IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社京都プラテックの特許一覧

<>
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図1
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図2
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図3
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図4
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図5
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図6
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図7
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図8
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図9
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図10
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図11
  • 特許-乗物用深紫外線照射装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】乗物用深紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
B60H3/06 B
B60H3/06 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021112830
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009487
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394001087
【氏名又は名称】株式会社京都プラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽平
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
(72)【発明者】
【氏名】倉本 興一
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-140087(JP,A)
【文献】特開2016-204204(JP,A)
【文献】特開2017-133700(JP,A)
【文献】特開2021-055892(JP,A)
【文献】特開2022-119199(JP,A)
【文献】特開2023-009395(JP,A)
【文献】実開平05-032039(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0207066(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112172476(CN,A)
【文献】中国実用新案第213312099(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室内の取付面に取り付けられる乗物用深紫外線照射装置であって、
深紫外線を照射する深紫外線照射素子を主体とする深紫外線照射部と、当該乗物用深紫外線照射装置を冷却するための冷却ファンと、当該乗物用深紫外線照射装置を制御する制御部と、前記深紫外線照射部,前記冷却ファンおよび前記制御部を収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられた温度センサと、乗員によって操作されて当該乗物用深紫外線照射装置を起動させるためのスイッチと、を備え、
前記ハウジングは、吸気口と排気口とを有し、前記深紫外線照射部が前記冷却ファンと前記排気口との間に位置するように、前記深紫外線照射部と前記冷却ファンとを収容するものとされ、
前記深紫外線照射部は、前記深紫外線照射素子が実装された照射基板を有し、
前記制御部は、前記深紫外線照射素子を駆動する駆動素子と、前記駆動素子が実装された制御基板を有し、
当該乗物用深紫外線照射装置は、前記取付面に取り付けられた状態において、
前記制御基板が、前記冷却ファンに対して前記取付面に直交する方向に重畳する状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記吸気口から前記冷却ファンまでの吸気路に位置しており、
前記照射基板が、前記冷却ファンに対して前記取付面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記冷却ファンから前記排気口までの排気路に位置しており、
前記温度センサは、前記制御基板上に実装され、前記ハウジング内において前記冷却ファンと前記吸気口との間に配され、
前記制御部は、前記スイッチがオン状態とされた際に前記温度センサの検出結果を取得し、その取得した温度が第1基準値以上である場合には、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止し、前記深紫外線照射部によって深紫外線を照射している状態において、前記温度センサの検出結果を取得し、その取得した温度が第2基準値以上となった場合に、深紫外線の照射を停止する、乗物用深紫外線照射装置。
【請求項2】
前記駆動素子は、前記制御基板に対して、前記取付面に直交する方向において前記冷却ファンと重畳する位置に実装されており、
前記温度センサは、前記制御基板に対して、前記駆動素子より前記吸気口に近い位置に実装されている請求項1に記載の乗物用深紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第2基準値は、前記第1基準値と等しくされている請求項1または請求項2に記載の乗物用深紫外線照射装置。
【請求項4】
当該深紫外線照射装置は、可視光を照射する可視光照射素子を主体とする可視光照射部を備え、
前記制御部は、前記深紫外線照射部により深紫外線を照射している場合に、前記可視光照射部によって、定められた点灯態様である第1態様で可視光を点灯させ、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止する場合には、第1態様とは異なる点灯態様である第2態様で可視光を点灯させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用深紫外線照射装置。
【請求項5】
当該乗物用深紫外線照射装置は、乗員を検知する人感センサを備え、
前記制御部は、前記深紫外線照射部を作動させる前において、乗物室内に乗員がいることを検知した場合に、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止するとともに、前記深紫外線照射部を作動させている状態において、乗物室内に乗員がいることを検知した場合には、前記深紫外線照射部の作動を停止する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用深紫外線照射装置。
【請求項6】
前記取付面に対して着脱可能とされている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用深紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用深紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、菌やウイルスへの危機感が大きくなり除菌へのニーズが高まっており、乗物においても、使用後都度の除菌が望まれている。紫外線の中でも短い波長を有する深紫外線(100~280nm)は、特に除菌効果があることが知られており、従来から、深紫外線を乗物に照射することが検討されている。下記特許文献1には、車室に固定される灯具ボディ内に紫外光を発光する紫外光源を設けた構成の車両用室内灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-254673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した深紫外線の照射装置は、従来の可視光照射装置や長波長の紫外線照射装置と比較して、発光効率が低く、大きな熱を発生させる。また、深紫外線の発光素子自体の耐熱性は、可視光の発光素子に比較して低いため、温度が上昇した状態で使用を続けると、深紫外線の発光素子自体が劣化することになる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、深紫外線の発光素子の劣化を抑制し、耐久性に優れた乗物用深紫外線照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ここに開示される乗物用深紫外線照射装置は、
乗物室内の取付面に取り付けられる乗物用深紫外線照射装置であって、
深紫外線を照射する深紫外線照射素子を主体とする深紫外線照射部と、当該乗物用深紫外線照射装置を冷却するための冷却ファンと、当該乗物用深紫外線照射装置を制御する制御部と、前記深紫外線照射部,前記冷却ファンおよび前記制御部を収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられた温度センサと、乗員によって操作されて当該乗物用深紫外線照射装置を起動させるためのスイッチと、を備え、
前記制御部は、前記スイッチがオン状態とされた際に前記温度センサの検出結果を取得し、その取得した温度が第1基準値以上である場合には、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止することを特徴とする。
【0007】
乗物用深紫外線照射装置は、乗物内に乗員がいない状態において作動させて、除菌を行うことが一般的である。一方で、乗物は、乗員がいない状態において、乗物室内の温度が上昇し易い。さらに、乗物は、屋外に置かれる場合も多く、そのような場合は、乗物室内の温度上昇が特に顕著である。そして、乗物室内の気温が上昇した状態で、深紫外線照射装置を作動させると、深紫外線照射素子も温度が上昇し易いため、深紫外線照射素子の劣化が進行し易い。
【0008】
それに対して、この構成の深紫外線照射装置は、スイッチがオン状態とされた直後に、温度センサの検出結果に基づいて、自身を作動させるか否か、つまり、深紫外線照射部による深紫外線の照射を行うか否かが判断されるようになっている。スイッチがオン状態とされた直後に検出されるハウジング内の温度は、乗物室の室内温度に相当すると考えられ、この構成における「第1基準値」は、乗物室内の温度に対して定められるものである。そして、その室内温度がすでに上昇している場合には、深紫外線照射部を作動させても、すぐに深紫外線照射素子の劣化を進行させる温度に到達してしまうため、最初から深紫外線照射部を作動させないことで、深紫外線照射素子の劣化を抑え、当該深紫外線照射装置の耐久性を向上させることができるのである。
【0009】
なお、この構成における「温度センサ」は、ハウジング内のどこに設けられていてもよい。例えば、深紫外線照射素子の近傍であれば、深紫外線照射部の作動時の温度をセンシングすることが可能であり、ハウジングへの吸入口の近傍であれば、深紫外線照射部の作動時においても乗物室内の温度を推定し易いものとなる。
【0010】
上記構成において、前記制御部は、前記深紫外線照射部によって深紫外線を照射している状態において、前記温度センサの検出結果を取得し、その取得した温度が第2基準値以上となった場合に、紫外線の照射を停止する構成とすることができる。
【0011】
電気回路には、一般的に、大きな電流が流れることによる過熱を防止する機能、いわゆるサーマルシャットダウン機能が搭載される場合が多い。つまり、深紫外線照射装置においても、深紫外線照射素子の温度が上昇し過ぎた場合には、この機能により強制的に停止させることも可能であるが、この構成の深紫外線照射装置によれば、そのサーマルシャットダウン機能より早い段階で、深紫外線照射素子の温度上昇を検出することが可能であり、効果的に深紫外線照射素子の劣化を抑え、当該深紫外線照射装置の耐久性を向上させることができる。なお、この構成における「第2基準値」は、温度センサが配されている場所に応じて定めることができる。
【0012】
上記構成において、前記ハウジングは、吸気口と排気口とを有し、前記深紫外線照射部が前記冷却ファンと前記排気口との間に位置するように、前記深紫外線照射部と前記冷却ファンとを収容するものとされ、前記温度センサは、前記ハウジング内において前記冷却ファンと前記吸気口との間に配されている構成とすることができる。
【0013】
この構成の深紫外線照射装置は、温度センサが、大きな熱を発生させる深紫外線照射部から遠ざけられた位置に配されている。つまり、この構成の深紫外線照射装置は、温度センサがハウジング内部で発生する熱の影響を受けにくく、乗物室内に取り込まれた直後の空気の温度を検出することで、深紫外線照射部の作動中においても、安定して温度をセンシングすることが可能である。なお、冷却ファンに近づくほど、気流の流れは安定していないと考えられるため、温度センサの位置は、冷却ファンと吸気口との間のうち、冷却ファンより吸気口に近い位置の方が好ましい。
【0014】
上記構成において、前記深紫外線照射部は、前記深紫外線照射素子が実装された照射基板を有し、前記制御部は、前記深紫外線照射素子を駆動する駆動素子と、前記駆動素子が実装された制御基板を有し、当該乗物用深紫外線照射装置は、前記深紫外線照射素子を駆動する駆動素子が実装された制御基板を備え、前記取付面に取り付けられた状態において、前記制御基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面に直交する方向に重畳する状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記吸気口から前記冷却ファンまでの吸気路に位置しており、前記照射基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記冷却ファンから前記排気口までの排気路に位置しており、前記温度センサは、前記制御基板上に実装されている構成とすることができる。
【0015】
この構成の深紫外線照射装置は、照射基板と冷却ファンとが横並びとされているため、照射基板と冷却ファンとが重畳した配置とされた従来の構成と比較して、深紫外線照射装置の薄型化を図ることが可能である。また、この構成の深紫外線照射装置は、制御基板が吸気口から冷却ファンまでの吸気路に配置されていることで、ハウジング内に吸気された空気によって制御基板を冷却することができるとともに、照射基板が冷却ファンから排気口までの排気路に配置されていることで、冷却ファンから送出された空気によって照射基板を冷却することができる。また、この構成の深紫外線照射装置は、吸気口と冷却ファンとの間に制御基板が配されているため、その制御基板における適切な位置に、温度センサを容易に接続することができる。
【0016】
上記構成において、前記駆動素子は、前記制御基板に対して、前記取付面に直交する方向において前記冷却ファンと重畳する位置に実装されており、前記温度センサは、前記制御基板に対して、前記駆動素子より前記吸気口に近い位置に実装されている構成とすることができる。
【0017】
深紫外線照射素子を駆動する駆動素子も、深紫外線照射素子と同様に、大きな熱を発生させる。この構成の乗物用深紫外線照射装置は、温度センサが駆動素子より吸気路における上流側に位置しているため、駆動素子が発生させる熱の影響を受けにくく、安定して温度を検出することができる。
【0018】
上記構成において、前記第2基準値は、前記第1基準値と等しくされている構成とすることができる。
【0019】
前述した温度センサが吸気口の近傍に配された構成においては、深紫外線照射部によって深紫外線を照射している状態である作動状態においても、乗物室内の温度に近い温度(当該深紫外線照射装置まわりの空気の温度)が検出される。そして、この温度の上昇に合わせて、深紫外線照射素子の温度も上昇することが判明した。そのため、作動状態においても、作動前の基準値と同じ基準値を用いて、紫外線照射部の作動停止の判断を行うことができ、制御を簡便化することができる。
【0020】
上記構成において、当該深紫外線照射装置は、可視光を照射する可視光照射素子を主体とする可視光照射部を備え、前記制御部は、前記深紫外線照射部により深紫外線を照射している場合に、前記可視光照射部によって、定められた点灯態様である第1態様で可視光を点灯させ、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止する場合には、第1態様とは異なる点灯態様である第2態様で可視光を点灯させる構成とすることができる。
【0021】
この構成の深紫外線照射装置によれば、深紫外線照射装置が作動しないことを、乗員に対して確実に知らせることができる。
【0022】
上記構成において、当該乗物用深紫外線照射装置は、乗員を検知する人感センサを備え、前記制御部は、前記深紫外線照射部を作動させる前において、乗物室内に乗員がいることを検知した場合に、前記深紫外線照射部による深紫外線の照射を中止するとともに、前記深紫外線照射部を作動させている状態において、乗物室内に乗員がいることを検知した場合には、前記深紫外線照射部の作動を停止する構成とすることができる。
【0023】
この構成の深紫外線照射装置は、深紫外線が乗員に照射されてしまうような事態を回避することができる。なお、人感センサとしては、赤外線センサやマイクロ波センサ等を採用することができる。
【0024】
上記構成において、前記取付面に対して着脱可能な構成とすることができる。
【0025】
乗物に対して着脱可能な深紫外線照射装置は、乗物側から種々の情報を取得することが難しい。そのため、当該装置自体に設けられたセンサのみで作動の可否を判断できる上述の構成の乗物用深紫外線照射装置は、着脱可能な深紫外線照射装置に特に好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、深紫外線の発光素子の劣化を抑制し、耐久性に優れた乗物用深紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例である車両用深紫外線照射装置の側面断面図
図2】車両用深紫外線照射装置の平面断面図(図1におけるA-A断面)
図3】車両用深紫外線照射装置の正面図
図4】車両用深紫外線照射装置の正面断面図(図1におけるB-B断面図)
図5】車両用深紫外線照射装置の正面断面図(図1におけるC-C断面図)
図6】実施例の車両用深紫外線照射装置を車両に取り付けた状態における車両前後方向の照射範囲を示す概略図
図7】実施例の車両用深紫外線照射装置を車両に取り付けた状態における車幅方向の照射範囲を示す概略図
図8】制御部において実行されるメインプログラムのフローチャート
図9】イニシャルチェックサブルーチンのフローチャート
図10】作動前確認処理サブルーチンのフローチャート
図11】深紫外線照射プログラムのフローチャート
図12】終了処理サブルーチンのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態である乗物用紫外線照射装置は、乗物としての車両に取り付け可能な車両用の深紫外線照射装置10である。この深紫外線照射装置10の構造を、図1から図7によって説明する。なお、各図面には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。X軸方向を右方向、Y軸方向を前方、Z軸方向を上方とする。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付して他の部材の符号は省略することがある。
【0029】
図1に示すように、深紫外線照射装置10は、全体として扁平な箱状をなすハウジング11を有する。ハウジング11のうち、図1の上方に配される天井壁12は、前方側に位置する前天井壁13と、後方側に位置して前天井壁13よりやや高い位置に配された後天井壁15と、前天井壁13と後天井壁15とを連結するように前方から後方に向けて斜めに立ち上がる連結壁14と、により構成されている。連結壁14の傾斜角度は、水平方向から35度傾いた角度に設定されている。また、ハウジング11のうち、図1の下方に配される底壁18には、後述するUV-LED42に対向する部分に、開口19が設けられている。あるいは底壁18のうちUV-LED42に対向する部分は、例えば石英等の深紫外線を透過可能な透明または半透明の素材で形成されていてもよい。
【0030】
図1に示すように、ハウジング11の後壁21には、後天井壁15に跨るように吸気口22が貫通形成されている。また前壁23には、前天井壁13に跨るように排気口24が貫通形成されている。吸気口22は、側壁や天井壁12、底壁18の障害物に塞がれない位置に形成されてもよく、本実施形態のように、複数の壁に跨って形成されていてもよい。本実施形態の吸気口22は、後壁21のうち、制御基板50の上面50Aより上方に設けられている。吸気口22および排気口24は、ハウジング11の内部に異物等が容易に入り込まないように、多数の縦スリット状に形成されている(図2および図3参照)。
【0031】
以下、ハウジング11の内部空間のうち、前天井壁13および連結壁14の下方の空間を前方空間R1とし、後天井壁15の下方の空間を後方空間R2として説明する。図1に示すように、前方空間R1と後方空間R2との境界部の一部には、後述するように、底壁18から立ち上がる立壁25が設けられている。前方空間R1には、深紫外線照射部40が収容されている。後方空間R2には、冷却ファン30および制御基板50を主体として構成される制御部48が収容されている。なお、制御部48は、制御基板50、および、その制御基板50上に実装されたCPU,ROM,RAM等の電子部品とを含んで構成されるコンピュータを主体とするものであり、当該深紫外線照射装置10の制御を司るものである。
【0032】
深紫外線照射部40は、図2および図4に示すように、2枚の平坦な板状のLED基板(照射基板)41と、LED基板41の各々に実装された2つのUV-LED42と、を備えている。このUV-LED42は、紫外線の中でも波長が短い深紫外線(100~280nm)を照射する深紫外線照射素子である。これらのUV-LED42が照射する深紫外線の波長は、200~280nmの範囲内であることが好ましい。なお、図2および図4に示す左側のLED基板41を第1基板411、右側のLED基板41を第2基板412とし、2枚のLED基板を区別しない場合はLED基板41として説明する。また、第1基板411の下面411Lに実装されたUV-LED42を第1UV-LED421、第2基板412の下面412Lに実装されたUV-LED42を第2UV-LED422とし、2つのUV-LEDを区別しない場合には、UV-LED42として説明する。
【0033】
UV-LED42は、LED基板41に実装した際に、LED基板41と反対側の端面(頂面)から照射を行う頂面照射型LEDを採用している。これらUV-LED42の指向角は、頂面に対して垂直な軸を中心とした120度の範囲内とされている(図6および図7参照)。
【0034】
第1基板411および第2基板412はアルミニウム製であり、図5に示すように、正面視扁平なV字形状となるように互いに交差した状態で、左右方向(後述する排気路28の延び方向と交差する方向)に並んで配されている。より詳細には、第1基板411および第2基板412は、水平方向から左右方向における中央に向けてそれぞれ約15度下方に傾いた状態で、左右方向に隣り合って配されている。これにより、第1基板411に実装された第1UV-LED421と、第2基板412に実装された第2UV-LED422とは、それぞれ頂面が下方からやや外側(左右方向)を向いた状態とされる。
【0035】
第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1は、ハウジング11の左右方向の幅寸法の1/2程度とされている。また、第1基板411および第2基板412の前後方向の長さ寸法L2は、ハウジング11の前壁23と立壁25との間の寸法と同等とされている。これにより、第1基板411および第2基板412は、前壁23と立壁25との間に隙間なく嵌め入れられる形で、ハウジング11の前方空間R1内に収容されている(図1および図2参照)。
【0036】
上述した前天井壁13には、図4に示すように、その下面13L(天井面12Lの一部)が第1基板411の上面411Uおよび第2基板412の上面412Uと平行に対向するように、左右方向における中央部分が断面扁平なV字形状に窪む窪み部16が形成されている。前天井壁13のうち窪み部16の左右両側は、水平方向に延在する水平部17とされている。水平部17は、ハウジング11の底壁18と平行な状態で対向している。
【0037】
また、窪み部16と水平部17との境界部には、下方に向けて突出する仕切りリブ26が設けられている。これら一対の仕切りリブ26は、図1示すように、後方に向けて直線状に延びて、連結壁14の下方まで連なっている。これら一対の仕切りリブ26の先端(下端)は、前後方向の全体にわたって同一面状に配されている。つまり、仕切りリブ26のうち連結壁14から突出する部分は、後方に向けて突出寸法が徐々に長くなっている。これら一対の仕切りリブ26の先端(下端)は、第1基板411の上面411Uの左端、および、第2基板412の上面412Uの右端に当接するように設定されている(図4参照)。つまり、第1基板411および第2基板412の両端部と、ハウジング11の天井面12Lとの間は、仕切りリブ26により塞がれている。
【0038】
上述した立壁25は、図5に示すように、ハウジング11の底壁18からの高さが、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uよりも高い位置に配される高さ寸法とされており、左右方向の幅が、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1と同等とされている。このような構成により、仕切りリブ26の後端と、立壁25の左右の両端部とは、連なるように配されている。なお、立壁25の側方(右側および左側)は、前方空間R1と後方空間R2とが連通した状態とされている(図2参照)。
【0039】
上述したように、ハウジング11の後方空間R2には、冷却ファン30が収容されている。冷却ファン30は、2枚のLED基板41に対して、天井壁12に沿う方向に横並びとされた状態で、ハウジング11内に収容されている。なお、横並びとは、深紫外線照射装置10を平面視した際に、LED基板41の板面と冷却ファン30とが重畳しない配置とされていることを指しており、上下方向の高さがずれている場合を含むこととする。本実施形態では、冷却ファン30は、LED基板41よりやや上方に配されている。
【0040】
冷却ファン30は全体として扁平な略円柱型の本体部31を備えている。当該本体部31は、軸線が上下方向を向くようにハウジング11の後方空間R2内に配され、上面が図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接する形で収容されている(図1参照)。冷却ファン30は、下方から吸い上げた空気を前方に向けて送風する構成とされており、前方に向けて扁平な角筒状に突出する送風口32を備えている。送風口32は、その上面が本体部31の上面と面一になるように、本体部31の上方部分から前方に向けて突出している。つまり、送風口32の上面も、図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接している。
【0041】
送風口32の幅寸法は、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1と同寸法とされている(図4および図5参照)。また送風口32は、図1図4および図5に示すように、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uから上方に離隔した位置に配されている。送風口32の突出方向における先端(前端)は、ハウジング11の底壁18から立ち上がる立壁25の上端に支持されている。つまり、立壁25の高さ寸法は、ハウジング11の底壁18から送風口32の下端までの寸法と同等とされている。また立壁25の幅寸法は、上述したように、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1とほぼ同寸法、つまり、送風口32の幅寸法とほぼ同等とされている。これにより、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uと、送風口32との間に形成される隙間は、立壁25により閉塞された状態とされている。
【0042】
このような構成により、立壁25のうち第1基板411および第2基板412と送風口32との間を塞ぐ部分(閉塞部25Aとする)と、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uと、ハウジング11の天井面12Lと、2つの仕切りリブ26と、により囲まれた筒状の空間によって、冷却ファン30の送風口32からハウジング11の排気口24までの排気路28が構成されている。排気路28は、ハウジング11内において、その周囲から区切られるとともに、送風口32および排気口24以外の部分が周囲から閉じられた空間とされている。前方空間R1のうち排気路28以外の部分(排気路28の周囲)は、後方空間R2と連通した状態とされている。
【0043】
なお、図3に示すように、上述した排気口24の幅寸法は、排気路28の幅寸法、つまり、一対の仕切りリブ26の間隔と同等寸法とされている。また、排気口24の高さ寸法は、前壁23の上端から、第1基板411および第2基板412の下面411L、412Lの一部が露出可能な寸法とされている。すなわち、排気口24は、前方空間R1のうち排気路28の周辺領域を一部露出する構成とされている。
【0044】
図1に示すように、ハウジング11のうち冷却ファン30の下方には、制御基板50が収容されている。換言すると、制御基板50は、その板面が冷却ファン30に対して天井壁12と直交する方向に重畳した配置とされている。制御基板50の上面50Aには、上述した2つのUV-LED42を駆動するための駆動素子である2つのLEDドライバ51が実装されている。制御基板50は、上面50Aが冷却ファン30と対向する向きでハウジング11の後方空間R2内に配されている。LEDドライバ51は、平面視において、冷却ファン30と重畳する位置に配置されている(図2参照)。制御基板50は、吸気口22から冷却ファン30の図示しない吸い込み口(冷却ファン30の下面)までの空気の通り道である、吸気路27に位置している。
【0045】
吸気口22からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、吸気路27、具体的には、吸気口22から制御基板50の上面50A上を通って、冷却ファン30に吸い込まれる。そして、冷却ファン30を通過するとともに当該冷却ファン30の送風口32から前方に向けて放出され、前方側が下方に向けて傾斜する連結壁14に沿って、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uに吹き付けられる。この時、連結壁14により空気が圧縮され、流速が高められる。そして、空気は上述した排気路28を通過して、排気口24からハウジング11の外部に排気される。
【0046】
また、吸気口22からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、ハウジング11の内壁に沿って前方に向けて進んで前方空間R1の排気路28以外の部分(排気路28の下方および側方)に流れ込み、その後、冷却ファン30の吸い込みによる空気の流れにより、前方空間R1に戻される。つまり、ハウジング11内を循環する。そして、一部は吸気口22から吸い込まれた空気とともに冷却ファン30に吸い込まれ、送風口32から前方(排気路28)に向けて放出されて、排気口24からハウジング11の外部に排出される。
【0047】
このように、吸気口22から吸い込まれた空気が、吸気路27を通って冷却ファン30に吸い込まれたり、ハウジング11内を循環する際に、制御基板50に実装されているLEDドライバ51の周囲にも気流が生じたりするため、LEDドライバ51は効率的に冷却されることとなる。
【0048】
また、本実施形態の深紫外線照射装置10は、乗員によって操作されて自身を起動させるための起動スイッチ52と、周囲の温度を検出する温度センサ53と、乗員を検知可能な人感センサ54と、可視光照射素子である可視光LED55Aを主体とする2つの可視光照射部55と、音声を出力するためのスピーカ56と、を備えている。それら起動スイッチ52,温度センサ53,人感センサ54,2つの可視光照射部55およびスピーカ56は、図1および図2に示すように、制御基板50に接続されており、本深紫外線照射装置10における制御に用いられる。本実施形態の紫外線照射装置10における制御については、後に詳しく説明することとする。
【0049】
なお、本実施形態の深紫外線照射装置10は、温度センサ53が、図2に示すように、制御基板50上において冷却ファン30と吸気口22との間に配されている。つまり、温度センサ53は、ハウジング11内において、作動時に大きな熱を発生させる2つのUV-LED42と、冷却ファン30を挟んで反対側に配されている。また、もう1つの熱源となる2つのLEDドライバ51が、冷却ファン30に重畳する位置で、かつ、冷却ファン30の回転軸よりUV-LED42側に配されている。つまり、温度センサ53は、LEDドライバ51より、吸気口22に近い位置に配されているのである。したがって、温度センサ53は、ハウジング11内にあるものの、ハウジング11の外部から吸気口22が取り込んだ空気に覆われるため、2つのUV-LED42や2つのLEDドライバ51が発生させる熱の影響を受け難くなっている。
【0050】
次に、本実施形態の深紫外線照射装置10の使用方法について説明する。深紫外線照射装置10は、例えば、タクシー等の車両60の客室(乗物室)の除菌を目的として使用することができる。図6および図7には、深紫外線照射装置10をタクシー等の車両60の客室(後部座席)の取付面である天井61に取り付けた状態を示している。深紫外線照射装置10は、深紫外線照射部40が前方に配され、冷却ファン30および制御基板50が後方に配される向きで、車両60の天井61に対してその天井壁12が取り付けられている。すなわち、LED基板41と冷却ファン30とが前後方向に並ぶとともに、制御基板50と冷却ファン30とが天井61と直交する方向に重畳した状態で、車両60の天井61に対して取り付けられている。
【0051】
深紫外線照射装置10を使用する場合には、上述したように、UV-LED42の頂面から120度の指向角で座席および側面(ドアトリム)に対して深紫外線が照射される。この時、図7に示すように、車両幅方向において、第1UV-LED421および第2UV-LED422は互いに水平方向から外側に向けて15度の傾斜角度で傾いた状態とされているから、これらのUV-LED42が下方に向けて真っ直ぐ照射される場合と比較して、車室側面の高い位置まで照射して、除菌を行うことができるようになっている。つまり、乗員が触れる可能性が高いドアトリムの上端部分まで除菌できるようになっている。このような深紫外線の照射は、例えば、運航後に格納庫で行ったり、前部座席と後部座席の間に深紫外線カットフィルム付きセパレータ62等が設けられている場合であれば、乗客のいない空車時間や回送時間に行ったりすることができる。
【0052】
次に、本実施形態の深紫外線照射装置10における制御について説明する。深紫外線照射装置10は、車両60の天井61に取り付けられて電源に接続された状態で、乗員により起動スイッチ52がON状態とされると、図8にフローチャートを示すメインプログラム(本実施形態における一例である)が実行されることによって行われる。以下に、このメインプログラムを参照しつつ本深紫外線照射装置10の制御について説明する。
【0053】
起動スイッチ52がON状態とされてメインプログラムが開始されると、まず、ステップ1(以下、S1と略す場合がある。他のステップも同様である。)において、本深紫外線照射装置10のイニシャルチェックを行う図9に示すイニシャルチェックサブルーチンが実行される。このイニシャルチェックサブルーチンでは、まず、S11において、前回の作動時にエラー等により強制終了となったか否かが判定される。その判定にはエラーフラグFLが用いられる。エラーフラグFLは、前回の作動時にエラー等により強制終了となった場合に0から1に切り替えられるものである。そして、エラーフラグFLが1である場合には、S12において、スピーカ56から、前回の作動時に強制終了となったことがアナウンスされる。
【0054】
次いで、S13において、温度センサ53が起動させられ、その温度センサ53によりハウジング11内の温度Tが取得される。この取得した温度Tは、車両60の車室内の温度に相当すると考えられる。車室内の除菌は、車両60が屋外に置かれた状態で行なわれる場合があるが、すでに車両60が屋外に放置された状態であると、車室内の温度は比較的高温になっている場合もある。本深紫外線照射装置10を作動させると、2つのUV-LED42と、2つのLEDドライバ51は、大きな熱を発生させて高温となり易い。そして、室内温度が上昇した状態で、本深紫外線照射装置10を作動させると、2つのUV-LED42と、2つのLEDドライバ51は、さらに温度が上昇し、劣化が進行し易い状態となり、本深紫外線照射装置10の耐久性が悪化することなる。そこで、本深紫外線照射装置10は、起動直後において、温度センサ53から取得した温度Tが設定温度(第1基準値)T以上であるか否かが判定され(S14)、温度Tが設定温度T以上である場合には、本深紫外線照射装置10を劣化させる虞があるため、S15以下において、本深紫外線照射装置10の作動を強制的に中止する処理が行われる。具体的には、S15において、スピーカ56から車室内が高温になっていることにより作動を中止する旨のアナウンスが行われるとともに、可視光照射部55を制御して、可視光LED55Aをエラーパターン1(第2態様)で点滅させるようになっている。次いで、前述したエラーフラグFLが1とされ、メインプログラムが終了する。
【0055】
S14において、温度Tが設定温度T以上でない場合には、イニシャルチェックサブルーチンが終了し、メインプログラムのS2において、図10にフローチャートを示す作動前確認処理サブルーチンが実行される。この作動前確認処理サブルーチンは、主に、深紫外線が乗員に当たらないようにするための処理を行う。このサブルーチンでは、まず、S21において、スピーカ56から作動の準備に入ったことがアナウンスされるとともに、可視光照射部55を制御して可視光LED55Aを作動前パターンで点滅させる。次いで、S22において、待機タイマーがON状態とされ、乗員を退避させるために設定された設定時間tが経過するまで、待機する。S23において設定時間tが経過すると、S24において、乗員の検知を行う人感センサ54がON状態とされ、乗員の検知が開始される(S26)。それとともに、S25において、作動前のカウントダウンが開始される。その間に、人感センサ54が乗員を検知すると、S28以下において、深紫外線照射装置10の作動を強制的に中止する処理が行われる。具体的には、S28において、スピーカ56から乗員の検知をアナウンスし、S29において、前述したエラーフラグFLが1とされ、メインプログラムが終了するようになっている。一方、S26において乗員が検知されず、設定時間tを経過した場合には、作動前確認処理サブルーチンが終了する。
【0056】
作動前確認処理サブルーチンが終了すると、メインプログラムにおけるS3において、深紫外線照射プログラムが起動させられる。この深紫外線照射プログラムは、図11にフローチャートを示すものであり、設定された短い時間間隔Δtで繰り返し実行されるものである。深紫外線照射プログラムでは、まず、S31において、1回目の実行であるか否かが、カウント値Cが0であるか否かによって判定され、1回目の実行である場合には、S32において、冷却ファン30がON状態とされるとともに、2つのUV-LED42がON状態とされる。
【0057】
次いで、S33において、カウント値Cがカウントアップされ、S34において、温度センサ53によって取得された温度Tが設定温度(第2基準値)T以上であるか否かが判定される。本深紫外線照射装置10においては、前述したように、温度センサ53が熱源となるUV-LED42とLEDドライバ51から離間させられて、吸気口22の近傍に配されているため、UV-LED42とLEDドライバ51の熱の影響を受け難く、安定して温度を検出することができる。
【0058】
また、S35において、人感センサ54が乗員を検知しているか否かの判定が行われる。S34において、温度Tが設定温度T以上である場合、S35において、人感センサ54が乗員を検知している場合には、S40以下において、本深紫外線照射装置10の作動を強制的に停止する処理が行われる。具体的には、S34において、温度Tが設定温度T以上である場合には、S39において、スピーカ56から車室内が高温になっていることにより作動を停止する旨のアナウンスが行われ、S35において、乗員が検知された場合には、S40において、スピーカ56から乗員が検知されたことにより作動を停止する旨のアナウンスが行われる。次いで、S41において、可視光照射部55を制御して、可視光LED55Aをエラーパターン2で点滅させるようになっている。次いで、S42以下において、前述したエラーフラグFLが1とされ、メインプログラムも終了させる処理が行われ、この深紫外線照射プログラムも終了する。
【0059】
S34において、温度Tが設定温度T以上でなく、S35において、人感センサ54が乗員を検知していない場合には、S36において、スピーカ56から作動中である旨がアナウンスされるともに、可視光LED55Aが常時点灯した状態(第1態様)とされる。続く、S37において、カウント値CがC以上か否かによって、設定された除菌時間を経過しているか否かが判定され、その除菌時間を経過していない場合には、S38がスキップされ、深紫外線照射プログラムの1回の実行が終了する。また、除菌時間を経過した場合には、S38において、この深紫外線照射プログラムを終了させることを報知する処理が行われ、深紫外線照射プログラムが終了する。
【0060】
深紫外線照射プログラムが終了し、メインプログラムのS4において深紫外線照射プログラムを終了させた信号を受信すると、S5において、本深紫外線照射装置10を終了させる処理を行う終了処理サブルーチンが実行される。この終了処理サブルーチンは、図12にフローチャートを示すものであり、まず、S51において、2つのUV-LED42がOFF状態とされる。また、S52において、スピーカ56から作動が正常に終了したことがアナウンスされるとともに、可視光LED55AがOFF状態とされる。
【0061】
次いで、S53以降において、ハウジング11内の冷却が行なわれる。つまり、この時点では、冷却ファン30が継続してON状態とされており、冷却用タイマーが設定時間t以上となるまで、冷却ファン30が作動させられるようになっている。そして、S54において、冷却用タイマーが設定時間t以上となると、S55において、冷却ファン30がOFF状態とされるとともに、S56において、すべてのセンサがOFF状態とされる。以上で、メインプログラムが終了し、起動スイッチ52がOFF状態とされる。
【0062】
以上のように、本実施形態の深紫外線照射装置10は、起動スイッチ52がオン状態とされた際に温度センサ53の検出結果を取得し、その取得した温度Tが第1基準値T以上である場合に、深紫外線照射部40による深紫外線の照射を中止するように構成されている。車室内温度がすでに上昇している場合には、深紫外線照射部40を作動させても、すぐにUV-LED42の劣化を進行させる温度に到達してしまうため、最初から深紫外線照射部40を作動させないことで、UV-LED42の劣化を抑えることができ、当該深紫外線照射装置10が耐久性の高いものとなっている。
【0063】
また、本深紫外線照射装置10は、ハウジング11が、吸気口22と排気口24とを有し、深紫外線照射部40が冷却ファン30と排気口24との間に位置するように、深紫外線照射部40と冷却ファン30とを収容するものとされ、温度センサ53が、ハウジング11内において冷却ファン30と吸気口22との間に配された構成とされている。この構成の深紫外線照射装置10は、温度センサ53がハウジング11内部で発生する熱の影響を受けにくく、車室内に取り込まれた直後の空気の温度を検出することで、深紫外線照射部40の作動中においても、安定して温度をセンシングすることが可能である。
【0064】
また、本深紫外線照射装置10は、駆動素子であるLEDドライバ51が、制御基板50に対して、取付面である天井61に直交する方向(上下方向)において冷却ファン30と重畳する位置に実装されており、温度センサ53が、制御基板50に対して、LEDドライバ51より吸気口22に近い位置に実装された構成とされている。この構成により、温度センサ53がLEDドライバ51より吸気路27における上流側に位置しているため、LEDドライバ51が発生させる熱の影響を受けにくく、安定して温度を検出することができる。
【0065】
また、本深紫外線照射装置10は、制御部48が、深紫外線照射部40によって深紫外線を照射している状態において、温度センサ53の検出結果を取得し、その取得した温度が第2基準値T以上となった場合に、紫外線の照射を停止するように構成されている。この第2基準値は、温度センサ53の位置に応じた値に設定されるものである。例えば、温度センサがLED基板41上やLEDドライバ51の近傍に配されている場合には、UV-LED42やLEDドライバ51が発生させる熱の影響を考慮して第2基準値を設定する必要があるが、本深紫外線照射装置10は、温度センサ53がそれらから離間した位置に配されて発生する熱の影響が低く、吸気口22からハウジング11内に取り込んだ空気の温度を検出するため、本深紫外線照射装置10においては、第2基準値も第1基準値と同じ値とされている。したがって、例えば、起動スイッチ52がON状態とされている間、単に温度センサ53の検出結果を検出し、設定温度T以上となった場合に、深紫外線の照射を中止あるいは停止するような構成とすることもでき、比較的簡便な制御とすることができる。
【0066】
また、本深紫外線照射装置10は、可視光照射部55による点灯・点滅態様と、スピーカ56によるアナウンスによって、乗員に報知されるため、乗員が本深紫外線照射装置10の状態を確実に認識することができる。
【0067】
また、本深紫外線照射装置10は、乗物としての車両の取付面に対して着脱可能なものであり、乗物側から情報を取得することが難しいが、本深紫外線照射装置10が備えるセンサ53,54のみで、作動の可否を適切に判断することができる。
【0068】
なお、本深紫外線照射装置10は、車両用に提供されるものに限定されず、種々の乗物において提供されるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…車両用深紫外線照射装置〔乗物用深紫外線照射装置〕、11…ハウジング、22…吸気口、24…排気口、27…吸気路、28…排気路、30…冷却ファン、40…深紫外線照射部、41…LED基板〔照射基板〕、411…第1基板、412…第2基板、42…UV-LED〔深紫外線照射素子〕、421…第1UV-LED、422…第2UV-LED、48…制御部、50…制御基板、51…LEDドライバ〔駆動素子〕、52…起動スイッチ、53…温度センサ、54…人感センサ、55…可視光照射部、55A…可視光LED、60…車両〔乗物〕、61…天井〔取付面〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12