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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A47J37/12 391
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024114676
(22)【出願日】2024-07-18
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315002601
【氏名又は名称】クールフライヤー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】福田 弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 澄人
(72)【発明者】
【氏名】山田 光二
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-321274(JP,A)
【文献】特開2018-050985(JP,A)
【文献】特開2002-065475(JP,A)
【文献】特開昭59-082818(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0149995(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0111525(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽内に溜めた揚げ油をヒータで加熱して、当該油槽内に投入した食材の揚げ調理を行うフライヤーであって、
前記ヒータが配設されると共に食材の揚げ調理が行われる上部油槽と、
前記上部油槽の下部に当該上部油槽に連続して設けられると共に冷却水が満たされた水冷ジャケットによって周囲から強制的に冷却され、更に、油槽内で発生した揚げカスを前記揚げ油と一緒に排出する排出口を最深部に有すると共に当該排出口に向けて傾く複数の傾斜底板を有する下部油槽と、
前記排出口に繋がる排出流路の開閉を行う排出弁と、
前記排出弁を通して排出された揚げ油から揚げカスを除去すると共に、揚げカス除去後の揚げ油を貯留するリザーブタンクと、
注油ポンプを有すると共に前記リザーブタンク内の揚げ油を前記下部油槽に注油する戻し流路と、
前記ヒータの駆動、前記排出弁の開閉及び前記注油ポンプの駆動を管理する制御部と、
前記下部油槽内に沈降した揚げカスの排出を前記制御部に対して揚げ調理中に指示する揚げカス排出ボタンと、を有し、
前記揚げカス排出ボタンの操作に伴い、前記制御部は前記注油ポンプを駆動して所定量の揚げ油を前記リザーブタンクから前記油槽に追加すると共に、前記排出弁を開放して同量の揚げ油を前記下部油槽から排出することを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
前記戻し流路は前記傾斜底板よりも上方で前記下部油槽に接続されていることを特徴とする請求項1記載のフライヤー。
【請求項3】
前記下部油槽と前記戻し流路の接続部には、前記リザーブタンクから送られてきた揚げ油を前記傾斜底板へ導くノズルが設けられていることを特徴とする請求項2記載のフライヤー。
【請求項4】
前記ノズルは各傾斜底板に対応して複数設けられていることを特徴とする請求項3記載のフライヤー。
【請求項5】
前記制御部は、前記ポンプの駆動と同時に前記排出弁を開放することを特徴とする請求項4記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の調理に用いるフライヤーに係り、特に、油槽の深さ方向の中ほどに揚げ油を加熱するためのヒータが設けられたフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフライヤーとしては、揚げ油を貯留する油槽の深さ方向の中ほどにヒータを配置し、当該ヒータより上方の上部油槽を高温部として、当該上部油槽で揚げ物の調理を行う一方、当該ヒータより下方の下部油槽を低温部として、揚げ物調理で油中に生じた水分や揚げカスを当該下部油槽に沈降させるように構成したものが知られている。
【0003】
前記下部油槽を低温に保つ具体的な方法としては、積極的な冷却手段を設けることなく、前記下部油槽を自然放熱によって空冷する方法(特許文献1)や、前記下部油槽の全体を外部から覆う水槽を設けて、当該下部油槽を強制的に冷却する方法(特許文献2)が知られている。これらの方法により、前記下部油槽内の油音が摂氏80度程度に抑え込まれると、前記下部油槽に沈降した水分の気化が防止され、揚げ油の酸化に伴う劣化や上部油槽での油はねが抑制されると共に、前記下部油槽に対する揚げカスの沈降を促進することが可能となる。
【0004】
また、店舗などで使用する業務用フライヤーの使用にあたっては、油槽内に貯留された大量の揚げ油を定期的に交換すると共に、油槽内に堆積した揚げカスの排除と当該油槽の清掃が必要である。このため、前記下部油槽の最深部には外部タンクへ通じる排出口が設けられ、油槽内の揚げ油を揚げカスと一緒に前記外部タンクヘ向けて排出できるように構成されている。加えて、前記下部油槽の底板は前記排出口に向けて傾いた傾斜底板となっており、揚げ調理中に下部油槽へ沈降した揚げカスは前記傾斜底板上に堆積し、揚げ油を前記外部タンクへ排出する際には、当該揚げ油と共に揚げカスが前記排出口へ流れ込むようになっている(特許文献1及び特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-073487
【文献】特許第5901624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、業務用フライヤーで大量の揚げ調理を長時間にわたって連続的に行った場合には、大量の揚げカスが下部油槽の底部に堆積することになり、そのまま調理を続行すると、前記下部油槽の容積が減少することになるので、揚げカスが上部油槽を浮遊し易くなる他、揚げ油の劣化が進行し易くなるといった不具合が発生する。このため、連続調理の途中であっても、油槽内から揚げカスを排除できると便利である。
【0007】
しかし、従来のフライヤーでは、揚げ調理を一旦終了させ、揚げ油の温度をある程度低下させた後にこれを外部タンクヘ排出し、その際に油槽から揚げカスを除去している。また、特許文献1のフライヤーは、油槽と外部タンクの間で揚げ油を循環させながら当該揚げ油の濾過を行う濾過循環モードを備えているが、この濾過循環モードは揚げ調理を行うフライヤーモードとは別に設けられており、揚げ調理を中断しなければ油槽内の揚げカスの排除を行うことができなかった。すなわち、従来のフライヤーは揚げ調理を継続しながら揚げカスの除去をすることができず、大量の揚げ調理を行う業務用フライヤーの課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、大量の揚げ調理を中断することなく継続しつつも、油槽内に蓄積された揚げカスの排除を行うことが可能であり、稼働効率を高めることが可能なフライヤーを提供することにある。
【0009】
すなわち本発明は、油槽内に溜めた揚げ油をヒータで加熱して、当該油槽内に投入した食材の揚げ調理を行うフライヤーであって、前記ヒータが配設されると共に食材の揚げ調理が行われる上部油槽と、前記上部油槽の下部に当該上部油槽に連続して設けられ、油槽内で発生した揚げカスを前記揚げ油と一緒に排出する排出口を最深部に有すると共に当該排出口に向けて傾く複数の傾斜底板を有する下部油槽と、前記下部油槽の周囲に設けられると共に冷却水が満たされ、当該下部油槽内の揚げ油を強制的に冷却する水冷ジャケットと、前記排出口に繋がる排出流路の開閉を行う排出弁と、前記排出弁を通して排出された揚げ油から揚げカスを除去すると共に、揚げカス除去後の揚げ油を貯留するリザーブタンクと、注油ポンプを有すると共に前記リザーブタンク内の揚げ油を前記下部油槽に注油する戻し流路と、前記ヒータの駆動、前記排出弁の開閉及び前記注油ポンプの駆動を管理する制御部と、前記下部油槽内に沈降した揚げカスの排出を前記制御部に対して揚げ調理中に指示する揚げカス排出ボタンと、を有している。そして、前記揚げカス排出ボタンの操作に伴い、前記制御部は前記注油ポンプを駆動して所定量の揚げ油を前記リザーブタンクから前記油槽に追加すると共に、前記排出弁を開放して同量の揚げ油を前記下部油槽から排出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上部油槽での揚げ調理中に揚げカス排出ボタンが操作されると、所定量の揚げ油が揚げカスと共に下部油槽から排出され、排出量と略同量の新たな揚げ油がリザーブタンクから下部油槽に対して注油される。このとき、リザーブタンクから注油される新たな揚げ油は上部油槽ではなく下部油槽に注油されるので、揚げ調理中の上部油槽の油温が急激に低下することはない。このため、大量の揚げ調理を中断することなく継続しつつも、油槽内に蓄積された揚げカスの排除を行うことが可能であり、フライヤーの稼働効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用したフライヤーの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2】実施形態のフライヤーの制御系を示すブロック図である。
図3】実施形態のフライヤーにおける傾斜底板付近の揚げ油の流動の様子を示す概略断面図である。
図4】油槽の底部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明のフライヤーを詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明を適用した業務用フライヤーの一例を示している。このフライヤー1は飲食店舗の厨房などで使用される自立タイプのフライヤーであり、約18リットルの揚げ油10を油槽に投入して揚げ調理を行うことが可能である。
【0014】
このフライヤー1は、揚げ油を溜める油槽2と、この油槽2を支える筐体3と、前記油槽2の下方で前記筐体3内に収容されたリザーブタンク4と、前記油槽2から前記リザーブタンク4へ揚げ油を排出するための排出流路5と、を備えている。前記排出流路5には排出弁6が設けられており、この排出弁6を開放することで前記油槽2内の揚げ油が自重によって前記リザーブタンク4へ流動するように構成されている。また、前記排出流路5の途中にはメッシュ状のフィルター7が設けられており、前記リザーブタンク4へ流動する揚げ油は前記フィルター7を通過する際に大きな揚げカスが当該フィルター7に捕集される。
【0015】
前記油槽2は、揚げ調理が行われる上部油槽2aと、この上部油槽2aの下部に当該上部油槽2aと連続して設けられた下部油槽2bと、から構成されている。前記上部油槽2a内には揚げ油を加熱するヒータ8が設けられており、当該ヒータ8に通電することで上部油槽2a内の揚げ油を任意の温度に加熱することが可能となっている。一方、前記下部油槽2bは最深部に前記排出流路5に接続される排出口が設けられている。前記排出口の周囲には当該排出口に向けて傾いた複数の傾斜底板20が配置されており、これら傾斜底板20が連なって前記油槽2の底板を構成している。図示した例では、四枚の傾斜底板20が前記排出口に周囲に配置されることで、油槽2の底板は逆四角錘の形状をなしている。
【0016】
また、前記上部油槽2aの周囲は断熱材21によって覆われる一方、前記下部油槽2bの周囲には冷却水を充たした水冷ジャケット22が設けられている。このため、前記ヒータ8に通電すると、当該ヒータ8が設けられると共に前記断熱材21に覆われた上部油槽2a内の揚げ油10は高温(例えば180℃)に加熱される一方、下部油槽2b内の揚げ油10は前記水冷ジャケット22によって強制的に冷却され、当該下部油槽2b内の揚げ油10の温度は100℃未満の低温(例えば80℃)に保たれる。尚、図示はしていないが、前記水冷ジャケット22には冷却水の供給パイプ及び排出パイプが接続されており、下部油槽2bの冷却によって昇温した冷却水を外部へ排出すると共に、低温の新たな冷却水を供給できるようになっている。
【0017】
食材の揚げ調理はヒータ8によって揚げ油が加熱される前記上部油槽2a内で行われる。一方、揚げ調理中に食材から揚げ油中に放出された水分や揚げカスは前記上部油槽2aから前記下部油槽2bに沈降する。前述の如く、前記下部油槽2b内の揚げ油は100℃未満の低温に保たれているため、下部油槽2b内に達した水分は気化することなく前記傾斜底板20の近傍にまで沈降する。また、前記下部油槽2b内の揚げ油10の温度は前記上部油槽2a内のそれと比べて著しく低いので、前記下部油槽2bから前記上部油槽2aに揚げ油が対流することはなく、前記下部油槽2bに沈降した揚げカスは前記上部油槽2aへ上昇することなく、前記複数の傾斜底板20の上に堆積する。
【0018】
前記油槽2から全排出流路5を経て前記リザーブタンク4に流下する揚げ油10は前記フィルター7を通過してはいるものの、微細な揚げカスや水分は前記フィルター7に捕集されることなく揚げ油10に含まれている。すなわち、前記フィルター7が捕集するのは比較的大きなサイズの揚げカスのみである。このため、フィルター7を通過した揚げ油10には微細な揚げカスと水分が含まれており、これらは揚げ油10を前記リザーブタンク4内で数時間貯留することにより、当該リザーダタンク4の底部に沈降する。例えば、一日の業務終了後に揚げ油10を油槽2からリザーブタンク4へ排出し、そのまま揚げ油10を翌朝までリザーブタンク4内に保持しておけば、翌日の業務開始時には微細な揚げカスと水分はリザーダタンク4の底部に沈殿していることになる。
【0019】
一方、前記リザーブタンク4と前記油槽2の間には戻し流路40が設けられており、注油ポンプ41を駆動することで前記リザーブタンク4内に存在する揚げ油10を前記油槽2へ適宜注油することが可能となっている。前記戻し流路40は前記リザーブタンク4の底部には接続されておらず、当該底部に沈殿した微細な揚げカスや水分は前記注油ポンプ41の駆動時であっても前記戻し流路40には吸い上げず、前記リザーブタンク4内にとどめておくようになっている。また、前記戻し流路40は前記ヒータ8よりも下方で前記油槽2に接続されており、より具体的には下部油槽2bの傾斜底板20の上端よりも上方で、前記上部油槽2aと前記下部油槽2bの境界部に接続されている。
【0020】
図2はこのフライヤー1の制御系を示すブロック図である。このフライヤー1は交流電源から電力を供給される電源部11を備えており、マイクロプロセッサーを内蔵した制御部12は前記電源部11から電力を受けて前記注油ポンプ41、前記ヒータ8、前記排出弁6の動作をコントロールしている。また、前記制御部12には前記上部油槽2a内の揚げ油10の温度を測定する温度センサ13が接続されており、前記制御部12は前記温度センサ13の出力信号を所定時間毎に参照しながら、前記上部油槽2a内の揚げ油10が所定温度(例えば180℃)に保たれるように、予め格納されたプログラムに従って前記ヒータ8へ供給する電力を前記電源部11に指令する。前記制御部12にはユーザーインターフェースとしての操作パネル14が接続されており、この操作パネル14には調理温度設定ボタン15や上部油槽2a内の揚げ油10の現在温度を示す表示部16が備えられている。
【0021】
前記操作パネル14には下部油槽2bに堆積した揚げカスを調理中に油槽2外に排出するための揚げカス排出ボタン17が設けられている。ユーザーが当該ボタン17を操作すると、前記制御部12は前記排出弁6を所定時間だけ開放し、前記下部油槽2b内の揚げ油10が所定量(例えば4リットル程度)だけ前記リザーブタンク4へ向けて排出される。また、これに伴って前記制御部12は前記注油ポンプ41を起動し、前記リザーブタンク4内の揚げ油10を前記油槽2に注油する。
【0022】
前記揚げカス排出ボタン17がユーザーによって操作された場合、前記注油ポンプ41は前記下部油槽2bから排出された揚げ油10の量と略同量の揚げ油10を油槽2に注油する。前記制御部12は前記排出弁6の開放時間と前記注油ポンプ41の動作時間を制御し、最終的に前記油槽2内の油面高さを略一定の位置に保つようにする。
【0023】
このように前記揚げカス排出ボタン17を操作することにより、前記下部油槽2bの最深部に位置する排出口50から揚げ油10が所定量だけ排出され、当該排出口50を囲むように位置する傾斜底板20上に堆積する揚げカスは揚げ油と一緒に前記排出口50に流れ込むことになる。これにより、揚げ調理中であっても油槽2から揚げカスを排出することが可能となる。また、前記揚げカス排出ボタン17を操作によって油槽2から排出される揚げ油10は前記下部油槽2b内の低温(100℃未満)の揚げ油なので、そこに含まれる揚げカスの温度も同程度に低く、前記フィルター7で捕集した揚げカスが発火してしまうといったトラブルが発生することはない。
【0024】
前記リザーブタンク4から油槽2に注油される揚げ油10の温度は室温に近いので、前記揚げカス排出ボタン17の操作に伴って注油ポンプ41が前記リザーブタンク4内の揚げ油10を上部油槽2aに注油すると、当該上部油槽2a内の揚げ油10の温度は低下してしまい、温度が回復するまでの間は揚げ調理を中断する必要が生じてしまう。この点、本実施形態のフライヤーでは、前記リザーブタンク4内の揚げ油を油槽2に注ぐ戻し流路40が前記上部油槽2aと前記下部油槽2bの境界部に接続されているので、前記下部油槽2bから排出された揚げ油10の量と略同量の揚げ油を前記戻し流路40から油槽2に注油したとしても、前記上部油槽2aの揚げ油10の入れ替わりは殆ど発生しない。このため、前記下部油槽2bから揚げカスを排出しながら前記上部油槽2aにおいては揚げ調理を継続することが可能となっている。
【0025】
前記揚げカス排出ボタン17が操作された場合に、前記下部油槽2bからの揚げ油10の排出と注油ポンプ41によるリザーブタンク4から油槽2への注油は同時である必要はない。例えば、前記排出弁6の開放に遅れて前記リザーブタンク4から油槽2への注油を開始しても良いし、その逆に前記リザーブタンク4から油槽への注油に遅れて前記排出弁6の開放を行っても良い。要は、前記制御部12が揚げカス排出の一連の動作を終了した後に、前記油槽2内の油量が揚げカス排出前と略同一であればよい。
【0026】
その一方、前記リザーブタンク4から油槽2への注油に先立って前記排出弁6を開放した場合、一時的には油槽2内の揚げ油が減少してしまうことから、揚げ調理を行っている上部油槽2a内の油量は少なくなり、揚げ調理に支障が生じる懸念がある。このため、前記揚げカス排除ボタン17が操作された場合には、前記排出弁6の開放に先立って前記注油ポンプ41を駆動し、前記上部油槽2a内の油量を増加させてから、前記排出弁6を開放するのが好ましい。
【0027】
また、前記傾斜底板20に堆積した揚げカスの油槽2の外への排出を促進するという観点からすれば、前記注油ポンプ41でリザーブタンク4内の揚げ油を下部油槽2bに注油するのと同時に、前記排出弁6を開放して下部油槽2bから揚げ油を排出するのが好ましい。前記下部油槽2bに対して前記注油ポンプ41で揚げ油を吐出すると、前記下部油槽2b内の揚げ油には流動が生じ、その結果として前記傾斜底板20上の揚げカスが前記下部油槽2b内で舞い上がり易くなるので、当該揚げカスを揚げ油10と一緒に排出口50から油槽2外へ排出することが容易となる。
【0028】
更に、揚げカスの排出を促進するためには、図3に示すように、前記戻し流路40の油槽2側の端部には前記リザーブタンク4から油槽2に注油された揚げ油を前記下部油槽2bの傾斜底板20に沿う方向へ導くノズル42が設けるのが好ましい。このようなノズル42を用いると、前記注油ポンプ41を駆動して揚げ油10を前記戻し流路40から前記油槽2に注油した際に、前記ノズル42から吐き出された揚げ油10が前記傾斜底板20に沿って流動し、当該傾斜底板20上に堆積していた揚げカス18が最深部の排出口に向けて落とされることになる。これにより、揚げカス18の排出を促進することが可能となる。加えて、リザーブタンク4から油槽2に注油された低温の揚げ油が上部油槽2内の高温の揚げ油と攪拌されることを防止することができ、前記上部油槽2aにおける揚げ調理の継続にも好適である。
【0029】
図4は前記油槽2を上方から見た平面図である。前記油槽2の底部は4枚の傾斜底板20が交わって構成されており、中央の最深部には前記排出口50が設けられている。前記戻し流路40は前記排出口50を挟んで対向する油槽2の角部の二か所に接続され、それぞれの位置に前記ノズル42が設けられている。前記ノズル42は二方向に分岐して揚げ油を注油するものであり、図4中に矢線で示すように、隣接する2枚の傾斜底板20のそれぞれに対して揚げ油10を吐き出すように構成されている。
【0030】
このように総ての傾斜底板20に対して前記戻し流路40から揚げ油10を吐き出すことにより、各傾斜底板20の上には前記排出口50に向けた揚げ油10の流動が生じるので、これら傾斜底板20上に堆積した揚げカスを前記排出口50へ押し流すことができる。従って、前記排出弁6の開放に伴って揚げカスを積極的に前記排出流路5へ流しだすことが可能となる。
【0031】
以上説明してきたように、本発明を適用したフライヤーによれば、大量の揚げ物を継続的に調理することによって大量の揚げカスが油槽内で発生し、その揚げカスが下部油槽の傾斜底板に堆積したとしても、上部油槽での揚げ調理を継続しながら揚げカスを油槽内から排除することが可能であり、揚げ調理におけるフライヤーの稼働効率を高めることができるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…フライヤー、2…油槽、2a…上部油槽、2b…下部油槽、10…揚げ油、3…筐体、4…リザーブタンク、5…排出流路、6…排出弁、7…フィルター、8…ヒータ、17…揚げカス排出ボタン、20…傾斜底板、40…戻し流路、41…注油ポンプ、42…ノズル、50…排出口
【要約】      (修正有)
【課題】大量の揚げ調理を中断することなく継続しつつも、油槽内に蓄積された揚げカスの排除を行うことが可能であり、稼働効率を高めることが可能なフライヤーを提供する。
【解決手段】油槽2内の揚げ油をヒータ8で加熱して、油槽内に投入した食材の揚げ調理を行うフライヤー1であって、ヒータが配設されると共に食材の揚げ調理が行われる上部油槽と、上部油槽の下部に連続して設けられ、油槽内で発生した揚げカスを揚げ油と一緒に排出する排出口50を最深部に有すると共に排出口に向けて傾く複数の傾斜底板20を有する下部油槽と、下部油槽内に沈降した揚げカスの排出を制御部に対して揚げ調理中に指示する揚げカス排出ボタンと、を備え、揚げカス排出ボタンが操作されると、上部油槽における揚げ調理を継続しながら、所定量の揚げ油を下部油槽に追加すると共に、排出弁6を開放して同量の揚げ油を下部油槽から排出する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4