(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】多極電磁石
(51)【国際特許分類】
H05H 7/04 20060101AFI20241125BHJP
H05H 13/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H05H7/04
H05H13/04 E
(21)【出願番号】P 2022125801
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2024-10-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】地村 幹
(72)【発明者】
【氏名】原田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高柳 智弘
(72)【発明者】
【氏名】尾形 敢一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋二
(72)【発明者】
【氏名】本波 和真
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-162463(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070772(WO,A1)
【文献】特開2012-109258(JP,A)
【文献】国際公開第2016/034490(WO,A1)
【文献】米国特許第09881723(US,B1)
【文献】地村幹、原田寛之、高柳智弘、金正倫計,J-PARC リニアックにおけるエミッタンス増大抑制のための四極八極結合型電磁石の開発,19th Annual Meeting of the Particle Accelerator Society of Japan,2023年,p.237-241,https://www.pasj.jp/web_publish/pasj2022/proceedings/PDF/FROB/FROB09.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 7/04
H05H 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを収束及び成形する多極電磁石であって、
荷電粒子ビームが通過する通過領域が中央に設けられたリング状のヨークと、
前記ヨークの周方向に離間した位置において、各々が前記ヨークの内周面から前記通過領域に向けて突出する4N+4(Nは正の奇数)個の磁極と、
前記磁極を励磁するコイルとを備え、
周方向に連続するN+1個の前記磁極を1個の磁極グループとして、同一の前記磁極グループに属する前記磁極の先端は、接触しており、
前記コイルは、
同一の前記磁極グループに属する前記磁極の極性が同一で、且つ周方向に隣接する前記磁極グループの極性が反転すると共に、
磁力の絶対値が基準値より大きい強磁性磁極と、磁力の絶対値が前記基準値より小さい弱磁性磁極とが、周方向にN+1個ずつ交互に配置されるように、前記磁極を励磁することを特徴とする多極電磁石。
【請求項2】
荷電粒子ビームを収束及び成形する多極電磁石であって、
荷電粒子ビームが通過する通過領域が中央に設けられたリング状のヨークと、
前記ヨークの周方向に離間した位置において、各々が前記ヨークの内周面から前記通過領域に向けて突出する4N+4(Nは正の偶数)個の磁極と、
4N+4個の前記磁極を励磁するコイルとを備え、
周方向に連続するN+1個の前記磁極を1個の磁極グループとして、同一の前記磁極グループに属する前記磁極の先端は、接触しており、
前記コイルは、
同一の前記磁極グループに属する前記磁極の極性が同一で、且つ周方向に隣接する前記磁極グループの極性が反転すると共に、
4つの前記磁極グループそれぞれの周方向の中央に位置し且つ磁力の絶対値が基準値の基準磁極を挟んで、磁力の絶対値が前記基準値より大きい強磁性磁極と、磁力の絶対値が前記基準値より小さい弱磁性磁極とが交互に配置されるように、前記磁極を励磁することを特徴とする多極電磁石。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
同一の前記磁極グループに属するN+1個の前記磁極の先端は、面接触していることを特徴とする多極電磁石。
【請求項4】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
同一の前記磁極グループに属するN+1個の前記磁極の先端は、荷電粒子ビームの進行方向から見て、単一の曲線を形成していることを特徴とする多極電磁石。
【請求項5】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
前記コイルは、
4N+4個の前記磁極それぞれに前記基準値の磁力を付与する第1コイルと、
前記第1コイルによって付与された磁力を強化または相殺する第2コイルとを含むことを特徴とする多極電磁石。
【請求項6】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
前記コイルは、前記強磁性磁極に対する巻き数が前記弱磁性磁極に対する巻き数より多いことを特徴とする多極電磁石。
【請求項7】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
前記コイルは、4N+4個の前記磁極それぞれに個別に巻回されていることを特徴とする多極電磁石。
【請求項8】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
前記コイルは、同一の前記磁極グループに属するN+1個の前記磁極に共通に巻回されていることを特徴とする多極電磁石。
【請求項9】
請求項1または2に記載の多極電磁石において、
前記コイルは、隣接する前記磁極の間または隣接する前記磁極グループの間において、前記ヨークに巻回されていることを特徴とする多極電磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを収束及び成形する多極電磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
学術用、工業用、医療用などの荷電粒子加速器施設は、科学技術の基盤として世界中で稼働し、さらなる大強度化が強く要求されている。そして、ビーム強度の増強に伴って、ビーム内の粒子間に働く反発力(空間電荷力)が増大する。
【0003】
そこで、従来の荷電粒子加速器施設には、ビームを所定の直径に収束させるために線形の収束力を発生させる四極電磁石に加えて、ビームを所定の形状に成形するために非線形の成形力を発生させる八極電磁石が設置される場合がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のように、四極電磁石及び八極電磁石をビーム輸送路に直列に配置すると、ビーム輸送路が長くなる。その結果、荷電粒子加速器施設が大型化するという課題を生じる。そこで、非特許文献1には、8個の磁極を有する多極電磁石を、四極電磁石として機能させる四極用コイルと、八極電磁石として機能させる八極用コイルとを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-231873号公報
【文献】特開平5-215900号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Yoshihiko Shoji, “Design of a Multi-Element Corrector Magnet for the Storage Ring NewSUBARU”, IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol 20, Issue 3, p.230-233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1の構成において、直径40mm(中心から±20mm)の領域に線形な収束磁場を発生させることを目標として、磁極の先端を結ぶ仮想円の直径を40mm、80mm、120mmと変化させると、収束磁場の傾きは
図11(B)に示すようになる。
図11(B)において、横軸は通過領域の中心からの水平方向の距離を示し、縦軸は各位置の収束磁場を中心(x=0)における収束磁場で規格化した値を示す。換言すれば、
図11(B)の縦軸は、各位置における収束磁場の傾きを中心の収束磁場の傾きで除した値を示す。
【0008】
図11(B)に示すように、仮想円の直径を40mmとすると、中心からの距離が10.0mmの位置における収束磁場の傾きが、中心と比較して約25%ズレている。中心からの距離が20.0mmの位置における収束磁場の傾きのズレを5%に収めるためには、仮想円の直径を120mmまで拡大する必要が生じる。このように、収束磁場の傾きのズレを小さくしようとすると、多極電磁石の直径を大きくする必要が生じるという新たな課題を生じる。また、多極電磁石の直径の増大に伴って、磁極の先端から離れた位置を通る荷電粒子ビームに収束力を作用させるには、コイルに大電流を供給する必要がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、荷電粒子ビームを収束及び成形可能な多極電磁石を小型化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、荷電粒子ビームを収束及び成形する多極電磁石であって、荷電粒子ビームが通過する通過領域が中央に設けられたリング状のヨークと、前記ヨークの周方向に離間した位置において、各々が前記ヨークの内周面から前記通過領域に向けて突出する4N+4(Nは正の奇数)個の磁極と、前記磁極を励磁するコイルとを備え、周方向に連続するN+1個の前記磁極を1個の磁極グループとして、同一の前記磁極グループに属する前記磁極の先端は、接触しており、前記コイルは、同一の前記磁極グループに属する前記磁極の極性が同一で、且つ周方向に隣接する前記磁極グループの極性が反転すると共に、磁力の絶対値が基準値より大きい強磁性磁極と、磁力の絶対値が前記基準値より小さい弱磁性磁極とが、周方向にN+1個ずつ交互に配置されるように、前記磁極を励磁することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷電粒子ビームを収束及び成形可能な多極電磁石を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】多極電磁石を荷電粒子ビームの進行方向から見た図である。
【
図3】第1コイルのみで励磁した場合(A)、第2コイルのみで励磁した場合(B)の磁力線の分布を示す図である。
【
図4】第1コイルのみで励磁した場合(A)、第2コイルのみで励磁した場合(B)、第1コイル及び第2コイルで励磁した場合(C)の水平方向の各位置における積分磁場を示す図である。
【
図5】第1コイルのみで励磁した場合(A)、第1コイル及び第2コイルで励磁した場合(B)の荷電粒子ビームの位相空間分布を示す図である。
【
図6】磁極の先端の距離を変化させた場合において、第1コイルのみで励磁した際の磁力線の分布(A)及び収束磁場の傾きの推移(B)を示す図である。
【
図7】第1コイルの巻き方のバリエーションを示す図である。
【
図8】第2コイルの巻き方のバリエーションを示す図である。
【
図9】コイルの巻き数によって極性の組み合わせを実現する例を示す図である。
【
図10】第1コイル及び第2コイルの配置によって極性の組み合わせを実現する例を示す図である。
【
図11】非特許文献1の多極電磁石において、四極用コイルのみで励磁した際の磁力線の分布(A)及び収束磁場の傾きの推移(B)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態に係る荷電粒子ビーム加速装置1を説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0014】
図1は、荷電粒子ビーム加速装置1の概略図である。荷電粒子ビーム加速装置1は、荷電粒子を加速するリング型の装置である。荷電粒子の具体例としては、例えば、電子、陽子、及び重粒子(炭素、ヘリウム等)が該当する。荷電粒子ビーム加速装置1は、例えば、原子核・素粒子物理学分野及び生命科学分野の基礎研究、がん治療に代表される医療分野で利用される。
【0015】
図1に示すように、荷電粒子ビーム加速装置1は、主ダクト2と、入射装置3と、合流ダクト4と、偏向電磁石5と、加速装置6と、分岐ダクト7と、荷電粒子ビーム取出装置8と、多極電磁石10とを主に備える。
図1に示す荷電粒子ビーム加速装置1は、蓄積リング及びシンクロトロンと呼ばれる円形加速器の形態である。しかしながら、本発明は、サイクロトロンなどの円形加速器、リニアックなどの線形加速器、タンデム加速器などの静電加速器のような他の形態の加速器、またはそのビーム輸送路にも適用可能である。
【0016】
主ダクト2は、荷電粒子ビームが通過する内部空間を有する真空容器である。主ダクト2の内部空間は、周状に構成されている。すなわち、荷電粒子ビームは、主ダクト2の内部空間を繰り返し周回することができる。なお、主ダクト2の形状は真円である必要はなく、直線部と湾曲部とを組み合わせた形状であってもよい。また、主ダクト2の内部空間は、真空に保たれている。真空の度合いは、荷電粒子ビームの利用方法に応じて適宜選択される。主ダクト2は、ビーム輸送路の一例である。
【0017】
入射装置3は、合流ダクト4を通じて主ダクト2内に荷電粒子ビームを出力する装置である。入射装置3は、荷電粒子ビームをある程度加速してから主ダクト2に出力するリニアック(線形加速器)であってもよい。例えば、入射装置3で400MeVまで加速された荷電粒子ビームが、荷電粒子ビーム加速装置1で3GeVまで加速される。
【0018】
合流ダクト4は、一端が入射装置3に接続され、他端が合流点4aで主ダクト2に合流する真空容器である。合流ダクト4を通過する荷電粒子ビーム(以下、「副ビーム」と表記する。)は、合流点4aから主ダクト2に進入し、主ダクト2内を周回する荷電粒子ビーム(以下、「主ビーム」と表記する。)に結合される。
【0019】
偏向電磁石5は、主ダクト2の曲率に合わせて荷電粒子ビームの進行方向を偏向する役割を担う。より詳細には、偏向電磁石5は、所定の向きの磁場を発生させることによって、主ダクト2内の荷電粒子ビームに、主ダクト2の曲率に沿って方向を変えるための力を付与する。
図1では、主ダクト2の4箇所の湾曲部それぞれに偏向電磁石5が設置されている。偏向電磁石5の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0020】
加速装置6は、主ダクト2内の荷電粒子ビームを加速する装置である。より詳細には、加速装置6は、所定の向きの電場を発生させることによって、主ダクト2内の荷電粒子ビームに加速度を付与する。すなわち、主ダクト2内を周回する荷電粒子ビームは、加速装置6を通過するたびに徐々に加速される。加速装置6の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0021】
分岐ダクト7は、主ダクト2内を周回する主ビームから分離された荷電粒子ビーム(以下、「副ビーム」と表記する。)を、荷電粒子ビーム加速装置1の外部に取り出すための真空容器である。分岐ダクト7は、一端が分岐点7aで主ダクト2から分岐し、他端が実験装置や医療装置に接続される。
【0022】
荷電粒子ビーム取出装置8は、主ダクト2内を周回する主ビームの一部を副ビームとして分離し、分離した副ビームを分岐ダクト7を通じて荷電粒子ビーム加速装置1の外部に取り出す役割を担う。荷電粒子ビーム取出装置8の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0023】
多極電磁石10は、主ダクト2内の荷電粒子ビームの形状(より詳細には、荷電粒子ビームの進行方向に直交する断面形状)を整える役割を担う。より詳細には、多極電磁石10は、荷電粒子ビームを所定の大きさに収束(または発散)させるために、線形の収束力(または発散力)を発生させる。また、多極電磁石10は、荷電粒子ビームを所定の形状に成形するために、非線形の成形力を発生させる。
【0024】
図2は、多極電磁石10を荷電粒子ビームの進行方向から見た図である。
図2に示すように、多極電磁石10は、ヨーク11と、磁極12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと、第1コイル13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと、第2コイル14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14hとを主に備える。
【0025】
ヨーク11は、リング状の外形を呈する。ヨーク11の内側は、主ダクト2内の荷電粒子ビームの進行方向に貫通している。そして、主ダクト2内の荷電粒子ビームは、
図2に一点鎖線で示すヨーク11の中央領域(以下、「通過領域」と表記する)を通過する。すなわち、ヨーク11の中央には、荷電粒子ビームが通過する通過領域が設けられている。また、
図2の例では、ヨーク11の外周面を16角形としているが、ヨーク11の外周面の形状はこれに限定されず、円形、他の多角形などでもよい。
【0026】
磁極12a~12hは、ヨーク11の内周面の周方向に離間した位置に設けられている。より詳細には、磁極12a~12hは、ヨーク11の内周面において、周方向に等しい間隔(本実施形態では、45°間隔)で配置されている。また、磁極12a~12hそれぞれは、通過領域に向けて径方向の内側に突出している。換言すれば、磁極12a~12hの先端で囲まれた領域が、通過領域となる。
【0027】
磁極12a~12bは、4つの磁極グループのいずれかに属する。本実施形態では、周方向に隣接する2つの磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hが、それぞれ1つの磁極グループに属する。そして、
図2で一部を拡大して示すように、同一の磁極グループに属する磁極12a、12bの先端は、接触している。磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hについても同様である。4つの磁極グループそれぞれの先端形状は共通するので、以下、磁極12a、12bの先端形状について、詳細に説明する。
【0028】
同一の磁極グループに属する磁極12a、12bの先端は、面接触している。面接触している範囲は、例えば、磁極12a、12bの先端から径方向の外側に向かって、2mm以下にするのが望ましい。また、同一の磁極グループに属する磁極12a、12bの先端は、荷電粒子ビームの進行方向から見て、単一の曲線(より詳細には、凸曲線)を形成している。本実施形態において、磁極12a、12bの先端が形成する曲線は、双曲線である。但し、曲線の具体例は、双曲線に限定されず、放物線、指数曲線、対数曲線、真円の一部(すなわち、円弧)などでもよい。なお、「磁極12a、12bの先端が接触(面接触)している」とは、独立して製作された磁極12a、12bが組立の過程で接触することのみならず、最初から接触(すなわち、結合)した状態で製作されたものも含むものとする。
【0029】
ヨーク11及び磁極12a~12hは、磁性材料(例えば、鉄)で構成されている。一例として、ヨーク11及び磁極12a~12hは、例えば、複数の鋼板を重ね合わせて形成されていてもよい。他の例として、ヨーク11及び磁極12a~12hは、独立して形成されて、互いに接合されてもよい。
【0030】
第1コイル13a~13hは、対応する磁極12a~12hそれぞれに個別に巻回されている。第1コイル13a~13hは、電源(図示省略)から電流が供給されることによって、対応する磁極12a~12hの周りに磁界を発生させる。その結果、磁極12a~12hの先端側(通過領域側)及び基端側(ヨーク11側)には、極性(N極、S極)が生じる。
【0031】
第1コイル13a~13hは、同一の磁極グループに属する磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hの先端が同一の極性になるように、磁極12a~12hを励磁する。また、第1コイル13a~13hは、4つの磁極グループの極性が周方向に交互に反転するように、磁極12a~12hを励磁する。例えば、磁極12a、12bの先端がS極、磁極12c、12dの先端がN極、磁極12e、12fの先端がS極、磁極12g、12hの先端がN極となる。なお、第1コイル13a~13hが生じさせる極性は、前述の例に限定されず、逆転していてもよい。
【0032】
一例として、第1コイル13a~13hは、電源に対して直列に接続されていてもよい。この場合、磁極12a、12b、12e、12fに対する第1コイル13a、13b、13e、13fの巻き方向と、磁極12c、12d、12g、12hに対する第1コイル13c、13d、13g、13hの巻き方向とを、逆向きにすればよい。
【0033】
他の例として、第1コイル13a~13hは、電源に対して並列に接続されていてもよい。この場合、第1コイル13a、13b、13e、13fの巻き方向と、第1コイル13c、13d、13g、13hの巻き方向とを、逆向きにしてもよい。または、第1コイル13a~13hの巻き方向を同一にし、第1コイル13a、13b、13e、13fと、第1コイル13c、13d、13g、13hに、逆向きの電流を供給してもよい。
【0034】
第2コイル14a~14hは、対応する磁極12a~12hそれぞれに個別に巻回されている。また、本実施形態に係る第2コイル14a~14hは、第1コイル13a~13hに重ねて巻回されている。そして、第2コイル14a~14hは、電源(図示省略)から電流が供給されることによって、対応する磁極12a~12hの周りに磁界を発生させる。その結果、磁極12a~12hの先端側(通過領域側)及び基端側(ヨーク11側)には、極性(N極、S極)が生じる。
【0035】
第2コイル14a~14hは、8個の磁極12a~12hの極性が周方向に交互に反転するように、磁極12a~12hを励磁する。例えば、磁極12aの先端がN極、磁極12bの先端がS極、磁極12cの先端がN極、磁極12dの先端がS極、磁極12eの先端がN極、磁極12fの先端がS極、磁極12gの先端がN極、磁極12hの先端がS極となる。なお、第2コイル14a~14hが生じさせる極性は、前述の例に限定されず、逆転していてもよい。
【0036】
本実施形態において、第1コイル13a~13hが生じさせる磁力は、第2コイル14a~14hが生じさせる磁力より大きい。磁力を大きくする方法は、例えば、第1コイル13a~13hの巻き数を第2コイル14a~14hより多くしてもよいし、第1コイル13a~13hに供給する電流値を第2コイル14a~14hより大きくしてもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0037】
その結果、磁極12a~12hのうち、第1コイル13a~13hと第2コイル14a~14hとが同一の極性を生じさせる磁極12b、12c、12f、12gは磁力が強化され、第1コイル13a~13hと第2コイル14a~14hとが逆向きの極性を生じさせる磁極12a、12d、12e、12hは磁力が相殺される。
【0038】
すなわち、第1コイル13b、13c、13f、13g及び第2コイル14b、14c、14f、14gで励磁したときの磁極12b、12c、12f、12gの磁力は、第1コイル13b、13c、13f、13gのみで励磁したときより大きくなる(
図2では、「N
+」、「S
+」と表記する。)。一方、第1コイル13a、13d、13e、13h及び第2コイル14a、14d、14e、14hで励磁したときの磁極12a、12d、12e、12hの磁力は、第1コイル13a、13d、13e、13hのみで励磁したときより小さくなる(
図2では、「N
-」、「S
-」と表記する。)。
【0039】
「N+」及び「S+」と表記された磁極12b、12c、12f、12gは、磁力の絶対値が基準値より大きい強磁性磁極である。すなわち、磁極12b、12fと、磁極12c、12gとは、磁力線の向きが逆向き(すなわち、極性が反転)で、磁力線の密度(すなわち、磁力の大きさ)が一致している。また「N-」及び「S-」と表記された磁極12a、12d、12e、12hは、磁力の絶対値が基準値より小さい弱磁性磁極である。すなわち、磁極12a、12eと、磁極12d、12hとは、磁力線の向きが逆向き(すなわち、極性が反転)で、磁力線の密度(すなわち、磁力の大きさ)が一致している。
【0040】
そして、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で、周方向に隣接する磁極グループの極性が反転するように、磁極12a~12hを励磁している。また、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hは、強磁性磁極と弱磁性磁極とが周方向に2個ずつ交互に配置されるように、磁極12a~12hを励磁している。より詳細には、第1コイル13a~13hは、磁極12a~12hそれぞれに基準値の磁力を付与する。一方、第2コイル14a~14hは、第1コイル13a~13hによって付与された磁力を強化または相殺する。
【0041】
図3は、第1コイル13a~13hのみで励磁した場合(A)、第2コイル14a~14hのみで励磁した場合(B)の磁力線の分布を示す図である。
図4は、第1コイル13a~13hのみで励磁した場合(A)、第2コイル14a~14hのみで励磁した場合(B)、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hで励磁した場合(C)の水平方向の各位置における積分磁場を示す図である。
【0042】
図3(A)及び
図4(A)に示すように、第1コイル13a~13hのみで磁極12a~12hを励磁した場合の積分磁場(磁力)は、水平方向に位置に応じて線形に変化する。そして、この磁力は、通過領域を通過する荷電粒子ビームを収束させる線形の収束力として、荷電粒子ビームに作用する。また、
図3(B)及び
図4(B)に示すように、第2コイル14a~14hのみで磁極12a~12hを励磁した場合の積分磁場(磁力)は、水平方向の位置に応じて非線形(より詳細には、3次曲線的)に変化する。この磁力は、通過領域を通過する荷電粒子ビームを成形する非線形の成形力として、荷電粒子ビームに作用する。さらに、
図4(C)に示すように、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hで磁極12a~12hを励磁した場合の積分磁場(磁力)は、
図4(A)及び
図4(B)を合成したものに相当する。
【0043】
図5は、第1コイル13a~13hのみで励磁した場合(A)、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hで励磁した場合(B)の荷電粒子ビームの位相空間分布を示す図である。
【0044】
荷電粒子ビーム内の粒子数が増加すると、粒子間に働く反発力(空間電荷力)も増大する。その結果、第1コイル13a~13hのみで磁極12a~12hを励磁すると(すなわち、荷電粒子ビームが四極電磁石を通過すると)、
図5(A)に示すように、荷電粒子ビームの位相空間分布をS字状に歪めてしまう。これは、荷電粒子ビームの中心では空間電荷力が強い一方で、荷電粒子ビームの外側では空間電荷力が弱いという力の分布に起因する。そして、このような歪みは、荷電粒子ビームの直径が大きくなる等といった悪影響を引き起こす可能性がある。そこで、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hで磁極12a~12hを励磁すると、外側にいくほど急速に強くなる非線形の成形力によって、
図5(B)に示すように、荷電粒子ビームを理想的な楕円形に成形することができる。
【0045】
荷電粒子ビームを
図5(B)の形状に成形するために、例えば、第1コイル13a~13hの巻き数を6回、第1コイル13a~13hに供給する電流を600Aとし、第2コイル14a~14hの巻き数を4回、第2コイル14a~14hに供給する電流を250Aとすればよい。但し、第1コイル13a~13h及び第2コイル14a~14hの巻き数及び供給する電流の大きさは、加速する粒子の種類、荷電粒子ビームのエネルギー、粒子の密度、ビームサイズ、主ダクト2内において多極電磁石10の前後に配置される他の電磁石との兼ね合いなどによって決定される。
【0046】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る多極電磁石10の作用効果を説明する。
図6は、磁極12a~12hの先端の距離を変化させた場合において、第1コイル13a~13hのみで励磁した際の磁力線の分布(A)及び収束磁場の傾きの推移(B)を示す図である。なお、
図6(B)の縦軸及び横軸は、
図11(B)と同一である。
【0047】
図6(B)では、磁極間距離を0mm、2mm、4mmと変化させた。磁極間距離とは、同一の磁極グループに属する磁極の先端の距離を指す。
図6(B)に示すように、磁極間距離を0mmとすると、中心からの距離が20.0mmの位置における収束磁場の傾きを、中心と比較して約0.1%未満のズレに留めることができる。また、磁極間距離が大きくなると、収束磁場の傾きのズレが大きくなる。すなわち、磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hそれぞれの先端を接触させることによって、収束磁場の傾きを線形に維持することができる。
【0048】
なお、磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hの先端面がズレると磁場の精度が悪化するので、製作誤差の影響を小さくするために、線接触ではなく、面接触させるのが望ましい。一方、磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hそれぞれの接触面積が大きくなると、第2コイル14a~14hで励磁した場合に接触面を介して磁力線が回り、成形磁場が弱くなる。そのため、磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hの面接触している範囲は、例えば、磁極12a、12bの先端から径方向の外側に向かって、2mm以下にするのが望ましい。
【0049】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0050】
上記の実施形態に係る多極電磁石10は、線形の収束力を発生させる四極電磁石として機能すると共に、非線形の成形力を発生させる八極電磁石としても機能する。これにより、四極電磁石及び八極電磁石を主ダクト2に直列に配置する場合と比較して、主ダクト2を短縮することができる。その結果、荷電粒子ビーム加速装置1を小型化することができる。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、同一の磁極グループに属する磁極の先端を接触させることによって、先端を離間させる場合と比較して、多極電磁石10を径方向にも小型化することができる。また、磁極の先端を面接触させることによって、製作誤差によって磁極の先端がズレるのを防止できる。さらに、接触した磁極の先端が単一の曲線を形成することによって、適切な収束磁場を発生させることができる。
【0052】
なお、磁極12a~12hに対する第1コイル及び第2コイルの巻き方は、
図2の例に限定されない。
図7は、第1コイルの巻き方のバリエーションを示す図である。
図8は、第2コイルの巻き方のバリエーションを示す図である。
【0053】
図7(A)に示すように、第1コイル13a~13hは、磁極12a~12hそれぞれに個別に巻回されていてもよい。他の例として、
図7(B)に示すように、第1コイル13i、13j、13k、13lは、同一の磁極グループに属する磁極12a、12b、磁極12c、12d、磁極12e、12f、磁極12g、12hに共通に巻回されていてもよい。さらに他の例として、
図7(C)に示すように、第1コイル13m、13n、13o、13pは、隣接する磁極グループの間において、ヨーク11に巻回されていてもよい。
【0054】
図8(A)に示すように、第2コイル14a~14hは、磁極12a~12hそれぞれに個別に巻回されていてもよい。他の例として、
図8(B)に示すように、第2コイル14i、14j、14k、14l、14m、14n、14o、14pは、隣接する磁極12a~12hの間において、ヨーク11に巻回されていてもよい。
【0055】
また、磁極12a~12hの極性を
図2の組み合わせにするためのコイルの配置は、
図2の例に限定されない。次に
図9及び
図10を参照して、
図2に示す極性の組み合わせを実現するコイルの配置を説明する。
図9は、コイルの巻き数によって極性の組み合わせを実現する例を示す図である。
図10は、第1コイル及び第2コイルの配置によって極性の組み合わせを実現する例を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0056】
図9の例では、磁極12a~12hそれぞれにコイル23a~23hが巻回されている。また、S極となる磁極12a、12b、12e、12fに巻回されるコイル23a、23b、23e、23fと、N極となる磁極12c、12d、12g、12hに巻回されるコイル23c、23d、23g、23hとは、巻き方向が逆向きである。さらに、強磁性磁極となる磁極12b、12c、12f、12gに巻回されるコイル23b、23c、23f、23gの巻き数は、弱磁性磁極となる磁極12a、12d、12e、12hに巻回されるコイル23a、23d、23e、23hの巻き数より多い。
【0057】
図10の例では、隣接する磁極グループの間のヨーク11に第1コイル33a、33b、33c、33dが巻回され、同一の磁極グループに属する磁極の間のヨーク11に第2コイル34a、34b、34c、34dが巻回されている。第1コイル33a、33cと、第1コイル33b、33dとは、巻き方向が逆向きである。また、第2コイル34a~34dは、巻き方向が同一である。
【0058】
そして、第1コイル33a~33dは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で、且つ周方向に隣接する磁極グループの極性が反転するように、各磁極12a~12hを励磁する。また、第1コイル33a~33dは、各磁極12a~12hに絶対値が基準値となる磁力を付与する。一方、第2コイル34a~34dは、第1コイル33a~33dによって付与された磁力を強化または相殺することによって、強磁性磁極及び弱磁性磁極を生じさせる。
【0059】
さらに、磁極12a~12hの数は、8個に限定されない。多極電磁石10は、4N+4(Nは自然数)個の磁極を備えていればよい。そして、自然数Nが奇数か偶数かによって、磁極の先端それぞれが以下の極性になるように、コイルによって各磁極を励磁すればよい。なお、自然数Nの値に拘わらず、周方向に連続するN+1個の磁極が1個の磁極グループに属する。また、同一の磁極グループに属する磁極の先端は、接触している。
【0060】
自然数Nが奇数(N=1、3)のとき、コイルは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で且つ周方向に隣接する磁極グループの極性が反転すると共に、強磁性磁極と弱磁性磁極とが周方向にN+1個ずつ交互に配置されるように、各磁極を励磁する。
【0061】
より詳細には、第1コイルは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で且つ周方向に隣接する磁極グループの極性が反転するように、各磁極を励磁する。また、第2コイルは、強磁性磁極と弱磁性磁極とが周方向にN+1個ずつ交互に配置されるように、各磁極を励磁する。ここで、第1コイルは、各磁極に基準値の磁力を付与する。また、第2コイルによって付与される磁力は、第1コイルによって付与される磁力より小さい。
【0062】
自然数N=3のとき、第1コイルは、16個の磁極が{S極、S極、S極、S極、N極、N極、N極、N極、S極、S極、S極、S極、N極、N極、N極、N極}になるように、各磁極を励磁する。また、第2コイルは、16個の磁極が{N極、N極、S極、S極、N極、N極、S極、S極、N極、N極、S極、S極、N極、N極、S極、S極}になるように、各磁極を励磁する。その結果、16個の磁極は、{S
-、S
-、S
+、S
+、N
+、N
+、N
-、N
-、S
-、S
-、S
+、S
+、N
+、N
+、N
-、N
-}になる。さらに、磁極の数が16個の場合、
図4(B)に対応する積分磁場(磁力)の分布は7次曲線となる。
【0063】
自然数Nが偶数(N=2、4)のとき、コイルは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で且つ周方向に隣接する磁極グループの極性が反転すると共に、4つの磁極グループそれぞれの周方向の中央に位置する基準磁極を挟んで、強磁性磁極と弱磁性磁極とが交互に配置されるように、各磁極を励磁する。なお、基準磁極とは、磁力の絶対値が基準値の磁極を指す。
【0064】
より詳細には、第1コイルは、同一の磁極グループに属する磁極の極性が同一で且つ周方向に隣接する磁極グループの極性が反転するように、各磁極を励磁する。また、第2コイルは、4つの磁極グループそれぞれにおいて、周方向の中央に位置する磁極を励磁せず、基準磁極より周方向の一方側の磁極と、基準磁極より周方向の他方側の磁極とに逆向きの極性を付与する。ここで、第1コイルは、各磁極に基準値の磁力を付与する。また、第2コイルによって付与される磁力は、第1コイルによって付与される磁力より小さい。
【0065】
自然数N=2のとき、第1コイルは、12個の磁極が{S極、S極、S極、N極、N極、N極、S極、S極、S極、N極、N極、N極}になるように、各磁極を励磁する。また、第2コイルは、12個の磁極が{N極、中性、S極、N極、中性、S極、N極、中性、S極、N極、中性、S極}になるように、各磁極を励磁する。その結果、12個の磁極は、{S
-、S、S
+、N
+、N、N
-、S
-、S、S
+、N
+、N、N
-}になる。さらに、磁極の数が12個の場合、
図4(B)に対応する積分磁場(磁力)の分布は5次曲線となる。
【0066】
自然数N=4のとき、第1コイルは、20個の磁極が{S極、S極、S極、S極、S極、N極、N極、N極、N極、N極、S極、S極、S極、S極、S極、N極、N極、N極、N極、N極}になるように、各磁極を励磁する。また、第2コイルは、20個の磁極が{N極、N極、中性、S極、S極、N極、N極、中性、S極、S極、N極、N極、中性、S極、S極、N極、N極、中性、S極、S極}になるように、各磁極を励磁する。その結果、12個の磁極は、{S
-、S
-、S、S
+、S
+、N
+、N
+、N、N
-、N
-、S
-、S
-、S、S
+、S
+、N
+、N
+、N、N
-、N
-}になる。さらに、磁極の数が20個の場合、
図4(B)に対応する積分磁場(磁力)の分布は9次曲線となる。
【符号の説明】
【0067】
1…荷電粒子ビーム加速装置、2…主ダクト、3…入射装置、4…合流ダクト、4a…合流点、5…偏向電磁石、6…加速装置、7…分岐ダクト、7a…分岐点、8…荷電粒子ビーム取出装置、10…多極電磁石、11…ヨーク、12a~12h…磁極、13a~13p,33a~33d…第1コイル、14a~14p,34a~34d…第2コイル、23a~23h…コイル