(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】磁性コアを使用して、高い均一性を備えたパルス電界を適用する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H01F 7/20 20060101AFI20241125BHJP
A61N 1/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01F7/20 Z
A61N1/00
(21)【出願番号】P 2021531874
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019063984
(87)【国際公開番号】W WO2020117662
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520022942
【氏名又は名称】ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステイト ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】521241100
【氏名又は名称】ザ ファントム ラボラトリー,インコーポレイテッド
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ポール,デニス
(72)【発明者】
【氏名】グールド,ハリー
(72)【発明者】
【氏名】マロッツィ,リチャード
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0357936(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016651(US,A1)
【文献】特表2005-537864(JP,A)
【文献】特開2001-349250(JP,A)
【文献】特開平10-190392(JP,A)
【文献】特開2006-279214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0185041(US,A1)
【文献】実開昭54-057344(JP,U)
【文献】特開2010-171245(JP,A)
【文献】特開2006-086335(JP,A)
【文献】特表2020-503676(JP,A)
【文献】特開昭62-104104(JP,A)
【文献】特開平06-302424(JP,A)
【文献】国際公開第2014/126220(WO,A1)
【文献】特表2010-521240(JP,A)
【文献】特開昭57-031873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207438(US,A1)
【文献】実開昭48-044313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/20
A61N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電界を生成するための装置であって、
複数のトロイド
構造(1)またはシリンダ構造(1)と、
各前記トロイド
構造または
前記シリンダ構造の周囲に巻き付けられた複数の導電性の巻線(2)と、
前記導電性の巻線(2)に電流を供給する複数のワイヤ(3)とを含み、
ここで、
複数の前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、同軸上に配され、
複数の前記トロイド
構造(1)はそれぞれ前記トロイド構造(1)の半径と等しい距離だけ離れているか、または
複数の前記シリンダ構造(1)はそれぞれ前記シリンダ構造(1)の半径と等しい距離だけ離れていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、高い比透磁率を持つ磁性材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁性材料の比透磁率は1,000以上であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記磁性材料は、ケイ素鋼、粉末状の鉄、ニッケル鉄合金、フェライトセラミックス、鉄とホウ素とケイ素のナノ結晶合金、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記導電性の巻線(2)は、アルミニウム、銀、スズ、亜鉛メッキ鋼、リン青銅、鉛、または金からなる群から選択された材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記導電性の巻線(2)は、AWG10~AWG28の範囲内の銅線で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記導電性の巻線(2)は、前記トロイド
構造または
前記シリンダ構造上で1から200回のコイル配置に巻きつけられることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
電流が前記導電性の巻線(2)を通してランプされる時、磁性材料の内部の磁界が生成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性の巻線(2)における電流が増加または減少するにつれて、磁界は増加または減少し、電界を生み出すことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記電界は、磁界の大きさを経時的に変化させることにより、前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)の内部領域において生成されることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
生成された前記電界の大きさは、前記トロイド
構造または
前記シリンダ構造の磁性材料内部の磁界の変化率に正比例することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、円弧形状であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、非円弧形状であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、閉鎖構造であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)は、非閉鎖構造であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
ヒトまたは動物の被験体が、装置の中心軸に沿って配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
所与の振幅の電界パルスは、前記トロイド
構造(1)または
前記シリンダ構造(1)の前記導電性の巻線(2)にわたって印加された電圧によって生み出されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
パルス電界の振幅は「開ループ」配置において制御され、ここで期待される電界出力は、入力電圧、生み出された電流、およびシステム抵抗から知ることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
装置内で生成された電界の感知のために使用される付加的なコイル巻線をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
付加的なコイル巻線は、電界に対するより高い感度のために、前記トロイド
構造または
前記シリンダ構造の断面を少なくとも1回取り巻くワイヤのループ(5)を含むことを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記ワイヤのループ(5)は、前記トロイド
構造または
前記シリンダ構造の断面にわたる磁束の変化率と大きさが等しい電圧を誘起することを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記ワイヤのループ(5)は、ループのまわりの電圧の測定のためにハイインピーダンス端子で閉じられることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月6日出願の米国仮特許出願第62/776,105号、および2019年12月2日出願の米国仮特許出願第62/942,348号の優先権の利益を主張するものであり、これらは共に、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医療機器、および、疾病と障害の医療処置の分野に関する。より具体的には、本発明は、医学的用途のための、高均一性を備えたパルス電界を適用する方法、およびトロイド状またはシリンダ状の磁性コアを使用するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
パルス電界治療は、現在、遺伝子送達、電気化学療法、および癌治療などの多様な生物学的および医学的用途において広く使用される。パルス電界処置の1つの利点は、非熱的な方式で組織または腫瘍を破壊する能力である。従って、パルス電界処置は、血管および軸索などの、敏感な組織を完全に保存することを可能にする。さらに、この非侵襲性の技術は、傷を残さずに、処置領域における正常な細胞および組織を伴う再生の可能性を与え、および、電流による刺激と異なり、刺激の送達は、はるかにより均一である。
【0004】
従来の機器は、パルス発生器、電極、およびそれらの間の連結リンク、の3部分から成る。パルス発生器は、一定間隔の矩形波パルスを生成する。振幅、パルス幅、周期、および位相遅れは、出力波形の形状を決定する主パラメーターである。パルスの振幅に依存する電界強度と電極間の距離は、多くの場合、処置効果の達成にとって重要である。電極が不適当な場合、一定の標的領域における強さは不十分であり、結果として不完全な処置効果をもたらす。
【0005】
電界は、レーダーにおいて使用されるのに似た装置によって生成される。このこは、コストと可用性に関する、ある結果を有する。最も典型的な設備は、ある程度電極の侵食を回避するために、短い矩形波を生成し、および極性を反転する。しかしながら、二極発電機は、単極性のものの約2倍コストがかかる。他の波形は、指数関数的減衰と正弦を含む。正弦の波形は普通の無線設備に似た設備を使用するため、生成するのが多少より簡単であるが、それはほんの瞬間だけそのピークパワーに達し、そのため、臨界電界強度上に1サイクル当たり矩形波が送達するよりも少ないエネルギーしか送達できない。
【0006】
そのような電場パルスを生成するための2つの選択肢は明白である。第1は、内側に均一磁界を生成する、ワイヤの大きなコイルなどの、ソレノイド構造を使用することである。患者はソレノイドの内側に配置されることになる。しかしながら、この技術には大きな不利益がある。その不利益の第1のものは、そのようなソレノイドの軸コアに沿って生成される電界は0であり、および、重心軸からの距離に対して線形に増加するということである。従って、電界は最も重要な領域において消失するだけでなく、あらゆる場所で非常に不均一である。この不均一性は、実際、患者がランプされた磁界領域内に配置されるいかなる技術にとっても本来的な制限である。変化する磁界の領域内の電界は必ず電磁界の物理学により不均一になる。そのような技術の第2の不利益は、そのようなコイルが生成する熱量である。内側にヒトの患者または程々の大きさの動物が適合するよう十分に大きいそのようなコイルが設計される場合、コイルは極めて大きな熱量を生成し、それは装置から取り除かれなければならないだけでなく、装置が適用された建物に大きなHVAC必要条件を課することになる。装置がヒトまたは大型動物のサイズへの適用のために大きくされるには、50~400キロワットの範囲のピーク熱出力が生成されるだろう。そのような出力は、建物施設にとって大きな挑戦を強いる。
【0007】
電界を生成するための第2の選択肢は、電界を生成するために、導電性のプレートなどの、荷電体の構造を使用することである。この技術の不利益は、最も実践的な実装が、電界の向きが患者の表面に対して垂直に整列するような方式で電界を適用することになることであり、そのことによって、組織内の水分子の誘電分極のために患者内部の電界には大きな減少が生じる。さらに、実際の場は、患者によって占められるプレート間の空間のパーセンテージに非常に影響を受けやすい。当該技術のさらなる不利益は、患者の幾可学的形状に対する敏感さである。より大きな胴回りを持った患者は、異なる印加電圧を必要とすることになる。胴と比較される腕や脚などの、様々なサイズを有する身体の様々な部位は、非常に異なった電界適用量を受ける。前記プレートは、患者に接してプレートを直接配置することができるかもしれないが、もしプレートが可撓性でなければ、それらは患者の皮膚の一部としか接触しない。このように、皮膚のインピーダンスを克服するためにエネルギーの相当な量が要求され、および、その電気刺激は快適でなく、多くの場合苦痛を伴う。そのような制限は性質として実際的であり、および、本明細書に開示される方法は、そのようなアプローチに比べて多数の長所を提供すると考えられる。
【0008】
細胞死を誘発するために電気パルスを使用することにおいて、最近、進歩が遂げられたが、当該技術分野には、正常組織を破壊することなく、病気の、または障害のある組織、例えば、腫瘍組織など、を破壊するための改良された方法に対するニーズが、まだなお存在する。特に、高均一性を備えた大量のパルス電界を生成する方法およびシステムに対するニーズがある。
【発明の概要】
【0009】
前述の観点から、本発明の目的は、医学的応用のための、高均一性を備えた大容積のパルス電界を生成することへのニーズに取り組むことである。本発明の実施形態は、空虚な空間において0~100Volts/meterの範囲にある振幅を持ち、各々が1~50ミリ秒の範囲の持続時間を持つ、パルス電界を生み出す方法およびシステムに関する。前記電界は、人間のまたは動物の患者を配置するのにふさわしい、大きな容積を占める。前記電界は、優れた均一性を有する。
【0010】
一実施形態は、パルス電界を生成するための装置を提供し、該装置は、トロイド形状の、電線を巻き付けられた多数の磁性コアを含む。別の実施形態は、電界を生成するための装置を提供し、該装置は、磁性材料がシリンダの軸コアのまわりの環状領域を占めるように、および、シリンダの中央部は空虚であるように、シリンダ状の幾何学的形状に形作られた多数の磁性コアを含む。様々な設計は、長いシリンダに似たコア、およびトロイドの幾何学的形状に似た短いコアを含む。磁性コアは電線を巻き付けられ、電流でパルスされる時、トロイド状またはシリンダ状のコアの内側領域に高均一性の電界を生成する。これらの電界パルスは、薬剤と共に使用される時、標的化浸透圧溶解(TOL)と呼ばれるプロセスを通じて癌細胞を破壊する。US8,921,320を参照されたい。
【0011】
磁性コアは、高透磁率を備えた材料から構築される。電流が電気の巻線に適用された時、大きな磁界が磁性材料の内側に生成される。この磁界は、トロイド状またはシリンダ状のコアの軸に沿って、装置の中心の近くで、非常に均一である。時間依存の電流の印加は、コアの内側における変化する磁界を生じ、それは、次に、治療のために使用することができる、コア材の外側の電界を生成する。電界パルスの振幅、持続時間、および時間間隔は、電気の巻線に印加された電圧および電流を制御することにより制御することができる。
【0012】
生成された電界の重要な性質は、高均一性、およびヒト被験体または多くの動物被験体の長軸に沿って向けられる方向である。装置の別の重要な態様は、それが非常に低消費電力で生成される電界を生成し、低コストの駆動電子機器、設備にとって低い消費電力、および臨床施設のHVACシステムへの影響がないこと、に結びつく。
【0013】
トロイド状またはシリンダ状のコアは、同軸状に、生成された電界の均一性を最適化するように間隔をとって配置される。生成された電界は、トロイド状またはシリンダ状のコアの軸方向に沿って向けられている。患者は、トロイド状またはシリンダ状のコアの軸に沿って内側の領域に配置される。
【0014】
システムは、ユーザーが電界パルスの振幅、持続時間、および間隔を制御することを可能にする一組の駆動電子機器に接続された、トロイド状またはシリンダ状の装置から成る。前記電子機器は、パルス化された電圧または電流の波形を生成するための構成要素、波形の出力を増幅し、フィルタリングするための構成要素、および出力を制御するためのユーザーインターフェースを示すマイクロプロセッサーからなる。
【0015】
具体的に、一実施形態は、パルス電界を生成するための装置を提供し、該装置は:
1つ以上のトロイドまたはシリンダ構造と、
各トロイドまたはシリンダ構造の周囲に巻かれた複数の導電性の巻線と、
導電性の巻線に電流を供給する複数のワイヤと、を含む。
【0016】
一実施形態によると、トロイド構造は、1,000から40,000の範囲の高い比透磁率を備えた磁性材料で作られている。40,000の、またはより高い透磁率を備えた磁性材料が、この用途に使用され得る。適切な磁性材料のいくつかの例は、ケイ素鋼、粉末状の鉄、ニッケル鉄合金、フェライトセラミックス、鉄とホウ素とケイ素のナノ結晶合金、を含む。導電性の巻線は、AWG10~AWG28の範囲内の銅線で作られ、および、トロイド構造上に、典型的には、1回から200回コイル配置に巻きつけられる。導電性の巻線のための適切な材料の他の例は、制限されないが、アルミニウム、銀、スズ、亜鉛鍍金鋼、リン青銅、鉛、および金を含む。電流が導電性の巻線を通してランプされる時、磁性材料の内部の磁界が生成される。
【0017】
一実施形態によると、複数のトロイド構造は同軸状に整列され、トロイド構造の半径と等しい距離だけ離される。少なくとも別の実施形態では、3つのトロイド構造が軸方向に配置され、2つの同一のトロイド構造の中間に、より大きな半径の1つのトロイド構造が位置する。
【0018】
別の実施形態によると、シリンダ構造は、典型的に、1,000を超える高い比透磁率を備えた磁性材料で作られる。いくつかの適切な磁性材料の例は、制限されないが、ケイ素鋼、粉末状の鉄、ニッケル鉄合金、フェライトセラミックス、鉄とホウ素とケイ素のナノ結晶合金、を含む。導電性の巻線は、AWG10~AWG28の範囲内の銅線で作られ、および、シリンダ構造上で1から200回のコイル配置に巻きつけられる。導電性の巻線のために適切な材料の他の例は、制限されないが、アルミニウム、銀、スズ、亜鉛鍍金鋼、リン青銅、鉛、および金を含む。電流が導電性の巻線を通してランプされる時、磁性材料の内部の磁界が生成される。
【0019】
別の実施形態によると、複数のシリンダ構造は同軸状に整列される。シリンダ構造の間の間隔、および各シリンダ構造を取り巻くコイルを通って流れる電流は、最適な電界強度および均一性を提供するように、並びにインダクタンスと抵抗などの、望ましい電気的性質を有するように、調節される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によると、パルス電界を生成するための装置は、装置内で生成された電界の感知のために使用される付加的なコイル巻線をさらに含む。付加的なコイル巻線は、電界に対するより高い感度のために、トロイド状またはシリンダ状の構造の断面を少なくとも1回取り巻くワイヤのループを含み、ここで、ワイヤのループは、トロイド状またはシリンダ状の構造の断面にわたる磁束の変化率と大きさが比例する電圧を誘起する。
【0021】
別の実施形態は、電界を伴う治療の処置のためのシステムに関し、該システムは:
パルス電界を生成するためのトロイドまたはシリンダ装置と、
駆動および感知用回路と、
前記装置を前記駆動および感知用回路に接続する複数のケーブルと、
前記装置と前記駆動および感知用回路とを操作するためのユーザーインターフェースを提供するマイクロプロセッサーと、を含む。
【0022】
一実施形態によると、磁性のトロイドまたはシリンダ装置は、1つ以上のトロイドまたはシリンダ構造と、トロイドまたはシリンダ構造の周囲に巻かれた導電性の巻線と、導電性の巻線に電流を供給するワイヤとを含む。パルス電界は、薬剤と組み合わされた時、癌を処置するための標的化浸透圧溶解の用途に使用される。
【0023】
さらなる実施形態は、電界を伴う治療の処置のための方法であって、該方法は、磁性のトロイドまたはシリンダ装置によってパルス電界を生成する工程であって、ここで磁性のトロイドまたはシリンダ装置は1つ以上の磁性のトロイドまたはシリンダ構造と、トロイド構造に巻き付けられた導電性の巻線と、導電性の巻線に電流を供給するワイヤと、を含む、工程を含む、方法に関する。この方法は、薬剤と組み合わされた時、癌を処置するための標的化浸透圧溶解の用途に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、典型的な実施形態を例示する1つ以上の図面に基づいて、以下により詳細に記載される。
【0025】
【
図1】巻線が描写された単一のトロイドである。トロイドは、高透磁率の磁性材料から成り、その一例はケイ素鋼である。
【
図2】巻線を伴う単一のシリンダが描写されている。シリンダは高透磁率の磁性材料から成り、その一例はケイ素鋼である。
【
図3】適切な組織を配置するために十分な幅の切目を除いて閉じている、磁気構造を有するトロイドまたはシリンダ構造である。
【
図4】トロイド状のコアの内側にある空領域において電界を生み出すように配置された、2つのトロイド状のコアである。
【
図5】電界露出の拡張された領域を提供するために同軸状に配置された複数のシリンダである。
【
図6】電界へのより高い感度のための、トロイド断面を1回または2回以上取り巻く場合がある、ワイヤのループである。
【
図7】エンクロージャ内にトロイド状またはシリンダ状のコアを含み、および、電界を伴う治療の用途のために制御システムに接続された治療システムである。
【
図8】TOL用途に組み合わされる典型的なパルス列である。
【
図9】TOLで処置されたマウスは、対照グループにおけるマウスよりも有意に長くかかって人道的なエンドポイント安楽死基準に達した。矢印は数日間の治療を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、およびシステム等に限定されず、したがって変更しうることを理解されたい。本明細書で使用された用語は、特定の実施形態のみについて記載するためのものであり、且つ、請求項により単独で定義される本発明の範囲を制限するようには意図されていない。
【0027】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、他に明記されない限り、次の用語は、以下に示される意味を有する。
【0028】
「比透磁率」は、空きスペースの透磁率に対する特定の媒体の透磁率の比率を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語は、個々の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を制限することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈上他の意味を明白に示すものでない限り、同様に複数形を含むことを意図している。用語「含む」および/または「含むこと」は、本明細書での使用時に、明示された特徴、整数、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を妨げないことが、更に理解される。
【0030】
以下の記載および図面は、当業者がそれらを実行することを可能にするために、十分に具体的な実施形態を例示する。他の実施形態は、構造的、論理的、電気的、プロセスの、および他の変更を組み込み得る。いくつかの実施形態の部分および特徴は、他の実施形態のものの中へ含まれるか、または置換され得る。
【0031】
この発明は、大きな(人体のサイズの)容積中にパルス電界を生み出すニーズに取り組む。このニーズは、癌細胞の細胞膜におけるナトリウムチャネルが開くように刺激するためにそのような電界パルスを使用する標的化浸透圧溶解(TOL)の用途の中で起こる。US8,921,320を参照されたい。関連付けられる治療効果が均一になるように、高度に均一な電界を有していることは望ましい。
【0032】
当該技術は、トランスコアなどの高透磁率材料に閉じ込められる、ランプされた磁界を使用することを含む。好ましい実施形態は、内側にわたって患者を配置するために十分に大きな内側直径を備えたトロイド状かシリンダ状のコア形状、並びに、患者取扱いハードウェアなどの、装置の他の構成要素である。
【0033】
電界は
図1に示されるトロイド状の装置によって生成される。トロイド装置は、ケイ素鋼または他の材料などの、一般に電気変圧器のコアに使用される高透磁率を備えた材料で作られたトロイド構造(1)並びに、トロイド材料に巻き付けられ、ワイヤー(3)によって電流が供給される、導電性の巻線(2)から成る。トロイドの磁性材料は典型的には1,000~40,000の範囲内の比透磁率を有することになる。透磁率は可能な限り大きいことが望ましい。適切であると考えられるいくつかの他の材料は、例えば、粉末状の鉄、ニッケル鉄合金、フェライトセラミックス、および、鉄とホウ素とケイ素のナノ結晶合金である。導電性の巻回は、典型的にAWG10~AWG28の範囲内の銅線であり、および、駆動回路の他の態様に応じてトロイド上のコイル配置に典型的には1~200回巻き付けられる。
【0034】
トロイド(1)は、変圧器に似た方式で、
図1に描写されるように電流通過ワイヤー(2)のコイルがぴったりと巻きつけられる。トロイドは高透磁率磁性材料を含む。磁性材料の一例は、限定されないが、ケイ素鋼を含む。電流はこれらのワイヤを介してランプされ、磁性材料の内部に強い磁界が生成される。この磁界は、ワイヤ中の電流が増加または減少するにつれて、増加または減少し、ファラデー効果によって、それに伴う電界を生み出す。磁界の大きさを経時的に変化させることによって、
図1に描写されるようなトロイド状のコアの内側の領域によって画定された領域に電界が生成される。
【0035】
巻線(2)における電流は、トロイド材料の高透磁率の結果としてトロイドの内側に強い磁界を生み出す。これらの巻線における電流が時間の中で変化させられるとき、電流の変化はトロイドの内側の磁界の変化を生み出す。この変化する磁界は、ファラデーの電磁誘導の法則によって、トロイド材料内に電界を生成し、しかも、トロイドの中央領域(4)を含むトロイド材料の外側の領域にも電界を生成する。生成された電界の大きさは、トロイド材料の内部の磁界の変化率に正比例する。
【0036】
図1のトロイド・ユニット(1)は原則としては非円形の幾何学的形状にされてもよく、および完全に閉鎖した構造である必要はない。低電力の入力で高均一性の電磁界を生成するため、円弧形状および閉鎖した構造は好ましい実施形態である。切目があるトロイドなどの閉じていない形状を用いると、必要な入力電源は増加されることになるが、それでもまだ磁性材料を使用しないことに比べて所要電力に実質的減少がある。電界パルスが小さな容積だけにわたって望まれる場合、
図3でのように、適切な組織を配置するために十分な幅の切目を除いて閉じている磁気構造を有していることにより、電磁界は生み出され得る。
【0037】
シリンダ状の装置によって生成される電界は、
図2に示される。装置は、ケイ素鋼または他の材料などの、一般に電気変圧器のコアに使用される高透磁率を備えた材料で作られたトロイド構造(1)、並びに、シリンダ材料に巻き付けられ、ワイヤー(3)によって電流が供給される、導電性の巻線(2)から成る。シリンダの磁性材料は典型的には約1000の比透磁率を有することになる。透磁率が可能な限り大きいことは望ましい。適切と考えられるいくつかの他の材料は、ケイ素鋼、粉末状の鉄、ニッケル鉄合金、フェライトセラミックス、および、鉄とホウ素とケイ素のナノ結晶合金である。導電性の巻回は、典型的にAWG10~AWG28の範囲内の銅線であり、および、駆動回路の他の態様に応じて、シリンダ上のコイル配置に典型的には1~200回巻き付けられる。
【0038】
シリンダ(1)は、変圧器に類似する方式で、
図2に描写されるような電流通過ワイヤー(2)のコイルがぴったりと巻き付けられる。シリンダは高透磁率磁性材料を含む。磁性材料の一例は、限定されないが、ケイ素鋼を含む。電流はこれらのワイヤを通してランプされ、磁性材料の内部に強力な磁界を生成する。この磁界増加は、ワイヤ中の電流が増加または減少するにつれて、増加または減少し、ファラデー効果によって、それに伴う電界を生み出す。磁界の大きさを経時的に変化させることによって、電界は、
図2に描写されるようなシリンダの内側の領域によって画定された領域に生成される。
【0039】
巻線(2)における電流は、シリンダを構成する磁性材料の高透磁率の結果としてシリンダの内側に強い磁界を生み出す。これらの巻線における電流が時間の中で変化させられるとき、電流の変化はシリンダの内側の磁界の変化を生み出す。この変化する磁界は、ファラデーの電磁誘導の法則によって、磁性シリンダ材料内に電界を生成し、しかも、シリンダの中央領域(4)を含むシリンダ材料の外側の領域にも電界を生成する。生成された電界の大きさは、シリンダ材料の内部の磁界の変化率に正比例する。
【0040】
図2のシリンダ・ユニット(1)は原則としては非円形の幾何学的形状にされてもよく、および完全に閉鎖した構造である必要はない。低電力の入力で高均一性の電磁界を生成するため、円弧形状および閉鎖した構造は好ましい実施形態である。切目がある円筒体などの閉じていない形状を用いると、必要な入力電源は増加されることになるが、それでもまだ磁性材料を使用しないことに比べて所要電力に実質的減少がある。電界パルスが少容量だけにわたって望まれる場合、
図3でのように、適切な組織を配置するために十分な幅の切目を除いて閉じている磁気構造を有していることにより、電磁界は生み出され得る。
【0041】
直径と離隔距離に関して注意深く設計された幾何学的な関係でそのようなトロイド状またはシリンダ状のコアの多重性を用いることによって、高い電場均一性の大きな領域を生成し得る。一実施形態は、電流から磁界を生み出すために用いられているヘルムホルツコイルと類似している。
図4において描写されるように、この配置において、トロイド状のコアは、共通の軸コアを共有し、トロイド状かシリンダ状のコアの半径と等しい距離だけ離されるように直列にされる。別の実施形態は、
図5示され、ここで複数のシリンダ状のコアが共通の軸を共有するように配置される。
図4および
図5に描写されたどちらの構成でも、患者は装置の中心軸に沿って配置される。そのように配置された時、電界はトロイド状またはシリンダ状のコアの軸に沿って広がり、好ましい用途において、ヒトの患者または多くのタイプの獣医学の患者の長軸沿って広がる。そのような構造は、2個のコイルに関して電界均一性を最大限にする。より大きな均一性の領域は、2個を超えるコイルを用いることにより生み出し得る。例えば、3個のコイルを用いて、磁界用のマクスウェル・コイルに類似した構造を使用してもよく、それは2個の同一のコイルの中間に位置するより大きな半径のコイルを含んでいる。そのような設計は、システム費用、重量、および複雑さを負担することで、均質な容積を増加するために任意に多くのコイルへと拡張し得る。
【0042】
所与の振幅の電場パルスを得るために、コイルは電圧パルスで駆動される。コイルの巻線にわたって印加された電圧は、コイルまわりの電界を生み出し、ちょうどどのようなインダクタにおいても生じるのと同様に、巻線におけるものとは反対の電圧を誘導する。この反対の電圧を生み出す電界は望ましい電界である。印加電圧のいくらかは巻線および回路における他の構成要素の抵抗において消費されるが、主要な部分は望ましい電界を生み出す役割を担う。この方法で電界を生成することには、3つの主要な便益がある。第1に、電界には高い空間的均一性がある。第2に、電界は装置内に横たわっている患者の表面に対して接線方向を向く。第3に、所要電力と発熱は他のいくつかの方法に対して非常に低い。治療が身体または処置領域の全体にわたって一貫したやり方で適用されるように、高均一性が望まれる。この用途に関して使用可能な治療の領域は、電界強度の変位が空虚な空間においておよそ10%未満であると考えられる。
【0043】
患者の表面に接線方向に向けられた電界が望ましいのは、身体内部の水分子の極性化から生じる電界の減少を最小限にするためである。常水は非常に強い分極率(電気感受率)を有し、そのことは身体内部の電界に大きな減少をもたらす。この効果は表面に垂直に向いた電界にとって最大となり、75~80倍高い電界減少を伴う。患者の表面に沿う向きの電界については、減少は、ほとんど減少無しから約20倍だけの減少までに及ぶように、はるかに小さくなり得る。
【0044】
トロイド状またはシリンダ状のコアにおいて高い磁化率を備えた材料を使用するため、この技術のための所要電力は、非常に低い。必要とされる電力および生成された熱は、磁性材料を使用しなければ10,000倍以上高くなりえ、電気設備上の面倒な要件、熱除去に関する工学的な挑戦、患者の安全性の問題、およびHVACシステムを構築するための厳しい特別な要件に結びつく。
【0045】
そのようなパワーの概算は、シリンダ状の幾何学的形状を使用して所望の磁界を産出するために必要とされる電流密度を考えることにより作ることができる。そのような比較のために使用する1つの有用な基準幾可学的形状は、半径R1から半径R2までの空間において、長さLにわたって、主として方位角の方向に流れる電流がシリンダ状の環形を占めるためのものである。当業者は、容易に、ソレノイドの軸に沿って向けられた所与の磁界を生み出すのに必要とされる電流密度を計算することができ、および、銅の導電率を用いて、生成される熱密度を見積ることができる。例えば、内径70cmおよび外径110cm、1メートルの長さのシリンダ状の環形を満たす固体の銅を用いて、40キロワットを超えるピーク発熱を生じ、および2000ポンド以上の銅を必要とすることになる。
【0046】
同様の電界を生成するために本開示に記載される装置において必要とされるピーク電力は、トロイドにおいてケイ素鋼などの高透磁率材料を用いる場合、5~20ワットの範囲にわたり、および、シリンダにおいてケイ素鋼などの高透磁率材料を用いる場合、典型的に100ワット未満である。電力のこの大きな減少は、磁性材料の非常に高い透磁率の結果であり、同じ巻線パターンについて空虚な空間におけるものよりほぼ4桁大きな磁界を磁性材料の内部にもたらす。
【0047】
電界の振幅は「開ループ」配置で制御される場合があり、ここで期待される電界出力は、入力電圧、生み出された電流、およびシステム抵抗から知ることができ、または、フィードバックループが用いられる「閉ループ」配置で制御される場合がある。電界は下記に述べられた手法で測定することができ、および、その情報は、所望の電界振幅を生み出すために印加電圧を調節するフィードバックループにおいて電子工学システムへとフィードバックされる。
【0048】
電界の測定は、計算と測定の組合せによって行われる。局所的な電界の測定は非常に困難であり得るが、統合的な測定は閉ループのまわりで実行され得る。
図6のようにトロイドまたはシリンダの断面を囲むワイヤのループ(5)は、磁束のほぼすべてが磁性材料内に包含されているため、トロイド/シリンダの断面にわたる磁束の変化率と大きさが等しい電圧を誘導する。この積分電圧は、断面のまわりのループが何周するかのみに依存し、および、他の点では、ループが通る進路には依存しない。
【0049】
電界の空間依存性は既知の幾可学的形状から計算されてもよく、および、単一ループのまわりで測定された電圧に関してもよい。ループのまわりの電圧の測定を実行するために、ワイヤのループはトロイドまたはシリンダの断面のまわりに張り渡され、および、オシロスコープまたは任意の高い入力インピーダンスの端子への入力などの高インピーダンス端子において閉じられる。端子の入力インピーダンスがワイヤの抵抗よりはるかに大きい限り、そのとき、ループのまわりで誘導されたほとんど全部の電圧は、高インピーダンス端子にわたって減少させられることになる。ループのまわりのこの電圧は、電界強度について局所値を得るために、計算された電界の空間分布と共に用いられ得る。この容量では、単一ループのまわりで誘導された電圧は、空間的分布に対する尺度または較正因子として働く。
【0050】
従って、装置の付加的要素は、電界へのより高い感度のためにトロイドまたはシリンダの断面を一回または二回以上取り巻く場合があるワイヤのループ(5)である。このワイヤは、電界のモニタリングに用いられるために、または先記載されたフィードバックループで使用するために、システム電子機器に接続される。
【0051】
駆動電子機器内の電圧パルスは様々なタイプの増幅器構成で生み出すことができる。トロイドまたはシリンダの巻線を駆動する15~100ボルトの範囲における電圧を有していることが、通常望ましいため、D級増幅器構成は、増幅器の出力トランジスターにおいて大きな放熱性を回避するために望ましい。この構成は、増幅器の出力を制御するためにパルス幅変調(Pulse Width Modulation)(PWM)を使用し、およびその高性能と低コストで知られている。
【0052】
図7に描写されるように、電界を生み出す装置は、薬剤に組み合わせた時、いくつかのタイプの癌を処置することができる治療の容量において適用され得るシステムにさらに組み入れられてもよい。具体的には、前記システムは、エンクロージャ内にトロイド状またはシリンダ状のコアを含み、および、電界を伴う治療の用途のために制御システムに接続される。
図7は、システムのブロック図を示す。トロイドまたはシリンダ装置(6)は、患者が配置される内部の領域に電界パルスを生ずる。ケーブルは、(7)トロイドユニットの巻線に電圧または電流のパルスを供給する駆動および感知用回路(8.1~8.3)にトロイドまたはシリンダ装置を接続する。トロイドユニットまたはシリンダーユニットの内部の感知用コイルは、トロイドユニットまたはシリンダーユニットの内部に生じた電界を測定し、出力を制御するために用いられ得る。マイクロプロセッサー(9)は、装置のオペレーターにユーザーインターフェースを提示し、および、パルスの振幅、持続時間、および間隔を制御し、並びに、パルスを開始および停止するための駆動および感知用回路に相互接続する。
【0053】
駆動電子機器は、ユーザーがパルス振幅、持続時間、および間隔を制御すること、並びにパルス療法を開始および停止することを可能にするユーザーインターフェースをホストするコンピューターに接続される。コンピューターはシリアルバスによって駆動電子機器と通信し得るが、他の選択は可能である。
【0054】
パルス電界システムは、標的化浸透圧溶解(TOL)と呼ばれる治療の技術に適用することができる。US8,921,320を参照されたい。技術の背後にある原理は、電界パルスが、細胞膜におけるナトリウムチャネルが開くように刺激し、細胞の中へより多くのナトリウムを通過させるということである。癌細胞は非癌細胞よりはるかに多くのナトリウムチャネルを有することは知られている。結果として、細胞内側のナトリウム濃度は増加する。薬剤は、ナトリウムの細胞からの出口を閉鎖する。結果として、細胞の内側の浸透圧は増加し、その細胞の破裂が生じる。癌細胞は非癌細胞よりはるかに多くのナトリウムチャネルを有するため、正常組織は免れる。
【0055】
図は、TOL用途に組み合わされる典型的なパルス列である。電界振幅は、自由空間において0.1V/mから100V/mの範囲内にある。パルスは、およそ1~50ミリ秒の前方偏波と、後に続く同様の持続時間と振幅の逆偏波と、からなる。パルスは終了から開始まで5~50ミリ秒ずつ離されている。タイミング、持続および振幅の正確な詳細は、適用において非常に幅広く変化し得る。
【0056】
図9は、乳癌マウスモデルにおける浸透圧溶解を誘発するパルス磁界の治療効力のインビボにおけるバリデーションを描写する。雌の、異種移植片(下背に0.7~1.2cmの直径)をもつ免疫能力のあるBALBcマウス(n=8)の4つの群が、7mg/kgのジゴキシンまたは食塩水中500Kの非常に悪性のマウス乳癌4T1細胞を1時間間隔で5回注射(首の後ろに皮下注射)された後に確立された。このプロトコルは、血管が乏しい組織でさえ定常的な薬物動態を確立する。マウスは最後の注射の15分後に30分間、トロイド装置によって生成されたパルス磁界に暴露された。この処置は、デイ0(処置の第1の日)、およびデイ1に実施された。マウスは腫瘍増殖についてモニターされ、人道的エンドポイント安楽死のNIH基準を満たした時、殺された。TOLで処置されたマウスは、対照グループにおけるマウスよりも有意に長くかかって人道的エンドポイント安楽死基準に達した。
【0057】
トロイドまたはシリンダ装置によって生じる電界には、また他の治療の、または工業的な応用があり得る。
【0058】
上記に記載された実施形態が本発明の原理の用途を構成する多数の、および改変された他の実施形態の例証にすぎないことは理解されるよう。他のそのような実施形態は、この発明の趣旨または範囲から外れずに、当業者によって容易に考案されるかもしれず、および、それらが本発明の範囲内にあると見做されることは意図されている。
【0059】
参照符号のリスト
1 トロイド/シリンダ構造
2 導電性巻線
3 ワイヤ
4 トロイド構造の中央部領域
5 トロイド構造の断面を取り巻くワイヤのループ
6 トロイド/シリンダ装置
7 ケーブル
8 駆動および感知用回路
9 マイクロプロセッサー