開口部72を開放した状態となっている。
そして、図11Aに示すように、便器の大洗浄操作を開始した状態では、使用者により操作レバー32aが一方向に回転操作され、駆動回転軸32bが一方向に回転操作されるようになっている。
しかしながら、引き上げレバー80は、駆動回転軸32bと一体的に回転することなく、静止した状態となるため、玉鎖78は、引き上げレバー80により引き上げられず、弛んだ状態となる。これにより、切替弁体74の弁体本体部74bについては、切替開口部72を開放した状態が維持されるようになっている。
【0052】
つぎに、図11Bに示すように、便器の小洗浄操作を開始した状態では、使用者により操作レバー32aが他方向に回転操作され、駆動回転軸32bが他方向に回転操作されるようになっている。
これにより、引き上げレバー80は、駆動回転軸32bと一体的に回動することにより、玉鎖78は、引き上げレバー80により引き上げられるようになっている。
そして、この玉鎖78が引き上げられることにより、揺動部材76は、その先端部が上昇するように引き上げられ、待機状態の初期位置(図11A参照)から切替弁体74の弁体補助部74cと連結した状態で揺動軸74i回りに閉弁方向に揺動するようになっている(図11B参照)。
これにより、切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74c、並びに、揺動部材76の全体が立ち上がる姿勢となり、切替弁体74の弁体本体部74bは、切替開口部72を閉鎖した状態となっている(図11B参照)。
このとき、図11Bに示すように、小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水位WL1は、小タンク62の内部領域S2の水位WL2よりも低下しており、小タンク62の内部領域S2の水圧P2が小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水圧P2よりも高くなっているため(P2>P1)、これらの水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)により、切替弁体74の弁体本体部74bの閉弁状態が維持されるようになっている。
【0053】
つぎに、図11Cに示すように、便器の小洗浄中においては、引き上げレバー80が元の引き上げられる前の状態(図11Aの待機状態)に戻るように回動し、駆動回転軸32bについても、引き上げレバー80と一体的に一方向に回転するようになっている。
このとき、玉鎖78が引き上げられた状態から解放されるため、揺動部材76についても、玉鎖78からの反力により、切替弁体74の弁体補助部74cとの連結が解除された状態となる。これにより、揺動部材76は、弁体補助部74cとは独立に待機状態に戻る方向に揺動し、水平な姿勢になるようになっている(図11C参照)。
このとき、図11Cに示すように、小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水位WL1は、小タンク62の内部領域S2の水位WL2よりも低下しており、小タンク62の内部領域S2の水圧P2が小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水圧P2よりも高くなっているため(P2>P1)、これらの水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)により、切替弁体74の弁体本体部74bの閉弁状態が維持されるようになっている。
また、便器の小洗浄中においては、揺動部材76が切替弁体74の弁体補助部74cとは独立に回動(揺動)することにより、玉鎖78自体が切替弁体74の弁体本体部74bや弁体補助部74cに干渉して開弁させることが回避され、切替弁体74の弁体本体部74bの閉弁状態が維持されるようになっている。
ここで、図8に示すように、小タンク本体部68における左右一方側(小タンク本体部68を正面側から見て右側)の底面68aには、小タンク62の内部領域S2と外部領域S1(貯水タンク本体22内)とを連通させる連通小穴68dが設けられている。これにより、小タンク62内の洗浄水の水位WL2は、切替弁体74の弁体本体部74bによって切替開口部72が閉鎖した状態となっているが、わずかに低下するようになっているが、貯水タンク本体22内の水位WL1よりも高い水位(WL2>WL1)となっている(図11C参照)。
ちなみに、便器の大洗浄操作時においては、小タンク62内の切替開口部72から遠い位置に存在する洗浄水が連通小穴68dから小タンク62の外部領域S1へ排出されるため、小タンク62内の洗浄水の残水を減らすことができるようになっている。
【0054】
つぎに、図11Dに示すように、貯水タンク本体22内の洗浄水の水位WL1が水位DWL1まで低下することにより、流路切替弁48が貯水用流路54に切り替えられ、ジェットノズル46の洗浄水がスロート管50への給水から貯水タンク本体22への給水へ切り替わり、便器の小洗浄が終了し、貯水タンク本体22に給水されるようになっている。
これにより、小タンク62の外部領域S1の水位(貯水タンク本体22内の水位)WL1が上昇し、小タンク62内の洗浄水の水位WL2と同一の水位(WL1=WL2)となり、水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)が0となっている。
このとき、切替弁体74における揺動部材76側に設けられた弁体補助部74cには、錘部材74h(図10図11D参照)が設けられているため、この錘部材74hの重量と切替弁体74の弁体本体部74bの重心Gとのバランスが開弁状態となる方向に調整されている。これにより、切替弁体74の弁体本体部74bは、水平な姿勢となるように回動し、開弁状態となるようになっている。
また、切替弁体74の弁体補助部74cには、錘部材74hが設けられているため、大洗浄操作時において、小タンク62内の洗浄水が切替開口部72から小タンク62の外部領域S1へ排出される際に、小タンク62内の洗浄水の流れによって切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態になることが抑制されるようになっている。
さらに、図6Bに示すように、貯水タンク本体22のジェットノズル収容部H内においては、流路切替弁48がタンク貯水用流路54に切り替えられることにより、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水は、スロート管50内に流入されずに、貯水タンク本体22内に給水されるようになっている。
【0055】
つぎに、図10及び図12図13Bを参照して、錘部材74hが取り付けられる切替弁体74の弁体補助部74cにおける錘取付部Qの詳細について説明する。
まず、図12は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置において切替弁体の弁体補助部の錘取付部を拡大した拡大平面図である。また、図13Aは、図12のXIIIA-XIIIA線に沿った断面図である。さらに、図13Bは、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の大小洗浄切替弁装置において切替弁体の弁体補助部の錘取付部を示す図13Aと同様な断面図であり、錘部材が錘取付部に対して着脱されるときの状態を示す。
【0056】
まず、図10及び図12図13Bに示すように、切替弁体74の弁体補助部74cにおける錘取付部Qは、水平状態の弁体補助部74cの上面の先端側(左右長手方向の右側)に設けられた錘取付面82を備えている。また、錘取付部Qは、錘取付面82に設けられて錘部材74hを弁体補助部74cの長手方向に摺動可能に側方から保持する保持部84を備えている。
つぎに、保持部84は、錘取付面82における基端側(図12の左右方向の左側)且つ横幅方向(前後方向)の両端部に設けられた一対の基端側前後保持突起84a,84aと、錘取付面82における先端側(図12の左右方向の左側)且つ横幅方向(前後方向)の両端部に設けられた一対の先端側前後保持突起84b,84bと、を備えている。
また、保持部84は、錘取付面82の各基端側前後保持突起84aと各先端側前後保持突起84bとの間における横幅方向の両端部に設けられた一対の保持フレーム84c,84cと、錘取付面82における各基端側前後保持突起84a,84aよりも基端側に設けられた単一の基端側中央保持突起84dと、を備えている。
【0057】
さらに、保持部84は、錘取付面82の先端側における横幅方向の中央部に設けられ且つ基端側中央保持突起84dと対向する可撓性のフック部86を備えている。
このフック部86においては、錘部材74hが錘取付部Qに対して着脱される際に、錘部材74hから作用する荷重に応じて、錘取付面82に対して面外方向(図13Bの上下方向)に弾性的な曲げ変形(図13Bに示すたわみ量δの弾性曲げ変形)が可能になっている。
また、フック部86は、その上面が錘取付面82の一部を形成しており、このフック部86の上面の先端部には、上方に突出する保持突起(先端側中央保持突起86a)が設けられている。
ちなみに、錘部材74hが錘取付部Qに対して先端側から挿入され、錘取付面82上の所定の取付位置に取り付けられた状態では、板状の錘部材74hの左右方向の両端面が基端側中央保持突起84dと先端側中央保持突起86aとにより保持されると共に、錘部材74hの前後方向の両端面が、前後の基端側中央保持突起84d,84d、前後の先端側中央保持突起86a,86a、及び、前後の保持フレーム84c,84cにより保持されるようになっている。また、錘部材74hの上面における前端及び後端の一部は、前後の保持フレーム84c,84cにより保持されるようになっている。
【0058】
つぎに、図12図13Bに示すように、フック部86における錘取付面82とは反対側の面(フック部86の下面)には、凹状の曲がり面86bが形成されており、フック部86の基端部E1と先端部E2との間の上下方向の厚みd(フック部86の上面と下面と間の厚みd)が部分的に低減されている。
これにより、錘部材74hが錘取付部Qに対して着脱される際に、フック部86が弾性的に変形したとしても、フック部86の基端部E1に発生する応力を分散させて、フック部86の基端部E1における応力集中を回避し、フック部86の破損や負荷を低減することができるようになっている。
【0059】
また、図12に示すように、フック部86の前後両側には、前後一対のスリット88(前側スリット88a、後側スリット88b)が左右方向に延びるように形成されている。 各スリット88の基端部(左側端部)は、実質的には、フック部86の基端部E1の一部となっている。
これにより、フック部86の基端部E1は、各スリット88a,88bを介して、前後に隣接する錘取付面82に対して少なくとも2つの曲率半径の曲がり面(第1曲率半径ρ1の第1曲がり面90、第2曲率半径ρ2の第2曲がり面92)で接続されている。
ここで、図12に示すように、第1曲率半径ρ1の第1曲がり面90は、各スリット88a,88bの左右一方側(左側)の端部を形成する曲がり面におけるフック部86の基端部E1側(フック部86の基端部E1に対して近位側)に形成された近位側曲がり面90である。
一方、図12に示すように、第2曲率半径ρ2の第2曲がり面92は、各スリット88a,88bの左右一方側(左側)の端部を形成する曲がり面におけるフック部86の基端部E1の前後に隣接する錘取付面82側(フック部86の基端部E1に対して遠位側)に形成された遠位側曲がり面92である。
また、図12に示すように、平面視における第1曲がり面90の第1曲率半径ρ1は、第2曲がり面92の第2曲率半径ρ2よりも大きく設定されている(ρ1>ρ2)。
これらにより、錘部材74hが錘取付部Qに対して着脱される際に、フック部86が弾性的に変形したとしても、フック部86の基端部E1の近位側の第1曲がり面90の第1曲率半径ρ1が比較的大きく設定されているため、フック部86の基端部E1に発生する応力を分散させて、フック部86の基端部E1における応力集中を回避し、フック部86の破損や負荷を低減することができるようになっている。
【0060】
なお、図4に示すように、貯水タンク本体22内の水位WLは、以下の位置となる。
まず、水位DWL1は、図4に示すように、便器の大洗浄及び小洗浄のそれぞれが終了したときの貯水タンク本体22内の領域S1の最低水位を示しており、切替開口部72の下端よりも下方に位置している。
つぎに、図4に示すように、水位DWL1は、大洗浄及び小洗浄のそれぞれが終了したときの貯水タンク本体22内の領域S1の最低水位であり、水位DWL2は、小洗浄が終了したときの小タンク62内の領域S2の最低水位を示している。
また、図4に示すように、水位WL0は、貯水タンク本体22内に貯水される洗浄水の初期状態(待機状態)における止水水位(最高水位)である。この止水水位WL0は、水洗大便器2の使用前又は使用後の通常の止水水位を示しており、水位DWL2よりもわずかに上方に位置している。
ちなみに、図4に示す水位WL1は、貯水タンク本体22内の領域S1における水位低下中又は水位上昇中の水位であり、最低水位DWL1よりも高く、かつ、最高水位WL0よりも低い水位となっている。
また、図4に示す水位WL2は、小タンク62内の領域S2における水位低下中又は水位上昇中の水位であり、最低水位DWL2よりも高く、かつ、最高水位WL0よりも低い水位となっている。
【0061】
つぎに、図1図14を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1の動作について説明する。
図14は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図14に示すように、水洗大便器2の大洗浄又は小洗浄のいずれかを行う際には、まず、ステップS1において、使用者により操作装置32の操作レバー32aが回動操作される。
具体的には、操作レバー32aが一方向(例えば、洗浄水タンク装置1を正面側から見て手前側(大洗浄側))に回動操作された場合には、大洗浄モードが開始され、操作レバー32aが他方向(例えば、洗浄水タンク装置1を正面側から見て奥側(小洗浄側))に回動操作された場合には、小洗浄モードが開始される。
【0062】
つぎに、以下、大洗浄モードについて説明する。
大洗浄モードが開始された状態では、操作装置32の駆動回転軸32bが操作レバー32aの回動操作により一方向に回転操作されるが、大小洗浄切替弁装置64の引き上げレバー80は、駆動回転軸32bと一体的に回転することなく、静止した状態となる。
これにより、玉鎖78は、引き上げレバー80により引き上げられず、弛んだ状態となるため、揺動部材76は、玉鎖78により引き上げられていない状態となる。
また、切替弁体74の弁体補助部74cについては、錘部材74hの重量により、揺動部材76上でほぼ水平な姿勢となり、揺動部材76を小タンク本体部68の底面68aに押し当てた状態となる。これにより、切替弁体74の弁体本体部74bは、切替開口部72を開放した状態が維持される(図11A参照)。
【0063】
つぎに、図14のステップS2において、操作装置32の駆動回転軸32bの一方向の回転により、給水弁装置28のポペット弁34が開弁する。
このとき、貯水タンク本体22は、止水水位(最高水位)WL0付近の洗浄水で満たされているため、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、貯水タンク本体22内の洗浄水による浮力により便器洗浄用流路52に切り替えられた状態となり、スロート管50の吸引口50aは、流路切替弁48により開放された状態となっている。
そして、図14のステップS4において、給水弁装置28のポペット弁34が開弁すると、ステップS4において、給水弁装置28の圧力室30cから洗浄水が流出し、圧力室30c内の圧力が低下する。
これにより、給水弁装置28の給水弁(主弁30)における主弁体30aが主弁座30bから離間するように移動して開弁し、給水管24から定流量弁26を介して給水弁装置28に供給された洗浄水は、給水弁装置28から下流側の給水管44内に給水される。
その後、給水管44内の洗浄水は、真空破壊弁40を介してジェットポンプユニット42のジェットノズル46に供給される。このジェットノズル46に供給された洗浄水は、流路切替弁48の便器洗浄用流路52を経てスロート管50の吸引口50aに向けて噴射され、ジェット吐水が開始される(図6A参照)。
また、ジェット吐水が開始されると、ジェットノズル46からスロート管50の吸引口50aに向けて噴射される勢いのある洗浄水の流れ自体が、ポンプ等の他の機械要素に依存することなく、直接的にスロート管50の吸引口50aの近傍等の周囲の洗浄水を引き込むような負圧を形成し、この負圧を利用してスロート管50内に吸い込んだ貯水タンク本体22内の洗浄水を便器本体4側へ搬送する、いわゆる、「ジェットポンプ作用」が発生する。
【0064】
さらに、ジェット吐水が継続されると、図14のステップS5において、貯水タンク本体22内の水位WL1が低下するため、給水弁装置28のフロート36が下降し、フロート側パイロット弁38が開弁する。
このとき、小タンク62の内部領域S2と外部領域S1(貯水タンク本体22内の領域S1)とが、小タンク62の開放された切替開口部72及び連通小穴68dにより連通しているため、小タンク62内の水位WL2についても、貯水タンク本体22内の水位WL1と共に低下する。
そして、貯水タンク本体22内の水位WL1及び小タンク62内の水位WL2が最低水位DWL1まで低下したときには、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48に作用する貯水タンク本体22内の洗浄水による浮力も低下する。
これにより、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、タンク貯水用流路54に切り替えられた状態となり、スロート管50の吸引口50aは、流路切替弁48により閉鎖された状態となる(図6B参照)。
したがって、ジェットノズル46から噴射された洗浄水は、流路切替弁48のタンク貯水用流路54から貯水タンク本体22内に給水される。同時に、これらの洗浄水の一部が、補給水管58からオーバーフロー管56内に補給水された後、便器本体4側に補給水される。
この便器本体4側に補給水された洗浄水は、便器本体4で封水を形成する際に利用される。
【0065】
つぎに、図14のステップS7において、流路切替弁48のタンク貯水用流路54から貯水タンク本体22内への給水により貯水タンク本体22内の水位WL1が上昇すると、この上昇する水位WL1の洗浄水が作用する浮力により給水弁装置28のフロート36が上昇し、フロート側パイロット弁38が閉弁する。小タンク62の開放された切替開口部72及び連通小穴68dにより連通しているため、小タンク62内の水位WL2についても、貯水タンク本体22内の水位WL1と共に上昇する。
これにより、給水弁装置28の圧力室30cの圧力が再び一次側流路圧力αとなり、主弁体30aが主弁座30bに向けて移動し、最終的に主弁30が閉弁した状態(止水状態)となる。
このとき、図14のステップS8において、貯水タンク本体22が止水水位(最高水位)WL0の洗浄水で満たされているため、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、貯水タンク本体22内の洗浄水による浮力により再び便器洗浄用流路52に切り替えられた状態となり、スロート管50の吸引口50aは、流路切替弁48により開放された状態となる。
そして、図14のステップS9において、貯水タンク本体22内における貯水が完了することにより大洗浄モードが完了し、待機状態となる(図11A)参照。
【0066】
つぎに、以下、小洗浄モードについて説明する。
まず、図14のステップS1において、小洗浄モードが開始された状態では、操作装置32の駆動回転軸32bが操作レバー32aの回動操作により他方向に回転操作される。
そして、図14のステップS2において、給水弁装置28のポペット弁34が開弁し、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、便器洗浄用流路52に切り替えられた状態となり、スロート管50の吸引口50aは、流路切替弁48により開放された状態となる。
【0067】
つぎに、図14のステップS3において、大小洗浄切替弁装置64の引き上げレバー80が、駆動回転軸32bと連動(駆動回転軸32bと一体的に回動)し、玉鎖78は、引き上げレバー80により引き上げられる。
そして、この玉鎖78が引き上げられることにより、揺動部材76は、その先端部が上昇するように、切替弁体74の揺動軸74i回りに揺動し、切替弁体74及び揺動部材76の全体が立ち上がる姿勢となる(図11B参照)。
また、切替弁体74の弁体本体部74bは、上下方向に立ち上がる姿勢により切替開口部72を閉鎖した状態となる。
【0068】
つぎに、大洗浄モードと同様に、図14のステップS4において、給水弁装置28の給水弁(主弁30)が開弁し、ジェットノズル46からスロート管50の吸引口50aに向けて洗浄水が噴射され、ジェット吐水が開始される(図6A参照)。
そして、大洗浄モードと同様に、図14のステップS5において、ジェット吐水が継続されることにより、貯水タンク本体22内の水位WL1が低下するため、給水弁装置28のフロート36が下降し、フロート側パイロット弁38が開弁する。
【0069】
このとき、図11B及び図11Cに示すように、小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水位WL1は、小タンク62の内部領域S2の水位WL2よりも低下しており、小タンク62の内部領域S2の水圧P2が小タンク62の外部領域S1の貯水タンク本体22内の水圧P2よりも高くなる(P2>P1)。そして、これらの水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)により、切替弁体74の弁体本体部74bの閉弁状態が維持される。
【0070】
つぎに、図14のステップS6において、貯水タンク本体22内の水位WL1がさらに最低水位DWL1まで低下すると共に、小タンク62内の水位WL2が最低水位DWL2まで低下すると、便器の小洗浄が終了する(図11D参照)。
このとき、図6Bに示すように、貯水タンク本体22のジェットノズル収容部H内においては、流路切替弁48がタンク貯水用流路54に切り替えられることにより、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水は、スロート管50内に流入されずに、貯水タンク本体22内に給水される。同時に、これらの洗浄水の一部が、補給水管58からオーバーフロー管56内に補給水された後、便器本体4側に補給水される。
その後、さらに、貯水タンク本体22内に給水されることにより、小タンク62の外部領域S1の水位(貯水タンク本体22内の水位)WL1が上昇し、小タンク62内の洗浄水の水位WL2と貯水タンク本体内の水位WL1とが同一の水位(WL1=WL2)となる。これにより、水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)が0となり、切替弁体74の弁体本体部74bを閉状態へ維持する水位差及び水圧差がなくなるため、切替弁体74の弁体補助部74cは、錘部材74h(図10図11D参照)の重量と切替弁体74の弁体本体部74bの重心Gとのバランスにより、水平な姿勢となるように揺動部材76側に回動し、この弁体補助部74cと一体的に回動した弁体本体部74bが開弁状態となる。
【0071】
つぎに、大洗浄モードと同様に、図14のステップS7において、流路切替弁48のタンク貯水用流路54から貯水タンク本体22内への給水により貯水タンク本体22内の水位WL1が上昇し、この上昇した水位WL1の洗浄水が作用する浮力により給水弁装置28のフロート36が上昇し、フロート側パイロット弁38が閉弁する。これにより、給水弁装置28の主弁30が閉弁し、止水状態となる。
このとき、小タンク62の開放された切替開口部72及び連通小穴68dにより連通しているため、小タンク62内の水位WL2についても、貯水タンク本体22内の水位WL1と共に上昇する。
さらに、大洗浄モードと同様に、図14のステップS8において、貯水タンク本体22が止水水位(最高水位)WL0の洗浄水で満たされているため、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、貯水タンク本体22内の洗浄水による浮力により再び便器洗浄用流路52に切り替えられた状態となり、スロート管50の吸引口50aは、流路切替弁48により開放された状態となる。
そして、大洗浄モードと同様に、図14のステップS9において、貯水タンク本体22内における貯水が完了することにより小洗浄モードが完了し、待機状態となる(図11A参照)。
【0072】
つぎに、図1図14を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1の作用について説明する。
上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、便器の洗浄を開始する際に、例えば、操作装置32が大洗浄モードに切替操作されると、大小洗浄切替装置60における大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが開弁し、貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)と第2貯水部(小タンク62の内部領域S2)とを区画する区画壁66の切替開口部72が開放される。
このとき、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体補助部74cに設けられた弁体調整部(錘部材74h)により、切替弁体74全体の重心Gの位置について、大洗浄モードの弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整することができる。
これにより、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、貯水タンク本体22から便器本体4に供給される洗浄水量が不足し、大洗浄時の便器洗浄性能が低下してしまうことを抑制することができる。
一方、便器の洗浄を開始する際に、例えば、操作装置32が小洗浄モードに切替操作されると、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cが、貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)と第2貯水部(小タンク62の内部領域S2)のそれぞれに貯水されている洗浄水の水位差ΔWL(=WL2-WL1)及び水圧差ΔP(=P2-P1)により閉弁状態が維持される。
したがって、便器の小洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って開弁した状態となり、貯水タンク本体22の小タンク62の内部領域S2内に貯水されている洗浄水が切替開口部72から小タンク62の外部領域S1に排出され、便器の小洗浄モードを正確に実行することができないリスクを回避することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bの開弁状態を確実に維持することができると共に、便器の小洗浄モードの場合には、切替弁体74の弁体本体部74bの閉弁状態を確実に維持することができるため、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる。
【0073】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、近年の洗浄水タンク装置1や水洗大便器2のデザイン性の多様化等の観点から貯水タンク本体22全体の小型化が要請されていると共に、貯水タンク本体22における排出口(排水口14、スロート管50の排出口50b)が設けられていない小タンク62においては、貯水されている洗浄水について可能な限り残水を減らすように使用することが望ましい。
また、仮に、小タンク本体部68の切替弁支持部68bが切替開口部72の下部等に設けられている場合には、切替弁体74の弁体本体部74bが開弁した状態で小タンク62内の洗浄水が切替開口部72から排出される際に、切替開口部72の底面付近には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の回動軸部74aや弁体本体部74bの一部が残存する等、洗浄水の排出を妨げるものが存在するリスクが高まる。
これにより、小タンク62内の残水の発生要因となり、切替開口部72の排出効率が低下するという問題がある。
これに対し、本実施形態の洗浄水タンク装置1においては、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の回動軸部74aを回動可能に支持する切替弁支持部68bが切替開口部72の上部近傍に設けられていると共に、切替弁体74の弁体本体部74bについては、開弁時において、その下端部が切替開口部72の底面付近から回動軸部74aを中心に上方位置に向かって回動可能に設けられている。これらにより、切替開口部72の底面付近には、切替弁体74の回動軸部74aを設けるスペースが不要となる。
したがって、切替弁体74の弁体本体部74bが開弁した状態において、小タンク62内の洗浄水が切替開口部72から排出される際には、切替開口部72の底面付近に洗浄水の排出を妨げるものが存在しなくなるため、小タンク62内の残水を低減させることができる。
さらに、開弁時の切替弁体74の弁体本体部74bにおいて、その下端部が切替開口部72の底面付近から回動軸部74aを中心に上方位置に向かって回動する際に、弁体本体部74bに対して閉弁方向に回動させるような重力や水圧が作用したとしても、弁体補助部74cに設けられた弁体調整部(錘部材74h)が弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができる。よって、貯水タンク本体22から便器本体4に供給される洗浄水量が不足し、大洗浄時の便器洗浄性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0074】
さらに、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、錘部材74hが弁体調整部として大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体補助部74cに設けられている。これにより、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74全体の重心Gの位置について、大洗浄モードの切替弁体74の弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整することができる。
したがって、操作装置32が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材74hの重量により、切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cの双方が回動軸部74aを中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整することができる。
よって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0075】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、切替弁体74の弁体補助部74cの錘取付部Qにおいて、板状の錘部材74hを弁体補助部74cの長手方向に摺動可能に側方から保持する保持部84を備えている。この保持部84は、錘取付面82の先端側に設けられ且つ錘部材74hが着脱される際に錘取付面82に対して面外方向に弾性変形(図13Bに示すたわみ量δの弾性曲げ変形)が可能なフック部86を備えている。
また、フック部86における錘取付面82とは反対側の面(フック部86の下面)には、フック部86の基端部E1と先端部E2との間の厚みd(フック部86の上面と下面と間の厚みd)を部分的に低減させるように凹状の曲がり面86bが形成されている。
これにより、錘部材74hが着脱される際に、フック部86の基端部E1に発生する応力を分散させることができるため、フック部86の基端部E1における応力集中を回避することができる。
よって、応力集中によりフック部86の破損を防ぐことができ、錘部材74hを弁体補助部74cの錘取付部Qに対して確実に取り付けて保持することができる。
したがって、錘部材74hを弁体調整部として大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体補助部74cに確実に設けることができるため大小洗浄切替弁装置64全体の重心Gの位置について、大洗浄モードの弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整することができる。
よって、操作装置32が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材74hの重量により、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cの双方が回動軸部74aを中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0076】
さらに、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、切替弁体74の弁体補助部74cの錘取付部Qにおいて、フック部86の基端部E1が、図12に示す平面視において、フック部86の基端部E1に隣接する錘取付面82に対して少なくとも2つの第1曲率半径ρ1の第1曲がり面(近位側曲がり面90)及び第2曲率半径ρ2の第2曲がり面(遠位側曲がり面92)で接続されている。
また、フック部86の基端部E1側に形成される近位側曲がり面90の第1曲率半径ρ1は、フック部86の基端部E1に隣接する錘取付面82側に形成される遠位側曲がり面92の第2曲率半径ρ2よりも大きく設定されている(ρ1>ρ2)。
これにより、錘部材74hが切替弁体74の弁体補助部74cの錘取付部Qに対して着脱される際に、或いは、錘部材74hが弁体補助部74cの錘取付部Qに取り付けられた状態において、フック部86の基端部E1に発生する応力を分散させることができる。
よって、フック部86の基端部E1における応力集中を回避することができるため、応力集中によりフック部86の破損を防ぐことができ、錘部材74hを弁体補助部74cの錘取付部Qに対して確実に取り付けて保持することができる。
したがって、錘部材74hを弁体調整部として大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体補助部74cに確実に設けることができるため大小洗浄切替弁装置64全体の重心Gの位置について、大洗浄モードの弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整することができる。
よって、操作装置32が大洗浄モードに切替操作された場合には、弁体調整部の錘部材74hの重量により、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74b及び弁体補助部74cの双方が回動軸部74aを中心に開弁方向に回動した状態になり、弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整することができる。
これらの結果、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、便器の大洗浄を確実に実行することができる。
【0077】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の回動軸部74aが各ヒンジ突起68cに対して回動可能に連結されるヒンジ穴74dを形成するヒンジ部となっている。また、この切替弁体74の回動軸部74aについては、ヒンジ穴74dのヒンジ軸線C5が小タンク62内において前後方向に水平方向に延びるように設けることができると共に、切替開口部72の中心軸線C3方向から見て切替開口部72よりも貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)側に設けることができた。
さらに、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bにおいては、回動軸部74aの軸方向に対して直交する方向に突出するように設けられた突出部74gと、この突出部74gの突出する方向に対して直交する方向に設けられた先端部74fとにより、開弁状態の弁体本体部74bについて、突出部74gから先端部74fに向かって水平方向に延びる姿勢が維持されるように重心Gを位置決めすることができた。
これらにより、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74全体の重心Gの位置について、大洗浄モードの弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整することができる。
したがって、便器の大洗浄モードの実行中において、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bが誤って閉弁状態となることを抑制することができるため、水洗大便器2の大洗浄を確実に実行することができる。
【0078】
さらに、本実施形態による洗浄水タンク装置1によれば、便器の小洗浄モードが開始される際に、鎖状又は線状の連結部材(玉鎖78)が操作装置32の引き上げレバー80により引き上げ操作されると、揺動部材76は、切替弁体74の弁体本体部74bが開弁状態である初期位置から玉鎖78と共に引き上げられる。
これにより、揺動部材76は、切替弁体74の弁体本体部74bが閉弁する方向に弁体補助部74cと連結した状態で揺動し、弁体本体部74bが閉弁状態となる。
その後、玉鎖78が引き上げられた状態から解放されると、揺動部材76は、切替弁体74の弁体補助部74cとの連結を解除し、弁体本体部74bの閉弁状態が維持された状態で初期位置まで揺動することができる(図11C参照)。
すなわち、鎖状又は線状の玉鎖78が引き上げられた状態から解放され、引き下げられると、切替弁体74の弁体補助部74cとの連結が解除された状態の揺動部材76のみが、弁体本体部74bや弁体補助部74cとは独立に初期位置まで揺動することができる。
また、貯水タンク本体22に対して小型化や節水化をするために、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74全体の重心Gの位置について大洗浄モードの弁体本体部74bが開弁状態に維持されるように調整すると、例えば、便器の小洗浄モードの実行中において、貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)と第2貯水部(小タンク62の内部領域S2)の水位差ΔWL(=WL2-WL1)が小さくなった場合に、鎖状又は線状の玉鎖78の引き下がる動きによって閉弁状態の弁体本体部78bが開弁してしまうリスクがある。
そこで、本実施形態の洗浄水タンク装置1では、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の弁体本体部74bや弁体補助部74cとは独立に揺動可能な揺動部材76のみに対して鎖状又は線状の玉鎖78を連結させることにより、便器の小洗浄モード実行中に貯水タンク本体22の第1貯水部(小タンク62の外部領域S1)と第2貯水部(小タンク62の内部領域S2)の水位差ΔWL(=WL2-WL1)が小さい状態でも、鎖状又は線状の玉鎖78が引き下げられる動きが、閉弁状態が維持された弁体本体部74bや弁体補助部74cに干渉することを抑制することができる。
これにより、便器の小洗浄モードの実行中において、鎖状又は線状の玉鎖78の引き下がる動きが、閉弁状態の弁体本体部74bを開弁させてしまうリスクを回避することができ、弁体本体部74bの閉弁状態を維持することができる。
したがって、便器の小洗浄モードの実行中において、閉弁状態が維持された弁体本体部74bや弁体補助部74cが誤って開弁する方向に回動し、閉弁状態の弁体本体部74bが開弁状態に切り替わってしまう誤動作を抑制することができるため、水洗大便器2の小洗浄モードを正確に実行することができる。
【0079】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置1を備えた水洗大便器2によれば、大洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の開弁状態を確実に維持することができる共に、小洗浄モードの場合には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体74の閉弁状態を確実に維持することができる。
したがって、便器の大小洗浄モードのそれぞれを正確に実行することができる洗浄水タンク装置1を備えた水洗大便器2を提供することができる。
【0080】
なお、上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1の大小洗浄切替弁装置64については、ジェットポンプユニット42を採用した洗浄水タンク装置1に対して適用した例について説明したが、ジェットポンプユニット42以外を採用した他の形態の洗浄水タンク装置についても適用可能である。
すなわち、ジェットポンプユニット42以外を採用した他の形態の洗浄水タンク装置として、貯水タンク本体内に貯水された洗浄水について、重力により水位を降下させて、貯水タンク本体の排水口から排出し、便器本体4に供給する、いわゆる、重力給水式の洗浄水タンク装置を採用し、この重力給水式の洗浄水タンク装置に対して、本実施形態と同様な大小洗浄切替弁装置を適用させてもよい。
【0081】
また、上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置1の大小洗浄切替弁装置64については、大洗浄モードに切替操作された場合において、弁体本体部74bを開弁状態に維持するように調整する弁体調整部として、錘部材74hを切替弁体74の弁体補助部74cに設けた形態について説明したが、このような形態に限られず、他の形態の弁体調整部を採用してもよい。
例えば、他の形態の弁体調整部として、回動軸部74aを中心に弁体本体部74bに対して並行する側に弁体補助部74cを設け、切替弁体74の弁体本体部74bに対して弁体本体部74bが開状態となる方向に浮力を発生させ易くするフロート等の部材を弁体補助部74c又は弁体本体部74bに設けてもよい。
或いは、切替弁体74の弁体本体部74bにフロート等を弁体調整部として設けると共に、切替弁体74の弁体補助部74cに錘部材74hを弁体調整部として設け、弁体本体部及び弁体補助部74cの双方に対して弁体調整部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 洗浄水タンク装置
2 水洗大便器
4 便器本体
6 ボウル部
8 リム部
10 棚部
12 トラップ排水路
12a トラップ排水路の入口
12b トラップ排水路の上昇管
12c トラップ排水路の下降管
14 排水口
16 便器本体の導水路
16a 第1導水路
16b 第2導水路
18 第1リム吐水口
20 第2リム吐水口
22 貯水タンク本体
22a 貯水タンク本体内の基底面
22b 貯水タンク本体のジェットノズル収容部内の最低底面
24 給水管
26 定流量弁
28 給水弁装置
30 主弁(給水弁)
30a 主弁体
30b 主弁座
30c 圧力室
32 操作装置(操作部)
32a 操作レバー(操作部)
32b 駆動回転軸(操作部)
34 ポペット弁
34a ポペット穴
36 フロート
38 フロート側パイロット弁
38a フロート側パイロット穴
40 真空破壊弁
42 ジェットポンプユニット
44 給水管
46 ジェットノズル
48 流路切替弁
50 スロート管
50a 吸引口
50b 排出口
50c スロート管の下降管路
52 便器洗浄用流路
54 タンク貯水用流路
56 オーバーフロー管
56a オーバーフロー口
58 補給水管
60 大小洗浄切替装置
62 大小洗浄切替用の小タンク(第2貯水部)
64 大小洗浄切替弁装置(大小洗浄切替弁)
66 小タンクの区画壁
66a 前側区画壁
66b 後側区画壁
68 小タンク本体部
68a 小タンク本体部の底面
68b 切替弁支持部
68c ヒンジ突起(ヒンジ部)
68d 連通小穴
70 突出部
70a 突出部の右側区画壁(第1側壁面)
70b 突出部の左側区画壁(第2側壁面)
70c 突出部の最低底面
72 切替開口部
74 切替弁体(大小洗浄切替弁)
74a 回動軸部
74b 弁体本体部
74c 弁体補助部
74d ヒンジ穴
74e 弁体本体部の基端部
74f 弁体本体部の先端部
74g 弁体本体部の突出部
74h 錘部材(弁体調整部)
74i 揺動軸
76 揺動部材
78 玉鎖
80 引き上げレバー
82 錘取付面
84 保持部
84a 基端側前後保持突起
84b 先端側前後保持突起
84c 保持フレーム
84d 基端側中央保持突起
86 フック部
86a 先端側中央保持突起
86b 凹状の曲がり面
88 スリット
88a 前側スリット
88b 後側スリット
90 第1曲がり面
92 第2曲がり面
A 給水管の一次側流路
B 給水管の二次側流路
B0 貯水タンク本体の長手方向中心軸線に対して後側の領域
C1 貯水タンク本体の内部領域を前側領域と後側領域のそれぞれに二等分する長手方向中心軸線
C2 貯水タンク本体の内部領域を左側領域と右側領域のそれぞれに二等分する短手方向中心軸線
C3 切替開口部の開口断面の中心を通り且つ貯水タンク本体の左右長手方向に延びる中心軸線
C4 平面視のスロート管の長手方向の中心軸線
C5 ヒンジ軸線
d フック部の厚み
DWL1 大洗浄及び小洗浄のそれぞれが終了したときの貯水タンク本体内の最低水位
DWL2 小洗浄が終了したときの小タンク内の最低水位
E1 フック部の基端部
E2 フック部の先端部
F0 貯水タンク本体の長手方向中心軸線に対して前側の領域
G 弁体本体部の重心
H ジェットノズル収容部
L0 貯水タンク本体の短手方向中心軸線に対して左側の領域
L1 小タンク内整流領域の左右方向の最大幅寸法
O1 貯水タンク本体の排水口の中心、スロート管の排出口の中心
O2 切替開口部の開口断面の中心
P1 水圧
P2 水圧
Q 錘取付部
R0 貯水タンク本体の短手方向中心軸線に対して右側の領域
R1 貯水タンク本体側整流領域
R2 小タンク内整流領域
S1 小タンクの外部領域(貯水タンク本体内の第1貯水部)
S2 小タンクの内部領域(貯水タンク本体内の第2貯水部)
T 外装タンク
W 洗浄水
W1 小タンクの突出部の前後短手方向の最大幅寸法、小タンク内整流領域の前後方向の最大幅寸法
W2 貯水タンク本体の内部領域を短手方向に二等分したときのそれぞれの最大幅寸法
WL0 止水水位、最高水位
WL1 貯水タンク本体(小タンクの外部領域)の水位
WL2 小タンクの内部領域の水位
δ たわみ量
ΔP 水圧差
ΔWL 水位差
ρ1 第1曲がり面の第1曲率半径
ρ2 第2曲がり面の第2曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13A
図13B
図14